特許第6865198号(P6865198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865198
(24)【登録日】2021年4月7日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/11 20060101AFI20210419BHJP
【FI】
   H01R13/11 A
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-134082(P2018-134082)
(22)【出願日】2018年7月17日
(65)【公開番号】特開2020-13673(P2020-13673A)
(43)【公開日】2020年1月23日
【審査請求日】2019年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】長野 泰成
(72)【発明者】
【氏名】千葉 真吾
(72)【発明者】
【氏名】長坂 尚一
(72)【発明者】
【氏名】金 大成
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 淳仁
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−033759(JP,A)
【文献】 特開2014−241269(JP,A)
【文献】 特開2005−243459(JP,A)
【文献】 特表2011−530154(JP,A)
【文献】 特開2004−031034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚のプレートより折り曲げによって形成された4つの壁面部を有する箱部と、
前記箱部内に配置された撓みバネ部とを備え、
相手端子が前記撓みバネ部の撓み変形した状態で前記箱部内に挿入され、前記撓みバネ部の撓み復帰力を接触荷重として前記相手端子に接触する端子において、
折り曲げの一端に位置する前記壁面部と、前記壁面部に隣り合う他の前記壁面部とのいずれか一方には、係止穴が設けられ、他方には、一方の前記壁面部と面一に折り曲げられて前記係止穴に入り込む係止片が設けられ、
前記箱部の開き方向の変位を規制する前記係止穴と前記係止片の双方の端面のいずれか一方が平面からなる端面に、他方が角面からなる端面にそれぞれ形成されており、
一方の前記端面は、前記箱部の開き方向と前記箱部の開き方向に直交する方向とに対して斜め方向に延びており、
他方の前記端面は、前記箱部の開き方向に直交する面と前記箱部の開き方向に沿う面とが交差してなることを特徴とする端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撓みバネ部が箱部内に配置された端子に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の端子として、例えば特許文献1に開示されたものがある。この端子50は、図7図9に示すように、前面が開口された箱部52を有する。この箱部52は、底面壁53と一対の側面壁54,55と天井壁56が一枚のプレートより設けられている。一の側面壁55には、係止穴57が形成されている。天井壁56には、係止片58が延設されている。天井壁56より延設された係止片58が折り曲げられて係止穴57に入り込でいる。
【0003】
箱部52内には、一端が箱部52に支持された片持ち支持構造の撓みバネ部60が設けられている。
【0004】
箱部52内に挿入された相手端子(図示せず)は、撓みバネ部60と天井壁56の間に挟持され、撓みバネ部60のバネ復帰力を接触荷重として端子間が電気的に接続される。
【0005】
上記端子によれば、相手端子(図示せず)が箱部52に挿入された状態にあって、撓みバネ部60のバネ復帰力によって、箱部52を開く方向の外力が一の側面壁55と天井壁56の間に作用する。この外力を係止穴57と係止片58で受けることによって箱部52が開く方向に変位するのを阻止している。これにより、撓みバネ部60のバネ復帰力が低下して接触荷重が低下するのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−31034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の端子では、図9に示すように、箱部52の開き方向の変位を規制する係止穴57と係止片58の双方の端面57a,58aの間には、大きなクリアランスC2が形成される。
【0008】
具体的には、箱部52の開き方向U、Dの変位を規制する係止穴57と係止片58の双方の端面57a,58aは、共に直線形状である。係止穴57と係止片58の双方の端面57a,58aの間にクリアランスが発生しないような寸法設定にすると、図10に示すように、天井壁56より延設された係止片58を折り曲げて係止穴57に入り込ませる際に、双方の端面57a,58aが直線状にオーバーラップした状態で干渉するため、折り曲げによって係止片58を係止穴57に入り込ませることができない。そのため、係止片58を折り曲げて係止穴57に入り込む際に干渉しないような寸法関係に設定とする必要がある。しかし、このような寸法関係に設定すると、係止片58が係止穴57に入り込んだ状態では、図9に示すように、大きなクリアランスC2が発生する。
【0009】
従って、従来例の端子50では、クリアランスC2の分だけ箱部52が開く方向U、Dに変位可能であるため、撓みバネ部60のバネ復帰力が低下して接触荷重が低下するという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、箱部の開き方向の外力に起因する撓みバネ部のバネ荷重の低下を抑制できる端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、一枚のプレートより折り曲げによって形成された4つの壁面部を有する箱部と、前記箱部内に配置された撓みバネ部とを備え、相手端子が前記撓みバネ部の撓み変形した状態で前記箱部内に挿入され、前記撓みバネ部の撓み復帰力を接触荷重として前記相手端子に接触する端子において、折り曲げの一端に位置する前記壁面部と、前記壁面部に隣り合う他の前記壁面部とのいずれか一方には、係止穴が設けられ、他方には、一方の前記壁面部と面一に折り曲げられて前記係止穴に入り込む係止片が設けられ、前記箱部の開き方向の変位を規制する前記係止穴と前記係止片の双方の端面のいずれか一方が線形状の端面に、他方が点形状の端面にそれぞれ形成されていることを特徴とする端子である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、箱部の組み立てに際して他方の壁面部の係止片を折り曲げて一方の壁面部の係止穴に入り込ませる際に、箱部を開く方向の変位を規制する端面同士が干渉するような小さなクリアランスに寸法関係を設定としても、点形状の端面を構成する部位が変形可能であるため、係止片を係止穴に入り込ませることができ、箱部を開く方向の変位を規制する端面同士のクリアランスを極力小さくできる。従って、前記箱部が開く方向の変位を小さく抑制でき、箱部の開き方向の外力に起因する撓みバネ部のバネ荷重の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態を示し、端子の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態を示し、端子の側面図である。
図3】本発明の一実施形態を示し、端子の断面図である。
図4】本発明の一実施形態を示し、端子の要部斜視図である。
図5】本発明の一実施形態を示し、(a)は端子の要部側面図、(b)は(a)のA部拡大図である。
図6】本発明の一実施形態を示し、(a)は係止片を係止穴に入り込ませる際に、係止片と係止穴の端面が干渉する状態を示す側面図、(b)は(a)のB1−B1線断面図である。
図7】従来例を示し、端子の前面図である。
図8】従来例を示し、端子の側面図である。
図9】従来例を示し、端子の側面図である。
図10】従来例を示し、(a)は係止片を係止穴に入り込ませる際に、係止片と係止穴の端面が干渉する状態を示す断面図、(b)は係止片を係止穴に入り込ませる際に、係止片と係止穴の端面が干渉する状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1図6には、本発明の一実施形態を示す。なお、図面は、底面壁3を上方に、天井壁6を下方として示されている。
【0016】
端子である雌端子1は、1枚の所定形状の導電性プレート(銅材等)を折り曲げて形成されている。雌端子1は、相手端子である雄端子(図示せず)と電気的に接続する箱部2と、電線(図示せず)を接続する電線接続部20とを備えている。
【0017】
箱部2は、前面側と後面側が開口された四角形の細長い箱形状である。箱部2は、4つの壁面部である底面壁3と一対の側面壁4,5と天井壁6から形成されている。底面壁3は、折り曲げによって天井壁6側に突出するタブ受け面部3aを有する。一方の側面壁4は、底面壁3の一方の側端より折曲部を介して一体に設けられている。他方の側面壁5は、底面壁3の他方の側端より折曲部を介して一体に設けられている。他方の側面壁5には、天井壁6の端面側に開口する係止穴10が設けられている。
【0018】
天井壁6は、一方の側面壁4より折曲部を介して一体に設けられている。天井壁6には、係止片11が突設されている。係止片11は、根元部で折り曲げられ、他方の側面壁5の係止穴10に入り込んでいる。これにより、係止片11は、他方の側面壁5と面一に配置されている。係止穴10と係止片11の詳しい構成は、下記する。
【0019】
撓みバネ部15は、箱部2内に配置されている。撓みバネ部15は、天井壁6より延設され、その先端が自由端である。つまり、撓みバネ部15は、片持ち支持構造である。
【0020】
相手端子であるオス端子(図示せず)は、扁平で細長いタブ部と、電線を接続する電線接続部とを備えている。
【0021】
次に、係止穴10と係止片11の構成を説明する。図5に示すように、係止穴10は、突片10aが突出された概略四角形の穴形状に形成されている。係止片11は、突片11aが突設された概略四角形の壁形状に形成されている。そして、係止穴10と係止片11は、箱部2を開く方向U、Dの変位を規制する端面10b,11bをそれぞれ有する。
【0022】
係止穴10の端面10bは、突片10aに形成され、箱部を開く方向Dに直交する直線状の面と箱部を開く方向Dに沿う直線状の面とが交差する角面、つまり、点形状の面より形成されている。
【0023】
係止片11の端面11bは、突片11aに形成され、箱部2を開く方向Uに対して傾斜する直線状の面より形成されている。係止穴10側の点形状の端面10bと係止片11側の直線状の端面11bとの間は、小さなクリアランスC1(図5(b)参照)、若しくは、ほとんどクリアランスのない状態に配置されている。このようなクリアランスの状態に配置できる理由は、次の通りである。
【0024】
つまり、箱部2の組み立てに際して天井壁6の係止片11を折り曲げて他方の側面部5の係止穴10に入り込ませる際に、図6に示すように、箱部2を開く方向U、Dの変位を規制する端面10b,11b同士が干渉するような寸法関係に設定しても、点形状の端面10bを構成する部位、つまり、突片10aの先端部位が変形可能(直線状の先端部位に比較して遥かに変形可能)であるため、係止片11を係止穴10に入り込ませることができる。そのため、箱部2を開く方向U、Dの変位を規制する端面10b,11b同士のクリアランスC1を極力小さくできる。
【0025】
また、箱部2の組み立てに際して天井壁6の係止片11を折り曲げて他方の側面壁5の係止穴10に入り込ませる際に、箱部2を開く方向U、Dの変位を規制する端面10b,11b同士が1点でのみ接触するよう折り曲げ、換言すれば1点をターゲットとして折り曲げれば良いため、クリアランスC1を極力小さくするような折り曲げが容易に可能であり、箱部2を開く方向U、Dの変位を規制する端面10b、11b同士のクリアランスC1を極力小さくできる。以上より、雄端子(図示せず)が箱部2に挿入された状態では箱部2を開く方向U、Dの外力が箱部2に作用するが、箱部2が開く方向U、Dの変位を小さく抑制でき、箱部2の開きに起因する撓みバネ部15のバネ荷重の低下を抑制できる。
【0026】
以上説明したように、雌端子1は、折り曲げの一端に位置する天井壁(壁面部)6と、天井壁(壁面部)6に隣り合う他方の側面壁(他の壁面部)5とに係止穴10と係止片11がそれぞれ設けられ、箱部2の開き方向U、Dの変位を規制する係止穴10と係止片11の双方の端面10b、11bのいずれか一方が線形状の端面11bに、他方が点形状の端面10bにそれぞれ形成されている。従って、上記で説明したような理由によって、箱部2が開く方向U、Dの変位を小さく抑制でき、箱部2の開きに起因する撓みバネ部15のバネ荷重の低下を抑制できる。
【0027】
また、箱部2を開く方向U、Dの変位を規制する一方の端面10bが点形状であるため、箱部2を開く方向U、Dの外力が作用すると、一方の点形状の端面10bが他方の直接形状の端面11bに食い込むため、箱部2を開く方向U、Dの変位を確実に規制できる。つまり、双方の端面10b、11bが共に直接形状であれば、箱部2を開く方向U、Dの外力が作用すると、双方の端面10b、11b間で滑りが発生し、箱部2が開く方向の変位が大きくなる可能性が考えられるが、本実施形態ではこのような事態が発生しない。
【0028】
更に、双方の端面10b、11b同士が適正な接触状態になっているかを目視で確認するが容易である。つまり、双方の端面10b、11b同士が面接触していることを目視で確認するよりも、双方の端面10b、11b同士が1点で接触していることを目視で確認する方が容易だからである。
【0029】
この実施形態では、係止穴10の端面10bが点形状に、係止片11の端面11bが直線状の端面11bに形成されているが、係止穴10の端面10bが直線状に、係止片11の端面11bが点形状に形成しても良い。
【符号の説明】
【0030】
1 雌端子(端子)
2 箱部
3 底面壁(壁面部)
4,5 側面壁(壁面部)
6 天井壁(壁面部)
10 係止穴
10b 端面
11 係止片
11b 端面
15 撓みバネ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10