(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。そして、本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施することができる。なお、図面中、上下左右等の位置関係は、特に断りのない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。
【0013】
(押出機)
図1に、本実施形態の押出機の概要を側面図にて示す。
本実施形態の押出機1は、特に限定されることなく、単軸押出機、コニーダータイプの押出機、二軸押出機等の多軸押出機等であってよく、例えば、
図1に示すように、原料供給口11(
図1では、第1原料供給口11−1及び第2原料供給口11−2)、バレル10(
図1では、第1〜第12の12個)、ダイ部13等を備える。
【0014】
ここで、本実施形態の押出機1では、原料供給口11には原料供給ライン2(
図1では、第1原料供給ライン2−1、第2原料供給ライン2−2)が接続されており、そして、原料供給ライン2の少なくとも一部(
図1では、原料供給ホッパー20及び原料供給配管24)に冷却ガス供給ライン3が連通している。
【0015】
発明者らが鋭意検討した結果、押出機1において低融点添加物の溶融・付着が生じるのは、押出機1のバレル10から原料供給ライン2に逆流してくる高温のガスGr(
図2参照)による原料供給ライン2の高温化が要因であることがわかった。
【0016】
本実施形態の押出機1によれば、押出機1のバレル10から原料供給ライン2に逆流してくる高温のガスGrと、冷却ガスGcとが、混ざり合い、原料供給ライン2を効率的に冷却することが可能となる。これにより、逆流してくる高温のガスGrによる原料供給ライン2の高温化を大幅に抑制することが可能となり、原料供給ホッパー20等の原料供給ライン2の構成部材の内部における低融点添加物の溶融・付着を低減することが可能となる。
この点、特に、原料供給ライン2の構成部材の外壁に冷媒を流す等することによって、原料供給ライン2を外部から冷却する手法と比較して、本実施形態の押出機1では、原料供給ライン2の構成部材を内部から冷却する。これにより、前述の低融点添加物の溶融・付着を低減する効果が極めて高い。
【0017】
以下、
図1に示す例の押出機1の作用効果を記載する。
第1原料ストックタンク211Aに低融点添加剤が投入される。低融点添加剤は、第1A原料切出装置221A、第1A原料供給装置231A、第1A原料供給配管241Aを経て、第1原料供給ホッパー201に供給される。
一方、第1B原料ストックタンク211Bには熱可塑性樹脂が投入される。熱可塑性樹脂は、第1B原料切出装置221B、第1B原料供給装置231B、第1B原料供給配管241Bを経て、第1原料供給ホッパー201に供給される。
このとき、第1A原料供給配管241Aに設けられた第1B冷却ガス供給ライン3−1Bが、−50〜20℃の冷却ガスGcを供給し、冷却ガスGcが配管241Aを通過する低融点添加剤を冷却する。
また、第1原料供給ホッパー201に設けられた第1A冷却ガス供給ライン3−1Aが、−50〜20℃の冷却ガスGcを供給し、冷却ガスGcが、押出機1から逆流してくる70〜350℃の高温のガスGrを冷却すると共に、ホッパー201に供給される低融点添加剤及び熱可塑性樹脂を冷却する。
上記冷却の効果により、第1原料供給ホッパー201において、低融点添加剤の溶融・付着が低減される。
【0018】
このとき、特に、原料供給口11を有するバレル10の温度、固体搬送ゾーンを形成するバレル10の温度、混練ゾーンを形成するバレル10の温度を、この順に従って高くなるように設定することによって、低融点添加剤が熱可塑性樹脂とよく混合され、その後、溶融されるため、熱可塑性樹脂組成物の物性がより均一となる(後述)。
【0019】
第2原料供給ライン2−2においても、前述の第1原料供給ライン2−1における作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0020】
−原料供給ライン−
本実施形態で用いられる原料供給ライン2は、熱可塑性樹脂と低融点添加剤とを供給することができる限り特に限定されない。なお、原料供給ライン2の詳細については後述する。
【0021】
図1に示す押出機1では、原料供給ライン2は、原料ストックタンク21、原料切出装置22、原料供給装置23、原料供給配管24、原料供給ホッパー20を、原料供給口11に向かってこの順に備えている。
【0022】
詳細には、
図1に示す第1原料供給ライン2−1は、第1原料供給ホッパー201、3つの原料供給配管24(第1A原料供給配管241A、第1B原料供給配管241B、第1C原料供給配管241C)、3つの原料供給装置23(第1A原料供給装置231A、第1B原料供給装置231B、第1C原料供給装置231C)、3つの原料切出装置22(第1A原料切出装置221A、第1B原料切出装置221B、第1C原料切出装置221C)、3つの原料ストックタンク21(第1A原料ストックタンク211A、第1B原料ストックタンク211B、第1C原料ストックタンク211C)を備えている。
また、
図1に示す第2原料供給ライン2−2は、第2原料供給ホッパー202、1つの原料供給配管24(第2原料供給配管242)、1つの原料供給装置23(第2原料供給装置232)、1つの原料切出装置22(第2原料切出装置222)、1つの原料ストックタンク21(第2原料ストックタンク212)を備えている。
【0023】
−冷却ガス供給ライン−
本実施形態で用いられる冷却ガス供給ライン3は、原料供給ライン2が接続されている原料供給口11が設けられたバレル10の内部温度と比較して低い温度のガスを供給することができる限り特に限定されない。なお、冷却ガス供給ライン3の詳細については後述する。
【0024】
図1に示す例の押出機1では、原料供給ライン2及びこれに繋がるバレル10を冷却するため、冷却ガス供給ライン3は、冷却機31、より具体的には、渦流式冷却機を備えている。
【0025】
以下、本実施形態の押出機1における冷却ガス供給ライン3の配置について詳述する。
【0026】
本実施形態の押出機1では、
図1に示す例のように、1つの原料供給ライン2について、複数の冷却ガス供給ライン3を備えることが好ましい。かかる構成によれば、原料供給ライン2の冷却効率を高めることができる。
図1に示す例の押出機1は、第1原料供給ライン2−1について、第1A冷却ガス供給ライン3−1A、第1B冷却ガス供給ライン3−1Bの2つ、第2原料供給ライン2−2について、第2A冷却ガス供給ライン3−2A、第2B冷却ガス供給ライン3−2Bの2つを備えている。
【0027】
本実施形態の押出機1では、
図1に示す例のように、冷却ガス供給ライン3を備える原料供給ライン2が接続されている原料供給口11を複数備えることが好ましい。かかる構成によれば、低融点添加物を複数回に分けて供給することが可能となり、熱可塑性樹脂組成物の物性を高めることができる。
【0028】
そして、本実施形態の押出機1では、冷却ガス供給ライン3は、原料供給ライン2の少なくとも一部に連通していればよいが、冷却ガス供給ライン3は、原料供給ホッパー20に連通することが好ましく(
図1参照)、次いで、逆流してくるガスGrが流れてくる原料供給配管に連通することが好ましく、さらに次いで、発熱しやすくなることがある原料供給装置23の搬送部に連通することが好ましい。かかる構成によれば、低融点添加剤を効率的に冷却することが可能となる。
図1に示す例では、第1原料供給ライン2−1では、第1A冷却ガス供給ライン3−1Aが、第1原料供給ホッパー201に、その蓋において、連通し、また、第1B冷却ガス供給ライン3−1Bが、第1A原料供給配管241Aに、連通している。また、第2原料供給ライン2−2では、第2A冷却ガス供給ライン3−2Aが、第2原料供給ホッパー202に、その蓋において、連通し、また、第2B冷却ガス供給ライン3−2Bが、第2原料供給配管242に、連通している。
【0029】
本実施形態の押出機1では、冷却ガス供給ライン3の延在方向は特に限定されないが、
図1に示す例のように、冷却ガス供給ライン3は、押出機の軸X方向に直交する方向に延在することが好ましい。かかる構成によれば、トップフィードの場合もサイドフィードの場合も、バレル10から原料供給ライン2に逆流してくる高温のガスGrと、冷却ガスGcとが、効率的に混ざり合い、原料供給ライン2を効率的に冷却することが可能となる。
図1に示す例では、第1原料供給ライン2−1の第1A冷却ガス供給ライン3−1Aが、押出機の軸X方向に直交する方向に(第1原料供給ホッパー201の蓋に対して垂直に)、重力方向下方に、延在しており、また、第2原料供給ライン2−2の第2A冷却ガス供給ライン3−2Aが、押出機の軸X方向に直交する方向に(第2原料供給ホッパー202の蓋に対して垂直に)、重力方向下方に、延在している。
【0030】
本実施形態の押出機1では、冷却ガス供給ライン3が、押出機の軸X(バレル10断面の中心を繋ぐ線)からバレル内径Dの1〜500倍の距離の位置に至るまでの領域に、設けられることが好ましい。かかる構成によれば、低融点添加物が、バレル10から原料供給ライン2に逆流してくる高温のガスGrに長時間曝されることを防ぐことができるため、低融点添加物の溶融・付着を低減することができる。
上記効果を高める意味で、冷却ガス供給ライン3は、押出機の軸Xからバレル内径Dの1〜50倍の距離の位置に至るまでの領域であることがさらに好ましい。
【0031】
さらに言えば、本実施形態における更なる特徴として、本実施形態の押出機1は、押出機1の少なくとも一部の外表面を覆う断熱材4をさらに備えている。
【0032】
発明者らの検討により、押出機1における低融点添加物の溶融・付着は、押出機1のバレル10のうち特に混練ゾーンを形成するバレル10において押出機1外部に放出される輻射熱RH(
図2参照)による原料供給ライン2の高温化も要因となっていることもわかった。
本実施形態の押出機1に断熱材を設けることによって、上記輻射熱RHを遮断することができ、低融点添加剤の溶融・付着を低減することができ、熱可塑性樹脂組成物の物性を均一にすることが可能となる。
【0033】
なお、バレル10にバレルカバーが設けられている場合には、バレルカバーの外側及び/又は内側に断熱材4を設けてよい。
【0034】
そして、上記効果を高める意味で、本実施形態の押出機1では、断熱材4は混練ゾーンを形成するバレル10の外表面を覆うことが好ましい。
図1に示す例の押出機1は、原料供給口11が設けられた第1バレル10aに隣接するバレル10である第2バレル10bから、混練ゾーンを形成する第5バレル10eまでの外表面を覆う断熱材4をさらに備えている。
かかる構成によれば、押出機1のバレル10のうち特に混練ゾーンを形成するバレル10において押出機1外部に放出される輻射熱RHによる原料供給ライン2の高温化を大幅に抑制することが可能となり、原料供給ホッパー20等の原料供給ライン2の構成部材の内部における低融点添加物の溶融・付着を低減することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態の押出機1は、さらに、原料供給ホッパー20の壁の少なくとも一部の外表面を断熱材4で覆ってもよい。
【0036】
以下、原料供給ライン2の各要素の詳細を記載する。
【0037】
原料供給ホッパー20は、原料供給ライン2の末端に位置し、押出機1に、原料供給口11において接続される。
原料供給ホッパー20のホッパー壁の角度は、原料がブリッジし難いように、鉛直(90°)〜60°であることが好ましい。
原料供給ホッパー20は、原料の酸化劣化するのを防止するために、不活性ガスで置換しても良い。さらに、微細な原料が内壁に付着するのを防止するために、ホッパー20にはノッカーやバイブレーターを適宜取り付けても構わない。
【0038】
原料ストックタンク21は、原料を一時的に貯めておくタンクである。原料が粉体の可燃性樹脂である場合、ストックタンク21の内部を不活性ガスで置換をしたり、原料がブリッジしやすい場合、ブリッジブレーカー等を必要に応じて付けたりしても構わない。
【0039】
原料切出装置22は、原料供給装置23の原料を留めておき、原料供給ホッパー20が空になったときに原料を供給する装置である。ホッパー20が空になったとき、前記切出装置22には信号が送られ、(切出装置22が仕切弁の場合には)仕切弁が開いて、原料が原料ストックタンク21から原料供給装置23に短時間(10〜120秒)で供給される。ホッパー20が満杯になると、上記信号が送られなくなり、切出弁が閉まる。なお、この切出装置22は、仕切弁形式でもスクリュー形式でも構わない。
【0040】
原料供給装置23は、通常、重量式フィーダーが好適に用いられ、原料を貯めておくホッパー部と、定量的に原料を搬送する搬送部とからなる。前記搬送部は、スクリュー式、ベルト式、振動式等があるが、どの方式でも構わない。
特に、スクリュー式を用いる場合、搬送部が発熱して、低融点添加物が溶融するのを防止するため、スクリューピッチが大きいスクリュー、発熱が起こりにくいコイル式等のスクリューを用いることが好ましい。ベルト式及び振動式は、発熱が起こりにくいため、好ましい。
この供給装置23には、供給精度を上げるためにロードセルを付けて、原料の減少重量を基に供給量を制御することが好ましい。
【0041】
原料供給配管24は、原料供給装置23の搬送部から供給された原料を、原料供給ホッパー20に供給する配管である。原料供給配管24の取り付け角度は、原料がブリッジし難いように、鉛直(90度)〜45度であることが好ましい。
【0042】
本実施形態で用いられる原料供給ライン2は、前述した要素の全てを必要とするものではない。例えば、単軸押出機の場合、原料供給ライン2は、原料供給ホッパー20だけを備える場合があり、また、この原料供給ホッパー20に押し込み用のスクリューが付けられている場合もある。
【0043】
以下、冷却ガス供給ライン3の詳細を記載する。
図2に、本実施形態の押出機が備える冷却ガス供給ライン及びその周辺を拡大して側面図にて示す。
【0044】
冷却機31(
図1参照)は、常温のガスの温度よりも15〜75℃低い温度の冷却ガスを発生させることが可能な装置であれば、特に限定されない。
【0045】
図1に示す例の押出機1が備える渦流式冷却機は、ブッシングとゼネレーターと、常温ガス供給口311aと低温ガス排出口311bと高温ガス排出口311cとを備えるものである。
かかる冷却機31では、まず、常温ガス供給口311aから、所定圧力(0.1〜1.0MPa)・所定温度(10〜50℃)のガスを供給し、次いで、冷却機31の機内で、圧力を利用して100万rpm程度の高速の渦流を発生させ、低温ガスと高温ガスとに分離し、そして、低温ガスを冷却ガスとして低温ガス排出口311bから排出しつつ(すなわち、原料供給ライン2内部に供給しつつ)、高温ガスを高温ガス排出口311cから原料供給ライン2外部に排出する。
【0046】
渦流式冷却機としては、具体的には、虹技社製のボルテックスチューブ、マンクリーニングシステム、コールドエアーガン、パネルガードクーラー等;株式会社ニューラー製のジェットクーラ等;ニッシン産業株式会社製のエアークラー等が挙げられる。
【0048】
本実施形態の押出機1としては、特に限定されることなく、例えば、単軸押出機、コニーダータイプの押出機、二軸押出機等の多軸押出機等が挙げられる。
単軸押出機としては、例えば、混練型スクリューを設けた単軸押出機等が挙げられる。
コニーダータイプの押出機としては、例えば、ブッス社製のコニーダー等が挙げられる。
二軸押出機としては、例えば、非噛み合い型異方向回転二軸押出機、噛み合い型異方向回転二軸押出機、同方向回転二軸押出機(例えば、コペリオン社製のZSK メガコンシリーズ、メガプラスシリーズ、MC18シリーズ;東芝機械社製のTEM BSシリーズ、SSシリーズ、SXシリーズ;日本製鋼所社製のTEXαシリーズ、α2シリーズ、α3シリーズ等)等が挙げられる。
【0049】
押出機1の規格や大きさは、特に限定されないが、バレル内径(直径)Dは、40〜200mmであることが好ましい。バレル内径Dが40mm未満では、生産性が低い。バレル内径Dが200mm超では、溶融混練時の発熱を抑制するのが難しい。バレル有効長Lは、特に限定されないが、バレル内径Dの12〜60倍であることが好ましい。バレル有効長Lがバレル内径Dの12倍未満では、原料を十分に混練することが難しく、バレル有効長Lがバレル内径Dの60倍超では、スクリュー軸の振れが大きくなり、原料の混練が不良になるおそれがある。
【0050】
押出機1のモーターは、特に限定されず、インバーターモーターでもよいし、直流モーターでもよい。モーターには、必要に応じて冷却装置を設けてもよい。モーターの冷却装置としては、例えば、空気冷却タイプや循環水冷却タイプ等が挙げられるが、空気中に異物をまき散らさない観点から、循環水冷却タイプが好ましい。
【0051】
押出機1のバレル構成としては、少なくとも1つの原料供給口を有するバレル10、(溶融前の)固体搬送ゾーン及び/又は溶融体搬送ゾーンを形成する少なくとも1つのバレル10、混練ゾーンを形成する少なくとも1つのバレル10、少なくとも1つのベント12を有するバレル10を含むバレル構成が挙げられる。ここで、ベント12は、大気ベントでもよいし、真空ベントでもよい。また、原料の供給は、トップフィードとしてもよく、サイドフィードとしてもよい。
図1に示す例では、第1〜第12バレルの12個のバレル10(10a〜10l(エル))を有しており、第1バレル(10a)、第7バレル(10g)が原料供給口を有するバレル10であり、第2〜第4バレル(10b〜10d)が固体搬送ゾーンを形成するバレル10であり、第9、第10、第12バレル(10i、10j、10l(エル))が溶融体搬送ゾーンを形成するバレル10であり、第5、第8バレル(10e、10h)が混練ゾーンを形成するバレル10であり、第6バレル(10f)が大気ベントを有するバレル10であり、第11バレル(10k)が真空ベントを有するバレル10である。
【0052】
特に、本実施形態の押出機1では、固体搬送ゾーンを形成するバレル10の数が、それに対応する原料供給口11を有するバレル10の数の1〜8倍であることが好ましく、2〜5倍であることがより好ましい。
図1に示す例では、固体搬送ゾーンを形成するバレル10(10b〜10d)の数が、第1原料供給口11−1を有するバレル10(10a)の数の3倍となっている。
【0053】
バレル10に使用するスクリューエレメントとしては、例えば、2条又は3条のニーディングブロック(右廻り、左廻り、ニュートラル、逆送り)、2条又は3条のフライトスクリュー(右廻り、左廻り)、1条、2条又は3条の切り欠きスクリューやカットスクリュー、バリスターリング等が挙げられ、必要に応じてこれらを組み合わせて用いることができる。
【0054】
本実施形態の押出機1のダイ部13には、溶融した熱可塑性樹脂に含まれる異物を除去するための金属メッシュ(目開きが#10〜#300のメッシュ)を付けることが可能なプレーカープレートを装着させてもよい。
また、ダイ部13には、複数のオリフィスを備えるダイプレートを装着させてもよく、この場合、オリフィスの内径は2〜6mmとしてよく、オリフィスの長さは6〜20mmとしてよく、オリフィス1穴当たりの押出量は10〜40kg/hrとしてよい。さらに、ダイプレートのオリフィスの開口部には、ガスを吹き付ける又は微振動を与えることによって、開口部に発生するメヤニを除去することが可能な、メヤニ除去装置を設置してもよい。
なお、フィラーを含む熱可塑性樹脂組成物を製造する場合には、目詰まりを避ける観点から、ダイ部13に上記金属メッシュは用いないことが好ましい。
【0055】
(熱可塑性樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、押出機1を用いるものであり、
原料(熱可塑性樹脂(A)、低融点添加剤(B)等)を原料供給ライン2に供給する、原料供給工程と、
原料供給ライン2に押出機1の内部温度と比較して低い温度のガスを供給する、冷却ガス供給工程と、
原料を溶融混練する、混練工程と
を含む。
なお、上記冷却ガス供給工程では、押出機1が備える冷却機31において冷却ガスを得て、このガスを原料供給ライン2に供給してもよいが、これに限定されることなく、予め冷却されたガス(例えば、液体窒素から気化させた低温のガス)を原料供給ライン2に供給してもよい。
【0056】
なお、本実施形態では、後述の通り、前述の本実施形態の押出機1を用いることを必要とする。
【0057】
以下、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法において用いられる各成分について記載する。
【0058】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法により製造される熱可塑性樹脂組成物は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂(A)、融点が40〜200℃の添加剤(低融点添加物)(B)、フィラー(C)、液体添加剤、その他添加物を含んでよい。
【0059】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法において用いられる熱可塑性樹脂(A)としては、特に限定されることなく、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂(ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンエーテルと(後述の)ポリスチレン系樹脂とのブレンド物)、ポリスチレン系樹脂(ゼネラルパーパスポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等)、ホモポリマー型ポリオキシメチレン、コポリマー型ポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド、ポリアリーレート、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン等が挙げられ、特に、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ホモポリマー型ポリオキシメチレン、コポリマー型ポリオキシメチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体等が好ましい。
これら熱可塑性樹脂(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法において用いられる、融点が40〜200℃の添加剤(低融点添加物)(B)としては、リン系難燃剤、高級脂肪酸誘導体、ジカルボン酸、石油樹脂等が挙げられる。
これら融点が40〜200℃の添加剤(低融点添加物)(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
添加剤の融点が40未満である場合、該添加物は容易に液化してしまうおそれがあり、また、融点が200℃超である場合、該添加物は、溶融不良を起こし、樹脂組成物中に十分に分散しないおそれがある。
本実施形態では、本発明の効果をより効率的に得る観点から、添加剤について40〜200℃とすることができる融点は、40〜190℃であることが好ましく、40〜180℃であることがさらに好ましい。
【0062】
リン系難燃剤としては、リン酸エステル化合物、リン酸縮合エステル、環状及び/又は鎖状ホスファゼン化合物等が挙げられる。
リン酸エステル化合物及びリン酸縮合エステルとしては、特に限定されることなく、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート(TXP)、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、tert−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス−(tert−ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス−(tert−ブチルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス−(イソプロピルフェニル)ジフェニルホスフェート、トリス−(イソプロピルフェニル)レゾルシノールビス−ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス−ジキシレニルホスフェート、ビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェート、ビフェニルビス−ジフェニルホスフェート等が挙げられ、特に、トリフェニルホスフェートが好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
環状及び/又は鎖状ホスファゼン化合物としては、例えば、フェノキシホスファゼン、o−トリルオキシホスファゼン、m−トリルオキシホスファゼン、p−トリルオキシホスファゼン等のポリ)トリルオキシホスファゼン、o,m−キシリルオキシホスファゼン、o,p−キシリルオキシホスファゼン、m,p−キシリルオキシホスファゼン等の(ポリ)キシリルオキシホスファゼン、o,m,p−トリメチルフェニルオキシホスファゼン、フェノキシo−トリルオキシホスファゼン、フェノキシm−トリルオキシホスファゼン、フェノキシp−トリルオキシホスファゼン等の(ポリ)フェノキシトリルオキシホスファゼン、フェノキシo,m−キシリルオキシホスファゼン、フェノキシo,p−キシリルオキシホスファゼン、フェノキシm,p−キシリルオキシホスファゼン等(ポリ)フェノキシトリルオキシキシリルオキシホスファゼン、フェノキシo,m,p−トリメチルフェニルオキシホスファゼン等が挙げられ、特に、環状及び/又は鎖状フェノキシホスファゼンが好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
高級脂肪酸誘導体として、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の脂肪酸アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等のアルキレン脂肪酸アミド;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸塩等が挙げられる。
【0064】
ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられる。
【0065】
石油樹脂としては、分子量3000以下の炭化水素化合物、炭素数5の脂肪族化合物及び/又は炭素数9の芳香族化合物の石油留分、これらの水素添加物が挙げられる。
【0066】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法において用いられるフィラー(C)としては、特に限定されることなく、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、硫酸マグネシウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、炭酸カルシウムウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー、ケイ酸カルシウム(ワラストナイト)、マイカ、タルク、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、ヨウ化銅、ヨウ化カリウム等が挙げられ、特に、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム、マイカ、タルク、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、ヨウ化銅、ヨウ化カリウムが好ましい。
【0067】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法において用いられる
液体添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、分子量が300〜20000のポリエチレングリコール、炭素数4〜155のパラフィン系オイル(例えば、カネダ株式会社製のK−350(流動パラフィン99.9995%)、出光興産株式会社製のPW−90(n−パラフィン系プロセスオイル)、三光化学工業株式会社製のネオチオゾール);シクロペンタン(C
5H
10)、シクロヘキサン(C
6H
12)、フイヒテライト(C
19H
34)、オレアナン(C
30H
52)、及びこれらの混合物等のナフテン系オイル(例えば、出光興産株式会社製のダイアナプロセスオイルNS90S、出光興産株式会社製のダイアナプロセスオイルNS100等)等が挙げられる。
【0068】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法において用いられるその他添加物としては、特に限定されることなく、例えば、エラストマー、各種着色剤、着色補剤(酸化チタン等)、紫外線吸収剤、耐電防止剤、安定剤(酸化亜鉛、硫化亜鉛、燐系、イオウ系、ヒンダードフェノール系等)等が挙げられる。
【0069】
以下、本実施形態の押出機1を用いた、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法について詳述する。
【0070】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、前述の本実施形態の押出機1を用いることを必要とし、
原料供給ライン2を通して、原料(熱可塑性樹脂(A)、低融点添加剤(B)等)を原料供給口11から押出機1に供給する工程(原料供給工程)と、
原料供給ライン2の少なくとも一部に連通する冷却ガス供給ライン3を通して、原料供給ライン2に押出機1の内部温度と比較して低い温度のガス(冷却ガス)を供給する工程(冷却ガス供給工程)と、
押出機1において、供給された原料を溶融混練する工程(溶融混練工程)と
を含む。
【0071】
前述の通り、発明者らが鋭意検討した結果、押出機1を用いる熱可塑性樹脂組成物の製造方法において、押出機1において低融点添加物の溶融・付着が生じるのは、押出機1のバレル10から原料供給ライン2に逆流してくる高温のガスGrによる原料供給ライン2の高温化が要因であることがわかった。
【0072】
前述の本実施形態の押出機1を用いる、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法によれば、押出機1のバレル10から原料供給ライン2に逆流してくる高温のガスGrと、冷却ガスGcとが、混ざり合い、原料供給ライン2を効率的に冷却することが可能となる。これにより、逆流してくる高温のガスGrによる原料供給ライン2の高温化を大幅に抑制することが可能となり、原料供給ホッパー20等の原料供給ライン2の構成部材の内部における低融点添加物の溶融・付着を低減することが可能となる。
この点、特に、原料供給ライン2の構成部材の外壁に冷媒を流す等することによって、原料供給ライン2を外部から冷却する手法と比較して、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法では、原料供給ライン2の構成部材を内部から冷却する。これにより、前述の低融点添加物の溶融・付着を低減する効果が極めて高い。
【0073】
以下、
図1に示す例の押出機1を用いる、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法の作用効果を記載する。
第1原料ストックタンク211に低融点添加剤(B)を投入する。低融点添加剤(B)は、第1A原料切出装置221A、第1A原料供給装置231A、第1A原料供給配管241Aを経て、第1原料供給ホッパー201に供給される。
一方、第1B原料ストックタンク211Bに熱可塑性樹脂(A)を投入する。熱可塑性樹脂(A)は、第1B原料切出装置221B、第1B原料供給装置231B、第1B原料供給配管241Bを経て、第1原料供給ホッパー201に供給される。
このとき、第1A原料供給配管241Aに設けられた第1B冷却ガス供給ライン3−1Bが、−50〜20℃の冷却ガスGcを供給し、冷却ガスGcが配管241Aを通過する低融点添加剤(B)を冷却する。
また、第1原料供給ホッパー201に設けられた第1A冷却ガス供給ライン3−1Aが、−50〜20℃の冷却ガスGcを供給し、冷却ガスGcが、押出機1から逆流してくる70〜350℃の高温のガスGrを冷却すると共に、ホッパー201に供給される低融点添加剤(B)及び熱可塑性樹脂(A)を冷却する。
上記冷却の効果により、第1原料供給ホッパー201において、低融点添加剤(B)の溶融・付着が低減される。
【0074】
第2原料供給ライン2−2においても、前述の第1原料供給ライン2−1における作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0075】
特に、原料供給口を有するバレル10の温度、固体搬送ゾーンを形成するバレル10の温度、混練ゾーンを形成するバレル10の温度を、この順に従って高くなるように設定することによって、低融点添加剤を熱可塑性樹脂とよく混合され、その後、溶融されるため、熱可塑性樹脂組成物の物性がより均一となる(後述)。
【0076】
ここで、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法における冷却ガス供給工程において、冷却ガスGcの温度は、特に限定されない。
【0077】
冷却ガス供給工程における冷却ガスライン3について、冷却ガスGcの流量(NL(ノルマルリッター)/hr)の原料供給ライン2により供給される原材料の供給量(kg/hr)に対する割合は、1〜1000(NL/kg)とすることが好ましく、より好ましくは5〜500(NL/kg)であり、さらに好ましくは5〜250(NL/kg)である。逆流してくる高温ガスGrの冷却ガスGcに対する割合は、0.01〜0.3とすることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.2であり、さらに好ましくは0.03〜0.15である。
なお、1つの原料供給ライン2に複数の冷却ガスライン3を設けた場合、冷却ガスライン3における冷却ガスGcの流量とは、各冷却ガスライン3の流量の合計をいうものとする。
【0078】
冷却ガス供給工程における冷却ガスGcとしては、窒素、炭酸ガス、アルゴンガス、空気等が挙げられる。
【0079】
図1に示すような渦流式冷却機を備えた押出機1を用いる場合、
常温ガスの温度は、10〜50℃であることが好ましく、より好ましくは10〜40℃であり、さらに好ましくは15〜40℃である。
常温ガスの圧力は、0.1〜2.0MPaとしてよく、好ましくは0.15〜0.8MPaであり、さらに好ましくは0.3〜0.8MPaである。圧力が0.1MPa未満である場合、強い渦流が出来ないために、冷却ガスGcの温度が低くならない。圧力が1.0超である場合、冷却機31本体が耐えられる範囲を超える。
常温ガスの湿度は、0.1%未満であることが好ましく、かかる湿度の常温ガスは、さらに、異物除去のフィルターに通し、サイズ5μm以下の異物が0.1質量%未満になるように調整されたものであることが好ましい。
【0080】
渦流式冷却機を用いる場合、
冷却ガスGcの温度は、供給する常温ガスの温度よりも15〜75℃低い温度であることが好ましく、より好ましくは20〜75℃低い温度である。
高温ガスの温度は、供給する常温ガスの温度よりも5〜110℃高い温度であることが好ましく、より好ましくは30〜75℃低い温度である。
【0081】
常温ガスからの冷却ガスGcの発生率は、供給した常温ガスに対する排出した冷却ガスGcの割合で示され、20〜80%としてよく、好ましくは30〜70%であり、さらに好ましくは40〜70%である。20%未満であると、経済的なロスが大きく、80%超であると、発生した冷却ガスGcの温度が十分に低くならない。
【0082】
溶融混練工程において、
図1に示すような、原料供給口11を有するバレル10、固体搬送ゾーンを形成するバレル10、混練ゾーンを形成するバレル10を備えた押出機1を用いる場合、
原料供給口11を有するバレル10(
図1では、第1バレル10a)の設定温度は、具体的には、50℃以下とすることが好ましく、より好ましくは45℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。バレル温度が50℃を超えると、逆流する高温ガスGrの温度が上昇するため、好ましくない。
固体搬送ゾーンを形成するバレル10(
図1では、第2〜第4バレル(10b〜10d))の設定温度は、具体的には、50〜300℃とすることが好ましく、より好ましくは50〜250℃以下であり、さらに好ましくは60〜250℃以下である。固体搬送ゾーンを形成するバレル10の温度が300℃を超えると、この固体搬送ゾーンを形成するバレル10と、ガスケットだけを挟んで隣接している、原料供給口を有するバレル10が十分に冷却されず、逆流する高温ガスGrの温度が実質的に高くなってしまい、好ましくない。
混練ゾーンを形成するバレル10(
図1では、第5バレル10e)の設定温度は、熱可塑性樹脂(A)(熱可塑性樹脂が2種以上の場合は供給量が一番多い樹脂)が結晶性樹脂の場合、融点と比較して0〜100℃高い温度とすることが好ましく、10〜50℃高い温度とすることがより好ましい。熱可塑性樹脂(A)が非晶性樹脂の場合、ガラス転移温度と比較して50〜150℃高い温度とすることが好ましく、70〜120℃高い温度とすることがより好ましい。
【0083】
溶融混練工程において、
押出機1のギアボックスのトルク密度Tdは、6〜25N・m/cm
3であり、好ましくは8〜24N・m/cm
3、さらに好ましくは14〜23N・m/cm
3である。トルク密度Tdを6以上25以下の範囲とすれば、樹脂組成物の生産性及び品質の安定性を優れたものとすることができる。
なお、ギアボックスのトルク密度Td(N・m/cm
3)は、下記式(1)から求められる。
トルク密度Td(N・m/cm
3)=最高モーターパワー(kw)×1000/(2×3.14×最高回転数)/((スクリュー径d(cm)/10)
3)・・・(1)
例えば、東芝機械社製のTEM58SSを、トルク一定の最高回転数10rps、181kwのモーターで、使用した場合、トルク密度Tdは、14.8N・m/cm
3となる。
【0084】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法により製造された熱可塑性樹脂組成物は、OA材料(プリンター、複写機等)、電子材料、光学材料、バッテリーケース材料、バッテリーセル材料、フィルム、シート等に好適に用いられる。
【0085】
以上、図面を参照して、本発明の押出機及びそれを用いた本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法の実施形態について例示説明したが、上記実施形態には適宜変更を加えることができ、本発明は上記例示の実施形態に限定されることはない。
【実施例】
【0086】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0087】
実施例
、参考例、及び比較例の押出機及びそれを用いた熱可塑性樹脂組成物の製造方法について以下に記載する。
【0088】
−原料供給ライン−
−−第1原料供給ライン−−
第1原料供給ホッパー(円錐型、ホッパー壁角度60°)
−−−第1A系(低融点添加物用)−−−
第1A原料ストックタンク(200L)
第1A原料切出装置(スライドゲート弁)
第1A原料供給装置(重量式フィーダーA:クボタ社製 CE−W−2)
第1A原料供給配管(4インチ配管、傾斜45度配管)
−−−第1B系(熱可塑性樹脂用)−−−
第1B原料ストックタンク(500L)
第1B原料切出装置(スライドゲート弁)
第1B原料供給装置(重量式フィーダーB:クボタ社製 CE−W−4)
第1B原料供給配管(4インチ配管、傾斜45度配管)
−−−第1C系(熱可塑性樹脂用)−−−
第1C原料ストックタンク(500L)
第1C原料切出装置(スライドゲート弁)
第1C原料供給装置(重量式フィーダーB:クボタ社製 CE−W−4)
第1C原料供給配管(4インチ配管、傾斜45度配管)
【0089】
−−第2原料供給ライン−−
第2原料ストックタンク(200L)
第2原料切出装置(スライドゲート弁)
第2原料供給装置(重量式フィーダーC:クボタ社製 CE−W−2)
第2原料供給配管(4インチ配管、傾斜90度配管)
第2原料供給ホッパー(円錐型、ホッパー壁角度60°)
【0090】
−冷却ガス供給ライン−
冷却機としてパネル
ガードクーラー(760J、虹技社製)を2つ使用した。これらは表1に記載の通り配置した。
【0091】
−押出機−
押出機として、二軸同方向回転押出機(東芝機械社製のTEM58SS(12バレル 押出機長さ48D))を使用した。
バレル構成は、下記の通りとした。
第1バレル :第一供給口(トップフィードバレル、重量式フィーダーA、B、C)
第2バレル :固体搬送ゾーン
第3バレル :固体搬送ゾーン
第4バレル :固体搬送ゾーン
第5バレル :第一混練ゾーン
第6バレル :大気ベント
第7バレル :第二供給口(サイドフィードバレル、重量式フィーダーD)
第8バレル :第二混練ゾーン
第9バレル :溶融体搬送ゾーン
第10バレル:溶融体搬送ゾーン
第11バレル:真空ベント
第12バレル:溶融体搬送ゾーン
ダイ部 :ダイプレート(オリフィス径4mmφ、オリフィス数20穴)
【0092】
−断熱材−
スーパーウールマット(株式会社ASUKA製)(厚さ50mm)
【0093】
−その他設備−
ストランドバス:水温40±3℃
ペレタイザー:ペレット長さ2.5±0.3mm、ペレット形状:円柱形状
【0094】
(熱可塑性樹脂組成物の製造方法)
−熱可塑性樹脂(A)−
ポリフェニレンエーテル樹脂(旭化成ケミカルズ社製、S201A)(ガラス転移温度:220℃)
ゼネラルパーパスポリスチレン685(PSジャパン社製)
ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ユーピロンS3000F)(ガラス転移温度:150℃)
ナイロン66(旭化成ケミカルズ社製、レオナ1300S)(融点265℃)
【0095】
−低融点添加物(B)−
トリフェニルホスフェート(第八化学社製、TPP)(融点50℃)
クエン酸(融点153℃)
ホスファゼン(伏見製薬所社製、ラビトルFP110)(融点100℃)
【0096】
−フィラー(C)−
ガラスファイバー(日本電気硝社製、ECS03T−249、直径13μm)
【0097】
−マスターバッチ−
タルク(富士タルク工業製、RGE−250、平均粒径2μm)85質量部、エチレン・ビスステアリン酸アマイド(花王株式会社製、カオーワックスEB−FF、融点142℃)10質量部、ポリエチレングリコール(林純薬工業株式会社、PEG400、融点−12℃)5質量部からなる、約2mm球状のマスターバッチ(マスターバッチとしての融点75℃)
【0098】
(測定方法)
(1)原料供給ホッパーの内部温度
原料供給ホッパーの蓋から下方に20cmの位置(ホッパー中間高さ)、且つ原料供給ホッパーの水平方向中心の位置に、ハンディタイプ温度計(安立計器株式会社製、HD−1100、センサーは空気用のAT−40型)を配置して、温度(℃)を測定した。結果を表1に示す。
【0099】
(2)原料供給配管の内部温度
原料供給配管は、その長さが120cmであり、その延在方向が鉛直方向に沿う形で配置されている。
原料供給配管はバレル側の端から110cmの位置に、ハンディタイプ温度計(安立計器株式会社製、HD−1100、センサーは表面用のA−2型)を配置して、温度(℃)を測定した。結果を表1に示す。
【0100】
(3)原料供給装置の重量式フィーダーのスクリュシリンダー外壁面の温度
原料供給装置の重量式フィーダーにおけるスクリュー出口側のシリンダー上側に、ハンディタイプ温度計(安立計器株式会社製、HD−1100、センサーは表面用のA−2型)を配置して、温度(℃)を測定した。結果を表1に示す。
【0101】
(評価方法)
(4)ストランドの安定性
押出機のダイ部から吐出されたストランドについて、サージング(波打ち)の有無、ストランド切れの有無を、目視にて評価した。そして、下記判定基準に従ってストランドの安定性を判定した。
<判定基準(「判定点:ストランドの様子」にて示す)>
1:サージングなし。ストランド切れなし。
2:サージングなし。ストランド切れなし。但し、ストランドの振動が1より大きい。
3:サージングは最初は起こらず、30分過ぎから起きる。ストランド切れなし。
4:サージングは最初は起こらず、30分過ぎから起きる。ストランド切れあり。
5:サージングが最初から起きる。ストランド切れ多発。
【0102】
(5)原料供給ホッパー内部の堆積物の程度
原料供給ホッパー内部の堆積物の程度を、目視にて評価し、下記判定基準に従って判定した。
<判定基準(「判定点:堆積物の程度」にて示す)>
1:全くなし。
2:原料供給口に溜りがあるが、壁面に溜りはなし。
3:原料供給口の溜りが供給口の面積の1/4程度、壁面に溜りはなし。
4:原料供給口の溜りが供給口の面積の1/4〜1/2程度、又は、原料供給ホッパーの壁面に小さな溜りあり。
5:原料供給口の溜りが供給口の面積の1/2以上、又は、原料供給ホッパーの壁面に大きな溜りあり。
【0103】
(6)ストランド中の異物点の程度
押出機のダイ部から吐出されたストランドをペレタイザーで、太さ3mm、長さ3mmのペレットにし、このペレットを、プレス成形機(温度:250℃、圧力:5〜10MPa)で、プレスすることによって、厚さ1mm、底面面254cm
2の平板を作製した。そして、この平板を、10倍ルーペを用いて観察し、平板の裏表表面に観察された、主として酸化物からなる異物点の大きさ(最大径)を、各異物点ごとに下記判定基準に従って評価した。観察された全ての異物点についての合計評価点を表1に示す。
<評価基準(「評価点:異物点の大きさ」にて示す)>
1:200μm未満。
2:200〜400μm。
4:400〜800μm。
8:800μm超。
【0104】
(7)メルトフローレート(MFR)
MFRの測定は、ISO1133に準拠して実施し、ペレタイザー出口から10分毎にペレットをサンプリングし、それぞれのペレットについて6回実施した。測定は、シリンダー温度を300℃に設定し、ペレットの加温を3分間行い、荷重5kgをかけて、10分間で測定した。(ポリカーボネートの場合、荷重1.2kg)
【0105】
(実施例1)
原料供給ラインの重量式フィーダーAの上流にある第1A原料ストックタンクに、リン系難燃剤である、融点が50℃のトリフェニルホスフェート(TPP)(第八化学社製)を投入し、重量式フィーダーBの上流にある第1B原料ストックタンクに、ポリフェニレンエーテル樹脂(S201A、旭化成ケミカルズ社製)(ガラス転移温度:220℃)を投入し、重量式フィーダーCの上流にある第1C原料ストックタンクに、ゼネラルパーパスポリスチレン685(PSジャパン社製)を投入した。
重量式フィーダーA/重量式フィーダーB/重量式フィーダーCにおける供給量を、20質量部/55質量部/25質量部に設定し、押出量は400kg/hr、スクリュー回転数は400rpmに設定した。
冷却ガス供給ラインに装着した冷却機であるパネル
ガードクーラー760Jは、1μmのフィルター通過、湿度0.001%未満、窒素濃度99.99%、圧力0.6MPa、温度40℃の窒素ガスを5400NL/hrで供給;−4℃の冷却ガスを3120NL/hrで、103℃の高温ガスを2280NL/hrで排出;に設定した。
このパネル
ガードクーラーを、1つは、第1A原料供給ホッパーの蓋に重力方向下方に向けて、もう1つは、第1A原料ストックタンクの蓋に重力方向下方に向けて、詳細には表1に示す位置に、配置した。
断熱材は使用しなかった。
押出機の諸条件は下記の通りである。
バレル温度は、第1バレル:35℃、第2バレル:50℃、第3バレル:100℃、第4バレル:250℃、第5〜第12バレル:280℃とした。
ダイ部の設定温度は、280℃とした。
製造における他の条件は表1に示す通りとした。
生産開始後、10分毎にMFRを測定し、1時間後、押出機を停止させ、原料供給ホッパー内部を点検した。各地点の温度は最高で41℃であった。1時間後、押出機を停止して、堆積物の確認をしたところ、全くなかった。運転も安定し、MFRも安定していた。
実施例1における測定結果・評価結果を、表1に示す。
【0106】
(比較例1)
冷却ガス供給ラインを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様に実施した。
原料供給ラインの温度は全てトリフェニルホスフェートの融点を超える温度になった。1時間後、押出機を停止させ、原料供給ホッパー内部を点検したところ、壁面に大きな塊が見られ、押出機の原料供給口の面積の3/4以上が閉塞していた。MFRも時間が経つにつれて低下した。比較例1における結果を、表1に示す。
【0107】
(比較例2)
冷却ガス供給ラインのパネル
ガードクーラーを停止させて、冷却されていない窒素をそれぞれ5400NL/hrで供給したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
比較例2における結果は、比較例1とほぼ同様であった。比較例2における結果を、表1に示す。
【0108】
(
参考例2)
冷却ガス供給ラインを第1A原料供給ホッパーのみに配置したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
原料供給ホッパー、原料供給配管、スクリュシリンダーにおける温度は、実施例1における温度よりも高かったが、第1原料供給ライン全体での温度はトリフェニルホスフェートの融点よりも低かった。実施例1と同様に原料供給ホッパー内部に塊等は発生しなかった。MFRも安定していた。
参考例2における結果を、表1に示す。
【0109】
(実施例3〜5)
冷却ガス供給ラインの1つを第1A原料供給ホッパーに接続し、冷却ガス供給ラインのもう1つを、それぞれ、第1A原料切出装置(実施例3)、第1A原料供給装置(実施例4)、第1A原料供給配管(実施例5)に、接続したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
実施例3〜5における結果は、それぞれ、実施例1とほぼ同様であり、生産性は良好であった。
【0110】
(実施例6)
第2、第3バレルの温度を280℃とし、第2〜第5バレルの上面に、断熱材を敷いたこと以外、実施例1と同様に実施した。
実施例6における結果は、実施例1とほぼ同様であり、生産性は良好であった。
【0111】
(実施例7)
パネル
ガードクーラーに供給するガスを、窒素ガスに代えて、エアコンプレッサーの0.6MPaの圧縮空気としたこと以外は、実施例1と同様に実施した。
実施例7では、実施例1と同じように生産性は良好であったが、窒素の代わりに空気を用いたため、異物が増えた。
【0112】
(実施例8)
TPPを、第1原料供給ラインに代えて、第2原料供給ラインを用いて、供給したこと以外は、実施例1と同様に実施した。このとき、パネル
ガードクーラーの1つを、第2原料供給ホッパーの蓋に重力方向下方に向けて、パネル
ガードクーラーのもう1つを、第2供給配管に水平方向に向けて、詳細には表1に示す位置に、配置した。
【0113】
(実施例9)
クエン酸0.8質量部を、重量式フィーダーAを用いて第1原料供給口から、ガラスファイバー(ECS03T−249、日本電気硝社製、直径13μm)20質量部を、重量式フィーダーDを用いて第2原料供給口から、さらに供給したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
実施例9では、実施例1と同様に生産性は良好であった。
【0114】
(実施例10)
S201Aを55質量部から65質量部に、TPP(20質量部)に代えてラビトルFP110(10質量部)にしたこと、FP110の混練性を良好にするために、第2、第3バレルの温度を280℃としたこと以外は、実施例1と同様に実施した。
実施例10では、第2、第3バレルの温度を上げた分、原料供給ホッパーの内部温度は上がったが、実施例1と同様に生産性は安定であった。
【0115】
(比較例3)
冷却ガス供給ラインを使用しなかったこと以外は、実施例10と同様に実施した。
比較例3では、原料供給ホッパーの内部温度が100℃を超え、原料供給ホッパー内部に塊が発生し、また、異物も多かった。
【0116】
(実施例11)
S201A及びGP685に代えて、ポリカーボネート(ガラス転移温度:150℃)90質量部を用いたこと以外は、実施例10と同様に実施した。
実施例11では、実施例9と同様に生産性は安定であった。
【0117】
(実施例12)
TPP20質量部の代わりに、マスターバッチ20質量部を用いたこと、タルクの分散性を良好にするために、第2、第3バレルの温度を280℃としたこと以外は、実施例1と同様に実施した。
実施例12では、実施例1と同様に生産性は安定であった。
【0118】
(比較例4)
冷却ガス供給ラインを使用しなかったこと以外は、実施例12と同様に実施した。
比較例4では、原料供給ホッパー内の温度が上がった分、原料供給ホッパー内壁に付着するものが増えた。
【0119】
(実施例13)
S201A及びGP685に代えて、ナイロン66;80質量部(融点265℃)を用いたこと、パネル
ガードクーラーに供給するガスを、窒素ガスに代えて、エアコンプレッサーの0.6MPaの圧縮空気としたこと以外は、実施例12と同様に実施した。
実施例13では、生産性は良好であった。
【0120】
(比較例5)
冷却ガス供給ラインを使用しなかったこと以外は、実施例13と同様に実施した。
比較例5では、原料供給ホッパー内の温度が上がった分、原料供給ホッパー内壁に付着するものが増えた。
【0121】
(比較例6)
冷却ガス供給ラインを使用せず、第1原料供給ホッパーの外壁を2重にし、その内部(外壁間)に、冷却水を通すことによって、原料供給ホッパーを冷却したこと以外は、実施例1と同様に実施した。具体的には、比較例6では、原料供給ホッパーの底部から蓋部までらせん状に流れるように、外壁間に流路を設け、ここに、フリークーリングチラー(オリオン機械株式会社製)を用いて、−4℃の冷却水を供給した。
原料供給ラインの温度は全てトリフェニルホスフェートの融点を超える温度になった。1時間後、押出機を停止させ、原料供給ホッパー内部を点検したところ、壁面に有機物の凝縮物が見られ、その上に大きな塊が見られ、押出機の原料供給口の面積の3/4以上が閉塞していた。MFRも時間が経つにつれて低下した。比較例6における結果を、表1に示す。
【0122】
【表1-1】
【表1-2】