特許第6865093号(P6865093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アスターの特許一覧

<>
  • 特許6865093-接合装置、接合方法および接合体 図000002
  • 特許6865093-接合装置、接合方法および接合体 図000003
  • 特許6865093-接合装置、接合方法および接合体 図000004
  • 特許6865093-接合装置、接合方法および接合体 図000005
  • 特許6865093-接合装置、接合方法および接合体 図000006
  • 特許6865093-接合装置、接合方法および接合体 図000007
  • 特許6865093-接合装置、接合方法および接合体 図000008
  • 特許6865093-接合装置、接合方法および接合体 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865093
(24)【登録日】2021年4月7日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】接合装置、接合方法および接合体
(51)【国際特許分類】
   B21D 39/03 20060101AFI20210419BHJP
   B21D 47/04 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   B21D39/03 B
   B21D47/04
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-84426(P2017-84426)
(22)【出願日】2017年4月21日
(65)【公開番号】特開2018-176264(P2018-176264A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2018年3月5日
【審判番号】不服2019-17413(P2019-17413/J1)
【審判請求日】2019年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】311009376
【氏名又は名称】株式会社アスター
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】本郷 武延
【合議体】
【審判長】 見目 省二
【審判官】 田々井 正吾
【審判官】 青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第10130726(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102009023717(DE,A1)
【文献】 米国特許第5208973(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0229378(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/00 - 39/20
B21D 47/00 - 47/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置したダイとパンチとの間に、複数の部材を積層して配置し、前記ダイと前記パンチとが接近するよう移動させて前記複数の部材を押圧して接合する積層部材の接合装置であって、
押圧部の周囲を押さえる押さえ手段を有し、
前記パンチは前記押さえ手段から突出する方向に相対移動可能であり、該押さえ手段から突出する押圧面が略平坦に構成されており、
前記ダイは、平坦部と、前記パンチの先端部と対向する位置において該平坦部から突出する略円錐台形状の凸部とを有し、
押圧される前記複数の部材をその総厚み以上に突出させることなく、前記複数の部材の厚み方向の中心に向かい前記ダイ側と前記パンチ側の両方から陥没する凹部を形成するとともに、該凹部の周囲に該厚み方向に沿って凹凸となる嵌め合い構造を形成することにより接合する、
ことを特徴とする接合装置。
【請求項2】
前記ダイは、前記パンチの進入を許容する凹部を有さない、
ことを特徴とする請求項1に記載の接合装置。
【請求項3】
前記先端部の大きさは、前記凸部の最上面の大きさと同等以上である、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接合装置。
【請求項4】
前記凸部の高さは、前記ダイに当接する部材の厚みよりも小さい、
ことを特徴とする請求項3に記載の接合装置。
【請求項5】
前記複数の部材は、異種の部材である、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の接合装置。
【請求項6】
前記複数の部材は、金属部材と樹脂部材であり、
前記樹脂部材を前記ダイに当接するように載置する、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の接合装置。
【請求項7】
前記パンチは、該パンチに当接する部材の厚みよりも下方まで移動して押圧する、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の接合装置。
【請求項8】
対向して配置したダイとパンチとの間に、複数の部材を積層して配置し、前記ダイと前記パンチとが接近するように移動させて前記複数の部材を押圧して接合する積層部材の接合方法であって、
平坦部と、前記パンチと対向する位置において該平坦部から突出する略円錐台形状の凸部とを有する前記ダイの上方に前記複数の部材を積層して載置する工程と、
押圧部の周囲を押さえ手段で押さえ、前記パンチの略平坦な押圧面を該押さえ手段から突出させて前記ダイとの間で前記複数の部材を挟んで押圧することにより、押圧される前記複数の部材をその総厚み以上に突出させることなく、前記複数の部材の厚み方向の中心に向かい前記ダイ側と前記パンチ側の両方から陥没する凹部を形成するとともに、該凹部の周囲に該厚み方向に沿って凹凸となる嵌め合い構造を形成することにより接合する、
ことを特徴とする接合方法。
【請求項9】
前記複数の部材のうち前記ダイに当接する部材は、前記ダイの方向に突出することなく、他の部材と接合される、
ことを特徴とする請求項8に記載の接合方法。
【請求項10】
前記嵌め合い構造は、前記パンチによって押圧される領域の周囲に形成される、
ことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の接合方法。
【請求項11】
前記複数の部材は、異種の部材である、
ことを特徴とする請求項8から請求項10のいずれかに記載の接合方法。
【請求項12】
前記複数の部材は、金属部材と樹脂部材であり、
前記樹脂部材を前記ダイに当接するように載置する、
ことを特徴とする請求項8から請求項11のいずれかに記載の接合方法。
【請求項13】
前記凸部の高さは、前記ダイに当接する部材の厚みよりも小さい、
ことを特徴とする請求項8から請求項12のいずれかに記載の接合方法。
【請求項14】
前記パンチは、該パンチに当接する部材の厚みよりも下方まで移動して押圧する、
ことを特徴とする請求項8から請求項13のいずれかに記載の接合方法。
【請求項15】
前記押さえ手段は、弾性部材により構成される、
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材を含む複数の材料を積層し、塑性変形により接合させる接合装置、接合方法および接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属部材(例えば、金属基板)と金属以外の部材(例えば、樹脂材料)を積層状態で結合(接合)させる場合、樹脂材料の一部溶着あるいはねじなどの固定部材の使用によって、両者を結合することが一般的である。
【0003】
図8は、樹脂部材と金属部材と結合(固定)させる既知の構成の一例を示す断面図である。例えば、LED照明装置などにおいて、ケースとなる樹脂部材202にLEDが実装された金属部材(金属基板)201を結合(固定)させる場合がある。このような場合には、樹脂部材202に突出部202Aを、金属基板201には固定孔201Aをそれぞれ形成し、突出部202Aを固定孔201Aに貫通させた後に、その先端を加熱によって変形させる。このような、いわゆる熱かしめによって樹脂部材202と金属部材201とを固定することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このように、金属部材201の一方の面ISに当接する樹脂部材202の一部を、金属部材201の他方の面(外表面)OSに物理的に係合させる構造とすることで、異素材であっても接着剤等を用いることなく、確実に固定することができる。また、両者の固定力を高めるために、これに加えてねじなどの固定部材が併用される場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−23218公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図8に示すいわゆる熱かしめによる接合方法では、金属部材201の外表面OSから樹脂部材202の係合部分が突出することは不可避であり、例えば、金属部材201の外表面OSに更に他の部材を固着する場合などに、この突出した係合部分が干渉してしまう問題がある。つまり上記の方法では、複数の部材を接合した接合体の表面(図8における金属部材201の外表面OS)から、外側(樹脂部材202が当接する面とは逆側)に突出した部分が形成されないようにすることは不可能であった。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、複数の部材を接合した接合体の表面から、外側に突出した部分を形成することなく、確実な接合が可能な、接合装置、接合方法および接合体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、対向して配置したダイとパンチとの間に、複数の部材を積層して配置し、前記ダイと前記パンチとが接近するよう移動させて前記複数の部材を押圧して接合する積層部材の接合装置であって、押圧部の周囲を押さえる押さえ手段を有し、前記パンチは前記押さえ手段から突出する方向に相対移動可能であり、該押さえ手段から突出する押圧面が略平坦に構成されており、前記ダイは、平坦部と、前記パンチの先端部と対向する位置において該平坦部から突出する略円錐台形状の凸部とを有し、押圧される前記複数の部材をその総厚み以上に突出させることなく、前記複数の部材の厚み方向の中心に向かい前記ダイ側と前記パンチ側の両方から陥没する凹部を形成するとともに、該凹部の周囲に該厚み方向に沿って凹凸となる嵌め合い構造を形成することにより接合する、ことを特徴とする接合装置である。
また、対向して配置したダイとパンチとの間に、複数の部材を積層して配置し、前記ダイと前記パンチとが接近するように移動させて前記複数の部材を押圧して接合する積層部材の接合方法であって、平坦部と、前記パンチと対向する位置において該平坦部から突出する略円錐台形状の凸部とを有する前記ダイの上方に前記複数の部材を積層して載置する工程と、押圧部の周囲を押さえ手段で押さえ、前記パンチの略平坦な押圧面を該押さえ手段から突出させて前記ダイとの間で前記複数の部材を挟んで押圧することにより、押圧される前記複数の部材をその総厚み以上に突出させることなく、前記複数の部材の厚み方向の中心に向かい前記ダイ側と前記パンチ側の両方から陥没する凹部を形成するとともに、該凹部の周囲に該厚み方向に沿って凹凸となる嵌め合い構造を形成することにより接合する、ことを特徴とする接合方法である。


【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、複数の部材を接合した接合体の表面から、外側に突出した部分を形成することなく、確実な接合が可能な、接合装置、接合方法および接合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態の接合装置を示す側断面図である。
図2】本実施形態の接合装置および接合方法を示す側断面図である。
図3】本実施形態の接合体を示す断面図である。
図4】本実施形態の(a)接合装置および接合方法を示す側断面図であり、(b)接合体を示す断面図である。
図5】本実施形態の(a)接合装置および接合方法を示す側断面図であり、(b)接合体を示す断面図である。
図6】本実施形態の接合装置および接合方法を示す側断面図である。
図7】本発明の実施例による接合体20の(a)〜(c)外観を示す写真であり、(d)断面の写真である。
図8】従来技術を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0030】
図1は、本実施形態の接合装置10の主要部を示す側断面図である。本実施形態の接合装置10は、対向して配置され、互いに近接・離間するように相対的に移動可能なダイ11とパンチ12とを有する。そして接合装置10は、ダイ11とパンチ12の間に複数の部材13を積層して配置し、相対移動させたダイ11とパンチ12とで押圧することによって複数の部材13を接合するものである。
【0031】
複数の部材13は、この例では第1部材131と第2部材132である。第1部材131と第2部材132とは異種の部材であり、一例として、第1部材131は樹脂部材(例えば、ポリプロピレンやポリカーボネートなど)であり、第2部材132は、金属部材(例えば、銅板など)である。第1部材131と第2部材132の用途の一例を挙げると、第1部材131は例えばLED照明のケース体などに用いられる部材であり、第2部材132はLEDが実装される金属基板であるが、これに限らず、様々な用途に利用可能である。
【0032】
また、第1部材131はこの例では下層に配置され、ダイ11に当接する部材であり、第2部材132は上層に配置され、パンチ12に当接する部材である。以下、複数の部材13(第1部材131および第2部材132)を単に「部材13」と総称する場合もある。
【0033】
また、第1部材131はその板厚D1が第2部材132の板厚D2より大きく、板厚D1は板厚D2の例えば、1.5倍〜2倍以上の厚みである。
【0034】
ダイ11は、基部111と凸部112とを有し、基部111はその表面(パンチ12の方向に対向する面)は略平坦状に構成され、凸部112は、基部111からパンチ12の方向に突出するように構成されている。凸部112は一例として略円錐台形状であり、その頭部112Hは略平坦状に構成される。ここで、基部111、および凸部112の頭部112Hが「略平坦状」である、とは、厳密な平坦性を有していることに限らず、押圧時に何らかの作用を働かせるために意図的に形成された凹凸の形状を有していないことを意味する。また、ダイ11は、基部111の表面より低い位置にパンチ12の進入を許容するような凹部を有していない。
【0035】
凸部112の高さ(基部111表面からの高さ)Hは、例えば、ダイ11の上に載置される第1部材131および第2部材132の板厚より小さい。
【0036】
この例では、ダイ11は、開口部OPを有するステージ15の下方に配置される。開口部OPは、凸部112が挿通可能な大きさを有している。そしてダイ11は、押圧時に上昇し、開口部OPから凸部112が上方に突出する。
【0037】
パンチ12は、例えば円柱状であり、その先端部121は、凸部112の頭部112Hと同様に略平坦状である。パンチ12の先端部121は凸部112の頭部112Hと対向して配置され、両者が部材13を直接的に押圧する押圧面となる。パンチ12の先端部121(押圧面)の大きさ(直径L2)は、凸部112の頭部112Hの大きさ(直径L1)と同等以上である。
【0038】
一例として、パンチ12の先端部121(押圧面)の大きさ(直径L2)は、凸部112の頭部112Hの大きさ(直径L1)の1倍〜3倍程度であり、凸部112の高さ(基部111表面からの高さH)の5倍〜15倍程度である。また、凸部112の頭部112Hの大きさ(直径L1)は、凸部112の高さ(基部111表面からの高さH)の3倍〜8倍程度である。
【0039】
具体的には、パンチ12の先端部121(押圧面)の大きさと、凸部112の頭部112Hの大きさと凸部112の高さ(基部111表面からの高さ)の比は、例えば、L2:L1:H=10:6:1である。また、これらの比は例えば、L2:L1:H=8:4:1であってもよいし、例えば、L2:L1:H=15:5:1などであってもよい。
【0040】
パンチ12の両側には、接合する部材13を押さえる板押さえ14が設けられている。板押さえ14は適度な弾性力を有する弾性部材(例えば、ウレタン、ゴムなど)により構成される。板押さえ14を弾性部材により構成することで、部材13全体の厚みが異なる場合(接合毎に部材13の厚みが変化する場合)であっても、柔軟に対応することができる。また、部材13に過度な荷重が係ることを防止できるので、部材13(特に、板押さえ14が当接する上層の第2部材132)に傷等の外観不良が発生することを防止できる。
【0041】
図2は、図1の接合装置10を用いた本実施形態の接合方法を説明する側断面図であり、図3は、本実施形態の接合装置10および接合方法によって得られる接合体20を説明する断面図である。
【0042】
図1に示した接合装置10は、押圧される複数の部材13をその総厚み以上に突出させることなく、複数の部材13の厚み方向において凹凸の嵌め合い構造を形成することにより接合する。
【0043】
まず、図2(a)に示すように、ダイ11のステージ15上に、第1部材131と第2部材132をこの順で重ねて載置する。
【0044】
次いで、同図(b)に示すように、例えばパンチ12をダイ11に向かって降下させ、またダイ11を上昇させることにより、ダイ11とパンチ12とが接近するように相対的に移動させる。ダイ11は凸部112がステージ15の開口部OPから突出し、この凸部112とパンチ12により複数の部材13が押圧される。パンチ12は、その先端部121が第2部材132の表面S2と当接し、ダイ11の凸部112は頭部112Hが第1部材131の表面S1(第2部材132の表面S2と逆側(図では裏側)の面)に当接して、それぞれ部材13を押圧する。
【0045】
このとき、パンチ12は、当接する第2部材132の厚みD2に対応する高さよりも大きく下方まで移動する。一方、ダイ11の凸部112は、当接する第1部材131の厚みD1に対応する高さよりも小さく上昇する。
【0046】
つまり、パンチ12およびダイ11は、部材13(第1部材131と第2の部材132)の両面S1、S2(部材13の裏面と表面)からそれぞれ押圧するが、このとき、複数の部材13をその総厚み(D1+D2)以上に両面S1,S2側のいずれにも突出させることなく、押圧する。この時の押圧力は、押圧量(部材13の表面S2からの押圧深さ)D3が例えば、第2の部材132の厚みD2の2倍以上で、第1部材131と第2の部材132の総厚み(D1+D2)未満(D2×2≦D3<(D1+D2)となるような力である。
【0047】
そしてこの結果、押圧しているダイ11とパンチ12の周囲の部材13が内部で塑性変形し、同図(b)の破線で示すように部材13の厚み方向において凹凸となる嵌め合い構造EGが形成される。また、凸部112の上方の部材13も内部において凸部112の形状に沿うように塑性変形する。これにより、第1部材131と第2の部材132とは、塑性変形した領域を中心として接合される。
【0048】
このように、本実施形態の接合方法は、パンチ12およびダイ11によって押圧される部材13の一部の領域(押圧領域)を、直接的にはパンチ12によって押圧されない部材13の他の領域(非押圧領域)における部材13の総厚み以上に突出させることなく、押圧し、部材13の内部において、押圧領域およびその周辺を塑性変形させ、接合するものである。
【0049】
なお、ダイ11の凸部112は、パンチ12で押圧を開始した後に、ステージ15の開口部OPから突出するようにしてもよい。
【0050】
また、ステージ15とダイ11が兼用される構成であってもよい。すなわち、ステージ15を介さずに、部材13を直接、ダイ11の上に載置してパンチ12とダイ11で押圧するようにしてもよい。
【0051】
図3を参照して接合体20について更に説明する。
【0052】
本実施形態では、複数の部材13は、ダイ11とパンチ12によって押圧された一部の領域(押圧領域)およびその周辺において、部材13の内部で塑性変形が生じて第1部材131と第2の部材132とが剥離(離脱)不可あるいは相当困難な状態となっている。このように、部材13の内部で塑性変形が生じて第1部材131と第2の部材132とが剥離(離脱)不可あるいは相当困難な状態となっている領域を、接合領域CPといい、それ以外(接合領域CPの周囲)の、部材13の塑性変形が生じていない領域を非接合領域NCPという。ただし、非接合領域NCPにおいても、第1部材131と第2部材132とが固定(接合)されていないだけであって、接合領域CPによって剥離不可(困難)となっているため、両者は離脱不可に略密着した状態となっている。
【0053】
接合領域CPでは、第2部材132の表面(第二の面)S2側に、部材13の厚みの中心方向(図では下方)に陥没する凹部22(第二の面側凹部22)が形成され、それとは逆の、第1部材131の表面(第一の面)S1側においては、厚みの中心方向(図では上方)に陥没する凹部21(第一の面側凹部21)が形成されている。つまり凹部21,22はダイ11とパンチ12の押圧領域に対応している。そして、第一の面S1側および第二の面S2側のいずれにおいても、それぞれの表面より外側(部材13の厚みが厚くなる方向)に突出する部位は存在しない。換言すると、第一の面S1側および第二の面S2側のいずれにおいても、接合体20の非接合領域NCPよりも厚み方向に突出する部位は存在しない。
【0054】
また、押圧領域、すなわち、凹部21、22の周囲において、第1部材131と第2部材132がそれぞれ、パンチ12とダイ11の押圧によって外側に押出されるように塑性変形し、接合体20の厚み方向において第1部材131と第2部材132との凹凸の嵌め合い構造EGが形成されている。この厚み方向において凹凸となる嵌め合い構造EGによって、第1部材131と第2部材132とを確実に固定(接合)することができる。
【0055】
このように、本実施形態によれば、接合体20の非接合領域NCPの表面よりも、厚み方向(厚みが厚くなる方向、図では上下方向)に突出する部位を形成することなく、第1部材131と第2部材132とを確実に固定(接合)することができる。
【0056】
接合体20はその表面(第一の面S1,第二の面S2)のいずれも、外側に突出する部位が形成されないため、表面の平坦性を確保できる。
【0057】
一例として、本実施形態の接合方法を、LED照明装置などにおけるLED基板(第2部材132)と樹脂部材のケース(第1部材132)との接合に利用した場合、接合体20となる装置の薄型化に寄与できる。また接合体20を他の構成と組合わせる場合になどにおいても、接合体20の表面(S1,S2)に突出して干渉する部位が存在しないため、組合わせる部位の汎用性を高めることができ、また組合わせた場合の全体としてのサイズの小型化に寄与できる。
【0058】
<変形例>
図4は、上記の実施形態の変形例を示す図であり、同図(a)が接合装置10の要部を示す側断面図であり、同図(b)が同図(a)の接合装置10によって接合された接合体20の断面図である。
【0059】
図4(a)に示すように、ダイ11は、凸部112を有さず、略平坦状の基部111のみで構成されていてもよい。この場合、図1に示すステージ15を設けなくても良いが、略平坦状の基部111がステージ15の開口部から上昇する構成であってもよい。
【0060】
この接合装置10によって得られる接合体20は、同図(b)に示すように、接合領域CPにおいて、第2部材132の表面(第二の面)S2側に、部材13の厚みの中心方向(図では下方)に陥没する凹部22が形成されるが、第1部材131の表面(第一の面)S1側は略平坦状となる。
【0061】
この場合であっても、第一の面S1側および第二の面S2側のいずれにおいても、それぞれの表面より外側(部材13の厚みが厚くなる方向)に突出する部位は存在しない。また、凹部21の周囲において、第1部材131と第2部材132がそれぞれ、パンチ12とダイ11の押圧によって外側に押出されるように塑性変形し、接合体20の厚み方向において第1部材131と第2部材132との凹凸の嵌め合い構造EGが形成されている。
【0062】
図5は、上記の実施形態の他の変形例を示す図であり、同図(a)が接合装置10の要部を示す側断面図であり、同図(b)が同図(a)の接合装置10によって接合された接合体20の断面図である。
【0063】
図5(a)に示すように、パンチ12は、本体部120が円柱状でありその先端部121に爪状部123が設けられる構成であってもよい。この場合、爪状部123はその先端が、本体部120の外周よりも外側に位置するように(外側に向けて開放するように)設けるとよい。特に、同図(a)に示すようにダイ11が略平坦状の基部111のみで構成されている場合には、パンチ12に爪状部123を設けることにより、上述の嵌め合い構造EGの形成を促すことができる。
【0064】
また、同図(b)に示すように、凹部22の形状も接合体20の厚み方向に凹凸が形成される構成となり、嵌め合い構造EGの嵌め合わせの程度がより強固になる場合もある。
【0065】
図6は、上記の実施形態の他の変形例を示す図であり、接合装置10の要部を示す側断面図である。
【0066】
図6(a)に示すように、ダイ11の凸部112にはヒーターなど、第1部材131を加熱可能な加熱手段113を設けるとよい。これにより第1部材131の塑性変形をより促すことができ、例えば、第1部材131(樹脂部材)として、アクリル樹脂材などを使用することもできる。
【0067】
また同図(b)に示すように、ダイ11が凸部112を有しない場合、加熱手段113は、少なくとも押圧領域及びその周囲を加熱できるように基部111に設けても良い。あるいは、図示は省略するが、加熱手段113はパンチ12の先端部121にも受けても良いし、ダイ11とパンチ12の両方に設けても良い。
【0068】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0069】
例えば、上記の例では、金属部材として銅の場合について説明したが、金属部材はこれに限らず、例えば、軟鋼材、高張力鋼材、超高張力鋼材、又は、アルミ合金などであってもよい。
【0070】
また、第1部材131と第2部材132が異種の部材の場合について説明したが、同じ部材(例えば、金属部材)であってもよい。その場合、複数の金属部材は、同一の材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。第1部材131と第2部材132とが金属部材の場合、第1部材131の板厚D1と第2部材132の板厚D2の関係は、D1:D2=3:2であってもよいし、5:2であってもよい。
【0071】
また、複数の部材13は、3層以上であってもよい。また、ダイ11がパンチ12に向かって上昇する構成であってもよい。
【実施例1】
【0072】
図1に示した接合装置10によって、接合体20を形成した。第1部材131は板厚D1=2mmのポリカーボネートであり、第2部材132は板厚D2=1mmの銅板である。
【0073】
パンチ12は円柱状であり、押圧面の直径L2は3.0mmである。
【0074】
また、ダイ11に設けられた凸部112は円形状であり、その頭部112Hの直径L1は1.8mmであり、基部111からの高さHは0.3mmである。
【0075】
図7は、この実施例により得られた接合体20の写真であり、同図(a)が面S2側から撮影した外観写真であり、同図(b)が面S1側から撮影した外観写真であり、同図(c)が面S2を図示上方とする側面から撮影した外観写真であり、同図(d)が同図(a)のX−X線の断面写真である。
【0076】
この実施例によれば、図7に示すようにダイ11と当接する第1部材131を、ダイ11側に突出させることなく、十分な接合力を確保することができた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、複数の部材の接合に用いることができる。
【符号の説明】
【0078】
10 接合装置
11 ダイ
12 パンチ
13 部材
15 ステージ
20 接合体
21,22 凹部
111 基部
112 凸部
112H 頭部
113 加熱手段
120 本体部
121 先端部
123 爪状部
131 第1部材
132 第2部材
EG 嵌め合い構造
CP 接合領域
NCP 非接合領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8