(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865260
(24)【登録日】2021年4月7日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】焼成が可能なフィリング用クリーム組成物及びケーキ製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 9/20 20160101AFI20210419BHJP
A23D 7/00 20060101ALI20210419BHJP
A21D 13/31 20170101ALI20210419BHJP
【FI】
A23L9/20
A23D7/00 508
A21D13/31
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-218464(P2019-218464)
(22)【出願日】2019年12月3日
(65)【公開番号】特開2020-89360(P2020-89360A)
(43)【公開日】2020年6月11日
【審査請求日】2019年12月3日
(31)【優先権主張番号】10-2018-0153334
(32)【優先日】2018年12月3日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】317017461
【氏名又は名称】ロッテ コンフェクショナリー カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】307013857
【氏名又は名称】株式会社ロッテ
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(74)【代理人】
【識別番号】100102875
【弁理士】
【氏名又は名称】石島 茂男
(72)【発明者】
【氏名】リー ドン フワ
(72)【発明者】
【氏名】シム ソー ドン
(72)【発明者】
【氏名】パク キ ホ
【審査官】
山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−081391(JP,A)
【文献】
特開平10−262565(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/117630(WO,A1)
【文献】
特開2013−021964(JP,A)
【文献】
特開平11−032676(JP,A)
【文献】
特開平10−084874(JP,A)
【文献】
特開2004−105032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−35/00
A21D 2/00−17/00
A23D 7/00−7/06
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成が可能な耐熱性内部充填用クリーム組成物であって、
組成物の全重量に対して、
食用油脂37〜53重量%、
糖類を精製水に溶解させた水溶液40〜53重量%、
澱粉1〜5重量%、
乳化剤と安定剤の混合物0.5〜5重量%、及び
乳清粉末1〜5重量%を含み、
前記内部充填用クリーム組成物は、比重が1.00〜1.13であることを特徴とする、焼成が可能な耐熱性内部充填用クリーム組成物。
【請求項2】
前記内部充填用クリーム組成物は、組成物の全重量に対して、
香料0.1〜3重量%、
抗酸化剤0.01〜1重量%、及び
着色料0.001〜0.1重量%をさらに含む、請求項1に記載の焼成が可能な耐熱性内部充填用クリーム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の内部充填用クリーム組成物の製造方法であって、
前記食用油脂を含む油相部を製造する段階;
糖類を精製水に溶解させた水溶液を含む水相部を製造する段階;
前記油相部を水相部に安定剤を用いて混合する段階;及び
前記混合物を撹拌する段階;を含む、内部充填用クリーム組成物の製造方法。
【請求項4】
前記方法は、組成物の比重が1.00〜1.13になるまで1000rpm〜2000rpmの回転数で3分〜10分間撹拌する段階を含む、請求項3に記載の内部充填用クリーム組成物の製造方法。
【請求項5】
ケーキ内の充填物としての内部充填用クリームが含まれたケーキの製造方法であって、
ケーキ組成物と請求項1又は2による内部充填用クリーム組成物とを混合して成形する段階及び焼成する段階を含み、
前記ケーキ組成物は、比重が0.80〜0.85であり、
前記ケーキ組成物は、組成物の全重量に対して、砂糖10〜30重量%、精製塩0.1〜0.5重量%、油脂15〜25重量%、全卵20〜30重量%、小麦粉20〜30重量%を含む、ケーキ内の充填物としての内部充填用クリームが含まれたケーキの製造方法。
【請求項6】
前記内部充填用クリーム組成物とケーキ組成物は1:2〜5の重量比で混合され、
前記焼成は、150〜200℃の温度で15〜45分間焼成する、請求項5に記載のケーキ内の充填物としての内部充填用クリームが含まれたケーキの製造方法。
【請求項7】
前記内部充填用クリーム組成物の比重は、前記ケーキ組成物の比重に比べて0.13〜0.35高い、請求項5に記載のケーキ内の充填物としての内部充填用クリームが含まれたケーキの製造方法。
【請求項8】
前記ケーキ組成物の製造は、比重が0.80〜0.85になるまで220〜280rpmの回転数で3〜10分間撹拌する段階を含む、請求項5に記載のケーキ内の充填物としての内部充填用クリームが含まれたケーキの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、焼成(Baking)が可能なフィリング用クリーム組成物及びケーキ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、製菓用に使用するフィリング用クリームは、長期間の賞味期限を考慮して水分が除去された形態であり、油脂と粉末、糖類中心の混合物或いは極少量の水分が含有されたW/O(water in oil)形態のクリームがほとんどである。これは、クリーム内に含有された多量の油脂で軟らかいクリームの食感を表現することができ、低い水分含量で保存安全性を高めることができるからであるが、口溶けが低調であり、味を表現するための水相成分が油脂で取り囲まれている形態であるため、多様な味を表現することが難しく、強い油っぽさを示し、表現しようとする本来のものとの間で味及び食感の差が大きく発生するという問題を有する。
【0003】
その一方で、短い賞味期限内に販売される製パン用クリームの場合、クリーム内の水分含量が高いため味を容易に表現することができ、製菓用クリームに比べて優れた食感及び味を有しているが、熱安定性と保管及び流通安全性が低下するので大量生産及び流通において問題を有している。
【0004】
また、製菓用/製パン用クリームは、両方とも熱安定性に欠けているので焼成が不可能であり、通常、60℃以上の温度では本来の形態を失ってしまい、変形あるいは溶けて液体状態に変わる。
【0005】
一方、このようなクリーム組成物を用いてフィリング物を含有したケーキ及び菓子/パン類を製造するとき、フィリング物を供給するためには特別な製造設備及び工程或いは製造者の煩雑な作業工程が必須となる。その結果、経費が生じたり、フィリング物の充填時において製造されたケーキ類に物理的な損傷が生じたり、焼成が完了した後のフィリング物の充填によって衛生的な問題が生じたりする可能性がある。
【0006】
したがって、クリームによる味表現を強化し、優れた食感を有し、熱安定性と保管及び流通安全性を技術的に付与した焼成が可能なフィリング用クリーム組成物を製造すること、ケーキの製造時におけるフィリング物の充填の便宜性を高め、流通安全性を確保することによって商業的に消費者が満足するに値する水準の製品が要求されている実情にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2017−0080289号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者等は、前記のような問題を研究した結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の一態様は、風味が良好であり、食感に優れたケーキの製造が可能な焼成用フィリングクリーム組成物を提供することにある。
【0010】
さらに詳細には、焼成が可能な軟らかい食感のクリームフィリング物を提供し、ケーキの製造時、特別な装置及び工程無しでクリームフィリング物が含有されたケーキの製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の目的は、以上で言及した目的に制限されない。本発明の目的は、以下の説明によってより明らかになり、特許請求の範囲に記載の手段及びその組み合わせで実現され得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、焼成が可能な耐熱性クリーム組成物であって、組成物の全重量に対して、食用油脂37〜53重量%、糖類を精製水に溶解させた水溶液40〜53重量%、澱粉1〜5重量%、乳化剤と安定剤の混合物0.5〜5重量%、及び乳清粉末1〜5重量%を含み、前記組成物は、比重が1.00〜1.13であることを特徴とする、焼成が可能な耐熱性クリーム組成物を提供する。
【0013】
本発明の一態様において、前記組成物は、組成物の全重量に対して、香料0.1〜3重量%、抗酸化剤0.01〜1重量%、及び着色料0.001〜0.1重量%をさらに含む焼成が可能な耐熱性クリーム組成物を提供する。
【0014】
本発明の他の態様は、前記クリーム組成物の製造方法であって、前記食用油脂を含む油相部を製造する段階;糖類を精製水に溶解させた水溶液を含む水相部を製造する段階;前記油相部を水相部に乳化剤と安定剤とを用いて混合する段階;及び前記混合物を撹拌する段階;を含むクリーム組成物の製造方法を提供する。
【0015】
本発明の他の態様において、前記方法は、組成物の比重が1.00〜1.13になるまで1000rpm〜2000rpmの回転数で3分〜10分間撹拌する段階を含むクリーム組成物の製造方法を提供する。
【0016】
本発明の更に他の態様は、クリームが含まれたケーキの製造方法であって、ケーキ組成物と前記クリーム組成物のうちいずれか一つのクリーム組成物とを混合して成形する段階及び焼成する段階を含み、前記ケーキ組成物は、比重が0.80〜0.85であり、前記ケーキ組成物は、組成物の全重量に対して、砂糖10〜30重量%、精製塩0.1〜0.5重量%、油脂15〜25重量%、全卵20〜30重量%、小麦粉20〜30重量%を含む、クリームが含まれたケーキの製造方法を提供する。
【0017】
本発明の更に他の態様において、前記クリーム組成物とケーキ組成物は1:2〜5の重量比で混合され、前記焼成は、150〜200℃の温度で15〜45分間焼成する、クリームが含まれたケーキの製造方法を提供する。
【0018】
本発明の更に他の態様において、前記クリーム組成物の比重は、前記ケーキ組成物の比重に比べて0.13〜0.35高い、クリームが含まれたケーキの製造方法を提供する。
【0019】
本発明の更に他の態様において、前記ケーキ組成物の製造は、比重が0.80〜0.85になるまで220〜280rpmの回転数で3〜10分間撹拌する段階を含む、クリームが含まれたケーキの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によって提供される焼成用クリーム組成物は、より本来のものに近い味及び食感が表現され、製造時、ケーキと共に高温で長時間焼成が可能な水準の耐熱性が確保され、これに基づいて製造されたフィリング物が含有されたケーキは、製造現場での大量生産において、特別な充填設備及び作業を必要としないため製造工程を簡素化でき、流通安全性を強化し、供給者の要求を充足させると同時に、優れた品質の食品を望む消費者の需要を理解した上で製品を提供することができる。
【0021】
本発明の効果は、以上で言及した効果に限定されない。本発明の効果は、以下の説明で推論可能な全ての効果を含むものとして理解しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一態様に係る完成したケーキの模式図であって、ケーキ組成物内にクリーム組成物が含有された形態の完成したケーキの模式図である。
【
図2】本発明のクリーム組成物を含むケーキの製造時、フィリング物の位置及び形態を確認するための比較例3、実施例1及び比較例1の切断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本記載で数値範囲が開示される場合、このような範囲は連続的であり、異なる形で指摘されない限り、このような範囲の最小値から最大値が含まれた前記最大値までの全ての値を含む。さらに、このような範囲が整数を称する場合、異なる形で指摘されない限り、最小値から最大値が含まれた前記最大値までを含む全ての整数が含まれる。
【0024】
本明細書において、範囲が変数に対して記載される場合、前記変数は、前記範囲の記載された各終了点を含む記載された範囲内の全ての値を含むものと理解され得る。例えば、「5〜10」の範囲は、5、6、7、8、9及び10の値のみならず、6〜10、7〜10、6〜9、7〜9などの任意の下位範囲を含み、5.5、6.5、7.5、5.5〜8.5及び6.5〜9などの記載された範囲の範疇に妥当な各整数間の任意の値も含むものと理解され得る。また、例えば、「10%〜30%」の範囲は、10%、11%、12%、13%などの各値と30%までを含む全ての整数のみならず、10%〜15%、12%〜18%、20%〜30%などの任意の下位範囲を含み、10.5%、15.5%、25.5%などのように記載された範囲の範疇内の妥当な各整数間の任意の値も含むものと理解され得る。
【0025】
以下、本発明に対して詳細に説明する。
【0026】
本発明は、焼成が可能なフィリング用クリーム組成物及びケーキ製造方法に関し、より詳細には、焼成が可能なフィリング用クリーム組成物を製造し、特別な供給装置無しでクリーム組成物をケーキ内に充填するケーキ製造方法を提供する。より詳細には、特定の原料を組み合わせて使用し、製品の食感に優れ、焼成中の溶解及び性状の変化を防止できるフィリングクリームを製造し、ケーキ内にクリームを充填するための特別な供給装置及び工程無しでフィリング物が含有されたケーキを製造する方法に関する。
【0027】
一般に、ケーキ内にクリームを充填するためには、まず、ケーキを製造した後、穴を開けることによって内層部を掻き出し、絞り袋或いはフィリング用ユニットを用いてケーキ内のクリームを充填する。その結果、時間、費用及び追加工程設備が多く必要になる。
【0028】
本発明は、前記のような問題を解決し、最初の液体状態のケーキミックスとゲル化されたクリーム組成物とを共に充填して焼成し、追加工程無しで直ちに
図1のような完成品を得ることができる。このような発明が可能な理由は、ゲル化されたクリーム組成物が、焼成が可能になるように耐熱性が付与され、ケーキミックスとクリーム組成物との比重差を用いて自然にケーキの内層に位置できるように設計されたためである。
【0029】
以下では、本発明の多様な態様を説明する。
【0030】
本発明の一態様は、 焼成が可能な耐熱性クリーム組成物であって、組成物の全重量に対して、食用油脂37〜53重量%、糖類を精製水に溶解させた水溶液40〜53重量%、澱粉1〜5重量%、乳化剤と安定剤の混合物0.5〜5重量%、及び乳清粉末1〜5重量%を含み、前記組成物は、比重が1.00〜1.13であることを特徴とする、焼成が可能な耐熱性クリーム組成物を提供する。
【0031】
一態様において、前記食用油脂は、植物性油脂類及び食用油脂加工品のうち少なくとも一つを含むものであり得る。より具体的には、温度変化に応じて油脂の結晶が発生及び変化する固体脂含量が高い油種よりは、液体油の方が製造適性上有利であるが、特別に要求する最終クリーム組成物の物性によっては固体脂が含有された加工油脂の使用も可能である。
【0032】
一態様において、前記糖類は、糖類加工品類、オリゴ糖類、果糖類、飴類及び糖シロップ類のうち少なくとも一つを含むものであり得る。一態様において、糖類の種類及び含量に応じて味が変化し、保存性(水分活性度及び水分含量)の増減に影響を及ぼして、安定的な油/水混合乳化物を製造することができる。一態様において、糖類を精製水に溶解させた前記水溶液に含まれた糖類は、ソルビトール、グリセリン及び水飴のうちいずれか一つ以上を含み得る。但し、精製水は含まれていなくともよく、糖類の一部の含量で含まれてもよい。
【0033】
一態様において、乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステルを含み、安定剤としてセルロース、キサンタンガム、カラギーナン、ペクチン及び澱粉類のうち少なくとも一つを含むものであり得る。一態様において、乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステルを0〜0.5重量%含み、安定剤としてセルロースを1.5〜2.0重量%含み、キサンタンガム/カラギーナンを0.1〜0.3重量%含み得る。
【0034】
耐熱性クリーム組成物が、前記食用油脂、澱粉、精製水、糖類、乳化剤、安定剤、乳清粉末とを、前記含量範囲内で含む場合、熱安定性に優れるので焼成が可能であり、離水の副作用がなく、風味及び食感に優れ、ケーキの製造時、特別な工程無しでクリーム組成物がケーキの中央部或いは内部に安定的に位置し得る。
【0035】
本発明の一態様において、前記組成物は、組成物の全重量に対して、香料0.1〜3重量%、抗酸化剤0.01〜1重量%、及び着色料0.001〜0.1重量%をさらに含む、焼成が可能な耐熱性クリーム組成物を提供する。
【0036】
耐熱性クリーム組成物が、前記香料、抗酸化剤及び着色料を前記含量範囲内で含む場合、熱安定性に優れるので焼成が可能であり、離水の副作用がなく、風味及び食感に優れ、ケーキの製造時、特別な工程無しでクリーム組成物がケーキの中央部或いは内部に安定的に位置し得る。
【0037】
本発明の他の態様は、前記クリーム組成物の製造方法であって、前記食用油脂を含む油相部を製造する段階;糖類を精製水に溶解させた水溶液を含む水相部を製造する段階;前記油相部を水相部に乳化剤と安定剤とを用いて混合する段階;及び前記混合物を撹拌する段階;を含む、クリーム組成物の製造方法を提供する。
【0038】
一態様において、前記製造方法は、油相部及び水相部を60〜70℃の乳化タンクで混合する段階、冷却する段階及び撹拌する段階を含み、5〜15℃の組成物を製造する段階を含み得る。
【0039】
本発明の他の態様において、前記方法は、組成物の比重が1.00〜1.13になるまで1000rpm〜2000rpmの回転数で3分〜10分間撹拌する段階を含む、クリーム組成物の製造方法を提供する。
【0040】
本発明の更に他の態様は、クリームが含まれたケーキの製造方法であって、ケーキ組成物と前記クリーム組成物のうちいずれか一つのクリーム組成物とを混合して成形する段階及び焼成する段階を含み、前記ケーキ組成物は、比重が0.80〜0.85であり、前記ケーキ組成物は、組成物の全重量に対して、砂糖10〜30重量%、精製塩0.1〜0.5重量%、油脂15〜25重量%、全卵20〜30重量%、小麦粉20〜30重量%を含む、クリームが含まれたケーキの製造方法を提供する。
【0041】
ケーキ組成物が、前記砂糖、精製塩、油脂、全卵及び小麦粉を前記含量範囲内で含む場合、風味及び食感に優れ、ケーキの製造時、特別な工程無しでクリーム組成物がケーキの中央部或いは内部に安定的に位置し得る。
【0042】
本発明の更に他の態様において、前記クリーム組成物とケーキ組成物は1:2〜5の重量比で混合され、前記焼成は、150〜200℃の温度で15〜45分間焼成する、クリームが含まれたケーキの製造方法を提供する。
【0043】
本発明の更に他の態様において、前記クリーム組成物の比重は、前記ケーキ組成物の比重に比べて0.13〜0.35高い、クリームが含まれたケーキの製造方法を提供する。
【0044】
本発明の更に他の態様において、前記ケーキ組成物の製造は、比重が0.80〜0.85になるまで220〜280rpmの回転数で3〜10分間撹拌する段階を含む、クリームが含まれたケーキの製造方法を提供する。
【0045】
以下、具体的な実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。下記の実施例は、本発明の理解を促進するための例示に過ぎなく、本発明の範囲がこれに限定されることはない。
【0046】
<クリーム組成物の製造:クリーム製造例1〜6>
【0047】
本発明の一実施例に係る焼成用クリーム組成物の製造方法は、下記の表1による油相部及び水相部を60〜70℃の乳化タンクで混合する段階と、冷却及び撹拌によって10℃のゲル組成物を製造する段階とを含む。
【0048】
食用油脂としては、植物性油脂である菜種油を使用した。糖類を精製水に溶解させた水溶液において、糖類としてはソルビトール、グリセリン及び水飴を使用した。澱粉としては澱粉加工品を使用した。乳化剤としてはグリセリン脂肪酸エステルを使用し、安定剤としては、セルロース、キサンタンガム及びカラギーナンを使用した。香料としてはバター香料及びミルク香料を使用した。抗酸化剤としてはd−トコフェロール(混合型)を使用した。着色料としてはベータカロチンを使用した。
【0049】
撹拌時、製造例1〜6では、それぞれの比重が発現され得るように、1000rpm〜3500rpmの回転数で3分〜15分間撹拌し、下記の表1のようなクリーム比重の組成物を得た。但し、製造例3では1500rpmで5分間撹拌し、製造例6では3000rpmで10分間撹拌した。
【0050】
比重の測定においては、水を充填したときの重量、試料を充填したときの重量をそれぞれ精秤し、その材料の水に対する比重を計算する方法により、100gの比重カップ(水基準)を用いてそれに相応する試料の比重を測定した。
【0052】
<ケーキ組成物の製造:ケーキ製造例1〜3>
【0053】
本発明の一実施例に係るクリーム充填前のケーキ製造例の配合を表2に示した。
【0054】
糖類としては、ソルビトール、水飴、グリセリン及び加糖練乳を使用した。
【0055】
撹拌時、製造例1では250rpmの回転数で3〜4分間撹拌し、製造例2では300rpmの回転数で3〜4分間撹拌し、製造例3では200rpmの回転数で3〜4分間撹拌することによって下記の表2のような比重を得た。
【0056】
比重の測定においては、水を充填したときの重量、試料を充填したときの重量をそれぞれ精秤し、その材料の水に対する比重を計算する方法により、100gの比重カップ(水基準)を用いてそれに相応する試料の比重を測定した。
【0058】
比重が0.80以下である場合は、ケーキ自体の食感は軽く且つ軟らかいが、前記クリーム組成物との比重差を考慮したとき、ケーキの形態及び充填されたクリーム組成物との食感バランスが多少低下するという官能結果を得た。
【0059】
比重が0.85を超える場合は、クリーム組成物との比重差を考慮したとき、フィリング物の位置及び形態が不良であり、所望の品質の製品を得ることができなかった。
【0060】
したがって、ケーキ組成物は、比重が0.80〜0.85である前記製造例1によって製造した。
【0061】
<実験例1.焼成用クリーム製造例1〜6の組成物評価 >
【0062】
前記クリーム製造例1〜6の製造適性、分離度、熱安定性、風味及び食感を下記のような方法で評価した。
【0063】
製造適性は、クリームの製造時、エマルジョン及びゲル化適性確認(油/水混合及び分離度)について下記4等級のいずれかを記載して評価した。
【0064】
分離度は、クリームの製造後、常温で7日間保管しながら表面の油/水分離程度について下記4等級のいずれかを記載して評価した。
【0065】
熱安定性は、180℃オーブンで30分間焼成した後、クリームの保形・性状について下記4等級のいずれかを記載して評価した。
【0066】
風味及び食感は、クリームの製造後、官能(口溶け(くちどけ)、ゲル強度による食感)について下記4等級のいずれかを記載して評価した。
【0067】
実験の結果は、下記の表3の通りであった。
【0069】
4等級……×:非常に悪い、△:悪い、○:良い、◎:非常に良い
【0070】
製造例1では、製造後、保管中に離水が発生し、不安定な乳化形態によって熱安定性が低下することを確認した。
【0071】
製造例4では、油っぽさが強くなり、製造時に相転移が容易に発生し、製造安定性及び熱安定性が低下することを確認した。
【0072】
製造例5では、冷却後のクリーム強度が最も強いことを確認した。
【0073】
製造例2、製造例3、製造例5、製造例6のクリーム組成物において、適合した製造適性、分離度(離水)及び熱安定性を示すことを最終的に確認した。
【0074】
<クリーム組成物を含むケーキの製造:実施例1〜3及び比較例1〜3>
【0075】
前記表1及び表2で製造されたケーキ15g及び焼成用クリーム組成物5gを順次モルダーで成形した後、180℃オーブンで30分間焼成することによって製品を完成させた。具体的には、下記のような工程で製造した。
【0076】
(1)モルダーにケーキミックス15g充填
【0077】
(2)前記(1)のモルダー上に5gのクリーム組成物充填
【0079】
前記のような組成物の製造工程において、クリームは自然に下降し、ケーキミックスは膨れ上がりながらクリームを覆うようになる。その一方で、一般的なフィリングケーキは、1)モルダーにケーキミックスを充填し、2)焼成した後、3)焼成によって固形化されたケーキの底面側を部分的にくり貫き、4)ケーキ内にクリームを充填する工程、を経る。しかし、本発明のフィリングケーキを製造する工程では、前記 3)、4)の工程を経ることなく前記(1)〜(3)の工程のみでケーキを製造する。
【0080】
製造されたクリーム組成物が含まれたケーキの水分含量、水分活性度、クリーム組成物の熱安定性及び形態、食感を評価した。
【0081】
ケーキの水分含量(%)は、水分測定機(KETT、FD720)で測定し、水分活性度(Aw)はノバシーナ社製のLabmaster−awで測定した。
【0082】
風味及び食感は、製造後、官能(ケーキの内/外層の食感バランス、口溶け(くちどけ)、外層(ケーキ)の食感、内層(クリームの食感)で測定した。
【0083】
フィリング物の位置及び形態は、製造されたケーキの切断面で確認し、
図2の通りであった。
【0085】
×:非常に悪い、△:悪い、○:良い、◎:非常に良い
【0086】
評価結果は、表4及び
図2の通りであった。
【0087】
比較例1では、焼成時に熱安定性が低下し、クリーム組成物の形態が不十分であり、ケーキ内の位置及び形態が不良であった。
【0088】
比較例2では、焼成時に熱安定性が低調であり、クリーム組成物の形態が破壊され、ケーキ内で溶けてなくなり、性状が不良であった。
【0089】
比較例3では、製品内のクリーム組成物がケーキの中央部或いは内部に位置させることができず、ケーキ内部で充填物の形態を作りにくかった。
【0090】
実施例1〜3の場合、熱安定性、風味及び食感、フィリング物の位置及び形態において優れた性質を示した。なお、実施例1及び実施例2の場合、実施例3に比べて食感が軟らかく、ケーキとクリームとのバランスがより一層優れていた。
【0091】
以上、添付の図面を参照して本発明の実施例を説明したが、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明がその技術的思想や必須的な特徴に変更しなくても他の具体的な形態で実施され得ることを理解可能であろう。そのため、以上で記述した実施例は、全ての面で例示的なものであって、限定されるものではない。