特許第6865192号(P6865192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6865192携帯端末の通信ログからユーザの搭乗情報を推定するプログラム、装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865192
(24)【登録日】2021年4月7日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】携帯端末の通信ログからユーザの搭乗情報を推定するプログラム、装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04M 11/00 20060101AFI20210419BHJP
   G06F 16/20 20190101ALI20210419BHJP
   G06F 16/28 20190101ALI20210419BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20210419BHJP
【FI】
   H04M11/00 302
   G06F16/20
   G06F16/28
   G06N20/00 130
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-74436(P2018-74436)
(22)【出願日】2018年4月9日
(65)【公開番号】特開2019-186713(P2019-186713A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2020年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 亜令
(72)【発明者】
【氏名】黒川 茂莉
【審査官】 山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−018447(JP,A)
【文献】 特開2005−149095(JP,A)
【文献】 特開2017−143472(JP,A)
【文献】 特開2014−119798(JP,A)
【文献】 特開2004−295625(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0080554(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2018−0034058(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F16/00−16/958
G06N3/00−3/12
7/08−99/00
H04B7/24−7/26
H04M3/00
3/16−3/20
3/38−3/58
7/00−7/16
11/00−11/10
H04W4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによって所持される携帯端末の通信ログを入力し、当該ユーザの搭乗機の搭乗情報を推定する機械学習エンジンとしてコンピュータを機能させるプログラムであって、
拠点毎に、各搭乗機の出発時刻及び搭乗情報が規定された出発時刻表と、
拠点毎に、各携帯端末の時刻及び位置を含む通信ログを蓄積した通信ログ蓄積手段と、
前記通信ログ蓄積手段を用いて、時系列に連続する通信ログの位置間の距離が所定長以上となる先方通信ログ及び後方通信ログの組を、トリップログとして抽出するトリップログ抽出手段と
して機能させ、
前記機械学習エンジンは、教師データとして、出発拠点となる「先方通信ログ」と、当該先方通信ログの時刻が、出発時刻表の出発時刻の所定前時間範囲に含まれる「搭乗情報」とを対応付けて学習する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項2】
前記拠点毎に、前記機械学習エンジンによって通信ログ及び搭乗情報を対応付けて既に学習済みとなった「基準拠点」と、前記機械学習エンジンに対して学習対象となる「非基準拠点」とに区分した際に、
前記トリップログ抽出手段は、非基準拠点が出発拠点となり且つ基準拠点が到着拠点となるトリップログを抽出する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
ユーザによって所持される携帯端末の通信ログを入力し、当該ユーザの搭乗機の搭乗情報を推定する機械学習エンジンとしてコンピュータを機能させるプログラムであって、
拠点毎に、各搭乗機の到着時刻及び搭乗情報が規定された到着時刻表と、
拠点毎に、各携帯端末の時刻及び位置を含む通信ログを蓄積した通信ログ蓄積手段と、
前記通信ログ蓄積手段を用いて、時系列に連続する通信ログの位置間の距離が所定長以上となる先方通信ログ及び後方通信ログの組を、トリップログとして抽出するトリップログ抽出手段と
して機能させ、
前記機械学習エンジンは、教師データとして、到着拠点となる「後方通信ログ」と、当該後方通信ログの時刻が、到着時刻表の到着時刻の所定後時間範囲に含まれる「搭乗情報」とを対応付けて学習する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項4】
前記拠点毎に、前記機械学習エンジンによって通信ログ及び搭乗情報を対応付けて既に学習済みとなった「基準拠点」と、前記機械学習エンジンに対して学習対象となる「非基準拠点」とに区分した際に、
前記トリップログ抽出手段は、基準拠点が出発拠点となり且つ非基準拠点が到着拠点となるトリップログを抽出する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記搭乗情報は、ゲート番号及び/又は搭乗機便名を含む
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項6】
前記通信ログにおける前記位置は、当該携帯端末の緯度経度、及び/又は、当該携帯端末が接続する基地局ID及び電波状態である
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項7】
非基準拠点は、基準拠点との間のトリップログを用いて搭乗情報と通信ログとを対応付けて学習することによって、新規に基準拠点となる
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項8】
ユーザによって所持される携帯端末の通信ログを入力し、当該ユーザの搭乗機の搭乗情報を推定する機械学習エンジンを有する学習装置であって、
拠点毎に、各搭乗機の出発時刻及び搭乗情報が規定された出発時刻表と、
拠点毎に、各携帯端末の時刻及び位置を含む通信ログを蓄積した通信ログ蓄積手段と、
前記通信ログ蓄積手段を用いて、時系列に連続する通信ログの位置間の距離が所定長以上となる先方通信ログ及び後方通信ログの組を、トリップログとして抽出するトリップログ抽出手段と
を有し、
前記機械学習エンジンは、教師データとして、出発拠点となる「先方通信ログ」と、当該先方通信ログの時刻が、出発時刻表の出発時刻の所定前時間範囲に含まれる「搭乗情報」とを対応付けて学習する
ことを特徴とする学習装置。
【請求項9】
ユーザによって所持される携帯端末の通信ログを入力し、当該ユーザの搭乗機の搭乗情報を推定する機械学習エンジンを有する学習装置であって、
拠点毎に、各搭乗機の到着時刻及び搭乗情報が規定された到着時刻表と、
拠点毎に、各携帯端末の時刻及び位置を含む通信ログを蓄積した通信ログ蓄積手段と、
前記通信ログ蓄積手段を用いて、時系列に連続する通信ログの位置間の距離が所定長以上となる先方通信ログ及び後方通信ログの組を、トリップログとして抽出するトリップログ抽出手段と
を有し、
前記機械学習エンジンは、教師データとして、到着拠点となる「後方通信ログ」と、当該後方通信ログの時刻が、到着時刻表の到着時刻の所定後時間範囲に含まれる「搭乗情報」とを対応付けて学習する
ことを特徴とする学習装置。
【請求項10】
ユーザによって所持される携帯端末の通信ログを入力し、当該ユーザの搭乗機の搭乗情報を推定する機械学習エンジンを有する装置の学習方法であって、
前記装置は、
拠点毎に、各搭乗機の出発時刻及び搭乗情報が規定された出発時刻表と、
拠点毎に、各携帯端末の時刻及び位置を含む通信ログを蓄積した通信ログ蓄積部と
を有し、
前記装置は、
前記通信ログ蓄積部を用いて、時系列に連続する通信ログの位置間の距離が所定長以上となる先方通信ログ及び後方通信ログの組を、トリップログとして抽出する第1のステップと、
前記機械学習エンジンに対して、教師データとして、出発拠点となる「先方通信ログ」と、当該先方通信ログの時刻が、出発時刻表の出発時刻の所定前時間範囲に含まれる「搭乗情報」とを対応付けて学習させる第2のステップと
を実行することを特徴とする装置の学習方法。
【請求項11】
ユーザによって所持される携帯端末の通信ログを入力し、当該ユーザの搭乗機の搭乗情報を推定する機械学習エンジンを有する装置の学習方法であって、
前記装置は、
拠点毎に、各搭乗機の到着時刻及び搭乗情報が規定された到着時刻表と、
拠点毎に、各携帯端末の時刻及び位置を含む通信ログを蓄積した通信ログ蓄積部と
を有し、
前記装置は、
前記通信ログ蓄積部を用いて、時系列に連続する通信ログの位置間の距離が所定長以上となる先方通信ログ及び後方通信ログの組を、トリップログとして抽出する第1のステップと、
前記機械学習エンジンに対して、教師データとして、到着拠点となる「後方通信ログ」と、当該後方通信ログの時刻が、到着時刻表の到着時刻の所定後時間範囲に含まれる「搭乗情報」とを対応付けて学習する第2のステップと
を実行することを特徴とする装置の学習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザによって所持される携帯端末の通信ログから、当該ユーザの移動経路を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
人の移動量の実態を把握するために、「パーソントリップ調査」がある。例えば不特定多数のユーザが、「いつ」「どの移動経路を」「どの運行会社の」「どの移動機関で」移動したか、をビッグデータとして収集し分析することができる。
特に近年、ユーザは、スマートフォンやタブレットのような携帯端末を常に所持しているために、通信事業者は、通信ログを自動的に収集することによって、ユーザの移動経路を推定することもできる。
【0003】
従来、携帯端末のGPS(Global Positioning System)等の測位機能を起動させることなく、通信事業設備によって取得可能な、空間的粒度が粗く且つ時間間隔が一定でない基地局位置情報を用いて、ユーザの有意位置を推定する技術がある(例えば特許文献1参照)。
また、通信事業設備によって取得可能な基地局位置情報を用いて、ユーザにとって有意な滞在地を高い精度で推定する技術もある(例えば特許文献2参照)。
更に、移動端末の通信履歴に基づいて、ユーザが利用した路線を推定する技術もある(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−085095号公報
【特許文献2】特開2014−116808号公報
【特許文献3】特開2016−134731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したいずれの従来技術も、移動経路における通信ログを用いたものあって、その移動経路は、基地局との通信可能範囲に存在することを前提としている。即ち、移動経路は、鉄道や道路のような陸上を前提としたものである。
【0006】
これに対し、ユーザが航空路線を利用する場合、その空港間では、基地局との間で通信不可能となるために、移動中の通信ログを取得することはできない。
また、同一の出発空港と到着空港との間では、同一の航空路線に、異なる航空会社の複数の航空便が運航しており、いずれの航空便を利用したかを特定することは難しい。
尚、航空路線では、搭乗機の搭乗者数は、各航空会社でのみ管理されており、パーソントリップ調査自体がなされることはない。そのために異なる航空会社の各搭乗機について、その搭乗者数などを分析することも難しい。
【0007】
そこで、本発明は、ユーザによって所持される携帯端末の通信ログを用いて、当該ユーザの搭乗機の搭乗情報を推定する機械学習エンジンの学習モデルを構築するプログラム、学習装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、ユーザによって所持される携帯端末の通信ログを入力し、搭乗機の搭乗情報を推定する機械学習エンジンとしてコンピュータを機能させるプログラムであって、
拠点毎に、各搭乗機の出発時刻及び搭乗情報が規定された出発時刻表と、
拠点毎に、各携帯端末の時刻及び位置を含む通信ログを蓄積した通信ログ蓄積手段と、
通信ログ蓄積手段を用いて、時系列に連続する通信ログの位置間の距離が所定長以上となる先方通信ログ及び後方通信ログの組を、トリップログとして抽出するトリップログ抽出手段と
して機能させ、
機械学習エンジンは、教師データとして、出発拠点となる「先方通信ログ」と、当該先方通信ログの時刻が、出発時刻表の出発時刻の所定前時間範囲に含まれる「搭乗情報」とを対応付けて学習する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0009】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
拠点毎に、機械学習エンジンによって通信ログ及び搭乗情報を対応付けて既に学習済みとなった「基準拠点」と、機械学習エンジンに対して学習対象となる「非基準拠点」とに区分した際に、
トリップログ抽出手段は、非基準拠点が出発拠点となり且つ基準拠点が到着拠点となるトリップログを抽出する
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0010】
本発明によれば、ユーザによって所持される携帯端末の通信ログを入力し、当該ユーザの搭乗機の搭乗情報を推定する機械学習エンジンとしてコンピュータを機能させるプログラムであって、
拠点毎に、各搭乗機の到着時刻及び搭乗情報が規定された到着時刻表と、
拠点毎に、各携帯端末の時刻及び位置を含む通信ログを蓄積した通信ログ蓄積手段と、
通信ログ蓄積手段を用いて、時系列に連続する通信ログの位置間の距離が所定長以上となる先方通信ログ及び後方通信ログの組を、トリップログとして抽出するトリップログ抽出手段と
して機能させ、
機械学習エンジンは、教師データとして、到着拠点となる「後方通信ログ」と、当該後方通信ログの時刻が、到着時刻表の到着時刻の所定後時間範囲に含まれる「搭乗情報」とを対応付けて学習する
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0011】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
拠点毎に、機械学習エンジンによって通信ログ及び搭乗情報を対応付けて既に学習済みとなった「基準拠点」と、機械学習エンジンに対して学習対象となる「非基準拠点」とに区分した際に、
トリップログ抽出手段は、基準拠点が出発拠点となり且つ非基準拠点が到着拠点となるトリップログを抽出する
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0012】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
搭乗情報は、ゲート番号及び/又は搭乗機便名を含む
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0013】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
通信ログにおける位置は、当該携帯端末の緯度経度、及び/又は、当該携帯端末が接続する基地局ID及び電波状態である
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0014】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
非基準拠点は、基準拠点との間のトリップログを用いて搭乗情報と通信ログとを対応付けて学習することによって、新規に基準拠点となる
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0015】
本発明によれば、ユーザによって所持される携帯端末の通信ログを入力し、当該ユーザの搭乗機の搭乗情報を推定する機械学習エンジンを有する学習装置であって、
拠点毎に、各搭乗機の出発時刻及び搭乗情報が規定された出発時刻表と、
拠点毎に、各携帯端末の時刻及び位置を含む通信ログを蓄積した通信ログ蓄積手段と、
通信ログ蓄積手段を用いて、時系列に連続する通信ログの位置間の距離が所定長以上となる先方通信ログ及び後方通信ログの組を、トリップログとして抽出するトリップログ抽出手段と
を有し、
機械学習エンジンは、教師データとして、出発拠点となる「先方通信ログ」と、当該先方通信ログの時刻が、出発時刻表の出発時刻の所定前時間範囲に含まれる「搭乗情報」とを対応付けて学習する
ことを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、ユーザによって所持される携帯端末の通信ログを入力し、当該ユーザの搭乗機の搭乗情報を推定する機械学習エンジンを有する学習装置であって、
拠点毎に、各搭乗機の到着時刻及び搭乗情報が規定された到着時刻表と、
拠点毎に、各携帯端末の時刻及び位置を含む通信ログを蓄積した通信ログ蓄積手段と、
通信ログ蓄積手段を用いて、時系列に連続する通信ログの位置間の距離が所定長以上となる先方通信ログ及び後方通信ログの組を、トリップログとして抽出するトリップログ抽出手段と
を有し、
機械学習エンジンは、教師データとして、到着拠点となる「後方通信ログ」と、当該後方通信ログの時刻が、到着時刻表の到着時刻の所定後時間範囲に含まれる「搭乗情報」とを対応付けて学習する
ことを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、ユーザによって所持される携帯端末の通信ログを入力し、当該ユーザの搭乗機の搭乗情報を推定する機械学習エンジンを有する装置の学習方法であって、
装置は、
拠点毎に、各搭乗機の出発時刻及び搭乗情報が規定された出発時刻表と、
拠点毎に、各携帯端末の時刻及び位置を含む通信ログを蓄積した通信ログ蓄積部と
を有し、
装置は、
通信ログ蓄積部を用いて、時系列に連続する通信ログの位置間の距離が所定長以上となる先方通信ログ及び後方通信ログの組を、トリップログとして抽出する第1のステップと、
機械学習エンジンに対して、教師データとして、出発拠点となる「先方通信ログ」と、当該先方通信ログの時刻が、出発時刻表の出発時刻の所定前時間範囲に含まれる「搭乗情報」とを対応付けて学習させる第2のステップと
を実行することを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、ユーザによって所持される携帯端末の通信ログを入力し、当該ユーザの搭乗機の搭乗情報を推定する機械学習エンジンを有する装置の学習方法であって、
装置は、
拠点毎に、各搭乗機の到着時刻及び搭乗情報が規定された到着時刻表と、
拠点毎に、各携帯端末の時刻及び位置を含む通信ログを蓄積した通信ログ蓄積部と
を有し、
装置は、
通信ログ蓄積部を用いて、時系列に連続する通信ログの位置間の距離が所定長以上となる先方通信ログ及び後方通信ログの組を、トリップログとして抽出する第1のステップと、
機械学習エンジンに対して、教師データとして、到着拠点となる「後方通信ログ」と、当該後方通信ログの時刻が、到着時刻表の到着時刻の所定後時間範囲に含まれる「搭乗情報」とを対応付けて学習する第2のステップと
を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のプログラム、装置及び方法によれば、ユーザによって所持される携帯端末の通信ログを用いて、当該ユーザの搭乗機の搭乗情報を推定する機械学習エンジンの学習モデルを構築する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明におけるシステム環境の構成図である。
図2】本発明における学習装置の機能構成図である。
図3】通信ログ蓄積部及びトリップログ抽出部を表す説明図である。
図4】出発拠点における機械学習エンジンへ入力する教師データを表す説明図である。
図5】到着拠点における機械学習エンジンへ入力する教師データを表す説明図である。
図6】空港に基づく基準拠点及び非基準拠点を表す説明図である。
図7】全国の基準空港と非基準空港とを表す説明図である。
図8】非基準拠点を出発拠点とし、基準空港を到着拠点とした搭乗機のトリップログを用いて、通信ログと搭乗情報とを対応付けて学習する説明図である。
図9】基準拠点を出発拠点とし、非基準空港を到着拠点とした搭乗機のトリップログを用いて、通信ログと搭乗情報とを対応付けて学習する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明におけるシステム環境の構成図である。
【0023】
本発明の主な実施形態として、ユーザが、空港(拠点)で航空機(搭乗機)に搭乗することを想定している。
図1によれば、空港内では、ユーザが所持する携帯端末2は、通信事業設備として設置された基地局(又はアクセスポイント)と常時通信可能となっている。通信事業設備は、携帯端末2から定期的に「通信ログ」を収集している。
【0024】
通信ログには、少なくとも「時刻」及び「位置」が記録されている。
「位置」とは、当該携帯端末の緯度経度、及び/又は、当該携帯端末が接続する基地局ID及び電波状態であってもよい。
「緯度経度」とは、例えばGPS(Global Positioning System)測位であってもよいし、複数の基地局との通信に基づく基地局測位であってもよい。
また、緯度経度のような地理座標に拘わらず、単に、携帯端末2が接続した1つ以上の基地局の「基地局ID及び電波状態」であってもよい。基地局IDや電波状態は、位置に基づいて異なるものとなるためである。
ここで、電波状態とは、受信信号強度(RSSI(Received Signal Strength Indicator))や信号対干渉雑音比(SINR(Signal to Interference Noise Ratio)、RTT(Round Trip Time)のような種々の無線測定項目であってもよい。
【0025】
図1のように、その空港間では、基地局と通信不可能であるために、移動中の通信ログを取得することはできない。例えば、携帯端末2の通信ログは、出発拠点となる空港aの搭乗ゲート付近で発生した後、一定時間、通信ログが発生しない状態が継続する。その後、遠方の到着拠点となる空港bの到着ゲート付近で、突然、次の通信ログが発生する。
また、同一の出発空港aと到着空港bとの間では、同一の航空路線に、異なる航空会社の複数の航空便が運航する場合もある。
【0026】
各空港では、「出発時刻表」が予め規定されていると共に、航空便のフライト履歴として「到着時刻表」も公開されている。
【0027】
出発時刻表は、拠点(空港)毎に、各搭乗機の出発時刻及び搭乗情報が規定されたものである。
図1によれば、例えば以下のような「出発時刻表」が規定されている。
空港a:[時刻][航空便名(到着先)][ゲート番号]
空港bでは、その「時刻」に、その「航空便名(到着先)」の搭乗機が、その「ゲート番号」のゲートに接続されたことを表す。
【0028】
図2は、本発明における学習装置の機能構成図である。
【0029】
図2によれば、本発明の学習装置1は、<学習段階>と<推定段階>とに区分される。学習段階として、通信ログ蓄積部101と、出発時刻表102と、到着時刻表103と、トリップログ抽出部11と、機械学習エンジン12とを有する。これら機能構成部は、装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、これら機能構成部の処理の流れは、装置の推定方法としても理解できる。
【0030】
<学習段階>
図3は、通信ログ蓄積部及びトリップログ抽出部を表す説明図である。
【0031】
[通信ログ蓄積部101]
通信ログ蓄積部101は、拠点(空港)毎に、各携帯端末の時刻及び位置を含む「通信ログ」を蓄積したものである。
図3によれば、空港毎に、端末ID(IDentifier)に対して、時刻及び位置が対応付けて記録されている。
【0032】
[トリップログ抽出部11]
トリップログ抽出部11は、通信ログ蓄積部101を用いて、時系列に連続する通信ログの位置間の距離が所定長以上となる「先方通信ログ」及び「後方通信ログ」の組を、トリップログとして抽出する。
「位置間の距離」とは、航空機を利用したであろうと推定される所定長の距離(例えば200km以上)である。携帯端末2の通信ログが、そのような長距離の間も途切れるということは、航空機を利用していると想定することができる。
特に、ユーザは、航空機に搭乗する際に、出発ゲート付近で携帯端末2の電源をOFFにしたり、フライトモードに変更したりする場合が多い。また、航空機から降機した際に、到着ゲート付近で、携帯端末2の電源をONにしたり、通常モードに変更したりする場合が多い。
【0033】
[機械学習エンジン12]
機械学習エンジン12は、教師あり学習(Supervised learning)に基づくものである。教師データx及びy(二値分類問題)を対応付けて入力し、x及びyのデータ間の写像関数を近似的に学習する。これによって、未知データxを入力することよって予測データyを得ることができる。具体的には、サポートベクタマシンやニューラルネットワークなどを用いることができる。
【0034】
機械学習エンジン12は、教師データとして、出発拠点と到着拠点と別々に、通信ログと搭乗情報とを対応付けて学習する。
【0035】
図4は、出発拠点における機械学習エンジンへ入力する教師データを表す説明図である。
【0036】
(出発拠点)「先方通信ログ」と、当該先方通信ログの時刻が、出発時刻表の出発時刻の所定前時間範囲に含まれる搭乗機の「搭乗情報」とを対応付けて学習する。
「所定前時間範囲」とは、出発時刻の前の一定時間範囲であって、その範囲に、先方通信ログの時刻が含まれているとする。例えば出発時刻10:00である場合、所定前時間範囲を30分間とすれば、9:30〜10:00の時間範囲に、先方通信ログの時刻が含まれていることを要する。
【0037】
機械学習エンジン12は、位置のみ入力して学習するものであってもよいし、時刻及び位置を入力して学習するものであってもよい。具体的には、以下のいずれかの情報を対応付けて入力して学習する。
[先方通信ログ] <-> [搭乗情報]
位置 <-> ゲート番号
位置 <-> 航空便名(到着先)
時刻及び位置 <-> 出発時刻及びゲート番号
時刻及び位置 <-> 出発時刻及び航空便名(到着先)
先方通信ログの時刻及び位置は、搭乗機へ搭乗する前に通過するゲート付近のものである。搭乗するゲート番号が特定できれば、出発時刻表から、航空便名(到着先)も特定することができる。
【0038】
図5は、到着拠点における機械学習エンジンへ入力する教師データを表す説明図である。
【0039】
(到着拠点)「後方通信ログ」と、当該後方通信ログの時刻が、到着時刻表の到着時刻の所定後時間範囲に含まれる搭乗機の「搭乗情報」とを対応付けて学習する。
「所定後時間範囲」とは、到着時刻の後の一定時間範囲であって、その範囲に、後方通信ログの時刻が含まれているとする。例えば到着時刻10:00である場合、所定後時間範囲を30分間とすれば、10:00〜10:30の時間範囲に、後方通信ログの時刻が含まれていることを要する。
【0040】
この場合も、機械学習エンジン12は、位置のみを学習するものであってもよいし、時刻及び位置を含めて学習するものであってもよい。具体的には、以下のいずれかの情報を対応付けて入力して学習する。
[後方通信ログ] <-> [搭乗情報]
位置 <-> ゲート番号
位置 <-> 航空便名(出発元)
時刻及び位置 <-> 到着時刻及びゲート番号
時刻及び位置 <-> 到着時刻及び航空便名(出発元)
後方通信ログの時刻及び位置は、搭乗機から降機した後に通過するゲート付近のものである。降機したゲート番号が特定できれば、到着時刻表から、航空便名(出発元)も特定することができる。
【0041】
図6は、空港に基づく基準拠点及び非基準拠点を表す説明図である。
【0042】
図6によれば、拠点毎に、以下のように区分されている。
[基準拠点] :機械学習エンジン12によって通信ログ及び搭乗情報を対応付け
て既に学習済みとなった拠点(図6(a)参照)
[非基準拠点]:機械学習エンジン12に対して学習対象となる拠点(図6(b)
参照)
【0043】
図7は、全国の基準空港と非基準空港とを表す説明図である。
【0044】
図7によれば、例えば羽田空港の場合、ゲートの位置が、航空会社によって十分に離れており、ゲート毎に通信ログの測位結果が全く異なっているために、通信ログとゲートとを対応付けて学習させることができる。これによって、羽田空港を「基準空港」とすることができる。
また、地方空港は、通信ログとゲートとを対応付けて学習していない場合、「非基準空港」となる。地方空港は、羽田空港との間で航空機の発着便を用いて、基準空港となるように学習していく。
【0045】
本発明によれば、第1の非基準空港は、第1の基準拠点との間のトリップログを用いて搭乗情報と通信ログとを対応付けて学習することによって、新規に第2の基準拠点となる。
これができると、第2の非基準拠点は、第2の基準拠点との間のトリップログを用いて搭乗情報と通信ログとを対応付けて学習することによって、新規に第3の基準拠点となる。
このように、最初の基準空港から順に、芋づる式に、非基準空港が基準空港として学習されていく。
【0046】
図8は、非基準拠点を出発拠点とし、基準空港を到着拠点とした搭乗機のトリップログを用いて、通信ログと搭乗情報とを対応付けて学習する説明図である。
【0047】
拠点毎に、基準拠点又は非基準拠点が明確であるとする。
(S1)基準空港を到着拠点とし、非基準空港を出発拠点とするトリップログを抽出する。
(S2)非基準空港の出発時刻表によって、非基準空港の搭乗情報(出発ゲート番号、航空便名(到着空港))を特定する。
(S3)非基準空港の先方通信ログと搭乗情報とを対応付けて学習する。
【0048】
図9は、基準拠点を出発拠点とし、非基準空港を到着拠点とした搭乗機のトリップログを用いて、通信ログと搭乗情報とを対応付けて学習する説明図である。
【0049】
(S1)基準空港を出発拠点とし、非基準空港を到着拠点とするトリップログを抽出する。
(S2)非基準空港の到着履歴表によって、非基準空港の搭乗情報(到着ゲート番号、航空便名(出発空港))を特定する。
(S3)非基準空港の後方通信ログと搭乗情報とを対応付けて学習する。
【0050】
<推定段階>
機械学習エンジン12は、ユーザによって所持される携帯端末の「通信ログ」を入力し、当該ユーザの搭乗機の「搭乗情報」(ゲート番号や航空便名)を推定することができる。
【0051】
以上、詳細に説明したように、本発明のプログラム、装置及び方法によれば、ユーザによって所持される携帯端末の通信ログを用いて、当該ユーザの搭乗機の搭乗情報を推定する機械学習エンジンの学習モデルを構築することができる。
【0052】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0053】
1 学習装置
101 通信ログ蓄積部
102 出発時刻表
103 到着時刻表
11 トリップログ抽出部
12 機械学習エンジン
2 携帯端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9