特許第6865130号(P6865130)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6865130ケーソン刃口の地盤掘残し検知方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865130
(24)【登録日】2021年4月7日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】ケーソン刃口の地盤掘残し検知方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   E02D 23/08 20060101AFI20210419BHJP
【FI】
   E02D23/08 F
   E02D23/08 B
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-145494(P2017-145494)
(22)【出願日】2017年7月27日
(65)【公開番号】特開2019-27080(P2019-27080A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】粥川 幸司
(72)【発明者】
【氏名】増田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】八木 芳行
(72)【発明者】
【氏名】石田 主税
【審査官】 富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 特許第2717874(JP,B2)
【文献】 特開2017−101436(JP,A)
【文献】 特公昭62−32412(JP,B2)
【文献】 米国特許第7921573(US,B1)
【文献】 特開昭62−288218(JP,A)
【文献】 特開平2−112524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D19/00−25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に刃口を有するケーソンをケーソン内部の地盤の掘削に併せて地中に沈下させる各種のケーソン工法に用いるケーソンの前記刃口の内側面における地盤の掘残しを検知するケーソン刃口の地盤掘残し検知方法であって、
前記刃口の内側面の全周方向複数個所に、せん断力計又は土水圧力とせん断力とを同時に測定可能なセンサを配設し、
前記各せん断力計又は前記各センサにより、前記刃口の内側面に作用する地盤からの反力をせん断力として測定して、
当該せん断力に基づいて、前記刃口の内側面における地盤の掘残しの有無を判断する、
ことを特徴とするケーソン刃口の地盤掘残し検知方法。
【請求項2】
ケーソンの刃口の各部においてせん断力計又はセンサにより得たせん断力の各値を、前記刃口各部のせん断力計又はセンサの位置とともに、一般のパーソナルコンピュータ及びソフトウェアを用いてデータ処理し、その結果をパーソナルコンピュータのディスプレイ上に可視化する請求項1に記載のケーソン刃口の地盤掘残し検知方法。
【請求項3】
先端に刃口を有するケーソンをケーソン内部の地盤の掘削に併せて地中に沈下させる各種のケーソン工法に用いるケーソンの前記刃口の内側面における地盤の掘残しを検知するケーソン刃口の地盤掘残し検知システムであって、
前記刃口の内側面の全周方向複数個所に配設され、ケーソン内部の地盤の掘削に併せてケーソンを地中に沈下させる際に、前記刃口の内側面に作用する地盤からの反力をせん断力として測定する複数のせん断力計又は土水圧力・せん断力測定センサと、
前記各せん断力計又は前記各土水圧力・せん断力測定センサに電気的に接続されて、前記ケーソンの外部に設置され、前記各せん断力計又は前記各土水圧力・せん断力測定センサにより測定されたせん断力に基づいて、前記刃口の内側面における地盤の掘残しの有無を判定する判定装置と、
を備える、
ことを特徴とするケーソン刃口の地盤掘残し検知システム。
【請求項4】
土水圧力・せん断力測定センサは、先端に開口を有する略筒状のケースと、前記ケースの開口面内に配置され、前記土水圧力及びせん断力を受ける受圧部と、前記ケース内に設置されて前記受圧部を支持し、前記受圧部が前記土水圧力を受けて前記受圧部を前記ケースの軸心方向に進退可能に歪み変形し、かつ前記受圧部が前記せん断力を受けて前記受圧部を前記ケースの軸心を中心に揺動可能に歪み変形して、前記土水圧力による歪み量及び前記せん断力による歪み量を電気抵抗の変化として検出する感度部とを備える請求項3に記載のケーソン刃口の地盤掘残し検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーソン内部の地盤の掘削に併せてケーソンを地中に沈下させる各種のケーソン工法において、ケーソン内部の地盤を掘削してケーソンを地中に沈下させる際に、ケーソン刃口の内側面に掘り残された地盤(土砂)を検知するのに用いるケーソン刃口の地盤掘残し検知方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
地盤中に基礎や地下構造物を構築する工法として、複数段の区分(ロット)からなるケーソン(断面形状が円形、矩形又は小判形の箱形(筒状)のコンクリート製又は鋼製の構造物)を地中所定の設置深さまで沈下させて設置するオープンケーソン工法、圧入ケーソン工法、ニューマチックケーソン工法など各種のケーソン工法が知られている(例えば、特許文献1、2など参照。)。
図8に示すように、例えば、オープンケーソン工法や圧入ケーソン工法では、まず、先端に刃口C10を有する第1ロットのケーソンC1をケーソンC1の沈下位置に配置し、ケーソンC1内部の底部開口において地盤をクラムシェルバケット(図示省略)などにより掘削してケーソンC1外部に排出し、これに併せてケーソンC1をその自重により又は荷重を載荷することにより地中に沈下させる。続いて、この第1ロットのケーソンC1の上に第2ロットのケーソンC2を継ぎ足して、同様に、第1ロットのケーソンC1内部の底部開口において地盤をクラムシェルバケットなどにより掘削して第1、第2ロットのケーソンC1、C2の外部に排出し、これに併せて第1、第2ロットのケーソンC1、C2を地中に沈下させる。第3ロット以降のケーソンC3についても同様の施工を繰り返す。また、この施工においては、第1ロットのケーソンC1を地中所定の深さまで沈下させたところで、ケーソンCに囲まれた地盤上に水を供給し、ケーソンCに囲まれた地盤を水中掘削しながら、ケーソンCを地中に沈下させていく。そして、複数段のケーソンC1、C2、C3…を地中所定の設置深さまで沈設した後、ケーソンC内の底部に水中コンクリートを打設して底版を施工する。
【0003】
このようなオープンケーソン工法や圧入ケーソン工法では、ケーソン内部で地盤を水中掘削するために、ケーソン刃口の状況を目視することができない。そこで、ケーソンを沈下させる際のケーソンの姿勢制御のための情報を必要とし、その一つとして、通常、ケーソン刃口の刃先に荷重計や土圧計などの土圧センサが設置されて、ケーソンの躯体への地盤反力を測定している。
図9にケーソン刃口の刃先における土圧センサの設置例を示している。
図9に示すように、通常、土圧センサS1はケーソンCの断面内で複数個所に設置される。円形のケーソンCの場合は、図9(a)に示すように、例えば0(12)時、3時、6時、9時の方向に90度間隔で4箇所に設置される。矩形のケーソンCの場合は、図9(b)に示すように、例えば矩形の4頂点(4隅)、4箇所に設置される。なお、大型のケーソンの場合、土圧センサがさらに増設されることがある。
このようにして、ケーソンC内部の地盤を掘削しケーソンCを沈設する際に、ケーソン刃口C10の複数方向の土圧センサS1から得られた測定値及びこれらの値が概ね均等であるか否かを確認する。
【0004】
また、特許文献1のケーソンの沈設方法では、ケーソン刃口に、刃口地山嵌入長さ計、沈下計、傾斜計、土圧計などを設け、ケーソンの沈設途中において、これら刃口地山嵌入長さ計、沈下計、傾斜計、土圧計などにより沈設情況を把握し、これらの情報から、例えばケーソン刃口が傾斜しているような場合はセンタホールジャッキの押圧力を調整して水平バランスをとったり、土圧が高まっているような場合は高圧水噴射管よりケーソン刃口の先端部分に高圧水を供給し砂や礫を吹き飛ばして沈下を容易にしたりするなど、良好な沈設状態を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−268878号公報
【特許文献2】特開平07−48842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のオープンケーソン工法や圧入ケーソン工法では、次のような問題がある。
(1)ケーソン刃口の内側面に地盤の掘り残しがある場合、刃先の土圧センサでは地盤(土砂)の掘残しを検知できない。
(2)特許文献1(の図2)に例示されたケーソンには、ケーソン刃口の内側面に土圧センサが設けられているが、このようにしても、図10(a)に示すように、ケーソン刃口の内側面に地盤の掘残しがある場合、土圧センサにより土水圧が検知され、図10(b)に示すように、ケーソン刃口の内側面に地盤の掘残しがない場合、土圧センサにより水圧が検知されるが、この場合に有効土圧が小さいと、土水圧と水圧の値が近似し、地盤の掘残しの有無を判別することが難しい。
(3)土圧センサではケーソン刃口の内側面に作用するせん断力を検知できない(図10(a)参照)。
以上(1)−(3)により、ケーソン刃口の内側面に地盤(土砂)の掘残しの有無を検知することができないまま、ケーソンの沈設を続けると、土砂の内部摩擦角や粘着力により、ケーソン刃口の内側面にせん断力が発生して、ケーソンが傾斜するおそれがあり、ケーソンの沈設精度が低下して、最終構造物の品質に悪影響を及ぼしかねない。
【0007】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、各種のケーソン工法において、ケーソン刃口の内側面に掘残された地盤の有無を検知できるようにすることにより、ケーソンの刃口の内側面における地盤の掘残しを可及的に少なくして刃口の内側面略全体を確実に掘削することができ、ケーソンの沈設精度を確保して、最終構造物の品質を良好に維持すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、
先端に刃口を有するケーソンをケーソン内部の地盤の掘削、殊に水中での掘削に併せて地中に沈下させる各種のケーソン工法に用いるケーソンの前記刃口の内側面における地盤の掘残しを検知するケーソン刃口の地盤掘残し検知方法であって、
前記刃口の内側面の全周方向複数個所に、せん断力計又は土水圧力とせん断力とを同時に測定可能なセンサを配設し、
前記各せん断力計又は前記各センサにより、前記刃口の内側面に作用する地盤からの反力をせん断力として測定して、
当該せん断力に基づいて、前記刃口の内側面における地盤の掘残しの有無を判断する、
ことを要旨とする。
この場合、ケーソンの刃口の各部においてせん断力計又はセンサにより得たせん断力の各値を、前記刃口各部のせん断力計又はセンサの位置とともに、一般のパーソナルコンピュータ及びソフトウェアを用いてデータ処理し、その結果をパーソナルコンピュータのディスプレイ上に可視化することが好ましい。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明は、
先端に刃口を有するケーソンをケーソン内部の地盤の掘削、殊に水中での掘削に併せて地中に沈下させる各種のケーソン工法に用いるケーソンの前記刃口の内側面における地盤の掘残しを検知するケーソン刃口の地盤掘残し検知システムであって、
前記刃口の内側面の全周方向複数個所に配設され、ケーソン内部の地盤の掘削に併せてケーソンを地中に沈下させる際に、前記刃口の内側面に作用する地盤からの反力をせん断力として測定する複数のせん断力計又は土水圧力・せん断力測定センサと、
前記各せん断力計又は前記各土水圧力・せん断力測定センサに電気的に接続されて、前記ケーソンの外部に設置され、前記各せん断力計又は前記各土水圧力・せん断力測定センサにより測定されたせん断力に基づいて、前記刃口の内側面における地盤の掘残しの有無を判定する判定装置と、
を備える、
ことを要旨とする。
この場合、土水圧力・せん断力測定センサは、先端に開口を有する略筒状のケースと、前記ケースの開口面内に配置され、前記土水圧力及びせん断力を受ける受圧部と、前記ケース内に設置されて前記受圧部を支持し、前記受圧部が前記土水圧力を受けて前記受圧部を前記ケースの軸心方向に進退可能に歪み変形し、かつ前記受圧部が前記せん断力を受けて前記受圧部を前記ケースの軸心を中心に揺動可能に歪み変形して、前記土水圧力による歪み量及び前記せん断力による歪み量を電気抵抗の変化として検出する感度部とを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のケーソン刃口の地盤掘残し検知方法及びシステムによれば、ケーソンの刃口の内側面の全周方向複数個所に配設されたせん断力計又は土水圧力とせん断力とを同時に測定可能なセンサにより、ケーソンの刃口の内側面に作用する地盤からの反力をせん断力として測定し、当該せん断力に基づいて、ケーソン内部の地盤の掘削での刃口の内側面における地盤の掘残しの有無を判断するようにしたので、各種のケーソン工法において、ケーソンの刃口の内側面における地盤の掘残しを可及的に少なくして刃口の内側面の略全体を確実に掘削することができ、ケーソンの沈設精度を確保して、最終構造物の品質を良好に維持することができる、という本発明独自の格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態によるケーソン刃口の地盤掘残し検知方法及びシステムの構成を示す図
図2】同方法及びシステムに用いる土水圧力・せん断力測定センサ(A型)の構成を示す図((a)は側面断面図(b)は正面断面図)
図3】同方法及びシステムに用いる土水圧力・せん断力測定センサ(B型)の構成を示す図((a)は側面断面図(b)は正面断面図)
図4】(a)同方法及びシステムに用いる土水圧力・せん断力測定センサの特に土水圧力測定用歪みゲージにより構成される土水圧力測定用ブリッジ回路の構成を示す図(b)同方法及びシステムに用いる土水圧力・せん断力測定センサの特にせん断力測定用歪みゲージにより構成されるせん断力測定用ブリッジ回路の構成を示す図
図5】(a)同方法及びシステムを適用する円形のケーソンの刃口の内側面における土水圧力・せん断力測定センサの設置例を示す図(b)同方法及びシステムを適用する矩形のケーソンの刃口の内側面における土水圧力・せん断力測定センサの設置例を示す図
図6】同方法及びシステムに用いる判定装置を構成するPC(パーソナルコンピュータ)の構成を示す図
図7】同方法及びシステムによりケーソン刃口の内側面に作用する地盤からの反力を測定して、ケーソン刃口の内側面における地盤の掘残しの有無を判断する態様を示す図((a)は地盤の掘残しがある場合(b)は地盤の掘残しがない場合)
図8】一般のオープンケーソン工法や圧入ケーソン工法の施工状況を示す図
図9】一般のオープンケーソン工法や圧入ケーソン工法に用いられるケーソンの刃口に設置される土圧センサの設置例を示す図((a)は円形のケーソンの場合(b)は矩形のケーソンの場合)
図10】一般のオープンケーソン工法で従来提案されているケーソン刃口の内側面に作用する地盤からの反力を測定する状況を示す図((a)は地盤の掘残しがある場合(b)は地盤の掘残しがない場合)
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
図1にケーソン刃口の地盤掘残し検知方法(以下、単に方法という場合がある。)を示している。
この方法は、先端に刃口を有するケーソンをケーソン内部の地盤の掘削、殊に水中での掘削に併せて地中に沈下させる各種のケーソン工法に用いるケーソンの刃口の内側面における地盤の掘残しを検知するもので、ここでは、オープンケーソン工法や圧入ケーソン工法などに用いるケーソン刃口の地盤掘残し検知方法について例示する。
【0013】
図1に示すように、オープンケーソン工法では、既述のとおり、まず、先端(下端)に刃口C10を有する第1ロットのケーソンC1をケーソンC1の沈下位置に配置し、ケーソンC1内部の底部開口において地盤をクラムシェルバケット(図示省略)などにより掘削してケーソンC1外部に排出し、これに併せてケーソンC1をその自重により又は荷重を載荷することにより地中に沈下させる。続いて、この第1ロットのケーソンC1の上に第2ロットのケーソンC2を継ぎ足して、同様に、第1ロットのケーソンC1内部の底部開口において地盤をクラムシェルバケットなどにより掘削して第1、第2ロットのケーソンC1、C2の外部に排出し、これに併せて第1、第2ロットのケーソンC1、C2を地中に沈下させる。第3ロット以降のケーソンC3についても同様の施工を繰り返す。また、この施工においては、第1ロットのケーソンC1を地中所定の深さまで沈下させたところで、ケーソンCに囲まれた地盤上に水を供給し、ケーソンCに囲まれた地盤を水中掘削しながら、ケーソンCを地中に沈下させていく。そして、複数段のケーソンC1、C2、C3…を地中所定の設置深さまで沈設した後に、ケーソンC内の底部に水中コンクリートを打設して底版を施工する。
【0014】
そして、このようなオープンケーソン工法や圧入ケーソン工法の場合、既述のとおり、ケーソンC内部で地盤を水中掘削するために、ケーソンCの刃口C10の状況を目視することができない。
そこで、この工法では、ケーソンCを沈下させる際のケーソンCの姿勢制御のための情報の一つとして、ケーソン刃口C10の刃先に土圧計などの土圧センサS1を設置して、ケーソンCの躯体への地盤反力を測定し、これに併せて、新たなケーソン刃口C10の地盤掘残し検知方法を取り入れる。
なお、この場合、土圧センサS1には汎用品の土圧計(土圧(圧力)を検知する略平板形状の計測機材で、片側一方の面が圧力を受け反応(受圧)する受圧面になっている。)を用いる。
【0015】
このケーソン刃口の地盤掘残し検知方法では、特に、刃口C10の内側面の全周方向複数個所に、せん断力計又は土水圧力とせん断力とを同時に測定可能な土水圧力・せん断力測定センサを配設し、各せん断力計又は各土水圧力・せん断力測定センサにより、刃口C10の内側面に作用する地盤からの反力をせん断力として測定し、当該せん断力に基づいて、刃口C10の内側面における地盤の掘残しの有無を判断する。
なお、一般にケーソンCは全体が略筒状をなし、特に、第1ロットになるケーソンC1には、先端(下端)に刃口C10を有し、この刃口C10は刃先が断面三角形状に形成され、刃口C10の内側面にテーパが付けられる。また、この場合、刃口C10の刃先先端とこの刃先先端を挟んでその外側面及び内側面の一部には刃口金物C11が装着される。複数のせん断力計又は土水圧力・せん断力測定センサは刃口C10のテーパを付けられた内側面に所定の高さにかつ全周方向に所定の間隔で設置される。
【0016】
この場合、汎用品のせん断力計(せん断力を感知する略平板形状の計測機材で、片側一方の面が圧力を受け反応(感知)する受感面になっている。)が用いられてもよいが、ここでは特に、土水圧力とせん断力とを同時に測定可能な土水圧力・せん断力測定センサS2を採用する。この土水圧力・せん断力測定センサS2についてはシステムの説明の欄で併せて説明する。
【0017】
このようにしてケーソンCの刃口C10の内側面各部において土水圧力・せん断力測定センサS2により得たせん断力の各値を、刃口C10各部の土水圧力・せん断力測定センサS2の設置位置とともに、一般のパーソナルコンピュータ及びソフトウェアを用いてデータ処理し、その結果をパーソナルコンピュータのディスプレイ上に可視化する。
【0018】
図1にケーソン刃口の地盤掘残し検知システム(以下、単にシステムという場合がある。)を併せて示している。このシステムは、先端に刃口を有するケーソンをケーソン内部の地盤の掘削に併せて地中に沈下させる各種のケーソン工法に用いるケーソンの刃口の内側面における地盤の掘残しを検知するもので、ここでは、オープンケーソン工法や圧入ケーソン工法などに用いるケーソン刃口の地盤掘残し検知システムについて例示する。
【0019】
図1に示すように、このケーソン刃口の地盤掘残し検知システムは、刃口C10の内側面の全周方向複数個所に配設され、ケーソンC内部の地盤の水中掘削に併せてケーソンCを地中に沈下させる際に、刃口C10の内側面に作用する地盤からの反力をせん断力として測定する複数のせん断力計又は土水圧力・せん断力測定センサ(S2)と、各せん断力計又は各土水圧力・せん断力測定センサ(S2)に電気的に接続されて、ケーソンCの外部に設置され、各せん断力計又は各土水圧力・せん断力測定センサ(S2)により測定されたせん断力に基づいて、刃口C10の内側面における地盤の掘残しの有無を判定する判定装置D(図6参照)とを備えて構成される。
【0020】
この場合、せん断力計又は土水圧力・せん断力測定センサのいずれを用いてもよいが、ここでは特に、土水圧力・せん断力測定センサS2が採用される。なお、せん断力計を採用する場合は、汎用品のせん断力計で差し支えない。
【0021】
図2図3に示すように、土水圧力・せん断力測定センサS2(以下、単にセンサS2ということがある。)は、先端に開口30を有する略筒状のケース3と、ケース3の開口30面内に配置され、土水圧力及びせん断力を受ける受圧部4と、ケース3内に設置されて受圧部4を支持し、受圧部4が土水圧力を受けて受圧部4をケース3の軸心方向に進退可能に歪み変形し、かつ受圧部4がせん断力を受けて受圧部4をケース3の軸心を中心に揺動可能に歪み変形して、土水圧力による歪み量及びせん断力による歪み量を電気抵抗の変化として検出する感度部5とを備えて構成される。
【0022】
このセンサS2は、基本的に、ケーソンCの刃口C10の内側面に埋め込み設置されるが、ケーソンCにはさまざまな形状のものがあるため、設置形式の異なるA型、B型の2種類のセンサS2(A)、(B)が用意されている。これらのセンサS2(A)、(B)はケース3(3A、3B)の形状のみが若干異なり、ケース3内部の構造は共通である。
【0023】
A型のセンサS2(A)のケース3Aは、図2に示すように、先端に受圧部4を配置可能な開口30を有し、後端に感度部5のための取付基部33を有する有底円筒状のケース本体31と、ケース本体31の周面の後端にケース本体31の軸方向に対して略直角に外側に向けて円形に張り出され、外周端に取付ねじのための取付穴34aを有する取付フランジ32aとからなる。
このケース3Aの場合、ケース本体31の外周面の先端に浅い溝310aが全周に形成され、この溝310aに断面L字形の円形のリング部材からなる土砂浸入防止リング311aがケース本体31の外周面に一体的に環装されて、この土砂浸入防止リング311aによりケース本体31の先端開口30と受圧部4との間の隙間が覆われ、この隙間から土砂が侵入するのを防止する。ケース本体31の後端は底部として塞がれていて、その内側の面の中央に感度部5のための取付基部33が形成される。取付基部33は感度部5の基端面の大きさより大きい円形の凹状に形成され、その中心から半径方向所定の位置に複数のねじ挿通部331が穿たれる。また、この取付基部33とは反対側の外側の面にはその中央に取付基部33よりも大きい円形の浅い凹部36を形成され、凹部36の中心と外周との間に円形の凸状部37が突設されるとともに、この凸状部37の外側で凹部36の外周近傍の所定の位置に複数のねじ孔38が形成され、さらに、この凸状部37と各ねじ孔38との間に円周方向に幅狭の浅い溝39を形成されて、測定ケーブルチャンバー6のための取付部35が設けられる。なお、この取付フランジ32の取付基部33と取付部35との間には貫通穴(図示省略)が形成され、この貫通穴に感度部5の電気信号を外部に導出するための端子部(図示省略)が併せて設けられる。この取付部35に取り付けられる測定ケーブルチャンバー6は全体が略ハット形に形成され、一端が肉厚で、その中心にケーブル挿通部60を有する円筒部61と、この円筒部61の他端に外周方向に向けて円形に張り出され、その外周近傍の所定の位置に複数のねじ挿通部63を有する取付フランジ62とからなる。この測定ケーブルチャンバー6はケーブル挿通部60に測定ケーブル7をグランドパッキン64を介して挿通され、取付部35の溝39に防水Oリング65が嵌着されて、円筒部61の他端が取付部35の凸状部37の外周面に嵌合されるとともに、取付フランジ62が取付部35の凹部36に嵌め込まれ、取付ねじ66を測定ケーブルチャンバー6の取付フランジ62のねじ挿通部63を通し取付部35のねじ孔38に締結して、チャンバー6内部を水密に密閉して取り付けられる。なお、この測定ケーブルチャンバー6に通された測定ケーブル7は取付基部33と取付部35との間に設けられる端子部に電気的に接続される。また、このケース3Aの取付フランジ32aの各取付穴34aは全体が同径の円筒形で、取付ねじのねじ部のみが挿通可能になっている。なお、この取付穴34aは、取付ねじのねじ部が挿通可能な小径のねじ挿通部と取付ねじの頭部が嵌合可能な大径の頭部嵌合部とからなり、取付ねじを取付フランジ32aの後面と面一に埋め込む形式としてもよい。
【0024】
B型のセンサS2(B)のケース3Bは、図3に示すように、先端に受圧部4を配置可能な開口30を有し、後端に感度部5のための取付基部33を有する有底円筒状のケース本体31と、ケース本体31の周面の先端にケース本体31の軸方向に対して略直角に外側に向けて円形に張り出され、外周端に取付ねじのための取付穴34bを有する取付フランジ32bとからなる。
このケース3Bの場合、ケース本体31先端の開口30縁部全周に浅い溝310bが円周方向に形成され、この溝310bに平坦形の円形のリング部材からなる土砂浸入防止リング311bがケース本体31の開口30縁部に一体的に環装されて、この土砂浸入防止リング311bによりケース本体31の先端開口30と受圧部4との間の隙間が覆われ、この隙間から土砂が侵入するのを防止する。ケース本体31の後端は、A型のケース3Aと同様で、底部として塞がれ、その内側の面に感度部5のための取付基部33が形成され、外側の面に取付部35が設けられ、取付部35に測定ケーブルチャンバー6が取り付けられる(図1参照)。また、このケース3Bの取付フランジ32bの各取付穴34bは、取付ねじのねじ部が挿通可能な小径のねじ挿通部と取付ねじの頭部が嵌合可能な大径の頭部嵌合部とからなり、取付ねじを取付フランジ32bの前面と面一に埋め込む形式になっている。
【0025】
受圧部4は、図2図3に示すように、ケース3内で感度部5の先端に取り付けられる円形の支持板42と、支持板42に取り付けられ、ケース3の開口30面内に配置される円形の受圧板41とからなる。
この受圧部4の場合、支持板42はケース本体31内に嵌合可能にケース本体31の内径と略同じ又は僅かに小さい外径を有する円形の板からなり、その片側一方の面はフラットで、片側他方の面は中央に円形の凹部420を形成されて、その底部の直径上の位置に複数のねじ挿通孔421が片側一方の面に貫通して穿たれ、この凹部420の外側に周方向に等間隔に複数のねじ孔422が形成され、さらに、外周面には軸方向中間部に幅狭の浅い溝423が全周に亘って形成され、この溝423に防水Oリング424が嵌着される。受圧板41は支持板42と同様にケース本体31の先端開口30内に嵌合可能に開口30の内径と略同じ又は僅かに小さい外径を有する円形の板からなり、その片側一方の面の中央には支持板42の凹部420に対して奥側に所定のスペースを残して嵌入可能に円形の凸部411が形成されるとともに、この凸部411の外周に幅狭の浅い溝412が全周に亘って形成され、さらに、外周部には支持板42の各ねじ孔422に連通可能に周方向に等間隔に複数のねじ挿通孔413が形成される。受圧部4はこのような構成からなり、支持板42が片側一方の面を後述する感度部5の先端に向けて感度部5に複数の取付ねじ43を介して取り付けられた後、受圧板41が支持板42の片側他方の面に複数の取付ねじ44を介して取り付けられる。この点は後述する。
【0026】
感度部5は、図2図3に示すように、受圧部4を先端に支持し、受圧部4が土水圧力を受けてその土水圧力に応じて歪み変形し、受圧部4がせん断力を受けてそのせん断力に応じて歪み変形する起歪体51と、起歪体51の歪みの発生位置に貼着され、受圧部4の受ける土水圧力を測定する土水圧力測定用歪みゲージ52及び受圧部4の受けるせん断力を測定するせん断力測定用歪みゲージ53とを有する。
この感度部5の場合、平行板ばね型のロードセルが採用され、起歪体51はニッケルクロムモリブデン鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金などからなる弾性体の長方形のブロックで上下に薄肉の歪み部を有し、土水圧力測定用、せん断力測定用の各歪みゲージ52、53は起歪体51の上下の各面において幅方向中央を境に対称的な配置で、土水圧力測定用の歪みゲージ52が起歪体51の上下の歪み部にそれぞれ2箇所ずつ合計4か所に貼着され、せん断力測定用の歪みゲージ53が起歪体51の上下の歪み部にそれぞれ2箇所ずつ合計4か所に貼着される。そして、これら4つの土水圧力測定用歪みゲージ52、せん断力測定用の歪みゲージ53はそれぞれ、図4(a)、(b)にR1,R2,R3,R4で示すように、ブリッジ回路に接続されて、土水圧力測定用ブリッジ回路52C、せん断力測定用ブリッジ回路53Cが構成され、これらのブリッジ回路52C、53Cの入力端及び出力端がそれぞれ、ケース3の取付フランジ32に設けられる端子部に電気的に接続されて、各ブリッジ回路52C、53Cから得られる電気信号が測定ケーブル7により外部に導出される。
また、この感度部5の場合、起歪体51の先端部に受圧部4の支持板42の各ねじ挿通孔421に連通可能に複数のねじ孔511が形成され、起歪体51の基端部にケース3の取付フランジ32の各ねじ挿通部331に連通可能に複数のねじ孔512が形成される。このようにして感度部5は起歪体51の基端部が取付フランジ32の内面の取付基部33に当接して設置された状態で、取付ねじ54を取付フランジ32の外側から各ねじ挿通部331に通し、感度部5(起歪体51)の基端部の各ねじ孔512に締結して固定される。そして、ケース3に固定された感度部5(起歪体51)の先端部に支持板42が取り付けられて、この支持板42に受圧板41が取り付けられる。この場合、支持板42は片側一方の面を感度部5に向けてケース3内に挿入され、支持板42の中央が感度部5の先端に当接されて、この状態で取付ねじ43を支持板42の各ねじ挿通孔421を通し感度部5先端の各ねじ孔511に締結して固定される。そして、受圧板41は片側一方の面の凸部411外周の溝412に防水Oリング414を嵌着され、この凸部411が支持板42の凹部420に嵌合されて、受圧板41の片側一方の面と支持板42の片側他方の面が面接触され、この状態で取付ねじ44を受圧板41の外周部の各ねじ挿通孔413に通し、支持板42の外周部の各ねじ孔422に締結して固定される。なお、これにより、ケース3内部はケース3と支持板42との間の防水Oリング424により、支持板42と受圧板41との間が防水Oリング414により水密に密閉される。
【0027】
図5にケーソン刃口の内側面における土水圧力・せん断力測定センサの設置例を示している。
図5に示すように、複数の土水圧力・せん断力測定センサS2は、既述のとおり、刃口C10のテーパが付けられた内側面に所定の高さにかつ全周方向に所定の間隔で設置される。これらのセンサS2は、刃口C10の内側面における地盤の掘残しの有無を検知することが目的であるので、刃口C10の内側面において刃口C10の刃先先端の土圧センサS1の位置に対応する位置に追加的に配置されることが望ましい。したがって、通常、土圧センサS1がケーソンCの断面内で複数個所に設置される。円形のケーソンCの場合、図5(a)に示すように、土圧センサS1が、例えば0(12)時、3時、6時、9時の方向に90度間隔で4箇所に設置されるので、土水圧力・せん断力測定センサS2は、これらの4箇所に対応して(つまり、刃口C10内側面の0(12)時、3時、6時、9時の方向に90度間隔で)刃口C10の内側面の所定の高さに4箇所、さらに、これら4箇所の中間位置に4箇所、合計8箇所に設置される。矩形のケーソンCの場合、図5(b)に示すように、土圧センサS1が、例えば矩形の4頂点(4隅)、4箇所に設置されるので、土水圧力・せん断力測定センサS2は、これらの4箇所に対応して(つまり、刃口C10内側面の矩形の4頂点(4隅)で)刃口C10の内側面の所定の高さに4箇所、さらに、これら4箇所の中間位置に4箇所、合計8箇所に設置される。なお、ケーソンが大型の場合は、土圧センサとともに土水圧力・せん断力測定センサがさらに増設されることがある。
また、この場合、各土水圧力・せん断力測定センサS2は刃口C10内側面に受圧部4の受圧板41が刃口C10の内側面に面一となるように埋め込み設置される。なお、各土水圧力・せん断力測定センサS2は、各センサS2の埋め込み位置が刃口C10の躯体であれば、受圧部4の受圧板41が躯体と面一になるように、各センサS2の埋め込み位置が刃口金物C11であれば、受圧部4の受圧板41が刃口金物C11と面一になるように、刃口C10の内側面に埋め込まれ、各センサS2の取付フランジ32が取付ねじにより刃口C10の内側面に固定されて設置される。
【0028】
このようにして土水圧力・せん断力測定センサS2は、各種のケーソンCの刃口C10の内側面の複数個所に設置され、刃口C10の内側面各部において各センサS2により、刃口C10の内側面の地盤、泥水による土水圧力及び地盤によるせん断力を同時に測定できるようになっている。
【0029】
判定装置Dは、一般のPC(パーソナルコンピュータ)及びソフトウェアにより実現される。
PCは汎用品が採用され、図6に示すように、ケーソンの刃口の内側面の地盤(土砂)のせん断力を測定するための各種指示が入力される操作入力部aと、刃口の内側面の地盤のせん断力を測定するための既存の各種アプリケーション(ソフトウェア)及びデータが格納される記憶部bと、刃口の内側面の地盤の土水圧力及びせん断力を測定するための情報或いは処理結果を表示する表示部cと、外部記録媒体に格納された各種のデータを読み出すデータ読取部dと、データ収集ユニットから送付されたデータを受信する通信部eと、上記各機能部の動作をコントロールしまた各種演算処理を行う制御部fとにより構成される。この場合、操作入力部aは、キーボード、タッチパネルなどのデータ入力機器により構成され、この操作入力部aにより、制御部fにおける各種処理動作に必要なコマンド及びデータが入力される。記憶部bは、土水圧力・せん断力測定センサS2からの計測データに基づいて刃口の内側面各部に発生する土水圧力及びせん断力を測定する手段としての処理プログラムを含む各種のプログラムが格納される読み出し専用メモリ(ROM)と、処理動作に際してデータの書き込み、読み出しが実行されるランダムアクセスメモリ(RAM)と、刃口の内側面各部に発生する土水圧力及びせん断力を測定して得られたデータを格納する計測データメモリとを有しており、それぞれのメモリが必要に応じて使用される。表示部cは液晶その他のディスプレイ機器からなり、刃口の内側面各部に発生する土水圧力及びせん断力により得られた刃口の内側面に掘残された土砂の有無などこのシステムの動作中における種々の状態情報や処理情報などが表示される。データ読取部dとしては各種のメモリカードスロット、各種のカードメモリリーダー/ライター、各種のディスクドライバーなど各種のインタフェース機器が用いられる。通信部eはデータ収集ユニットから通信により送られてきた記録データを受信するためにインターネットなどの公衆通信ネットワークに接続される。制御部fはマイクロコンピュータなどからなり、各種の測定データなどのデータ処理を実行し、その結果をサーバへ送付したりする。
【0030】
判定装置Dはこのような装置構成からなり、各土水圧力・せん断力測定センサS2の測定ケーブル7とPCが接続されて、刃口の内側面各部に発生し、刃口の内側面各部に設置された各センサS2により測定された土水圧力、せん断力の計測データはPCの処理プログラムでデータ処理され、その結果がPCのディスプレイに表示される。
なお、各土圧センサS1についても同様で、各土圧センサS1の測定ケーブルとPCが接続されて、刃口の先端各部に発生し、刃口の先端各部に設置された各土圧センサS1により測定された土圧の計測データはPCの処理プログラムでデータ処理され、その結果がPCのディスプレイに表示される。
【0031】
図7にオープンケーソン工法や圧入ケーソン工法などの工事に取り入れたケーソン刃口の地盤掘残し検知方法及びシステムにより、ケーソンの刃口の内側面に作用する地盤からの反力を測定して、刃口の内側面における地盤の掘残しの有無を判断する態様を示している。
【0032】
図7に示すように、オープンケーソン工法により、先端に刃口C10を有する第1ロットのケーソンC1、第2ロットのケーソンC2が順次沈下され、ケーソンC内部の底部開口において地盤を水中掘削してケーソンC外部に排出する間、ケーソン刃口C10の刃先の各土圧センサS1では、ケーソン刃口C10の刃先への地盤反力が測定され、これらが電気信号として測定ケーブルにより外部に出力され、測定ケーブルに接続されたPCのディスプレイ上に表示される。ケーソンCでの作業者は、PCのディスプレイ上でケーソンC刃先各部での測定値及びこれらが概ね均等であることを確認しつつ、ケーソンCの躯体の姿勢を制御する。
【0033】
また、図7に示すように、ケーソン刃口C10の内側面の各土水圧力・せん断力測定センサS2では、ケーソン刃口C10の内側面への地盤反力が測定される。
この場合、ケーソン刃口C10の内側面に埋設された各センサS2で、受圧部4が土水圧力や水圧など受圧部4の受圧面に対して略垂直の圧力を受けると、(図2図3参照)受圧部4が感度部5の起歪体51の歪み変形によりケース3の開口30面内の定位置からケース3の基端側に後退し、このときの起歪体51の歪み量が土水圧力測定用の4つの歪みゲージ52の抵抗変化により電気信号として測定される。なお、受圧部4は土水圧力を受けない状態では、起歪体51の弾性復帰により受圧部4がケース3の開口30面内の定位置に戻される。このようにして各センサS2により、地盤掘削中の土水圧や水圧が測定される。
また、ケーソン刃口C10の内側面に土砂が残っていると、土砂の内部摩擦角や粘着力により、刃口C10の内側面にせん断力が発生し、受圧部4でこのせん断力、つまり、受圧部4の受圧面に対して略平行の力を受けると、(図2図3参照)受圧部4が感度部5の起歪体51の歪み変形によりケース3の開口30面内で揺動し、このときの起歪体51の歪み量がせん断力測定用の4つの歪みゲージ53の抵抗変化により電気信号として測定される。なお、受圧部4がせん断力を受けない状態では、起歪体51の弾性復帰により受圧部4がケース3の開口30面内の定位置に戻される。
そして、これらの電気信号は測定ケーブル7により外部に出力され、各測定値が測定ケーブル7に接続されたPCのディスプレイ上に表示される。
かくして、ケーソンC内部の地盤の掘削後、刃口C10の内側面に地盤の掘残しがある場合は、図7(a)に示すように、各センサS2で土水圧が検知され、掘残しがない場合は、図7(b)に示すように、各センサS2で水圧が検知され、この場合に、有効土圧が小さいと土水圧と水圧の値が近くなって土砂の掘残しの有無の判別が難しいが、これらのセンサS2では、刃口C10の内側面に発生するせん断力を検知するので、刃口C10の内側面に地盤の掘残しがある場合は、図7(a)に示すように、刃口C10の内側面に発生するせん断力を検知して、この測定値がPCのディスプレイに表示される。この場合、ケーソンCでの作業者は、地盤の掘残しがあると判定できる。また、刃口C10の内側面に土砂の掘残しがない場合は、、図7(b)に示すように、刃口C10の内側面には水圧のみでせん断力は発生しないため、せん断力を「0」と検知して、この測定値がPCのディスプレイに表示され、ケーソンCでの作業者は、土砂の掘残しがないと判定できる。土砂の掘残しがあった場合は、ケーソンCでの作業者は、この掘残しを掘削しなおして、排出することができる。そして、この掘残しの掘削排出後、掘残しがないことがセンサS2で検知され、これをPCのディスプレイで確認することができる。
【0034】
以上説明したように、このケーソン刃口の地盤掘残し検知方法及びシステムによれば、ケーソンCの刃口C10の内側面の全周方向複数個所に配設されたせん断力計又は土水圧力とせん断力とを同時に測定可能なセンサにより、ここでは土水圧力・せん断力測定センサS2により、ケーソンCの刃口C10の内側面に作用する地盤からの反力をせん断力として測定し、このせん断力に基づいて、ケーソンC内部の地盤の掘削での刃口C10の内側面における地盤の掘残しの有無を判断するようにしたので、オープンケーソン工法や圧入ケーソン工法の各工事において、ケーソンCの刃口C10の内側面における地盤の掘残しを可及的に少なくして刃口C10の内側面の略全体を確実に掘削することができる。これにより、ケーソンCの沈設精度を確保して、最終構造物の品質を良好に維持することができ、さらに、ケーソンCの沈設を中断して再度掘削を行うなどの作業の手戻りを防ぐことができ、ケーソンCの沈設工程の遅延を防止することができる。
【0035】
なお、上記実施の形態では、このケーソン刃口の地盤掘残し検知方法及びシステムについて、円形のケーソンと矩形のケーソンを例示したが、小判状のケーソンでも同様に適用できることは言うまでもない。
また、上記実施の形態では、この方法及びシステムについて、オープンケーソン工法や圧入ケーソン工法に適用するものとして説明したが、ニューマチックケーソン工法など他のケーソン工法にも同様に利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
C ケーソン
C1 第1ロットのケーソン
C10 刃口
C11 刃口金物
C2 第2ロットのケーソン
C3 第3ロットのケーソン
S1 土圧センサ
S2 土水圧力・せん断力測定センサ
3(3A、3B) ケース
30 開口
31 ケース本体
310a、310b 溝
311a、311b 土砂浸入防止リング
32a、32b 取付フランジ
33 取付基部
331 ねじ挿通部
34a、34b 取付穴
35 取付部
36 凹部
37 凸状部
38 ねじ孔
39 溝
4 受圧部
41 受圧板
411 凸部
412 溝
413 ねじ挿通孔
414 防水Oリング
42 支持板
420 凹部
421 ねじ挿通孔
422 ねじ孔
423 溝
424 防水Oリング
43 取付ねじ
44 取付ねじ
5 感度部
51 起歪体
511 ねじ孔
512 ねじ孔
52 土水圧力測定用歪みゲージ
52C 土水圧力測定用ブリッジ回路
53 せん断力測定用歪みゲージ
53C せん断力測定用ブリッジ回路
54 取付ねじ
6 測定ケーブルチャンバー
60 ケーブル挿通部
61 円筒部
62 取付フランジ
63 ねじ挿通部
64 グランドパッキン
65 防水Oリング
66 取付ねじ
7 測定ケーブル
P1 A型の取付部
P2 B型の取付部
D 判定装置
PC パーソナルコンピュータ
a 操作入力部
b 記憶部
c ディスプレイ
d データ読取部
e 通信部
f 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10