【文献】
証券取引における分散台帳技術の利用を巡る法律問題研究会,証券決済制度と分散台帳技術,金融研究,株式会社国際文献社,2018年 7月20日,第37巻 第3号,第9頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現状の金融商品取引は、標準化がなされておらず、取引プロセスも一元化がなされていない上、デジタル化も不十分であることから、事務・システムコストも含め、余計なコストを各取引参加者が負担することとなっている。また、金融商品の発行体には多様かつ適正価格の調達手段を提供できていない一方、投資家には魅力的な商品・流動性を供給できていない。さらに、任意の金融商品を小口化して取引可能とするシステムは、提案されていなかった。
【0004】
そこで、本発明は、ブロックチェーンを用いて、金融商品に基づくトークンを管理する、新規なトークン管理システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のトークン管理システムの各態様は、次の通りである。
(態様1)
金融商品に基づくトークンを管理するトークン管理システムであって、
前記トークン管理システムは、法定通貨に関連付けられたコインを移転するコイン用ブロックチェーンと、前記トークンを移転するトークン用ブロックチェーンとを用いて、前記コインの移転及び前記トークンの移転を連動させて移転を処理する、トークン管理システム。
(態様2)
態様1に記載のトークン管理システムにおいて、
前記コインの移転及び前記トークンの移転の一方の実行完了に応じて、前記コインの移転及び前記トークンの移転の他方を実行する、トークン管理システム。
(態様3)
態様2に記載のトークン管理システムにおいて、
前記トークン管理システムは、前記コイン用ブロックチェーンを介して、他のシステム又は端末装置から前記コインが移転され、前記トークン用ブロックチェーンを介して、前記他のシステム又は前記端末装置に対して、前記トークンを移転する、トークン管理システム。
(態様4)
態様2又は3に記載のトークン管理システムにおいて、
前記コインの移転及び前記トークンの移転が、DVPで実行される、トークン管理システム。
【0006】
(態様5)
態様2又は3に記載のトークン管理システムにおいて、
前記コインの移転及び前記トークンの移転が、アトミックスワップで実行される、トークン管理システム。
(態様6)
態様1〜5の何れか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記コインは、法定通貨にペッグされたステーブルコインである、トークン管理システム。
(態様7)
態様6に記載のトークン管理システムにおいて、
前記ステーブルコインを前記法定通貨に交換するために、法定通貨口座を管理する通貨管理部を備える、トークン管理システム。
(態様8)
態様1〜7の何れか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記トークンの発行又は移転の情報をトークン用ブロックチェーンに登録する、トークン管理システム。
【0007】
(態様9)
態様1〜8の何れか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記トークン用ブロックチェーンに登録された情報を、前記トークンの原簿として用いる、トークン管理システム。
(態様10)
態様9に記載のトークン管理システムにおいて、
前記トークン管理システムは、前記原簿を前記トークンの移転に伴い更新する、トークン管理システム。
(態様11)
態様1〜10の何れか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記トークンの移転に伴って、前記トークン用ブロックチェーンに前記移転したトークンの名義変更情報を登録する、トークン管理システム。
【0008】
(態様12)
態様1〜11の何れか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記トークン管理システムは、前記金融商品の配当、利払い、又は償還のために、前記コインの移転情報を前記コイン用ブロックチェーンに送信するとともに、前記金融商品の配当、利払い、又は償還の完了情報を、前記トークン用ブロックチェーンに送信する、トークン管理システム。
(態様13)
態様1〜12の何れか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記コイン用ブロックチェーンに用いるコイン用アドレスと、前記トークン用ブロックチェーンに用いるトークン用アドレスとを有する、トークン管理システム。
(態様14)
態様1〜12の何れか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記コイン用ブロックチェーン及び前記トークン用ブロックチェーンに用いるアドレスを有する、トークン管理システム。
【0009】
(態様15)
態様1〜14の何れか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記金融商品は、社債、不動産、貸出、商品先物市場のコモデティ、株券、または特定事業である、トークン管理システム。
(態様16)
態様1〜15の何れか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記トークン管理システムは、前記トークンを発行又は生成し、前記トークンの発行又は生成を通知する、トークン管理システム。
(態様17)
態様1〜16の何れか一項に記載のトークン管理システムにおいて、
前記コイン用ブロックチェーン、及び/又は前記トークン用ブロックチェーンは、パブリックブロックチェーン、またはプライベートブロックチェーンである、トークン管理システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明のトークン管理システムは、コイン用ブロックチェーンとトークン用ブロックチェーンとを用いて、コインの移転及びトークンの移転を連動させて処理することにより、トークン及びコインの移転として金融商品の移転の処理の共通化又は自動化が容易となる。さらに、本発明のトークン管理システムは、金融商品をトークンとすることにより、任意の金融商品を小口化して移転することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のトークン管理システムを、トークン発行信託システムとした各実施形態を、図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分は、同じ符号を付して説明は適宜省略する。
【0013】
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係るトークン発行信託システム100を含むネットワークの構成図を、
図1に示す。第1の実施形態は、ブロックチェーン(BC)を用いて、金融商品として社債に基づく社債トークン(セキュリティトークン)を発行し移転する場合を例示する。トークン発行信託システム100は、トークン発行体が管理するトークン発行体システム200、及びトークンの取引を媒介するための取引媒介者システム300と、通信ネットワークを介して接続されている。取引媒介者システム300は、トークンの取引を行う投資家が管理する投資家端末装置400と通信ネットワークを介して接続されている。トークン発行体は、社債等の金融商品に基づくトークンを用いて資金を調達する者、例えば、金融機関又は事業会社である。取引媒介者は、トークンの取引を媒介する者、例えば、銀行又は証券会社である。
【0014】
トークン発行信託システム100、トークン発行体システム200、及び取引媒介者システム300は、それぞれステーブルコイン用BC(コイン用ブロックチェーン)500及び社債トークン用BC(トークン用ブロックチェーン)600のノードとなり、それぞれアドレスを有している。なお、テーブルコイン用BC500、及び/又は社債トークン用BCは、好ましくはパブリックブロックチェーン、またはプライベートブロックチェーンとすることができる。
【0015】
ステーブルコイン用BCに用いるステーブルコインは、好ましくは法定通貨にペッグする、または関連付けることができる。したがって、ステーブルコインの価値は、法定通貨によって担保されている。限定するものではないが、ステーブルコインとしては、例えば、Utility Settlement Coin(USC)(Fnality)、Libra、LCNEM、またはTether等を用いることができる。社債トークン用BC600に用いるトークン(セキュリティトークン)は、トークン所有者の移転の記録を含んでおり、社債原簿として用いることができる。
【0016】
トークン発行信託システム100は、ステーブルコイン用BC500及び社債トークン用BC600の共通アドレスとなる信託アドレス140を有している。代替として、トークン発行信託システム100は、ステーブルコイン用BC500のアドレス140a、及び社債トークン用BC600の信託アドレス140bを有してもよい。
【0017】
取引媒介者システム300は、ステーブルコイン用BC500及び社債トークン用BC600の共通アドレスとなる取引媒介者アドレス340を有している。代替として、取引媒介者システム300は、ステーブルコイン用BC500のアドレス340a、及び社債トークン用BC600の信託アドレス340bを有してもよい。
【0018】
投資家端末装置400は、ステーブルコイン用BC500及び社債トークン用BC600の共通アドレスとなる投資家アドレス440を有している。代替として、投資家端末装置400は、ステーブルコイン用BC500のアドレス440a、及び社債トークン用BC600の信託アドレス440bを有してもよい。
【0019】
トークン発行信託システム100は、ユーザインタフェース(UI)110と、トークン発行信託サーバ(トークン管理サーバ)120と、勘定系サーバ130とを有している。トークン発行信託サーバ120及び勘定系サーバ130は、互いに通信可能に接続されている。トークン発行信託システム100は、トークンを発行(生成)することができ、トークンを発行(生成)を、他のシステム200、300又は端末装置400(400A,400B)に通知することができる。
【0020】
トークン発行体システム200は、トークン管理サーバ220と、通貨管理部230とを有している。通貨管理部230は、トークン発行体の法定通貨口座を介して勘定系サーバ130にアクセスして法定通貨の移動を実行する。なお、トークン管理サーバ220及び通貨管理部230は、トークン発行信託システム100の一部として提供されてもよい。取引媒介者サーバ300は、UI310と、トークン管理サーバ320と、通貨管理部330とを有している。トークン管理サーバ320及び通貨管理部330は、互いに通信可能に接続されている。なお、トークン管理サーバ320及び通貨管理部330は、トークン発行信託システム100の一部として提供されてもよい。
【0021】
投資家端末装置400は、取引媒介者サーバ300のUI310にアクセス可能とするウェブブラウザ410と、通貨管理部430とを有している。通貨管理部430は、投資家の法定通貨口座を介して勘定系サーバ130にアクセスして法定通貨の移動を実行する。
【0022】
(社債トークン発行時の処理)
第1の実施形態のトークン発行信託システム100を含むネットワークにおける、社債トークン発行時の処理を、
図2を参照して説明する。なお、
図2において、処理に直接的に関係ない部分の図示は、適宜省略している。ステップS101で、トークン発行信託サーバ120は、取引媒介者システム300から利用者(投資家)事前登録のために利用者情報(投資家情報)を受信し記憶部(不図示)に記憶する。ステップS102で、投資家端末装置400と取引媒介者システム300との間で社債トークンの売買約定が、ネットワークを介して定められる。
【0023】
売買約定にしたがって、ステップS103で、トークン管理サーバ320が投資家確定登録を実行するとともに、投資家確定登録の情報は、トークン発行信託サーバ120と連携され、トークン発行信託サーバ120に同一の情報が登録される。投資家確定登録の情報に応じて、ステップS104で、トークン発行信託サーバ120が社債トークン新規登録を実行するとともに、社債トークン新規登録の情報は、トークン管理サーバ320と連携され、トークン管理サーバ320に同一の情報が登録される。
【0024】
ステップS105で、トークン管理サーバ320は、ステーブルコイン用BC500で管理されるステーブルコインを購入するために、通貨管理部330は、法定通貨でトークン発行体に対する購入代金の支払いを実行する。ステップS106で、通貨管理部330は、取引媒介者アドレス340を用いたステーブルコインの購入を開始する。必要に応じて、ステップS106’で、通貨管理部330は、ステーブルコインを法定通貨に変換して、法定通貨口座に入金する。
【0025】
ステップS107Aで、トークン管理サーバ320は、ステーブルコイン用BC500を用いて、取引媒介者アドレス340から信託アドレス140に対して、ステーブルコインの移転情報を送信し承認を受ける。ステップS107Bで、トークン発行信託サーバ120は、ステーブルコインの移転情報を受信し承認すると、ステーブルコインに応じた社債トークンを発行して、社債トークン用BC600を用いて、信託アドレス140から取引媒介者アドレス340に対して、発行したトークンの移転情報を送信し承認を受ける。なお、ステップS107A及びステップS107Bの手続の完了(承認)によって、トークン発行システム100及び取引媒介者システム300の間における、社債トークンの移転処理が完了する。
【0026】
ステップS107A及びステップS107Bの処理は、好ましくはDVP(Delivery Versus Payment)で実行することができる。本実施形態におけるDVPとは、社債トークンの引渡し(Delivery)とステーブルコインによる代金の支払い(Payment)とを相互に条件を付け、一方の実行完了に応じて、他方を実行するようにしたものである。または、ステップS107A及びステップS107Bの処理は、好ましくはアトミックスワップで実行することもできる。
【0027】
アトミックスワップとは、仲介者をはさまずにユーザー間で異なる暗号資産同士(本実施形態では、ステーブルコインとトークン)の交換ができるようにした仕組みである。本実施形態における動作を説明する。取引媒介者システム300は1コインのステーブルコインを10トークンのセキュリティトークンと交換し、トークン発行信託システム100は10トークンのセキュリティトークンを1コインのステーブルコインと交換する状況を想定する。
【0028】
取引媒介者システム300がトークン発行信託システム100に対して1コインを送るときは、取引媒介者システム300は信託アドレス140(マルチシグアドレス)に1コインの情報を送信する。トークン発行信託システム100が取引媒介者システム300に対して、10トークンを送るときは、トークン発行信託システム100は取引媒介者アドレス340(マルチシグアドレス)に10トークンの情報を送信する。
【0029】
信託アドレス140及び取引媒介者アドレス340は、ロックされており、HTLC(ハッシュド・タイム・ロック・コントラクト)によって一定の条件を満たさないとロックが解除されない、そして、本実施形態において、HTLCは、ステーブルコイン及びセキュリティコインの送信が確認された場合、HTLCによってロックが解除され、お互いの元へとステーブルコイン及びセキュリティコインのデータが送信され、ステップS107A及びステップS107Bの処理が完了する。
【0030】
ステップS108で、社債トークンの移転契約の完了に応じて、勘定系サーバ130は、受け取ったステーブルコインを、対応する価値の法定通貨に変換する。ステップS109で、勘定系サーバ130は、交換された法定通貨をトークン発行体システム200の法定通貨口座に送金する。
【0031】
ステップS110で、投資家端末装置400は、ウェブブラウザ等からの入力にしたがって通貨管理部430に対し、ステーブルコインの購入を指図する。ステップS111で、通貨管理部430は、ステーブルコイン用BC500上での、ステーブルコインの移転を開始する。
【0032】
ステップS112で、トークン発行信託サーバ120は、社債トークン用BC600を用いて、取引媒介アドレス340から投資家アドレス440に対して、社債トークン原簿名義の変更登録情報を送信し承認を受けることにより、社債トークン原簿名義の変更登録情報を社債トークン用BC600に登録する。
【0033】
ステップS113Aで、投資家端末装置400は、ステーブルコイン用BC500を用いて、投資家アドレス440から取引媒介者アドレス340に対して、ステーブルコインの移転情報を送信し承認を受ける。ステップS113Bで、トークン管理サーバ320は、ステーブルコインの移転情報を受信し承認すると、社債トークン用BC600を用いて、取引媒介者アドレス340から投資家アドレス440への、移転するステーブルコインに応じた社債トークンの移転情報を送信し承認を受ける。なお、ステップS113A及びステップS113Bの手続の完了(承認)を持って、取引媒介者システム300及び投資家端末装置400の間における、社債トークンの移転処理が完了する。ステップS113A及びステップS113Bの処理は、好ましくはDVPで実行することができる。または、ステップS113A及びステップS113Bの処理は、好ましくはアトミックスワップで実行することもできる。
【0034】
(社債トークン利払い時の処理)
第1の実施形態のトークン発行信託システム100を含むネットワークにおける、社債トークン利払い時の処理を、
図3を参照して説明する。なお、
図3において、処理に関係ない部分の図示は、適宜省略している。ステップS201で、トークン発行体システム200の通貨管理部230は、社債の利払い実行時に、トークン発行体の法定通貨口座を介して勘定系サーバ130にアクセスして、トークン発行信託システム100が有する入金用口座への法定通貨の送金を実行する。法定通貨の送金実行後、ステップS202で、通貨管理部230は、送金された法定通貨を対応するステーブルコイン(利払い用)への交換処理を実行する。
【0035】
ステップS203Aで、トークン発行体サーバ120は、ステーブルコイン用BC500を用いて、信託アドレス140から投資家アドレス440に対して、利払い用のステーブルコインの移転情報を送信し承認を受ける。ステップS203Bで、トークン発行体サーバ120は、社債トークン用BC600を用いて、信託アドレス140から他のアドレスに対して、ステーブルコインの移転による利払い完了情報を送信し承認を受けることにより、社債トークン用BC600に利払い完了を登録する。これによって、社債トークン用BC600を社債原簿として各種情報を管理することができる。ステップS203A及びステップS203Bの処理は、好ましくはDVPで実行することができる。または、ステップS203A及びステップS203Bの処理は、好ましくはアトミックスワップで実行することもできる。なお、社債トークンの償還時の処理は、
図3の社債トークン利払い時の処理と同様とすることができる。
【0036】
(社債トークンの売買時の処理)
第1の実施形態のトークン発行信託システム100を含むネットワークにおける、社債トークン売買時の処理を、
図4を参照して説明する。なお、ステップS401の前に、第1投資家による社債トークンの売りと、第2投資家による社債トークンの買いとが、予め成立していることとする。
【0037】
ステップS401で、取引媒介者システム300は、第1投資家端末装置400Aに対して、売買約定(売り)の実行を送信する。ステップS402で、トークン管理サーバ320は、社債トークン用BC600を用いて、取引媒介者アドレス340から他のアドレスに対して、社債原簿名義の変更登録(売り)の情報を送信し承認を受ける。
【0038】
ステップS403で、トークン管理システム320は、通貨管理部330に対して、ステーブルコインの購入を指図する。ステップS404で、ステーブルコイン用BC500を用いて、ステーブルコインの購入を開始する。必要に応じて、ステップS404’で、通貨管理部330は、ステーブルコインを法定通貨に交換して、法定通貨口座に入金することもできる。
【0039】
ステップS405Aで、取引媒介者システム300は、ステーブルコイン用BC500を用いて、取引媒介者アドレス340から第1投資家アドレス440Aに対して、ステーブルコインの移転情報を送信し承認を受ける。ステップS405Bで、第1投資家端末装置400Aは、ステーブルコインの移転情報を受信し承認すると、社債トークン用BC600を用いて、第1投資家アドレス440Aから取引媒介者アドレス340に対して、移転するステーブルコインに応じた社債トークンの移転情報を送信し承認を受ける。なお、ステップS405A及びステップS405Bの手続の完了(承認)を持って、取引媒介者システム300及び第1投資家端末装置40A0の間における、社債トークンの移転処理が完了する。ステップS405A及びステップS405Bの処理は、好ましくはDVPで実行することができる。または、ステップS405A及びステップS405Bの処理は、好ましくはアトミックスワップで実行することもできる。
【0040】
ステップS406で、取引媒介者システム300は、第2投資家端末装置400Bに対して、売買約定(買い)の実行を送信する。ステップS407で、第2投資家端末装置400Bには、ウェブブラウザ410からの入力にしたがって、ステーブルコインの購入が指図される。ステップS408で、第2投資家端末装置400Bは、ステーブルコイン用BC500を用いて、ステーブルコインの購入を開始する。ステップS409で、トークン管理サーバ320は、社債トークン用BC600を用いて、取引媒介者アドレス340から他のアドレスに対して、社債原簿名義の変更登録(買い)の情報を送信し承認を受ける。
【0041】
ステップS410Aで、第2投資家端末装置400Bは、ステーブルコイン用BC500を用いて、第2投資家アドレス440Bから取引媒介者アドレス340に対して、ステーブルコインの移転情報を送信し承認を受ける。ステップS410Bで、取引媒介者システム300は、ステーブルコインの移転情報を受信し承認すると、社債トークン用BC600を用いて、取引媒介者アドレス340から第2投資家アドレス440Bに対して、移転するステーブルコインに応じた社債トークンの移転情報を送信し承認を受ける。なお、ステップS410A及びステップS410Bの手続の完了(承認)を持って、取引媒介者システム300及び第2投資家端末装置400Bの間における、社債トークンの移転処理が完了する。ステップS410A及びステップS410Bの処理は、好ましくはDVPで実行することができる。または、ステップS410A及びステップS410Bの処理は、好ましくはアトミックスワップで実行することもできる。
【0042】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係るトークン発行信託システム100を含むネットワークの構成図を、
図5に示す。第2の実施形態は、ブロックチェーンを用いて、金融商品として不動産を裏付けとした不動産トークン(セキュリティトークン)を発行し移転する場合を例示する。第2の実施形態において、第1の実施形態と同一部分の説明は省略し、異なる部分を説明する。
【0043】
売主端末装置700は、ウェブブラウザ710と、通貨管理部730とを有している。売主端末装置700は、ネットワークを介してトークン発行信託システム100と通信することができる。通貨管理部730は、トークン発行信託システム100の法定通貨口座を介して勘定系サーバ130にアクセスして法定通貨の移動を実行する。トークン発行信託システム100、取引媒介者システム300、投資家端末装置400、及び売主端末装置700は、不動産トークン用BC600Aのノードとなり、それぞれブロックチェーン用アドレス140(140a、140b)、340(340a、340b)、440(440a、440b)、740(740a、740b)を有している。なお、不動産トークン用BC(トークン用ブロックチェーン)600Aは、好ましくはパブリックブロックチェーン、またはプライベートブロックチェーンとすることができる。
【0044】
不動産トークン用BC600Aに用いる不動産トークンは、トークン所有者の移転の記録を含んでおり、受益権原簿として用いることができる。売主端末装置700は、ステーブルコイン用BC500及び不動産トークン用BC600Aの共通アドレスとなる売主アドレス740を有している。代替として、売主端末装置700は、ステーブルコイン用BC500のアドレス740a、及び不動産トークン用BC600Aの売主アドレス740bを有してもよい。
【0045】
(不動産トークン発行時の処理)
第2の実施形態のトークン発行信託システム100を含むネットワークにおける、不動産トークン発行時の処理を、
図6を参照して説明する。ステップS601Aで、トークン発行信託システム100は、売主端末装置700から信託契約・設定の情報を受信し、トークン発行信託サーバ120に信託契約・設定の情報を記憶する。ステップS601Bで、トークン発行信託システム100は、信託引受時の法令対応情報を、売主端末装置700に送信する。なお、発行信託システム100の運営者は、売主(委託者)が有する不動産について、売主との間で信託契約を締結し、法務局に信託登記を行う。
【0046】
ステップS602で、トークン発行信託サーバ120は、不動産トークン用BC600Aを用いて、信託アドレス140から他のアドレスに対して、不動産トークン(セキュリティトークン)の発行情報を送信し承認を受ける。不動産トークンは、受益証券とすることができる。ステップS603で、トークン発行信託サーバ120は、不動産トークン用BC600Aを用いて、信託アドレス140から売主アドレス740に対して、不動産トークン交付情報を送信し承認を受ける。
【0047】
ステップS604で、トークン発行信託サーバ120は、取引媒介者システム300のトークン管理サーバ320に対して、不動産への投資判断に必要な事項を記載した目論見書を送信する。ステップS605で、トークン管理サーバ320は、不動産トークン用BC600Aを用いて、取引媒介者アドレス340から他のアドレスに対して、利用者登録の情報を送信し、不動産トークン用BC600A上に記録する。不動産トークンに投資する投資家が確定している場合、ステップS606で、トークン管理サーバ320は、不動産トークン用BC600Aを用いて、取引媒介者アドレス340から他のアドレスに対して、確定投資家登録の情報を送信し、不動産トークン用BC600A上に記録する。
【0048】
ステップS607で、トークン管理サーバ320は、通貨管理部330に対して、ステーブルコインの購入を指図する。ステップS608で、通貨管理部330は、ステーブルコイン用BC500を用いて、取引媒介者アドレス340から他のアドレスに対して、ステーブルコインの購入(引受)の情報を送信し承認を受ける。
【0049】
ステップS609Aで、取引媒介者システム300は、ステーブルコイン用BC500を用いて、取引媒介者アドレス340から売主アドレス740に対して、ステーブルコインの移転(引受)情報を送信し承認を受ける。ステップS609Bで、売主端末装置700は、ステーブルコインの移転(引受)情報を受信し承認すると、不動産トークン用BC600Aを用いて、売主アドレス340から取引媒介者アドレス340に対して、移転するステーブルコインに応じた不動産トークンの移転情報を送信し承認を受ける。なお、ステップS609A及びステップS609Bの手続の完了(承認)を持って、取引媒介者システム300及び売主端末装置700の間における、不動産トークンの移転処理が完了する。ステップS609A及びステップS609Bの処理は、好ましくはDVPで実行することができる。または、ステップS609A及びステップS609Bの処理は、好ましくはアトミックスワップで実行することもできる。
【0050】
ステップS610Aで、投資家端末装置400は、取引媒介者システム300に対して不動産トークンの購入申込情報を送信する。ステップS610Bで、取引媒介者システム300は、投資家端末装置400に対して、法令対応情報を送信する。ステップS611で、通貨管理部430に対してステーブルコインの購入が指図される。ステップS612で、法定通貨口座管理430は、ステーブルコイン用BC500を用いて、投資家アドレス440から他のアドレスに対して、ステーブルコインの購入情報を送信し承認を受ける。
【0051】
ステップS613Aで、投資家端末装置400は、ステーブルコイン用BC500を用いて、投資家アドレス440から取引媒介者アドレス340に対して、ステーブルコインの移転情報を送信し承認を受ける。ステップS613Bで、取引媒介者システム300は、ステーブルコインの移転情報を受信し承認すると、不動産トークン用BC600Aを用いて、取引媒介者アドレス340から投資家アドレス440に対して、移転するステーブルコインに応じた不動産トークンの移転情報を送信し承認を受ける。なお、ステップS613A及びステップS613Bの手続の完了(承認)を持って、取引媒介者システム300及び投資家端末装置400の間における、不動産トークンの移転処理が完了する。ステップS613A及びステップS613Bの処理は、好ましくはDVPで実行することができる。または、ステップS613A及びステップS613Bの処理は、好ましくはアトミックスワップで実行することもできる。
【0052】
(不動産管理中の処理)
第2の実施形態のトークン発行信託システム100を含むネットワークにおける、期中(不動産管理中)の処理を、
図7を参照して説明する。PM端末装置800は、不動産のプロパティマネジメント(PM)を行うPM業者の端末装置である。PM端末装置800は、ウェブブラウザ810と、通貨管理部830とを有している。事業者端末装置900は、ビル等の不動産を賃借する事業者(テナント)の端末装置であり、通貨管理部930を有している。
【0053】
ステップS701で、通貨管理部930が、勘定系サーバ130に対して賃料の支払いを実行する。ステップS702で、PM端末装置800は、不動産の管理・維持に関するPMレポートを、トークン発行信託システム100に対して送信する。ステップS703で、勘定系サーバ130は、PM業者の法定通貨口座に対してPM費用を入金する。ステップS704で、トークン発行信託システム100は、投資家端末装置400に対して、信託財産報告書を送信する。ステップS705で、トークン発行信託サーバ120は、投資家に配当金の支払いのために配当金情報の連携を、勘定系サーバ130又はトークン発行信託システム100の管理部(不図示)に指示する。ステップS706で、勘定系サーバ130又は管理部は、信託アドレス140から他のアドレスに対して、法定通貨の配当金に相当するステーブルコインの発行情報を送信し承認を受ける。
【0054】
ステップS707Aで、トークン発行信託システム100は、ステーブルコイン用BC500を用いて、信託アドレス140から投資家アドレス440に対して、配当金に応じたステーブルコインの移転情報を送信し承認を受ける。
【0055】
ステップS707Bで、トークン発行信託サーバ120は、不動産トークン用BC600Aを用いて、信託アドレス140から他のアドレスに対して、配当金の支払い済み情報(フラグ)を送信し承認を受ける。なお、ステップS707A及びステップS707Bの手続の完了(承認)を持って、トークン発行信託システム100から投資家端末装置400に対する、配当金の支払い手続が完了する。なお、ステップS708で、投資家端末装置400は、必要に応じてステーブルコインを法定通貨に変換することができる。
【0056】
本発明において、発行及び移転されるトークンに基づく金融商品は、第1の実施形態で用いた社債(好ましくはホール債)、第2の実施形態で用いた不動産(好ましくは事業用不動産)に限定されない。本発明におけるトークンに基づく金融商品は、例えば、貸出、商品先物市場のコモデティ、株券、または特定事業等とすることもできる。
【0057】
本発明の各実施形態によれば、あらゆる金融商品を「セキュリティトークン」(ブロックチェーン上の価値記録=電磁的社債原簿、又は電磁的受益権原簿の位置付け)として取扱可能なシステム基盤(プラットフォーム)を提供することができる。
【0058】
本発明の各実施形態のトークン発行信託システムは、次のような効果を奏する。(1)取引参加者間の権利移転を自動化が可能となる。これによって、ブロックチェーン上の名義変更・承認行為を実行することにより、レコンサイル等の照合が不要となる。(2)利払・償還業務自動化をすることが可能となる。スマートコントラクトによる当初契約内容をプログラムとして設定し、期中・終了業務を自動的に実行することができる。(3)完全DVP(自動DVP)により、即日等の決済が可能となる。さらに、ステーブルコインとの連携による国境に関係なく決済が可能となる。
【0059】
これらに加えて、本発明の各実施形態のトークン発行信託システムにおいては、トークンを受益証券持分とし、当該受益証券の裏付としてあらゆるアセットタイプを合わせて受託(受益証券発行信託)することで、現行のトークンエコノミーにおける投資家保護上の課題(トークン価値は裏付けがなく、購入者は見えないカウンターパーティリスクを負担している)を解決しつつ、トークンの優位点である各種自動化の恩恵も得ることが可能となる。受益権の場合、権利移転時に確定日付ある承諾が必要となり自動化メリットを損なうが、本発明の各実施形態のトークン発行信託システムのように、受益証券をトークンとした場合は原簿書き換え(BC上の持ち分更新)のみで、第三者対抗要件の具備が可能となるという自動化の恩恵を有する。