特許第6865098号(P6865098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6865098-内面加傷方法及び内面加傷装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865098
(24)【登録日】2021年4月7日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】内面加傷方法及び内面加傷装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20210419BHJP
   G01N 3/00 20060101ALI20210419BHJP
   G01N 3/08 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   G01N1/00 102B
   G01N3/00 Z
   G01N3/08
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-97299(P2017-97299)
(22)【出願日】2017年5月16日
(65)【公開番号】特開2018-194388(P2018-194388A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000222222
【氏名又は名称】東洋ガラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(72)【発明者】
【氏名】浅野 穣
(72)【発明者】
【氏名】堀内 祥平
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 義之
(72)【発明者】
【氏名】田所 洋一
(72)【発明者】
【氏名】原田 崇
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 悠貴
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−257677(JP,A)
【文献】 特開2009−162575(JP,A)
【文献】 特開2016−084275(JP,A)
【文献】 中国実用新案第204255750(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
G01N 3/00
G01N 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強度検査装置の調整に用いる調整用ガラスびんを作製する内面加傷方法であって、
ガラスびんの外表面側からレーザー光を照射してガラス内部に集光し、
集光部の熱エネルギーによって、ガラスびんの外表面には到達しない検査用傷をつける内面加傷方法。
【請求項2】
前記検査用傷のガラスびんの内面の開口部径が、60μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の内面加傷方法。
【請求項3】
前記検査用傷を、複数の箇所に設けることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内面加傷方法。
【請求項4】
前記複数の検査用傷を、ガラスびん高さ方向の異なる位置に設けることを特徴とする請求項3に記載の内面加傷方法。
【請求項5】
前記複数の検査用傷は、ガラスびんの厚み方向で異なる位置に集光部が設定されることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の内面加傷方法。
【請求項6】
前記複数の検査用傷は、レーザー光の出力が異なるように設定されることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の内面加傷方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の内面加傷方法に使用する内面加傷装置であって、
ガラスびんを保持する支持ユニットと、レーザー発振器と、前記レーザー発振器から照射されるレーザー光を導く光学系ユニットとを有し、
前記レーザー発振器及び光学系ユニットが、前記支持ユニットに保持されたガラスびんの外面側に配置され、ガラスびんの外表面側からレーザー光を照射してガラス内部に集光するように構成されていることを特徴とする内面加傷装置。
【請求項8】
前記支持ユニットが、強度検査装置の支持ユニットを兼ねていることを特徴とする請求項7に記載の内面加傷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
強度検査装置の調整に用いる調整用ガラスびんを作製する内面加傷方法及び内面加傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスびん等においては、わずかな傷や不純物による強度低下部が存在すると破損する危険が大きいため、ガラスびんの洗浄、充填、梱包等の搬送ラインにおいて、強度低下部が存在するガラスびんを判別して除去する必要があった。
例えば、コンベヤ上を流れるガラスびんに所定の荷重を加えて破壊することで、強度を検査する強度検査装置が公知である(特許文献1、2、3等参照)。
また、本出願人は、ガラスびんに荷重を加えた状態で、光源と偏光子と検光子からなる光学系ユニットによって偏光した光を透過させて、ガラスびんの強度低下部を検出する強度検査装置(特願2017−040207号)を提案した。
これらの強度検査装置を使用して、ガラスびんの良、不良を判別するためには、リファレンスとなる既知の傷を有する調整用ガラスびんを使用して、強度検査装置を調整する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭56−053313号公報
【特許文献2】特公平02−048051号公報
【特許文献3】特許4092375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
強度検査装置の調整は、ガラスびんの種類に応じて、判定すべき必要な強度に応じて、あるいは、強度検査装置自体の誤差を修正するため、強度検査に先駆け、あるいは、所定のタイミング毎に行う必要がある。
特許文献1、2、3等で公知の強度検査装置では、既知の傷を有する調整用ガラスびんを別途作成して強度検査装置にセットして(ラインに流して)調整することとなるが、異なる条件で調整する際には異なる調整用ガラスびんを作製して調整作業を行うこととなり非常に手間がかかるという問題があった。
特に、ガラスびんの内面に傷を有する調整用ガラスびんを作製するのは困難であった。
【0005】
本発明は、前述のような課題を解決するものであり、ガラスびんの内面に傷を有する調整用ガラスびんを容易に作製することができ、強度検査装置の調整が容易となる内面加傷方法及び内面加傷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る内面加傷方法は、強度検査装置の調整に用いる調整用ガラスびんを作製する内面加傷方法であって、ガラスびんの外表面側からレーザー光を照射してガラス内部に集光し、集光部の熱エネルギーによって、ガラスびんの外表面には到達しない傷をつけることにより、前記課題を解決するものである。
また、本発明に係る内面加傷装置は、前述の内面加傷方法に使用する内面加傷装置であって、ガラスびんを保持する支持ユニットと、レーザー発振器と、前記レーザー発振器から照射されるレーザー光を導く光学系ユニットとを有することにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0007】
本請求項1に係る内面加傷方法によれば、ガラスびんの外表面側からレーザー光を照射してガラス内部に集光し、集光部の熱エネルギーによって検査用傷をつけることにより、ガラスびんの中に物品を挿入することなく内面に検査用傷をつけて調整用ガラスびんを作製することが可能となるため、調整用ガラスびんを容易に作製することができ、ガラスびんが強度検査装置の直近やセットされた状態であっても内面に傷をつけることが可能となることから、強度検査装置の調整が容易となる。
また、レーザー光の出力を変更することで傷の大きさを変化させることができ、集光位置を変更することで任意の位置に傷をつけることができるため、異なる調整用ガラスびんを容易に作成でき、異なる条件で強度検査装置を調整する際にも調整作業が容易となる。
【0008】
本請求項2に記載の構成によれば、検査用傷のガラスびんの内面の開口部径が、60μm以下であることにより、検査用傷を正確な内部応力の集中点として機能させることが可能となり、調整用ガラスびんの精度が向上する。
本請求項3乃至請求項6に記載の構成によれば、非破壊で行う強度検査において、単一の調整用ガラスびんで、複数の異なる条件での調整を行うことが可能となり、強度検査装置の調整作業がさらに容易となる。
【0009】
本請求項7に記載の内面加傷装置によれば、ガラスびんを保持する支持ユニットと、レーザー発振器と、レーザー発振器から照射されるレーザー光を導く光学系ユニットとを有することで、ガラスびんの外面からレーザー光を照射し、レーザー光を、ガラスびんを透過させて内表面に集光し、集光部の熱エネルギーによって検査用傷をつけることが可能となる。
また、レーザー発振器及び光学系ユニットが、前記支持ユニットに保持されたガラスびんの外面側に配置されていることにより、ガラスびんの内部に物品を挿入することなく内面に検査用傷をつけて調整用ガラスびんを作製することが可能となる。
本請求項8に記載の構成によれば、支持ユニットが、強度検査装置の支持ユニットを兼ねていることにより、ガラスびんが強度検査装置にセットされた状態で、内面に傷をつけて調整用ガラスびんを作製することが可能となり、強度検査装置の調整がさらに容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る内面加傷方法の説明図。
図2】本発明の内面加傷方法及び内面加傷装置により作製した調整用ガラスびんを観察した参考写真。
図3】本発明の内面加傷方法及び内面加傷装置により作製した調整用ガラスびんが調整用として使用される従来の強度検査装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明の内面加傷方法の一実施形態について説明する。
図1に示すように、レーザー発振器から照射されるレーザー光を、光学系ユニットを介してガラスびんの外表面側から照射してガラス内部に集光し、集光部の熱エネルギーによってガラスびんの外表面には到達しない傷をつける。
本実施形態では、集光位置を、ガラスびんの高さ方向に100μmずつ異なり、ガラスびんの厚み方向に50μmずつ異なる、5箇所に設定されている。
レーザー光の照射エネルギーは各加工あたり1000μJとし、一回の照射パルスで加工した。
なお、図示したガラスびんの外表面、内表面の位置は正確なものではなく、説明のために図に収まるように示したものである。
【0012】
このように、同一の照射エネルギーでもガラスびんの厚み方向に異なる位置とすることで、内表面に現れる傷の大きさの異なるものを加工することができる。
なお、内表面に現れる傷の大きさを変えるために、照射エネルギーや照射パルスの回数を異なるものとしてもよい。
また、内表面に傷が現れず、熱エネルギーによって応力分布の異なる部分がガラス内部に存在するように設定することも可能である。
さらに、肩部や裾部等のガラスびんの形状が変化したり、厚さが一様でない部分では、異なる複数の集光位置で全く同一条件としてもよい。
また、本発明で作製する調整用ガラスびんの色は特に制限はなく、透明の他に、緑色、茶色、青色等、ガラスびんとして使用するいかなる色であってもよい。
【0013】
上述した条件で、ガラスびんの胴部に加工した調整用ガラスびんを観察した写真を図2に示す。
「反射観察」で示した写真では、外表面からの観察となるため、内表面の小さな傷となる上方の3箇所が全く判別できないが、「透過観察」で示す写真では、上方の3箇所の小さな傷も、その周囲の内部応力変化による明るさの変化として観察することができる。
【0014】
次に、本発明の内面加傷方法及び内面加傷装置により作製した調整用ガラスびんを従来の強度検査装置に適用した例について説明する。
図2の最も左に示すのと同様な丸形のガラスびんの肩部、胴部、裾部にそれぞれ本発明の内面加傷方法及び内面加傷装置を用いて加傷し、調整用ガラスびん1を作製した。
作製した調整用ガラスびん1を、上面から見た図3に示す特許文献1に記載の原理的特徴を持つ装置、すなわち押圧パッド3によってガラスびん外側に応力をかけて強度を検査する方式による装置を用いて試験を実施した。試験の結果を表1に示す。試験に用いた従来の強度検査装置は、具体的には、エムハートグラス社製のHST1000であり、試験において設定したエア圧力値は0.18MPaである。
【0015】
【表1】
試験で用いた丸形のガラスびんでは肩部と裾部は他の部分に比べてわずかに径が大きくなるように設計されており、肩部と裾部が強度検査装置における押圧パッド3とスクイーザホイル4とのコンタクト部となり、強い応力が発生する。そのため、コンタクト部の内面に傷や異物があるとその部分を起点に割れが発生する。一方、胴部は強度検査装置の押圧パッド3とスクイーザホイル4とのコンタクト部とはならないため、発生する応力は肩部と裾部よりも弱い。したがって胴部に加傷したガラスびんに著しい強度低下は発生しない。なお、割れが発生したガラスびんは、ガラスびんを側面から押さえて搬送するトランスポータ5を通過する際に落下することで排除される。
このように、本発明に係る内面加傷方法及び内面加傷装置によって作製した調整用ガラスびんを使用して強度検査装置を調整することで、精度のよい強度検査が可能となる。
【符号の説明】
【0016】
1 ・・・ 調整用ガラスびん
2 ・・・ 搬送用コンベア
3 ・・・ 押圧パッド
4 ・・・ スクイーザホイル
5 ・・・ トランスポータ
図1
図2
図3