(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記平坦化膜は、前記駆動回路の上に積層された第1無機絶縁膜、前記第1無機絶縁膜の上に積層された有機絶縁膜、及び、前記有機絶縁膜の上に積層された第2無機絶縁膜を含んでおり、
前記有機絶縁膜が、前記有機絶縁膜における前記第2無機絶縁膜を向く表面の平坦性を向上させる添加剤を0.5質量%以上、5質量%以下の含有率で含んでいる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機EL表示装置。
前記平坦化膜は、前記駆動回路の上に積層された第1無機絶縁膜、前記第1無機絶縁膜の上に積層された有機絶縁膜、及び、前記有機絶縁膜の上に積層された第2無機絶縁膜を含んでおり、
前記第2無機絶縁膜の厚さは、前記有機絶縁膜における前記第2無機絶縁膜を向く表面の凹凸に基づいて変動し、
前記第2無機絶縁膜の最大の厚さは、前記有機絶縁膜の凹凸の最大高低差の2倍以上、3倍以下であり、前記第2無機絶縁膜の最小の厚さは、前記有機絶縁膜の凹凸の最大高低差の1倍以上、2倍以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機EL表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、駆動回路の駆動能力を高めるために鋭意検討を重ねた。そして、本発明者らは、駆動回路を構成する薄膜トランジスタのドレイン電極およびソース電極を、それぞれの一部が所定の方向に沿って並ぶように形成することによって、駆動能力を大幅に高めることができ、しかも、駆動回路を有機EL表示装置の一つの画素の領域内に形成し得ることを見出した。すなわち、そのようにドレイン電極とソース電極とを形成することによって、ドレイン電極とソース電極との間隔(チャネル長(L))を増大させることなく、両電極において対向している部分の長さ(チャネル幅(W))を長くすることができる。従って、チャネル幅とチャネル長との比(W/L)を大幅に、しかも所定の区画内で効率良く増大させることができ、その結果、大幅に増大された駆動能力を有する駆動回路を一つの画素内にレイアウトすることができる。
【0011】
また、本発明者らは、薄膜トランジスタにこのような構造を用いることによって、有機EL表示装置の駆動回路を構成する薄膜トランジスタのチャネルとなる半導体層を、ポリシリコン(具体的には低温ポリシコン:LTPS)ではなくアモルファスシリコンでも形成可能となることを見出した。すなわち、従来このような薄膜トランジスタの半導体層には、キャリア移動度の点で優れたLTPSが用いられている。しかし、本発明者らは、前述した各電極の構成を適用することによって、アモルファスシリコンからなる半導体層であっても有機EL表示装置の駆動回路において十分に機能し得ることを見出したのである。
【0012】
LTPSは、アモルファスシリコンの半導体層を形成した後、エキシマレーザの照射によるアニーリングをアモルファスシリコンに対して行い、それによりアモルファスシリコンを多結晶化することによって得られる。そのため、製造工程が複雑になり、このアニーリング工程が有機EL表示パネルの製造コストの低減を妨げている。加えて、エキシマレーザの照射に必要な設備は極めて高額であり、しかも、液晶表示装置の製造ラインで既に導入されているような第10世代を超えるようなマザー基板に適用可能な設備の実現性は見通されていない。また、駆動回路が形成される基板全面に均等にエキシマレーザを照射するのは極めて困難であり、そのため、基板上の所定の各区画においてそれぞれ多結晶化された複数のLTPSそれぞれの間で容易且つ大幅にキャリア移動度のばらつきが生じ、その結果、各薄膜トランジスタ間に容易にゲート閾値電圧などのばらつきが生じ得る。マザー基板の大型化の進展に伴って、マザー基板への均等なエキシマレーザの照射は益々困難となる。本発明者らは、前述した薄膜トランジスタの構造を用いることによって、有機EL表示パネルの駆動回路内の薄膜トランジスタの半導体層を、アニーリングを要しないアモルファスシリコンで形成し得ることを見出したのである。
【0013】
本発明者らは、さらに、基板の表面に形成されている駆動回路の表面の凹凸が有機発光素子内の有機膜における膜厚のばらつきなどを生じさせ、その結果、輝度ムラや色ムラなどが生じ得ることも見出した。詳述すると、駆動回路と有機発光素子との間には前述したように絶縁膜が設けられており、この絶縁膜によって、両者の電気的分離及び水分などの遮断と共に有機発光素子の下地の平坦化が図られている。しかしこの平坦化が、優れた表示品位を得るという観点からは必ずしも十分ではないことを本発明者らは見出したのである。このような絶縁膜(平坦化膜)の表面が十分に平坦でない場合、その上に電極を介して形成される有機膜の膜厚がばらつくことによって輝度ムラが生じたり、出射光のピーク強度を示す方向が表示面の法線方向からずれたりして表示ムラが引き起こされる。本発明者らは、有機発光素子の下地となる平坦化膜の表面のさらなる平坦化を図ることによって、表示ムラの発生を抑制し得ることを見出したのである。また、このように平坦化膜の表面のさらなる平坦化を図ることによって、有機発光素子の発光領域の下層に前述した構造の薄膜トランジスタが形成される場合でも、その表面の凹凸によって生じ得る表示ムラが抑制される。
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態の有機EL表示装置及び有機EL表示装置の製造方法を説明する。なお、以下に説明される実施形態における各構成要素の材質、形状、及び、それらの相対的な位置関係などはあくまで例示に過ぎない。本発明の有機EL表示装置及び有機EL表示装置の製造方法はこれらによって限定的に解釈されるものではない。
【0015】
〔有機EL表示装置〕
図1には、第1実施形態の有機EL表示装置1における駆動回路2の構成の一例が、それぞれ模式的に示されている有機EL表示パネル3、データ線ドライバ1d及び走査線ドライバ1gと共に示されている。有機EL表示パネル3は、マトリクス状に配置された複数の画素3aを有し、各画素3aに有機発光素子40及び駆動回路2が設けられている。
図1の例では、駆動回路2は、有機発光素子40の通電状態を切り換える駆動TFT20、駆動TFT20のオン/オフを切り換えるスイッチングTFT2a、及び駆動TFT20のゲート−ソース間電圧を保持する保持容量2bを含んでいる。駆動TFT20のドレインが電源線2pに、ソースが有機発光素子40の陽極に、そして、ゲートがスイッチングTFT2aのソースにそれぞれ接続されており、有機発光素子40の陰極は陰極配線27を介してグランドに接続されている。
【0016】
走査線ドライバ1gから各スイッチングTFT2aにゲート信号が送られると共に、データ線ドライバ1dから各スイッチングTFT2aを介して各駆動TFT20のゲートに表示画像のデータ信号が印加される。そのデータ信号の電圧に基づく電流が有機発光素子40に流れ、保持容量2bの作用によって1フレーム期間中所定の輝度で有機発光素子40が発光する。以下、一つの画素3aを含む有機EL表示パネル3の断面を示す
図2A〜
図2Cを参照しながら、本実施形態の有機EL表示装置1が説明される。なお、以下の説明では、駆動TFT20は単に「薄膜トランジスタ20(TFT20)」と称される。また、上記及び以下の説明並びに各図面において参照される「画素」は、表示画面の最小構成要素(単位要素)であり正確には「サブ画素」であるが、説明の簡潔化のため「画素」とも称される。また、以下の説明において「表面」は、特にその区別が記載されていない場合、有機EL表示装置1を構成する基板10(
図2A参照)以外の各構成要素における基板10と反対方向を向く表面を意味している。また、基板10に関して「表面」は、特にその区別が記載されていない場合、有機発光素子40を向く表面を意味している。
【0017】
図2A〜
図2Cおよび
図3A〜
図3Cを参照して、本実施形態の有機EL表示装置1の駆動回路2におけるTFT20の構造について説明する。
図2A〜
図2Cには、有機EL表示パネル3の断面が拡大して示されており、特に、TFT20及び有機発光素子40の断面の一例が示されている。
図3A〜
図3Cには、TFT20の具体例の平面図がそれぞれ示されている(ドレイン電極26およびソース電極25にハッチングが付されている)。なお、
図2A〜
図2Cには、TFT20として、
図3A〜
図3Cそれぞれにおいてソース電極25の一部とドレイン電極26の一部とが対向する複数の部分のうちの一つの断面(両電極の対向方向、たとえば
図3AにおけるY方向に沿う切断線による断面)が示されている。また
図2A〜
図2Cには、ゲート電極23および半導体層21がソース電極25およびドレイン電極26の対向部分だけに形成されるように示されているが、
図3Aなどの例のように、ゲート電極23は、ソース電極25とドレイン電極26との複数の対向部分全体に及ぶように形成されていてもよい。
【0018】
図2A〜
図2Cに示されるように、本実施形態の有機EL表示装置1は、TFT20を含む駆動回路2が形成された表面を有する基板10と、駆動回路2を覆うことによって基板10の表面を平坦化する平坦化膜30と、平坦化膜30における駆動回路2と反対方向を向く表面の上に形成され、駆動回路2と電気的に接続された有機発光素子40と、を備えている。TFT20は、ゲート電極23、ドレイン電極26、ソース電極25、及びTFT20のチャネルとなる領域21cを含む半導体層21を有している。半導体層21は、部分的にドレイン電極26およびソース電極25に重ねられている。
図2Aの例では、ドレイン電極26及びソース電極25と半導体層21との間に不純物濃度の高い半導体からなる第2半導体層211が設けられている。半導体層21において主にドレイン電極26とソース電極25との間の領域であってゲート電極23と重なっている領域21cに、ゲート電極23への所定の電圧の印加によってチャネルが形成される。
【0019】
図2Aは、半導体層21と基板10との間にゲート電極23が配置されたボトムゲート構造(逆スタガ構造)の例を示しており、
図2Bはトップゲート構造(スタガ構造)の例を示している。そして
図2A及び
図2Bは、半導体層21がアモルファスシリコンからなる例を示している。また、
図2Cは、
図2Bの例と同様にトップゲート構造を有するTFT20の例である。
図2Cに例示される構造は、主に半導体層21のチャネルとなる領域21cがLTPSで構成される場合に用いられる。本実施形態の有機EL表示装置1の駆動回路2は、TFT20の半導体層21がアモルファスシリコンからなる場合に好適であるが、半導体層21のチャネルとなる領域21cがLTPSによって形成されていてもよい。
【0020】
図2Aの例では、基板10の上に、ベースコート層11を介してゲート電極23が形成され、ゲート電極23を覆うようにゲート絶縁膜22及び半導体層21が積層され、半導体層21上に第2半導体層211が形成され、第2半導体層211の上にドレイン電極26及びソース電極25が積層されている。陰極配線27と有機発光素子40の第2電極44とは陰極コンタクト44aを介して接続されている。
図2Bの例では、ベースコート層11上にドレイン電極26及びソース電極25が形成されており、ドレイン電極26及びソース電極25それぞれの一部と重なるように、ドレイン電極26及びソース電極25の間のベースコート層11上に半導体層21が積層され、さらに半導体層21上にゲート絶縁膜22が積層され、ゲート絶縁膜22上にゲート電極23が形成されている。
【0021】
図2Cの例では、ベースコート層11上に、ソース21s、LTPSからなるチャネルとなる領域21c及びドレイン21dを有する半導体層21が形成されており、半導体層21を覆うようにゲート絶縁膜22が積層されている。ゲート絶縁膜22上にゲート電極23が形成されており、ゲート電極23を覆うように層間絶縁膜24が積層され、層間絶縁層24上にソース電極25及びドレイン電極26が形成されている。ソース電極25及びドレイン電極26は、それぞれ、コンタクト孔24aを通じて半導体層21のソース21s及びドレイン21dと接続されている。陰極コンタクト44aは、ゲート絶縁膜22および層間絶縁膜24を貫く第1コンタクト28と、平坦化膜30を貫く第2コンタクト45とによって構成されている。
図2A〜
図2Cに示される例は、TFT20の構造(主にTFT20の構成要素の積層の上下関係)が互いに異なるだけである。
図2A〜
図2Cにおいて、同様の機能を有する構成要素には同じ符号が付され、それらについての重複する説明は省略される。
【0022】
有機発光素子40は、
図2A〜
図2Cの例ではトップエミッション型(TE型)の有機発光ダイオード(OLED)であり、平坦化膜30上に形成された第1電極(例えば陽極)41、第1電極41を囲む絶縁バンク42、絶縁バンク42内に形成された有機発光層43、有機発光層43上を含めて基板10全体に形成された第2電極(例えば陰極)44を有している。
図2A〜
図2Cの例では、TFT20のソース電極25が有機発光素子40の第1電極41に接続されている。
【0023】
図2A〜
図2Cの例のように有機発光素子40がTE型である場合、TFT20は、有機発光素子40の発光領域すなわち有機発光層43が形成されている領域の下層(第1電極41と基板10との間)に、発光領域の一部または全部と重なるように形成されていてもよい。その場合、大きな電流を流し得るTFT20が形成され得る。
【0024】
図3A〜
図3Cに示されるように、ドレイン電極26およびソース電極25はチタンまたはアルミニウムなどからなる導体膜によって構成されており、ドレイン電極26を構成する第1導体膜26aおよびソース電極25を構成する第2導体膜25aそれぞれの一部が、所定の方向に沿って交互に並べられている。
図3Aの例では、
図3Aの上下方向(Y方向)に沿って各導体膜の一部が交互に並んでいる。チャネルとなる領域21cは、半導体層21において第1導体膜26aの一部と第2導体膜25aの一部との間に挟まれた領域である。前述したように、ゲート電極23への所定の電圧の印加によって領域21cにチャネルが形成され、ドレイン電極26とソース電極25とが導通する。
【0025】
このように、所定の方向(
図3AにおけるY方向)に沿って第1導体膜26aの一部と第2導体膜25aの一部とが交互に並べられているので、所定の大きさを有する領域内で互いに対向している部分が長いドレイン電極26およびソース電極25を得ることができる。従って、チャネル幅(W)の長いチャネルを形成することができる。一方、チャネル長Lは、第1導体膜26aと第2導体膜25aとの間隔であり、第1導体膜26aの一部と第2導体膜25aの一部とが交互に並べられることに伴って増加するものではない。従って、限られた領域を有効活用してチャネル幅(W)とチャネル長Lとの比(W/L)の大きなチャネル、すなわち、大きな電流を流し得るチャネルを形成することができる。従って、例えば一つの画素内に駆動能力の大きなTFT20を形成することができ、画素毎に駆動能力の大きな駆動回路を形成することができる。
【0026】
また、このように第1導体膜26aの一部と第2導体膜25aの一部とが交互に並べられることによってW/L比の大きなチャネルが所定の大きさの領域内に形成されれば、前述したLTPSではなくアモルファスシリコンによって半導体層21を形成することも可能となる。詳述すると、LTPSの電子移動度は100cm
2/Vs程度であり、アモルファスシリコンの電子移動度は0.5cm
2/Vs程度である。従ってアモルファスシリコンを用いる場合、単純には、現在実用化されているLTPSによるチャネルのW/L比(例えば2.5程度)よりも200倍程度W/L比を高める必要がある。しかし、実際に有機EL表示装置の有機発光素子の駆動に必要な半導体層の電子移動度は、前述した現行のLTPSでのW/L比の場合に10cm
2/Vs程度である。従って、例えば現行のW/L比よりも20倍程度W/L比を大きくすれば、アモルファスシリコンを駆動回路2におけるTFT20の半導体層21に用いることも可能となる。従って、たとえば、W/L比50以上のチャネルが形成されるように第1導体膜26aの一部と第2導体膜25aの一部とを交互に並べることによって、アモルファスシリコンを半導体層21に用いることができ、前述したLTPSを得るためのアニール工程が不要になる。すなわち、駆動回路2のTFT20を、容易に、安価に、高額な設備を使用することなく、しかも、マザー基板の大型化にも追随し得る方法で形成することが可能となり得る。さらに、アモルファスシリコンはキャリア移動度のばらつきも小さいので、表示ムラの発生を低減することができ、表示ムラの補償回路なども不要となるため、それらの点においても有機EL表示装置のコスト削減及び表示品位の向上に寄与することができる。
【0027】
図3Aの例では、第1導体膜26a及び第2導体膜25aが、それぞれ平面形状で櫛型に形成されている。そして、第1導体膜26aの櫛歯部分(
図3Aの例では第1部分26a1〜26a4)及び第2導体膜25aの櫛歯部分(
図3Aの例では第2部分25a1〜25a4)が噛み合うように形成されている。
図3A〜
図3Cにおいて破線で示されているゲート電極23は、
図2Aの例のようなボトムゲート型のTFT20では、第1導体膜26aおよび第2導体膜25aよりも下側(ゲート絶縁膜22と基板10との間)に形成されている(
図4A参照)。また
図2Bの例のようなトップゲート型のTFT20では、ゲート電極23は、第1導体膜26aおよび第2導体膜25aの上側(ゲート絶縁膜22上)に形成されている(
図4B参照)。ゲート電極23は、第1部分26a1〜26a4と第2部分25a1〜25a4との対向部分(
図3Aの例では対向部分の全て)と重なるように形成されている。
【0028】
ゲート電極23は、第1導体膜26aの一部である第1部分26a1〜26a4と第2導体膜25aの一部である第2部分25a1〜25a4の互いに対向する部分の長さWaの範囲の全体に亘って形成されている。従って、第1部分26a1〜26a4及び第2部分25a1〜25a4の先端まで、Y方向において対向する第2部分25a1〜25a4又は第1部分26a1〜26a4との間においてチャネルが形成される。さらに、ゲート電極23は、
図3Aなどの例では、第1部分26a1〜26a4の先端がY方向と直交する方向(
図3AのX方向)において対向する第2導電膜25との間の部分、及び第2部分25a1〜25a4の先端がX方向において対向する第1導電膜26との間の部分と重なるように形成されている。従って、チャネルは第1導体膜26aおよび第2導体膜25aの間の領域21c全体に形成され、このチャネルとなる領域21cはジグザグの形状を有している。そのため、例えば
図3Aなどにまさに示された限られた領域を有効に用いて、チャネル幅(W)の長い、すなわち大きな電流を流し得るチャネルが形成され得る。
【0029】
チャネルとなる領域21cは、第1導体膜26aの第1部分26a1〜26a4と第2導体膜25aの第2部分25a1〜25a4とが所定の方向(
図3AのY方向)に交互に並んでいるため、Y方向において複数個存在する。具体的には、半導体層21において第2部分25a1と第1部分26a1との間に挟まれている領域、第1部分26a1と第2部分25a2との間に挟まれている領域、第2部分25a2と第1部分26a2との間に挟まれている領域、などにそれぞれ存在する。
図3Aなどの例では、チャネルとなる領域21cは、ジグザグ状の形状を有する一体的(連続的)領域であり、そのチャネルとなる領域21cに形成されるチャネルは、50以上のW/L比を有することが好ましい。しかし、第1部分26a1〜26a4および第2部分25a1〜25a4それぞれの先端部分では、コーナー部においてチャネル長が変化する。
【0030】
従って、W/L比の計算において用いるチャネル幅(W)は、Y方向において複数個(たとえばn個)存在するチャネルとなる領域21cそれぞれにおける第1導体膜26aの一部(第1部分26a1〜26a4のいずれか)と第2導体膜25aの一部(第2部分25a1〜25a4のいずれか)の互いに対向する部分の長さWaの総和(Wa×n)とすることが好ましい。そして、このチャネル幅(W=Wa×n)と、第1導体膜26aの一部と第2導体膜25aの一部とが対向する部分における第1導体膜26aと第2導体膜25aとの間隔(チャネル長L)との比(W/L)が50以上であることが好ましい。そのように第1導体膜26aおよび第2導体膜25aを設けることによって、第1導体膜26aの一部または第2導体膜25aの一部それぞれの先端と第2導体膜25aまたは第1導体膜26aとの間におけるチャネル幅を無視しても、好ましいW/L比を確実に得ることができる。なお、長さWaは、第1導体膜26aの一部と第2導体膜25aの一部とが交互に並ぶ方向(Y方向)と直交する方向(X方向)における両導体膜の対向する部分の長さである。また、長さWaの総和は、Wa×nで示されるように、Y方向において複数個存在するチャネルとなる領域21c全部についての長さWaの和である。
【0031】
TFT20のチャネルのW/L比は、駆動能力の観点では大きいほど好ましいが、薄膜トランジスタ20のサイズの観点では、必要以上に大きくない方が好ましいこともある。たとえば、前述したように、アモルファスシリコンの電子移動度はLTPSの電子移動度の200分の1程度であるため、現行のLTPSからなる半導体層と同様の駆動能力を得る場合でも、LTPSにからなるチャネルのW/L比(例えば2.5程度)の200倍となるW/L比を有していればよい。従って、チャネルとなる領域21cにおける第1導体膜26aの一部と第2導体膜25aの一部の互いに対向する部分の長さWaの総和(W)と、第1導体膜26aと第2導体膜25aとの間隔Lとの比(W/L)は、50以上、500以下であることが好ましい。
【0032】
図3Bの例においても、第1導体膜26a及び第2導体膜25aは、それぞれ平面形状で櫛型に形成されている。
図3Bの例では、第1導体膜26aの櫛歯部分(第1部分26a1〜26a3)および第2導体膜25aの櫛歯部分(第2部分25a1〜25a3)の長さWcは、櫛歯部分同士を連結する連結部分の長さLcよりも長い。また、
図3Bには、有機発光素子40(
図2A参照)の発光領域43aが二点鎖線で示されており、発光領域43aは矩形形状に形成されている。そして、第1導体膜26aの一部である第1部分26a1〜26a3及び第2導体膜25aの一部である第2部分25a1〜25a3の対向する部分が、発光領域43aの矩形形状の長辺に沿って形成されている。
【0033】
第1導体膜26a及び第2導体膜25aそれぞれの対向部分を
図3Bの例のように形成することによって、前述したW/L比の計算においてチャネル幅(W)に算入される対向部分の長さWaを長くすることができる。また、そのW/L比の計算に組み入れられない、第1導体膜26aの一部または第2導体膜25aの一部それぞれの先端と第2導体膜25aまたは第1導体膜26aとの間の部分の数を少なくすることができる。容易に算定可能なチャネルの電流許容量と実際の電流許容量とを近付けることができ、従ってTFT20を適切に設計することができると考えられる。
図3Bの例は、TFT20が、矩形の形状を有する発光領域43aに大半の領域を占められる画素内に収まるように形成される場合に好適であると考えられる。
【0034】
図3Cには、第1導体膜26a及び第2導体膜25aのさらに他の例が示されている。
図3Cの例では、第1導体膜26aは、その一部である第1部分26a1〜26a6が交互に異なる端部で連結されたジグザグの平面形状を有するように形成されている。そして、第2導体膜25aは、第1導体膜26aの周囲に形成され、さらにその一部である第2部分25a1〜25a6が、それぞれ、第1導体膜26aが有するジグザグの平面形状の凹部に挿入されている。なお、
図3Cの例と異なり、第2導体膜25aがジグザグの平面形状に形成され、第1導体膜26aの一部が第2導体膜25aの平面形状における凹部に挿入されていてもよい。
図3Cに例示されるように、第1導体膜26a及び第2導体膜25aは、必ずしも
図3A及び
図3Bの例のような櫛歯形状に形成されていなくてもよい。また、第1導体膜26aの第1部分及び第2導体膜25aの第2部分の数は、
図3A〜
図3Cの例に限定されず、任意の数の第1部分および第2部分が設けられ得る。第1及び第2の導体膜26a、25aの平面形状を除いて
図3Bおよび
図3Cに示されるTFT20は
図3Aに示されるTFT20と同じであり、重複となる説明は省略される。
【0035】
図4A及び
図4Bには、
図3Aに示される第1導体膜26aの第1部分26a1を通るX方向と平行な切断線での断面図が示されている。なお、
図4A及び
図4Bは、
図3Aの例と異なり、ゲート電極23が、第1導体膜26aの一部と第2導体膜25aの一部との対向部分の長さWaよりも短い幅で設けられている例である。
図4Aは、TFT20がボトムゲート型である例であり、
図4BはTFT20がトップゲート型である例である。すなわち、
図4Aと
図4Bとでは、基板10の上に、ベースコート層11を介して積層されているゲート電極23、ゲート絶縁膜22、半導体層21、第1導体膜26aが、互いに逆の順序で形成されている積層されている。
図4Aおよび
図4Bのいずれにおいても、第1導体膜26aの第1部分26a1の先端と第2導体膜25aとは距離Lxだけ離間している。距離Lxは、たとえば、第1導体膜26aの一部と第2導体膜25aの一部とが交互に並んでいる方向(
図3Aに示されるY方向)に沿って対向している第1導体膜26aと第2導体膜25aとの間隔に略等しい。
【0036】
再度
図2A〜
図2Cを参照して、有機EL表示装置1におけるTFT20以外の構成要素について説明する。平坦化膜30は、駆動回路2の上に積層された第1無機絶縁膜31、第1無機絶縁膜31の上に積層された有機絶縁膜32、及び、有機絶縁膜32の上に積層された第2無機絶縁膜33を含んでいる。平坦化膜30の駆動回路2と反対方向を向く表面(第2無機絶縁膜33における有機絶縁膜32と反対方向を向く表面)が、50nm以下の算術平均粗さを有している。すなわち、本実施形態の有機EL表示装置1では、駆動回路2の形成によって凹凸を有する基板10の表面が平坦化膜30で覆われ、その表面が算術平均粗さ(Ra)で50nm以下にされている。例えば平坦化膜30は、各絶縁膜の積層後に研磨されることによってその表面を50nm以下の算術平均粗さにされ得る。
【0037】
前述したように、本発明者らは、有機EL表示装置において表示ムラが生じる原因について調べた結果、有機発光素子における有機発光層の表面が完全な平坦面ではなく細かな凹凸を含み、微視的には傾いている部分があることを見出した。有機発光層の表面が傾いていると、その法線方向が、有機EL表示装置における表示面の法線方向に対して傾くことになり、そのような有機発光層から斜め方向に出射する光は表示面の正面からは認識し難くなる。そのため、輝度の低下、又は、R、G、B各色の光の強度で定まる色度の変化が生じていたのである。
【0038】
従来、表示ムラの対策として、例えば、画素毎に設けられる駆動回路それぞれに、TFT及び/又はOLEDの特性ばらつきを補償する回路が付加されていた。しかし、このような対策は、本発明者らに見出された表示ムラの対策として有効に機能するものではなく、むしろ駆動回路の構成要素の増加によって基板の表面の凹凸を増大させる虞すらあった。また、有機EL表示装置の検査工程などで把握された輝度分布に基づいて各有機発光素子に流す電流が制御されることもあった。しかし、これらの対策は、駆動回路の構成要素の増加に伴ってコスト及びサイズが増大したり、有機EL表示装置の製造工程が煩雑化したり、複雑な制御が必要になったりするものであった。
【0039】
これに対し本実施形態では、前述したように、新たに見出された表示ムラの原因を排除するため、平坦化膜30の表面が50nm以下の算術平均粗さにされている。さらに、後述するコンタクト孔30aの直上を避けて有機発光層43が形成されている。そうすることで、表示ムラの極めて少ない表示画像を得ることができる。平坦化膜30の表面粗さは小さいほど好ましいが、半導体プロセスの研磨工程で目標とされるような、例えば20nmを下回るほどの算術平均粗さは必ずしも求められない。すなわち、有機EL表示装置1の表示ムラを抑制するという観点では、平坦化膜30の表面が算術平均粗さで50nm以下であればよく、その場合、人に感知されるような表示ムラが殆ど生じないことを本発明者らは見出したのである。また、実現の容易性の面では20nm以上の算術平均粗さが好ましいことが見出された。すなわち、平坦化膜30の表面は、20nm以上、50nm以下の算術平均粗さを有していることが、表示品位に影響し得る表示ムラの効果的な抑制と簡便な製造との両立の面で好ましい。
【0040】
基板10には、主に、ガラス基板又はポリイミドフィルムなどが用いられる。有機EL表示装置1が
図2A〜
図2Cの例と異なりボトムエミッション型(BE型)である場合には、透光性の材料、すなわちガラス基板、さらに透明ポリイミドフィルムなどが用いられる。TFT20が形成される基板10の表面には、バリア膜として、ベースコート層11が形成されている。例えばプラズマCVD法によって、主に500nm程度の厚さのSiO
2膜及び50nm程度の厚さのSiN
X膜からなる下層と、主に250nm程度の厚さのSiO
2膜からなる上層とを有するベースコート層11が形成される。
【0041】
ベースコート層11の上にTFT20を含む駆動回路2が形成されている。陰極配線27もベースコート層11の上に形成されている。
図2Aなどでは省略されているが、走査線及びデータ線用の配線なども陰極配線27と同様に形成されている。また、
図2Aなどでは、発光素子40を駆動するTFT20のみが示されているが、前述したスイッチングTFT2aもベースコート層11上に形成されており、さらに他のTFTが形成されていてもよい。駆動回路2は、有機EL表示装置1が、
図2Aなどの例のようにTE型の場合は、有機発光素子40の発光領域の下方の全面に亘って形成され得る。一方、BE型では、有機発光素子40の発光領域の下方にTFT20などを形成することはできないため、TFT20などは発光領域と平面的に重なる部分の周縁部に形成される。しかしこの場合でも、表示ムラを生じさせない程度の平坦性をその表面に有する平坦化膜30が求められる。
【0042】
TFT20のゲート絶縁膜22は、主に50nm厚程度のSiO
2などからなり、ゲート電極23は、250nm厚程度のMoなどの膜の成膜後のパターニングなどによって形成されている。
【0043】
TFT20を含む駆動回路2の表面にバリア層としての200nm厚程度のSiN
Xなどからなる第1無機絶縁膜31が形成されており、第1無機絶縁膜31の上に有機絶縁膜32が形成され、さらに、第2無機絶縁膜33が形成されている。平坦化膜30には、第1無機絶縁膜31、有機絶縁膜32、及び、第2無機絶縁膜33を一括して貫くコンタクト孔30aが形成されている。コンタクト孔30aには、後述するように、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、及び銀(Ag)又はAPC(銀+パラジウム+銅)などの金属が埋め込まれ、この金属を介して、駆動回路2と有機発光素子40とが接続されている。
【0044】
有機絶縁膜32は、例えば1μm以上、2μm以下程度の厚さを有している。有機絶縁膜32によって、駆動回路2の形成による基板10の表面の凹凸が大幅に軽減される。有機絶縁膜32は、例えばポリイミド樹脂又はアクリル樹脂を用いて形成される。また、有機絶縁膜32は、有機絶縁膜32における第2無機絶縁膜33を向く表面の平坦性を向上させる添加剤(レベリング向上剤)を0.5質量%以上、5.0質量%以下の含有率で含んでいることが好ましい。このようなレベリング向上剤としては、シリコーン系、炭化水素系、又はフッ素系の界面活性剤などが例示される。また、有機絶縁膜32は、感光性の樹脂を用いて形成されていてもよいが、光重合開始剤がレベリング向上剤などの効果を弱めることがあるため、有機絶縁膜32には、光重合開始剤のような感光体を含まない材料を用いることが好ましい。
【0045】
アクリル樹脂は、純度が高く、界面活性剤などと良好に馴染み、かつ、高い平坦性を有するため有機絶縁膜32の材料として好ましい。一方、有機EL表示装置1の製造工程が200℃以上の高温プロセスなどを含む場合は、高い耐熱性を有するポリイミド樹脂が好ましい。従って、有機絶縁膜32は、光重合開始剤などのような感光体を含まないアクリル樹脂、又は、感光体を含まないポリイミド樹脂であることが好ましい。
【0046】
第2無機絶縁膜33は、前述したように、有機絶縁膜32と反対方向を向く表面において50nm以下の算術平均粗さを有しており、そのため有機EL表示装置1の表示ムラが抑制される。第2無機絶縁膜33は、例えばSiN
X又はSiO
2などで形成されるが、水分遮断性の点でSiN
Xが好ましい。すなわち、第2無機絶縁層33によって、平坦化膜30における水分に対するバリア性能が高められる。
【0047】
第2無機絶縁膜33は、有機EL表示装置1の使用時だけでなく製造時の水分の遮断作用も有し得る。すなわち、後述するように、平坦化膜30の表面は、50nm以下の表面粗さを有するべく製造工程において研磨されることがあり、研磨後には研磨剤などの除去のために洗浄が行われ得る。第2無機絶縁膜33が形成されない場合は、有機絶縁膜32の表面が研磨され、さらに洗浄剤に晒される。その場合、この洗浄剤が有機絶縁膜32内に浸透し、そのまま残存してTFT20の劣化などを引き起こすことがある。しかし、第2無機絶縁膜33が形成されることによって、このような有機絶縁膜32への洗浄剤の浸透及びTFT20の劣化が防がれる。
【0048】
第2無機絶縁膜33は、例えば100nm以上、600nm以下程度の厚さに形成される。しかし、第2無機絶縁膜33の厚さは、有機絶縁膜32における第2無機絶縁膜33を向く表面の凹凸に基づいて変動する。第2無機絶縁層33は、有機絶縁膜32の表面の凹凸を第2無機絶縁層33内に十分に埋没させ得るように、例えば、有機絶縁膜32の表面の凹凸における最大高低差DTの3倍以上の厚さに形成されることが好ましい。そして、必要に応じて、第2無機絶縁膜33の表面を、最大高低差DT以上であって最大高低差DTの2倍未満の長さ(厚さ)ぶん研磨することが好ましい。そうすることによって、有機絶縁膜32を露出させることなく有機絶縁膜32の表面の凸部に基づく第2無機絶縁膜33の表面の凸部を削り取ることができ、平坦化膜30の表面を略確実に50nm以下の算術平均粗さにすることができる。その場合、第2無機絶縁膜33は、有機絶縁膜32の表面の全面において、その表面の凹凸の最大高低差DTの1倍以上、3倍以下の厚さを有し得る。例えば、
図2Aにおいて、第2無機絶縁膜33の最大の厚さTLは、有機絶縁膜32の凹凸の最大高低差DTの2倍以上、3倍以下であり、第2無機絶縁膜33の最小の厚さTMは、有機絶縁膜32の凹凸の最大高低差DTの1倍以上、2倍以下である。特に
図2Aの例では、第2無機絶縁膜33の最大の厚さTLは、有機絶縁膜32の凹凸の最大高低差DTの略2倍であり、その最小の厚さTMは、有機絶縁膜32の凹凸の最大高低差DTと略同じである。
【0049】
有機発光素子40の第1電極41は、コンタクト孔30a内に埋め込まれた金属と一体的に形成されている。すなわち、例えばスパッタリングなどによってコンタクト孔30a内にITOとAg又はAPCなどの金属とITOとが埋め込まれると共に、平坦化膜30の表面にも同じITO膜、Ag又はAPCなどの金属膜、及びITO膜がそれぞれ形成される。それらが所定の形状にパターニングされることによって第1電極41が形成される。ただし、前述したように有機発光層43の形成領域は、コンタクト孔30aの直上を避けて設定される。第1電極41は、有機発光層43との関係で、仕事関数が5eV程度のものが好ましく、トップエミッション型の場合、前述したようなITO、及びAg又はAPCが用いられる。ITO膜は10nm程度の厚さに形成され、Ag又はAPC膜は100nm程度の厚さに形成される。ボトムエミッション型の場合には、例えば300nm〜1μm程度の厚さのITO膜だけが形成される。平坦化膜30には、陰極コンタクト44aを形成するためのコンタクト孔30bも形成されており、コンタクト孔30bも平坦化膜30を構成する各絶縁膜を一括して貫通している。
【0050】
第1電極41の表面におけるコンタクト孔30aの真上の部分には、コンタクト孔30aがITOなどによって完全に埋められない場合に、
図2Aなどに示されるような窪みが生じ得る。しかし
図2Aなどの例では、第1電極41は、コンタクト孔30aと平面視で重ならない領域を有機発光層43の形成に十分な大きさで有しており、このコンタクト孔30aと重ならない領域上に有機発光層43が形成されている。そのため、有機発光層43における厚さのムラ、及び、その表面における窪みが生じ難く、コンタクト孔30aに起因する表示ムラが生じ難い。
【0051】
第1電極41の周縁部には、各画素を区画すると共に、第1電極41と第2電極44との間を絶縁する絶縁バンク42が形成されている。
図2Aなどの例では絶縁バンク42によって第1電極41の表面の窪みが覆われている。そして絶縁バンク42によって囲まれる第1電極41の上に有機発光層43が積層されている。有機発光素子40の発光領域となる有機発光層43は、好ましくは
図2Aなどの例のように、コンタクト孔30aと平面視で重ならない領域に形成される。その場合、前述したようにコンタクト孔30aに起因する表示ムラが生じ難い。有機発光層43は、
図1などでは一層で示されているが、種々の材料が積層されることによって複数の有機層で形成される。有機発光層43は、蒸発又は昇華させた有機材料をマスクによって選択的に必要な部分のみに付着させる蒸着、又は印刷などによって形成される。
【0052】
例えば第1電極41に接する層として、正孔の注入性を向上させるイオン化エネルギーの整合性の良い材料からなる正孔注入層が設けられる。この正孔注入層上に、正孔の安定な輸送を向上させると共に、発光層への電子の閉じ込め(エネルギー障壁)が可能な正孔輸送層が、例えばアミン系材料により形成される。さらに、その上に発光波長に応じて選択される発光層が形成される。例えば赤色、緑色に対してはAlq
3に赤色又は緑色の有機物蛍光材料がドーピングされる。また、青色系の材料としては、DSA系の有機材料が用いられる。さらに発光層の上には、電子の注入性を向上させると共に電子を安定に輸送する電子輸送層がAlq
3などによって形成され得る。これらの各層がそれぞれ数十nm程度ずつ積層されることによって有機発光層43の積層膜が形成される。この有機発光層43と第2電極44との間にLiFやLiqなどの電子の注入性を向上させる電子注入層が設けられてもよい。
【0053】
第2電極44は有機発光層43の上に形成されている。
図2A〜
図2Cの例では、第2電極44は、全画素に亘って共通となるように連続的に形成され、平坦化膜30に形成された陰極コンタクト44aを介して陰極配線27に接続されている。第2電極44は透光性の材料、例えば、薄膜のMg-Ag膜により形成されている。第2電極44には仕事関数の小さい材料が好ましく、アルカリ金属又はアルカリ土類金属などが用いられ得る。Mgは仕事関数が3.6eVと小さいので好ましく、さらに安定性の付与のために、4.25eV程度の小さい仕事関数を有するAgが10質量%程度の割合で共蒸着されている。BE型では、第2電極44は反射板となるため、第2電極44としてAlが厚く形成される。
【0054】
第2電極44の上には、第2電極44への水分の到達を阻止する被覆層(TFE)46が形成されている。被覆層46は、例えばSiN
X、SiO
2などの無機絶縁膜からなり、単層膜、又は二層以上の積層膜を成膜することによって形成される。例えば一層の厚さが0.1μmから0.5μm程度の二層程度の積層膜が被覆層46として形成される。被覆層46は、一つの層にピンホールなどができても水分などに対する十分なバリア性が得られるように、異なる材料で多層に形成されるのが好ましい。被覆層46は有機発光層43及び第2電極44を完全に被覆するように形成されている。なお、被覆層46は、二層の無機絶縁膜の間に有機絶縁膜を備えていてもよい。
【0055】
〔有機EL表示装置の製造方法〕
次に、
図2Aに示される有機EL表示装置1を例に、一実施形態の有機EL表示装置の製造方法が、
図5A及び
図5Bのフローチャート並びに
図6A〜
図6Gに示される断面図を参照すると共に、
図3Aも適宜参照しながら説明される。
【0056】
図6Aに示されるように、基板10の上に、薄膜トランジスタ20を含む駆動回路2が形成される(
図5AのS1)。
【0057】
図2Aに示される有機EL表示装置1が製造される場合は、ベースコート層11が、例えばプラズマCVD法を用いて基板10の表面上に形成される。ベースコート層11は
図6Aでは単層構造で示されているが、例えば500nm程度の厚さのSiO
2層、その上に50nm程度の厚さのSiN
X層、さらにその上に250nm程度の厚さのSiO
2層を積層することによって形成される。
【0058】
その後、Moなどの金属膜をスパッタリングなどによって形成してパターニングすることによってゲート電極23が形成される(
図5BのS11)。好ましくは、ゲート電極23と共に、陰極配線27、ならびに、その他の走査線及びデータ線用などの各配線(図示せず)が形成される。例えば、先に参照した
図3Aに示されるように、第1導体膜26aの一部と第2導体膜25aの一部とが交互に並べられる所定の方向(
図3Aの例においてY方向)に延びるゲート電極23が形成される。
【0059】
ゲート電極23の上にゲート絶縁膜22が形成される(
図5BのS12)。ゲート絶縁膜22は、例えばプラズマCVD法を用いて50nm程度の厚さのSiO
2膜またはSiN
X膜を成膜することによって形成される。さらに、ゲート絶縁膜22の上に、例えばプラズマCVD法を用いて、アモルファスシリコンによって構成される半導体層21がゲート電極23をカバーするように形成される(
図5BのS13)。半導体層21には、例えば350℃程度の温度での45分間程度のアニールによって脱水素化の処理が行われる。半導体層21は、ドライエッチングなどを用いて所望の形状にパターニングされる。前述したようにゲート電極23が、第1導体膜26aの一部と第2導体膜25aの一部とが交互に並べられる所定の方向に延びている場合、ゲート電極23全体をカバーすべくその所定の方向に沿って延びる半導体層21が形成される。
【0060】
その後、好ましくは、半導体層21上における、後に第1導体膜26aまたは第2導体膜25aが形成される領域に、高不純物濃度の第2半導体層211が形成される(
図5BのS14)。すなわち、半導体層21と、第1導体膜26a及び第2導体膜25aとの間に高不純物濃度の第2半導体層211を介在させることが、半導体層21とドレイン電極26およびソース電極25との接触抵抗を下げる点で好ましい。第2半導体層211は、半導体層21上に半導体層21よりも高い不純物濃度を有する半導体層を積層することによって形成されてもよく、半導体層21の所定の領域に不純物がドーピングされることによって形成されてもよい。不純物としては、TFT20がNch電界効果型トランジスタである場合はリンまたはヒ素などが例示され、TFT20がPch電解効果型トランジスタである場合はボロンまたはアルミニウムなどが例示される。
【0061】
半導体層21(または第2半導体層211)およびゲート絶縁膜22上にドレイン電極26を構成する第1導体膜26a及びソース電極25を構成する第2導体膜25aが形成される(
図5BのS15)。たとえばスパッタリングを用いて数百nmのチタン膜もしくはアルミニウム膜またはそれらの積層膜が形成され、ドライエッチングなどによって、その形成された金属膜が第1導体膜26aと第2導体膜25aとに分離されると共に、不要な部分が除去される。その結果、所定の方向(例えば
図3Aに示されるY方向)と交差する方向(例えば
図3AにおけるX方向)に沿って延びる複数個の第1部分(
図3Aの例では四つの第1部分26a1〜26a4)を有する第1導体膜26aが形成される。同時に、その所定の方向(
図3AのY方向)と交差する方向に沿って延びる複数個の第2部分(
図3Aの例では四つの第2部分25a1〜25a4)を有する第2導体膜25aが形成される。第1導体膜26a及び第2導体膜25aは、複数個の第1部分と複数個の第2部分とが所定の方向(
図3AのY方向)に沿って交互に配置されるように形成される。その結果、基板10の上にTFT20が形成される。
図6Aに示されるように、TFT20は、ゲート電極23と、ゲート絶縁膜22と、半導体層21と、ドレイン電極26を構成する第1導体膜26a及びソース電極25を構成する第2導体膜25aとの積層構造に形成される。また、第1導体膜26及び第2導体膜25は、
図3Aに例示されるように、それぞれの一部が所定の方向に沿って交互に並ぶように形成される。そして、半導体層21は、第1導体膜26aの一部と第2導体膜25aの一部との間に挟まれた領域である、チャネルとなる領域21cを含んでいる。
【0062】
第1導体膜26a及び第2導体膜25aは、
図3Aの例のように平面形状としてそれぞれ櫛型形状を有するように形成されてもよい。そして、第1および第2の導体膜25a、26aは、第1導体膜26aの櫛歯部分(
図3Aの例の第1部分26a1〜26a4)及び第2導体膜25aの櫛歯部分(
図3Aの例の第2部分25a1〜25a4)が噛み合うように形成されてもよい。
【0063】
なお、
図2Bに例示されるトップゲート型のTFT20が形成される場合は、
図2Aに例示されるボトムゲート型のTFT20の形成と略同様の方法を用いて、しかしその手順と略逆の手順で各構成要素が形成される。すなわち、まず、基板10上に所定の方向(例えば
図3Aに示されるY方向)と交差する方向(例えば
図3AのX方向)に沿って延びる複数個の第1部分(
図3Aの例では四つの第1部分26a1〜26a4)を有する第1導体膜26aが形成される。また、第1導体膜26aの形成と共に、所定の方向(
図3AのY方向)と交差する方向に沿って延びる複数個の第2部分(
図3Aの例では四つの第2部分25a1〜25a4)を有する第2導体膜25aが形成される。第1導体膜26aと第2導体膜25aは、複数個の第1部分と複数個の第2部分とが所定の方向(
図3AのY方向)に沿って交互に配置されるように形成される。
【0064】
その後、第1導体膜26a及び第2導体膜25aの上にアモルファスシリコンの半導体層21が形成される。好ましくは第1導体膜26aの複数の第1部分と第2導体膜25aの複数の第2部分とが交互に並ぶ所定の方向に沿って延びる半導体層21が形成される。そして、半導体層21の上にゲート絶縁膜22が形成され、ゲート絶縁膜22の上に、第1導体膜26aの第1部分と第2導体膜25aの第2部分とが対向する部分をカバーするようにゲート電極23が形成される。好ましくは第1導体膜26aの複数の第1部分と第2導体膜25aの複数の第2部分とが交互に並ぶ所定の方向に沿って延びるゲート電極23が形成される。
【0065】
また、
図2Cに例示されるトップゲート型のTFT20が形成される場合は、基板10の上に、半導体層21、ゲート絶縁膜22、ゲート電極23、層間絶縁膜24、並びにドレイン電極26(第1導体膜26a)及びソース電極25(第2導体膜25a)が順に形成される。半導体層21にはエキシマレーザが照射され、そのアニーリングによってアモルファスシリコンがポリシリコン(LTPS)に変換される。また、半導体層21のうちのソース21sおよびドレイン21dとなるべき領域には、不純物イオンのドーピングが行われる。層間絶縁膜24及びゲート絶縁膜22には、ドライエッチングなどによってコンタクト孔24aが形成され、ドレイン電極26およびソース電極25の形成時に金属が埋め込まれる。
【0066】
その後、
図6Bに示されるように、第1無機絶縁膜31、有機絶縁膜32及び第2無機絶縁膜33が駆動回路2(
図6A参照)の表面に形成される(
図5AのS2)。第1無機絶縁膜31は、例えばプラズマCVD法によって200nm程度の厚さのSiN
X又はSiO
2などの膜を成膜することによって形成される。有機絶縁膜32は、液状又は低粘度のペースト状の樹脂を塗布することによって形成される。塗布法としては、スリットコートやスピンコート、および、その両方を組み合わせたスリット&スピンコート法が例示される。有機絶縁膜32は1μm以上、2μm以下程度の厚さに形成される。有機絶縁膜32の材料としては、例えばポリイミド樹脂又はアクリル樹脂などが用いられ得る。感光体を含まない非感光性樹脂は、純度が高く、しかも有機絶縁膜32の表面平滑性が高いので好ましい。特にアクリル樹脂が好ましい。
【0067】
第2無機絶縁膜33は、第1無機絶縁膜31と同様に、例えばプラズマCVDなどを用いてSiN
X又はSiO
2などからなる膜を成膜することによって形成される。第2無機絶縁膜33を形成することによって、後工程で用いられ得る洗浄剤などの各種溶剤の有機絶縁膜32への浸透、及び、その結果生じ得るTFT20の劣化などが防がれる。
【0068】
第2無機絶縁膜33は、有機絶縁膜32の表面の凹凸の最大高低差DTに基づいて選択された厚さに形成されることが好ましい。例えば第2無機絶縁膜33は、有機絶縁膜32における第2無機絶縁膜33を向く表面の凹凸における最大高低差DTの2倍以上の厚さに形成される。そうすることで、有機絶縁膜32の表面の凹みを第2無機絶縁膜33の一部で確実に埋め込むことができる。また、第2無機絶縁層33は、有機絶縁膜32の表面における凹凸の最大高低差DTの2倍以上、3倍以下の厚さに形成されることが、さらに好ましい。そうすることで、前述したように有機絶縁膜32の凹みを確実に埋めることができる。さらに、第2無機絶縁膜33を必要以上に厚くすることなく、第2無機絶縁膜33の成膜後にその表面に現れ得る有機絶縁膜32の表面の凹凸に基づく凹凸を後述する研磨工程で確実に均すことができ、しかも、研磨後における有機絶縁膜32の露出を略確実に防ぐことができる。
【0069】
次に、
図6Cに示されるように、第2無機絶縁膜33の表面が研磨される(
図5AのS3)。前述したように、有機発光素子40(
図2A参照)の下地となる平坦化膜30の表面が十分に平坦でない場合、有機EL表示装置に表示ムラが生じ得ることが本発明者らによって見出された。そのため、平坦化膜30の表面である第2無機絶縁膜33の表面が研磨される。第2無機絶縁膜33の表面は、好ましくは50nm以下の算術平均粗さを有するように研磨される。その程度の表面粗さに研磨することによって、さらには、後述するように有機発光層43をコンタクト孔30aの直上を避けて形成することによって、前述したように人に感知されるような表示ムラを殆ど生じないようにすることができる。また、平坦化膜30の表面の平坦化においては、半導体プロセスにおいて目標とされるような算術平均粗さは必ずしも求められない。むしろ、表面粗さの検査を含めて煩雑で時間のかかる研磨工程の回避のためには、第2無機絶縁膜33の表面は、20nm以上、50nm以下の算術平均粗さに研磨されることが好ましい。
【0070】
第2無機絶縁膜33は、第2無機絶縁膜33の表面の研磨において、例えば研磨量(研磨による第2無機絶縁膜33の厚さの減少量)が少なくとも部分的に有機絶縁膜32の表面における凹凸の最大高低差DTの1倍以上、2倍未満となるように研磨される。そうすることによって、前述したように第2無機絶縁層33が有機絶縁膜32の凹凸の最大高低差DTの2倍以上の厚さに形成された場合に、有機絶縁膜32の凹凸に基づいて成膜後の第2無機絶縁膜33の表面に現れ得る凹凸を確実に均すことができ、しかも、研磨による有機絶縁膜32の露出を略確実に防ぐことができる。例えば
図6Cの例では、成膜後に第2無機絶縁膜33の表面において凸状部であった領域(例えばTFT20が形成されている領域)における研磨量P1は、有機絶縁膜32の表面における凹凸の最大高低差DTの略2倍である。また、
図6Cの例では、成膜後に第2無機絶縁膜33の表面において凹状部であった領域(例えばTFT20が形成されていない領域)における研磨量P2は、有機絶縁膜32の凹凸の最大高低差DTと略同じであるものの僅かに下回る量である。
【0071】
第2無機絶縁膜33の研磨の方法は、特に限定されない。しかし、50nm以下の算術平均粗さの達成のためには、セリウム、コロイダルシリカ、又はヒュームドシリカを含む中性のスラリーを研磨剤として用いるCMP研磨によって研磨することが好ましい。CMP研磨であれば、例えば研磨剤が有する表面化学作用によって機械的な研磨の効果を増大させ、平滑な研磨面を速やかに得ることができる。セリウムは、高い硬度を有し、その酸化物であるセリア(CeO
2)がガラスと化学反応を起こすため、SiO
2などで形成される第2無機絶縁膜33に対する有効な研磨剤となり得る。コロイダルシリカは、通常10nm〜300nmの粒子径を有するSiO
2又はその水和物のコロイドであり、ヒュームドシリカ(乾式シリカ又は高分散シリカとも呼ばれる)は、10nm〜30nmの粒径を有する真球状のSiO
2粒子が凝集(粒径100nm〜400nm)したものであり、いずれも研磨剤として有効に機能する。
【0072】
また、第2無機絶縁膜33の研磨には、中性の水溶性アルコール又は水酸化カリウムの水溶液が、前述した研磨剤と共に用いられる。特に基板10がポリイミド樹脂で形成されている場合、基板10の腐食を防ぐ観点から、前述した研磨剤と共に中性アルコール液を用いて第2無機絶縁膜33の表面を研磨することが好ましい。
【0073】
図6Dに示されるように、第2無機絶縁膜33、有機絶縁膜32及び第1無機絶縁膜31に、駆動回路2(
図6A参照)に達するコンタクト孔30aが形成される(
図5AのS4)。好ましくは、これら3つの絶縁膜を一括して貫くコンタクト孔30aが形成される。コンタクト孔30aは、好ましくは、後述する有機発光層43(
図6F参照)の形成において有機発光層43が形成されるべき領域と、基板10の厚さ方向において重ならない領域に形成される。そうすることで、前述したように表示ムラの発生が防がれる。コンタクト孔30aの形成は、例えばレジストマスクを形成したうえでドライエッチングによって行われる。コンタクト孔30aの形成時に、平坦化膜30における陰極配線27の上方の部分にも、陰極コンタクト44a(
図2A参照)用のコンタクト孔30bも形成される。
【0074】
図6Eに示されるように、コンタクト孔30aの内部に金属が埋め込まれると共に、所定の領域に有機発光素子40(
図2A参照)の第1電極41が形成される(
図5AのS5)。具体的には、例えばスパッタリングなどを用いて、10nm厚程度のITO膜、及び100nm厚程度のAg膜若しくはAPC膜が積層された下層と、主に10nm厚程度のITO膜からなる上層が形成される。その結果、コンタクト孔30aの内部に金属が埋め込まれると共に、平坦化膜30の表面に、ITO膜、Ag膜若しくはAPC膜、及びITO膜の積層膜が形成される。その後、その積層膜をパターニングすることによって、第1電極41が形成される。この積層膜は、好ましくは
図6Eに示されるように、コンタクト孔30aと平面視で重ならず且つ有機発光層43の形成に関して十分な大きさの領域を第1電極41が有するようにパターニングされる。なお、コンタクト孔30aへの金属の埋め込みの際に、コンタクト孔30bが少なくともITO膜、及び、Ag膜若しくはAPC膜で埋め込まれることによって陰極コンタクト44aが形成される。
【0075】
図6Fに示されるように、第1電極41の上に有機発光層43が形成される(
図5AのS6)。具体的には、第1電極41の周縁部に絶縁バンク42が形成される。絶縁バンク42はSiO
2などの無機絶縁膜でもよいし、ポリイミド又はアクリル樹脂などの有機絶縁膜でもよい。例えばこれらの絶縁膜が平坦化膜30及び第1電極41の全面に成膜され、そのパターニングによって第1電極41の所定の領域が露出される。好ましくは、コンタクト孔30aと基板10の厚さ方向において重ならない、第1電極41の領域が露出される。絶縁バンク42は1μm程度の高さに形成される。前述したように有機発光層43の形成において各種の有機材料が積層される。有機材料の積層は例えば真空蒸着によって行われ、その場合、R、G、Bなどの所望の画素に対応する開口を有する蒸着マスクを介して有機材料が蒸着される。有機発光層43の表面には、電子の注入性を向上させるLiFなどの層が形成されてもよい。なお、蒸着ではなくインクジェット法などを用いた印刷によって有機発光層43が形成されてもよい。
【0076】
図6Gに示されるように、有機発光層43の上に第2電極44が形成される(
図5AのS7)。第2電極44は、例えば共蒸着によって薄膜のMg-Ag共晶膜を成膜することによって形成される。第2電極44は陰極コンタクト44a上にも形成され、陰極コンタクト44aを介して陰極配線27に接続されている。Mg-Ag共晶膜には、例えばMgが90質量%程度およびAgが10質量%程度の割合で含まれている。第2電極44は、例えば10〜20nm程度の厚さに形成される。
【0077】
第2電極44の上には、第2電極44及び有機発光層43を水分又は酸素などから護る被覆層46(
図2A参照)が形成される。被覆層46は、プラズマCVD法などを用いてSiO
2又はSiN
Xなどの無機絶縁膜を成膜することによって形成される。被覆層46は、好ましくは、その端部が第2無機絶縁膜33などの無機膜と密着するように形成される。無機膜同士の接合のため両者が密着性良く接合されるからである。そうすることによって、水分などの浸入をより確実に防止することができる。以上の工程を経ることによって、
図2Aに示される有機EL表示装置1が製造され得る。
【0078】
〔まとめ〕
(1)本発明の第1実施形態の有機EL表示装置は、薄膜トランジスタを含む駆動回路が形成された表面を有する基板と、前記駆動回路を覆うことによって前記基板の前記表面を平坦化する平坦化膜と、前記平坦化膜における前記駆動回路と反対方向を向く表面の上に形成され、前記駆動回路と電気的に接続された有機発光素子と、を備え、前記平坦化膜の前記表面は、50nm以下の算術平均粗さを有しており、前記薄膜トランジスタは、ゲート電極、ドレイン電極、ソース電極、及び前記薄膜トランジスタのチャネルとなる領域を含んでいて前記ソース電極および前記ドレイン電極と部分的に重ねられた半導体層を有し、前記ドレイン電極を構成する第1導体膜および前記ソース電極を構成する第2導体膜それぞれの一部が所定の方向に沿って交互に並べられており、前記チャネルとなる領域は、前記第1導体膜の前記一部と前記第2導体膜の前記一部との間に挟まれている。
【0079】
(1)の構成によれば、有機EL表示装置において、駆動回路の能力をコスト低減も実現し得る構造で高めることができ、しかも表示ムラを少なくすることができる。
【0080】
(2)上記(1)の有機EL表示装置において、前記第1導体膜の一部と前記第2導体膜の一部とで挟まれた前記チャネルとなる領域が複数個あり、前記半導体層がアモルファスシリコンからなり、前記チャネルとなる領域における前記第1導体膜の前記一部と前記第2導体膜の前記一部の互いに対向する部分の長さの前記複数個の和をW、前記対向する部分における前記第1導体膜と前記第2導体膜との間隔をLとしたときに、W/Lが50以上、500以下であってもよい。その場合、電流駆動能力の高い駆動回路を形成することができる。
【0081】
(3)上記(1)又は(2)の有機EL表示装置において、前記第1導体膜及び前記第2導体膜が、それぞれ平面形状で櫛型に形成されると共に、前記第1導体膜及び前記第2導体膜それぞれの櫛歯部分が噛み合うように形成されていてもよい。その場合、第1導体膜の一部と第2導体膜の一部との多くの対向箇所を効率良く形成することができる。
【0082】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかの有機EL表示装置において、前記有機発光素子の発光領域が矩形形状に形成され、かつ、前記薄膜トランジスタが前記発光領域の下層に形成されており、前記第1導体膜の前記一部及び前記第2導体膜の前記一部の対向する部分が、前記矩形形状の長辺に沿って形成されていてもよい。その場合、長いチャネル幅を有し、矩形の形状の発光領域もしくは画素内に収まる設計値に近い特性を有するTFTを得ることができる。
【0083】
(5)上記(1)〜(4)のいずれかの有機EL表示装置において、前記ゲート電極が、前記第1導体膜の前記一部と前記第2導体膜の前記一部の互いに対向する部分の長さの範囲の全体に亘って形成されていてもよい。その場合、第1導体膜および第2導体膜の対向する部分の全長を含むチャネル幅の長いTFTを得ることができる。
【0084】
(6)上記(1)〜(5)のいずれかの有機EL表示装置において、前記平坦化膜は、前記駆動回路の上に積層された第1無機絶縁膜、前記第1無機絶縁膜の上に積層された有機絶縁膜、及び、前記有機絶縁膜の上に積層された第2無機絶縁膜を含み、前記第2無機絶縁膜における前記有機絶縁膜と反対方向を向く表面が、20nm以上、50nm以下の表面粗さを有していてもよい。その場合、表示品位に影響し得る表示ムラの効果的な抑制と簡便な製造とが両立され易い。
【0085】
(7)上記(6)の有機EL表示装置において、前記第2無機絶縁膜の厚さは、前記有機絶縁膜における前記第2無機絶縁膜を向く表面の凹凸に基づいて変動し、かつ、前記有機絶縁膜の前記表面の全面において前記凹凸の最大高低差の1倍以上、3倍以下であってもよい。その場合、有機絶縁膜が露出されることなく、有機絶縁膜の表面の凹凸が平坦化膜の表面において均され得る。
【0086】
(8)本発明の第2実施形態の有機EL表示装置の製造方法は、基板の上に、薄膜トランジスタを含む駆動回路を形成する工程と、前記駆動回路の表面に第1無機絶縁膜、有機絶縁膜及び第2無機絶縁膜を形成する工程と、前記第2無機絶縁膜の表面を研磨する工程と、前記第2無機絶縁膜、前記有機絶縁膜及び前記第1無機絶縁膜に、前記薄膜トランジスタに達するコンタクト孔を形成する工程と、前記コンタクト孔の内部に金属を埋め込むと共に、所定の領域に第1電極を形成する工程と、前記第1電極の上に有機発光層を形成する工程と、前記有機発光層の上に第2電極を形成する工程と、を含み、前記薄膜トランジスタは、ゲート電極と、ゲート絶縁膜と、チャネルとなる領域を含む半導体層と、ドレイン電極を構成する第1導体膜及びソース電極を構成する第2導体膜との積層構造に形成され、前記第1導体膜および前記第2導体膜は、それぞれの一部が所定の方向に沿って交互に並ぶように形成され、前記チャネルとなる領域は、前記第1導体膜の前記一部と前記第2導体膜の前記一部との間に挟まれている。
【0087】
(8)の構成によれば、駆動能力に優れた駆動回路を有していて表示ムラの少ない有機EL表示装置を適切に製造することができる。
【0088】
(9)上記(8)の有機EL表示装置の製造方法において、前記薄膜トランジスタの形成が、基板上に前記所定の方向に沿って延びるゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極の上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜の上に、前記所定の方向に沿って延びるアモルファスシリコンの半導体層を前記ゲート電極をカバーするように形成する工程と、前記所定の方向と交差する方向に沿って延びる複数個の第1部分を有する前記第1導体膜と、前記所定の方向と交差する方向に沿って延びる複数個の第2部分を有する前記第2導体膜を、前記第1部分と前記第2部分とが前記所定の方向に沿って交互に配置されるように形成する工程と、を含んでいてもよい。そうすることによって、ボトムゲート構造(逆スタガ構造の)のTFTを形成することができる。
【0089】
(10)上記(8)の有機EL表示装置の製造方法において、前記薄膜トランジスタの形成が、基板上に前記所定の方向と交差する方向に沿って延びる複数個の第1部分を有する前記第1導体膜と、前記所定の方向と交差する方向に沿って延びる複数個の第2部分を有する前記第2導体膜を、前記第1部分と前記第2部分とが前記所定の方向に沿って交互に配置されるように形成する工程と、前記第1導体膜及び前記第2導体膜の上に前記所定の方向に沿って延びるアモルファスシリコンの半導体層を形成する工程と、前記半導体層の上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜の上に、前記第1部分と前記第2部分とが対向する部分をカバーするように、前記所定の方向に沿って延びるゲート電極を形成する工程と、を含んでいてもよい。そうすることによって、トップゲート構造(スタガ構造)のTFTを形成することができる。
【0090】
(11)上記(8)〜(10)のいずれかの有機EL表示装置の製造方法では、前記第1導体膜及び前記第2導体膜を、それぞれ櫛型形状に形成すると共に前記第1導体膜及び前記第2導体膜それぞれの櫛歯部分が噛み合うように形成してもよい。そうすることで、第1導体膜の一部と第2導体膜の一部との多くの対向箇所を効率良く形成することができる。
【0091】
(12)上記(8)〜(11)のいずれかの有機EL表示装置の製造方法では、前記半導体層と、前記第1導体膜及び前記第2導体膜との間に高不純物濃度の第2半導体層を介在させてもよい。そうすることで、半導体層とドレイン電極およびソース電極との接触抵抗を低くすることができる。
【0092】
(13)上記(8)〜(12)のいずれかの有機EL表示装置の製造方法では、前記第2無機絶縁膜の形成において、前記有機絶縁膜の表面の凹凸における最大高低差の2倍以上の厚さに前記第2無機絶縁膜を形成し、前記第2無機絶縁膜の前記表面の研磨において、前記研磨による前記第2無機絶縁膜の厚さの減少量が少なくとも部分的に前記最大高低差の1倍以上、2倍未満となるように前記第2無機絶縁膜を研磨してもよい。そうすることで、有機絶縁膜の凹凸に基づいて成膜後の第2無機絶縁膜の表面に現れ得る凹凸を確実に均すことができ、しかも、研磨による有機絶縁膜の露出を略確実に防ぐことができる。