(54)【発明の名称】レゾルシノールジフタロニトリルエーテルとビスフェノールMジフタロニトリルエーテル及び/又はビスフェノールTジフタロニトリルエーテルとの樹脂ブレンド
【文献】
HAITONG SHENG et al.,"Synthesis of high performance bisphthalonitrile resins cured with self-catalyzed 4-aminophenoxy phthalonitrile,Thermochimica Acta,2014年,Vol.577,p.17-24
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記レゾルシノールジフタロニトリルエーテル樹脂の前記ビスフェノールMジフタロニトリルエーテル樹脂に対する重量比が、10:90〜90:10の範囲(両端の値を含む)である、請求項1に記載の樹脂ブレンド。
前記レゾルシノールジフタロニトリルエーテル樹脂の前記ビスフェノールTジフタロニトリルエーテル樹脂に対する重量比が、10:90〜90:10の範囲(両端の値を含む)である、請求項8に記載の樹脂ブレンド。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の定義された用語の用語解説に関して、これらの定義は、特許請求の範囲又は本明細書の他の箇所において異なる定義が提供されていない限り、本出願全体について適用されるものとする。
【0011】
用語解説
ある特定の用語が、本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して使用されており、これらの大部分については周知であるが、何らかの説明が必要とされる場合もある。本明細書において使用する場合、以下のようであると理解されたい。
【0012】
「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」という用語は、「少なくとも1つの」と交換可能に使用され、記載されている要素のうちの1つ又は複数を意味する。
【0013】
「及び/又は(and/or)」という用語は、一方又は両方を意味する。例えば「A及び/又はB」は、Aのみ、Bのみ、又はAとBとの両方を意味する。
【0014】
本明細書で使用する場合、末端値による数値範囲での記述には、その範囲内に包含されるあらゆる数値が含まれる(例えば1〜5には1、1.5、2、2.75、3、3.8、4、及び5が含まれる)。
【0015】
特に指示がない限り、本明細書及び実施形態で使用する量又は成分、特性の測定値などを表す全ての数は、全ての場合、「約」という用語によって修飾されていると解するものとする。したがって、特に指示がない限り、前述の明細書及び添付の実施形態の列挙において示す数値パラメータは、本開示の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に依存して変化し得る。最低でも、各数値パラメータは少なくとも、報告される有効桁の数に照らして端数処理技術により、解釈されるべきであるが、このことは請求項記載の実施形態の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではない。
【0016】
用語「含む(comprises)」及びその変化形は、これらの用語が本明細書及び特許請求の範囲において現れる場合、限定的な意味を有しない。
【0017】
「好ましい」及び「好ましくは」という言葉は、一定の状況下で一定の利益を提供できる、本開示の実施形態を指す。しかし、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況において好ましい場合がある。更には、1つ以上の好ましい実施形態の記述は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、本開示の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0018】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「1つ以上の実施形態」、又は「実施形態」に対する言及は、「実施形態」という用語の前に、「例示的な」という用語が含まれているか否かに関わらず、その実施形態に関連して説明される具体的な特色、構造、材料、又は特徴が、本開示のある特定の例示的な実施形態のうちの少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。それゆえ、本明細書全体を通した様々な箇所での、「1つ以上の実施形態では」、「一部の実施形態では」、「いくつかの実施形態では」、「一実施形態では」、「多くの実施形態では」、又は「実施形態では」などの表現の出現は、必ずしも本開示の特定の例示的な実施形態のうちの同じ実施形態に言及しているわけではない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わされてもよい。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「フタロニトリル」は、2つの隣接ニトリル基を有する特徴的なベンゼン誘導体を有する、化合物及びポリマーを含む。図示されたフタロニトリル基において、Rは、例えば、これらに限定されるものではないが、エーテル、チオエーテル、アリール、アルキル、ハロゲン、アミン、エステル、又はアミド、ヘテロアルキル、(ヘテロ)ヒドロカルビルである。
【化3】
【0020】
本明細書で使用する場合、「ビスフェノールMジフタロニトリルエーテル」は、ビスフェノールMのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテルを指す。
【0021】
本明細書で使用する場合、「ビスフェノールTジフタロニトリルエーテル」は、ビスフェノールTのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテルを指す。
【0022】
本明細書で使用する場合、「ビスフェノールPジフタロニトリルエーテル」は、ビスフェノールPのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテルを指す。
【0023】
本明細書で使用する場合、「レゾルシノールジフタロニトリルエーテル」は、レゾルシノールのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテルを指す。
【0024】
本明細書で使用する場合、「アルキル」は、直鎖状、分枝状、及び環状アルキル基を含み、非置換及び置換アルキル基の両方を含む。特に指示がない限り、アルキル基は、典型的には1〜20個の炭素原子を含む。本明細書で使用される「アルキル」の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、イソブチル、t−ブチル、イソプロピル、n−オクチル、n−ヘプチル、エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル及びノルボルニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。別途注記のない限り、アルキル基は、一価であっても多価であってもよい。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「ヘテロアルキル」は、独立して、S、O、Si、P、及びNから選択される1つ又は複数のヘテロ原子を有する直鎖、分枝鎖、及び環状アルキル基、並びに非置換及び置換アルキル基の両方を含む。特に指示がない限り、ヘテロアルキル基は、典型的には、1〜20個の炭素原子を含む。「ヘテロアルキル」は、以下に記載する「ヘテロ(ヘテロ)ヒドロカルビル」の部分集合である。本明細書で使用する場合、「ヘテロアルキル」の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、3,6−ジオキサヘプチル、3−(トリメチルシリル)−プロピル、及び4−ジメチルアミノブタニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。別途注記のない限り、ヘテロアルキル基は、一価であっても多価であってもよい。
【0026】
本明細書で使用する場合、「アリール」は、6〜18個の環原子を含有する芳香族であり、縮合環を含有してもよく、飽和であっても、不飽和であっても、芳香族であってもよい。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントリル、及びアントラシルが挙げられる。ヘテロアリールは、窒素、酸素、又は硫黄等のヘテロ原子を1〜3個含有するアリールであり、縮合環を含有してもよい。ヘテロアリールのいくつかの例は、ピリジル、フラニル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、ベンゾフラニル、及びベンズチアゾリルである。別途注記のない限り、アリール及びヘテロアリール基は、一価であっても多価であってもよい。
【0027】
本明細書で使用する場合、「(ヘテロ)ヒドロカルビル」は、(ヘテロ)ヒドロカルビルアルキル及びアリール基、並びにヘテロ(ヘテロ)ヒドロカルビルヘテロアルキル及びヘテロアリール基を含み、後者は、エーテル等の1つ又は複数のカテナリー酸素ヘテロ原子又はアミノ基を含む。ヘテロ(ヘテロ)ヒドロカルビルは、任意に、エステル、アミド、ウレア、ウレタン、及びカーボネート官能基を含む、1つ又は複数のカテナリー(鎖内)官能基を含有してもよい。特に指示がない限り、非ポリマー(ヘテロ)ヒドロカルビル基は、典型的には、1〜60個の炭素原子を含有する。このような(ヘテロ)ヒドロカルビルのいくつかの例は、本明細書で使用する場合、上記「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」、及び「ヘテロアリール」について記載したものに加えて、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、4−ジフェニルアミノブチル、2−(2’−フェノキシエトキシ)エチル、3,6−ジオキサヘプチル、3,6−ジオキサへキシル−6−フェニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本明細書で使用する場合、用語「残基」は、記載されている式中の結合している官能基又は結合している基を除去(又は反応)した後に残る基の(ヘテロ)ヒドロカルビル部分を定義するために用いられる。例えば、ブチルアルデヒド、C
4H
9−CHOの「残基」は、一価のアルキルC
4H
9−である。フェニレンジアミンH
2N−C
6H
4−NH
2の残基は、二価のアリール−C
6H
4−である。
【0029】
ここで本開示の様々な例示的な実施形態が記述される。本開示の例示的な実施形態には、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を加えてもよい。したがって、本開示の実施形態は、以下に記載の例示的な実施形態に限定されるものではないが、特許請求の範囲に記載されている限定及びそれらの任意の均等物により支配されるものであることを理解すべきである。
【0030】
本開示は、レゾルシノールジフタロニトリルエーテル樹脂とビスフェノールMジフタロニトリルエーテル樹脂、ビスフェノールTジフタロニトリルエーテル樹脂、又はこれらの組み合わせとのブレンドを含む樹脂ブレンドに関する。
【0031】
フタロニトリルは、フタロニトリル重合の付加の態様に起因して、バルク重合反応に理想的な前駆体樹脂であり、ネットワークを弱体化させ、ネットワークから浸出し、かつ高温で揮発し得る未結合の反応副生成物を避けるため、特に有利である。フタロニトリルは、触媒又は硬化剤によって促進された場合に、付加硬化反応を起こす。既知のフタロニトリル重合用触媒系は、4つのフタロニトリル部分のフタロシアニン環への四環化を促進する(McKeown,N.B.,The Synthesis of Symmetrical Phthalocyanines,in The Porphyrin Handbook,K.M.Kadish,K.M.Smith,and R.Guilard,Editors.2003,Academic Press:Amsterdam.p.61−124)。フタロシアニンは、無金属(PcH2)フタロシアニン又は含金属(PcM)フタロシアニンの2つの形態のうちの1つで存在し得る。塩基、アルコール、及び熱を加えること、又は適切な還元剤及び熱を加えることにより、PcH2を形成してもよい。これらの条件は、アミン塩基を第一級アルコール(例えば、C1〜C5アルコール)と共に添加することによって満足されてもよい。塩基はPcH2の形成及びアルコールのアルデヒドへの酸化を触媒する。好適な還元剤(例えば、ヒドロキノン又は1,2,3,6−テトラヒドロピリジン)は、PcH2形成に形式的に必要な2個の電子及び2個のプロトンを供給することができ、環化四量体化ももたらすであろう。金属、有機金属又は金属塩及び熱を加えることにより、PcMを形成してもよい。金属は、フタロシアニン環の中央の4つの窒素と配位結合する。配位状態に応じて、金属は2つ以上のフタロシアニン環と相互作用して、積み重なったフタロシアニン構造を生じさせる場合がある。多くの金属が、環化四量体化をもたらすことが示されている(ibid.)。これらのバルク重合反応用触媒系の欠点は、しばしば揮発性物質が発生することである。
【0032】
アルデヒドへの酸化を起こすことができる第一級アルコールが存在しない場合、第一級アミンがフタロニトリル硬化剤として作用し、多官能性フタロニトリル樹脂を用いた場合、N置換ポリ(3−イミノイソインドレニン)結合ポリマーネットワークが生じる(米国特許第4,408,035号(Keller)及び同第4,223,123号(Keller et al.))。アルコールの不足は、PcH2フタロシアニン環の形成を妨げる。フタロニトリルとの良好な反応性を示す第一級アミンは、アニリン系である。重合中の硬化剤の損失を避けるために、典型的には、より高分子量及びより低揮発性のアニリン官能性硬化剤が望ましい。ジアニリン系硬化剤は、硬化剤の重量当たりのアニリン官能性がより高いことから、有用となり得る。第一級アミンに促進されるフタロニトリル硬化反応は、200℃〜250℃の温度でかなりの速度で進行する。アミン硬化されたフタロニトリル重合ネットワークは、高いガラス転移温度、良好な耐熱劣化性及び耐熱酸化劣化性によって付与される卓越した熱安定性を示し、更には本質的に不燃性で、吸湿性が低い。しかし、現在の樹脂技術は、400℃を超える高いガラス転移温度のため、長尺の高温多段階オートクレーブ硬化スケジュールに制限される(米国特許第4,223,123(Keller et al.))。
【0033】
レゾルシノールジフタロニトリルエーテル(RPN)は、他の、より高分子量のフタロニトリル樹脂と比較して、商業的に重要であり、185℃の融解温度及び低い溶融粘度を呈する。RPN硬化されたネットワークは、400℃を超える高いガラス転移温度を示す(Keller,T.M.and D.D.Dominguez,High temperature resorcinol−based phthalonitrile polymer.Polymer,2005.46(13):p.4614−4618)。ビスフェノールAジフタロニトリルエーテル(BAPN)は、別の周知の樹脂で、融解温度が195℃である。BAPN硬化されたネットワークも400℃を超える高いガラス転移温度を示す(Laskoski,M.,D.D.Dominguez,and T.M.Keller,Synthesis and properties of a bisphenol A based phthalonitrile resin.Journal of Polymer Science Part A:Polymer Chemistry,2005.43(18):p.4136−4143)。RPN硬化されたネットワーク及びBAPN硬化されたネットワークのそれぞれの高いガラス転移温度(T
g)は、ポリマーネットワーク形成を阻害するガラス化を克服するため及び300℃を超える温度でのネットワーク劣化を最小限に抑えるために、不活性オートクレーブ条件下で425℃までの多段階硬化処理を必要とする。200℃未満の温度で液体のPN樹脂を、ガラス転移温度が300℃未満のPN硬化されたポリマーネットワークと組み合わせるフタロニトリル樹脂技術が有用であることが確認されている。例えば、200℃〜250℃の硬化反応温度範囲よりも低温で液体として処理でき、より低いガラス転移温度を有するポリマーネットワークを形成することができるPN樹脂は、ガラス化を回避し、不活性雰囲気を必要とすることなく、より低温での脱オートクレーブ硬化を可能にする。
【0034】
ポリマーネットワークのT
gを調整するための試みで用いられる従来のアプローチは、アミン硬化されたフタロニトリルネットワークのT
gを上手く調整できることを示していない。このようなアプローチの1つは、より分子的に剛性のある樹脂(例えば、ビフェニルPN)と、より分子的に可撓性のある樹脂(例えば、オリゴマーRPN(n=4))との樹脂ブレンドを用いる。2種以上の樹脂をブレンドすることは、高融点樹脂の樹脂結晶化の阻害に有用な手法であることが発見された。しかし、フタロニトリル樹脂の融解温度が高いと、樹脂の溶融と硬化発熱との間の加工範囲が小さくなる。他のフタロニトリル樹脂と比べて低い融解温度を有するより低い分子量フタロニトリル樹脂は、そのより低い溶融粘度と、より低温で樹脂をブレンドできることから、フタロニトリルブレンドに好ましい。第2のアプローチは、より高分子量の反応性モノマー(例えば、RPN系及びBAPN系オリゴマー)の組み込みによる架橋密度の低下を用いる。RPN及びBAPNオリゴマーは、RPN及びBAPNと比べてかなり低い軟化温度を有し(それぞれ40℃及び75℃)、ネットワーク重合温度未満で、より大きな樹脂加工範囲を提供する。
【0035】
PN樹脂を用いるこれら2つのアプローチの研究では、PN重合ネットワークのT
gを抑制(moderate)できることを示していない。第1のアプローチを適用する場合、ビフェニルPNとRPN(n=4)オリゴマーとのブレンドは、ブレンドネットワークのT
gの低下を示さなかった(Dominguez,D.D and T.M.Keller,Low−melting Phthalonitrile Oligomers:Preparation,Polymerization and Polymer Properties.High Performance Polymers,2006.18(3):p.283−304;及びDominguez,D.D.and T.M.Keller,Properties of phthalonitrile monomer blends and thermosetting phthalonitrile copolymers.Polymer,2007.48(1):p.91−97)。第2のアプローチを適用する場合、より高分子量のRPN及びBAPN系オリゴマーは、重合樹脂のガラス転移温度の低下を生じず、なおも不活性オートクレーブ条件下での高温後硬化を必要とした(Laskoski,M.,D.D.Dominguez,and T.M.Keller,Synthesis and properties of a bisphenol A based phthalonitrile resin.Journal of Polymer Science Part A:Polymer Chemistry,2005.43(18):p.4136−4143;及びDominguez,D.D.and T.M.Keller,Properties of phthalonitrile monomer blends and thermosetting phthalonitrile copolymers.Polymer,2007.48(1):p.91−97)。
【0036】
本開示は、少なくともいくつかの実施形態において、それぞれのホモポリマーネットワークで、より低いガラス転移温度を示すことが確認された他のフタロニトリル樹脂を組み込むことによって、高T
gアミン硬化されたフタロニトリルネットワーク(例えば、RPN)のガラス転移温度を調整できることを実証する。これは、例えば、RPNと、より高分子量のフタロニトリル樹脂であるビスフェノールPジフタロニトリルエーテル(BPPN)、ビスフェノールTジフタロニトリルエーテル(BTPN)及びビスフェノールMジフタロニトリルエーテル(BMPN)との樹脂ブレンドによって例証される。BMPN及びBTPN樹脂は、驚くべきことに、例示的な高T
gのネットワーク形成樹脂としてのRPNとブレンドしたときに、ブレンドネットワークにおいて、BPPNよりもガラス転移温度の調整に有効であることが見出された。BPPN、BTPN、及びBMPNホモポリマーネットワークの特徴的なガラス転移温度は、軟化温度を示さない、以前に知られている他のフタロニトリル硬化されたネットワークよりも有意に低いことが見出された(Keller,T.M.and D.D.Dominguez,High temperature resorcinol−based phthalonitrile polymer.Polymer,2005.46(13):p.4614−4618;及びDominguez,D.D.and T.M.Keller,Properties of phthalonitrile monomer blends and thermosetting phthalonitrile copolymers.Polymer,2007.48(1):p.91−97)。加えて、これらの樹脂をブレンドに使用して、ブレンドネットワークのT
gを調整して、より低T
gの脱オートクレーブ処理されたネットワークを実現できることを、下記実施例に示す。
【0037】
特定の実施形態では、RPN、BPPN、BTPN及びBMPNの樹脂ブレンドを、最高300℃の空気対流オーブン内で後硬化し、必要に応じて最高350℃、375℃及び400℃の不活性雰囲気管状炉内で硬化して、樹脂の硬化を完了させる。PN硬化されたネットワークはネットワーク剛性が高いことから、妥当な時間でほぼ完全な重合を達成するには、硬化温度がネットワークのtanδピーク温度を超える必要がある。樹脂の完全硬化は、硬化されたネットワークを連続して動的機械的に昇温(dynamic mechanical heating ramps)することによって実現される。窒素下での等温重量分析測定に基づいて、PN硬化されたネットワークが無視できない重量損失を起こし、ネットワーク劣化を起こしたネットワークをもたらすことを明白に示すことから、長時間の後硬化は、通常は避けられる。不活性窒素雰囲気下で長時間(すなわち、数時間)後硬化した場合、350℃という低温でも重量損失が生じる。ネットワークの重量損失は、剛性の増大を伴い、これは、更なるフタロニトリル反応に加えて、ネットワーク劣化が高温の後硬化中の剛性増加に寄与することを示唆する。RPN及び高い比率でRPNを含有する樹脂ブレンドの完全硬化は、樹脂の分子量が低いために実現困難であることが多く、硬化時に短時間でガラス化問題を生じ、フタロニトリル反応末端が重合を継続するための十分な移動度を得るために、より高い温度を必要とする。
【0038】
BPPNをジアニリン硬化剤[例えば、4,4’−(1,3−フェニレンジオキシ)ジアニリン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン]で重合したとき、264℃のE’開始及び287℃のtanδピークを有するネットワークポリマーが生成することが確認された。BPPN硬化されたネットワークはT
gがより低いことから、空気対流オーブン内で300℃までの温度で脱オートクレーブによりBPPNの硬化を完了することが可能になる。350℃及び375℃でのより高温での後硬化は、tanδのシフトを生じないことが確認された。213℃という高い融解温度は、樹脂硬化発熱(すなわち、200℃〜250℃)から外れる200℃未満の温度でのBPPNの液処理を阻害し、より低活性の硬化剤又は触媒を使用しない限り、単一コンポーネントの硬化性樹脂としてのBPPNの有用性は低くなる。より低T
gのPN硬化されたネットワークを製造するための樹脂系構成成分としてのBPPNを、代表的な高T
gネットワーク製造樹脂としてのRPNとブレンドすることで、T
gのわずかな低下が生じた。
図1に示すように、BPPN/RPN(質量比2:1のブレンド)のT
gは、樹脂の質量の線形結合に基づく理想的なT
gよりも高い(例えば、実線で示した理想線の上方に位置する正方形を参照)。BPPN樹脂は、高T
gPN樹脂のT
gの抑制において、理想よりも効果が低いことが判明した。結果は、BPPNと類似した化学主鎖構造を共有するビスフェノールA系オリゴマーは、樹脂分子量の増加に伴うT
gの抑制を示さなかったというLaskoskiらの結果と明らかに一致する(Laskoski,M.,D.D.Dominguez,and T.M.Keller,Synthesis and properties of a bisphenol A based phthalonitrile resin.Journal of Polymer Science Part A:Polymer Chemistry,2005.43(18):p.4136−4143)。
【0039】
式IIのビスフェノールTジフタロニトリルエーテル(BTPN)樹脂:
【化4】
BTPNは、178℃という低い樹脂融解温度を有する別のPN樹脂である。ジアニリン硬化剤[例えば、4,4’−(1,3−フェニレンジオキシ)ジアニリン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン]で重合したとき、BTPNは、279℃のE’開始及び312℃のtanδピークを有するネットワークポリマーを生成することが確認された。BTPNホモポリマーネットワークは、T
gがより高いため、ネットワーク重合を完了させるために、不活性雰囲気下で最高350℃の温度で1時間という、より高温での後硬化を必要とした。RPN及びRPN/BTPNブレンドを、最高300℃の空気対流オーブン内で硬化し、不活性雰囲気管状炉内で、必要に応じて350℃、375℃及び400℃の後硬化して、樹脂の硬化を完了させた。BTPNとRPNとの樹脂ブレンドは、ブレンド中の樹脂結晶化の阻害により、より低融点の樹脂ブレンドを生成し、これは個々の樹脂と比較してブレンドの加工性を改善する。ブレンドネットワークのガラス転移温度は、ホモポリマーネットワークのガラス転移温度の間であり、更に驚くべきことに、
図1に示すように、樹脂ブレンド組成物の理想的な線形結合よりも下である(例えば、一点鎖線で示した理想線の下に位置する三角を参照)。したがって、BTPNは、高T
g生成PN樹脂のT
gの抑制に有効となり得る。いずれかの実施形態では、レゾルシノールジフタロニトリルエーテル(RPN)樹脂のビスフェノールTジフタロニトリルエーテル(BTPN)樹脂に対する重量比は、10:90〜90:10(両端の値を含む)、又は15:85〜85:15(両端の値を含む)、又は25:75〜75:25(両端の値を含む)、又は30:70〜70:30(両端の値を含む)の範囲である。
【0040】
しかしながら、BTPNネットワークが高T
gであることから、この樹脂は、より低T
gの脱オートクレーブポリマーネットワークブレンドの開発にあまり理想的ではない。BTPNホモポリマーネットワークの硬化を合理的な時間で完了させるには、300℃を上回る、より高温の後硬化が必要であった。
【0041】
式IのビスフェノールMジフタロニトリルエーテル(BMPN)樹脂:
【化5】
BMPNは、融解温度が160℃であり、結晶化を阻害する化学構造を有することが確認されており、融解温度よりも低い温度における過冷却液体状態を可能にする。これらの特性は、単一コンポーネント樹脂として、及び樹脂ブレンド構成成分としての、樹脂加工におけるBMPNの有益性を実証する。他のPN樹脂とブレンドした場合、より高融点の他のPN樹脂の結晶化を有効に阻害し、PN樹脂ブレンド中のBMPNの量が多い場合でも、自己結晶化に抵抗することが発見された(すなわち、樹脂ブレンドの溶融転移の示差熱量測定によって実証された)。ジアニリン硬化剤[例えば、4、4’−(1,3−フェニレンジオキシ)ジアニリン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、又は2,2−ビス[4(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン]で重合した場合、BMPN重合ネットワークは209℃のE’開始及び229℃のtanδピークを有することが確認された。したがって、BMPNホモポリマーネットワークのガラス転移温度は、他のPN樹脂よりも実質的に低い。
【0042】
T
g改質樹脂として、BMPNは、BPPN及びBTPNと比較して、より高T
gのネットワーク形成樹脂とのフタロニトリル樹脂ブレンドの配合において、脱オートクレーブ硬化可能な300℃未満のガラス転移温度の達成に最も有用であることが証明された。BMPN/RPNブレンドのガラス転移温度も、樹脂ブレンド組成物の線形結合を下回ることが意外にも確認され、BMPNが高T
g生成PN樹脂のT
gの抑制に有効な樹脂であることが示された(例えば、
図1の点線の理想線よりも下に位置する円を参照)。いずれかの実施形態では、レゾルシノールジフタロニトリルエーテル(RPN)樹脂のビスフェノールMジフタロニトリルエーテル(BMPN)樹脂に対する重量比は、10:90〜90:10(両端の値を含む)、又は15:85〜85:15(両端の値を含む)、又は25:75〜75:25(両端の値を含む)、又は30:70〜70:30(両端の値を含む)の範囲である。tanδピークが300℃未満のBMPNブレンドは、空気対流オーブン中で脱オートクレーブ条件下で硬化させることができた。300℃を超えて350℃までのより高い硬化温度は、脱オートクレーブで短いドウェル時間で達成することができる。オートクレーブ硬化が要求される、より大きな熱安定性が必要な場合、BMPNの量がより少ない樹脂ブレンドは、ガラス転移温度が350℃を超えるネットワークを生じる場合があり、これはBMPNの低い融解温度及び低速の結晶化時間を利用して、PN樹脂ブレンド(例えば、2コンポーネント及び多コンポーネントのブレンド)の加工を改善する一方で、なおも高いガラス転移温度を達成する。このように、本開示の少なくともいくつかの実施形態によると、様々な量のBMPNを有するPN重合ネットワークのT
gを、脱オートクレーブ硬化条件については300℃未満の温度に、オートクレーブ硬化が有益である超熱安定性については300℃を超える温度に、効果的に調整することができる。
【0043】
BMPN重合ネットワークの低いT
gにより、BMPNが、PN樹脂のT
gを、組成(例えば、BPPN及びBTPN)の関数として変更することも可能になる。BMPNが、より高T
gネットワーク形成樹脂のT
gを効果的に抑制できることは、BPPNと比較したときに意外である。これは同じ分子式を有するが、BPPNのパラ配置と比較して、中央フェニル環上にメタ配置で結合している。BMPNのメタ結合性は、BMPN硬化されたネットワークにおけるセグメント移動度に対して大きな影響を有することが見出されており、他のPN硬化されたネットワークと比較して有意に低いT
gと、PNブレンドネットワークのT
gを強く抑制できることを示唆する。
【0044】
本明細書に記載されるBTPN及びBMPNを組み込んだネットワークブレンドに関する結果は、樹脂ブレンド中のこれら2種の樹脂が、BPPN及び他の過去に研究されたPN樹脂と異なり、フタロニトリル樹脂及びそれらの重合ネットワークの使用を可能にし、促進できることを実証する。BTPN及びBMPNは、少なくともいくつかの高T
g形成PN樹脂のガラス転移温度を効率的に抑制することが確認されている。BMPNは、BMPN硬化されたホモポリマーネットワークが低T
gであることから、脱オートクレーブブレンドされたネットワークを生成するための樹脂ブレンド構成成分として、より好適である。BMPNは、他の低融点PN樹脂よりも結晶化を阻害するフタロニトリル樹脂ブレンドを製造するために有効な樹脂であり、構成成分樹脂の融解温度よりも低い温度での液体樹脂を可能にし、更に樹脂ブレンド組成の関数としてブレンドネットワークのガラス転移温度を制御可能に調節できることも示す。したがって、BMPNは、PN硬化されたポリマーネットワークのガラス転移温度の抑制において、一部の用途では、BTPNよりも好ましい樹脂である。
【0045】
いくつかの実施形態では、樹脂ブレンドが、少なくとも1種の追加のフタロニトリル樹脂を更に含む。追加のフタロニトリル樹脂の例としては、例えば、ビスフェノールAのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールAのビス(2,3−ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールAPのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールAFのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールBのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールBPのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールCのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールC2のビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールEのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールFのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル、3,3’,5,5’−テトラメチルビスフェノールFのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールFLのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールGのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールSのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールPのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールPHのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールTMCのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールZのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル、4,4’−ジヒドロキシビフェニルのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル、カテコールのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル、フェノールの3,4−ジシアノフェニルエーテル、フェノールの2,3−ジシアノフェニルエーテル、4−tert−ブチルフタロニトリル、4−ブトキシフタロニトリル、4−クミルフェノールの3,4−ジシアノフェニルエーテル、2−アリルフェノールの3,4−ジシアノフェニルエーテル、オイゲノールの3,4−ジシアノフェニルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、(2種類以上の樹脂の)樹脂ブレンドは、25℃で固体である。
【0046】
本開示の樹脂ブレンドは、任意に、1つ又は複数の硬化剤を含む。このような硬化剤は、アミン化合物を含むことが多い。所望により、様々な硬化剤の組み合わせを使用することができる。硬化剤は、典型的には、樹脂ブレンドの0〜40重量%の量で存在する。フタロニトリル重合を促進すると推定されるジアニリン系硬化剤の例としては、例えば、4,4’−(1,3−フェニレンジオキシ)ジアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンジオキシ)ジアニリン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェニル−1,1’−ジイルジオキシ)ジアニリン、4,4’−(1,3−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(1,1’−ビフェニル−4,4’−ジイルジオキシ)ジアニリン、4,4’−メチレンジアニリン、4,4’−メチレン−ビス(2−メチルアニリン)、3,3’−メチレンジアニリン、3,4’−メチレンジアニリン、4,4’−オキシジアニリン、4,4’−(イソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(p−フェニレンオキシ)ジアニリン、4,4’−ジアミノベンゾフェノンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
特定の他の任意による添加剤も更に含んでもよく、例えば、強化剤、充填剤、及びこれらの組み合わせが含まれる。このような添加剤は、様々な機能を提供する。例えば、有機粒子などの強靭化剤は、硬化を妨げることなく、硬化後に、組成物に強度を追加し得る。1つの化合物が、2つ以上の異なる機能を形成してもよいことは、当業者に理解されよう。例えば、化合物は、強靭化剤及び充填剤の両方として機能してもよい。いくつかの実施形態では、このような添加剤は、樹脂ブレンドの樹脂と反応しない。いくつかの実施形態では、このような添加剤は、反応性官能基を、特に末端基として含んでもよい。このような反応性官能基の例としては、これらに限定されないが、アミン、チオール、アルコール、エポキシド、ビニル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0048】
本開示の樹脂ブレンドにおいて有用な強靭化剤は、ゴム相及び熱可塑性相の両方を有するポリマー化合物であり、例えば、重合ジエンゴム状コア及びポリアクリレートポリメタクリレートシェルを有するグラフトポリマー、ポリアクリレート又はポリメタクリレートシェルを有する、ゴム状のポリアクリレートコアを有するグラフトポリマー、並びにフリーラジカル重合性モノマー及び共重合性ポリマー安定剤からエポキシド中にてin situで重合されるエラストマー粒子である。
【0049】
米国特許第3,496,250号(Czerwinski)に開示されるように、第1の種類の有用な強靭化剤の例としては、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのシェル、モノビニル芳香族炭化水素、又はこれらの混合物がグラフト化されている重合されたジエンゴム状骨格又はコアを有する、グラフトコポリマーが挙げられる。例示的なゴム状骨格は、重合されたブタジエン又はブタジエン及びスチレンの重合された混合物を含む。重合されたメタクリル酸エステルを含む例示的なシェルは、低級アルキル(C1〜C4)で置換されたメタクリレートである。例示的なモノビニル芳香族炭化水素は、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、エチルビニルベンゼン、イソプロピルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、及びエチルクロロスチレンである。グラフトコポリマーは、触媒に害となる官能基を含有しないことが重要である。
【0050】
第2の種類の有用な強化剤の例は、アクリレートコア−シェルグラフトコポリマーであり、ここで、コア又は骨格鎖は0℃未満のガラス転移温度を有するポリアクリレートポリマー、例えば、ポリメチルメタクリレート等の25℃超のガラス転移温度を有するポリメタクリレートポリマー(シェル)がグラフト化されたポリブチルアクリレート又はポリイソオクチルアクリレートである。
【0051】
本発明において有用な第3の部類の強靭化剤は、組成物の他の構成成分と混合する前に、25℃未満のガラス転移温度(T
g)を有するエラストマー粒子を含む。これらのエラストマー粒子は、フリーラジカル重合性モノマー及び共重合性ポリマー安定剤から重合される。フリーラジカル重合性モノマーは、ジオール、ジアミン、及びアルカノールアミンなどの共反応性二官能性水素化合物と組み合わせた、エチレン性不飽和モノマー又はジイソシアネートである。
【0052】
有用な強靭化剤としては、コアが架橋スチレン/ブタジエンゴムであり、シェルがポリメチルアクリレートである、メタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)コポリマーなどのコア/シェルポリマー(例えば、Rohm and Haas(Philadelphia,PA)から入手可能なACRYLOID KM653及びKM680)、ポリブタジエンを含むコアと、ポリ(メチルメタクリレート)を含むシェルと、を有するもの(例えば、Kaneka Corporation(Houston,TX)から入手可能なKANE ACE M511、M521、B11A、B22、B31、及びM901、並びにATOFINA(Philadelphia,PA)から入手可能なCLEARSTRENGTH C223)、ポリシロキサンコア及びポリアクリレートシェルを有するもの(例えば、ATOFINAから入手可能なCLEARSTRENGTH S−2001、及びWacker−Chemie GmbH,Wacker Silicones(Munich,Germany)から入手可能なGENIOPERL P22)、ポリアクリレートコア及びポリ(メチルメタクリレート)シェルを有するもの(例えば、Rohm and Haasから入手可能なPARALOID EXL2330、及び武田薬品工業(大阪)から入手可能なSTAPHYLOID AC3355及びAC3395)、MBSコア及びポリ(メチルメタクリレート)シェルを有するもの(例えば、Rohm and Haasから入手可能なPARALOID EXL2691A、EXL2691、及びEXL2655)など、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0053】
上記で使用したように、アクリルコア/シェル材料のための「コア」は、0℃未満のT
gを有するアクリルポリマーであることが理解され、「シェル」は、25℃より高いT
gを有するアクリルポリマーであることが理解されよう。
【0054】
他の有用な強靭化剤としては、B.F.Goodrich Chemical Co.からの商標名HYCAR CTBN 1300X8、ATBN 1300X16、及びHYCAR 1072で入手可能なものなどのカルボキシ化されたアミン末端のアクリロニトリル/ブタジエン加硫性エラストマー前駆物質、商標名HYCAR CTBで入手可能なものなどのブタジエンポリマー、3M Co.(St.Paul,MN)からの分子量10,000の一級アミン末端化合物であるHCl101(すなわちポリテトラメチレンオキサイドジアミン)、及びHuntsman Chemical Co.(Houston,TX)からの商標名JEFFAMINEで入手可能なものなどのアミン官能性ポリエーテルが挙げられる。有用な液体ポリ−ブタジエンヒドロキシル末端樹脂としては、Petroflex(Wilmington,DE)からLIQUIFLEXの商標名で、及びSartomer(Exton,PN)からHT45の商標名で入手可能なものが挙げられる。
【0055】
強化剤は、エポキシ末端化合物を含んでもよく、これは、ポリマー骨格に組み込まれ得る。典型的な、好ましい強化剤の一覧には、アクリルコア/シェルポリマー、スチレン−ブタジエン/メタクリレートコア/シェルポリマー、ポリエーテルポリマー、カルボキシル化アクリロニトリル/ブタジエン、及びカルボキシル化ブタジエンが挙げられる。エポキシ樹脂を持つ化合物内の鎖延長剤の提供から、上述した強靭化剤が無くとも、利点を得ることができる。しかし、特定の利点は、前に示唆したように、強靭化剤の存在又は異なる薬剤の組み合わせから得られる。
【0056】
所望の場合、強靭化剤の様々な組み合わせを用い得る。使用する場合、強靭化剤は少なくとも3重量%、又は少なくとも5重量%の量で樹脂ブレンド中に存在する。使用する場合、強靭化剤は35重量%以下、又は25重量%以下の量で樹脂ブレンド中に存在する。
【0057】
その他の任意による添加剤又は補助剤は、所望のように、組成物に添加されてもよい。このようなその他の任意による添加剤の例としては、着色剤、酸化防止安定剤、熱分解安定剤、光安定剤、流動化剤、増粘剤、艶消し剤、不活性充填剤、結合剤、発泡剤、殺真菌剤、殺菌剤、界面活性剤、可塑化剤、ゴム強化剤、及び当業者に既知のその他の添加剤が挙げられる。このような添加剤は、典型的には、実質的に非反応性である。存在する場合、これらの補助剤は、又はその他の任意による添加剤は、それらの意図された目的に有効な量で加えられる。
【0058】
好適な充填材料の例としては、強化等級カーボンブラック、フルオロプラスチック、粘土、及びこれらのいずれかの任意の割合での任意の組み合わせが挙げられる。
【0059】
本明細書で使用する場合、語句「強化等級カーボンブラック」は、約10ミクロン未満の平均粒径を有する任意のカーボンブラックを含む。強化等級カーボンブラックに関するいくつかの特に好適な平均粒径は、約9nm〜約40nmの範囲である。強化等級ではないカーボンブラックとしては、平均粒径が約40nmより大きいカーボンブラックが挙げられる。カーボンナノチューブもまた、有用な充填剤である。カーボンブラック充填剤は、典型的には、組成物の伸長、硬度、磨耗耐性、伝導度、及び加工性のバランスをとるため、用いられる。好適な例としては、MTブラックス(メディアム・サーマル・ブラック)(名称:N−991、N−990、N−908、及びN−907)、FEF N−550、並びに大粒径ファーネスブラックが挙げられる。
【0060】
その他の有用な充填剤としては、ケイソウ土、硫酸バリウム、タルク、及びフッ化カルシウムが挙げられる。任意的な構成成分の選択及び量は、特定の用途の必要性に依存する。
【0061】
組成物を硬化させるための反応条件は、用いられる反応物質及び量に依存し、当業者が決定することができる。硬化性組成物は、レゾルシノールジフタロニトリルエーテル樹脂とビスフェノールMジフタロニトリルエーテル樹脂及び/又はビスフェノールTジフタロニトリルエーテル樹脂とを、任意の順序で混合することによって製造される。一般的に、その後、組成物を約50〜350℃、好ましくは約130〜350℃の温度で約1〜480分間加熱する。より多くの割合のフタロニトリル樹脂を含むブレンドのいくつかは、最終的な性能を達成するために、最高350℃の温度での後硬化が必要な場合がある。
【0062】
本発明の組成物を硬化するための好適な熱源としては、誘導加熱コイル、オーブン、ホットプレート、ヒートガン、レーザを含む赤外線源、マイクロ波源が挙げられる。
【0063】
溶媒は、加工助剤として使用することが可能である。有用な溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン及びシクロヘキサノン等のケトン;アセトアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン等のアミド;テトラメチレンスルホン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン、ブタジエンスルホン、メチルスルホン、エチルスルホン、プロピルスルホン、ブチルスルホン、メチルビニルスルホン、2−(メチルスルホニル)エタノール、2,2’−スルホニルジエタノール等のスルホン;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及びビニレンカーボネート等の環状カーボネート;エチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、メチルホルメート等のカルボン酸エステル;並びにテトラヒドロフラン、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、ニトロメタン、グリコールサルファイト及び1,2−ジメトキシエタン(グリム)等のその他の溶媒である。
【0064】
樹脂ブレンドを含む様々な実施形態を提供する。
【0065】
実施形態1は、レゾルシノールジフタロニトリルエーテル樹脂とビスフェノールMジフタロニトリルエーテル樹脂とのブレンドを含む樹脂ブレンドである。ビスフェノールMジフタロニトリルエーテル樹脂は、式Iのものである:
【化6】
【0066】
実施形態2は、レゾルシノールジフタロニトリルエーテル樹脂のビスフェノールMジフタロニトリルエーテル樹脂に対する重量比が、10:90〜90:10の範囲(両端の値を含む)である、実施形態1に記載の樹脂ブレンドである。
【0067】
実施形態3は、レゾルシノールジフタロニトリルエーテル樹脂のビスフェノールMジフタロニトリルエーテル樹脂に対する重量比が、15:85〜85:15の範囲(両端の値を含む)である、実施形態1又は2に記載の樹脂ブレンドである。
【0068】
実施形態4は、レゾルシノールジフタロニトリルエーテル樹脂のビスフェノールMジフタロニトリルエーテル樹脂に対する重量比が、30:70〜70:30の範囲(両端の値を含む)である、実施形態1〜3のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0069】
実施形態5は、少なくとも1種の添加剤を更に含む、実施形態1〜4のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0070】
実施形態6は、少なくとも1種の添加剤が、触媒、硬化剤、強化剤、充填剤、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態5に記載の樹脂ブレンドである。
【0071】
実施形態7は、硬化剤が、アミンを含む、実施形態6に記載の樹脂ブレンドである。
【0072】
実施形態8は、硬化剤が、アニリン官能性残基(aniline functional residue)を含む、実施形態5又は6に記載の樹脂ブレンドである。
【0073】
実施形態9は、硬化剤が、4,4’−(1,3−フェニレンジオキシ)ジアニリンを含む、実施形態6〜8のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0074】
実施形態10は、硬化剤が、樹脂ブレンドの0〜40重量%の量で存在する、実施形態6〜9のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0075】
実施形態11は、少なくとも1種の添加剤が、強化剤を含む、実施形態6〜10のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0076】
実施形態12は、樹脂ブレンドが、25℃で固体である、実施形態1〜11のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0077】
実施形態13は、樹脂ブレンドが、少なくとも1種の追加のフタロニトリル樹脂を更に含む、実施形態1〜12のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0078】
実施形態14は、レゾルシノールジフタロニトリルエーテル樹脂とビスフェノールTジフタロニトリルエーテル樹脂とのブレンドを含む樹脂ブレンドであって、ビスフェノールTジフタロニトリルエーテル樹脂が式IIのものである、樹脂ブレンドである:
【化7】
【0079】
実施形態15は、レゾルシノールジフタロニトリルエーテル樹脂のビスフェノールTジフタロニトリルエーテル樹脂に対する重量比が、10:90〜90:10の範囲(両端の値を含む)である、実施形態14に記載の樹脂ブレンドである。
【0080】
実施形態16は、レゾルシノールジフタロニトリルエーテル樹脂のビスフェノールTジフタロニトリルエーテル樹脂に対する重量比が、15:85〜85:15の範囲(両端の値を含む)である、実施形態14又は15に記載の樹脂ブレンドである。
【0081】
実施形態17は、レゾルシノールジフタロニトリルエーテル樹脂のビスフェノールTジフタロニトリルエーテル樹脂に対する重量比が、30:70〜70:30の範囲(両端の値を含む)である、実施形態14〜16のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0082】
実施形態18は、少なくとも1種の添加剤を更に含む、実施形態14〜17のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0083】
実施形態19は、少なくとも1種の添加剤が、触媒、硬化剤、強化剤、充填剤、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態18に記載の樹脂ブレンドである。
【0084】
実施形態20は、硬化剤が、アミンを含む、実施形態19に記載の樹脂ブレンドである。
【0085】
実施形態21は、硬化剤が、アニリン官能性残基を含む、実施形態19又は20に記載の樹脂ブレンドである。
【0086】
実施形態22は、硬化剤が、4,4’−(1,3−フェニレンジオキシ)ジアニリンを含む、実施形態19〜21のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0087】
実施形態23は、硬化剤が、樹脂ブレンドの0〜40重量%の量で存在する、実施形態19〜22のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0088】
実施形態24は、少なくとも1種の添加剤が、強化剤を含む、実施形態19〜23のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0089】
実施形態25は、樹脂ブレンドが、25℃で固体である、実施形態14〜24のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0090】
実施形態26は、樹脂ブレンドが、少なくとも1種の追加のフタロニトリル樹脂を更に含む、実施形態14〜25のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【実施例】
【0091】
以下の実施例によって、本発明の目的及び利点を更に例示するが、これらの実施例で列挙される特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に限定するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は説明目的のためのものにすぎず、添付の「特許請求の範囲」の範囲を限定することを意図するものではない。別途注記のない限り、実施例において使用される全ての化学物質はSigma−Aldrich Corp.(Saint Louis,MO)から得ることができる。
【0092】
方法:
示差走査熱量計(DSC)による硬化反応時の発熱測定方法
TA Instruments QシリーズDSC(TA Instruments(New Castle,DE)から入手した)を使用した。約5mgの樹脂を、アルミニウムDSCパン内に量り取った。試料パンをDSC装置内に入れ、試料の熱流を、1℃毎分(℃/分)又は10℃/分のいずれかの昇温速度にて、動的DSC測定で測定した。
【0093】
動的機械分析器(DMA)による剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)の測定方法
TA Instruments QシリーズDMA(TA Instruments(New Castle,DE)から入手した)を使用した。動的機械測定は、単一片持ち梁形状(single cantilever beam geometry)又は引張形状のいずれかを使用して実施した。1Hzの周波数で20μmの制御された変形振幅にて、振動制御された力を加えたときに、低ひずみ同相及び位相外れの変形応答を測定し、得られる貯蔵弾性率及び損失弾性率、並びに損失正接を計算した。温度は、ガラスからゴムへの転移温度範囲にわたって、3℃/分又は5℃/分のいずれかで昇温させた。
【0094】
熱重量分析器(TGA)による重量損失の測定方法
TA Instruments QシリーズTGA(TA Instruments(New Castle,DE)から入手した)を使用した。約5〜10mgの試料を白金パン上にのせ、TGA内に入れた。試料の質量損失を、大気雰囲気下及び窒素雰囲気下にて、1℃/分の昇温速度で測定した。
【0095】
調製例A(BMPN)
ビスフェノールMジフタロニトリルエーテル(すなわち、ビスフェノールMのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル)を、4−ニトロフタロニトリル及びビスフェノールMの求核置換反応から誘導した。500mL三つ口反応フラスコに、18g(0.104mol)の4−ニトロフタロニトリル、18.02g(0.52mol)のビスフェノールM、28.74g(0.208mol)の無水K
2CO
3、及び180gの乾燥DMSOを添加し、室温にて窒素雰囲気下で48時間撹拌した。反応溶液を600mLの撹拌脱イオン水中に注ぎ、未溶解塩を反応フラスコ内に残した。沈殿生成物を吸引濾過によってブフナー漏斗で回収した。沈殿物を200mLのメタノールに添加し、30分間撹拌して不純物を除去した。固体生成物を、吸引濾過によってブフナー漏斗で2回目の回収をし、200mLのメタノールで洗浄した。生成物を回収し、対流式オーブン内で120℃で乾燥した。生成物は、28.42g(91.3%)で、融解温度が160℃であり、赤外線分析により所望の化合物と同定された。
【0096】
調製例B(RPN)
レゾルシノールジフタロニトリルエーテル(すなわち、レゾルシノールのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル)を、4−ニトロフタロニトリル及びレゾルシノールの求核置換反応から誘導した。500mL三つ口反応フラスコに、18g(0.104mol)の4−ニトロフタロニトリル、5.72g(0.52mol)のレゾルシノール、28.74g(0.208mol)の無水K
2CO
3、及び180gの乾燥DMSOを添加し、室温にて窒素雰囲気下で48時間撹拌した。反応溶液を600mLの撹拌脱イオン水中に注ぎ、未溶解塩を反応フラスコ内に残した。沈殿生成物を吸引濾過によってブフナー漏斗で回収した。沈殿物を200mLのメタノールに添加し、30分間撹拌して不純物を除去した。固体生成物を、吸引濾過によってブフナー漏斗で2回目の回収をし、200mLのメタノールで洗浄する。生成物を回収し、対流式オーブン内で120℃で乾燥した。生成物は、17g(90.3%)で、融解温度が185℃であり、赤外線分析により所望の化合物と同定された。
【0097】
調製例C(BTPN)
ビスフェノールTジフタロニトリルエーテル(すなわち、ビスフェノールTのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル)を、4−ニトロフタロニトリル及びビスフェノールTの求核置換反応から誘導した。500mL三つ口反応フラスコに、18g(0.104mol)の4−ニトロフタロニトリル、11.34g(0.52mol)のビスフェノールT、28.74g(0.208mol)の無水K
2CO
3、及び180gの乾燥DMSOを添加し、室温にて窒素雰囲気下で48時間撹拌した。反応溶液を600mLの撹拌脱イオン水中に注ぎ、未溶解塩を反応フラスコ内に残した。沈殿生成物を吸引濾過によってブフナー漏斗で回収した。沈殿物を200mLのメタノールに添加し、30分間撹拌して不純物を除去した。固体生成物を、吸引濾過によってブフナー漏斗で2回目の回収をし、200mLのメタノールで洗浄した。生成物を回収し、対流式オーブン内で120℃で乾燥した。生成物は、21.6g(89.1%)で、融解温度が178℃であり、赤外線分析により所望の化合物と同定された。
【0098】
調製例D(BPPN)
ビスフェノールPジフタロニトリルエーテル(すなわち、ビスフェノールPのビス(3,4−ジシアノフェニル)エーテル)は、4−ニトロフタロニトリル及びレゾルシノールの求核置換反応から誘導した。250mL三つ口反応フラスコに、9.1g(0.052mol)の4−ニトロフタロニトリル、9.11g(0.026mol)のビスフェノールM、14.53g(0.105mol)の無水K
2CO
3、及び90gの乾燥DMSOを添加し、室温にて窒素雰囲気下で48時間撹拌した。反応溶液を300mLの撹拌脱イオン水中に注ぎ、未溶解塩を反応フラスコ内に残した。沈殿生成物を吸引濾過によってブフナー漏斗で回収した。沈殿物を100mLのメタノールに添加し、30分間撹拌して不純物を除去した。固体生成物を、吸引濾過によってブフナー漏斗で2回目の回収をし、100mLのメタノールで洗浄した。生成物を回収し、対流式オーブン内で120℃で乾燥した。生成物は、13.2g(83.9%)で、融解温度が213℃であり、赤外線分析により所望の化合物と同定された。
【0099】
実施例1(Ex1)
BMPN/RPN(2/1)ブレンド
質量比2/1のBMPNとRPN8.0gを、直径70mmの平底薄板アルミニウムパン内で190℃の温度で溶融ブレンドした。この樹脂ブレンドに、4,4’−(1,3−フェニレンオキシ)アニリンを、樹脂100質量部当たり4質量部(pph)添加し、190℃で樹脂に混ぜ込んだ。樹脂を空気循環オーブンに入れて、230℃で2時間及び300℃で5時間硬化し、設定点の間は3℃毎分(℃/分)で昇温した。樹脂は、熱硬化性のネットワーク重合を起こして、硬質の剛性固体になった。固体を5℃/分で40℃まで冷却し、アルミニウムパンから取り出した。単一片持ち梁形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料をストリップへと切断した。DMA試料を、350℃まで3℃/分で加熱昇温した。試料を、不活性窒素雰囲気下、350℃で1時間更に後硬化し、2回目のDMA測定を350℃まで実施し、残留硬化による試料の機械的応答の変化をモニターした。機械的応答には変化は見られなかった。実施例1のデータを下の表1Aに示す。
【0100】
実施例2(Ex2)
BTPN/RPN(2/1)ブレンド
BTPNとRPNとの質量比2/1のブレンド8.0gを、直径70mmの平底薄板アルミニウムパン内で190℃の温度で溶融ブレンドした。この樹脂ブレンドに、4,4’−(1,3−フェニレンオキシ)アニリンを、4pph(質量部)添加し、190℃で樹脂に混ぜ込んだ。樹脂を空気循環オーブンに入れて、230℃で2時間及び300℃で5時間硬化し、設定点の間は3℃/分で昇温した。樹脂は、熱硬化性のネットワーク重合を起こして、硬質の剛性固体になった。固体を5℃/分で40℃まで冷却し、アルミニウムパンから取り出した。試料を、管状炉内で窒素気流下、350℃で1時間、更に後硬化し(設定点の間は3℃/分の勾配とした)、その後5℃/分で40℃まで冷却した。単一片持ち梁形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料をストリップへと切断した。DMA試料を、350℃まで3℃/分で加熱昇温した。試料を、不活性窒素雰囲気下、375℃で1時間更に後硬化し、2回目のDMA測定を350℃まで実施し、残留硬化による試料の機械的応答の変化をモニターした。機械的応答には変化は見られなかった。実施例2のデータを下の表1Cに示す。
【0101】
実施例3(Ex3)
BTPN/RPN(1/2)ブレンド
BTPNとRPNとの質量比1/2のブレンド8.0gを、直径70mmの平底薄板アルミニウムパン内で190℃の温度で溶融ブレンドした。この樹脂ブレンドに、4,4’−(1,3−フェニレンオキシ)アニリンを、4pph(質量部)添加し、190℃で樹脂に混ぜ込んだ。樹脂を空気循環オーブンに入れて、230℃で2時間及び300℃で5時間硬化し、設定点の間は3℃/分で昇温した。樹脂は、熱硬化性のネットワーク重合を起こして、硬質の剛性固体になった。固体を5℃/分で40℃まで冷却し、アルミニウムパンから取り出した。試料を、管状炉内で窒素気流下、350℃で1時間及び375℃で1時間更に後硬化し(設定点の間は3℃/分で昇温した)、その後5℃/分で40℃まで冷却した。単一片持ち梁形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料をストリップへと切断した。DMA試料に、3℃/分で400℃までの加熱昇温を2回実施し、残留硬化による試料の機械的応答の変化をモニターした。機械的応答には変化は見られなかった。実施例3のデータを下の表1Cに示す。
【0102】
実施例4(Ex4)
BMPN/RPN(1/1)ブレンド
BMPNとRPNとの質量比1/1のブレンド8.0gを、直径70mmの平底薄板アルミニウムパン内で190℃の温度で溶融ブレンドした。この樹脂ブレンドに、4,4’−(1,3−フェニレンオキシ)アニリンを、4pph(質量部)添加し、190℃で樹脂に混ぜ込んだ。樹脂を空気循環オーブンに入れて、230℃で2時間及び300℃で5時間硬化し、設定点の間は3℃/分で昇温した。樹脂は、熱硬化性のネットワーク重合を起こして、硬質の剛性固体になった。固体を5℃/分で40℃まで冷却し、アルミニウムパンから取り出した。試料を、管状炉内で窒素気流下、350℃で1時間及び375℃で1時間更に後硬化し(設定点の間は3℃/分で昇温した)、その後5℃/分で40℃まで冷却した。単一片持ち梁形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料をストリップへと切断した。DMA試料に、3℃/分で400℃までの加熱昇温を2回実施し、残留硬化による試料の機械的応答の変化をモニターした。機械的応答には変化は見られなかった。実施例4のデータを下の表1Aに示す。
【0103】
実施例5(Ex5)
BMPN/RPN(1/2)ブレンド
BMPNとRPNとの質量比1/2のブレンド8.0gを、直径70mmの平底薄板アルミニウムパン内で190℃の温度で溶融ブレンドした。この樹脂ブレンドに、4,4’−(1,3−フェニレンオキシ)アニリンを、4pph(質量部)添加し、190℃で樹脂に混ぜ込んだ。樹脂を空気循環オーブンに入れて、230℃で2時間及び300℃で5時間硬化し、設定点の間は3℃/分で昇温した。樹脂は、熱硬化性のネットワーク重合を起こして、硬質の剛性固体になった。固体を5℃/分で40℃まで冷却し、アルミニウムパンから取り出した。試料を、管状炉内で窒素気流下、350℃で1時間及び375℃で1時間更に後硬化し(設定点の間は3℃/分で昇温した)、その後5℃/分で40℃まで冷却した。単一片持ち梁形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料をストリップへと切断した。DMA試料に、3℃/分で400℃までの加熱昇温を2回実施し、残留硬化による試料の機械的応答の変化をモニターした。機械的応答には変化は見られなかった。実施例5のデータを下の表1Aに示す。
【0104】
実施例6(Ex6)
BMPN/BTPN(2/1)ブレンド
BMPNとBTPNとの質量比2/1のブレンド8.0gを、直径70mmの平底薄板アルミニウムパン内で190℃の温度で溶融ブレンドした。この樹脂ブレンドに、4,4’−(1,3−フェニレンオキシ)アニリンを、4pph(質量部)添加し、190℃で樹脂に混ぜ込んだ。樹脂を空気循環オーブンに入れて、230℃で2時間及び300℃で5時間硬化し、設定点の間は3℃/分で昇温した。樹脂は、熱硬化性のネットワーク重合を起こして、硬質の剛性固体になった。固体を5℃/分で40℃まで冷却し、アルミニウムパンから取り出した。単一片持ち梁形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料をストリップへと切断した。DMA試料を、350℃まで3℃/分で加熱昇温した。試料を、不活性窒素雰囲気下、350℃で1時間更に後硬化し、2回目のDMA測定を350℃まで実施し、残留硬化による試料の機械的応答の変化をモニターした。機械的応答には変化は見られなかった。実施例8のデータを下の表1Dに示す。
【0105】
実施例7(Ex7)
BMPN/BPPN(2/1)ブレンド
BMPNとBPPNとの質量比2/1のブレンド8.0gを、直径70mmの平底薄板アルミニウムパン内で230℃の温度で溶融ブレンドした。この樹脂ブレンドに、4,4’−(1,3−フェニレンオキシ)アニリンを、4pph(質量部)添加し、230℃で樹脂に混ぜ込んだ。樹脂を空気循環オーブンに入れて、230℃で2時間及び300℃で5時間硬化し、設定点の間は3℃/分で昇温した。樹脂は、熱硬化性のネットワーク重合を起こして、硬質の剛性固体になった。固体を5℃/分で40℃まで冷却し、アルミニウムパンから取り出した。単一片持ち梁形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料をストリップへと切断した。DMA試料を、350℃まで3℃/分で加熱昇温した。試料を、不活性窒素雰囲気下、350℃で1時間更に後硬化し、2回目のDMA測定を350℃まで実施し、残留硬化による試料の機械的応答の変化をモニターした。機械的応答には変化は見られなかった。実施例8のデータを下の表1Dに示す。
【0106】
実施例8(Ex8)
BMPN/BTPN/RPN(1/1/1)ブレンド
BMPN、BTPN、及びRPNの質量比1/1/1のブレンド8.0gを、直径70mmの平底薄板アルミニウムパン内で190℃の温度で溶融ブレンドした。この樹脂ブレンドに、4,4’−(1,3−フェニレンオキシ)アニリンを、4pph(質量部)添加し、190℃で樹脂に混ぜ込んだ。樹脂を空気循環オーブンに入れて、230℃で2時間及び300℃で5時間硬化し、設定点の間は3℃/分で昇温した。樹脂は、熱硬化性のネットワーク重合を起こして、硬質の剛性固体になった。固体を5℃/分で40℃まで冷却し、アルミニウムパンから取り出した。試料を、管状炉内で窒素気流下、350℃で1時間及び375℃で1時間更に後硬化し(設定点の間は3℃/分で昇温した)、5℃/分で40℃まで冷却した。単一片持ち梁形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料をストリップへと切断した。DMA試料に、3℃/分で400℃までの加熱昇温を2回実施し、残留硬化による試料の機械的応答の変化をモニターした。機械的応答には変化は見られなかった。実施例8のデータを下の表1Dに示す。
【0107】
比較例1(CE1)
RPN
8.0gのRPNを、直径70mmの平底薄板アルミニウムパン内で190℃の温度で溶融した。この樹脂に、4,4’−(1,3−フェニレンオキシ)アニリンを、4pph(質量部)添加し、190℃で樹脂に混ぜ込んだ。樹脂を空気循環オーブンに入れて、230℃で2時間及び300℃で5時間硬化し、設定点の間は3℃/分で昇温した。樹脂は、熱硬化性のネットワーク重合を起こして、硬質の剛性固体になった。固体試料を5℃/分で40℃まで冷却し、アルミニウムパンから取り出した。試料を、管状炉内で窒素気流下、350℃で1時間、375℃で1時間、及び400℃で30分間更に後硬化し(設定点の間は3℃/分で昇温した)、5℃/分で40℃まで冷却した。単一片持ち梁形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料をストリップへと切断した。DMA試料に、3℃/分で450℃までの加熱昇温を2回実施し、高温での残留硬化をモニターした。試料は、2回目の昇温時に400℃を超える温度で剛性増加を明白に示した。比較例1のデータを、下の表1A、1B、及び1Cに示す。
【0108】
比較例2(CE2)
BTPN
8.0gのBTPNを、直径70mmの平底薄板アルミニウムパン内で190℃の温度で溶融した。この樹脂に、4,4’−(1,3−フェニレンオキシ)アニリンを、4pph(質量部)添加し、190℃で樹脂に混ぜ込んだ。樹脂を空気循環オーブンに入れて、230℃で2時間及び300℃で5時間硬化し、設定点の間は3℃/分で昇温した。樹脂は、熱硬化性のネットワーク重合を起こして、硬質の剛性固体になった。固体試料を5℃/分で40℃まで冷却し、アルミニウムパンから取り出した。試料を、管状炉内で窒素気流下、350℃で1時間、更に後硬化し、5℃/分で40℃まで冷却した。単一片持ち梁形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料をストリップへと切断した。DMA試料を、350℃まで3℃/分で加熱昇温した。試料を、不活性窒素雰囲気下、375℃で1時間更に後硬化し、2回目のDMA測定を350℃まで実施し、残留硬化による試料の機械的応答の変化をモニターした。機械的応答には変化は見られなかった。比較例2のデータを下の表1Cに示す。
【0109】
比較例3(CE3)
BPPN
8.0gのBPPNを、直径70mmの平底薄板アルミニウムパン内で230℃の温度で溶融した。この樹脂ブレンドに、4,4’−(1,3−フェニレンオキシ)アニリンを、4pph(質量部)添加し、230℃で樹脂に混ぜ込んだ。樹脂を空気循環オーブンに入れて、230℃で2時間及び300℃で5時間硬化し、設定点の間は3℃/分で昇温した。樹脂は、熱硬化性のネットワーク重合を起こして、硬質の剛性固体になった。固体試料を5℃/分で40℃まで冷却し、アルミニウムパンから取り出した。単一片持ち梁形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料をストリップへと切断した。DMA試料を、350℃まで3℃/分で加熱昇温した。試料を、不活性窒素雰囲気下、375℃で1時間更に後硬化し、2回目のDMA測定を350℃まで実施し、残留硬化による試料の機械的応答の変化をモニターした。機械的応答には変化は見られなかった。比較例3のデータを下の表1Bに示す。
【0110】
比較例4(CE4)
BMPN
8.0gのBMPNを、直径70mmの平底薄板アルミニウムパン内で190℃の温度で溶融した。この樹脂に、4,4’−(1,3−フェニレンオキシ)アニリンを、4pph(質量部)添加し、190℃で樹脂に混ぜ込んだ。樹脂を空気循環オーブンに入れて、230℃で15時間及び300℃で5時間硬化し、設定点の間は3℃/分で昇温した。樹脂は、熱硬化性のネットワーク重合を起こして、硬質の剛性固体になった。固体試料を5℃/分で40℃まで冷却し、アルミニウムパンから取り出した。単一片持ち梁形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料をストリップへと切断した。DMA試料を、350℃まで3℃/分で加熱昇温した。試料を、不活性窒素雰囲気下、350℃で2時間更に後硬化し、2回目のDMA測定を350℃まで実施し、残留硬化による試料の機械的応答の変化をモニターした。機械的応答には変化は見られなかった。比較例4のデータを下の表1Aに示す。
【0111】
比較例5(CE5)
BPPN/RPN(2/1)ブレンド
BPPNとRPNとの質量比2/1のブレンド8.0gを、直径70mmの平底薄板アルミニウムパン内で230℃の温度で溶融ブレンドした。この樹脂ブレンドに、4,4’−(1,3−フェニレンオキシ)アニリンを、4pph(質量部)添加し、230℃で樹脂に混ぜ込んだ。樹脂を空気循環オーブンに入れて、230℃で2時間及び300℃で5時間硬化し、設定点の間は3℃/分で昇温した。樹脂は、熱硬化性のネットワーク重合を起こして、硬質の剛性固体になった。固体を5℃/分で40℃まで冷却し、アルミニウムパンから取り出した。試料を、管状炉内で窒素気流下、375℃で2時間、更に後硬化し(設定点の間は3℃/分で昇温した)、5℃/分で40℃まで冷却した。単一片持ち梁形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料をストリップへと切断した。DMA試料に、3℃/分で400℃までの加熱昇温を2回実施し、残留硬化による試料の機械的応答の変化をモニターした。機械的応答には変化は見られなかった。比較例5のデータを下の表1Bに示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0112】
本明細書では特定の例示的な実施形態について詳細に説明してきたが、当業者には上述の説明を理解した上で、これらの実施形態の修正形態、変形形態、及び均等物を容易に想起できることが、諒解されるであろう。更には、本明細書で参照される全ての刊行物及び特許は、個々の刊行物又は特許を参照により組み込むことが詳細かつ個別に指示されている場合と同じ程度に、それらの全容が参照により組み込まれる。様々な例示的な実施形態について説明してきた。これらの実施形態及び他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に含まれる。