(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで図面を参照すると、
図1aは、第1の主面6を有するバッキング又は基板4と、基板4の第1の主面6に配置された複数の研磨粒子8とを含む研磨物品2を示す。明細書及び添付図面全体を通して、機能的に類似している特徴は、同様の参照符号に100を足した同様の符号で指し示される。
【0021】
研磨粒子8はバッキング4に、たとえば任意選択の粘着性メイク被覆10を使用して接合することができ、又は研磨粒子8は、バッキング4に直接貼り付けることができる。図示の実施形態では、研磨物品2は、可撓性バッキング層4を含む被覆研磨剤製品であり、研磨粒子8がバッキング層4の第1の主面6にメイク被覆層10を介して接合されている加えて、研磨物品2は、研磨粒子8を覆って付けられた任意選択のサイズ被覆(図示せず)を含み得る。
【0022】
メイク被覆又はサイズ被覆10は、それが特定の研磨物品及び意図された最終使用用途のための所望の機能及び特性をもたらす限り、本明細書の発明には重要ではない。適切なメイク被覆及びサイズ被覆には、たとえば、フェノール樹脂、アミノプラスト樹脂、硬化性アクリル樹脂、シアネート樹脂、ウレタン、及びこれらの組合せなどの熱硬化性樹脂を含む、多種多様な既知の樹脂が挙げられる。
【0023】
同様に、特定のバッキング又は基板4は、それが特定の研磨物品及び意図された最終使用用途のための所望の機能及び特性をもたらす限り、本明細書の発明には重要ではない。適切なバッキング材料には、たとえば、布、紙、ポリマーフィルム、不織材料、加硫繊維材料、スクリム、及び他のウェブ様基板が挙げられる。
【0024】
図示の実施形態では、研磨物品2は、バッキング層4、メイク被覆10、及び研磨粒子8によって形成された単一の研磨剤層を含む。単一の研磨剤層は、たとえば、研磨剤シート、パッド又はディスクに転換されてよい。あるいは、研磨物品2は複数の研磨剤層を含んでよい。特定の実施形態では、研磨物品2は、それ自体の上にらせん状に織られて回旋状の研磨剤ディスクを形成する不織材研磨剤シートを含み得る。あるいは、研磨物品は、研磨剤「フラップ」に形成されている複数の不織材研磨剤シート層を含むことができ、この研磨剤フラップは、ハブのまわりに径方向に配置されてフラップディスクを形成する。
【0025】
参照の目的で、xyz座標系が
図1に提示されている。図示の実施形態では、研磨物品2は、研磨物品2の長手方向に対応するy軸と、y軸に垂直である研磨物品2の横断方向すなわち横方向に対応するx軸と、y軸及びx軸に直交するz軸とを含む。x軸とy軸は、研磨物品2の第1の主面6に概ね対応する平面を画定し、z軸は、x−y平面から外向きに、研磨物品2の第1の主面6から離れる方向に延びる。
【0026】
図示の実施形態では、研磨物品2は、長手方向軸yと、横軸xと、複数の研磨粒子8をバッキング4に固定するための第1の主面6のメイク被覆10とを有するバッキング4を含む。研磨粒子8の一部分は、バッキング4のy軸の方向に延びる長手方向軸と、バッキング4のy軸に直交するz方向軸とを含む。本発明の1つの態様によれば、研磨粒子8の大部分のz軸回転配向は、規定の範囲内でランダムに異なり、研磨粒子8のy方向の間隔はランダムに異なる。
【0027】
図1bを参照すると、研磨粒子8が詳細に示されている。研磨粒子8は概ね三角形の外形を有し、幅「w」、長さ「l」、及び厚さ「t」を持つ。加えて、研磨粒子8の幅w及び長さlの寸法は、厚さtの寸法を超える。しかし、多種多様な研磨粒子が、本明細書に記載の様々な実施形態において利用されてよいことを理解されたい。たとえば、研磨粒子8は、たとえば、四角形、星形又は六角形などの定形の(たとえば対称の)外形、及び不定形の(たとえば、非対称の)外形などを含む、様々な形状及び外形で提供されてよい。
【0028】
研磨粒子8の特定のタイプ(たとえば、サイズ、形状、化学的組成)は、研磨粒子8の少なくとも一部分が所望の程度の回転配向を示す、かつ/又は実現することができる限り、研磨物品2にとって特に重要であるとは考えられない。すなわち、研磨粒子は概ね対称の外形を有し、少なくとも1つの鋭い先端を含むことができ、回転配向を示すことができる。1つの実施形態では、研磨粒子8の少なくとも一部分は細長く、細長いスロットを通過させることによって直立の姿勢で配向されるように構成される。
【0029】
加えて、研磨物品2は、所望の程度の回転配向を示すことができる研磨粒子の混合物と、所望の程度の回転配向を示すことができない研磨粒子両方の混合物を一緒に含み得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、適切な研磨粒子は細長い縁部を持ち、その細長い縁部に直立に置くことができる。より具体的には、適切な研磨粒子は、細長い縁部を画定する長さ及び厚さを持つか、又は細長い縁部を画定する幅及び厚さを持つことができ、長さ及び幅がそれぞれ厚さを超える。このように構成されると、適切な研磨粒子は、板様の形を有するとして、又は「板状研磨粒子」として記述されてよい。適切な板状研磨粒子には、破砕研磨粒子と成形研磨粒子の両方が含まれる。適切な研磨粒子にはまた、板様の形を有する研磨剤の塊も含まれる。
【0031】
別の実施形態では、研磨粒子には表面特徴が含まれ得る。表面特徴には、たとえば、実質的な平坦面、三角形、長方形、六角形、又は多角形外周部を有する実質的な平坦面、凹面、凸面、頂点、開口、稜線若しくは隆起線、又は複数の線、及び/又は溝若しくはチャネル、又は複数の溝若しくはチャネルが含まれ得る。このような表面特徴は、成形、押出し、スクリーン印刷、又は研磨粒子を成形する他の加工の間に形成することができる。特定の実施形態では、このような研磨粒子は、研磨粒子の少なくとも一部分のz方向回転配向が規定の範囲内でランダムに異なるように配置される。
【0032】
更に別の実施形態では、研磨粒子の少なくとも一部分はベースを含み、その研磨粒子は、ベース上に直立の姿勢で載っているように構成され、それにより基板から外向きに突き出るようになる。
【0033】
上記で暗示されたように、研磨物品2は、異なるタイプの研磨粒子の混合物を含み得る。たとえば、研磨物品2には、板状粒子と非板状粒子、破砕粒子と成形粒子(バインダーを含まない個別研磨粒子でもバインダーを含む塊研磨粒子でもよい)、従来の非成形及び非板状の研磨粒子(たとえば充填剤材料)とサイズの異なる研磨粒子、の混合物が、研磨粒子の少なくとも一部分が板状の形を有するか、又はそれとは別様に所望の程度の回転配向を示すことができる限り、含まれ得る。
【0034】
適切な成形研磨粒子の例は、米国特許第5,201,916号(Berg)、同第5,366,523号(Rowenhorst(Re35,570))、及び同第5,984,988号(Berg)に見いだすことができる。米国特許第8,034,137号(Ericksonら)には、元の形状特徴の一部を保持する破片を形成するために特定の形状に形成されてから破砕されたアルミナ破砕研磨粒子が記載されている。いくつかの実施形態では、成形αアルミナ粒子は、精密成形されている(すなわち、粒子は、それを作製するのに使用される製造ツール内の空洞の形状によって少なくとも部分的に決定される形状を有する)。このような成形研磨粒子及びその調製の方法に関する詳細は、たとえば米国特許第8,142,531号(Adefrisら)、同第8,142,891号((Cullerら)、及び同第8,142,532号(Ericksonら)、及び米国特許出願公開第2012/0227333号(Adefrisら)、同第2013/0040537号(Schwabelら)、及び同第2013/0125477号(Adefris)に見いだすことができる。
【0035】
適切な破砕研磨粒子の例には、溶融酸化アルミニウム、熱処理酸化アルミニウム、白色溶融酸化アルミニウム、3M CERAMIC ABRASIVE GRAINとして3M Company,St.Paul,Minnesotaから市販されているものなどのセラミック酸化アルミニウム材料、褐色酸化アルミニウム、青色酸化アルミニウム、炭化ケイ素(緑色炭化ケイ素を含む)、二ホウ化チタン、炭化ホウ素、炭化タングステン、ガーネット、炭化チタン、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、ガーネット、溶融アルミナジルコニア、酸化鉄、クロミア、ジルコニア、チタニア、酸化スズ、石英、長石、すい石、金剛砂、ゾルゲル由来セラミック(たとえば、αアルミナ)、及びこれらの組合せを含む、破砕研磨粒子が挙げられる。更なる例には、米国特許第5,152,917号(Pieperら)に記載されているものなどの、バインダーマトリックス中の研磨粒子(板状であってもなくてもよい)の破砕研磨複合体が挙げられる。数多くのそのような研磨粒子、塊、及び複合体が当技術分野で知られている。
【0036】
破砕研磨粒子を分離できるゾルゲル由来研磨粒子、及びその調製の方法の例は、米国特許第4,314,827号(Leitheiserら)、同第4,623,364号(Cottringer et al.)、同第4,744,802号(Schwabel)、同第4,770,671号(Monroeら)、及び同第4,881,951号(Monroeら)に見いだすことができる。破砕研磨粒子は、たとえば、米国特許第4,652,275号(Bloecherら)及び同第4,799,939号(Bloecherら)に記載されているものなどの研磨塊を含み得ることもまた考えられる。
【0037】
破砕研磨粒子は、たとえば、ゾルゲル由来多結晶質αアルミナ粒子などのセラミック破砕研磨粒子を含む。αアルミナ、マグネシウムアルミナスピネル、及び希土類の六方晶系アルミン酸塩の微結晶から構成されるセラミック破砕研磨粒子は、たとえば、米国特許第5,213,591号(Celikkayaら)、並びに米国特許出願公開第2009/0165394A1号(Cullerら)、及び同第2009/0169816A1号(Ericksonら)に記載の方法による、ソルゲル前駆体αアルミナ粒子を使用して調製することができる。
【0038】
ゾルゲル由来の研磨粒子を製作する方法に関する更なる詳細は、たとえば、米国特許第4,314,827号(Leitheiser)、同第5,152,917号(Pieper etら)、同第5,435,816号(Spurgeonら)、同第5,672,097号(Hoopmanら)、同第5,946,991号(Hoopmanら)、同第5,975,987号(Hoopmanら)、及び同第6,129,540号(Hoopmanら)、及び米国特許公開第2009/0165394(A1)号(Cullerら)に見いだすことができる。
【0039】
適切な板状破砕研磨粒子の例は、たとえば、PCT/米国出願第2016/022884号、及び米国特許第4,848,041号(Kruschke)に見いだすことができ、これらの内容全体が参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0040】
バインダーに対する破砕研磨粒子の接着を強化するために、研磨粒子は、カップリング剤(たとえば、オルガノシランカップリング剤)又はその他の物理的処理(たとえば、酸化鉄又は酸化チタン)を用いて表面処理されてよい。
【0041】
図1及び
図2を参照すると、研磨粒子8の少なくとも一部分のz軸を中心とする回転配向は、規定の範囲内でランダムに異なる。つまり、研磨粒子8の少なくとも一部分のz方向回転配向の程度は規定の範囲内に制約されるが、その規定の範囲内で、研磨粒子のz方向回転配向はランダムに異なる。しかし、研磨物品2は、本明細書に記載の本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく規定の範囲の外側のz方向回転配向を有する、特定の割合の研磨粒子を含み得ることを理解されたい。たとえば、
図1a及び
図2に示された研磨物品2において、8aと標示された研磨粒子は、規定の範囲の外側にあるz方向回転配向を有する研磨粒子を表すものである。
【0042】
別の態様では、研磨粒子8は、ある平均のz軸回転配向を有し、ある規定の割合の研磨粒子は、その平均z軸回転配向の規定の範囲内のz軸回転配向を有する。更に別の態様では、研磨粒子8は概ね、1つの軸を有する経路11a、11b、11cに沿って配置され、各研磨粒子8が長手方向軸を有し、研磨粒子の少なくとも一部分の長手方向軸は、経路11a、11b、11cの軸に対して規定の範囲内にある。
図1a及び
図2に示された実施形態では、研磨粒子の経路11a、11b、11cは概ね直線である。そのため、研磨粒子の各経路11a、11b、11cの軸は概ね、経路の長手方向軸と一致する。加えて、図示の実施形態では、研磨粒子の各経路11a、11b、11cの軸は、y軸に対応する研磨粒子の長手方向軸と概ね合致している。しかし、各経路11a、11b、11cの軸は、研磨物品2の長手方向軸(すなわちy軸)からオフセットできることを理解されたい。つまり、研磨粒子8は、バッキング4の長手方向軸に対して斜めになっている経路11a、11b、11cを形成するようにバッキング4に付けることができる。加えて、
図3を参照して以下でより詳細に説明されるように、研磨粒子の経路が湾曲している、又は弓形である場合、経路の軸は、研磨粒子の位置において経路と一点で接する。
【0043】
特定の実施形態では、研磨粒子8の少なくとも約55、60、70、80、又は90パーセントのz方向回転配向が、平均研磨粒子z方向回転配向の±45度以内にあり、研磨粒子のz方向回転配向の少なくとも約40、45、50、又は55パーセントが、かつ約65、70、75、又は80パーセント以下が平均粒子z方向回転配向の約±30度以内にあり、研磨粒子のz方向回転配向の少なくとも約30、35、40、又は45パーセントが、かつ約55、60、65、又は70パーセント以下が平均粒子z方向回転配向の約±20度以内にあり、研磨粒子のz方向回転配向の少なくとも約15、20、又は25パーセントが、かつ約30、35、又は40パーセント以下が平均粒子z方向回転配向の約±10度以内にあり、かつ/又は研磨粒子のz方向回転配向の少なくとも約10又は15パーセントが、かつ約20又は25パーセント以下が平均粒子z方向回転配向の約±5度以内にある。
【0044】
次に
図2及び
図2aを参照すると、研磨粒子8の少なくとも一部分の回転配向の規定の範囲が、想像境界線12a、14a、12b、14b、12c、14cの対によって制約されている。想像境界線12a、14a、12b、14b、12c、14cの間の距離はd1と示されている。想像境界線12a、14a、12b、14b、12c、14cは、それぞれ領域16a、16b、16cを画定し、これらは、研磨粒子8のz方向回転配向を角度α(
図2a)未満の角度に全体的に制約する。回転配向の程度は、一部は研磨粒子8のサイズ(たとえば長さl及び厚さt)によって、及び想像境界線12a、14a、12b、14b、12c、14cの対の間の距離d1によって決定される。
【0045】
想像境界線12a、14a、12b、14b、12c、14cは直線又は平行である必要はないことを理解されたい。つまり、想像境界線12a、14a、12b、14b、12c、14cは、境界線12a、14a、12b、14b、12c、14cの内側の研磨粒子が所望の程度のz方向回転配向を持っている限り、たとえば弓形であっても、湾曲していても、曲がりくねっていても、不規則であってもよい。想像境界線12a、14a、12b、14b、12c、14cが概ね、研磨粒子を配置できる経路11a、11b、11cを画定するので、研磨粒子8は、たとえば波状、正弦曲線、円形、又はランダムな経路を含む様々なパターンで提供されてよい。以下でより詳細に説明されるように、波状、正弦曲線、また円形の経路の場合では、経路11a、11b、11cのy軸は、研磨粒子の位置において経路に対する接線になる。
【0046】
本発明の別の態様によれば、研磨粒子の少なくとも一部分の位置は、領域16a、16b、16cの内側の距離d1によって制約される。加えて、隣接する領域16a、16b、16c間の間隔d2は制御することができる。すなわち、
図1a及び
図2に示された実施形態に関して、研磨粒子8の少なくとも一部分の横方向位置は、想像境界線の対の内側の間隔距離d1によって画定された範囲内に制約されるが、d1によって画定された範囲内で、研磨粒子8の横方向位置はランダムに異なる。そのため、研磨粒子8の少なくとも一部分は、複数の列に並べられていると考えてよく、列の中心からの研磨粒子の位置の平均偏差は、たとえば、研磨粒子の厚さの少なくとも約0.5、1、又は1.5倍から研磨粒子8の厚さの約±3、4、又は5倍以内などの規定の範囲内でランダムに異なる。
【0047】
更に、隣接する領域16a、16b、16c間のx軸間隔距離(d2)はランダムではない。その結果、いくつかの実施形態では、x軸方向の研磨粒子8の間隔はランダムにならない。つまり、研磨粒子8間の平均x軸間隔距離は、規定の範囲内でランダムに異なり得る。しかし、研磨粒子8が概ね個別の領域に配置されている場合でも、研磨物品2はまた、その領域の外側(すなわち想像境界線の外側)にある研磨粒子を含み得ることを理解されたい。たとえば、
図1a及び
図2に示された研磨物品2では、研磨粒子8bが、想像境界線12a、14a、12b、14b、12c、14cによって画定された領域16a、16b、16cの外側にあるものとして示されている。それでも、このような研磨粒子のz方向回転配向は、研磨物品2に対するz方向回転配向の規定の範囲内にあり得る。
【0048】
特定の実施形態では、画定領域内の研磨粒子の少なくとも90パーセントが、隣接する画定領域内の研磨粒子から少なくとも約0.01、0.5、1、又は2ミリメートルの距離だけ、かつ約5、7、又は10ミリメートル以内の距離だけ、間隔があけられる。別の特定の実施形態では、画定領域内の研磨粒子の少なくとも90パーセントが、隣接する画定領域内の研磨粒子の少なくともおよそ平均厚さの距離だけ、かつ研磨粒子の平均厚さの約5、7、又は10倍以内の距離だけ、間隔があけられる。
【0049】
隣接する領域16a、16b、16c間の間隔距離d2が減少すると、領域16a、16b、16c内の研磨粒子8の位置もまたx軸方向に変化するので、ある領域内の研磨粒子8のx軸間隔距離d1はランダムに見えることが理解されよう。つまり、隣接する領域同士が十分に近いと(たとえば、距離d2が減少すると)、これらの領域内の研磨粒子8のx軸間隔距離d1は、最終的には隣接する領域間のx軸間隔d2を超えることになる。これが起こると(すなわち、隣接する領域間のx軸間隔距離d2が、これらの領域内のx軸間隔d1以下になると)、研磨粒子8のx軸方向の間隔はランダムに見える。言い換えれば、ある領域内の研磨粒子8のx軸方向の位置の変動量が隣接する領域間の間隔距離d2を超えると、隣接する領域内の研磨粒子間のx軸間隔d2の規則性を検出できなくなる。
【0050】
すなわち、隣接する領域間のx軸間隔距離d2に応じて、研磨粒子間のx軸間隔距離はランダムに見えるか、又は選択された範囲内で異なるように見え得る。つまり、隣接する領域間のx軸間隔距離d2がd1と比べて十分に大きい場合は、研磨粒子間のx軸間隔距離が規定の範囲内でランダムに異なるように見えることになり、隣接する想像境界線間のx軸間隔距離d2がd1と比べて十分に小さい場合は、研磨粒子間のx軸間隔距離がランダムに見えることになる。
【0051】
本発明の別の態様によれば、隣接する研磨粒子8間の距離d3は、y軸に沿ってランダムに異なる。つまり、隣接する研磨粒子8間のy軸距離は固定されておらず、研磨粒子8のy軸方向の配置には識別可能なパターンがない。しかし、いくつかの実施形態では、つまり研磨粒子間のx軸間隔距離が規定の範囲内でランダムに異なるように見える実施形態では、研磨粒子はy軸方向よりもx軸方向においてより均一に間隔があけられる。
【0052】
研磨粒子8の大部分が基板4の第1の主面6に対して傾斜面に配置されるのが望ましい。つまり、研磨粒子8の少なくとも一部分が、基板4から概ね垂直の外向きに直立し突き出ることができる。研磨物品2はまた、基板4に対して傾斜していない(すなわち研磨粒子8は、基板4の上に水平に置かれている)研磨粒子8を含み、かつ/又は基板4に対して比較的小さい角度(たとえば45度未満)で傾いている研磨粒子8を含み得る。たとえば、
図1a及び
図2に示された研磨物品2では、側面を下にして水平に置かれている研磨粒子8cが示されている。
【0053】
特定の実施形態では、研磨粒子の少なくとも60、70、又は80パーセントが、x軸とy軸で画定された平面から少なくとも約45度の角度で傾いている。他の実施形態では、研磨粒子の約5、10、又は15パーセントまでが、x軸とy軸で画定された平面から約45度以内の角度で傾いている。
【0054】
加えて、研磨粒子8の特定の一部分は、細長い縁部ではなく三角形の先端がバッキング4に貼り付くように置くことができる(すなわち、三角形の研磨粒子は逆さまに見える)。細長い縁部ではなく三角形の先端がバッキング4に貼り付けられるように配置される研磨粒子の割合は、一般には約2、3、4、又は5パーセント未満になる。
【0055】
次に
図3を参照すると、想像境界線112a、114a、112b、114b、112c、114cがそれぞれ非直線経路118a、118b、118cを画定する研磨物品102が示されている。研磨物品102は、第1の主面106を有するバッキング104を含み、想像境界線112a、114a、112b、114b、112c、114cは曲がりくねった、波状の、又は正弦曲線の領域116a、116b、116cを画定し、この領域に複数の研磨粒子108が任意選択のメイク被覆(図示せず)を介してバッキング104に固定される。図示の実施形態では、各研磨粒子108は、経路118a、118b、118cに研磨粒子108の位置において接する第1の軸120(すなわち「接線軸」)を含む。研磨物品102は更に、接線軸120に直交する横軸122と、接線軸120及び横軸122に直交するz軸とを含む(z軸は、ページ面から真っ直ぐ外向きに延びているため図示されていない)。したがって、本発明のいくつかの特性上の特徴によれば、研磨粒子108の大部分の、z軸を中心とする回転配向は規定の範囲内でランダムに異なり、経路118a、118b、118cに沿った研磨粒子108の間隔距離d3はランダムに異なり、領域116a、116b、116c間の横方向間隔距離d2は制御することができる。
【0056】
研磨粒子108の非直線経路を作り出すことは、たとえば、研磨粒子108がバッキング104に付けられるときにバッキング104の経路又は向きを研磨粒子の固定流れに対して変化させることによって、又は、研磨粒子108がバッキング104に付けられるときに研磨粒子108の流れを固定バッキング104に対して動かすことによって、実現することができる。すなわち、
図3に描かれた波状のパターンは、たとえば、バッキング104を研磨粒子の流れに対して揺動させることによって作り出すことができる。バッキング104はまた、研磨粒子108のバッキング104上の配置をランダム化するように振動させることもできる。
【0057】
図4を参照すると、円形ディスク224の形状の研磨物品が示されている。研磨ディスク224は、第1の主面206を有するバッキング204を含み、複数の研磨粒子208が任意選択のメイク被覆(図示せず)を介してバッキング204に固定される。想像境界線212a、214a、212b、214b、212c、214cは、環状経路226a、226b、226cを画定し、更に、研磨粒子208の位置及び回転配向を全体的に制約する環状領域216a、216b、216cを画定する。図示の実施形態では、研磨ディスク224は、環状経路226に研磨粒子208の位置において接する第1の軸220を含む。研磨ディスク224は更に、接線軸220に直交する径方向軸228と、接線軸220及び径方向軸228に直交するz軸とを含む(z軸は、ページ面から真っ直ぐ外向きに延びているため図示されていない)。したがって、本発明のいくつかの特性上の特徴によれば、研磨粒子208の大部分の、z軸を中心とする回転配向は規定の範囲内でランダムに異なり、経路226a、226b、226cに沿った研磨粒子208の環状間隔距離d3はランダムに異なり、領域216a、216b、216c間の径方向間隔距離d2は制御することができる。
【0058】
したがって、本明細書に記載の実施形態のいずれにおいても、研磨粒子のz方向回転配向は規定の範囲内で異なり、研磨経路の第1の主面に沿った研磨粒子の間隔距離はランダムに異なる。加えて、第1の主軸に直交する第2の主軸に沿った研磨粒子の間隔距離は、ある範囲内でランダムに異なり得るか、ランダムに異なるように見え得る。
【0059】
本明細書に記載の様々な実施形態による研磨物品2は、配列デバイスに研磨粒子8を通過させることによって形成することができ、それによって、研磨粒子8が所望の程度のz方向回転配向及び/又は配置で出てきて基板4に当たる。加えて、配列デバイスを研磨粒子が通過した後に、研磨粒子をその直立の姿勢で保持する支援のための外部力(たとえば重力、静電気力、求心力)が与えられ得る。
【0060】
配列デバイスは、たとえば複数の線若しくは紐、櫛状構造体、又は細長いスロットを画定する複数の壁によって形成された、たとえば複数の細長いスロット又は開口を含み得る。細長いスロットのサイズ及び形状は、基板に付けられる研磨粒子のサイズ及び形状によって、かつ基板に付けられるべき研磨粒子の所望のパターンによって、異なり得る。細長いスロットは、たとえば、まっすぐでも、湾曲していても、弓形でもよい。
【0061】
研磨粒子は、たとえば、押込み空気を使用して、研磨粒子を静電気で推進させることによって、研磨粒子をたとえば回転ドラム上に落下させることによって、又は研磨粒子を配列デバイスの上に、若しくはそれに通して重力供給することによって、配列デバイスに加える、又は通すことができる。研磨粒子を基板に付けるのに有用な技法は、代理人整理番号76714US002(USSN62/189,980)、76715US002(USSN62/182,077)、及び76698US002(62/190,046)に記載されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
配列デバイスはまた、細長い開口を含む篩又は格子を含み得る。このような篩又は格子の細長い開口は、任意の所望のパターンとして得ることができる。たとえば、
図4に示される研磨粒子は、研磨粒子を基板上に置く複数の同心環状の細長いスロットを含む配列デバイスを使用して形成することができる。このようなデバイスを使用して研磨粒子を付けるには、配列デバイスはまず、基板に隣接して置かれる(配列デバイスは基板に接触しても、基板からわずかに間隔をあけて置いてもよい)。次に、たとえば研磨粒子を配列デバイスの上に注いで細長いスロットを少なくとも部分的に満たすことによって、研磨粒子が配置される。次に、余分な研磨粒子が配列デバイスから除去される。研磨粒子が基板に接合された後、配列デバイスは基板から分離又は除去される。このようにすると、配向された研磨粒子は、配列デバイスによって得られるパターンと一致するパターンで基板上に残される。
【0063】
研磨粒子のサイズ(すなわち体積)及び重量(すなわち質量)が、z方向回転配向の度合いと、研磨粒子8の基板4上の位置又は配置とに影響を及ぼし得ることが見いだされた。研磨粒子のサイズ及び重量の影響は、研磨粒子8を基板4に付けるために用いられる特定の技法に応じて特に顕著になり得る。したがって、いくつかの実施形態では、研磨粒子8の一部分は、少なくとも2、3、5、又は7立方ミリメートルの平均体積を有し、少なくとも約0.5、1、2、又は3ミリグラムの平均重量を有し得る。
【0064】
本開示による研磨物品は、たとえば、継ぎ目なしベルト若しくは連続ベルト、ディスク(穴あきディスクを含む)、シート及び/又はパッドに転換され得ることを理解されたい。ベルト用途には、シート状研磨物品の2つの自由端を、既知の方法を用いて共に接合して、継ぎ目付きベルトを形成することができる。加えて、メイク被覆が研磨物品の第1の主面全体にわたって1つの層として設けられてよいこと、メイク被覆が領域16a、16及び16cなどの、第1の主面のうち選択領域だけに設けられてよいこと、又はメイク被覆が、研磨粒子をバッキングに貼り付ける前に研磨粒子に直接付けられてよいことを理解されたい。加えて、本明細書に記載の様々な実施形態における研磨粒子のコーティング重量は、少なくとも約1000、1500、又は2000グラム/平方メートル(g/m
2)から、約4000、4500、又は5000g/m
2以内の範囲にわたり得る。
【0065】
本明細書に記載の研磨物品は、たとえば研削、切削及び機械加工の用途を含む、様々な研磨用途に使用することができる。特定の最終使用用途では、研磨物品は、チタン又は鋼などの金属を研削するために使用される被覆研磨ベルトになる。
【0066】
本明細書に記載の本発明がより完全に理解できるように、以下の実施例について説明する。これらの実施例は、単に例示目的であり、本発明を制限するものとしてどのようにも解釈されるべきではないことを理解されたい。
【実施例】
【0067】
本開示の目的及び利点は、以下の非限定的な実施例によって更に例示されるが、これらの実施例で引用される特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を過度に限定するものとして解釈されるべきではない。別途注記のない限り、実施例及び本明細書の残りの部分における全ての割合、百分率、比率などは重量によるものである。
【0068】
特に記載のない限り、他の全ての試薬はSigma−Aldrich Company,St.Louis,Missouriなどのファインケミカル業者から入手したか、又は入手可能であり、あるいは既知の方法で合成することができる。
【0069】
実施例で使用される単位の略記法:
℃:摂氏温度
cm:センチメートル
g/m
2:グラム/平方メートル
mm:ミリメートル
【0070】
実施例で使用された研磨粒子
【0071】
【表1】
【0072】
実施例1〜3及び比較実施例A〜C
【実施例1】
【0073】
商品名「POWERSTRAIT」でMilliken & Company,Spartanburg,South Carolinaから入手した、300〜400g/m
2の基本重量を有する未処理ポリエステル布を、エポキシ樹脂(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、商品名「EPON 828」でResolution Performance Products,Houston,Texasから入手)が75、トリメチロールプロパントリアクリレート(商品名「SR351」でCytec Industrial Inc.,Woodland Park,New Jerseyから入手)が10、ジシアンジアミド硬化剤(商品名「DICYANEX 1400B」でAir Products and Chemicals,Allentown,Pennsylvaniaから入手)が8、ノボラック樹脂(商品名「RUTAPHEN 8656」でMomentive Specialty Chemicals Inc.,Columbus,Ohioから入手)が5、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(商品名「IRGACURE 651」光開始剤でBASF Corporation,Florham Park,New Jerseyから入手)が1、及び2−プロピルイミダゾール(商品名「ACTIRON NXJ−60 LIQUID」でSynthron,Morganton,North Carolinaから入手)が0.75で構成される合成物を用いて、113g/m
2の基本重量で事前サイズ設定した。
【0074】
布バッキングを、レゾールフェノール樹脂(商品名「GP 8339 R−23155B」でGeorgia Pacific Chemicals,Atlanta,Georgiaから入手)が52、メタケイ酸カルシウム(商品名「WOLLASTOCOAT」でNYCO Company,Willsboro,NYから入手)が45、及び水が2.5で構成される209g/m
2のフェノールメイク樹脂で、バッキング織物を充填し余分な樹脂を除去するのにナイフを使用して、被覆した。
【0075】
研磨粒子AP1は、複数の細長いスロットを含む配列デバイスに研磨粒子を通過させることによって、メイク樹脂被覆バッキングに付けた。隣接する細長いスロット間の横方向間隔すなわち間隙は1.3mmであった。AP1のコーティング重量は1172g/m
2で、試料全面にわたる変動量が±42g/m
2であった。研磨剤被覆バッキングを乾燥器に90℃で1.5時間入れておいて、メイク樹脂を部分的に硬化させた。レゾールフェノール樹脂(商品名「GP8339R−23155B」でGeorgia Pacific Chemicalsから入手)が45.76、水が4.24、氷晶石(Solvay Fluorides,LLC,Houston,Texas)が24.13、メタケイ酸カルシウム(商品名「WOLLASTOCOAT」でNYCO Company,Willsboro,New Yorkから入手)が24.13、及び赤色酸化鉄が1.75で構成されるサイズ樹脂を、712g/m
2の基本重量のバッキング材料の各細片に付け、この被覆細片を乾燥器に90℃で1時間入れ、続いて102℃で8時間入れた。硬化後、被覆研磨剤の細片は、当技術分野で既知のベルトに転換された。
【0076】
比較実施例A
実施例1に大まかに記述された手順を、研磨粒子AP1をメイク樹脂被覆バッキング材料に従来のドロップコーティングによって付けたことを除いて、繰り返した。
【実施例2】
【0077】
実施例1に大まかに記述された手順を、AP1をAP2に置き換え、AP2の被覆重量が607g/m
2で、試料全面にわたる変動量が±21g/m
2であり、配列デバイス上の隣接する細長いスロット間のx軸に沿った横方向間隔が0.864mmであったことを除いて、繰り返した。
【0078】
比較実施例B
実施例2に大まかに記述された手順を、研磨粒子AP2をメイク樹脂被覆バッキング材料に静電気コーティングによって、607g/m
2のコーティング重量で付けたことを除いて、繰り返した。
【実施例3】
【0079】
商品名「POWERSTRAIT」で入手した、300〜400g/m
2の基本重量を有する未処理ポリエステル布を、実施例1に記述したものと同じ合成物を用いた113g/m
2の事前サイズ樹脂で被覆した。次に、布バッキングを、実施例1のものと同じ合成物を用いた209g/m
2のフェノールメイク樹脂で被覆した。
【0080】
研磨粒子AP2をメイク樹脂被覆バッキングに、複数の細長いスロットを含む配列デバイスに研磨粒子を通過させることによって、付けた。隣接する細長いスロット間の横方向間隔すなわち間隙は0.864mmであった。AP2のコーティング重量は334.8g/m
2で、試料全面にわたる変動量が±28.8g/m
2であった。次に、研磨粒子AP3をAP2被覆バッキング材料に静電気コーティングによって、150.6g/m
2の被覆重量で、試料全面にわたり±13.0g/m
2の変動量で付けた。研磨剤被覆バッキングを乾燥器に90℃で1.5時間入れ、メイク樹脂を部分的に硬化させた。サイズ樹脂をバッキング材料の各細片に502g/m
2の基本重量で付けた。サイズ樹脂は、レゾールフェノール樹脂(GP 8339 R−23155BとしてGeorgia Pacific Chemicalsから入手)が45.76、水が4.24、氷晶石が48.26(Solvay Fluorides,LLC,Houston,Texas)、及び赤色酸化鉄が1.75で構成される。次に、被覆細片を乾燥器に90℃で1時間入れ、続いて102℃で8時間入れた。硬化後、被覆研磨剤の細片は、当技術分野で既知のベルトに転換された。
【0081】
比較実施例C
実施例3に大まかに記述されている、事前サイズ被覆されたメイク樹脂被覆布バッキングを調製する手順を繰り返した。研磨粒子混合物を、69%の研磨粒子AP2と31%の研磨粒子AP3を完全に混合することによって調製した。この研磨粒子混合物をメイク樹脂被覆バッキング材料に静電気コーティングによって、485.5g/m
2の被覆重量で、試料全面にわたり±41.8g/m
2の変動量で付けた。次に、この研磨剤被覆バッキングを実施例3に記述した手順を用いて部分的に硬化させ、サイズ樹脂で被覆し、硬化させて、ベルトに転換した。
【0082】
性能試験
研削試験手順A
研削試験手順Aを用いて、体積測定研削中の被覆研磨ベルト性能を、研磨面に垂直の研削力を測定することによって評価した。試験ベルトは、寸法が10.16cm×203.2cmであった。接触ホイールは、直径46.00cm、90ジュロメーターショアA硬さであり、45度の角度におけるランド部と溝の鋸歯比が1:1であった。試験ベルトは、毎分584メートルの速度にまで駆動した。研磨されるチタン加工物表面は、測定して1.27cm×35.6cmであった。試験ごとに、加工物を研削機の往復台上に、加工物の長軸を台の運動方向と平行にして取り付けた。取り付けられる被覆研磨ベルトは、加工物の表面とで0.40mmの締め代が得られるように配置した。台は、研削境界面における研磨物品の動きと平行な方向に、毎分6.1メートルの速度で横に動かした。台の横動きが終わるごとに、0.40mmの締め代を再確立した。1つの加工物が研磨物品ともはや接触しない程度にまで擦り減った場合には、新しい加工物を往復台に取り付けた。研削試験それぞれについて、毎分350〜500mLの水を殺生物剤と共に冷媒として加工物の研削面に、それが研削境界面から離れたときに加えた。台を反対方向に横動きさせるとき、残留水があれば、それが被覆研磨剤と接触する前に、圧縮空気流を使用して加工物の表面から除去した。研削境界面に垂直の力を、加工物を取り付けた往復台上のひずみゲージによって監視した。試験の終了点は200サイクルか、又は垂直の力が800ニュートン(82キログラム力)に達したときとした。実施例1及び比較Aの試験結果が表2に示されている。
【0083】
研削試験手順B
研削試験手順Bを使用して、本発明及び比較研磨ベルトの有効性を評価した。試験ベルトは、寸法が10.16cm×91.44cmであった。加工物は304ステンレス鋼棒であり、これをその1.9cm×1.9cm端部に沿って研磨ベルトにあてがった。直径20.3cm、70ジュロメーターショアA、鋸歯状(ランド部と溝比1:1)のゴムコンタクトホイールを使用した。ベルトは、毎分5500表面フィート(毎秒28メートル)で走らせた。加工物を、10〜15ポンド(4.53〜6.8kg)の垂直力の混合したもので、ベルトの中央部に当てた。この試験は、15秒間の研削(1サイクル)後に加工物の重量損失を測定することで構成された。次に加工物を冷却し、再び試験した。試験は、30試験サイクル後に完了した。グラム単位の総切削(加工物の累積重量損失)を各サイクル後に記録した。実施例2及び比較Bの試験結果が表3に示されている。
【0084】
研削試験手順C
試験ベルトは、寸法が10.16cm×91.44cmであった。加工物は304ステンレス鋼棒であり、これをその1.9cm×1.9cm端部に沿って研磨ベルトにあてがった。直径20.3cm、50ジュロメーターショアA、平滑面のゴムコンタクトホイールを使用した。ベルトは、毎分5500表面フィート(毎秒28メートル)で走らせた。加工物を、5ポンド(キログラム)の垂直の力で、ベルトの中央部に当てた。この試験は、15秒間の研削(1サイクル)後に加工物の重量損失を測定することで構成された。次に加工物を冷却し、再び試験した。試験は、30試験サイクル後に完了した。グラム単位の総切削(加工物の累積重量損失)を各サイクル後に記録した。実施例3及び比較Cの試験結果が表4に示されている。
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【実施例4】
【0088】
実施例4及び比較D
メイク樹脂を、エポキシ樹脂(商品名「HELOXY 48」でHexion Specialty Chemicals,Houston,Texasから入手)22.3、トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー(商品名「TMPTA」でUCB Radcure,Savannah,Georgiaから入手)6.2で混合し、続いて、光開始剤(商品名「IRGACURE 651」でCiba Specialty Chemicals,Hawthorne,New Yorkから入手)1.2を光開始剤が溶解するまで加熱して加えることによって、調製した。レゾールフェノール樹脂(モル比が1.5:1〜2.1:1のフェノール:ホルムアルデヒドからの塩基触媒縮合物)51、炭酸カルシウム(商品名「HUBERCARB」でHuber Engineered Materials,Quincy,Illinoisから入手)73、及び水8を、混合して加えた。次いで、この混合物4.5グラムを、ブラシを用いて、0.875インチ(2.22cm)の中心穴を有する直径7インチ(17.8cm)×厚さ0.83mmの円形加硫ファイバーウェブ(商品名「DYNOS VULCANIZED FIBRE」でDYNOS GmbH,Troisdorf,Germanyから入手)に適用した。次に、被覆ディスクを毎分20フィート(毎分6.1メートル)でUVランプの下を通過させて、コーティングをゲル化した。
【0089】
メイク樹脂被覆繊維ディスクを平坦面に、メイク樹脂側を上にして置いた。研磨粒子AP2をメイク樹脂被覆バッキングに、複数の同心環状の細長いスロットを含む配列デバイスに研磨粒子を通過させることによって付けた。隣接するスロット間の間隔すなわち間隙は0.864mmであった。各ディスクの外側3.8cmの周縁に移された成形粒子鉱物の重量は7.33グラムであった。次に、メイク樹脂を熱硬化させた(90℃で90分、続いて105℃で3時間)。
【0090】
比較実施例D
実施例4に大まかに記述された手順を、研磨粒子AP2をメイク樹脂被覆バッキング材料に静電気コーティングによってディスクごとに16.6gのコーティング重量で付けたことを除いて、繰り返した。
【0091】
試料分析及びz軸回転角度分布を決定する方法
実施例1、2及び比較実施例A、B(直線粒子配向を有する研磨物品構成)については、下方ウェブ方向がおおよそ水平である被覆布バッキング上の研磨粒子の代表的な部分のデジタル顕微鏡写真を撮った。試料は数百個の研磨粒子を含んでいた。デジタル画像は、マイクロソフトパワーポイントプレゼンテーションにコピーした。次に、デジタル画像中の研磨粒子の総数を数え、更にデジタル画像中の直立していた研磨粒子の総数を数えた。次に、デジタル画像中の直立研磨粒子の割合を計算し、これを表5の1番目の列で報告している。研磨粒子のz軸回転配向を決定するために、試料中の直立しており基部が端から端まで見えた研磨粒子を目で識別した。各研磨粒子底面と平行に線を引き、各研磨粒子のx軸及びy軸投影の長さをパワーポイントプログラムによって測定した。x軸投影は左から右へ測定し、常に正であった。y軸投影は同様に測定し、正(左から右へ上向き勾配)であることも負(左から右へ下向き勾配)であることもあった。投影の対はマイクロソフトエクセルファイルに変換した。各研磨粒子の回転配向を、+90度と−90度の範囲で、式:ATAN(y軸投影/x軸投影)/(π/2)×90を用いて計算した。最も近い全体角度に対する角度データをエクセルファイルで最小から最大へとソートし、各角度の発生数を記録した。画像座標に対するバッキングの実際の下方ウェブ角度を、z軸方向回転配向を測定するのと同じ方法を用いて布バッキングの織り角度を測定することによって、決定した。これを角度分布の予想中心の基準として使用した。バッキング基準角度の+45度と−45度の間で生じるx軸回転配向角度測定値の割合を計算し、表2に列記した。ランダムな分布では、これは利用可能な角度の半分であることから、この値は50%になることが予想される。同様の計算を行って、狭い角度範囲の分布を得た(すなわち、バッキング基準角度の+30〜−30度、+20〜−20度、+10〜−10度、又は+5〜−5度)。これらの結果もまた表5で報告されている。
【0092】
実施例4及び比較実施例D(径方向粒子配向を有する繊維ディスク構成)に関し、ディスクバッキングの中心穴を含む被覆加硫繊維バッキング上の研磨粒子の代表的な部分のデジタル顕微鏡写真を撮った。試料は数百個の研磨粒子を含んでいた。デジタル画像は、マイクロソフトパワーポイントプレゼンテーションにコピーした。次に、デジタル画像中の研磨粒子の総数を数え、更にデジタル画像中の直立していた研磨粒子の総数を数えた。次に、デジタル画像中の直立研磨粒子の割合を計算し、これを表5の1番目の列で報告している。研磨粒子のz軸回転配向を決定するために、試料中の直立しており底面が端から端まで見えた研磨粒子を目で識別した。各研磨粒子底面と平行に線を引き、各研磨粒子のx軸及びy軸投影の長さをパワーポイントプログラムによって測定した。x軸投影は左から右へ測定し、常に正であった。y軸投影を同様に測定し、正(左から右へ上向き勾配)であることも負(左から右へ下向き勾配)であることもあった。同様に、各粒子底面の中心点とディスクの回転中心をつなぐ線のx軸及びy軸投影もまた粒子ごとに測定した。2組の投影対はマイクロソフトエクセルファイルに変換した。各研磨粒子の回転配向角度及びディスク中心に対する粒子の角度を、+90度と−90度の範囲で、式:ATAN(y軸投影/x軸投影)/(π/2)×90を用いて計算した。2つの角度を加算して、粒子底面中心を通過すると共に中心がディスク回転中心点と一致する円、に一点で接する線からの各粒子の偏差の角度を生成した。90度を超える角度、及び−90度未満の角度は、180度を加算する(−90度未満の角度について)又は180度を減算する(90度を超える角度について)ことによって補正した。最も近い全体角度に対する角度データをエクセルファイルで最小から最大へとソートし、各角度の発生数を記録した。ディスク接線の+45度と−45度の間で生じるx軸回転配向角度測定値の割合を計算し、表5に列記した。ランダムな分布では、これは利用可能な角度の半分であることから、この値は50%になることが予想される。同様の計算を行って、狭い角度範囲の分布を得た(すなわち、バッキング基準角度の+30〜−30度、+20〜−20度、+10〜−10度、又は+5〜−5度)。これらの結果もまた表5で報告されている。
【0093】
【表5】
【0094】
当業者であれば、本発明の概念から逸脱することなく、上述した本発明を様々に変更及び修正できることが理解されよう。したがって本発明の範囲は、本願に記載の構造に限定されるべきものではなく、特許請求の範囲の文言により述べられる構造及びそうした構造の等価物によってのみ限定されるものである。
[付記]
(付記1)
y軸と、前記y軸に対し横軸のx軸と、前記y軸及びx軸に直交するz軸とを有する研磨物品であって、複数の研磨粒子を備え、前記研磨粒子の少なくとも一部分のz軸を中心とする回転配向が、規定の範囲内でランダムに異なり、前記研磨粒子の間隔が前記y軸に沿ってランダムに異なる、研磨物品。
(付記2)
前記研磨粒子の前記x軸方向の間隔がランダムである、付記1に記載の研磨物品。
(付記3)
前記研磨粒子の間隔は、前記x軸方向が前記y軸方向よりも均一である、付記2に記載の研磨物品。
(付記4)
前記x軸方向の前記研磨粒子の前記間隔が規定の範囲内で異なる、付記3に記載の研磨物品。
(付記5)
前記研磨粒子が複数の列に並べられ、更に、1つの列の中の研磨粒子の位置の平均偏差が前記研磨粒子の厚さのプラス又はマイナス(±)約4倍以内でランダムに異なる、付記4に記載の研磨物品。
(付記6)
前記研磨粒子の少なくとも一部分が、長手方向軸を有する列に並べられ、各研磨粒子が長手方向軸を有し、前記研磨粒子の少なくとも一部分の前記長手方向軸が、前記列の長手方向軸に対して規定の範囲内にある、付記1に記載の研磨物品。
(付記7)
前記列の前記長手方向軸が概ね、前記研磨物品y軸である第1の軸と平行である、付記6に記載の研磨物品。
(付記8)
前記列の前記長手方向軸が、前記研磨物品y軸からある角度でオフセットされる、付記6に記載の研磨物品。
(付記9)
前記研磨粒子が概ね弓形の経路内に設けられ、前記y軸が前記弓形経路に一点で接する、付記1に記載の研磨物品。
(付記10)
前記研磨粒子の少なくとも約55パーセントの前記z方向回転配向が、平均粒子z方向回転配向の約±45度以内である、付記1に記載の研磨物品。
(付記11)
前記研磨粒子の少なくとも一部分が細長く、細長いスロットを通過させることによって、直立の姿勢で配向されるように構成される、付記1に記載の研磨物品。
(付記12)
前記研磨粒子の少なくとも一部分が、ある長さ、幅、厚さ、及び細長い縁部を有し、更に、幅及び長さが前記厚さを超える、付記1に記載の研磨物品。
(付記13)
前記研磨粒子の少なくとも一部分が概ね板様の形を有する、付記1に記載の研磨物品。
(付記14)
前記研磨粒子の少なくとも一部分が、破砕研磨粒子、成形研磨粒子、及びこれらの組合せを含む、付記1に記載の研磨物品。
(付記15)
前記研磨粒子が、板様の形を有する塊からなる、付記1に記載の研磨物品。
(付記16)
前記研磨物品が、概ね均一なサイズ及び形状を有する第1の部分と、概ね均一なサイズ及び不均一な形状を有する第2の部分とを含む研磨粒子の混合物を含む、付記1に記載の研磨物品。
(付記17)
前記研磨粒子の約80〜90パーセントが、前記x軸及びy軸によって画定された平面から少なくとも約45度の角度で傾斜している、付記1に記載の研磨物品。
(付記18)
被覆研磨物品であって、
a)互いに反対側にある第1及び第2の主面、長手方向軸、並びに横軸を有するバッキングと、
b)前記第1及び第2の主面の一方の少なくとも一部分の上のメイク被覆と、
c)前記バッキングに前記メイク被覆によって固定された複数の研磨粒子とを含み、各研磨粒子が、前記バッキングの前記長手方向軸の方向に延びるy方向軸と、前記バッキングの前記長手方向軸に直交するz方向軸とを含み、
前記研磨粒子の大部分の、前記z軸を中心とする前記回転配向が規定の範囲内でランダムに異なり、更に、前記研磨粒子のy方向の間隔がランダムに異なる、被覆研磨物品。
(付記19)
研磨ディスクであって、
a)互いに反対側にある第1及び第2の主面、環状経路、並びに第1及び第2の主面のうちの少なくとも一方と直交するz軸を有するバッキングと、
b)前記第1及び第2の主面のうちの少なくとも一方の上のメイク被覆と、
c)前記バッキングに前記メイク被覆によって固定された複数の研磨粒子とを含み、
前記研磨粒子の大部分の、前記第2の軸を中心とする回転配向が、規定の範囲内でランダムに異なり、更に、前記環状経路に沿った前記研磨粒子の間隔がランダムに異なる、研磨ディスク。
(付記20)
付記18に記載の研磨物品を連続ベルトの形状で提供するステップと、研磨ベルトを前記金属と接触させるステップとを含む、金属を研削する方法。