【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の態様によれば、本発明は、均質化したたばこ材料のキャストウェブの製造のためのキャスティング装置に関し、前記キャスティング装置は、キャストウェブを形成するように、前記均質化されたたばこ材料のスラリーを保持するように適合されたキャスティングボックス、移動可能な支持体、およびキャスティングボックスに保持されたスラリーを移動可能な支持体上にキャスティングするように適合されたキャスティングブレードを備える。本発明によれば、前記キャスティング装置は、前記キャスティングブレードに、それぞれ第一、第二および第三の位置に結合された第一、第二および第三のアクチュエータをさらに備え、前記第一、第二および第三のアクチュエータが、それぞれ前記第一、第二および第三の位置で前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の距離を変化させるのに適している。
【0009】
均質化したたばこ材料は、スラリーを取得するため様々な成分を水と混合することによって形成される。その後の工程では、均質化した材料の連続ウェブが、スラリーを支持体上にキャスティングすることによって連続して支持体上に生成される。結果として得られる均質化したたばこ材料は、引張強さが比較的高く、かつ均質性が良好であることが望ましい。
【0010】
均質化したたばこ材料を実現するために使用され、引張強さおよびキャストウェブの均質性に影響を与えるスラリーの重要なパラメータは、特にスラリーのキャスティング時に、均質化したたばこ材料の連続ウェブを形成するためのその粘度である。さらにまた、スラリーの密度は、特にキャスティング前に、キャストウェブの最終品質を決定するために重要である。適切なスラリー密度、粘性および均質性は、欠陥の数を最小化し、またキャストウェブの引張強さを最大化する。
【0011】
このスラリーは、複数の様々な構成成分または成分を含む。これらの構成成分は均質化したたばこ材料の性質に影響を与える。第一の成分はたばこ粉末ブレンドであり、これはスラリー中に存在するたばこの大半を含有することが好ましい。たばこ粉末ブレンドは均質化したたばこ材料中のたばこの大半の供給源であり、それゆえ、例えば、均質化したたばこ材料を加熱して製造されるエアロゾルなどの最終製品に風味を与えるものである。たばこ材料ウェブの引張強さを増加するために、強化剤として作用する、セルロース繊維を含有するセルロースパルプが添加されるのが好ましい。均質化したシートの引張特性を強化するため、およびエアロゾルの形成を促進するために、結合剤およびエアロゾル形成体も添加されるのが好ましい。さらに、均質化したたばこ材料のウェブをキャスティングするために最適なある一定の粘性および水分に達するために、スラリーに水が添加される場合がある。スラリーは、スラリーを可能な限り均質にするために混合される。
【0012】
このスラリーは、キャスティングボックスに収集され、その中に所定の量のスラリーが保持されるのが好ましく、例えば、キャスティングボックスに所定の充填レベルのスラリーが予め設定されている。このスラリーが移動可能な支持体上にキャストされ、均質化したたばこ材料の連続ウェブを形成する間、スラリーが連続してキャスティングボックスに供給されるのが好ましい。
【0013】
本発明によれば、このスラリーは、移動支持体とキャスティングブレードとの間に形成されるキャスティングボックスの出口を通って、移動支持体の幅にわたってキャストされる。この支持体は、キャスティングボックスからスラリーを除去するために、長軸方向に沿って移動する。この支持体は、例えば、ステンレス鋼製の移動可能なベルトを含んでもよい。このキャスティングブレードは、実質的に、均一の厚さを移動可能な支持体上に有するスラリーのキャストウェブを形成するために使用される。さらに、このブレードと支持体との間の距離または間隙は、スラリーのキャストウェブの厚さを決定する。
【0014】
移動可能なベルトにキャストされる均質化したたばこ材料のウェブの厚さは、所望の仕様内の最終製品を得るためにキャストウェブの幅にわたりできるだけ均一である好ましい値を有する。本発明により、こうした均一な厚さを達成するために、キャスティングブレードと移動可能な支持体との間に存在する間隙は、調整可能である。局所的に調整可能である、すなわち、キャスティングブレードが、移動可能な支持体からの距離を、全体としてだけではなく局所的にも変更できることが好ましい。したがって、キャスティングブレードおよび移動可能な支持体の不規則さが補正されうる。有利なことに、本発明によれば、ブレードと支持体との間の距離は不規則さが存在する場所で局所的に変化させることができる。この局所的な変化は、キャスティングブレードに結合された、独立的に調節できることが好ましい三つのアクチュエータによって得ることができる。このように、最適なキャスティングおよびブレードの位置の良好な制御の両方を達成可能である。
【0015】
「均質化したたばこ材料」という用語は、本明細書を通して、たばこ材料の粒子の凝集によって形成される任意のたばこ材料を含むように使用される。本発明では、均質化したたばこのシートまたはウェブは、例えば、たばこ葉ラミナ、たばこ葉茎またはそれらのブレンドを粉砕することによって、またはその他の方法で粉末化することによって得られた粒子状たばこを凝集することにより形成される。
【0016】
さらに、均質化したたばこ材料は、たばこの処理、取り扱い、および移送中に形成された少量のたばこダスト、たばこ微粉、およびその他の粒子状たばこ副産物のうちの一つ以上を含んでもよい。
【0017】
本発明では、スラリーは、適切にブレンドされた異なるたばこタイプのたばこラミナおよびたばこ茎によって形成されるのが、好ましい。ここでは、「たばこタイプ」という用語は、たばこの異なる品種のうちの一つを指す。本発明に関しては、これらの異なるたばこタイプは、ブライトたばこ、ダークたばこおよびアロマティックたばこの三つの主な群に区別される。これらの三つの群間の区別は、たばこがたばこ製品中でさらに加工される前に受ける乾燥処理プロセスに基づく。
【0018】
上述のように、スラリーは可能な限り均質であるべきであり、これによってその粘性が可能な限り均一でキャスティングに最適である標的値に近づく。均一な粘性を得るために、スラリーの全量をキャスティングする前に混合することが好ましい。
【0019】
次にスラリーは、キャスティングボックスに移送されて、所定のレベルまでキャスティングボックスを満たすことが好ましい。キャスティングボックス内のスラリーの充填レベルは、実質的に、キャスティングボックス内で一定に保持されるのが好ましい。スラリーは、キャスティングボックスの底部に実現された開口部から、例えば、重力の影響下でキャスティングボックスから流れ出る。さらに、キャスティングボックス内の能動輸送の手段は、プッシャまたはプロペラなどにより提供可能である。このキャスティングボックスは、加圧容器を形成するのが好ましい。制御手段は、キャスティングボックス内部の圧力制御ができるように提供されることが好ましい。こうした実施形態において、キャスティングボックスを出るスラリーの流れは、キャスティングボックス内の内部圧力レベルを設定し維持することにより追加的に制御される。キャスティング装置は、キャスティングボックス内部のスラリーを混合するための混合装置を備えることが好ましい。そして、このスラリーは、キャスティングブレードと移動する支持体との間に形成された間隙を通ることによって、移動可能な支持体上に送出される。
【0020】
このキャスティングブレードは、幅が非常に広く、実質的にキャスティングボックスの幅すべてに沿って延在するのが好ましい。好ましくは、ブレードの幅とブレードが取り付けられるキャスティングボックスの幅は、同様である。キャスティングブレードの幅にわたり、第一、第二および第三のアクチュエータが配置される。本発明によれば、第一、第二および第三のアクチュエータは、キャスティングブレード自体に、それぞれ第一、第二および第三の位置に、例えば締結手段によって結合される。キャスティングボックスとキャスティングブレードとの間の結合は、例えば第一、第二または第三のアクチュエータのうち一つ、二つ、または全部によってキャスティングボックスに対してキャスティングブレードが移動可能なようになされる。本発明では、少なくとも三つのアクチュエータが存在するが、キャスティングブレードと移動可能な支持体との間の距離寸法を変化させるためにキャスティングブレードに結合された追加的なアクチュエータが提供されうる。
【0021】
間隙寸法の変化はしたがって、三つのアクチュエータによって、キャスティングブレードの三次元空間内の位置である空間的位置付けを変化するように実行される。支持体の空間的位置は実質的に一定であるとみなされるが、支持体の位置の変化は除外されない。間隙の寸法の変化は均等なものでもよく、これはすべてのアクチュエータがブレードを同一量だけ移動させることを意味する。あるいは、アクチュエータがブレードを異なる距離でずらしうる場合には不均等なものでもよい。この不均等な作動には、例えば、存在する三つのアクチュエータのうち一つのみまたは二つのみのアクチュエータが動作し、残りは停止したままであるといった場合が含まれる。例えば、ある実施形態では、第一および第二のアクチュエータが非動作で、かつ第三のアクチュエータのみが第三の位置でブレードの空間的位置付けを移動するように制御される。第一および第二の位置でのキャスティングブレードの空間的位置付けは変化せず、第一および第二の位置での間隙の寸法も変化しないか、または第三の位置での変化と比較して比較的少量だけ変化する。さらに、アクチュエータの不均等な作動には、三つのアクチュエータのうち少なくとも一つが他のアクチュエータとは異なる距離でまたは異なる方向にずらされるといった、その他の何らかのキャスティングブレードの変位が含まれる。
【0022】
キャストウェブの厚さは、最終製品、例えば、エアロゾル発生物品において望ましい特性および品質を獲得するための重要なパラメータである。キャストウェブの厚さは特に、キャスティングブレードと移動可能な支持体の間に存在する距離寸法(あるいは間隙)によって決定される。この間隙は以下の通り識別されうる。キャスティングボックスの底部にある開口部により、移動可能な支持体上にスラリーが流れるようになる。移動可能な支持体が、スラリーをキャスティングブレードから離れた方向に運び、それによって移動可能な支持体上に連続的なキャストウェブを形成する。均質な材料のウェブの厚さは、他にもパラメータがある中で、スラリーが付着する移動可能な支持体の上側表面と、キャスティングブレードの最も下の表面との間に存在する距離の寸法に依存する。さらなるパラメータは、キャスティングボックス内のスラリーの密度、スラリーの温度およびスラリーの充填レベルや、キャストウェブの厚さである。均質化したたばこのキャストウェブが「厚い」場合、キャストウェブはいわゆる「ドラッガー」あるいは凝塊などの不良を招く可能性が高い。一方、「薄い」キャストウェブはひび割れの可能性が高くなり、潜在的に製造工程プロセスの中断の原因となる。その結果、キャスティングブレードと移動可能な支持体との間の間隙は、キャスティングブレード領域内での「厚い」ウェブと「薄い」ウェブの間のバランスを維持するために適切に制御される必要がある。
【0023】
さらに、キャストウェブは、例えばスラリーの粘性、同温度およびスラリー自体の成分タイプなど、特定のプロセスパラメータ値に応じて、異なる好ましい厚さを持ちうる。したがって、これらのパラメータが製造バッチ間で変化する場合、キャスティングブレードと移動する支持体との間の間隙寸法は、新しいプロセスパラメータに適合させるために同様に変化させる必要がありうる。
【0024】
間隙寸法を変化することなくバッチ間でのプロセスパラメータが変化すると、キャストウェブの最終的な厚さの変化にもつながりうる。したがって、キャストウェブの厚さを同一に保つために間隙の寸法を変化させる必要がありうる。さらに、一部の用途では、スラリーの粘性は時間に依存する、すなわち、スラリーの粘性は時間経過と共に変化する。この点は特に、例えば、水と接触した時にゲルを形成し、従って粘性が増大する結合剤など、スラリーが膜を形成する構成要素を含む場合にあてはまる。有利なことに、本発明によれば、キャスティングブレードと移動可能な支持体との間の間隙は、製造パラメータの変化に対応する時間の関数として制御されうる。これにより、わずかな無駄で、均質なたばこ材料ウェブの連続的な製造が許容される。
【0025】
さらに、一定の厚さを持つキャストウェブは、乾燥プロセスにも関連性がある。キャスティングの後、均質化したたばこ材料のウェブは乾燥され、この乾燥パラメータは、とりわけ、ウェブの厚さに依存する。キャストウェブが厚さの変動を含む場合、含水量の変化が最終製品に見られることがあり、これにより最終製品の少なくとも部分的な不合格が必要になることがある。
【0026】
本発明は従って、三つのアクチュエータによって間隙寸法を簡単にかつ異なる方法で変化させることができる。様々な位置でキャスティングブレードに結合されたアクチュエータにより、有利なことに、キャスティングブレードと移動可能な支持体との間の間隙の距離の寸法を変更し制御する多くの方法が可能になる。三つの異なる位置に配置された三つのアクチュエータは、間隙の寸法を局所的に変更することができ、すなわち、第一のアクチュエータは、第一の位置の近くの間隙の寸法を変更することができ、第二のアクチュエータは、第二の位置の近くの間隙の寸法を変更することができ、第三のアクチュエータは、第三の位置の近くの間隙の寸法を変更することができる。したがって、間隙寸法の変更は、特定の局所の必要に対して、個別対応可能である。具体的には、三つのアクチュエータは、キャスティングブレードの空間位置を均一な方法または不均一な方法で、変更することができる。均一な方法では、すべての三つのアクチュエータは、キャスティングブレードを同じ方向に同じ量移動する。キャスティングブレードの不均一な移動は、アクチュエータの少なくとも一つが、少なくとも一つの他のアクチュエータとは異なる、量または方向でキャスティングブレードを局所的に変位する場合のキャスティングブレードのすべての他の変位を含む。すべての三つのアクチュエータを同じ量および同じ方向に移動すると、キャスティングブレードの変位が生じて、間隙が増加または低減する。キャスティングブレードの長軸方向幅に沿った三つのアクチュエータ、例えば、ブレードの各端部に一つのアクチュエータおよび中間に一つアクチュエータが存在することは、キャスティングブレードを曲線形状に曲げることができるという点で、二つのアクチュエータシステムよりも有利である。三つのアクチュエータシステムの利点をさらに挙げると、キャスティングブレードの支持点間の距離が、二つのアクチュエータシステムの場合より狭いことである。これにより、特に比較的長いブレードの場合に、引力によるキャスティングブレードの固有変形が低減される。これにより、さらに、たばこ材料の連続ウェブの均質性が向上する。
【0027】
アクチュエータの不均一な変位により、別の形状のキャスティングブレードを生成することができる。例えば、くさび状の間隙または湾曲した間隙を、三つのアクチュエータで得ることができる。上述の通り、ブレードまたは支持体は、これらの構成要素の製造中の位置ずれまたは欠陥に起因して、スラリーと接触する不均一な表面を含む場合がある。位置ずれを補正するために、または、他の要因に起因する他の不均質性を補正するために、不均一な寸法を有する間隙が望ましい場合がある。例えば、ブレードと支持体との間の距離がキャスティングブレードの一方の長軸方向の端部から対向する他方の長軸方向の端部まで異なる場合は、くさび状の間隙を作ることができる。このくさび状形状は、例えば、垂直方向に、キャスティングブレードが、異なる距離を移動するように三つのアクチュエータを動作して得ることができる。あるいは、一つは固定して動かず、他の一つまたは二つのアクチュエータが、局所的にキャスティングブレードを変位させてもよい。湾曲した間隙を選択し実現することもできるが、それは、ブレードが直線ではなく、湾曲した構成であることを意味する。湾曲したキャスティングブレードは、第一のアクチュエータと第二のアクチュエータとの間に位置するアクチュエータを作動させるだけで、得ることができる。あるいは、すべての三つのアクチュエータが動作可能であるが、異なる距離を変位させると、その三つの端部の位置は、直線に沿って配置されず、曲線、凹状または凸状によってのみ接続可能になる。
【0028】
前記第一、第二および第三のアクチュエータのうち少なくとも一つは、線形のアクチュエータであることが好ましい。キャスティングブレードは、実質的に直線的に垂直方向に移動することが好ましい。ところが、変位は必要に応じて円形、曲線またはその他の動作経路に変換されうる。非直線的な変位の動きは、例えば適切なレバーまたはカムを使用して作成されうる。
【0029】
さらに、ブレードは、ある周波数の範囲内で、または所定の時間依存周波数、すなわち、ある周波数の範囲内で規則的またはランダムに変化する周波数で、ブレードを設定周波数で振動させることを可能にする超音波アクチュエータと動作可能に係合することができる。これにより、ブレードを洗浄し、繊維のリスクまたはこのブレードに付着する他の材料を除去することができる。このブレードに付着する材料は、連続した均質なたばこ材料に一貫性のなさを生む恐れのある、いわゆる、「ドラッガー」を引き起こす可能性がある。
【0030】
有利なことに、前記第一、第二および第三のアクチュエータは、それぞれ前記第一、第二および第三の位置で相互に独立的に前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の距離を変化するよう作動できるように構成されている。このように、アクチュエータは、多数の異なる所定の形状または空間的位置に従いブレードを強制的に配置させることができる。ブレードの位置付けにおいて非常に高い自由度が達成され、これによって、均質化したたばこ材料のキャスト連続ウェブの高い精度での最終厚さが許容される。
【0031】
好ましい実施形態によれば、前記第一および第二の位置は、それぞれ前記キャスティングブレードの第一および第二の長軸方向の端部に位置し、また前記第三の位置は前記キャスティングブレードの前記第一および第二の長軸方向の端部間に位置する。三つのアクチュエータがブレードの長軸方向の幅に沿って実質的に一様に分布されている構成により、ブレードの位置付けにおいて十分な柔軟性が許容され、また同時に、ブレードの重みが実質的に一様に分布する方法でブレードが保持されていることから、重力によるブレードの望ましくない変形の可能性が最小化される。
【0032】
本発明による機器は、前記第一、第二または第三のアクチュエータの第一、第二または第三の位置のうち少なくとも一つを前記キャスティングブレードに沿って変位させる横断的変位手段を備えることが好ましい。このように、ブレードと支持体との間の距離を変化させることができるだけでなく、アクチュエータ間の距離も変化させることができる。これにより、本発明による装置の柔軟性の度合いが異なるまたは変化するプロセスパラメータに適合するためにさらに向上する。
【0033】
有利な実施形態では、本発明のキャスティング装置は前記キャスティングブレードに結合された複数の微調整要素をさらに備え、それぞれの微調整要素は前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の距離を局所的に変化させるように適合されている。本発明によれば、微調整要素は前記キャスティングブレードの長軸方向の幅に沿って位置する。例えば、微調整要素は約5cmおき〜約15cmおきに提供される。前記微調整要素のうち少なくとも一つは、前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の前記距離が約1μm〜約200μmから成る値で局所的に変化するように適合されることが好ましい。微調整要素によって有利なことに、キャスティングブレードおよび移動可能な支持体(例えば、ステンレス鋼ベルト)が固有に持つ製造上の不正確さの補正、ならびに時間経過と共に発生しうるキャスティングブレードおよび移動可能な支持体の局所的な摩耗が許容される。
【0034】
移動可能な支持体に対するキャスティングブレードの位置付けは、2ステップのプロセスが好ましい。通常はキャスティングプロセスが開始される前に行われる第一のステップでは、初期的な間隙寸法を設定する目的で、支持体に対するブレードの位置を調節するために、微調整要素によるブレード位置付けの調節がなされる。初期的な調節では、ブレードおよび支持体自体の形状や欠陥が考慮される。ブレード位置付けの第二の調整は、キャスティングステップが開始され、かつキャストウェブおよびスラリーの特性が測定された後で、最適な間隙の寸法および構成に達するように三つのアクチュエータを制御することにより実施される。第二の調整は、製造工程プロセス全体を通して連続的または半連続的であることが好ましい。
【0035】
有利なことに、前記微調整要素が、それぞれ前記移動可能な支持体に対してねじを締めたり緩めたりした時に前記キャスティングブレードを局所的に上げ下げするように適合させたねじを備える。これにより微調整要素の簡単な動作が許容される。
【0036】
好ましくは、キャスティング装置は、センサーと、前記センサーとの間で信号の送受信をするよう適合され、かつ前記第一、第二および第三のアクチュエータとの間で信号の送受信をするよう適合された制御ユニットとをさらに備え、前記センサーは、前記キャストウェブまたは前記スラリーのパラメータを検出して対応する信号を前記制御ユニットに送信するよう適合され、さらには、コマンド信号を前記第一、第二または第三のアクチュエータに送信してそれぞれの第一、第二および第三のアクチュエータを動作するよう適合される。
【0037】
好ましくは、キャスティング装置は、制御ユニットおよび前記制御ユニットに信号を送信する一つ以上のセンサーを備え、前記一つ以上のセンサーは、移動可能な支持体上にキャストされたキャストウェブのドラッガーを特定するセンサーと、移動可能な支持体上にキャストされた前記キャストウェブの水分を判定するセンサーと、移動可能な支持体上にキャストされた前記キャストウェブの厚さまたは厚さの変化を測定するセンサーと、前記キャスティングボックスのスラリーの粘性を測定するセンサーと、前記キャスティングボックスのスラリーの温度を測定するセンサーと、移動可能な支持体上にキャストされた前記キャストウェブ上の欠陥の位置を検出するセンサーと、前記キャスティングボックスのスラリーの密度を検出するセンサーと上記センサーの二つ以上の組み合わせのうち少なくとも一つを含む。
【0038】
スラリーの形成は、最終製品の品質を決定する繊細なプロセスである。本発明によって調製されたスラリーをキャスティングすることにより得られた均質化したたばこシートの拒絶のリスクを最小化するために、いくつかのパラメータを制御してもよい。これらのプロセスパラメータは、数ある中でも、スラリーの温度、キャスティングボックスの温度、移動可能な支持体の温度、スラリーの含水量、スラリーの滞留時間または時間経過およびスラリーの粘性である。例えば、スラリー内の膜形成物質の連続的なゲル化によるなど、粘性は実際に、温度、水分およびスラリーの時間経過の関数であることが周知である。従って、スラリーの粘性、温度、および含水量のうちの少なくとも一つを適切なセンサーを用いてモニターすることが好ましい。パラメータを一連の所定の範囲内に維持するために、オンライン信号処理および制御のためのセンサー信号をフィードバックループで使用することが好ましい。例えば、プロセス制御は、スラリーの冷却量、キャスティングボックスの冷却量、スラリーの温度、キャスティングボックスの温度、移動可能な支持体の温度、キャストウェブの幅に沿った温度プロファイル、移動可能な支持体の速度、スラリーに導入される水の量、スラリーを形成するその他の化合物の量、上述のプロセスパラメータ変化の組み合わせおよびその他のパラメータなど、適切なプロセスパラメータの変化による影響を受けうる。
【0039】
キャスティングにおける前記キャストたばこ材料ウェブの水分は、約60パーセント〜約80パーセントであることが好ましい。均質化したたばこ材料の製造のための方法は、前記キャストウェブを乾燥し、乾燥後に前記キャストウェブを巻き取る工程を含むことが好ましい。巻き取り工程における前記キャストウェブの水分は、たばこ材料ウェブの乾燥質量の約7パーセント〜約15パーセントであることが好ましい。巻き取り工程における前記均質化したたばこウェブの水分は、均質化したたばこウェブの乾燥質量の約8パーセント〜約12パーセントであることが好ましい。キャスティングにおけるスラリーの水分は、その後の製造段階において、均質化したたばこウェブの均質性および均質化したたばこ材料の製造性に影響を与える、制御するべき別の重要なパラメータである。
【0040】
特に均質化したたばこウェブを形成するためにスラリーをキャスティングする工程の前のスラリーの密度は、均質化したたばこ材料のウェブの最終品質を決定する上で重要である。スラリーの均質な密度は、欠陥数を最小限に抑え、均質化したたばこ材料のウェブにわたる引張強さを増大させる。
【0041】
有利なことに、前記制御ユニットが、フィードバックループを実施するために前記センサーの一つ以上から受信した信号に応じて、前記第一、第二、または第三のアクチュエータに命令するように適合されて、前記信号に応じる前記一つ以上のセンサーによって検出されたパラメータの一つ以上を変更する。
【0042】
本発明のキャスティング装置には、一つ以上のフィードバックループが存在するのが好ましい。例えば、ドラッガーなどの欠陥の存在、および均質化したたばこ材料のウェブの厚さの不均質性により、最適でないキャスティング条件の存在が暗示される。これらの最適でないキャスティング条件は、いくつかの要因による可能性があり、例として、好ましい範囲外にあるスラリーの密度、キャスティングブレードの幅を超えるキャスティングブレードと移動可能な支持体との間の一定でない間隙、好ましい水分範囲外のスラリーの水分レベルなどが挙げられる。したがって、キャスティング工程で役割を果たすパラメータ値を取得するために複数のセンサーを使用するのが有利である。そして、これらの値は、例えば、キャスティングの条件により、キャストウェブの製造が所望の使用範囲外にされる場合に、フィードバックループを用いて調整可能である。欠陥の出現またはパラメータの不均一性もしくは標準規定範囲外へのパラメータの変位は、一つ以上のセンサーによって検出され、対応する信号が中央制御ユニットへ送信される。この中央制御ユニットは、偏向するプロセスパラメータを変更するまたは一つ以上の追加の別のパラメータを修正するためにアクチュエータを操作して、検出された問題を訂正することができる。ウェブ内の欠陥の位置は記録され、均質化したたばこ材料の欠陥領域のその後の不合格用に使用されることが好ましい。
【0043】
有利な実施形態では、前記キャスティングブレードは、ブレード端を画定する横断断面を有し、前記ブレード端が、第一の曲率半径を有する第一の円弧および第二の曲率半径を有する第二の円弧を含むか、または前記ブレード端が楕円の一部分を含む。
【0044】
このキャスティングブレードは、その幅であり、かつ実質的にキャスティングボックスの幅すべてに沿って延在することが好ましい主たる寸法を持つ。好ましくは、ブレードの幅とブレードが取り付けられるキャスティングボックスの幅は、同様である。このキャスティングブレードの、ブレードの幅方向に対して実質的に垂直な平面によって切断された部分が、ブレード端を画定する(デカルトの座標X、YおよびZでは、この切断面は、(X、Z)面であり、Xは、移動可能な支持体中のスラリーの移動方向であり、Yは、キャスティングブレードの幅方向であり、Zは、垂直方向である)。ブレード端は切断面(X、Z)内の所定の曲線に従う。ブレード端では、少なくとも2点は、縁部の末端に属していないと考えられる、すなわち、ブレードが開始する、ブレードが終了する、またはキャスティングボックスに接続されているところは、縁部の始まりまたは終わりとは考えられない。これらの2点では、ブレード端により規定された曲線は、連続的かつ連続した第一の導関数を有することが好ましい。
【0045】
この部分のこれらの二つの異なる点は、第一の点および第二の点と呼ばれ、異なる曲率半径を有する。この文脈では、「異なる点」という用語は、第一の点の座標(X
1、Z
1)の少なくとも一方が、第二の点の座標(X
2、Z
2)の一方と異なることを意味する。したがって、第一の点のブレード端の曲率半径は、第二のブレード端の曲率半径と異なる。
【0046】
このように、第一の点のブレード端の曲率半径および第二の点の曲率半径は、互いに独立したものであり、このブレードの形状は製造ニーズにしたがって、変化することができる。例えば、スラリーが間を通って移動可能な支持体上にキャストされる、ブレードと移動可能な支持体との間の間隙の区域で、大きな曲率半径が必要となる可能性がある。スラリーが円滑に間隙に近づくことを可能にするため、間隙の外側に大きい曲率半径を予見することができる。キャスティング区域の外側では、ブレードの寸法を程よいサイズに維持するために小さい曲率半径を使用することができる。このブレードの形状は、単一の曲率半径だけでは規定されず、別の曲率半径を使用して製造ニーズに適合可能である。このように、一定で均一な曲率半径を有する円筒状ブレードを有する装置に存在する問題が、有利なことに回避可能である。
【0047】
好ましくは、第一の点の曲率半径および第二の点の曲率半径は両方とも、約1mm〜500mmから成り、より好ましくは、約3mm〜約100mmから成り、最も好ましくは、5mm〜約50mmから成る。第一の曲率半径が約1mm〜約50mmで、第二の曲率半径が約10mm〜約500mmであるのが好ましく、第一の曲率半径が約3mm〜約25mmで、第二の曲率半径が約15mm〜約100mmであるのがより好ましく、第一の曲率半径が約5mm〜約25mmで、第二の曲率半径が約20mm〜約50mmであるのが最も好ましい。第一の曲率半径と第二の曲率半径は、互いに約5mm〜約100mm異なるのが好ましく、第一の曲率半径と第二の曲率半径は、互いに約10mm〜約50mm異なるのがより好ましく、第一の曲率半径と第二の曲率半径は、互いに約15mm〜約30mm異なるのが、最も好ましい。これらの曲率半径は、均質化したたばこ材料のキャストウェブの製造のためにキャスティングブレードの実現に特に適切であることがわかっている。
【0048】
本明細書では、略してRと呼ばれる、第一および第二の点でのブレード端の曲率半径などといったある点での曲線の曲率半径は、その点での曲線に最も近似する円弧の半径の尺度として定義される。それは、曲率の逆数である。
【0049】
平面曲線の場合、曲率半径は、Rで示され、という絶対値を示す。
【数1】
式中、sは、曲線上の固定点からの弧の長さであり、φは、正接角であり、κは、曲率である。
【0050】
切断面(X、Z)のブレード端によって規定された曲線が、デカルトの座標でz(x)として与えられた場合、曲率半径は(曲線が、2次まで微分可能であると仮定すると)、
【数2】
式中、
【数3】
である。
【0051】
有利なことには、ブレード端は、前記第一の曲率半径を有する第一の円弧および前記第二の曲率半径を有する第二の円弧を含む。あるいは、ブレード端は楕円の一部を含む。
【0052】
ブレード端は、二つの曲率半径または複数の異なる曲率半径のいずれか一つを有する点のみを含むことができる。第一の場合、このブレードは、第一の曲率半径によって規定されている一方および第二の曲率半径による他方の二つの円筒の二つの部分の交差によって形成される固体を含むことができる。この実施形態では、(X、Z)面に沿ったキャスティングブレードの部分は、第一の円弧、第一の曲率半径を有する第一の円筒の基部、および第二の円弧、第二の曲率半径を有する第二の円筒の基部を含む曲線を規定する。したがって、曲率半径は、第一の弧と第二の弧の中で一定である。あるいは、ブレード端は楕円の一部を含むことができる。楕円は、連続して変化する曲率半径を有し、したがって、この実施形態では、ブレード端によって画定される楕円の部分の異なる点それぞれは異なる曲率半径を有する。本発明によれば、ブレード端は、一つ以上の円弧および一つ以上の楕円の部分の両方を含むことができる。
【0053】
好ましくは、例えば、異なる曲率半径を有する円弧の間、または複数の楕円もしくは楕円の異なる点と円弧との間などの異なる点の間の交差点は、連続しており、それにより、ブレード端を形成する切断面(X、Z)によって画定される結果としての曲線は連続しており、その第一の導関数もまた連続している。
【0054】
前記第二の点は、前記移動可能な支持体に実質的に面している前記キャスティングブレードの底部に配置されるのが好ましい。第二の曲率半径は、キャスティングの瞬間にスラリーに近接するまたは接触するブレードの一部に属するのが好ましい。さらに、第二の曲率半径は、比較的「大きい」。大きい曲率半径は、支持体へスラリーが緩やかに流れることを可能にする。というのも、所定の長さの支持体とキャスティングブレードの間の間隙は、かなり狭いからである。言い換えると、ブレードが支持体に面している部分に「大きい」曲率半径を有する場合、キャスティングブレードと支持体との間に形成された間隙は、ウェブのキャスティングの方向に、すなわち、移動可能な支持体が移動する方向に、ゆるやかに寸法を変化させる。比較的大きい曲率半径を有するブレードでは、ブレードと支持体との間の距離が、キャスティングの方向に沿って少量変化している。このように、支持体の非常に長い距離の間、正確に画定された厚さがスラリーに強要される。これにより、通常はブレードと支持体との間に存在する間隙よりも厚くかなり大きい曲率半径を有するブレード端によって画定される「長い」間隙を通ることができない、凝集体の蓄積の最小化が可能になる。
【0055】
さらに、支持体に面するブレードの一部が大きい曲率半径であることで、例えば、曲率半径が大きくなるほど、ブレードと支持体との間に画定された「長く狭い間隙」を完全に流れるには時間が必要であるために支持体へのスラリーの導入が緩慢なことを理由とする、いわゆる、「ドラッガー」などの欠陥の出現を減らすことが可能になり、間隙のサイズはキャスティングの方向(移動可能な支持体が移動する方向)に沿ってより長くなる。
【0056】
第二の曲率半径が比較的大きい場合、第一の曲率半径はそれよりも小さいことが好ましく、その結果、ブレードが厚くなり過ぎず、キャスティング装置の残りの部分に容易に構成可能かつ適合しやすい。このように、比較的大きい曲率半径および比較的小さい曲率半径の組み合わせにより、均一で欠陥を最小化するウェブを移動支持体上にキャスティングすることおよびブレードをキャスティング装置の残りの部分に固定し調整することの両方のために、適切な寸法を有するブレードを取得することが可能になる。
【0057】
第二の態様によれば、本発明は、前記均質化したたばこ材料のスラリーをキャスティングボックスに導入する工程と、キャストウェブを形成するようにキャスティングブレードによって前記スラリーを移動可能な支持体上にキャスティングする工程と、前記キャストウェブまたは前記スラリーのパラメータを決定する工程と、前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の距離を前記パラメータの関数として変化させる工程とを含む、均質化したたばこ材料のキャストウェブを製造するための方法に関連する。有利な実施形態では、前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の距離を前記パラメータの関数として変化させる工程は、前記キャスティングブレードにそれぞれ第一、第二および第三の位置で結合された、第一、第二および第三のアクチュエータを動作する工程を含み、前記第一、第二および第三のアクチュエータのそれぞれが、前記第一、第二および第三の位置での前記移動可能な支持体からの前記キャスティングブレードの距離を変化させるのに適している。こうした方法の利点は、本発明の第一の態様に関連して上記で既に概説してきた。
【0058】
有利なことに、本発明の方法は、均質化したたばこ材料の前記キャストウェブのキャスティングをする前に、前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の前記距離を複数の位置で微調整する工程を含み、前記位置が前記キャスティングブレードの長軸方向の幅に沿って約5cm〜約12cmの距離で相互に間隙を介している。
【0059】
前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の距離を前記パラメータの関数として変化させる工程は、前記キャスティングブレードを非直線的な形状に曲げる工程を含むことが好ましい。ブレードは湾曲するようになり、望ましい間隙の形状に依存して凹面または凸面の形状を有する。
【0060】
好ましい実施形態では、前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の距離を変化させる工程は、前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の平均距離が約0.1mm〜約2mmであること、より好ましくは前記キャスティングブレードと前記移動可能な支持体との間の平均距離が約0.2mm〜約1.5mmであることを達成する工程を含む。均質化したたばこ材料のキャストウェブの厚さは、完成品の品質および一貫性に非常に関連する。この厚さが均一であることが望ましく、いずれの塊、凝集体、繊維、粗粒も含まないのが望ましい。ブレードと支持体との間に生成された間隙を有する本発明のキャスティングブレードの特定の設計は、スラリーが均一の厚さの連続ウェブにキャストされることを確実にする。さらに、移動可能な支持体の幅および長さに沿った破損ならびに他の欠陥の発生を、有利なことに低減できる。
【0061】
本発明がさらに有利な点は、非制限的に添付の図面を参照しながら、本発明を実施するための形態より明らかになろう。