【実施例】
【0205】
X.実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含められている。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施において十分に機能するように本発明者によって発見された技術の代表であり、したがって、本発明の実施にとって好ましい方式を構成すると見なすことができることを当業者であれば理解するべきである。しかしながら、当業者であれば、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、開示された特定の実施形態で多くの変更が可能であり、変更しても同様または類似の結果が得られることを本開示から理解できよう。
【0206】
実施例1
白血球除去法によるPBMCのアリコートの作製
白血球除去サンプル(leukopak)を、8リットルの末梢血を遠心力場によって循環させるプロセスから得、単核細胞を濃縮して得られる約125mlの容量中で赤血球の量を制限した。leukopakをさらに次のように処理した:leukopakバッグの一端をアルコールスワブで拭き取り、剃刀の刃でカットしてフラスコ内に注いだ。この容量を、ハンクス液で約500mlに希釈し、次いで50mlの容量の16〜29本の試験管に、試験管1本あたり30mlずつ分注した。試験管を、ブレーキおよび加速を行わずに400gで30分間回転させた。白色液を吸引し、新たな50ml管に半分まで入れ、25mlのPBSで一杯にした。この処理手順をさらに2回繰り返して、合計3回洗浄した。最後の洗浄の前に細胞を血球計でカウントした。収量は、30〜60本の試験管で、1本の試験管当たり1×10
8細胞であった。
【0207】
全血を処理するために、採血血液を、抗凝結剤の入った試験管またはCPT管に入れた。CPT管に入れた血液サンプルの処理について概略を述べる。手短に言えば、上相(血漿)約7〜8mlを50ml滅菌管に移す。カルシウムを含まないPBSで50mlに希釈する。反転させて混合する。300RCFで15分間遠心分離する。ペレットを乱さずに、上清の約95%を除去する。この上清を別の50ml管に移す。試験管を叩いてペレットを穏やかに再懸濁する。20mlのカルシウムを含まないPBSを添加する。反転させて混合する。半分(約10ml)を15ml管に移す。両方の試験管を300RCFで15分間遠心分離する。ペレットを乱さずに、できる限り多くの上清を除去する。T細胞に適した培地(AIM−Vをベースとした培地)または後述されるCD34培地(Stem Proをベースとした培地)の2mlを用いて50ml管中でペレットを再懸濁し、cedex細胞カウンターで生存細胞数をカウントする。
【0208】
血液サンプルを、EDTAのような抗凝結剤を含む試験管に集める場合は、処理工程には、赤血球の溶解、続く血液サンプルからのFicoll勾配によるPBMCの分離が含まれる。サンプルを、初めにカルシウム−マグネシウムを含まない等容量のPBSで希釈する。赤血球を、製造者の取扱説明書にしたがってACK緩衝液(Invitrogen)を用いて溶解する。赤血球を含まない細胞懸濁液を洗浄して、leukopakサンプルについて以前に記載したようにFicoll勾配上に積層する。バフィーコートからPBMCを得て、カルシウム−マグネシウムを含まないPBSで再び洗浄して、T細胞に適した培地(AIM−Vをベースとした培地)またはCD34培地(Stem Proをベースとした培地)に再懸濁する。
【0209】
実施例2
T細胞の活性化および増大
末梢血単核細胞(PBMC)を、Biological Specialty Corp(Colmar、PA)ドナー#33231(「ドナーA」)から得た。白血球パックをLymphocyte Separation Medium(Cellgro)で処理して、上記されたようにPBMCを得て、これを次にはアリコートにして凍結させ、液体窒素中に保存した。アリコートを解凍し、300IU/mlのrhIL2(Peprotech)および10ng/mlの可溶性抗CD3抗体(OKT3クローン、eBiosciences)を添加した新たに調製したAIM−V培地+pen/strep/グルタミン(AIV−V/ps/s/g培地)(Invitrogen)で増殖させた。活性化から数日後に、指数関数的な増殖をCEDEX細胞カウンターで確認した。培養3日後に、細胞をT細胞表現型についてアッセイし、次いでリプログラミング因子で形質導入した。一実験では、T細胞表現型を、プレーティングの前または形質導入の後に確認しなかった。このT細胞活性化実験を複数回繰り返したところ、一貫して同じ結果が得られた。T細胞は、活性化後および形質導入後に培養物の90%以上を占めた。T細胞がリプログラミング因子(複数可)で形質導入されたことが確認された。
【0210】
T細胞の活性化および増大手順の詳細(表1)。PBMCバイアルを解凍し、75×10
6細胞を収集した(約3つのバイアル)。各PBMCバイアルの内容物を、7mlのAIM−V/p/s/g培地に添加した。細胞懸濁液を1200rpmで4分間遠心分離した。ペレットを10mlのAIM−V+p/s/g中に再懸濁した。細胞濃度を、合計28mlでは1×10
6細胞/ml、合計25mlでは2×10
6細胞/mlに調整した。IL2(300IU/ml)およびOKT3(10ng/ml)を細胞懸濁液に添加して混合した。各濃度の細胞を、24ウェル組織培養プレートの1ウェルに付き1.5mlをプレーティングし、37℃でインキュベートした。合計すると、1×10
6細胞/ml(1.5ml/ウェル)の18のウェルと2×10
6細胞/ml(1.5ml/ウェル)の16のウェルを使用した。細胞数を確認し、第0日目として記録した。第0日目の細胞数を、指数関数的な増大を確認するために第3日目および第4日目の細胞数と比較した。
【0211】
表1−T細胞の活性化および増大
【0212】
【表1】
実施例3
レトロウイルスの生産
レトロウイルスベクターNanog RFP、Lin28 RFP、Oct4 eGFP、およびSox2 eGFPを、既に記載されているように構築した(参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第61/088,054号を参照されたい)。レトロウイルスベクターc−Myc RFP、Klf4 RFP、Oct4 eGFP、およびSox2 eGFPを同様に構築した。c−Mycの発現の潜在的な毒作用を中和するために、レトロウイルスベクターSV40ラージT遺伝子(SV40LT)−RFPを構築し、一部の組み合わせに使用することができる(Yuら、2009)。
【0213】
293T細胞の調製手順の詳細(表2):トランスフェクションの約24時間前に細胞を播種した。実施する実験に十分な容量のウイルス上清を得るために必要な細胞数を計算した。培地を吸引し、293Tプレートを5mlのPBSで洗浄し、次いで吸引した。1枚の10cmプレートに付き1mlの0.05%トリプシン/EDTAを添加し、均等に分布させた。このプレートを室温で2〜5分間インキュベートし、手またはフードの壁部にしっかりと叩きつけて細胞を外し、4mlのD10Fを添加した。293T細胞を粉砕して(ピペットで3〜4回)単一細胞懸濁液にし、15ml円錐管に移した。300μlの293T細胞を、CEDEX細胞カウンターでカウントするために取り出した。細胞濃度を、D10F培地で5×10
5細胞/mlに調整した。10mlの細胞懸濁液を、実験に必要な10cmプレートのそれぞれにプレーティングした(1プレートに付き5×10
6細胞)。
【0214】
表2−293T細胞の調製
【0215】
【表2】
レトロウイルス生産のための一過性のトランスフェクション:293T細胞を1枚の10cm皿に付き5×10
6細胞で播種し、一晩インキュベートした。翌日、細胞をPEI(Sigma)親油性試薬およびOptiMEM(Invitrogen)を用いて10μgのMMLVレトロウイルスベクター、3μgのGag/pol、1μgのNFkB、および1μgのVSVgでトランスフェクトした。500μlのOptiMEMを40μlのPEIと共に5分間インキュベートした。別個の試験管で、10μgのレトロウイルスベクター+3μgのGag/pol+1μgのNFkB+1μgのVSVgを500μlのOptiMEMに添加した。PEI/OptiMEM混合物をDNA/OptiMEM混合物に添加して合計約1mlにし、25分間インキュベートした。インキュベーション中に、レシピエント293Tプレートを、FBSが添加されていない10mlのPBS−/−および4mlのDMEMで洗浄した。DNA/PEI混合物を、293T細胞に直接滴下添加した。4時間後に、培地を5mlのDMEM/10%FBS/50mMのHEPESと交換し、インキュベートした。トランスフェクションの48時間後に、高効率のトランスフェクションを確認するために293T細胞の蛍光を視覚化した。培地(5ml/プレート)を、ウイルス含有上清として収集した。上清を、後の形質導入のために孔径が0.8μmのフィルターでろ過して収集した。
【0216】
T細胞の増大および表現型の検証の詳細(リプログラミングの約1日前):T細胞は、サイトカインおよび抗体の添加により、細胞集団の殆どを占めるはずである。検証は、抗CD3、抗CD4、および抗CD8フローサイトメトリー抗体で染色した表面によって行った。加えて、細胞のカウントを行った。解凍後の遅延を認めたが、細胞は、その数が第0日目から増加し;この細胞数を記録して、次の日の細胞数と比較して倍加を検証した。
【0217】
実施例4
T細胞のレトロウイルス形質導入(第0日目)
IL2およびOKT3による活性化および増大の3日後に、細胞集団は、97〜99%がT細胞からなっていた。これらのT細胞を、レトロウイルス含有培地、300IU/mlのrhIL2(組換えヒトIL−2)、および4μg/mlのポリブレンが添加された2mlのDMEM(Invitrogen)+10%FBS(Hyclone)の容量中に1×10
6細胞/ウェルで再懸濁した。レトロウイルス含有培地は、リプログラミングに関与することが知られている数種の転写因子の1つと組み合わせたMMLVパッケージング要素での293T細胞のトランスフェクションによって調製した。ウイルスを個々に調製した後に、培地を2つの異なるカクテルに混合してT細胞に曝露し;セット1は、転写因子Sox2、Oct4、c−Myc、およびKlf−4を発現するウイルスを含み、セット2は、Sox2、Oct4、Nanog、およびLin28を発現するウイルスを使用した。別々に、細胞を、コントロール形質導入として機能する6つのウイルスの1つに曝露した。細胞培養培地を、ウイルス含有培地に交換し、1000×g、32℃で1.5時間遠心分離した(スピンフェクション(spinfection))。続いて、細胞を37℃で4時間インキュベートした。インキュベーション後に、1mlの培地を慎重に吸引して、新鮮なDMEM+10%FBSに交換した。細胞を徐々に粉砕して混合し、均等な再懸濁液にした。粉砕後、培養物を、スピンフェクションの開始から18時間インキュベートした。18時間後に細胞を回収し、10%FBS+IL2+ポリブレンが添加された新鮮なウイルス上清+DMEMに再懸濁し、新たな24ウェルプレートに再プレーティングし、上記のように2回目のスピンフェクションを行った。
【0218】
レトロウイルスの回収およびT細胞の形質導入(第0日目)の手順の詳細:リプログラミング因子に加えて、各レトロウイルスは、蛍光タンパク質タグを有していた。したがって、高効率のトランスフェクションを確認するために、293T細胞を、トランスフェクションの48時間後に蛍光顕微鏡によって視覚化した。293T培地(約5ml/プレート)を収集し、遠心分離してデブリを除去し、ウイルス含有上清を0.8μmのシリンジフィルターに通してろ過し、別個の15mlまたは50ml円錐管に入れた。ウイルスは、第0日目〜5日目まで4℃で保存した。T細胞を活性化し、T細胞が感染のとき(第3日目)に指数関数的に増殖しているかを確認するために連日カウントした。細胞を回収し、遠心分離し、ウイルス含有上清に再懸濁し、24ウェルプレートに1e10
6細胞/ウェルで播種した。1ウェル当たり使用した各ウイルスストックの容量を表3に示す(合計容量=2ml)。6つの別個のコントロール形質導入を、個々のウイルスストックの感染力を確認するために行った。後者の形質導入の場合、1e10
6細胞を500μlのウイルスストックの1つに再懸濁し、D10Fおよび300IU/mlのIL2+4μg/mlのポリブレンを使用して総容量を2.0mlに調整した。すべてのリプログラミング試験は、2連または3連で行った。非形質導入細胞は、陰性コントロールとして使用した。
【0219】
表3−T細胞のリプログラミング用のウイルス上清
【0220】
【表3】
プレートを、加速度を約4、ブレーキを約4に設定して、1000g、32℃で1.5時間スピンフェクションを行った。スピン後、プレートをインキュベーターに移して4時間インキュベートした。4時間のインキュベーションの後、プレートをぶつけないように慎重にフードに移した(細胞をウェルの底に沈降させたまま)。プレートをフード内で5分間放置した。1mlの培地/ウイルスを、P1000ピペッターを用いてウェルの上部から慎重に吸引した。1mlの新鮮なD10Fおよび300IUのIL2を添加した後、プレートを37℃で18時間インキュベートした。未使用のウイルス上清はすべて、2回目の感染のために4℃で保存した。
【0221】
T細胞の2回目の形質導入の手順の詳細(第1日目):初めのスピンフェクションの開始(第0日目)から24時間後に、すべてのウェルの細胞を、滅菌の蓋が付いたFACS管に個々に集め、1200rpmで4分間遠心分離した。上清を、各管/ウェルについて、新鮮な10μl非ろ過チップ(non−filtered tip)を用いてガラス吸引器で吸引した。細胞を、上記されたように適切なウイルス(複数可)、IL2、およびポリブレンに再懸濁した。細胞を、同じプレートの未使用のウェルまたは新たな24ウェルプレートにプレーティングした(初めの形質導入のウェルは再使用しなかった)。続いてスピンフェクションを行い、上記の工程を繰り返した。
【0222】
T細胞の増大を検証する手順の詳細(第1日目):Cedex細胞カウントを、形質導入されていないサンプルの残りのウェルに対して行った。この時点で、細胞は、第0日目から数では指数関数的に増加していた。この細胞数を記録し、前日の細胞数と比較して倍加を検証した。このウェルは、陰性コントロールとして、ならびに任意のさらなる試験のために維持した。このウェルの細胞は、培地を半分交換し、必要に応じて300IU IL2/mlのIL2を供給した。
【0223】
実施例5
形質導入T細胞のMEFへのプレーティング
MEFプレーティング:形質導入細胞またはiPSコロニーを導入する1日〜3日前に、ゼラチン被覆6ウェルプレートまたは10cm皿にMEFをプレーティングした(MEFのプレーティングは、形質導入の1日前が最適であり得る)。
【0224】
T細胞の増大および形質導入効率の検証:T細胞の同一性を、抗CD3、抗CD4、および抗CD8を用いたフローサイトメトリー表面染色によって活性化の2〜3日後に検証し、ならびに形質導入後に、形質導入に成功した細胞集団を検証した。第0日目、第2日目、第3日目、および第4日目にCEDEX細胞カウントを行って指数関数的増加、したがってMMLVレトロウイルスへの感染のしやすさを確認した。
【0225】
形質導入T細胞のMEFへのプレーティング:初めの形質導入の後の第3日目に、成功および効率の推定値を、上に列記した蛍光顕微鏡およびフローサイトメトリーによって検証した。形質導入細胞を、2つの細胞濃度(5×10
6および2×10
6)で、FGFを含まない(IL2も他のサイトカインも添加されていない)D10F:hESの50:50の組み合わせ培地が入っている10cm皿MEFプレートに添加した。細胞をインキュベートし、1日おきに栄養補給した。
【0226】
照射されたMEFをプレーティングする手順の詳細:MEFを、形質導入細胞を導入する1〜3日前にプレーティングした。10cmプレートの必要な数を計算した(1枚の10cmプレートに付き500kの形質導入細胞;転写因子(セット1またはセット2)、非形質導入コントロール、c−Mycのみのコントロール、MEFのみのコントロール−5枚のプレート+)。0.1%ゼラチンを用いて10cmプレートを少なくとも1時間被覆し、続いて吸引した。15mlの照射MEF細胞懸濁液(約7.5×10
4細胞/ml)を各10cmプレートに添加した。翌日、細胞をチェックしてMEFが結合していることを確かめた。
【0227】
形質導入T細胞の照射MEFへの移入のための手順の詳細(第3日目):蛍光顕微鏡を用いて形質導入を検証した。フローサイトメーターを用いて形質導入を検証し、形質導入の効率を決定した。最小で20%の効率が、リプログラミング(MEFへのプレーティングなど)を実施する要件と見なされる。GFP/RFP分析および表面染色を実施して、T細胞の形質導入が他の細胞集団に無関係であることを検証した。100μlの細胞をFACS管に収集して、1200rpmで4分間回転させた。上清を吸引し、細胞を5mlのFACS緩衝液に再懸濁し、再び遠心分離した。ペレットを150μlのFACS緩衝液に再懸濁し、抗CD3、抗CD4、または抗CD8フローサイトメトリー抗体で染色した。細胞をフローサイトメーター上で分析して、CD3
+細胞(T細胞)が形質導入されたこと、形質導入されたサブセットが何であるかを検証した。培地を、照射MEFプレートから吸引し、7.5mlのDMEM+10%FBSを添加した。5×10
5の形質導入T細胞を収集し、1200rpmで4分間遠心分離し、bFGFを含まない7.5mlのhES培地に再懸濁した。T細胞を、照射MEFプレートに滴下添加した。IL2および他のサイトカインは添加しなかった。次いで、MEFプレートを37℃でインキュベートした。
【0228】
実施例6
MEFがプレーティングされた形質導入細胞の維持および栄養補給
第5〜9日目:100ng/mlのゼブラフィッシュFGFが添加されたhES培地(CM)を用いて、各リプログラミング10cmプレートに対して半分の培地交換を行った。細胞の懸濁ロスを最小限にすると共に培地補充の正の効果を最大限にするために、新たな栄養補給戦略を開発した。簡単に述べると、5つの10cm皿の蓋を、皿を傾けるための支持体として使用した(そしてすべての後の栄養補給のために再使用した)。皿は、軽く付着したどの細胞も乱さないようにインキュベーターから慎重に取り出した。プレートを、確保しておいた(reserved)蓋の上に、MEF/細胞が一切露出しない一定角度でセットした。細胞を10分間沈降させた。沈降期間の後、各蓋を取り外して、7.5mlを、プレートの底部に対して水平な培地の最上部から慎重に/ゆっくりと吸引した。この取り出された培地を収集し、1200rpmで4分間遠心分離し、1mlの培地に再懸濁し、CEDEXでカウントして、細胞ロスが1%未満であることを確認した。次いで、7.5mlの新鮮な培地を、細胞を乱さないように慎重に円を描くように滴下添加し、皿をインキュベーターに戻した。この方法は、定期的な培地交換を可能にすると共に細胞ロスを最小限にするという目的を果たす。第9〜30日目:100ng/mlのゼブラフィッシュbFGFが添加されたMEF順化hES培地(MEF−CM)を用いて、各リプログラミング10cmプレートに対して半分の培地交換を行った。
【0229】
維持および栄養補給スケジュールの手順の詳細(第5〜30日目):第5〜9日目:100ng/mlのゼブラフィッシュFGFが添加されたhES培地(CM)を用いて、各リプログラミング10cmプレートに対して半分の培地交換を行った。5つの10cm皿の蓋を、皿を傾斜させる支持体として後の栄養補給すべてに使用するために集めた。10cmリプログラミング皿をインキュベーターから取り出し、プレートは一定の角度になるがMEF/細胞が露出しないように確保しておいた蓋の上にセットした(培地は、全表面を覆ったまま、底に溜まり、こぼれないようにするべきである)。皿を10分間落ち着かせた。この落ち着かせる期間の後、各蓋を取り外して、7.5mlの上清を、プレートの底部に対して水平な培地の最上部から慎重にゆっくりと吸引した。上清、すなわち吸引した培地を収集し、1200rpmで4分間遠心分離し、1mlの培地に再懸濁し、CEDEXでカウントした。細胞ロスが1%未満であることが確認された。7.5mlの新鮮な培地を、細胞を乱さないように慎重に円を描くように滴下添加し、インキュベーターに戻した。栄養補給計画は、リプログラミングプレートに対して1日おきに開始した。第9〜30日目:100ng/mlのゼブラフィッシュFGFが添加されたMEF順化hES培地(MEF−CM)を用いて、各リプログラミング10cmプレートに対して半分の培地交換を行った。栄養補給は、第5〜9日目と同様にこの培地で行った。
【0230】
実施例7
iPSコロニーの同定および採取
活性化され増大しているT細胞は、特徴的な細胞形態およびクラスター形成挙動を示した。レトロウイルス形質導入効率の検出を、初めの形質導入から72時間後のGFPおよびRFP発現によって判定し、約3週間にわたって導入遺伝子が抑制され、hES細胞表現型を示した。明確なiPS細胞コロニーが、第23日目に出現し始めた。GFPおよびRFPサイレンシングは、蛍光顕微鏡によって検証され、コロニーを、ピペットチップで採取して剥離フードに入れた。次いで、コロニーの断片を、照射MEFを含む新たな6ウェルプレートに移した。コロニーの数をカウントして、プレーティングされた投入細胞数を考慮してリプログラミング効率を推定した。この時点から、クローンコロニーに毎日栄養補給し、手作業でもう1回継代し、次いで詳細が後述されるように増大させた。
【0231】
手順の詳細:形態学的に、iPS細胞コロニーは、高密度であり、拡大した核および2つの別個の核小体をもつ緻密な小細胞からなる。コロニーの境界は、通常は明確であった。iPSコロニーは、組み込まれたウイルスDNAからのGFPおよびRFPの発現を抑制した。一部の真正のコロニーは、形質導入から約20日後に蛍光を消失し、一部の真正のコロニーは、感染から約35〜40日後に採取され移されてから蛍光を消失した。ここで観察されたコロニーでは、すべてのコロニーが、GFPおよびRFPを発現しなかった(ただし、ある程度の発現が、近傍の単一細胞で確認された)。これは、細胞型間で様々であり、特に線維芽細胞と比較すると異なり得る。手作業で採取するために、ピペットチップを、「三目並べ盤(tic tac toe board)」式にコロニー上に直接引いて3〜6の断片に分割し、幹細胞が周囲のMEFおよびT細胞から離れやすくした。採取は、総コロニーのカウントの混乱を避けるため、すなわちコロニーの小塊が残ったときに、これが再定住して新たなクローンとして誤ってカウントされないようにするため、複数のコロニーが形成されるまでは避けた。次いで、細胞を、hES培地および100ng/mlのゼブラフィッシュbFGFが添加されたMEFを含む6ウェルプレートの受入ウェルに直接移した。クローンが実際に完全にリプログラミングされたことを確信するために、増殖、形態、および蛍光の消失を1〜2週間にわたって監視した。採取後の1日は細胞に栄養補給しなかったが、以降は毎日栄養補給した。採取してプレーティングしたコロニーが接着して特徴的なES様形態を示したら、これらのES様コロニーを、上記のように再び手作業で6ウェルの照射MEFプレートの新たなセットに移し、毎日栄養補給した。ウェルがコンフルエントになると、細胞は、1mg/mlのコラゲナーゼで通常のiPS細胞系として継代された(Yuら、2007)。iPS細胞を、様々な継代で凍結し、各セットに対して試験解凍を行った。
【0232】
クローンiPSコロニーは、第23〜30日目に21のコロニー(第30日目の時点では、すべてがセット1の因子から)を形成し、7つのコロニーは、高い形質導入細胞播種密度(1枚の10cm皿に付き2×10
6)からのものであり、14のコロニーは、低密度(1枚の10cm皿に付き5×10
5)からのものであった。別のコロニーが成長しないと判定するまで皿に栄養補給した。すべてのiPS系を得て、凍結し、増大させた。
【0233】
実施例8
ヒト末梢血Tリンパ球からの人工多能性幹細胞の誘導
1×10
6細胞を含む活性化されたT細胞が富化された集団を、蛍光マーカー遺伝子に連結されたリプログラミング因子(SOX2、OCT4、c−Myc、またはKLF4)の1つをそれぞれがコードする4つの別個のベクターでレトロウイルス形質導入を2回(第0日目と第1日目)行った(代表的なベクターマップが
図10に示されている)。形質導入効率を、蛍光顕微鏡およびフローサイトメトリーで第3日目に評価した。CD3の染色は、形質導入集団が99%±1%CD3
+であることを示した(
図2A)。
【0234】
T細胞は、全血中に豊富に存在すること(健常な成人では約6.5×10
5〜3.1×10
6/ml)(LichtmanおよびWilliams、2006)、十分に確立されたプロトコルを用いた培養が容易なこと(Johnsonら、2009;Morganら、2006)から、リプログラミングの出発材料として良く適している。T細胞の増殖および効率的なレトロウイルス形質導入を促進するために、末梢血単核細胞(PBMC)を、iPS細胞にリプログラミングするために白血球アフェレーシスまたは標準的な静脈穿刺(Vacutainer(著作権)CPT管)で単離した(
図1)。非動員ドナー由来PBMCを、無血清培地中IL−2の存在下、抗CD3抗体で活性化し、増大させた(
図2A)。これは、平均第3日目の純度が90%±7%のCD3
+からなる成熟CD3
+T細胞の好ましい増大をもたらした(
図2A)。
【0235】
次いで、大部分がT細胞に向かってスキューされた(skewed)細胞集団にリプログラミング因子を形質導入した。形質導入されたT細胞を含む細胞集団を、100ng/mlの塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)が添加されたhESC培地中の照射マウス胎仔性線維芽細胞(MEF)上に置いた。iPSCコロニーが、第23日目に初めて観察された。T細胞のリプログラミング効率を、hESC様形態のコロニーの数を形質導入細胞の投入数で除して推定したところ、約0.01%と決定され、発表された線維芽細胞およびCD34
+細胞リプログラミング効率(Yuら、2007;Lohら、2009)に類似していた。
【0236】
TiPSを、白血球アフェレーシスによるサンプル(ヒスパニック系成人男性から、「TiPS−L」と呼ばれる系)および全血Vacutainer(著作権)によるサンプル(白人成人男性から、「TiPS−V」と呼ばれる系)の両方から作製した。いずれの場合も、リプログラミングは、1mlの全血中のT細胞の総計に等しい投入細胞数を用いて達成した。hESC形態を示すコロニーは、MEF上で増大し、クローンは、mTeSR培地およびMatrigel被覆プレートを用いて無フィーダー条件下での維持に成功した。
【0237】
多能性は、フローサイトメトリー(
図2B)およびアルカリホスファターゼ染色(
図8)を用いてhESC多能性マーカーSSEA−3、SSEA−4、Tra−1−81、およびOCT4の発現によって検証した。
【0238】
TiPSが、開始ドナーT細胞集団と遺伝的背景を共有していることを検証して細胞系の交差汚染を排除するために、DNAフィンガープリント法も実施した(
図7)。短縦列反復(STR)分析により、iPSコロニーがドナーの遺伝物質に由来することが示された。ドナーPBMCおよびiPS系は、男性特異的であり、分析された8つのSTR遺伝子座における15の対立遺伝子多型に対して互いに同一である(以下の表4)。
【0239】
表4.多型による細胞同一性の確認
【表4】
TCRβ鎖再構成のマルチプレックスPCR検出によりTiPS系のT細胞の起源が確認された(
図2C)。T細胞は、TCRβ鎖における1つの増殖性V−J再構成を有し、TiPS細胞になった後はこの特徴的な遺伝子配列を維持するはずであり;最も一般的なβ鎖再構成PCR増幅用の様々なプライマーを組み合わせるマスターミックスの使用により、ABI 3730 DNAアナライザーでの断片分析エレクトロフェログラムによる決定で、固有のサイズおよび配列の1つのバンドが示された。線維芽細胞由来iPS細胞、「Fib−iPS」を陰性コントロールとして用いた。
【0240】
TiPSクローンは、ヒト胚性幹細胞マーカー遺伝子DNMT38、LEFT8、NODAL、REX1、ESG1、TERT、GDF3、およびUTF1を発現した(
図3A)。全RNAを、H1 hES細胞、Fib−iPS(線維芽細胞由来)、一次ドナー由来T細胞、およびTiPSクローンから単離した。TiPS1eeおよびTiPS1bをRT−PCRを用いて分析した。さらなる特徴付けにより、導入遺伝子の宿主ゲノムへの組み込みの他、リプログラミングが成功した後の導入遺伝子の抑制が実証された(
図3B〜
図3C)。TiPSは、上記のすべてのアッセイにおいて、hESC系H1および線維芽細胞由来iPSC系コントロールの両方に類似していた。リプログラミング遺伝子の内因性および外因性(導入遺伝子)発現が、導入遺伝子の発現の抑制によって明らかなように完全なリプログラミングを示した(
図3C)。GAPDHを、AとBの両方において増幅コントロールとして使用した。ゲノムDNAを単離し、このゲノムDNAを、目的の遺伝子用の順方向プライマーおよびIRES用の逆方向プライマーを使用するPCRによって分析して、リプログラミング遺伝子の組み込みを確認した(
図3B)。OCT4順方向および逆方向プライマーを、PCR反応コントロールとして使用した。
【0241】
TiPSクローンは、フローサイトメトリー分析(
図3D)、アルカリホスファターゼ染色、およびGbanding染色体分析による核型分析によって示されるように、ヒト胚性幹細胞特異的多能性マーカーを発現した。系統は、複数回の継代後も核型的に正常であり、正常な核型を維持したまま、培養物中で増殖して30回以上継代した(
図9)。
【0242】
最後に、TiPS細胞系を、それらのin vivoおよびin vitroでの分化能を決定するために評価した。TiPSクローンは、3つすべての胚葉からの誘導に一致する、奇形腫を含む組織を形成した(
図4A)。細胞系を、in vitroで、様々な方向の分化プロトコルで外胚葉系統および中胚葉系統に分化するそれらの能力についてもアッセイした。これらのクローンは、ニューロン、拍動する心臓トロポニンT陽性心筋細胞、および多能性顆粒球−赤血球−マクロファージ−巨核球(GEMM)造血細胞を産生することができた(
図4B〜
図4E)。
【0243】
TiPSは、複数の細胞型に分化した。TiPSは、以下の方法によって心筋細胞に分化した。TiPSクローンは、胚様体(EB)を形成し、HGF/bFGF媒介心臓誘導によって心筋細胞に分化した(
図4C)。拍動する心筋細胞凝集体が、第14日目に観察された。TiPSは、血液にも分化した(
図4E)。造血始原細胞(HPC)は、BMP−4、VEGF、Flt−3リガンド、IL−3、GM−CSF、およびFGF−2の組み合わせを用いてEBから誘導した。TiPS1ee由来HPCの機能特性を、コロニー形成単位(CFU)アッセイを用いて決定した。CFU−GM、BFU−E、およびCFU−GEMMコロニーが第12日目に観察された。
【0244】
要約すると、iPS細胞を、非動員ドナーの末梢血由来のT細胞から作製するのに成功した。出発材料の量は、標準的なvacutainerからの出発材料の1mlに適応可能であった。TiPSは、ホストの材料の同一性を反映した。TiPSは、正常なヒトES細胞および他の細胞供給源由来のiPS細胞の顕著な特徴も有していた。TiPSは、拍動する心筋細胞凝集体および血液細胞を含む複数の細胞型にさらに分化した。
【0245】
TiPSクローンとhESC系または線維芽細胞由来iPSC系との間の分化能における有意差は観察されなかった(
図4D〜
図4E)。iPSCゲノムにおけるTCR遺伝子再構成の持続がもたらす、後の分化に対する潜在的な影響を試験することができる。
【0246】
TCR再構成は、実際、誘導奇形腫における親系クローンTCRβ鎖再構成の検出によって実証されるように、iPSCクローンのトラッキングなどの特定の状況で利点を証明することができる(
図5)。さらに、T細胞への再分化のときに、TiPS細胞は、それらの予め再構成されたTCR遺伝子の発現によってもたらされるTCR対立遺伝子排除の機序によって、規範胸腺発生配列における重要な工程を回避し得る。この現象は、T細胞発生の研究で探求できる。
【0247】
挿入変異誘発および他の潜在的な細胞機能の破壊が、レトロウイルス・リプログラミング・プロトコル(Mirxhwllら、2004)を使用すると起こり得ることに留意されたい。エピソームリプログラミング法の使用における近年の進展により、これらの問題に対処することができ、これらの代替の方法によってT細胞をリプログラミングする試みが進行中である(Yuら、2009;Zhouら、2009)。さらに、このようなエピソームによりリプログラミングされたTiPS細胞の潜在的な治療用途の興味深い例は、腫瘍関連抗原に特異的な内因性TCR遺伝子を有する、組込みのない造血幹細胞を分化させる供給源としてである(van Lentら、2007)。
【0248】
マウスで最終分化したBリンパ球をリプログラミングする以前の報告は、細胞の同一性に関連した転写因子の追加またはノックダウンを必要とし、ドキシサイクリン誘導発現系(Hannaら、2008)を使用した。近年、マウスT細胞のリプログラミングの論文が発表され、このリプログラミングでは、iPSC作製の成功のためにp53遺伝子のノックアウトを必要とした(Hongら、2009)。抗増殖経路の操作を伴う実験(Liら、2009;Marionら、2009;Kawamuraら、2009;Utikalら、2009)により、リプログラミングの機序についての洞察が得られ、そしてその実験ではリプログラミング効率を著しく増大させることができる。しかしながら、上記のどの操作も、ヒトT細胞のウイルスリプログラミングの成功には必要ないようである。加えて、本発明者らのデータと、成人CD34
+造血始原細胞のリプログラミングに使用される方法論(Lohら、2009;Yeら、2009)とを結びつけ、今や、投入細胞の分化段階とリプログラミング効率と関連付けるマウス系での近年の観察結果(Eminliら、2009)を調べるための初代のヒト系を提供する。
【0249】
臨床的に有利な少容量の非動員ヒト末梢血からのiPSCの誘導が発見された。T細胞は、低侵襲的に多数のドナーから採取して、十分に確立されたプロトコルで培養できるリプログラミング用の豊富な細胞供給源の代表である。実験で、TiPSは、hESC系および線維芽細胞由来iPSC系と同様の特性および分化能を有することが見出された。加えて、TiPSは、iPSCクローンのトラッキング、T細胞の発生、およびiPSC技術の治療への適用を探求する新規なモデルを提供する。
【0250】
材料と方法
細胞増殖培地および塩基性線維芽細胞成長因子−iPSC系を、既に記載された方法を用いて維持した(Yuら、2007)。ゼブラフィッシュbFGFを、既に記載されているようにすべての実験でヒトbFGFの代わりに使用した(Ludwigら、2006a)。
【0251】
線維芽細胞iPSC系−「Fib−iPS」と呼ばれるコントロール線維芽細胞由来iPSC系を、ATCC(Manassas、VA)から得たIMR90細胞を用いて、既に記載されているように作製した(Yuら、2007)。
【0252】
T細胞の活性化および増大−末梢血単核細胞(PBMC)を、リンパ球分離培地(Cellgro、Manassas、VA)で処理されたHLA−A2陽性ヒスパニック系成人男性ドナー(「ドナーL」)白血球パック(Biological Specialty Corp、Colmar、PA)から得た。加えて、全血サンプルを、Vacutainer(著作権)CPT(商標)管(BD Biosciences、San Jose、CA)での標準的な静脈穿刺によって血液型不明の白人男性ドナー(「ドナーV」)から採取し、製造者の推奨にしたがって遠心分離によってPBMCを収集した。血液サンプルは、Biological Specialty Corporation(Colmar、PA、USA)が承認したDeclaration of Helsinki and Institutional Review Boardにしたがった同意書を基に得た。T細胞を、pen/strep/グルタミン(Invitrogen)+300IU/mlのrhIL2(Peprotech、Rocky Hill、NJ)および10ng/mlの可溶性抗CD3抗体(eBioscience、OKT3クローン、San Diego、CA)が添加された新たに調製されたAIM−V培地(Invitrogen、Carlsbad、CA)で増大させた(Chatenoud、2005;Bergerら、2003)。増殖を、培養から3日後にCEDEX(Roche Innovatis、Bielefeld、Germany)細胞カウンターによって検証し、この時点で、細胞をT細胞表現型についてアッセイし、次いでリプログラミング因子を形質導入した。
【0253】
レトロウイルス作製のための一過性トランスフェクション−レトロウイルスを、ポリエチレンイミン(「PEI」)親油性試薬(40μg/10cmプレート)を用いて、それぞれが4つのリプログラミング遺伝子および蛍光マーカー遺伝子(GFPまたはRFP)をコードする10μgのレトロウイルスベクター(モロニーマウス白血病ウイルス)主鎖、3μgのGag−Pol、NFkBの誘導体をコードする1μgのプラスミド、および1μgの水疱性口内炎ウイルスGタンパク質を用いて、70〜80%コンフルエンスの10cmプレート内で293T細胞をトランスフェクトすることによって作製した。4時間後、培地を、5mlのDMEM(Invitrogen)+10%FBS(Hyclone、Waltham、MA)および50mMのHEPES(Invitrogen)に交換した。ウイルス上清を、トランスフェクションの48時間後に収集し、遠心分離し、0.8μmの孔径のフィルターに通した。
【0254】
スピンフェクションによるレトロウイルス形質導入−1ウェルに付き1×10
6の活性化ドナー細胞を、4つのレトロウイルス上清+4μg/mlのポリブレン(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)および300IU/mlのrhIL−2の混合物に入れて、1000×g、32℃での1.5時間の遠心分離によって「スピンフェクション」を行った。スピンフェクション後、プレートの培地を半分交換し、一晩インキュベートした。翌日、細胞を遠心分離によって回収し、2回目のスピンフェクションを行った。
【0255】
T細胞の増大および形質導入効率の検証−T細胞同一性を、抗CD3抗体(BD、クローンHIT3a)を用いたフローサイトメトリー表面染色による活性化の3日後に検証し、形質導入後にどの細胞集団が形質導入に成功したかを検証した。サンプルを、Accuri(Ann Arbor、MI)フローサイトメーターにかけた。CEDEX細胞カウントを第0日目、第3日目、および第4日目に行って、増大と、これによるMMLVレトロウイルス感染のしやすさを確認した(データは示していない)。
【0256】
MEFへの形質導入T細胞のプレーティング−初めの形質導入から72時間後に、上に列記された蛍光顕微鏡およびフローサイトメトリーによって形質導入の成功および効率の推定値を検証した。5×10
5の形質導入細胞をMEFが播種された10cmプレートに添加し、1〜3日後にzbFGF(または別のサイトカイン)を含まないD10F:hESCが50/50の組み合わせ培地中においた。細胞をインキュベートし、1日おきの半分の培地交換によってhESC培地+100ng/mlのzbFGF(第1週)またはMEF順化培地+100ng/mlのzbFGF(第2週以降)で栄養補給した。栄養補給中の細胞ロスを回避するために、プレートを10分間やや傾けて細胞を沈降させ、培地を培地層からゆっくりと除去した。
【0257】
iPSCコロニー確認および採取−明確な境界および典型的なhESC形態をもつコロニーが、概ね第23日目に出現し始めた。GFPおよびRFPサイレンシングを、蛍光顕微鏡で検証し、コロニーの数をカウントして、プレーティングされた投入細胞数を考慮してリプログラミング効率を推定した。コロニーを手作業で回収し、MEFに移し、確立されたプロトコル(MaheraliおよびHochedlinger、2008;Thomsonら、1998)にしたがって増大させた。リプログラミング効率の推定値は、推定iPSCコロニーの総数を形質導入細胞の投入数で除して得た。回収後に残った偽陽性再播種コロニーが含まれないように、コロニー回収(第25〜30日目)後にカウントを中止した。
【0258】
DNAフィンガープリント法−TiPS細胞系およびドナーPBMCを、短縦列反復(STR)の分析のためにウィスコンシン大学のHistocompatibility/Molecular Diagnostics Laboratory(Madison、WI)に送付した。8つのSTR遺伝子座の遺伝子型をTiPS細胞サンプルのDNAから決定した。
【0259】
核型分析−WiCell Research Institute(Madison、WI)がGバンド分析を行った。
【0260】
T細胞受容体β鎖再構成分析−ゲノムDNAを、製造者のプロトコル(Qiagen DNeasy Blood and Tissueキットを用いる)にしたがってドナーT細胞、TiPS細胞系、および陰性コントロールとして使用される線維芽細胞(非T細胞)由来iPSC系から単離した。加えて、DNAを、まず組織および細胞サンプルをTris、NaCl、EDTA、SDS、およびプロテイナーゼK(Invitrogen)を含む緩衝液に溶解することによって凍結奇形腫サンプルおよび親細胞系から単離した。次いで、DNAを飽和NaClおよびエタノールで沈降させ、PCR分析のために水に再懸濁した。大部分のクローンTCRβ鎖再構成(van Dongenら、2003)に特異的なマルチプレックス・プライマー・キット(Invivoscribe Technologies、San Diego、CA)を用いてPCRを行った。キャピラリー電気泳動法およびPCR産物の断片の分析を、ABI 3730 DNAアナライザーを用いてウィスコンシン大学のBiotechnology Center DNA Sequencing Core Facility(Madison、WI)で行った。Peak Scannerソフトウエア(ABI、Foster City、CA)を用いてデータを分析した。
【0261】
アルカリホスファターゼ(AP)染色−MEFで増殖したコンフルエント細胞を、製造者のプロトコルにしたがってベクターブルーアルカリホスファターゼ基質キットIII(Vector Laboratories、SK−5300、Burlingame、CA)でAP染色した。
【0262】
導入遺伝子およびhESCマーカー遺伝子の発現についてのRT−PCR−全RNAを、製造者のプロトコルにしたがってRNeasyミニキット(Qiagen、Germantown、MD)を用いて単離した。第1鎖cDNA合成を、製品プロトコルにしたがってSuperScript III第1鎖合成キット(Invitrogen)を用いてオリゴdTプライマーで行った(既に記載されているように(Yuら、2009;Takahashiら、2007))。cDNAを1:2に希釈し、PCR反応をマスターサイクラー(Eppendorf、Hauppauge、NY)を用いてGoTaq Greenマスターミックス(Promega、Madison、WI)で行った。
【0263】
ウイルス組み込みのPCR分析−ゲノムDNAを、培養細胞についての製造者のプロトコルにしたがってDNeasy Blood and Tissueキット(Qiagen)を用いて1〜5×10
6のiPSCから単離した。ゲノムDNA(5μl)をPCR反応に使用し、GoTaq Greenマスターミックス(Promega)を用いてウイルス取り込みを調べた。導入遺伝子のみを検出し、内因性遺伝子を検出しない特定のプライマーのセットを使用した。内因性OCT4用のプライマーは、反応の陽性コントロールとして機能した。反応は、既に記載されているようにプライマーを用いて行った(Yuら、2009;Takahashiら、2007)。
【0264】
フローサイトメトリー:iPSC系細胞内および表面多能性マーカーの特徴付け−Matrigelに維持されたTiPSを回収し、Tra−1−81(BD PharmingenまたはStemgent、San Diego、CA、両者ともクローンTra−1−81)、SSEA−3(BD Pharmingen、クローンMC631)、およびSSEA−4(BD Pharmingen、クローンMC813−70)の存在について染色した。細胞内OCT4(BD、クローン40/Oct−3)染色を、2%パラホルムアルデヒドで固定され、PBS+0.1%サポニンで透過化された細胞に行った。細胞を一晩染色し、翌日、Accuriフローサイトメーターで分析した。
【0265】
造血分化およびコロニー形成単位アッセイ−未分化TiPSを、Matrigel被覆プレートの無フィーダー条件に適応させ、mTeSR培地(Stem Cell Technologies、Vancouver BC、Canada)を用いて維持した。コロニーを、TrypLE(Invitrogen)を用いて回収し、低接着プレート内の無血清胚葉体(EB)基本培地[IMDM、NEAA、グルタミン(Invitrogen)、および20%BIT−9500(Stem Cell Technologies)、およびROCK阻害剤H1152を含む]に入れて凝集体の形成を促進させた。凝集体形成後に、細胞を、成長因子およびサイトカイン:rhBMP−4(R&D Systems、Minneapolis、MN)、rhVEGF、zbFGF、rhFlt−3リガンド、rhIL−3、およびrhGM−CSF(Invitrogen)が添加されたEB基本培地に入れ、12日間放置した。細胞を回収し、各iPSCクローンによって形成された表現型を、フローサイトメトリーによるCD31、CD34、CD43、CD45、CD41、およびCD235aの表面染色によって評価した。個別化された細胞を、製造者の取扱説明書にしたがってコロニー形成単位をアッセイするためにMethoCult(Stem Cell Techonologies)培地に入れた。
【0266】
奇形腫形成についてのアッセイ−MEF上で培養された特徴付けられたiPSCを、SCID/ベージュマウスの後肢に筋肉内注射した(Harlan Laboratories、Madison、WI)。それぞれを1枚の6ウェルプレートの細胞で、1つの細胞系に付き3匹のマウスに注射した。Matrigel(BD Biosciences)を、注射の前に細胞懸濁液に総容量の1/3添加した。腫瘍が、5〜12週目に形成され、この腫瘍をヘマトキシリンおよびエオシン染色して、McArdle Laboratory for Cancer Research(ウィスコンシン大学マディソン校)による組織学的分析を行った。すべての動物実験は、Cellular Dynamics International Animal Care and Use Committeeに承認された適切な国内および国際ガイドラインにしたがって行った。
【0267】
心臓分化−心臓発生を細胞凝集法によって誘導した。要約すると、MEF上で増殖したTiPS細胞を、コラゲナーゼIV(Invitrogren)を用いて回収し、Matrigelで増殖した細胞を、クエン酸ナトリウムを用いて1つの細胞懸濁液中へ解離させた。この細胞懸濁液は、組換えヒト肝細胞成長因子(HGF)および/またはzbFGFの存在下、超低接着フラスコ内での凝集体の形成を可能にした。加えて、ROCK阻害剤H1152を、Matrigelを源とする細胞懸濁液に添加した。第14〜15日目に、拍動する凝集体を解離して、心臓トロポニンT(cTnT)(Abcam、Cambridge、MA、クローン1C11)で染色した。
【0268】
ニューロン分化−TiPS細胞の神経分化を、既に記載されているように行った(Ebertら、2009)。要約すると、MEF上で増殖したTiPSをコラゲナーゼIVで部分的に解離させ、B27補充剤(Invitrogen)、bFGF(100ng/ml)、および上皮成長因子(100ng/ml、Chemicon、Billerica、MA)が添加されたStemline Neural Stem Cell Expansion Medium(Sigma−Aldrich)に凝集体として浮遊状態で培養した。培養物を、McIlwain組織チョッパーを用いて毎週継代した。神経分化を誘導するために、球状細胞(sphere)を神経誘導培地(DMEM/F12+N2補充剤、Invitrogen)で1週間増殖させ、次にこれを、cAMP(1μM、Sigma−Aldrich)、アスコルビン酸(200ng/ml、Sigma−Aldrich)、脳由来神経栄養因子およびグリア細胞系由来神経栄養因子(共に10ng/ml、R&D Systems)が添加された同じ神経誘導培地のポリオルニチン/ラミニン(Sigma−Aldrich)被覆カバースリップに配置し、さらに3週間放置した。ニューロンマーカーβIII−チューブリンの発現を、既に記載されているように免疫蛍光染色によって分析した(Zhangら、2001)。
【0269】
実施例9
凍結保存ヒト末梢血患者サンプル由来のT細胞のレトロウイルスリプログラミング
この実施例は、「10人のドナー」実験に使用されたプロトコルを表す。この実験では、リプログラミングを、10の患者サンプルに対して試験として行い、10の患者サンプルのそれぞれが、リプログラミングに成功した。
図6A〜
図6Bに示されているように、少数の投入T細胞を含む96ウェル形式内のMEF上のIPSコロニーのTra−1−60染色。これは、T細胞手法の効率を実証している。
【0270】
この実施例は、ヒト末梢血Tリンパ球の効率的なレトロウイルスリプログラミングの一連の手順(以下に詳細に記載される手順1〜11)、特に、ヒト末梢血Tリンパ球のモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)をベースとしたリプログラミングを達成するために必要な複数の工程およびタイミングを記載する。本実施例は、凍結保存細胞、ならびに二重遺伝子MMLVベクターOct4−Sox2およびc−Myc−Klf4またはNanog−Lin28を含む新たに調製されたウイルス上清の使用に焦点を当てる。本実施例の手順は、他のベクター系に使用するために適応させることができ、非凍結保存サンプルにも使用することができる。
【0271】
1.予備的手順:
末梢血サンプルの注文および/または受け取りの前に、接着293T細胞の活発に増殖する培養物および非接着Jurkat細胞の別個の培養物を樹立して維持する。293T細胞は、増殖してウイルス生産の要求を満たす。ウイルス生産では、以下の「MMLVリプログラミング・ウイルス・ベクターの調製」に記載されている数種のベクターおよびヘルパープラスミドを使用する必要がある。この工程を進める前に、これらのDNAサンプルを用意する必要がある。最後に、「MMLVリプログラミングウイルスベクターを調製する」前にMEF順化培地の過剰供給の用意しておくことも推奨される。
【0272】
2.末梢血単核細胞(PBMC)を調製して凍結保存する:
以下に、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)をヒト末梢血が入っているVacutainers(登録商標)CPT(商標)管から単離して、PBMCを凍結保存する手順を記載する。この手順は、iPS細胞の誘導を促進すること目的とし、血液を別個の(SST)管に吸引し、この管を、感染性疾患の検査のために適切な研究施設に送付した。血液サンプルがCPT Vacutainer(著作権)に収集され、本発明者らに送付された。サンプルを受け取ると、そのサンプルを適切な生物封じ込めデバイス内に4℃で保管した。ドナー情報をデータベースに記録し、識別する文字または数字をこのドナーに割り当てた。陰性を証明する感染性疾患の検査データの受け取りも、安全委員会によって規定されたように文書で記録した。
【0273】
血液サンプルを受け取ったら、PBMCを、600×g、4℃で25分間のSorvall Legend RT遠心分離(利用可能であれば生物閉じ込めアダプターを使用)によってCPT Vacutainer(著作権)から単離し、ペレットを10mlの低温PBS(凍結保存のため)またはRPMI+P/S(生きた細胞培養物のため)に再懸濁した。細胞を、Cedex計器でカウントした。別法では、トリパンブルーおよび血球計を用いて反復カウントを行う。サンプルをカウントし、1ml当たりの生存細胞数および生存率も記録する。400×g、4℃で15分間遠心分離し、残った凝固因子を排除するために上清を吸引する。
【0274】
単離後、PBMCの凍結保存の準備として、ペレットを約10×10
6細胞/mlで低温CryoStor10に再懸濁して、予め冷却されたクライオバイアルに移した。典型的には、1つの8ml CPT Vacutainer(著作権)からの収量は、15,000,000〜20,000,000の細胞であり、2つのクライオバイアルに分ける。クライオバイアルを予め冷却されたMr.Frostyキャニスターに入れ、次いでこのキャニスターを−80℃のフリーザーに入れて一晩置いた。翌日、クライオバイアルを長期保存のために液体窒素貯蔵タンクに移した。
【0275】
3.MMLVリプログラミング・ウイルス・ベクターを調製する:
最適なウイルス活性を維持するために、ウイルス上清は、使用前に4℃で4日以上保存しないことが推奨されている。このプロトコルは、MMLVをベースとしたリプログラミングバイシストロニックベクターOct4−Sox2、cMyc−Klf4、およびNanog−Lin28(ベクターマップは
図11A〜
図11Cに示されている)の一過性のトランスフェクションによるレトロウイルス含有培地の生産について記載する。これらのベクターの2つまたは3つの組み合わせを用いて、96ウェル形式内のヒトT細胞のレトロウイルス形質導入によってiPS細胞の誘導を促進することを目的とする。
【0276】
数日間(または数週間)にわたる293T細胞の増殖および増大。スケールアップの程度は、以下に記載される一過性トランスフェクション法に必要な細胞数、および作製されるウイルス含有上清の対応する容量に依存する。これらの値を計算する式を以下に示す。
【0277】
ウイルス生産の準備。MMLVリプログラミングベクターは、ベクタープラスミドの名称(
図11A〜
図11Cに示されている)に対応してOct4−Sox2、cMyc−Klf4、またはNanog−Lin28と命名され、それぞれOS、CK、およびNLと呼ばれる。リプログラミングは、OS+CK、OS+NL、または3つすべてのベクター(OS+CK+NL)の組み合わせの使用によって達成することができる。過度の各ベクタープラスミドDNAおよび以下に記載されるヘルパープラスミドは、このプロトコルを開始する前に用意しなければならない。また、コントロールMMLVプラスミド(Sox2−GFP)を用意することも推奨される。
【0278】
ウイルスを受け取る標的細胞を含むウェルの数(n)、およびウイルスのどの組み合わせを各ウェルが受け取るかを決定する。例えば、10の異なるドナーT細胞サンプルをそれぞれ、96ウェル形式の7つのウェルに播種し、以下に記載されるように活性化した;これらのサンプルが総計70のウェルを占有し:各ドナー由来の2つウェルに、OS+CKリプログラミングウイルス(nOS+CK=20)が入れられ;2つのウェルに、OS+NLリプログラミングウイルス(nOS+NL=20)が入れられ;2つのウェルに、コントロールSox2−GFPウイルス(nGFP=20)が入れられ;残りの1つのウェルが、非形質導入コントロールである。
【0279】
次の式:V=(n)×(用量)×Fを使用して必要な各ベクターから上清培地の容量(V)を計算し;式中の用量=各ウェルに添加されるウイルスのml(典型的には0.05ml)であり、Fは、上清の沈降(以下のウイルスを濃縮する工程における)の後に達成される濃度係数(典型的には50倍)を表す。上の例にしたがい、OSウイルスを入れるウェルの総数は、n
OS+CK+n
OS+NL=40である。用量=0.05mlおよびF=50と仮定して計算すると、V
OS=(n
OS+CK+n
OS+NL)×(用量)×F=40×(0.05)×50=100mlであり、V
CK=(n
OS+CK)×(用量)×F=20×(0.05)×50=50mlであり、V
NL=(n
OS+NL)×(用量)×F=20×(0.05)×50=50mlであり、V
GFP=(n
GFP)×(用量)×F=20×(0.05)×50=50mlである。
【0280】
各ウイルスに必要な293T細胞のプレートの数(P)を式:(P)×(Y)=Vを用いて計算するが、式中、VはV
OS、V
CK、V
NL、またはV
GFP(上記の計算から)であり、Yは、所定のプレート形式の上清の収量である。Yの値については、下表を参照されたい。Pの計算が整数でない場合は、最も近い整数に切り上げる。必要に応じて、過剰な数の293Tプレートを用意する。
【0281】
式:P
OS=V
OS÷(Y)を解く。上の例では:V
OS=100ml、1プレート当たりの収量を増やすために15cm形式を選択し、したがってY=14.5である。P
OS=100÷14.5=6.8プレート。切り上げるとP
OS=7プレート。V
CK=V
NL=V
GFP=50ml、したがってP
CK、P
NL、またはP
GFPについて式を解くと:50÷14.5=3.4プレート。切り上げるとそれぞれ4プレートである。P
CK=P
NL=P
GFP=4プレート。
【0282】
【数1】
293T細胞をPBSで洗浄し、単層を覆うのに十分なトリプシンを添加する。室温で10分間インキュベートし、次いで皿の側面を軽く叩いて細胞を移動させる。細胞を50ml管(複数可)に集める。各プレートを少容量のD10Fで洗浄する。洗浄培地と細胞を収集して混合する。完全に混合して、300μlのアリコートをCedexカップに移し、細胞をカウントする。別法では、トリパンブルーおよび血球計を使用する。350×gで10分間遠心分離する。上清を吸引し、ペレットを新たなD10Fに再懸濁する。各ウイルスに必要な293T細胞のプレート数(P)の計算工程からプレートの総数(P
OS+P
CK,+P
NL+P
GFP)を計算する。表(以下)の播種密度を使用して、各プレートに必要な数の293T細胞を蒔く。D10Fで、約24時間、37℃/5%CO
2でインキュベートする。培養物が過剰または過少コンフルエントである場合は、トランスフェクション効率、したがってウイルス生産が減少する。顕微鏡下で細胞を可視化して、密集度が最適(約90〜95%)であることを確認する。
【0283】
293T細胞プレートの各セットのトランスフェクションにMMLVまたはコントロールプラスミド(μg
OS、μg
CK、μg
NL、またはμg
GFP)のそれぞれがどの程度必要であるかを調べるために計算する。計算を単純にするために、各プラスミドDNAサンプルの濃度を1.0mg/mlまたは2.0mg/mlに調整することが推奨される。以下の表(「ベクター」の列を参照されたい)から適切な値を選択し、P
OS、P
CK,、P
NLまたはP
GFPを乗じる。次いで、プラスミドDNA濃度(C
OS、C
CK、C
NL、またはC
GFP)で除して、必要な容量(μl
OS、μl
CK、μl
NL、またはμl
GFP)を決定する。
【0284】
【数2】
任意選択:各プラスミドDNA濃度(C)を1μg/mlに調整する。上の例にしたがい、C=1と仮定すると;P
OS=7、したがってμg
OS=(27μg)×7=189÷C
OS=189μl
OSである。同じ例にしたがい、P
CK=P
NL=P
GFP=4、したがってμg
CK=(27μg)×4=108÷C
CK=108μl
CK、μg
NL=(27μg)×4=108÷C
NL=108μl
NL、μg
GFP=(27μg)×4=108÷C
GFP=108μl
GFPである。
【0285】
すべてのプレートに必要な各ヘルパープラスミド(μg
GagPol、μg
NFkB、μg
VSV)またはトランスフェクション試薬(μl
PEI)の総量を決定するために、上の表(Gag/Pol、NFkB、VSVG、またはPEIの列)から適切な値を選択し、この値に合計値(P
OS+P
CK,+P
NL+P
GFP)を乗じる。次いで、得られた値をプラスミドDNA濃度(C
OS、C
CK、C
NL、またはC
GFP)で除して必要な容量を決定する。例にしたがい、(P
OS+P
CK,+P
NL+P
GFP)=7+4+4+4=19であり、C=1と仮定すると;μg
GagPol=(8.1μg)×19=153.9÷C
GagPol=153.1μl
GagPol、μg
NFkB=(2.7μg)×19=51.3÷C
NFkB=51.3μl
NFkB、μg
VSV=(2.7μg)×19=51.3÷C
VSVG=51.3μl
VSV、μl
PEI=108μl×19=2.052mlである。
【0286】
10cmプレート形式でのトランスフェクション:試験管1
OS:OptiMEMをアリコート(P
OS×0.5)mlにし、次いで混合しながら(P
OS×40)μlのPEIを滴下添加する。側面に触れないようにする。室温で5分間インキュベートする。試験管2
OS:OptiMEMのアリコート(P
OS×0.5)mlを第2の試験管に入れる。プラスミドの適切な比率(10:3:3:1)のカクテルを用意する。上の表から適切な値(μg
OS、μg
GagPol、μg
NFkB、およびμg
VSVG)を選択し、この値にP
OSを乗じて必要なプラスミドの量を求める。次いで、C
OS、C
GagPol、C
NFkB、またはC
VSVGで除して必要な容量(μl
OS、μl
GagPol、μl
NFkB、およびμl
VSVG)を決定する。これらの容量を試験管2
OSに添加する:μl
OS+μl
GagPol+μl
NFkB+μl
VSVG、次いで混合する。OSプラスミドの代わりにNL、またはCK、またはSox2−GFPプラスミドで、これらの工程を繰り返す。対応する試験管のセットを用意する:試験管1
NLおよび2
NL、試験管1
CKおよび2
CK、または試験管1
GFPおよび2
GFP。適切なPおよびC値を代入して、試験管2カクテルの適切な容量を計算する。DNA/PEI混合物を作製するために、各試験管#1を対応する試験管#2と混ぜ合わせ、混合し、室温で20分間インキュベートする。293Tの各プレートを5mlのPBSで2回洗浄する。4mlのOptiMEMを各プレートに添加する。1mlのプラスミドDNA/PEI混合物を各プレートに直接、滴下添加する。37℃/5%CO
2で4〜6時間インキュベートする。培地を吸引し、次いで各プレートを5mlのPBSで洗浄する。5mlのD10F+50mMのHEPES培地を各プレートに加える。37℃/5%CO
2で一晩インキュベートする。S
OX2−GFP感染(コントロール)細胞を蛍光顕微鏡に移す。蛍光は検出可能なはずである。さらに24時間、37℃/5%CO
2でインキュベートする。
【0287】
15cmプレート形式でのトランスフェクション:試験管1
OS:OptiMEMをアリコート(P
OS×1.0)mlにし、次いで混合しながら(P
OS×108)μlのPEIを滴下添加する。側面に触れないようにする。室温で5分間インキュベートする。例にしたがい、P
OS=7:OptiMEMのアリコート7mlを試験管1
OSに入れ、1.96mlのPEIを添加する。試験管2
OS:OptiMEMのアリコート(P
OS×1.0)mlを第2の試験管に入れる。例にしたがい、P
OS=7:OptiMEMのアリコート7mlを試験管2
OSに入れる。適切な比率(10:3:3:1)のプラスミドのカクテルを用意する。上の表から適切な値(μg
OS、μg
GagPol、μg
NFkB、およびμg
VSVG)を選択し、この値にP
OSを乗じて必要なプラスミドの量を求める。次いで、C
OS、C
GagPol、C
NFkB、またはC
VSVGで除して必要な容量(μl
OS、μl
GagPol、μl
NFkB、およびμl
VSVG)を決定する。これらの容量を試験管2
OSに添加する:μl
OS+μl
GagPol+μl
NFkB+μl
VSVG、次いで混合する。
【0288】
例にしたがい、P
OS=7であり、すべてのプラスミドに対してC=1と仮定すると:μg
OS=27μg×7プレート=108÷C
OS=108μl
OS、μg
GagPol=8.1×7=56.7÷C
GagPol=56.7μl
GagPol、μg
NFkB=2.7×7=18.9÷C
NFkB=18.9μl
NFkB、μg
VSVG=2.7×7=18.9÷C
NFkB=18.9μl
VSVGである。これらの容量を試験管2
OSに加えて混合する。OSプラスミドの代わりにNL、またはCK、またはSox2−GFPプラスミドで、これらの工程を繰り返す。対応する試験管のセットを用意する:試験管1
NLおよび2
NL、試験管1
CKおよび2
CK、または試験管1
GFPおよび2
GFP。適切なP値およびC値を代入して、試験管2のカクテルの適切な容量を計算する。DNA/PEI混合物を作製するために、各試験管#1を対応する試験管#2と混ぜ合わせ、混合し、室温(RT)で20分間インキュベートする。各プレートを10mlのPBSで2回洗浄する。13mlのOptiMEMを各プレートに添加する。2mlのプラスミドDNA/PEI混合物を各プレートに直接、滴下添加する。37℃/5%CO
2で4〜6時間インキュベートする。培地を吸引し、次いで各プレートを15mlのPBSで洗浄する。15mlのD10F+50mMのHEPES培地を各プレートに加える。37℃/5%CO
2で一晩インキュベートする。S
OX2−GFP感染(コントロール)細胞を蛍光顕微鏡に移す。蛍光は検出可能なはずである。さらに24時間、37℃でインキュベートする。
【0289】
ウイルス上清の回収:Sox2−GFP形質導入細胞を再び蛍光顕微鏡に移す。細胞の大部分が、緑色蛍光を発しているはずであり、この蛍光は、プレート全体で均一なはずである。また、ウイルス産生細胞が、細胞の形態における顕著な変化を示すはずである。トランスフェクト細胞の各セットからのウイルス含有上清培地をプールする(注意:上清は感染性ウイルスを含む)。ウイルス上清を0.45μmまたは0.8μmのフィルターに通してろ過し細胞およびデブリを除去する(注意:酢酸セルロースフィルターまたはPES低タンパク質結合フィルターを使用する。ニトロセルロースフィルターを使用しないこと)。MMLVは、貯蔵寿命が短い:ウイルス上清は、4℃で4日超保存しない。任意選択:上清は、−80℃で保存することができるが、凍結解凍サイクルは、機能的活性を消失させる。直ちに、(a)Jurkat細胞またはT細胞の増殖に対する機能的活性および/または(b)上清1ml当たりに存在するウイルスRNAの定量の少なくとも1つの測定を用いてウイルス力価の評価を行う。MMLVベクターの品質管理アッセイを以下に記載する。
【0290】
96ウェル形式でのT細胞の高い形質導入効率を達成するためには、ウイルスを濃縮することが重要である。しかしながら、濃縮ウイルスは、不安定でもある。さらに、T細胞培養物が最も増殖性が高い(したがって最も容易に感染)時間枠は狭い。したがって、標的細胞の準備および濃縮工程を調整することが重要である。QCアッセイ(複数可)が要件を満たしたら、リプログラミングのために標的PBMCのT細胞を活性化させてウイルス上清を濃縮する。
【0291】
4.ウイルス活性についての品質管理アッセイを行う:
このプロトコルは、MMLVベクター:Oct4−Sox2およびc−Myc−Klf4、またはOct4−Sox2およびNanog−Lin28、またはコントロールSox2−GFPベクターでの細胞の形質導入による形質導入効率を評価する方法を記載する。これらのアッセイは、iPS細胞の誘導の促進に使用されることを目的とする。
【0292】
ウイルス活性についての品質管理アッセイ:注意:ウイルスの相対的不安定性のため、ウイルス上清を収集した日に、以下のQCアッセイの1つ(またはすべて)を開始する準備をすることが重要である。ウイルスは−70℃で保存することができるが、凍結解凍サイクルおよび/または3週間を超える保存は、活性を消失させる。許容できるQCアッセイの結果が得られると、PBMCは、再活動化(re−animated)するはずである。
【0293】
製造者のプロトコル(Clontech)にしたがって各ウイルス上清のアリコートを用いて定量的リアルタイムRT−PCRを行う。別法では(またはこれに加えて)、増殖しているJurkat細胞を収集してCedexでカウントする。4μg/mlのポリブレンを含むR10Fに細胞を1×10
6/mlに再懸濁する。1ウェル当たり100μlの細胞を96ウェルプレートに播種する。50μlのウイルスを3つのウェルに加え、プレートのいくつかの行にわたる連続希釈によってウイルスを滴定する。48時間インキュベートしてから、FACS分析のために細胞を収集する。Oct4の細胞内免疫標識化およびフローサイトメトリーの手順を参照されたい。別法では(またはこれに加えて)、半定量的PCR分析のために感染Jurkat細胞を収集する。ウイルス調製物(virus prep)がQCを合格したら、T細胞の形質導入のために次の工程に進む。
【0294】
5.ドナーPBMCを再活動化させてT細胞を活性化する:
ヒトT細胞の効率的なリプログラミングは、ウイルス上清の生産および送達が標的細胞の活性化と慎重に調和された場合にのみ、MMLVベクターで達成することができる。ここで、PBMCの混合集団由来のCD3
+細胞の増殖におけるサイトカイン誘導バーストとしての活性化の成功が、培養の48〜72時間の間に巨視的な「芽球」コロニーの形成をもたらすことを開示する。MMLVをベースとしたリプログラミングベクターを用いたこの活性化プロトコルを利用するために、MMLV上清が不安定であることに留意するのが重要である。したがって、芽球コロニー形成の1日前に新鮮なウイルスをT細胞培養物に添加できるように厳しく管理されたスケジュールでウイルスを調製するべきである。このプロトコルは、上記のように凍結保存された細胞の再活動化、および芽球コロニーの誘導を記載する。PBMCの代替の供給源を利用することもできる。
【0295】
培地およびサイトカインを調製する。ウイルスの添加前に、細胞を48時間活性化しなければならない。したがって、この工程は第−2日目とする。リプログラミングは、第0日目に始まる。作業濃度のPen/Strep/グルタミンをAIM−V培地に添加する。4℃で2週間超保存しない。IL2の少容量のアリコートを調製し、−20℃で保存することが推奨される。ここで使用するために1つのアリコートを解凍する。1つのアリコートを解凍後、4℃で2週間超保存しない。OKT3(1mg/mlの抗CD3)は、4℃で保存するべきである。1mlのAIMV培地中で1μlを希釈して1μg/mlの中間希釈物にする。
【0296】
ドナーPBMCの再活動化およびT細胞の活性化。PBMCが解凍される日を第−2日目と呼ぶことにする。貯蔵庫からPBMCを取り出して、37℃の水槽で急速解凍する。細胞(および凍結培地)を等容量の温かいRPMI培地で希釈する。穏やかに混合して、15ml管に移す。総容量10mlまでRPMIで徐々に希釈する。完全に混合し、300μlのアリコートを取り出し、1ミクロンのサイズ閾値でCedexアルゴリズムを用いて細胞をカウントする。別法では、細胞をトリパンブルーで染色し、血球計でカウントする。注意:一次PBMCサンプル(凍結保存前)に存在した細胞の50%のロスも珍しくない。しかしながら、残った細胞は、90%超が生細胞であるはずである。細胞を350×gで10分間遠心分離し、上清を吸引し、2×10
6の生細胞/mlの密度で温かいAIM−V+Pen/Strep/グルタミンに再懸濁する。300IU/mlのIL2および10ng/mlのOKT3抗体を加える。細胞を混合し、平底96ウェル組織培養プレートに1ウェル当たり100μl分注し、37℃、5%CO
2でインキュベートする。周辺部のウェルは蒸発がより顕著であるため、可能であればこれらのウェルの使用は避ける。48時間後(第0日目)に、20倍(またはそれよりも高倍率)の対物レンズを用いて明視野顕微鏡によって細胞を観察する。注意:細胞分裂および細胞のクラスター(新生芽球コロニー形成)の証拠が検出可能なはずである。
【0297】
6.ウイルス上清を濃縮する:
このプロトコルは、リプログラミングベクターの組み合わせ(Oct4−Sox2とcMyc−Klf4またはNanog−Lin28;代表的なベクターマップは
図11A〜
図11Cに示されている)を用いたトランスフェクションの後に293T細胞から収集したレトロウイルス上清を濃縮することによってMMLVベクターの力価を上げる2つの別個の方法を記載する。T細胞のレトロウイルス形質導入によってiPS細胞の誘導を促進することを目的とする。ウイルス上清の力価は、上記のようにMMLVベクターの品質管理アッセイにしたがってアッセイすることが推奨される。
【0298】
大容量のウイルスの場合は、LentiX法が推奨される。この方法は、一晩のインキュベーションが必要であり、したがって第−1日目に開始するべきである。別法では、30ml以下のウイルス調製物の場合は、Amicon法を第0日目に使用することができる。
【0299】
非濃縮MMLV上清(上記の手順に従って調製)を、活性を著しく消失させることなく4℃で4日間保存することができる。いずれかの方法(以下)を用いて上清を濃縮したら、ウイルスを低温(氷上)に保ち、できるだけ早く使用するべきである。標的細胞が、この手順の完了のときに感染させる準備ができていない場合は、濃縮ウイルスを−80℃で保存する。
【0300】
LentiX法によってウイルスを濃縮する(第−1日目)。注意:この方法は、大規模のウイルス濃縮(上清の容量>30ml)に推奨される。上清を50ml管に移し、製造者の推奨にしたがってLenti−X濃縮器に入れた。3容量の清澄化したウイルス上清とLenti−X濃縮器の1容量を混ぜ合わせる。穏やかな反転によって混合する。4℃で一晩インキュベートする。18〜24時間後、第0日目に、サンプルを1,500×g、4℃で45分間遠心分離する。遠心分離後、オフホワイトのペレットが見える。ペレットを乱さないように注意しながら上清を慎重に取り除く。残った上清は、ピペットチップで、または1,500×gでの短時間の遠心分離で除去することができる。ペレットを、低温D10Fを用いて元の容量の1/50に穏やかに再懸濁する。ペレットは、初めは幾分粘着性であり得るが、すぐに懸濁液となるはずである。直ちに、ウイルスを標的細胞に加える。
【0301】
Amiconろ過法によってウイルスを濃縮する(第0日目)。この方法を用いて、30ml以下のウイルス上清調製物を濃縮する。AmiconY 100,000MWカセットを10mlのPBSの添加によって洗浄し、3分間またはPBSがすべてフィルターを通過するまで1000×gでデバイスを遠心分離する。15mlの上清ウイルスをAmiconカセットに加え、2000×gで20分間回転させる。典型的には、これは、約10倍の濃度(容量で)をもたらす。サンプルをさらに5〜10分間回転させてウイルスをさらに濃縮する。このプロセスを繰り返して、50倍(最終容量が約300μl)まで容量を減らすことができる。このプロセスを各ウイルスベクター上清で繰り返す(並行して)。推奨:4を超えるAmiconカセットを一度に処理しようとしてはならない。長い遅延の間、上清が、カセットを通って受動的に滴が漏れ、対向するローターアーム全体にわたる重量分布が不均一となる。これにより、遠心分離の平衡が失われ得る。貯留物を収集する。直ちに、ウイルスを標的細胞に加える。
【0302】
7.活性化T細胞に形質導入する(第0日目):
この手順は、濃縮MMLVをベースとしたリプログラミングベクターを用いたヒト末梢血Tリンパ球の形質導入についてである。このプロトコルは、MMLVをベースとしたリプログラミングベクターOct4−Sox2、c−Myc−Klf4、Nanog−Lin28、またはSox2−GFP、またはこれらの組み合わせを含む96ウェルプレートでのT細胞の形質導入を記載する。上記の品質管理アッセイでは、このプロトコルの使用の前にウイルス活性を評価することが推奨されている。
【0303】
形質導入の日は、リプログラミングプロセスの開始を意味する(第0日目とする)。この時点は、PBMCが解凍されて96ウェル形式で活性化されてから48時間後であった(手順5.ドナーPBMCを再活動化させてT細胞を活性化させる、に記載されているように)。濃縮MMLVベクターは、手順3、4、および6にしたがって事前に調製するべきである。
【0304】
細胞は、位相差顕微鏡下で観察する。新生芽球コロニー形成の証拠があるはずである。
【0305】
任意選択:細胞を収集してカウントする。典型的には、PBMCの数は、活性化から24時間以内(第−2日目〜第−1日目)に約25〜50,000細胞/ウェルに著しく低下する。24〜48時間(第−1日目〜第0日目)の間は、細胞数は、典型的には変化しない。第0日目〜第1日目の間に、ATPの量が増加し、新生芽球コロニー形成が出現する。第0日目の細胞数は、典型的には1〜2×10
5/ウェルである。第0日目〜第1日目の間に、芽球コロニーが明らかとなるはずであり、細胞数が著しく増加する。
【0306】
任意選択:T細胞を特徴付けるFACS分析のために細胞を収集する。複数のPBMCドナーに対する以前の試験は、90%を超える細胞が、第0日目に抗CD3表面標識を提示したことを示している。CD4+およびCD8+細胞の分布は様々である。典型的には、CD4+細胞は、CD8+細胞と比較して2倍も存在する。
【0307】
等容量の各濃縮ウイルスを混ぜ合わせ、8μg/mlのポリブレンおよび300単位/mlのIL−2を添加する。感染させる所定数のウェルのため十分にこの混合物を調製する。
【0308】
手順3に記載の手法にしたがい:10の異なるドナーT細胞サンプルをそれぞれ、96ウェル形式の7つのウェルに播種して活性化した;これらのサンプルは、合計70のウェルを占有した。各ドナーの2つのウェルに、OS+CKリプログラミングウイルス(n
OS+CK=20)を添加する。2つのウェルに、OS+NLリプログラミングウイルス(n
OS+NL=20)を添加する。2つのウェルに、コントロールSox2−GFPウイルス(n
GFP=20)を添加する。残りの1つのウェルは、非形質導入コントロールである。混ぜ合わせ(50μl
OS+50μl
CK)×n
OS+CK=2ml;2μlのポリブレンおよび1.2μlのIL−2を添加する。
【0309】
混ぜ合わせ(50μl
OS+50μl
NL)×n
OS+NL=2ml;2μlのポリブレンおよび1.2μlのIL−2を添加する。混ぜ合わせ(50μl
GFP+50 D10F)×n
GFP=2ml;2μlのポリブレンおよび1.2μlのIL−2を添加する。模擬感染として、2mlのD10F、2μlのポリブレン、および1.2μlのIL−2を混ぜ合わせる。
【0310】
ウェルを乱さないために、100μlのウイルスカクテルを各ウェルに加える。細胞をピペッターで穏やかに混合する。100μlのD10F+300IU/mlのIL2+8μg/mlのポリブレンを添加して模擬感染を行う。細胞をピペッターで穏やかに混合する。適切な生物閉じ込めアダプターを用いて96ウェルプレートを、1000×g、32℃で90分間遠心分離する。プレートを37℃/5%CO
2のインキュベーターに移して一晩置く。
【0311】
(手順8にしたがって)MEF共培養によるリプログラミングの準備として照射MEFをプレーティングする(第0日目または第1日目)。
【0312】
第1日目−ウイルスへの最初の曝露から24時間後に細胞の形態を検査する。芽球コロニーが、顕微鏡下ではっきりと見えるはずである。任意選択:細胞を収集し、遠心分離し、D10F培地(ウイルスを含まない)に再懸濁し、Cedexでカウントする。別法では、トリパンブルーおよび血球計を使用する。
【0313】
細胞を乱さずに各ウェルから100μlの培地を慎重に除去する。複数のウェルの場合は、チップが下がって各ウェルの底部に近づき過ぎないように注意しながら、多チャンネルピペッターを使用する。この培地を、10%漂白剤を含むビーカーまたはトレーに廃棄する。100μlの新鮮なD10F+HEPES+IL2(300u/ml)で培地を交換する。翌日、培地除去工程を繰り返す(第2日目)。
【0314】
下記の手順9にしたがってT細胞の増大を検証し、形質導入効率を評価する(第2日目)。
【0315】
8.照射MEFをプレーティングする(第0日目または第1日目):
このセクションは、iPS細胞の誘導を促進することを目的とする、ゼラチン被覆ウェルにマウス胎仔性線維芽細胞(MEF)をプレーティングする方法を記載する。
【0316】
順化培地(CM)の生産のために照射MEFをプレーティングする。使用予定の2〜3日前にMEFを注文する。T細胞リプログラミングの手順3の例にしたがい、6ウェル形式において約20回の「栄養補給」でリプログラミング共培養物を維持するのに必要なMEF−CMの量を計算する。各栄養補給には、1.25ml/ウェルの除去および補充が必要である。
【0317】
1つの条件に付き、10のドナーサンプル(形質導入T細胞)×2つの実験条件(SO+CK対SO+NL)×3つのウェル=60のウェルを使用した。SOは、Sox2およびOct4を有するバイシストロニックベクターを指し、CKは、cMycおよびKlf4を有するバイシストロニックベクターを指し、NLは、NanogおよびLin28を指し、これらのいずれも蛍光マーカーを含まない(ベクターマップが
図11A〜
図11Cに示されている)。必要なMEF−CMの容量を計算する。(60×20×1.25ml=1.5リットル)。
【0318】
十分な容量のMEF−CMを調製するのに必要なT75フラスコ−MEF培養物の数を計算する。(注意:1つのフラスコから繰り返し収集することで、約120mlのMEF−CMを調製する)。上記の例にしたがい、1.5リットルのMEF−CMを調製するためには、1500ml÷120ml/フラスコ=12.5フラスコ。13のフラスコに切り上げる。
【0319】
1つのT75フラスコに付き12mlの滅菌0.1%ゼラチンを添加する。インキュベーターで少なくとも1時間インキュベートする(37℃/5%CO
2)。ゼラチンを吸引し、20mlの高密度照射MEF(約2.1×10
5細胞/ml)を添加する。一晩インキュベートする(37℃/5%CO
2)。MEFが付着したこと確認するために細胞を視覚化する。プレーティングの24時間後、培地を吸引し、1つのフラスコに付き20mlのhESに交換する。24時間後、各フラスコから約20mlのMEF−CMを収集する。工程6.8および6.9をさらに5日間繰り返す。MEF−CMを−20℃で凍結する(4ng/mlのzbFGFを添加し、IPS培養物に使用する前にのみろ過し、次いでろ過する。
【0320】
共培養物をリプログラミングするために照射MEFをプレーティングする(第0日目または第1日目)。使用予定の2〜3日前にMEFを注文する。共培養物をリプログラミングするために形質導入細胞を添加する1日または2日前にMEFをプレーティングするべきである。T細胞リプログラミングのために手順3の例にしたがい、10のドナーサンプルを添加するのに必要なMEFのウェルの数を計算する:10のドナーサンプル×3つのウェル/ドナー×3つの実験条件(SO+CK対SO+NL対GFPコントロール)=90のウェル。必要な6ウェルプレートの数を計算する(90÷6=15プレート)。1つのウェル(6ウェル形式)に付き2mlの滅菌0.1%ゼラチンを添加する。任意選択:96ウェルプレートを、1つのウェルに付き100μlのゼラチンで被覆する。インキュベーターで少なくとも1時間インキュベートする(37℃/5%CO
2)。ゼラチンを吸引し、各ウェル(6ウェル形式)に2.5mlの照射MEF細胞懸濁液を添加する。任意選択:96ウェル形式の場合は、ゼラチンを吸引し、各ウェルに200μlのMEF細胞懸濁液を添加する。一晩インキュベートする(37℃/5%CO
2)。MEFが付着したこと確認するために細胞を視覚化する。
【0321】
9.形質導入効率を評価するために品質管理アッセイを行う(第2日目):
この手順は、ヒト末梢血T細胞のMMLV形質導入を評価するための品質管理アッセイを記載する。このアッセイは、Oct4−Sox2、c−Myc−Klf4、Oct4−Sox2、およびNanog−Lin28の組み合わせを含む濃縮MMLVベクターに細胞が曝露されてから48時間後に標的T細胞集団に存在する導入遺伝子またはリプログラミング因子の存在を検出することを目的とする。
【0322】
上記の手順にしたがってヒトT細胞を活性化する。48時間後、手順7にしたがって活性化T細胞を感染させる。Cedexまたは血球計で細胞をカウントする。
【0323】
手順3(および手順7に続いている)の例にしたがい、活性化細胞を乱さずに各ウェルから100μlの上清培地を除去する。すべてのウェルは、約100μl残るはずである。2つのSox2−GFP感染ウェルのうちの一方の残りの100μlの細胞を混合して収集し、細胞をCedexカップに直接移す。各ウェルを200μlのPBSで洗浄し;洗浄液を収集し混合してCedexカップに入れる。必要に応じての最終容量を300μlに調整する。10のドナーT細胞サンプルのそれぞれに対して混合および洗浄工程を繰り返す。
【0324】
T細胞アルゴリズム(サイズ閾値=1ミクロン)を用いてCedexで細胞をカウントする。細胞密度を記録する(注意:1つのウェルに付き2〜4×10
5存在するはずである)。別法では、1つのウェルからの細胞を完全に混合し、10μlを取り出して10μlのトリパンブルーと混合し、次いで血球計で細胞をカウントする。(注意:このカウント法は、Cedexよりも精度が低い;しかしながら、使用する細胞が少ない)。
【0325】
形質導入T細胞の形質導入効率を評価する。任意選択:蛍光顕微鏡を使用して、Sox2−GFPウイルスで形質導入された細胞を視覚化する。多チャンネルピペッターを使用して、各ドナーサンプル由来のSox2−GFP感染T細胞が入った1つのウェルの残りの100μlの細胞を混合して収集する(10ウェル)。細胞を、96ウェルV底収集プレートの対応するウェルのセットに移す。各ドナーサンプルからのコントロール(非感染)ウェルの残りの100μlの細胞を混合して収集する(10ウェル)。各ウェルを75μlのPBSで洗浄し;洗浄液を収集し混合して収集プレートの対応するウェルに入れる。収集プレートを350×gで10分間遠心分離する。多チャンネルピペッターを使用して、各ウェルのペレットを乱さずに上清を慎重に除去する。この上清を、10%漂白剤を含むビーカーまたはトレーに廃棄する。1つのウェルに付き150μlのFACS緩衝液でペレットを再懸濁し、洗浄する。収集プレートを350×gで10分間遠心分離する。各ウェルのペレットを乱さずに上清を慎重に除去する。2〜5μg/mlの抗CD3−APCを含むFACS緩衝液にペレットを再懸濁する。暗所で45分間、室温でインキュベートする。
【0326】
収集プレートを350×gで10分間遠心分離する。各ウェルのペレットを乱さずに上清を慎重に除去する。1つのウェルに付き150μlのFACS緩衝液でペレットを再懸濁し、洗浄する。遠心分離工程を繰り返す。
【0327】
1つのウェルに付き1μg/mlのヨウ化プロピジウムを含む100μlのFACS緩衝液でペレットを再懸濁し、洗浄する。細胞をAccuriで分析する。GFP
+を発現する生細胞のパーセンテージを推定することによって形質導入効率を評価する。GFP
+集団に対するゲーティングによってCD3+であるGFP
+細胞のパーセンテージを評価する。
【0328】
10.形質導入T細胞とMEFを共培養する(第3〜30日目):
この手順は、マウス胎仔性線維芽細胞(MEF)上でのリプログラミング因子が形質導入されたヒトT細胞の共培養についての手順を記載する。このプロトコルは、接着MEF上での形質導入T細胞の共培養、およびこれらの細胞に再び栄養補給する方法を記載する。
【0329】
1.手順8にしたがってMEF順化培地を調製する。以下の工程4に進む前にこの試薬を調製する。
【0330】
2.(手順8にしたがって)リプログラミングのために照射MEFをプレーティングする。1つのウェルに付き2.5ml(6ウェル形式)のMEFまたは1つのウェルに付き200μl(96ウェル形式)のMEFを入手してプレーティングする。24〜72時間後に、2mlのhES:D10F培地で培地交換する(6ウェル形式の場合)または1つのウェルに付き100μlのhES:D10F培地で培地交換する(96ウェル形式の場合)。
【0331】
3.T細胞がレトロウイルスに曝露されてから2日後に形質導入効率を評価するために品質管理アッセイを行う(文献番号100405.RDL.09を参照されたい)。T細胞リプログラミングでは、この時点を第2日目とする。形質導入効率が十分な場合は、工程4に進む。
【0332】
4.(手順7にしたがって)形質導入T細胞を収集し、活性化および形質導入が成功であったかを手順にしたがって確認する。
【0333】
6ウェルMEFプレートの場合:1つのウェルに付き0.5〜4×10
5細胞(容量では25〜100μl)を入れる。全表面にわたって滴下添加する。任意選択:MEFプレートの3つのウェルにわたって投入細胞数を用量設定する。96ウェルMEFプレートの場合:1つのウェルに付き1〜8×10
4細胞(容量では10〜25μl)を入れる。(注意:可能な限り周辺部のウェルの使用は避ける。)任意選択:MEFプレートの複数のウェルにわたって投入細胞数を用量設定する。
【0334】
以下の例は、文献番号100405_RDL_03の記載にしたがい;10の血液ドナーサンプル由来の活性化T細胞培養物が10セット存在する。各ドナーサンプルを、96ウェルプレートの7(7)つのウェルに配置し、T細胞を活性化させた。2(2)つのウェルをSO+CK MMLVベクターに感染させ:2(2)つのウェルをSO+NL MMLVベクターに感染させた。
【0335】
各ドナーから、SO+CK感染T細胞を収集し、この細胞をFACS管または15ml円錐管中で混合する。各ドナーから、SO+NL感染T細胞を収集し、これを別個の試験管中で混合する。任意選択:播種密度(すなわち、いくつのT細胞がMEFプレートに送達されたか)を正確に明らかにするために、細胞を混合し、10μlのアリコートを取り出して10μlのトリパンブルーと混合し、細胞を血球計でカウントする。適切な生物閉じ込めデバイスおよび遠心分離アダプターを用いてサンプルを350×gで10分間遠心分離する。この上清を慎重に除去して、10%漂白剤を含むビーカーまたはトレーに廃棄する。細胞を400μlのhES:D10F(合計で約4〜8×10
5の細胞)に再懸濁する。混合して、200μlの細胞(2〜4×10
5の細胞)をMEFプレート(6ウェル形式)の1つのウェルに滴下して移す。
【0336】
残りの細胞をhES:D10F培地で2倍に希釈し、次いで200μlの細胞(1〜2×10
5の細胞)を同じMEFプレートの第2のウェルに滴下して移す。残りの細胞をhES:D10F培地で2倍に希釈し、次いで200μlの細胞(約0.5〜1×10
5の細胞)を同じMEFプレートの第3のウェルに滴下して移す。37℃/5%CO
2で一晩インキュベートする。
【0337】
5.維持:栄養補給スケジュール(第4〜30日目)。2日後(第4日目)に、各ウェルの培地の50%を、以下の方法を用いてhES培地+100ng/mlのゼブラフィッシュFGF(増殖培地)に交換する:6ウェルプレートをインキュベーターから取り出す。プレートの一側を、廃棄用/未使用の10cm培養皿の蓋に乗せて、培養培地がウェルの一側に流れるようにする。(注意:この角度では、培地は、MEFの単層全体をなお覆っているはずであり、ウェルからこぼれ落ちていない)。細胞を10分間沈降させる。MEFプレートから各蓋を取り外し、培養物の表面から培地の50%を慎重に/ゆっくりと吸引する。細胞を吸引しないように注意する。蓋(複数可)は、引き続く全ての栄養補給のためにとっておく。任意選択:吸引物を収集し、350×gで4分間遠心分離し、1mlの培地に再懸濁し、Cedexでカウントする。1%未満の細胞ロスしかないことを確認する。1.25mlの新鮮な増殖培地を、細胞を乱さないように円を描くように滴下添加する。プレートをインキュベーターに戻す。96ウェルプレートの共培養物中の培地を交換するために、多チャンネルピペッターを用い、そのチップをウェルの底から約半分まで挿入する。培養物の表面から100μlをゆっくり吸引する。細胞を吸引しないように注意する。(注意:6ウェル共培養形式と比較すると、T細胞は、この形式では培地が容易には撹拌されないため、より動かないようである)。100μlの新鮮な培地(hES培地+100ng/mlのzFGF)を、細胞を乱さないように滴下添加する。プレートをインキュベーターに戻す。
【0338】
第6日目に、上記の第4日目の栄養補給法を繰り返す。第8日目に、増殖培地+20%MEF順化培地で、(上記のように)細胞に再び栄養補給する。第8日目の栄養補給工程を48時間ごとに繰り返す。この期間中にコロニー形成を監視するためにウェルを視覚的に検査する。
【0339】
11.Tra1−60を発現しているコロニーを識別して採取する:
手順は、リプログラミング条件下、MEF共培養で増殖したTra1−60
+コロニーを識別して採取するためのガイドラインを記載する。適切な条件下で、iPS細胞のコロニーが、リプログラミング因子の一次ヒト細胞への導入後に形成される。このプロトコルは、Tra1−60に対する抗体を利用して、MEF共培養で形成される推定iPSCコロニーに蛍光標識するものである。コロニーの蛍光標識パターンおよびコロニーの形態を比較することにより、多能性の質的評価基準であるスコアをコロニーに割り当てる。このスコア化システムは、さらなる特徴付けのための推定iPS細胞の選択的な増大を容易にする。
【0340】
リプログラミング因子を形質導入した後、ヒト細胞を、MEF上で15〜30日間共培養する。この期間中、細胞を、コロニー形成について視覚的に検査するべきである。コロニーを視認できるが、過度に増殖していない場合は、存在するコロニーの総数をカウントまたは推定する。
【0341】
リプログラミングベクター(複数可)が蛍光レポーターを含まない場合は、次の工程に進み:コロニーの採取の1日または2日前に、(手順8にしたがって)ゼラチンが被覆された6ウェルプレートもしくは96ウェルプレートまたは10cm皿のセット照射MEFを蒔く。
【0342】
リプログラミングベクター(複数可)が蛍光レポーターを含む場合は、新生コロニーを、蛍光顕微鏡下で監視するべきである。蛍光コロニーおよび非蛍光コロニーの記録をとる。リプログラミング事象は、典型的には蛍光レポーターを抑制する。しかしながら、場合によっては、細胞は、蛍光を維持することもある。このため、レポーターの蛍光スペクトルと重複する蛍光スペクトルをもつ蛍光抗体(以下)の使用を回避することが重要である。
【0343】
抗Tra1−60生細胞の標識化プロトコルを次のように行う:染色するウェルをDMEM/F12(無血清)培地で2回洗浄する。一次抗体を増殖培地(hES)で作業希釈倍率まで希釈する。希釈した抗体を0.22μm滅菌フィルターでろ過する。希釈した一次抗体を細胞に添加する。十分な容量を添加して単層を覆う。37℃、5%CO
2で45分間〜1時間インキュベートする。細胞をDMEM/F12培地で2回洗浄する。注意:蛍光標識一次抗体を使用する場合は、培地を新鮮なhESに交換し、細胞を撮像する。そうでない場合は:二次抗体を増殖培地(hES)で希釈する。希釈した二次抗体を0.22μm滅菌フィルターでろ過する。希釈した抗体を細胞に添加する。37℃、5%CO
2で30分間インキュベートする。細胞をDMEM/F12で1回洗浄し、培地を新鮮なhES+CMに交換し、蛍光顕微鏡で撮像する。
【0344】
多数のコロニーが存在する場合は、デジタル画像を取得して観察してからスコアを付ける。2〜3のコロニーのみの場合は、サンプルを顕微鏡で観察して、各コロニーにスコアを付ける。以下の記載にしたがって、明視野顕微鏡で「形態」スコアを付ける:1=コロニーは、部分的にリプログラミングされたとして表現され;コロニーは、拡散した境界、および/または境界における分化細胞;および/または認識できる細胞質および核を有する線維芽細胞様の分化細胞を有する。2=コロニーは、手作業で採取できるほど明確であり;このコロニーは、半連続の厳密な境界が分化部分によって中断された非分化細胞のコロニー(細胞質:核の比が小さい)、または完全に連続した厳密な境界が分化細胞のかさ(halo)(「目玉焼き」形態)によって取り囲まれたコロニーを含み得る。3=古典的な形態;厳密な境界を有し;分化細胞を含まないコロニーであり、細胞は、細胞質:核の比が小さい。
【0345】
各コロニーを蛍光顕微鏡で視覚化して、0=無標識;1=弱いまたは斑点状;2=不均一または不規則な標識パターン;明確な境界の証拠が殆どまたは全くない;3=境界が明確な均一な標識:の記述にしたがって、「Tra1−60」スコアを付ける。
【0346】
Tra1−60陽性コロニーを識別して採取する。スコアの最も高いコロニーを識別するためにプレートにインクで印を付ける。スコア「3−3」が理想的であるが、形態が理想よりも下のコロニー(例えば、「2−3」または「2−2」としてスコアが付けられ得るコロニー)を採取して増殖を成功させるための優先順位が存在する。
【0347】
6ウェルプレート(または10cm皿)からコロニーを採取するために、細胞を採取フードに移す。コロニーを解剖顕微鏡で視覚化して、コロニーの境界の周りの皿の表面に(「三目並べ」式に)手作業でピペットチップを引く。この操作により、コロニーが3〜6の断片に分割され、周囲のMEFから離れるはずである。コロニーの断片をピペットチップ内に吸引する。(注意:元のウェル内に残る分離された断片が、再び付着して二次コロニーを形成する可能性があることに留意されたい。これは、コロニーのカウントおよびリプログラミング効率の推定を混乱させ得る)。断片を、hES培地+100ng/mlのゼブラフィッシュbFGFが添加されたMEF(増殖培地)を含む6ウェルプレートの受入れウェルに直接移す。
【0348】
コロニーを96ウェル形式から採取するために、形態が良好でTra1−60標識スコアが良好なコロニーが1つだけのウェルを識別する。培地をウェルから吸引する。ディスパーゼを添加し、37℃で7分間インキュベートする。ピペッティングで穏やかに上下させてコロニーを分離する。コロニー断片を15ml管に移し、hES培地で希釈する。350×gで10分間遠心分離する。上清を吸引し、次いで増殖培地に再懸濁する。
【0349】
断片を、増殖培地にMEFを含む6ウェルプレートの受入ウェルに直接移す。コロニーの断片は、新たなMEFに付着して複数の新たなコロニーを形成するはずである。24時間後、培地を新鮮な増殖培地に交換する。細胞がコンフルエントになるまで増殖および形態を監視する。培地は、新鮮な増殖培地で毎日交換する。
【0350】
実施例10 材料
実施例1〜9で使用される材料が、表5〜表7に示されている。
【0351】
表5−試薬
【0352】
【表5】
表6
【0353】
【表6】
表7
【0354】
【表7】
実施例11
CD34
+造血細胞からのiPS細胞の作製
PBMCを、実施例1に記載されているようにleukopakまたは新たに採血された血液サンプルから単離した。製造者の取扱説明書にしたがって、間接CD34マイクロビーズキット(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany)、直接CD34マイクロビーズキット、または系統細胞枯渇キット(lineage depletion kit)(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany)を用いてCD34
+細胞のMACS分離を行った。CD34
+MACS精製細胞の画分をFACS分析のために収集し、残った細胞を、以下に示すCD34
+細胞増大培地を用いて低接着6ウェルプレートに再プレーティングした。CD34
+細胞富化を、CD34直接マイクロビーズまたは間接CD34ハプテン抗体染色キットを用いて行うことができる。
【0355】
表8.CD34増大培地
【0356】
【表8】
CD34
+細胞増大培地:Stem Pro 34(Invitrogen)を、製造者の使用説明書にしたがって所望の容量の栄養補助剤と混合する。Stem Proコンプリートには、100ng/mlの組換えStem Cell Factor、100ng/mlの組換えFlt−3リガンド、および20ng/mlの組換えヒトインターロイキン−3(IL−3)が添加されている。この培地は、新鮮な1%グルタミンおよび1%ペニシリンストレプトマイシン溶液も添加されている。すべての補助剤を混合し、使用前に培地をろ過した。
【0357】
細胞を、上記の方法によって、トランスフェクションの約24時間前に播種した。また、293T細胞をレトロウイルス生産のためにトランスフェクトし、次いで造血細胞を、上記のようにMMLVレトロウイルスによって送達される(OCT4、SOX2、NANOG、およびLin28)遺伝子または(OCT4、SOX2、KLF4、c−MYC)遺伝子のいずれかをトランスフェクトした。これらの実験の結果として、上記の遺伝子のいずれかのセットをトランスフェクトされたCD34
+造血細胞により、新たなiPS細胞系の産生が得られたことが観察された。
【0358】
以下のプロトコルを、MMLVレトロウイルスを用いたPBMCのリプログラミングに使用した:MACS LS分離カラムを、急速冷却のために−20℃に置く(別法では、カラムおよびMACs緩衝液を4℃で一晩冷却しても良い)。適切な数のPBMCバイアルを解凍して、約3×10
8の細胞を収集する。細胞をMACS緩衝液で5mlにする(手順中は緩衝液を低温に保つ)。1200rpmで5分間遠心分離し、上清を吸引し、MACS緩衝液に再懸濁する。血球計で細胞をカウントする。細胞懸濁液を1×10
8からなる3本の試験管に分けて、300×gで10分間遠心分離する。CD34
+細胞富化を、CD34直接マイクロビーズまたは間接CD34ハプテン抗体染色キットを用いて行うことができる。各細胞ペレットを300μlのMACS緩衝液に再懸濁する。1本の試験管に付き100μlのFcRブロッキング試薬を添加し、混合する。1本の試験管に付き100μlのCD34ハプテン抗体または直接CD34ビーズを添加し、混合する。4℃で15分間インキュベートする。細胞を5mlのMACS緩衝液で洗浄し、300×gで10分間遠心分離する。上清を完全に吸引する。細胞を500μlのMACS緩衝液に再懸濁する。1ステップのCD34直接マイクロビーズを使用する場合は、細胞を分離できる状態である。間接CD34分離ビーズを使用する場合は、分離の前に抗ハプテンマイクロビーズと共にもう1回インキュベートする工程がある。100μlの抗ハプテンマイクロビーズを添加し、混合する。4℃で15分間インキュベートする。細胞を2mlのMACS緩衝液で洗浄し、300×gで10分間遠心分離する。500μlのMACS緩衝液に再懸濁する。MACS LSカラムを4℃から取り出す。カラムを分離器の磁石の上に配置する。カラムを3mlのMACS緩衝液で洗い流す。細胞懸濁液をカラムに入れる。通過した未標識細胞を収集し、カラムを3mlのMACS緩衝液で洗浄する。洗浄をさらに2回繰り返す。カラムを磁石から移動させて、適切な収集管に入れる。3mlのMACS緩衝液を添加し、備え付けのプランジャーを用いてカラムから洗い出し富化CD34
+細胞画分を収集する。FACS分析のために富化集団の画分を収集する。CD34
+細胞増大培地を用いて低接着6ウェルプレートに残った細胞を再プレーティングする。系統細胞枯渇キットを用いる場合は、細胞を系統陽性抗体(CD2、CD3、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD19、CD56、CD123、CD235a)のビオチン化カクテルと共にインキュベートして、成熟造血細胞型、例えば、T細胞、B細胞、NK細胞、樹状細胞、単球、顆粒球、赤血球系細胞を除去する。インキュベーションの後、細胞を洗浄し、抗ビオチンマイクロビーズと共にインキュベートする。細胞懸濁液を洗浄し、手作業によりカラムで分離する、またはAutoMACs細胞分離器を用いて分離する。
【0359】
iPSコロニーの識別および採取を以下の方法で行った:形態学的に、コロニーは、一般に高密度であり、拡大した核および2つの別個の核小体をもつ緻密な小細胞からなっていた。コロニーは、しばしば、このような独特の特徴を観察するには密度が高すぎて、コロニーの中心に分化した物質を有するようである。コロニーの境界は、通常は明確である。しかしながら、血液iPS細胞(BiPSC)は、より拡散しており、線維芽細胞由来の以前のiPSCに典型的には一致しない特徴である毛羽立ったような境界を有するようにみえた。コロニーは、組み込まれたウイルスDNAからのGFPおよびRFPの発現を抑制する。一部の真正のコロニーは、感染の20日後に蛍光を消失し、一部の真正のコロニーは、感染の約35〜40日後に採取して移してから蛍光を消失した。すべてのコロニーは、GFPおよびRFPを発現しないはずである(ただし、ある程度の発現が、近傍の単一細胞で確認された)。手作業で採取するために、ピペットチップを用いてコロニーを3〜6の断片に分割して、幹細胞が周囲のMEFおよび造血幹細胞から離れやすくした。採取は、総コロニーのカウントの混乱を回避するため、すなわちコロニーの小塊が再定住して新たなクローンとして誤ってカウントされないようにするために複数のコロニーが形成されるまでは見合わせた。次いで、細胞を、hES培地+100ng/mlのゼブラフィッシュbFGFが添加されたMEFを含む6ウェルプレートの受入ウェルに直接移した。クローンが実際に完全にリプログラミングされたことを確実にするために、増殖、形態、および蛍光の消失を1〜2週間にわたって監視した。細胞に毎日栄養補給した。採取してプレーティングしたコロニーが接着して特徴的なES様形態を示したら、コロニーを、上記のように再び手作業で6ウェルMEFプレートの新たなセットに移し、毎日栄養補給した。ウェルがコンフルエントになると、コラゲナーゼを用いて通常のiPSC系として継代し、様々な継代でアリコートを凍結し、各セットに対して試験解凍を行う。
【0360】
採取して増大させたコロニーを、多能性マーカー(SSEA−4、Oct3/4、Tra−160、およびTra−181)の存在について染色する。また、コロニーを、アルカリホスファターゼ活性の存在についても染色する。クローンを、通常の核型の存在について検査し、iPSクローンの同一性が、FISH分析によって親細胞型に対して確認された。これらの検査の結果は、CD34
+細胞のiPS細胞への変換が成功したことを示した。CD34
+細胞に(Sox2、Oct4、c−Myc、およびKlf−4)をトランスフェクトしたときのトランスフェクション効率が高いことが観察されたが、CD34
+細胞の(Sox2、Oct4、Nanog、およびLin28)因子でのトランスフェクションに由来するiPS細胞が、照射MEFおよびMatrigelでのクローンの維持の間により安定であることが観察された。さらなる実験では、leukopakおよびドナー血液から得たCD34
+細胞を、(Sox2、Oct4、c−Myc、およびKlf−4)を用いたトランスフェクションによってiPS細胞に変換することに成功した。始原細胞型のリプログラミング効率は、100,000細胞当たり約10コロニーであることが観察された。
【0361】
本明細書に開示され請求されるすべての方法は、本開示から、過度の実験をしなくても構築および実施され得る。本発明の組成物および方法を好ましい実施形態に関して記載してきたが、本発明の概念、趣旨、および範囲から逸脱することなく、変形形態が、本明細書に記載された方法ならびにその方法の工程または順序だった工程に適用できることは当業者には明らかである。より詳細には、化学的および生理学的の両方に関連する特定の作用物質が、本明細書に記載された作用物質の代替となり得、同じまたは同様の結果が達成されることは明らかである。当業者には明らかなすべてのこのような同様の代替物および変更は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨、範囲、および概念の中に包含されると見なされる。
【0362】
参照文献
以下に示す参照文献は、本明細書の記載を補足する例示的な手順または他の詳細を提供する程度に、参照により本明細書に明確に組み入れられる。
【0363】
【数3】
【0364】
【数4】
【0365】
【数5】
【0366】
【数6】
【0367】
【数7】