特許第6865166号(P6865166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6865166均質化したたばこ材料のキャストウェブの製造のためのキャスティング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865166
(24)【登録日】2021年4月7日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】均質化したたばこ材料のキャストウェブの製造のためのキャスティング装置
(51)【国際特許分類】
   A24B 3/14 20060101AFI20210419BHJP
【FI】
   A24B3/14
【請求項の数】16
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-531534(P2017-531534)
(86)(22)【出願日】2015年12月16日
(65)【公表番号】特表2018-500017(P2018-500017A)
(43)【公表日】2018年1月11日
(86)【国際出願番号】EP2015079961
(87)【国際公開番号】WO2016096963
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2018年10月19日
(31)【優先権主張番号】14198173.8
(32)【優先日】2014年12月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ソー シュウ ホック
(72)【発明者】
【氏名】クリプフェル ヨリック
(72)【発明者】
【氏名】ポッツィ ラファエーレ
(72)【発明者】
【氏名】コンティ ファビオ
【審査官】 礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−538151(JP,A)
【文献】 米国特許第03261893(US,A)
【文献】 米国特許第05697385(US,A)
【文献】 国際公開第2014/084306(WO,A1)
【文献】 特表2005−524405(JP,A)
【文献】 特開平05−192627(JP,A)
【文献】 特開平09−192569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 1/00 − 15/42
B29C 41/00 − 41/52
B05C 5/00 − 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
均質化したたばこ材料のキャストウェブの製造のためのキャスティング装置であって、
前記均質化したたばこ材料のスラリーを保持するように適合されたキャスティングボックスと、
移動可能な支持体と、
前記キャストウェブを形成するために、前記キャスティングボックスに保持された前記スラリーを前記移動可能な支持体上にキャストするように適合されたキャスティングブレードとを備え、
前記キャスティング装置が、前記キャスティングブレードに、それぞれ第一、第二および第三の位置に結合された第一、第二および第三のアクチュエータをさらに備え、前記第一、第二および第三のアクチュエータが、それぞれ前記第一、第二および第三の位置で前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の距離を変化させるのに適している、キャスティング装置。
【請求項2】
前記第一、第二および第三のアクチュエータが、それぞれ前記第一、第二および第三の位置で、相互には無関係に前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の距離を変化させるよう作動できるように構成されている、請求項1に記載のキャスティング装置。
【請求項3】
前記第一および第二の位置が、それぞれ前記キャスティングブレードの第一および第二の長軸方向の端部に位置し、また前記第三の位置が前記キャスティングブレードの前記第一および第二の長軸方向の端部間に位置する、請求項1または2に記載のキャスティング装置。
【請求項4】
前記第一、第二または第三のアクチュエータの前記第一、第二、または第三の位置のうち少なくとも一つの、前記キャスティングブレードに沿った横断方向の変位を許容する横断方向の変位手段をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のキャスティング装置。
【請求項5】
前記キャスティングブレードに結合された複数の微調整要素を備え、各微調整要素が前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の前記距離が局所的に変化するように適合されており、前記微調整要素が前記キャスティングブレードの長軸方向の幅に沿って約5cm〜約12cmおきに一つの微調整要素の割合で配置されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のキャスティング装置。
【請求項6】
前記微調整要素のうち少なくとも一つが、前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の前記距離が局所的に変化するように約1μm〜約200μmを含む値で適合される、請求項5に記載のキャスティング装置。
【請求項7】
前記微調整要素が、それぞれ前記移動可能な支持体に対してねじを締めたり緩めたりした時に前記キャスティングブレードを上げ下げするよう適合されたねじを備える、請求項5または6に記載のキャスティング装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のキャスティング装置であって、
センサーと、
前記センサーとの間で信号の送受信を行い、かつ前記第一、第二および第三のアクチュエータとの間で信号の送受信を行うように適合された制御ユニットとを備え、
前記センサーが、前記キャストウェブまたは前記スラリーのパラメータを検出し、かつ対応する信号を前記制御ユニットに送信するように適合され、さらに前記第一、第二または第三のアクチュエータにコマンド信号を送信してそれぞれ前記第一、第二、または第三のアクチュエータを作動させるように適合される、キャスティング装置。
【請求項9】
制御ユニットおよび信号を前記制御ユニットへ送信するように適合された一つ以上のセンサーを備え、前記一つ以上のセンサーが、
前記移動可能な支持体上にキャストされる前記キャストウェブ上のドラッガーを特定するセンサーと、
前記移動可能な支持体上にキャストされる前記キャストウェブの水分を判定するセンサーと、
前記移動可能な支持体上にキャストされる前記キャストウェブの厚さまたは厚さの変化を測定するセンサーと、
前記キャスティングボックス内の前記スラリーの粘性を測定するセンサーと、
前記キャスティングボックス内の前記スラリーの温度を測定するセンサーと、
前記移動可能な支持体上にキャストされる前記キャストウェブ上の欠陥の位置を検出するセンサーと、
前記キャスティングボックス内の前記スラリーの密度を検出するセンサーと、
上述のセンサーの二つ以上の組み合わせとを備える、請求項1〜8のいずれか1項に記載のキャスティング装置。
【請求項10】
前記制御ユニットが、フィードバックループを実施するために前記センサーの一つ以上から受信した信号に応じて、前記第一、第二、または第三のアクチュエータに命令するように適合されて、前記信号に応じて前記一つ以上のセンサーによって検出されたパラメータの一つ以上を変化させる、請求項9に記載のキャスティング装置。
【請求項11】
前記キャスティングブレードが、ブレード端を画定する横断断面を有し、前記ブレード端が、第一の曲率半径を有する第一の円弧および第二の曲率半径を有する第二の円弧を含むか、または前記ブレード端が楕円の一部分を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のキャスティング装置。
【請求項12】
均質化したたばこ材料のキャストウェブを形成するための方法であって、
前記均質化したたばこ材料のスラリーをキャスティングボックス内に導入する工程と、
キャスティングブレードの手段により、キャストウェブを形成するように前記スラリーを移動可能な支持体上にキャスティングする工程と、
前記キャストウェブまたは前記スラリーのパラメータを決定する工程と、
前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の距離を前記パラメータの関数として変化する工程とを含み、
前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の前記距離を前記パラメータの関数として変化する工程が、前記キャスティングブレードにそれぞれ第一、第二および第三の位置で結合された第一、第二および第三のアクチュエータを動作する工程を含み、前記第一、第二および第三のアクチュエータのそれぞれが、前記第一、第二および第三の位置での前記移動可能な支持体からの前記キャスティングブレードの距離を変化させるのに適している、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記キャストウェブをキャスティングする前に、
前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の前記距離を複数の位置で微調整する工程を含み、前記位置が前記キャスティングブレードの長軸方向の幅に沿って約5cm〜12cmの距離で相互に間隙を介している、方法。
【請求項14】
請求項12〜13のいずれか1項に記載の方法であって、前記キャスティングウェブまたは前記スラリーのパラメータを決定する工程が、
前記キャストウェブ上のドラッガーの存在を検出する工程と、
前記移動可能な支持体上にキャストされた前記キャストウェブの水分を決定する工程と、
前記移動可能な支持体上にキャストされる前記キャストウェブの厚さまたは厚さの変化を測定する工程と、
前記キャスティングボックス内の前記スラリーの粘性を測定する工程と、
前記キャスティングボックス内の前記スラリーの温度を測定する工程と、
前記移動可能な支持体上にキャストされる前記キャストウェブ上の欠陥の存在を検出する工程と、
前記移動可能な支持体上にキャストされる前記キャストウェブ上の欠陥の位置を検出する工程と、
前記キャスティングボックス内の前記スラリーの密度を検出する工程と、
上述の工程の二つ以上の組み合わせとを備える、方法。
【請求項15】
前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の前記距離を前記パラメータの関数として変化する、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法が、
前記キャスティングブレードを非線形形状に曲げる工程を含む、方法。
【請求項16】
前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の前記距離を変化する工程が、約0.1mm〜約2mmである前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の平均距離を取得する工程を含む、請求項12〜15のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均質化したたばこ材料のキャストウェブを製造するためのキャスティング装置に関する。特に、本発明は、例えば、紙巻たばこまたは「燃やさない加熱式」たばこを含有する製品などのエアロゾル発生物品で使用する均質化したたばこ材料のキャストウェブを製造するためのキャスティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日では、たばこ製品の製造では、たばこ葉の他に均質化したたばこ材料も使用される。この均質化したたばこ材料は、例えば、たばこ茎またはたばこダストなどの、一般にカットフィラーの製造にあまり適していないたばこ植物の部分から製造される。一般に、たばこダストは製造中にたばこ葉の取り扱いの間に副産物として作り出される。
【0003】
均質化したたばこ材料の最も一般的に使用される形態は、再構成たばこシートおよびキャストリーフである。均質化したたばこ材料シートを形成するプロセスは、一般的にスラリーを形成するためにたばこダストと結合剤とを混合する工程を含む。次にスラリーは、例えば、いわゆるキャストリーフを製造するために粘性のあるスラリーを移動する金属ベルト上にキャスティングすることによってたばこウェブを作り出すために使用される。あるいは、再構成たばこを作り出すために、粘性が低くかつ水含有量が高いスラリーを製紙と似たプロセスで使用することができる。調製されると、紙巻たばこおよび他の喫煙物品のために適切なたばこカットフィラーを製造するための葉たばこと類似した様式で、均質化したたばこウェブを切断してもよい。このような均質化したたばこを作成するプロセスは、例えば、欧州特許第EP0565360号に開示されている。
【0004】
「燃やさない加熱式」エアロゾル発生物品では、エアロゾル形成基体はエアロゾルを形成するがたばこ材料の燃焼は防止するために、比較的低い温度に加熱される。さらに、均質化したたばこ材料中に存在するたばこは、一般にたばこのみであるか、または大部分がこのような「燃やさない加熱式」エアロゾル発生物品の均質化したたばこ材料中に存在するたばこを含む。これは、このような「燃やさない加熱式」エアロゾル発生物品によって発生されるエアロゾル組成が実質的に均質化したたばこ材料のみに基づくことを意味する。従って、例えば、エアロゾルの味わいの制御のためには、均質化したたばこ材料の組成にわたる良好な制御を有することが重要である。
【0005】
例えば、スラリーの濃度、粘度、繊維のサイズ、粒度、湿気または経時などのスラリーの物理的特性の変化によって、均質化したたばこのウェブのキャスティング中に、標準的なキャスティング方法およびキャスティング装置が、支持体上のスラリーのアプリケーションに意図しない変化をもたらす場合がある。最適に満たないキャスティング方法およびキャスティング装置は、均質化したたばこのキャストウェブの不均質性および欠陥につながる可能性がある。
【0006】
均質化したたばこウェブの不均質性は、エアロゾル発生物品の製造において、均質化したたばこウェブのその後の取扱いに困難をもたらす恐れがある。例えば、不均質性により、均質化したたばこのウェブの製造またはその後の均質化したたばこのウェブの処理中に、ウェブの引き裂きまたはウェブの破裂がもたらされる場合がある。これはまた、例えば、機械の停止および不注意な浪費の創出を招きうる。さらに、不均質なたばこウェブは、同一の均質化したたばこウェブから製造されたエアロゾル発生物品間で意図しないエアロゾル送達において差異を作り出す場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、こうした加熱式エアロゾル発生物品の加熱特性およびエアロゾル形成の必要性に適合された、特に「燃やさない加熱式」のこのような加熱式エアロゾル発生物品での使用のための均質化したたばこ材料を調製するための新しいキャスティング装置に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の態様によれば、本発明は、均質化したたばこ材料のキャストウェブの製造のためのキャスティング装置に関し、前記キャスティング装置は、キャストウェブを形成するように、前記均質化されたたばこ材料のスラリーを保持するように適合されたキャスティングボックス、移動可能な支持体、およびキャスティングボックスに保持されたスラリーを移動可能な支持体上にキャスティングするように適合されたキャスティングブレードを備える。本発明によれば、前記キャスティング装置は、前記キャスティングブレードに、それぞれ第一、第二および第三の位置に結合された第一、第二および第三のアクチュエータをさらに備え、前記第一、第二および第三のアクチュエータが、それぞれ前記第一、第二および第三の位置で前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の距離を変化させるのに適している。
【0009】
均質化したたばこ材料は、スラリーを取得するため様々な成分を水と混合することによって形成される。その後の工程では、均質化した材料の連続ウェブが、スラリーを支持体上にキャスティングすることによって連続して支持体上に生成される。結果として得られる均質化したたばこ材料は、引張強さが比較的高く、かつ均質性が良好であることが望ましい。
【0010】
均質化したたばこ材料を実現するために使用され、引張強さおよびキャストウェブの均質性に影響を与えるスラリーの重要なパラメータは、特にスラリーのキャスティング時に、均質化したたばこ材料の連続ウェブを形成するためのその粘度である。さらにまた、スラリーの密度は、特にキャスティング前に、キャストウェブの最終品質を決定するために重要である。適切なスラリー密度、粘性および均質性は、欠陥の数を最小化し、またキャストウェブの引張強さを最大化する。
【0011】
このスラリーは、複数の様々な構成成分または成分を含む。これらの構成成分は均質化したたばこ材料の性質に影響を与える。第一の成分はたばこ粉末ブレンドであり、これはスラリー中に存在するたばこの大半を含有することが好ましい。たばこ粉末ブレンドは均質化したたばこ材料中のたばこの大半の供給源であり、それゆえ、例えば、均質化したたばこ材料を加熱して製造されるエアロゾルなどの最終製品に風味を与えるものである。たばこ材料ウェブの引張強さを増加するために、強化剤として作用する、セルロース繊維を含有するセルロースパルプが添加されるのが好ましい。均質化したシートの引張特性を強化するため、およびエアロゾルの形成を促進するために、結合剤およびエアロゾル形成体も添加されるのが好ましい。さらに、均質化したたばこ材料のウェブをキャスティングするために最適なある一定の粘性および水分に達するために、スラリーに水が添加される場合がある。スラリーは、スラリーを可能な限り均質にするために混合される。
【0012】
このスラリーは、キャスティングボックスに収集され、その中に所定の量のスラリーが保持されるのが好ましく、例えば、キャスティングボックスに所定の充填レベルのスラリーが予め設定されている。このスラリーが移動可能な支持体上にキャストされ、均質化したたばこ材料の連続ウェブを形成する間、スラリーが連続してキャスティングボックスに供給されるのが好ましい。
【0013】
本発明によれば、このスラリーは、移動支持体とキャスティングブレードとの間に形成されるキャスティングボックスの出口を通って、移動支持体の幅にわたってキャストされる。この支持体は、キャスティングボックスからスラリーを除去するために、長軸方向に沿って移動する。この支持体は、例えば、ステンレス鋼製の移動可能なベルトを含んでもよい。このキャスティングブレードは、実質的に、均一の厚さを移動可能な支持体上に有するスラリーのキャストウェブを形成するために使用される。さらに、このブレードと支持体との間の距離または間隙は、スラリーのキャストウェブの厚さを決定する。
【0014】
移動可能なベルトにキャストされる均質化したたばこ材料のウェブの厚さは、所望の仕様内の最終製品を得るためにキャストウェブの幅にわたりできるだけ均一である好ましい値を有する。本発明により、こうした均一な厚さを達成するために、キャスティングブレードと移動可能な支持体との間に存在する間隙は、調整可能である。局所的に調整可能である、すなわち、キャスティングブレードが、移動可能な支持体からの距離を、全体としてだけではなく局所的にも変更できることが好ましい。したがって、キャスティングブレードおよび移動可能な支持体の不規則さが補正されうる。有利なことに、本発明によれば、ブレードと支持体との間の距離は不規則さが存在する場所で局所的に変化させることができる。この局所的な変化は、キャスティングブレードに結合された、独立的に調節できることが好ましい三つのアクチュエータによって得ることができる。このように、最適なキャスティングおよびブレードの位置の良好な制御の両方を達成可能である。
【0015】
「均質化したたばこ材料」という用語は、本明細書を通して、たばこ材料の粒子の凝集によって形成される任意のたばこ材料を含むように使用される。本発明では、均質化したたばこのシートまたはウェブは、例えば、たばこ葉ラミナ、たばこ葉茎またはそれらのブレンドを粉砕することによって、またはその他の方法で粉末化することによって得られた粒子状たばこを凝集することにより形成される。
【0016】
さらに、均質化したたばこ材料は、たばこの処理、取り扱い、および移送中に形成された少量のたばこダスト、たばこ微粉、およびその他の粒子状たばこ副産物のうちの一つ以上を含んでもよい。
【0017】
本発明では、スラリーは、適切にブレンドされた異なるたばこタイプのたばこラミナおよびたばこ茎によって形成されるのが、好ましい。ここでは、「たばこタイプ」という用語は、たばこの異なる品種のうちの一つを指す。本発明に関しては、これらの異なるたばこタイプは、ブライトたばこ、ダークたばこおよびアロマティックたばこの三つの主な群に区別される。これらの三つの群間の区別は、たばこがたばこ製品中でさらに加工される前に受ける乾燥処理プロセスに基づく。
【0018】
上述のように、スラリーは可能な限り均質であるべきであり、これによってその粘性が可能な限り均一でキャスティングに最適である標的値に近づく。均一な粘性を得るために、スラリーの全量をキャスティングする前に混合することが好ましい。
【0019】
次にスラリーは、キャスティングボックスに移送されて、所定のレベルまでキャスティングボックスを満たすことが好ましい。キャスティングボックス内のスラリーの充填レベルは、実質的に、キャスティングボックス内で一定に保持されるのが好ましい。スラリーは、キャスティングボックスの底部に実現された開口部から、例えば、重力の影響下でキャスティングボックスから流れ出る。さらに、キャスティングボックス内の能動輸送の手段は、プッシャまたはプロペラなどにより提供可能である。このキャスティングボックスは、加圧容器を形成するのが好ましい。制御手段は、キャスティングボックス内部の圧力制御ができるように提供されることが好ましい。こうした実施形態において、キャスティングボックスを出るスラリーの流れは、キャスティングボックス内の内部圧力レベルを設定し維持することにより追加的に制御される。キャスティング装置は、キャスティングボックス内部のスラリーを混合するための混合装置を備えることが好ましい。そして、このスラリーは、キャスティングブレードと移動する支持体との間に形成された間隙を通ることによって、移動可能な支持体上に送出される。
【0020】
このキャスティングブレードは、幅が非常に広く、実質的にキャスティングボックスの幅すべてに沿って延在するのが好ましい。好ましくは、ブレードの幅とブレードが取り付けられるキャスティングボックスの幅は、同様である。キャスティングブレードの幅にわたり、第一、第二および第三のアクチュエータが配置される。本発明によれば、第一、第二および第三のアクチュエータは、キャスティングブレード自体に、それぞれ第一、第二および第三の位置に、例えば締結手段によって結合される。キャスティングボックスとキャスティングブレードとの間の結合は、例えば第一、第二または第三のアクチュエータのうち一つ、二つ、または全部によってキャスティングボックスに対してキャスティングブレードが移動可能なようになされる。本発明では、少なくとも三つのアクチュエータが存在するが、キャスティングブレードと移動可能な支持体との間の距離寸法を変化させるためにキャスティングブレードに結合された追加的なアクチュエータが提供されうる。
【0021】
間隙寸法の変化はしたがって、三つのアクチュエータによって、キャスティングブレードの三次元空間内の位置である空間的位置付けを変化するように実行される。支持体の空間的位置は実質的に一定であるとみなされるが、支持体の位置の変化は除外されない。間隙の寸法の変化は均等なものでもよく、これはすべてのアクチュエータがブレードを同一量だけ移動させることを意味する。あるいは、アクチュエータがブレードを異なる距離でずらしうる場合には不均等なものでもよい。この不均等な作動には、例えば、存在する三つのアクチュエータのうち一つのみまたは二つのみのアクチュエータが動作し、残りは停止したままであるといった場合が含まれる。例えば、ある実施形態では、第一および第二のアクチュエータが非動作で、かつ第三のアクチュエータのみが第三の位置でブレードの空間的位置付けを移動するように制御される。第一および第二の位置でのキャスティングブレードの空間的位置付けは変化せず、第一および第二の位置での間隙の寸法も変化しないか、または第三の位置での変化と比較して比較的少量だけ変化する。さらに、アクチュエータの不均等な作動には、三つのアクチュエータのうち少なくとも一つが他のアクチュエータとは異なる距離でまたは異なる方向にずらされるといった、その他の何らかのキャスティングブレードの変位が含まれる。
【0022】
キャストウェブの厚さは、最終製品、例えば、エアロゾル発生物品において望ましい特性および品質を獲得するための重要なパラメータである。キャストウェブの厚さは特に、キャスティングブレードと移動可能な支持体の間に存在する距離寸法(あるいは間隙)によって決定される。この間隙は以下の通り識別されうる。キャスティングボックスの底部にある開口部により、移動可能な支持体上にスラリーが流れるようになる。移動可能な支持体が、スラリーをキャスティングブレードから離れた方向に運び、それによって移動可能な支持体上に連続的なキャストウェブを形成する。均質な材料のウェブの厚さは、他にもパラメータがある中で、スラリーが付着する移動可能な支持体の上側表面と、キャスティングブレードの最も下の表面との間に存在する距離の寸法に依存する。さらなるパラメータは、キャスティングボックス内のスラリーの密度、スラリーの温度およびスラリーの充填レベルや、キャストウェブの厚さである。均質化したたばこのキャストウェブが「厚い」場合、キャストウェブはいわゆる「ドラッガー」あるいは凝塊などの不良を招く可能性が高い。一方、「薄い」キャストウェブはひび割れの可能性が高くなり、潜在的に製造工程プロセスの中断の原因となる。その結果、キャスティングブレードと移動可能な支持体との間の間隙は、キャスティングブレード領域内での「厚い」ウェブと「薄い」ウェブの間のバランスを維持するために適切に制御される必要がある。
【0023】
さらに、キャストウェブは、例えばスラリーの粘性、同温度およびスラリー自体の成分タイプなど、特定のプロセスパラメータ値に応じて、異なる好ましい厚さを持ちうる。したがって、これらのパラメータが製造バッチ間で変化する場合、キャスティングブレードと移動する支持体との間の間隙寸法は、新しいプロセスパラメータに適合させるために同様に変化させる必要がありうる。
【0024】
間隙寸法を変化することなくバッチ間でのプロセスパラメータが変化すると、キャストウェブの最終的な厚さの変化にもつながりうる。したがって、キャストウェブの厚さを同一に保つために間隙の寸法を変化させる必要がありうる。さらに、一部の用途では、スラリーの粘性は時間に依存する、すなわち、スラリーの粘性は時間経過と共に変化する。この点は特に、例えば、水と接触した時にゲルを形成し、従って粘性が増大する結合剤など、スラリーが膜を形成する構成要素を含む場合にあてはまる。有利なことに、本発明によれば、キャスティングブレードと移動可能な支持体との間の間隙は、製造パラメータの変化に対応する時間の関数として制御されうる。これにより、わずかな無駄で、均質なたばこ材料ウェブの連続的な製造が許容される。
【0025】
さらに、一定の厚さを持つキャストウェブは、乾燥プロセスにも関連性がある。キャスティングの後、均質化したたばこ材料のウェブは乾燥され、この乾燥パラメータは、とりわけ、ウェブの厚さに依存する。キャストウェブが厚さの変動を含む場合、含水量の変化が最終製品に見られることがあり、これにより最終製品の少なくとも部分的な不合格が必要になることがある。
【0026】
本発明は従って、三つのアクチュエータによって間隙寸法を簡単にかつ異なる方法で変化させることができる。様々な位置でキャスティングブレードに結合されたアクチュエータにより、有利なことに、キャスティングブレードと移動可能な支持体との間の間隙の距離の寸法を変更し制御する多くの方法が可能になる。三つの異なる位置に配置された三つのアクチュエータは、間隙の寸法を局所的に変更することができ、すなわち、第一のアクチュエータは、第一の位置の近くの間隙の寸法を変更することができ、第二のアクチュエータは、第二の位置の近くの間隙の寸法を変更することができ、第三のアクチュエータは、第三の位置の近くの間隙の寸法を変更することができる。したがって、間隙寸法の変更は、特定の局所の必要に対して、個別対応可能である。具体的には、三つのアクチュエータは、キャスティングブレードの空間位置を均一な方法または不均一な方法で、変更することができる。均一な方法では、すべての三つのアクチュエータは、キャスティングブレードを同じ方向に同じ量移動する。キャスティングブレードの不均一な移動は、アクチュエータの少なくとも一つが、少なくとも一つの他のアクチュエータとは異なる、量または方向でキャスティングブレードを局所的に変位する場合のキャスティングブレードのすべての他の変位を含む。すべての三つのアクチュエータを同じ量および同じ方向に移動すると、キャスティングブレードの変位が生じて、間隙が増加または低減する。キャスティングブレードの長軸方向幅に沿った三つのアクチュエータ、例えば、ブレードの各端部に一つのアクチュエータおよび中間に一つアクチュエータが存在することは、キャスティングブレードを曲線形状に曲げることができるという点で、二つのアクチュエータシステムよりも有利である。三つのアクチュエータシステムの利点をさらに挙げると、キャスティングブレードの支持点間の距離が、二つのアクチュエータシステムの場合より狭いことである。これにより、特に比較的長いブレードの場合に、引力によるキャスティングブレードの固有変形が低減される。これにより、さらに、たばこ材料の連続ウェブの均質性が向上する。
【0027】
アクチュエータの不均一な変位により、別の形状のキャスティングブレードを生成することができる。例えば、くさび状の間隙または湾曲した間隙を、三つのアクチュエータで得ることができる。上述の通り、ブレードまたは支持体は、これらの構成要素の製造中の位置ずれまたは欠陥に起因して、スラリーと接触する不均一な表面を含む場合がある。位置ずれを補正するために、または、他の要因に起因する他の不均質性を補正するために、不均一な寸法を有する間隙が望ましい場合がある。例えば、ブレードと支持体との間の距離がキャスティングブレードの一方の長軸方向の端部から対向する他方の長軸方向の端部まで異なる場合は、くさび状の間隙を作ることができる。このくさび状形状は、例えば、垂直方向に、キャスティングブレードが、異なる距離を移動するように三つのアクチュエータを動作して得ることができる。あるいは、一つは固定して動かず、他の一つまたは二つのアクチュエータが、局所的にキャスティングブレードを変位させてもよい。湾曲した間隙を選択し実現することもできるが、それは、ブレードが直線ではなく、湾曲した構成であることを意味する。湾曲したキャスティングブレードは、第一のアクチュエータと第二のアクチュエータとの間に位置するアクチュエータを作動させるだけで、得ることができる。あるいは、すべての三つのアクチュエータが動作可能であるが、異なる距離を変位させると、その三つの端部の位置は、直線に沿って配置されず、曲線、凹状または凸状によってのみ接続可能になる。
【0028】
前記第一、第二および第三のアクチュエータのうち少なくとも一つは、線形のアクチュエータであることが好ましい。キャスティングブレードは、実質的に直線的に垂直方向に移動することが好ましい。ところが、変位は必要に応じて円形、曲線またはその他の動作経路に変換されうる。非直線的な変位の動きは、例えば適切なレバーまたはカムを使用して作成されうる。
【0029】
さらに、ブレードは、ある周波数の範囲内で、または所定の時間依存周波数、すなわち、ある周波数の範囲内で規則的またはランダムに変化する周波数で、ブレードを設定周波数で振動させることを可能にする超音波アクチュエータと動作可能に係合することができる。これにより、ブレードを洗浄し、繊維のリスクまたはこのブレードに付着する他の材料を除去することができる。このブレードに付着する材料は、連続した均質なたばこ材料に一貫性のなさを生む恐れのある、いわゆる、「ドラッガー」を引き起こす可能性がある。
【0030】
有利なことに、前記第一、第二および第三のアクチュエータは、それぞれ前記第一、第二および第三の位置で相互に独立的に前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の距離を変化するよう作動できるように構成されている。このように、アクチュエータは、多数の異なる所定の形状または空間的位置に従いブレードを強制的に配置させることができる。ブレードの位置付けにおいて非常に高い自由度が達成され、これによって、均質化したたばこ材料のキャスト連続ウェブの高い精度での最終厚さが許容される。
【0031】
好ましい実施形態によれば、前記第一および第二の位置は、それぞれ前記キャスティングブレードの第一および第二の長軸方向の端部に位置し、また前記第三の位置は前記キャスティングブレードの前記第一および第二の長軸方向の端部間に位置する。三つのアクチュエータがブレードの長軸方向の幅に沿って実質的に一様に分布されている構成により、ブレードの位置付けにおいて十分な柔軟性が許容され、また同時に、ブレードの重みが実質的に一様に分布する方法でブレードが保持されていることから、重力によるブレードの望ましくない変形の可能性が最小化される。
【0032】
本発明による機器は、前記第一、第二または第三のアクチュエータの第一、第二または第三の位置のうち少なくとも一つを前記キャスティングブレードに沿って変位させる横断的変位手段を備えることが好ましい。このように、ブレードと支持体との間の距離を変化させることができるだけでなく、アクチュエータ間の距離も変化させることができる。これにより、本発明による装置の柔軟性の度合いが異なるまたは変化するプロセスパラメータに適合するためにさらに向上する。
【0033】
有利な実施形態では、本発明のキャスティング装置は前記キャスティングブレードに結合された複数の微調整要素をさらに備え、それぞれの微調整要素は前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の距離を局所的に変化させるように適合されている。本発明によれば、微調整要素は前記キャスティングブレードの長軸方向の幅に沿って位置する。例えば、微調整要素は約5cmおき〜約15cmおきに提供される。前記微調整要素のうち少なくとも一つは、前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の前記距離が約1μm〜約200μmから成る値で局所的に変化するように適合されることが好ましい。微調整要素によって有利なことに、キャスティングブレードおよび移動可能な支持体(例えば、ステンレス鋼ベルト)が固有に持つ製造上の不正確さの補正、ならびに時間経過と共に発生しうるキャスティングブレードおよび移動可能な支持体の局所的な摩耗が許容される。
【0034】
移動可能な支持体に対するキャスティングブレードの位置付けは、2ステップのプロセスが好ましい。通常はキャスティングプロセスが開始される前に行われる第一のステップでは、初期的な間隙寸法を設定する目的で、支持体に対するブレードの位置を調節するために、微調整要素によるブレード位置付けの調節がなされる。初期的な調節では、ブレードおよび支持体自体の形状や欠陥が考慮される。ブレード位置付けの第二の調整は、キャスティングステップが開始され、かつキャストウェブおよびスラリーの特性が測定された後で、最適な間隙の寸法および構成に達するように三つのアクチュエータを制御することにより実施される。第二の調整は、製造工程プロセス全体を通して連続的または半連続的であることが好ましい。
【0035】
有利なことに、前記微調整要素が、それぞれ前記移動可能な支持体に対してねじを締めたり緩めたりした時に前記キャスティングブレードを局所的に上げ下げするように適合させたねじを備える。これにより微調整要素の簡単な動作が許容される。
【0036】
好ましくは、キャスティング装置は、センサーと、前記センサーとの間で信号の送受信をするよう適合され、かつ前記第一、第二および第三のアクチュエータとの間で信号の送受信をするよう適合された制御ユニットとをさらに備え、前記センサーは、前記キャストウェブまたは前記スラリーのパラメータを検出して対応する信号を前記制御ユニットに送信するよう適合され、さらには、コマンド信号を前記第一、第二または第三のアクチュエータに送信してそれぞれの第一、第二および第三のアクチュエータを動作するよう適合される。
【0037】
好ましくは、キャスティング装置は、制御ユニットおよび前記制御ユニットに信号を送信する一つ以上のセンサーを備え、前記一つ以上のセンサーは、移動可能な支持体上にキャストされたキャストウェブのドラッガーを特定するセンサーと、移動可能な支持体上にキャストされた前記キャストウェブの水分を判定するセンサーと、移動可能な支持体上にキャストされた前記キャストウェブの厚さまたは厚さの変化を測定するセンサーと、前記キャスティングボックスのスラリーの粘性を測定するセンサーと、前記キャスティングボックスのスラリーの温度を測定するセンサーと、移動可能な支持体上にキャストされた前記キャストウェブ上の欠陥の位置を検出するセンサーと、前記キャスティングボックスのスラリーの密度を検出するセンサーと上記センサーの二つ以上の組み合わせのうち少なくとも一つを含む。
【0038】
スラリーの形成は、最終製品の品質を決定する繊細なプロセスである。本発明によって調製されたスラリーをキャスティングすることにより得られた均質化したたばこシートの拒絶のリスクを最小化するために、いくつかのパラメータを制御してもよい。これらのプロセスパラメータは、数ある中でも、スラリーの温度、キャスティングボックスの温度、移動可能な支持体の温度、スラリーの含水量、スラリーの滞留時間または時間経過およびスラリーの粘性である。例えば、スラリー内の膜形成物質の連続的なゲル化によるなど、粘性は実際に、温度、水分およびスラリーの時間経過の関数であることが周知である。従って、スラリーの粘性、温度、および含水量のうちの少なくとも一つを適切なセンサーを用いてモニターすることが好ましい。パラメータを一連の所定の範囲内に維持するために、オンライン信号処理および制御のためのセンサー信号をフィードバックループで使用することが好ましい。例えば、プロセス制御は、スラリーの冷却量、キャスティングボックスの冷却量、スラリーの温度、キャスティングボックスの温度、移動可能な支持体の温度、キャストウェブの幅に沿った温度プロファイル、移動可能な支持体の速度、スラリーに導入される水の量、スラリーを形成するその他の化合物の量、上述のプロセスパラメータ変化の組み合わせおよびその他のパラメータなど、適切なプロセスパラメータの変化による影響を受けうる。
【0039】
キャスティングにおける前記キャストたばこ材料ウェブの水分は、約60パーセント〜約80パーセントであることが好ましい。均質化したたばこ材料の製造のための方法は、前記キャストウェブを乾燥し、乾燥後に前記キャストウェブを巻き取る工程を含むことが好ましい。巻き取り工程における前記キャストウェブの水分は、たばこ材料ウェブの乾燥質量の約7パーセント〜約15パーセントであることが好ましい。巻き取り工程における前記均質化したたばこウェブの水分は、均質化したたばこウェブの乾燥質量の約8パーセント〜約12パーセントであることが好ましい。キャスティングにおけるスラリーの水分は、その後の製造段階において、均質化したたばこウェブの均質性および均質化したたばこ材料の製造性に影響を与える、制御するべき別の重要なパラメータである。
【0040】
特に均質化したたばこウェブを形成するためにスラリーをキャスティングする工程の前のスラリーの密度は、均質化したたばこ材料のウェブの最終品質を決定する上で重要である。スラリーの均質な密度は、欠陥数を最小限に抑え、均質化したたばこ材料のウェブにわたる引張強さを増大させる。
【0041】
有利なことに、前記制御ユニットが、フィードバックループを実施するために前記センサーの一つ以上から受信した信号に応じて、前記第一、第二、または第三のアクチュエータに命令するように適合されて、前記信号に応じる前記一つ以上のセンサーによって検出されたパラメータの一つ以上を変更する。
【0042】
本発明のキャスティング装置には、一つ以上のフィードバックループが存在するのが好ましい。例えば、ドラッガーなどの欠陥の存在、および均質化したたばこ材料のウェブの厚さの不均質性により、最適でないキャスティング条件の存在が暗示される。これらの最適でないキャスティング条件は、いくつかの要因による可能性があり、例として、好ましい範囲外にあるスラリーの密度、キャスティングブレードの幅を超えるキャスティングブレードと移動可能な支持体との間の一定でない間隙、好ましい水分範囲外のスラリーの水分レベルなどが挙げられる。したがって、キャスティング工程で役割を果たすパラメータ値を取得するために複数のセンサーを使用するのが有利である。そして、これらの値は、例えば、キャスティングの条件により、キャストウェブの製造が所望の使用範囲外にされる場合に、フィードバックループを用いて調整可能である。欠陥の出現またはパラメータの不均一性もしくは標準規定範囲外へのパラメータの変位は、一つ以上のセンサーによって検出され、対応する信号が中央制御ユニットへ送信される。この中央制御ユニットは、偏向するプロセスパラメータを変更するまたは一つ以上の追加の別のパラメータを修正するためにアクチュエータを操作して、検出された問題を訂正することができる。ウェブ内の欠陥の位置は記録され、均質化したたばこ材料の欠陥領域のその後の不合格用に使用されることが好ましい。
【0043】
有利な実施形態では、前記キャスティングブレードは、ブレード端を画定する横断断面を有し、前記ブレード端が、第一の曲率半径を有する第一の円弧および第二の曲率半径を有する第二の円弧を含むか、または前記ブレード端が楕円の一部分を含む。
【0044】
このキャスティングブレードは、その幅であり、かつ実質的にキャスティングボックスの幅すべてに沿って延在することが好ましい主たる寸法を持つ。好ましくは、ブレードの幅とブレードが取り付けられるキャスティングボックスの幅は、同様である。このキャスティングブレードの、ブレードの幅方向に対して実質的に垂直な平面によって切断された部分が、ブレード端を画定する(デカルトの座標X、YおよびZでは、この切断面は、(X、Z)面であり、Xは、移動可能な支持体中のスラリーの移動方向であり、Yは、キャスティングブレードの幅方向であり、Zは、垂直方向である)。ブレード端は切断面(X、Z)内の所定の曲線に従う。ブレード端では、少なくとも2点は、縁部の末端に属していないと考えられる、すなわち、ブレードが開始する、ブレードが終了する、またはキャスティングボックスに接続されているところは、縁部の始まりまたは終わりとは考えられない。これらの2点では、ブレード端により規定された曲線は、連続的かつ連続した第一の導関数を有することが好ましい。
【0045】
この部分のこれらの二つの異なる点は、第一の点および第二の点と呼ばれ、異なる曲率半径を有する。この文脈では、「異なる点」という用語は、第一の点の座標(X1、Z1)の少なくとも一方が、第二の点の座標(X2、Z2)の一方と異なることを意味する。したがって、第一の点のブレード端の曲率半径は、第二のブレード端の曲率半径と異なる。
【0046】
このように、第一の点のブレード端の曲率半径および第二の点の曲率半径は、互いに独立したものであり、このブレードの形状は製造ニーズにしたがって、変化することができる。例えば、スラリーが間を通って移動可能な支持体上にキャストされる、ブレードと移動可能な支持体との間の間隙の区域で、大きな曲率半径が必要となる可能性がある。スラリーが円滑に間隙に近づくことを可能にするため、間隙の外側に大きい曲率半径を予見することができる。キャスティング区域の外側では、ブレードの寸法を程よいサイズに維持するために小さい曲率半径を使用することができる。このブレードの形状は、単一の曲率半径だけでは規定されず、別の曲率半径を使用して製造ニーズに適合可能である。このように、一定で均一な曲率半径を有する円筒状ブレードを有する装置に存在する問題が、有利なことに回避可能である。
【0047】
好ましくは、第一の点の曲率半径および第二の点の曲率半径は両方とも、約1mm〜500mmから成り、より好ましくは、約3mm〜約100mmから成り、最も好ましくは、5mm〜約50mmから成る。第一の曲率半径が約1mm〜約50mmで、第二の曲率半径が約10mm〜約500mmであるのが好ましく、第一の曲率半径が約3mm〜約25mmで、第二の曲率半径が約15mm〜約100mmであるのがより好ましく、第一の曲率半径が約5mm〜約25mmで、第二の曲率半径が約20mm〜約50mmであるのが最も好ましい。第一の曲率半径と第二の曲率半径は、互いに約5mm〜約100mm異なるのが好ましく、第一の曲率半径と第二の曲率半径は、互いに約10mm〜約50mm異なるのがより好ましく、第一の曲率半径と第二の曲率半径は、互いに約15mm〜約30mm異なるのが、最も好ましい。これらの曲率半径は、均質化したたばこ材料のキャストウェブの製造のためにキャスティングブレードの実現に特に適切であることがわかっている。
【0048】
本明細書では、略してRと呼ばれる、第一および第二の点でのブレード端の曲率半径などといったある点での曲線の曲率半径は、その点での曲線に最も近似する円弧の半径の尺度として定義される。それは、曲率の逆数である。
【0049】
平面曲線の場合、曲率半径は、Rで示され、という絶対値を示す。
【数1】
式中、sは、曲線上の固定点からの弧の長さであり、φは、正接角であり、κは、曲率である。
【0050】
切断面(X、Z)のブレード端によって規定された曲線が、デカルトの座標でz(x)として与えられた場合、曲率半径は(曲線が、2次まで微分可能であると仮定すると)、
【数2】
式中、
【数3】
である。
【0051】
有利なことには、ブレード端は、前記第一の曲率半径を有する第一の円弧および前記第二の曲率半径を有する第二の円弧を含む。あるいは、ブレード端は楕円の一部を含む。
【0052】
ブレード端は、二つの曲率半径または複数の異なる曲率半径のいずれか一つを有する点のみを含むことができる。第一の場合、このブレードは、第一の曲率半径によって規定されている一方および第二の曲率半径による他方の二つの円筒の二つの部分の交差によって形成される固体を含むことができる。この実施形態では、(X、Z)面に沿ったキャスティングブレードの部分は、第一の円弧、第一の曲率半径を有する第一の円筒の基部、および第二の円弧、第二の曲率半径を有する第二の円筒の基部を含む曲線を規定する。したがって、曲率半径は、第一の弧と第二の弧の中で一定である。あるいは、ブレード端は楕円の一部を含むことができる。楕円は、連続して変化する曲率半径を有し、したがって、この実施形態では、ブレード端によって画定される楕円の部分の異なる点それぞれは異なる曲率半径を有する。本発明によれば、ブレード端は、一つ以上の円弧および一つ以上の楕円の部分の両方を含むことができる。
【0053】
好ましくは、例えば、異なる曲率半径を有する円弧の間、または複数の楕円もしくは楕円の異なる点と円弧との間などの異なる点の間の交差点は、連続しており、それにより、ブレード端を形成する切断面(X、Z)によって画定される結果としての曲線は連続しており、その第一の導関数もまた連続している。
【0054】
前記第二の点は、前記移動可能な支持体に実質的に面している前記キャスティングブレードの底部に配置されるのが好ましい。第二の曲率半径は、キャスティングの瞬間にスラリーに近接するまたは接触するブレードの一部に属するのが好ましい。さらに、第二の曲率半径は、比較的「大きい」。大きい曲率半径は、支持体へスラリーが緩やかに流れることを可能にする。というのも、所定の長さの支持体とキャスティングブレードの間の間隙は、かなり狭いからである。言い換えると、ブレードが支持体に面している部分に「大きい」曲率半径を有する場合、キャスティングブレードと支持体との間に形成された間隙は、ウェブのキャスティングの方向に、すなわち、移動可能な支持体が移動する方向に、ゆるやかに寸法を変化させる。比較的大きい曲率半径を有するブレードでは、ブレードと支持体との間の距離が、キャスティングの方向に沿って少量変化している。このように、支持体の非常に長い距離の間、正確に画定された厚さがスラリーに強要される。これにより、通常はブレードと支持体との間に存在する間隙よりも厚くかなり大きい曲率半径を有するブレード端によって画定される「長い」間隙を通ることができない、凝集体の蓄積の最小化が可能になる。
【0055】
さらに、支持体に面するブレードの一部が大きい曲率半径であることで、例えば、曲率半径が大きくなるほど、ブレードと支持体との間に画定された「長く狭い間隙」を完全に流れるには時間が必要であるために支持体へのスラリーの導入が緩慢なことを理由とする、いわゆる、「ドラッガー」などの欠陥の出現を減らすことが可能になり、間隙のサイズはキャスティングの方向(移動可能な支持体が移動する方向)に沿ってより長くなる。
【0056】
第二の曲率半径が比較的大きい場合、第一の曲率半径はそれよりも小さいことが好ましく、その結果、ブレードが厚くなり過ぎず、キャスティング装置の残りの部分に容易に構成可能かつ適合しやすい。このように、比較的大きい曲率半径および比較的小さい曲率半径の組み合わせにより、均一で欠陥を最小化するウェブを移動支持体上にキャスティングすることおよびブレードをキャスティング装置の残りの部分に固定し調整することの両方のために、適切な寸法を有するブレードを取得することが可能になる。
【0057】
第二の態様によれば、本発明は、前記均質化したたばこ材料のスラリーをキャスティングボックスに導入する工程と、キャストウェブを形成するようにキャスティングブレードによって前記スラリーを移動可能な支持体上にキャスティングする工程と、前記キャストウェブまたは前記スラリーのパラメータを決定する工程と、前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の距離を前記パラメータの関数として変化させる工程とを含む、均質化したたばこ材料のキャストウェブを製造するための方法に関連する。有利な実施形態では、前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の距離を前記パラメータの関数として変化させる工程は、前記キャスティングブレードにそれぞれ第一、第二および第三の位置で結合された、第一、第二および第三のアクチュエータを動作する工程を含み、前記第一、第二および第三のアクチュエータのそれぞれが、前記第一、第二および第三の位置での前記移動可能な支持体からの前記キャスティングブレードの距離を変化させるのに適している。こうした方法の利点は、本発明の第一の態様に関連して上記で既に概説してきた。
【0058】
有利なことに、本発明の方法は、均質化したたばこ材料の前記キャストウェブのキャスティングをする前に、前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の前記距離を複数の位置で微調整する工程を含み、前記位置が前記キャスティングブレードの長軸方向の幅に沿って約5cm〜約12cmの距離で相互に間隙を介している。
【0059】
前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の距離を前記パラメータの関数として変化させる工程は、前記キャスティングブレードを非直線的な形状に曲げる工程を含むことが好ましい。ブレードは湾曲するようになり、望ましい間隙の形状に依存して凹面または凸面の形状を有する。
【0060】
好ましい実施形態では、前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の距離を変化させる工程は、前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の平均距離が約0.1mm〜約2mmであること、より好ましくは前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の平均距離が約0.2mm〜約1.5mmであることを達成する工程を含む。均質化したたばこ材料のキャストウェブの厚さは、完成品の品質および一貫性に非常に関連する。この厚さが均一であることが望ましく、いずれの塊、凝集体、繊維、粗粒も含まないのが望ましい。ブレードと支持体との間に生成された間隙を有する本発明のキャスティングブレードの特定の設計は、スラリーが均一の厚さの連続ウェブにキャストされることを確実にする。さらに、移動可能な支持体の幅および長さに沿った破損ならびに他の欠陥の発生を、有利なことに低減できる。
【0061】
本発明がさらに有利な点は、非制限的に添付の図面を参照しながら、本発明を実施するための形態より明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】本発明による均質化したたばこウェブをキャスティングする装置を含む均質化したたばこウェブの製造のための装置の概略側面図である。
図2】本発明によるキャスティング装置の概略斜視図である。
図3図2のキャスティング装置の細部拡大斜視図である。
図4図2のキャスティング装置の側面断面図である。
図5図2および4のキャスティング装置の一部の拡大側面断面図である。
図6図2のキャスティング装置の構成要素の側面図である。
図7図2のキャスティング装置の別の構成要素の斜視図である。
図8図7の構成要素の細部拡大斜視図である。
図9図6のキャスティング装置の構成要素の側面図である。
図10図10a〜10cは、本発明によるキャストウェブを製造する方法の段階の異なる実施形態についての四つの正面概略図である。
図11】本発明の装置を使用する均質化したたばこウェブの製造の方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1を最初に参照すると、本発明による均質化したたばこ材料のウェブの製造のための装置を表し、参照番号1で示している。
【0064】
均質化したたばこ材料のウェブの製造のための装置1は、本発明により実現したキャスティング装置2、および、またさらに好ましくは、均質化したたばこ材料のウェブの動きの方向にキャスティング装置2の下流に配置された乾燥装置3を含む。
【0065】
キャスティング装置2は、均質化したたばこ材料のウェブを形成するスラリーが導入されるキャスティングボックス4、ポンプ5、キャスティングブレード6および移動可能な支持体7を備える。キャスティングボックス4は、任意の幾何学形状を有し、図示の実施形態では、実質的に角柱の形態である。このキャスティングボックスは、その底部に一致する開口部43を有し、その開口部は、キャスティングボックスの幅に沿って延在する。バッファタンク(図示せず)からのスラリーは、ポンプ5を用いてキャスティングボックスに移送される。ポンプ5は、キャスティングボックス4に導入されるスラリーの量を制御する流量制御(図示せず)を備えるのが好ましい。
【0066】
ポンプ5は、有利なことに、スラリーの移送時間を確実に必要最小限に維持するよう設計されている。ポンプ5は、例えば、キャスティングボックス4の分配器11に配管12(図2に示す)によって流体連通されて、キャスティングボックス4内にスラリーを分配する。分配器11は、キャスティングボックス4の幅に沿って延在し、キャスティングボックス4より上に配置されているのが好ましい。分配器11は、キャスティングボックスの幅に沿ってスラリーを均一に分配するために、複数の開口部または単一の細長いスリット(図3のスリット13)のいずれかを含み、それにより、キャスティングボックス4内部のスラリーの充填レベル41が、キャスティングボックス4の幅に沿って実質的に均一になる。細長いスリット13を有する分配器11は、分配器の一部を見ることができる図3の拡大図により良く示される。細長いスリット13の横幅、すなわち、その幅寸法に対して垂直な寸法は、例えば、図3に示す一つ以上のねじなどの調整手段14によって調整可能であることが好ましい。このように、キャスティングボックス4に分配器11から単位時間当りに流れ込むスラリーの量は、制御可能で調整可能である。したがって、キャスティングボックス4に導入されるスラリーの量の制御が二つ、ポンプ5にある制御が一つ、および分配器11にある制御が一つ存在する。
【0067】
一つ以上の外壁15に加えて、キャスティングボックス4はまた、キャスティングボックス4内の供給室17を区切る内壁16をさらに備える。供給室17は、キャスティングボックスの内容積の残りと流体連通している。供給室17は、分配器11より下に配置されている。スラリーの高い粘性に起因して、供給室17内のスラリーの高さは、キャスティングボックス4の残りの部分の高さよりも高くなることができる。供給室17は、図4および5の断面図に、より良く図示される。
【0068】
さらに、キャスティング装置2は、スラリーをキャストするためにキャスティングボックス4に固定されるキャスティングブレード6を含む。このキャスティングブレード6は、その幅である主寸法を有し、底部のその開口部43でまたはその開口部43近くでキャスティングボックス4に固定される。キャスティングブレード6の長手方向幅は、スラリーのキャストウェブの所望の幅に応じて、約40cmから300cmであるのが好ましい。好ましくは、こうした幅は、例えば、適切な幅調整手段(図示せず)によって調整可能であり、それにより、ブレードの幅またはキャスティングボックスの稼働容量を、キャストされるウェブの幅に合わせることができる。このキャスティングボックスの稼働容量は、実際にスラリーで充填されるキャスティングボックスの容量である。
【0069】
キャスティングブレード6は、調整可能盤18によってキャスティングボックスに取り付けられるのが好ましく、調整可能盤18は、キャスティングブレード6の位置を正確に制御することを可能にする。調整可能盤18は、全体として図7に、拡大詳細図として図8に図示される。この調整可能盤18は、ブレード6と支持体7との間の間隙を調整するすべて19で示されている複数の調整要素を含む。キャスティングボックス4およびキャスティングブレード6は、移動可能な支持体7を回転させるドラム8の上に搭載される。キャスティングブレード6と移動可能な支持体7との間には間隙が存在し、その寸法が、とりわけ、均質化したたばこ材料のキャストウェブの厚さを決定する。このように、間隙の寸法は、その幅に沿って分散された調整要素19を含む調整可能盤18によってキャスティングブレード6の位置を制御することによって制御される。例えば、調整要素19は、マイクロメータねじなどの複数のねじ19を含む。この調整可能盤18の幅は、実質的にキャスティングブレード6の幅と一致する。調整可能ねじ19は、調整可能盤18の幅に沿って配置され、キャスティングブレード6と支持体7との間の距離を局所的に変更することができる。複数のねじのうちの隣接する二つのねじの間の距離は、予め設定され固定することができる。ねじ19は、移動可能な支持体7に関連してキャスティングブレード6の微調整のために使用される。ねじ19は、支持体の表面またはブレードの表面の不均質性を補正するために使用可能である。使用中、ねじ19は、第一の機械のセットアップで調整されるのが望ましい。しかし、ねじ19はまた、キャスティングブレード6の形状をオンラインで微調整できるように作動可能である。その幅に対して垂直方向に間隙の寸法を変更するため、すなわち、間隙の横幅を変更するため、モーター210、211、212などの変位手段により制御される複数のアクチュエータ200、201、202が、調整可能盤18に接続されている。本発明によれば、アクチュエータ200、201、202の数は三つ以上である。アクチュエータ200、201、202は独立して制御可能であり、すなわち、それぞれのアクチュエータ200、201、202は、それぞれのモーター210、211、212に接続されている。このモーターおよびアクチュエータは、例えば、調整可能盤18から外側に突出するマウント22(全てのマウントは同一参照番号で表示)によって、調整可能盤18に接続されている。各アクチュエータ200、201、202は、それ独自のマウント22に接続されているのが好ましい。したがって、モーター210、211、212は、ブレード6を上げ下げするためにアクチュエータ200、201、202を移動することができる。アクチュエータ200、201、202が、独立して移動可能であることにより、ブレード6を局所的に上下させて、ブレード、支持体およびスラリーの不均一性を再び考慮に入れることができる。間隙の横幅は、約0.1mm〜約2mmから成るのが好ましい。調整可能盤18とキャスティングブレード6の間の接続を図6の側面図に示す。
【0070】
ブレード6の幅に沿った各アクチュエータの位置であるアクチュエータ200、201、202間の距離は、図には示されていないさらなる変位手段によって変化させることもできる。
【0071】
さらに、ここで図9を参照すると、キャスティングブレード6の一部を、キャスティングブレード6の幅に対して垂直な平面(X、Z)に沿って示している。この平面におけるブレード6の部分は、所与の曲線に沿って延びる縁部23を画定する。この曲線は、少なくとも第一の曲率半径を有する点24および第二の曲率半径を有する第二の点25を含み、前記第一および第二の曲率半径は、約1mm〜約500mmであり、互いに異なる。図示の実施形態では、端部23は、すべてが第一の曲率半径を有する複数の点24およびすべてが第二の曲率半径を有する第二の複数の点を含む。例えば、端部23は、その間に連続して接続される二つの円弧を含み、すなわち、二つの円弧は、連続的で連続する第一の導関数を有する単一の曲線を画定する。あるいは、図示されてない実施形態では、この端部23は楕円の一部を含んでもよい。第二の曲率半径は第一の曲率半径より広く、点25は、支持体7に実質的に面する第二の曲率半径を有するのが好ましい。一つの実施形態では、第一の曲率半径は約5mm〜約25mmであり、第二の曲率半径は約20mm〜約50mmである。図示の実施形態では、キャスティングブレード6は、第三の曲率半径を有する第三の点26をさらに含む。
【0072】
キャスティング装置2はまた、スラリーが均質化したたばこ材料のウェブを形成するようキャストされる移動可能な支持体7を備える。この移動可能な支持体7は、例えば、ドラム組立体を備える連続したステンレスベルト7を備える。このドラム組立体は、移動可能な支持体7を移動させるキャスティングボックス4の下に配置される主ドラム8を含む。キャスティングボックス4は、主ドラム8の上部に搭載されるのが好ましい。上述の搭載の公差は、非常に厳密で、例えば、約0.01mm以内であるのが好ましい。例えば、移動可能な支持体ドラム8の公差は、同心で約0.01mm未満、直径にわたって約0.10mm未満である。移動可能な支持体7の公差は、約0.01mm未満であるのが好ましい。
【0073】
間隙の寸法または形状を変化させるための支持体7に対するブレード6の変位は、図10a〜10dに関連して概略的に説明されている。これらの図表では、明瞭さの理由から調整可能盤18および調整ねじ19は表示されていない。図10aでは、ブレード6および支持体7は、間隙の寸法が実質的にブレード6の幅全体にわたり均一であるように、均一の寸法を持つ300で表示された間隙によって分離されている。間隙300の寸法は、キャスティングプロセスのパラメータセットのために望ましい厚さのキャストウェブを得るために選択される。キャストウェブの結果的な厚さが望ましいものではなく許容差範囲内でもない場合、または均一でない場合、間隙300はブレード6に結合されたアクチュエータ200、201、202によって修正されることが好ましい。第一および第二のアクチュエータ200、201は、それぞれブレード6の反対側の遠位端60、61の、またはそれに近接した第一および第二の位置に位置することが好ましい。第三のアクチュエータ202は、その間にある第三の位置に、すなわち二つの遠位端60、61の間にあるブレードの実質的に中間部分62に配置されることが好ましい。第一および第三のアクチュエータ200、202の間、および第二および第三のアクチュエータ201、202の間の距離は、同じでも異なっていてもよい。さらに、この第一および第三のアクチュエータ200、202の間の距離、または第三および第二のアクチュエータ201、202の間の距離は変化させることができる。三つのアクチュエータ200、201、202は、図10a〜10dでは非表示の三つの異なるモーター210、211、212(モーター210、211、212は図2に表示)によって動作される。
【0074】
本発明の第一の実施形態において、間隙寸法または形状を変化するために、間隙300は図10bに示す通り変形される。図10bに示す通り異なる寸法を持つ新しい間隙301を得るには、すべてのアクチュエータ200、201、202が動作し、ブレード6は実質的に縦方向に実質的に変位される。例えば、間隙寸法を大きくする必要がある場合、図10bに支持体7から離れる向きを指す矢印203で表示される通り、間隙はブレード6を支持体7から変位させることにより拡大しうる。それぞれの矢印203は、対応するアクチュエータ200、201または202の動きを示す。結果的な新しい間隙301は元の間隙300の寸法よりも大きな寸法を持ち、均一であること、すなわちブレード6と支持体7の間の間隙の寸法がブレード6の長軸方向の幅全体について同一であることが好ましい。この場合には、関連する間隙の寸法はZ軸に沿った縦の寸法である。
【0075】
別の方法として、キャストウェブのキャスティング厚さが不均一である場合、またはブレード、支持体、またはキャスティングボックス内のスラリーの分布に不規則さがある場合、図10aの間隙300は、不均一または非対称な方法で修正されることが好ましい。異なる修正も可能である。例えば、図10cに示す通り、間隙の寸法がブレード6の一つの遠位端60に近接して保ち、かつ間隙は反対側の遠位端61に近接して広げられる。次に、第二および第三のアクチュエータ201、202は、キャスティングブレード6の一方の端61が矢印203に従い上に移動して、Z軸に沿って不均一な寸法を持つ実質的に「くさび様」の間隙302を形成するように、例えばそれぞれのモーター211、212(図表10a〜10dでは非表示)によって制御される。このように、ブレード6の一方の端60が小さめの寸法であり、かつブレード6の反対側の端61が広めの寸法である間隙が生成される。特に、ブレードの反対側にある二つの端部の間隙寸法に小さな差異を得たい場合には、第二のアクチュエータ202のみを作動させることにより類似した結果が達成されうる。別の方法として、三つすべてのアクチュエータを作動させると、第一、第二および第三のすべての位置でブレードは変位されるが、それぞれの位置での変位は同一ではなく、第一の位置での変位は、第二の位置での変位とも、第三の位置での変位とも異なる。
【0076】
図10dに示す追加的な実施形態では、図10aの間隙300は実質的に修正されブレード6が曲げられ、その結果、ブレードの中間部分62にあるそのようにして形成された新しい間隙303は、ブレード6の遠位端60、61での間隙よりも広い寸法を持つようになる。この場合には、中間部分62に位置する第三のアクチュエータ202のみが動作し変位する。このように、ブレード6は、図10dに示す通り円弧様の構成を持ちうる。この構成は、三つすべてのアクチュエータ200、201および202を動作させても得ることができるが、中央位置にある第三のアクチュエータ202の変位は、第一および第二の位置にある第一および第二のアクチュエータ200、201により実施される変位よりも大きい。この構成は、移動可能な支持体の不均一な温度分布が観察される場合、特に、移動可能な支持体の中央に沿った温度が移動可能な支持体の横断側面に向かう温度よりも高い場合に特に有利であることがわかっている。
【0077】
さらに、図1を参照すると、キャスティング装置2は、複数のセンサーを含んでいる。第一のスラリーレベルセンサー30は、キャスティングボックス4内のスラリーの高さ41を制御するように適合されている。このセンサー30は、好ましくは、センサー自体とキャスティングボックス4のスラリーの表面との間の距離42を測定する(図5参照)。スラリーの高さ41は、センサー30とキャスティングボックス4の底部との間の既知の距離から導出される。さらに、好ましくは、追加的なセンサー31、32が、移動可能な支持体7の上に配置されて、移動可能な支持体7上の均質化したたばこ材料ウェブの平方センチメートル当たりの質量および厚さを測定する。センサー31は、例えば、核子測定ヘッドであってもよい。図示していない、追加のセンサーが同様に存在するのが好ましく、例として、均質化したたばこのキャストウェブの欠陥の位置を突き止め判定するセンサー、キャスティングにおけるスラリーおよびキャストリーフの水分を判定するセンサー、およびキャスティングボックス4のスラリーの温度を判定する温度センサーが挙げられる。
【0078】
好ましくは、すべてのセンサーは、測定すべき(温度、水分スラリーレベル、欠陥の位置など)それぞれのパラメータに関連する信号を中央制御ユニット40へ送信する。中央制御ユニット40は、ポンプ5、モーター210、211、212の一つまたはいくつか、またはすべてに、もしくはキャスティング装置2またはスラリー調製装置(図示せず)内のさらなる回路およびアクチュエータに電気的に接続されるのが好ましい。キャストウェブが、欠陥もしくは不均一性を示すか、またはキャストウェブの特性が事前設定の範囲外にある場合、中央制御ユニット40は、プロセスパラメータの変更を指示し、スラリーの特性またはキャスティングのパラメータに影響を及ぼすことができる。これらのプロセスパラメータは、例えば、キャスティングブレード6と支持体7との間の間隙の寸法またはキャスティングボックス4内のスラリーの量であってもよい。例えば、キャスティングブレード6のアクチュエータ200、201、202に対するフィードバックループは、キャストウェブの厚さを調整するために存在する。
【0079】
制御ユニット40はしたがって、モーター210、211、212に、またはアクチュエータ200、201、202に直接信号を送信してアクチュエータを制御し、ブレードの位置を、したがってキャスティングブレード6と移動可能な支持体7との間の間隙の寸法を変化させる。要件に応じて、制御ユニット40によって送信される信号は、検出されたパラメータに応じて図10b〜10dの任意の構成または何らかの異なる構成に従い動くように、アクチュエータ200、201、202に指示しうる。
【0080】
センサー30、31、32またはその他によって検知されるキャストウェブの望ましい厚さおよび特性が得られるようにキャスティングブレード6が位置付けられるまでアクチュエータまたはモーターが動作するよう、センサーから制御ユニット40への連続的なフィードバックが送信されることが好ましい。
【0081】
ドラムまたはローラー8は、温度制御ユニット(図示せず)を含むのが好ましい。キャスティングボックス4が配置されている支持体7の主ドラム8は、一定の温度に維持されて、スラリーの経時変化についての正確な予測ができるようにすることが好ましい。しかし、ドラム8は、時間的に一定であるドラム8にわたって変化する温度プロファイルを有するのが望ましい場合がある。例えば、ドラム8の表面中央の温度は、ドラム端部の温度より約0.5〜10度高くてもよい。この温度は、キャスティングボックス4に存在するスラリーの温度と実質的に同様であり、摂氏約5度〜26度である。ステンレス鋼ベルト7などの移動可能な支持体7の温度は、キャスティングボックス4に入る際にベルトの幅にわたり実質的に一定であることが好ましい。ベルトおよびドラムの温度が確実にスラリーにとって最適であるように、温度制御ユニットは、移動可能な支持体7およびドラム8とリターン側で接触する工程用水を再循環する。
【0082】
乾燥装置3は、複数の個別の乾燥ゾーンを含む。個別の乾燥ゾーンは、支持体の下側の蒸気加熱と移動可能な支持体7上方の加熱空気と、好ましくはまた調節可能な排気制御を含むことが好ましい。乾燥装置3の中では、均質化したたばこウェブが、支持体7上で望ましい最終的水分まで乾燥される。
【0083】
ここで、図11を参照するが、本発明のキャスティング装置2を含む装置1の機能は以下の通りである。好ましくは、たばこ粉末と他の成分を混合し組み合わせて形成されるスラリーは、例えば、インラインミキサ(同様に図示せず)を使用して保持タンク(図示せず)からキャスティング装置2のキャスティングボックス4内部へ移送される。均質かつ均一な膜の厚さのウェブへのスラリーのキャスティングという工程100は、例えば、ステンレス鋼ベルト7などの移動可能な支持体7上で実施される。キャスティングする工程100は、スラリーを混合タンクからキャスティングボックス4へと移送することを含む。さらに、センサー30などの好適なセンサーによって、キャスティングボックス4のスラリーのレベル、キャスティングボックス4内部のスラリーの水分、およびスラリーの密度を監視することを含むのが好ましい。
【0084】
キャスティング後速やかに核子ゲージにより制御される均質化したたばこ材料のウェブの厚さおよび坪量は、連続して監視およびフィードバック制御される。キャスティングは、移動可能な支持体7と間隙を形成するキャスティングブレード6の手段により実施されうるが、ここでは間隙の寸法のフィードバック制御も可能である。端部23に二つの異なる曲率半径を含むキャスティングブレード6の形状により、均質化したたばこの実質的に均一なウェブの再現可能な形成を可能にする。
【0085】
さらに、このキャストウェブは乾燥装置3による乾燥工程101を受ける。この乾燥工程は、好ましくは、個別に制御可能なゾーンを備えるエンドレスなステンレス鋼ベルトの乾燥機中のキャストウェブの均一で穏やかな乾燥を含む。乾燥中、各乾燥ゾーンの穏やかな乾燥プロファイルを確実にするために、各乾燥ゾーンでキャストウェブの温度を監視する工程102が実施されるのが好ましい。このキャストウェブは、底部加熱および上部空気乾燥のスチームパンを備える鋼ベルト7上で所望の最終水分まで乾燥される。すべての乾燥ゾーンは、蒸気フローと圧力制御とを備え、空気温度と空気フローを完全に調整可能にして所望の乾燥プロファイル提供し、確実に製品滞留時間が守られる。TLC乾燥プロファイルが採用されることが好ましい。
【0086】
キャスティング工程100および乾燥工程101の終わりにおいて、均質化したたばこウェブは支持体7から取り外されることが好ましい。乾燥ステーションの後で適正な含水量にてキャストウェブのドクタリング103を実施することが好ましい。水分の標的または仕様に達するようにウェブの含水量をさらに取り除くために、キャストウェブは二次乾燥プロセス104を通過することが好ましい。第二の乾燥工程では、水分がウェブの両面から容易に除去することができるように、このキャストウェブがワイヤ上に置かれるのが好ましい。乾燥工程101、104の後、例えば、単一のマスターボビンを形成するように、巻き取り工程105でキャストウェブを一つ以上のボビンに巻き取ることが好ましい。次に、切り込みを入れて小さいボビンを形成するプロセスによってより小さいボビンの製造を実施するために、このマスターボビンを使用してもよい。次に、エアロゾル発生物品(図示せず)の製造のためにより小さいボビンを使用してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図10c
図10d
図11