特許第6865269号(P6865269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865269
(24)【登録日】2021年4月7日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
   B63J 2/06 20060101AFI20210419BHJP
【FI】
   B63J2/06
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-511092(P2019-511092)
(86)(22)【出願日】2018年2月26日
(86)【国際出願番号】JP2018006939
(87)【国際公開番号】WO2018186050
(87)【国際公開日】20181011
【審査請求日】2019年9月19日
(31)【優先権主張番号】特願2017-76903(P2017-76903)
(32)【優先日】2017年4月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】雲石 隆司
(72)【発明者】
【氏名】上野 一匡
【審査官】 福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−274492(JP,A)
【文献】 特開2006−015933(JP,A)
【文献】 特開2016−191304(JP,A)
【文献】 特開2003−252295(JP,A)
【文献】 特開2008−254470(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/006258(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63J 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に機関室を有する船体と、
前記機関室内に設けられて、気化した際に空気よりも比重の大きい燃料によって駆動される主機関と、
前記機関室に設けられた床と、
前記床に向かって開口する排気導入口と、前記船体の外部で開口する排気排出口とを有する排気ダクトと、
前記排気ダクト内に設けられて、前記排気導入口を介して前記床の上面が負圧となるように吸引する排気ファンとを備え、
前記床は、前記主機関に固定され、貫通孔を有する足場であり、
前記排気導入口は、前記足場の前記貫通孔の下方に開口している船舶。
【請求項2】
前記機関室内で開口する給気排出口と、前記船体の外部で開口する給気導入口とを有する給気ダクトと、
前記給気ダクト内に設けられて、前記船体の外部の空気を前記給気導入口を介して前記機関室内に導入する給気ファンとを備える請求項に記載の船舶。
【請求項3】
前記排気ダクトと前記給気ダクトとは独立して形成されている請求項に記載の船舶。
【請求項4】
前記床は、前記機関室を複数の階に区画し、
前記排気導入口は、前記階の下部に開口している請求項に記載の船舶。
【請求項5】
内部に機関室を有する船体と、
前記機関室内に設けられて、気化した際に空気よりも比重の大きい燃料によって駆動される主機関と、
前記機関室に設けられた床と、
前記床に向かって開口する排気導入口と、前記船体の外部で開口する排気排出口とを有する排気ダクトと、
前記排気ダクト内に設けられて、前記排気導入口を介して前記床の上面が負圧となるように吸引する排気ファンと、
前記機関室内で開口する給気排出口と、前記船体の外部で開口する給気導入口とを有する給気ダクトと、
前記給気ダクト内に設けられて、前記船体の外部の空気を、前記給気導入口を介して前記機関室内に導入する給気ファンと、を備え、
前記排気ダクトと前記給気ダクトとは給排気ダクトとして一体に形成され、
前記給排気ダクトは、上下方向に延在する給排気ダクト本体と、該給排気ダクト本体から側方に分岐して天井に沿って延在する給排気ダクト延長部と、を有し、
前記床は、前記主機関に固定され、貫通孔を有する足場であり、
前記排気導入口は、前記足場の前記貫通孔の下方に開口している船舶。
【請求項6】
前記足場上の気体を前記主機関側に押し戻すようにシールエアを噴出するシールエア噴出装置を備える請求項又は請求項に記載の船舶。
【請求項7】
前記排気ダクトと前記給気ダクトとは給排気ダクトとして一体に形成されている請求項に記載の船舶。
【請求項8】
前記給排気ダクトの前記排気排出口に配置され、一方向に回転させることによって前記機関室内に前記船体の外部の空気が導入され、他方向に回転させることによって前記船体の外部に前記機関室内の空気が排出されるインペラを有する可逆式ファンを有する請求項に記載の船舶。
【請求項9】
前記主機関の排ガスのエネルギーで駆動する過給機と、
前記過給機と前記船体の外部とを連通する主機関給気ダクトとを備える請求項1から請求項のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項10】
前記燃料は、液化石油ガスである請求項1から請求項のいずれか一項に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に関する。
本願は、2017年4月7日に日本に出願された特願2017−076903号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンなどの主機関を備えている船舶として、給気ダクトと排気ダクトとを有し、機関室の換気を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。当該船舶では、給気ダクトを介して、船舶の機関室に燃焼用空気を供給するとともに、機関室内で発生した熱気を含む空気を船体の外部に排出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−184941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、船舶の分野においては、硫黄酸化物(SOx)などの有害物質や大気汚染物質の排出規制が強化される傾向にあり、硫黄分をほとんど含まない燃料を使用する船舶が望まれている。
【0005】
しかしながら、液化石油ガス(LPG,Liquefied Petroleum Gas)などの硫黄分をほとんど含まない燃料は、気化した場合に空気より比重が大きいため、機関室に供給された配管等から万が一漏れた場合、機関室から排出出来ずに機関室内に留まるという懸念がある。
【0006】
この発明は、気化した際に空気より比重の大きい燃料を使用した場合においても、漏洩時の換気を容易に行うことができる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第の態様によれば、船舶は、内部に機関室を有する船体と、前記機関室内に設けられて、気化した際に空気よりも比重の大きい燃料によって駆動される主機関と、前記機関室に設けられた床と、前記床に向かって開口する排気導入口と前記船体の外部で開口する排気排出口とを有する排気ダクトと、前記排気ダクト内に設けられて、前記排気導入口を介して前記床の上面が負圧となるように吸引する排気ファンとを備え、前記床は、前記主機関に固定され、貫通孔を有する足場であり、前記排気導入口は、前記足場の前記貫通孔の下方に開口している。
このような構成によれば、主機関の燃料として、気化した際に空気よりも比重の大きい燃料を使用した場合においても、床の上面に溜まる気化した燃料を含む気体を船体の外部に排出することができる。また、足場に溜まる気化した燃料を含む気体を貫通孔を介して船体の外部に排出することができる。
【0010】
本発明の第の態様において、前記船舶は、前記機関室内で開口する給気排出口と前記船体の外部で開口する給気導入口とを有する給気ダクトと、前記給気ダクト内に設けられて、前記船体の外部の空気を前記給気導入口を介して前記機関室内に導入する給気ファンとを備えてもよい。
【0011】
本発明の第の態様において、前記排気ダクトと前記給気ダクトとは独立して形成されてよい。
このような構成によれば、給気と排気のバランスを取って、機関室の内部の温度などの環境を最適に保つことができる。
【0012】
本発明の第一の態様において、前記床は、前記機関室を複数の階に区画し、前記排気導入口は、前記階の下部に開口してよい。
【0013】
このような構成によれば、各階の床の下部に溜まった気化した燃料を含む気体を船体の外部に排出することができる。
【0016】
本発明の第二の態様によれば、船舶は、内部に機関室を有する船体と、前記機関室内に設けられて、気化した際に空気よりも比重の大きい燃料によって駆動される主機関と、前記機関室に設けられた床と、前記床に向かって開口する排気導入口と、前記船体の外部で開口する排気排出口とを有する排気ダクトと、前記排気ダクト内に設けられて、前記排気導入口を介して前記床の上面が負圧となるように吸引する排気ファンと、前記機関室内で開口する給気排出口と、前記船体の外部で開口する給気導入口とを有する給気ダクトと、前記給気ダクト内に設けられて、前記船体の外部の空気を、前記給気導入口を介して前記機関室内に導入する給気ファンと、を備え、前記排気ダクトと前記給気ダクトとは給排気ダクトとして一体に形成され、前記給排気ダクトは、上下方向に延在する給排気ダクト本体と、該給排気ダクト本体から側方に分岐して天井に沿って延在する給排気ダクト延長部と、を有し、前記床は、前記主機関に固定され、貫通孔を有する足場であり、前記排気導入口は、前記足場の前記貫通孔の下方に開口している
このような構成によれば、足場に溜まる気化した燃料を含む気体を貫通孔を介して船体の外部に排出することができる。
本発明の第一、第二の態様において、前記船舶は、前記足場上の気体を前記主機関側に押し戻すようにシールエアを噴出するシールエア噴出装置を備えてよい。
【0017】
このような構成によれば、足場に溜まる気体を足場上に留めて、気体が船内に拡散することを抑制することができる。
【0019】
本発明の第一の態様において、前記船舶は、前記排気ダクトと前記給気ダクトとは給排気ダクトとして一体に形成されてよい。
本発明の第二の態様において、前記船舶は、前記給排気ダクトの前記排気排出口に配置され、一方向に回転させることによって前記機関室内に前記船体の外部の空気が導入され、他方向に回転させることによって前記船体の外部に前記機関室内の空気が排出されるインペラを有する可逆式ファンを有してよい。
【0020】
このような構成によれば、低コストで機関室を換気するシステムを製造することができる。
【0021】
本発明の第一、第二の態様において、前記船舶は、前記主機関の排ガスのエネルギーで駆動する過給機と、前記過給機と前記船体の外部とを連通する主機関給気ダクトとを備えてよい。
【0022】
このような構成によれば、過給機用の主機関給気ダクトを、給気ダクトに対して独立して設けることによって、給気ダクトと排気ダクトによる給気と排気のバランスを取りやすくすることができる。
【0023】
本発明の第一、第二の態様において、前記燃料は、液化石油ガスであってよい。
このような構成によれば、液化石油ガスには、硫黄分がほとんど含まれていないため、硫黄酸化物(SOx)対策に適した船舶とすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、主機関の燃料として、気化した際に空気よりも比重の大きい燃料を使用した場合においても、床の上面に溜まる気化した燃料を含む気体を船体の外部に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第一の実施形態の船舶の船首尾方向から見た断面図である。
図2】本発明の第二の実施形態の船舶の船首尾方向から見た拡大断面図である。
図3】本発明の第三の実施形態の船舶の船首尾方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第一実施形態〕
以下、本発明の第一実施形態の船舶について図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の船舶1は、内部に機関室3を有する船体2と、機関室3内に設けられている主機関4と、主機関4の排ガスのエネルギーで駆動する過給機14と、機関室3に燃焼用空気を供給する給気ダクト5と、機関室3内の気体を排出する排気ダクト8と、制御装置28と、を備えている。給気ダクト5と排気ダクト8とは、独立して形成されている。
給気ダクト5及び排気ダクト8は、機関室3を換気するシステムとして機能する。
なお、以下の説明において、図1の紙面に直交する方向を船舶1の船首尾方向とする。図1の左右方向を船舶1の幅方向Wとする。
【0027】
船体2は、本体部12と、船橋部13と、を有している。船橋部13は、本体部12の幅方向Wの中央で上方に突出するように設けられている。
【0028】
主機関4は、例えば、ディーゼルエンジンである。主機関4の主軸は、図示しないプロペラを回転させる。船舶1は、補機として、図示しない発電機、ボイラーなどを備えている。
主機関4は、主軸が収容されている主軸収容部15と、複数のシリンダが収容されているシリンダ部16と、を有している。各々のシリンダには、ピストンが収容されている。主機関4の主軸は、船首尾方向に延在している。複数のシリンダは、船首尾方向に配列されている。
【0029】
船舶1は、過給機14に船体2の外部の空気を導入する主機関給気ダクト11を有している。主機関給気ダクト11は、上下方向に延在する管状部材であり、上端が船体2の外部に開口し、下端が過給機14に接続されている。
【0030】
主機関4の燃料は、液化石油ガス(LPG,Liquefied Petroleum Gas)である。LPGは、プロパン・ブタンなどを主成分とするガス燃料である。即ち、主機関4は、LPGによって駆動される。
LPGは、常温、かつ、大気圧の雰囲気化で気化する。LPGは、気化した際に空気よりも比重が大きい。即ち、気化したLPGは、下方に滞留する性質を有する。
主機関4の燃料は、LPGに限ることはなく、メタノール、エタノール、ジメチルエーテルなどの採用も可能である。
【0031】
機関室3の内部には、複数の床18が設けられている。複数の床18によって、機関室3の内部は、階層化されている。床18は、機関室3を複数の階19に区画している。床18は、船体2の内面2aから船体2の幅方向Wの中央に向かって延在している。床18の主面は、上下方向に直交している。
【0032】
また、主機関4には、床として機能する足場20が設けられている。足場20は、主機関4に固定されている。足場20は、船首尾方向に延在する主機関4の上下方向の中央付近に設けられている。足場20は、主機関4の側面に沿って船首尾方向に延在している。足場20の端部には、手摺21が設けられている。足場20は、例えば、金網によって形成することができる。足場20の主面は上下方向に直交している。
【0033】
給気ダクト5は、上下方向に延在する円管状または矩形管状部材である。給気ダクト5の上方の端部は、船体2の外部の空気を導入する給気導入口6である。即ち、給気ダクト5は、船体2の外部に連通している。給気ダクト5は、本体部12で主機関4を避けるように上下方向に延在している。
給気ダクト5の下方の端部は、最下層の床18の裏の近傍に位置している。
【0034】
給気ダクト5は、機関室3内で開口する複数の給気排出口7を有している。給気排出口7は、各階19の上部に、下方に向けて船体2の外部の空気を吹き付けるように配置されている。
また、主機関4用の給気排出口7Bは、主機関4に向けて船体2の外部の空気を吹き付けるように配置されている。
【0035】
給気ダクト5は、給気ダクト5内に設けられた給気ファン23を有している。給気ファン23は、モーター、及びモーターによって回転するインペラを有し、給気ダクト5内の気体にエネルギーを与える装置である。給気ファン23によって、機関室3内に船体2の外部の空気が導入される。
【0036】
排気ダクト8は、船体2の内面に沿うように延在する円管状または矩形管状部材である。排気ダクト8の上方の端部は、船体2の外部で開口して気体を排出する排気排出口10である。即ち、排気ダクト8は、船体2の外部に連通している。排気ダクト8は、機関室3内の床18に向かって開口し、機関室3内の気体を取り込む複数の排気導入口9を有している。
【0037】
排気ダクト8は、排気ダクト8内に設けられた排気ファン24を有している。排気ファン24は、モーター及びインペラを有し、排気ダクト8内の気体にエネルギーを与える装置である。排気ファン24は、防爆仕様であり、モーター、インペラなどの構成部品は、アルミニウムなどの火花が発生しにくい材料によって形成されている。また、排気ファン24には、静電気の帯電を防止するために、接地端子が設けられている。排気ファン24によって、機関室3内の気体が船体2の外部に排出される。
排気ファン24は、床18の上面が負圧となるように気体を吸引する。
【0038】
排気ファン24の下流側には、ガス検知器27が配置されている。ガス検知器27は、排気ダクト8を流れる気体に、LPGの可燃性ガスが含まれているか否かを検知するセンサである。
ガス検知器27は制御装置28に電気的に接続されており、制御装置28は、ガス検知器27によって測定された可燃性ガスの濃度を参照する。
また、制御装置28は、排気ファン24に電気的に接続されている。制御装置28は、ガス検知器27に検知された可燃ガスの濃度が所定値以上になった場合に、排気ファン24の回転数を上昇させる制御を行う。
【0039】
排気ダクト8は、船橋部13に配置されている排気ダクト第一部8aと、本体部12に配置されている排気ダクト第二部8b及び排気ダクト第三部8cと、を有している。排気ダクト第一部8aと排気ダクト第二部8bと排気ダクト第三部8cとは、直列的に接続されている。
排気ダクト第一部8aは、船橋部13で上下方向に延在している。排気ダクト第二部8bは、本体部12の甲板12aの下面に沿うように幅方向Wに延在している。排気ダクト第三部8cは、本体部12の側面の内面2aに沿うように延在している。
【0040】
排気導入口9は、各階19の下部に開口している。ここで、各階19の下部とは、階19の高さをHとすると、床18の上面からH/3までの範囲である。
排気導入口9は、船舶1の幅方向Wの中心に向かって開口している。即ち、排気導入口9は、船舶1の幅方向Wの中央から幅方向Wの外側に向かって流れる気体を取り込み易い形状である。
図2には、一対の給気ダクト5及び排気ダクト8のみを示しているが、給気ダクト5及び排気ダクト8は、船首尾方向に複数配列されている。
【0041】
ここで、船舶1の一方の舷の最上階19Aについて注目すると、この階19Aに対応する給気排出口7と排気導入口9とは、協働して空気を換気するように構成されている。
具体的には、船体2の幅方向Wの中央近傍に配置された給気排出口7Aから、船体2の幅方向Wの外側に向かって空気が排出される。給気排出口7Aから排出された空気を含む気体は、船体2の幅方向Wの外側に配置された排気導入口9Aから取り込まれる。即ち、給気排出口7Aから空気が排出される方向に排気導入口9Aが配置されている。これにより、効率よく換気を行うことができる。
【0042】
次に、本実施形態の船舶1の給気ダクト5及び排気ダクト8の作用について説明する。
主機関4又は過給機14からLPGが気化した気体が漏洩した場合、LPGは気化した際に空気よりも比重の大きい燃料であることによって、気体は、床18の上面に溜まる。換言すれば、気化したLPGは、上方に排出されることなく、船内に留まる。
床18の上面は、排気ダクト8の排気ファン24によって負圧とされている。これにより、床18の上面に溜められた気体は、排気導入口9を介して排気ダクト8に導入される。排気ダクト8に導入された気体は、排気排出口10を介して、船体2の外部に排出される。
【0043】
上記実施形態によれば、主機関4の燃料として、LPGなどの気化した際に空気よりも比重の大きい燃料を使用した場合においても、床18の上面に溜まる気化した燃料を含む気体を船体2の外部に排出することができる。
【0044】
また、給気ファン23を有する給気ダクト5を設けて、能動的に船体2の外部の空気を給気する構成とすることによって、給気と排気のバランスを取って、機関室3の内部の温度などの環境を最適に保つことができる。
【0045】
また、排気ダクト8の排気導入口9を各階19の床18の下部に開口させることによって、各階19の床18の下部に溜まった気化した燃料を含む気体を船体2の外部に排出することができる。
【0046】
また、過給機14用の主機関給気ダクト11を、給気ダクト5に対して独立して設けることによって、給気ダクト5と排気ダクト8による給気と排気のバランスを取りやすくすることができる。
【0047】
また、燃料として液化石油ガスを採用することによって、液化石油ガスには、硫黄分がほとんど含まれていないため、硫黄酸化物(SOx)対策に適した船舶1とすることができる。
【0048】
また、ガス検知器27によって測定された可燃性ガスの濃度に基づいて排気ファン24の回転数を制御することによって、LPGが漏出した場合に排気能力を向上させることができる。
【0049】
〔第二実施形態〕
以下、本発明の第二実施形態の船舶について図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態では、上述した第一実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
本実施形態の船舶は、主機関4に設けられた足場20に溜まった気体を排出する排出ダクトを有している。
【0050】
図2に示すように、本実施形態の足場20には、上下方向に貫通する複数の貫通孔22が形成されている。貫通孔22は、足場20の延在方向(主に船首尾方向)に沿って複数が配列されている。貫通孔22は、足場20の主機関4側に配置されている。
【0051】
本実施形態の足場20の手摺21には、足場20上の気体を主機関4側に押し戻すようにシールエアを噴出するシールエア噴出装置26が固定されている。即ち、シールエア噴出装置26のシールエア噴出口は、足場20の上面の気体を主機関4側に押し戻すように指向されている。
本実施形態のシールエア噴出装置26の圧縮空気源は、空気圧縮機であるが、機関室3内に装備されている空気槽から圧縮空気を供給する構成としてもよい。
なお、シールエア噴出装置26は、足場20の手摺21に固定する必要はなく、ブラケットなどの支持部材を介して主機関4に固定してもよいし、船体側に固定してもよい。
【0052】
本実施形態の排気ダクト8Bの排気導入口9は、足場20の貫通孔22の下方で、足場20に向かって開口している。本実施形態の排気導入口9は、排気ファン24の吸引力によって、足場20の上面が負圧となるような位置に配置されている。排気ダクト8Bの排気導入口9は、足場20の貫通孔22を貫通させて足場20の上方まで突出させてもよい。
【0053】
次に、本実施形態の船舶の排気ダクト8Bの作用について説明する。
主機関4又は過給機14からLPGが気化した気体が漏洩した場合、気体は、足場20の上面に溜まる。足場20の上面に溜まった気体は、シールエア噴出装置26によって噴出されたシールエアによって、主機関4側に押し戻される。これにより、気体は、足場20上に留められる。
足場20の上面は、排気ダクト8Bの排気ファン24によって負圧とされている。これにより、足場20上に留められた気体は、足場20に形成されている貫通孔22及び排気導入口9を介して排気ダクト8Bに導入される。排気ダクト8Bに導入された気体は、排気排出口10を介して、船体2の外部に排出される。
【0054】
上記実施形態によれば、足場20に溜まる気化した燃料を含む気体を貫通孔22を介して船体2の外部に排出することができる。
また、足場20上の気体を主機関4側に押し戻すようにシールエアを噴出するシールエア噴出装置26を設けることによって、足場20に溜まる気体を足場20上に留めて、気体が船内に拡散することを抑制することができる。
【0055】
〔第三実施形態〕
以下、本発明の第三実施形態の船舶について図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態では、上述した第一実施形態との相違点を中心に述べる。
図3に示すように、本実施形態の船舶1Cは、内部に機関室3を有する船体2と、機関室3内に設けられている主機関4と、主機関4の排ガスのエネルギーで駆動する過給機14と、主機関4に燃料を供給する燃料供給装置30と、機関室3に燃焼用空気を供給する給排気ダクト50と、を備えている。
【0056】
給排気ダクト50は、機関室3を換気するシステムとして機能し、通常は機関室3に燃焼用空気を供給し、非常時において機関室3内の気体を排出するダクトである。
【0057】
燃料供給装置30は、主機関4に燃料を供給する装置であり、液化石油ガスが貯留されているメインタンク31と、例えば、約一日分の容量を持つサービスタンク32と、サービスタンク32から導入される液化石油ガスを昇圧する昇圧装置33と、主機関4への燃料供給/遮断を行うフューエルバルブトレイン34(Fuel Valve Train:FVT)と、燃料を主機関4に導入する燃料供給管35と、を有している。
【0058】
サービスタンク32、昇圧装置33、及びFVT34は、ガス機器室36に収容されている。ガス機器室36には、ガス機器室36内の気体を排出する排気ダクト37と、ガス機器室36内に外気を導入する導入口40と、が設けられている。排気ダクト37は、排気ダクト37内に設けられた排気ファン38を有している。排気ファン38によって、ガス機器室36内の気体が船体2の外部に排出される。
【0059】
ガス機器室36の床近傍には、ガス検知器39が配置されている。ガス機器室36には、ガス検知器39に検知された可燃ガスの濃度が所定値以上になった場合に、その情報を表示する表示装置(図示せず)が設けられている。作業者は、表示装置の情報に基づいて可燃ガスの濃度が所定値以上になった場合に、排気ファン38を動作させて、排気ダクト37を介して可燃ガスを排出することができる。
【0060】
なお、図3においては、メインタンク31、ガス機器室36などが船体2の外部に描かれているが、これらの構成要素は船体2の内部に格納されている。
本実施形態の船橋部13の側面には、ルーバー42が設けられている。ルーバー42は、機関室3内の気体を排出する排出口として機能する。
【0061】
燃料供給管35は、二重管によって形成されている。即ち、燃料供給管35は、燃料が導入される内側管と、内側管の外周側に設けられる外側管と、を有している。内側管と外側管との間の空間は、排気ファン43によって負圧に保たれている。内側管と外側管との間の気体を、船体2の外部に導く配管44には、排気ファン43とともにガス検知器45が設けられている。即ち、本実施形態の燃料供給装置30は、燃料供給管35の内側管からガス燃料の漏洩を検知する機能を有している。
【0062】
給排気ダクト50は、上下方向に延在する給排気ダクト本体51と、給排気ダクト本体51から側方に分岐する複数の給排気ダクト延長部52と、を有している。給排気ダクト本体51と給排気ダクト延長部52は、円管状または矩形管状部材である。
【0063】
給排気ダクト本体51の上方の端部は、船体2の外部の空気を導入するとともに船体2の内部の気体を排出する給排気口53である。即ち、給排気ダクト50は、船体2の外部に連通している。給排気ダクト50の、本体部12で主機関4を避けるように上下方向に延在している。
【0064】
給排気ダクト本体51は、機関室3内の最下階19Bの床18に向かって開口し、機関室3内の気体を取り込む排気導入口54を有している。
排気導入口54は、最下階19Bの下部に開口している。ここで、最下階19Bの下部とは、最下階19Bの高さをHとすると、床18の上面からH/3までの範囲である。
【0065】
排気導入口54には、排気導入口54を開閉する開閉装置55が設けられている。開閉装置55は、回転軸と、回転軸を中心に回動する開閉部材とからなる、所謂バタフライ式のダンパによって形成されている。
【0066】
給排気ダクト延長部52は、給排気ダクト本体部51から分岐され、各階19の天井に沿って延在している。
【0067】
給排気ダクト50は、機関室3内で開口する複数の給気排出口57を有している。給気排出口57は、各階19の上部に、下方に向けて船体2の外部の空気を吹き付けるように配置されている。
また、主機関4用の給気排出口57Bは、主機関4に向けて船体2の外部の空気を吹き付けるように配置されている。
【0068】
給排気ダクト50は、給気ダクト50内に設けられた可逆式ファン59を有している。可逆式ファン59は、モーター、及びモーターによって回転するインペラを有し、給排気ダクト50内の気体にエネルギーを与える装置である。
可逆式ファン59のインペラは、可逆性を有する形状をなし、一方向に回転させることによって機関室3内に船体2の外部の空気が導入され、他方向に回転させることによって船体2の外部に機関室3内の空気が排出される。即ち、本実施形態の給気ダクト50は、船体2の外部に機関室3内の空気を排出する排気ダクトと、機関室3内に船体2の外部の空気を導入する給気ダクトとが一体に形成されているものである。
【0069】
最下階19Bの床近傍であって主機関4の基部の周囲には、ガス検知器60が配置されている。ガス検知器60は、主機関4の基部の周囲に、LPGの可燃性ガスが含まれているか否かを検知するセンサである。
ガス検知器60に検知された可燃性ガスの濃度が所定値以上になった場合、その情報は、例えば、ガス機器室36の表示装置に表示することができる。作業者は、表示装置の情報に基づいて可燃性ガスの濃度が所定値以上になった場合に、排気ファン38を船体2の外部に機関室3内の空気が排出されるように動作させて、給排気ダクト50を介して可燃性ガスを排出することができる。
なお、図3には、一対の給排気ダクト50のみを示しているが、給排気ダクト50は、船首尾方向に複数配列されている。
【0070】
次に、本実施形態の船舶1の給排気ダクト50の運用方法について説明する。
通常の運転時においては、可逆式ファン59のインペラは、機関室3内に船体2の外部の空気を導入する方向に回転している。また、給排気ダクト50の排気導入口54に設けられている開閉装置55は、閉状態とされている。
これにより、給排気ダクト50を介して、機関室3内に船体2の外部の空気が導入され、また、ルーバー42を介して機関室3内の空気が自然排出される。
【0071】
主機関4又は過給機14からLPGが気化した気体である可燃性ガスが漏洩した場合、可燃性ガスは、最下階19Bの床18の上面に溜まる。
可燃性ガスが最下階19Bの床18の上面に溜まることによって、ガス検知器60が可燃性ガスの漏洩を検知する。検知されたという情報は、表示装置に表示される。作業者は、表示装置の情報に基づいて開閉装置55を開状態とするとともに、可逆式ファン59のインペラを船体2の外部に機関室3内の空気を排出する方向に回転させて給排気ダクト50を介して可燃ガスを排出する。
【0072】
上記実施形態によれば、主機関4の燃料として、LPGなどの気化した際に空気よりも比重の大きい燃料を使用した場合においても、最下階19Bの床18の上面に溜まる気化した燃料を含む気体を船体2の外部に排出することができる。
【0073】
また、給排気ダクト50に設けられているファンを可逆式ファン59とし、給排気ダクト50で給気及び排気を行うことによって、より、低コストで機関室3を換気するシステムを製造することができる。
【0074】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、主機関の燃料として、気化した際に空気よりも比重の大きい燃料を使用した場合においても、床の上面に溜まる気化した燃料を含む気体を船体の外部に排出することができる。
【符号の説明】
【0076】
1,1C 船舶
2 船体
2a 内面
3 機関室
4 主機関
5 給気ダクト
6 給気導入口
7 給気排出口
8 排気ダクト
8a 排気ダクト第一部
8b 排気ダクト第二部
8c 排気ダクト第三部
9 排気導入口
10 排気排出口
11 主機関給気ダクト
12 本体部
12a 甲板
13 船橋部
14 過給機
15 主軸収容部
16 シリンダ部
17 船底
18 床
19 階
20 足場
21 手摺
22 貫通孔
23 給気ファン
24 排気ファン
26 シールエア噴出装置
27 ガス検知器
28 制御装置
30 燃料供給装置
31 メインタンク
32 サービスタンク
33 昇圧装置
34 フューエルバルブトレイン
35 燃料供給管
36 ガス機器室
37 排気ダクト
38 排気ファン
39 ガス検知器
40 導入口
42 ルーバー
43 排気ファン
44 配管
45 ガス検知器
50 給排気ダクト
51 給排気ダクト本体
52 給排気ダクト延長部
53 給排気口
54 排気導入口
55 開閉装置
57 給気排出口
59 可逆式ファン
60 ガス検知器
図1
図2
図3