特許第6865327号(P6865327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865327
(24)【登録日】2021年4月7日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】血液バッグシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/02 20060101AFI20210419BHJP
   A61M 39/28 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   A61M1/02 121
   A61M39/28 130
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-509535(P2020-509535)
(86)(22)【出願日】2020年2月6日
(86)【国際出願番号】JP2020004484
(87)【国際公開番号】WO2020170832
(87)【国際公開日】20200827
【審査請求日】2020年2月18日
(31)【優先権主張番号】特願2019-27946(P2019-27946)
(32)【優先日】2019年2月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】中野 将識
【審査官】 木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−512106(JP,A)
【文献】 米国特許第3316935(US,A)
【文献】 米国特許第4307869(US,A)
【文献】 米国特許第4439179(US,A)
【文献】 米国特許第4932629(US,A)
【文献】 国際公開第2015/129520(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0043111(US,A1)
【文献】 国際公開第2018/088072(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/02
A61M 39/28
F16K 7/04 ― 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液を収容するための第1バッグと、前記第1バッグ内の血液を遠心分離して得られた血液成分を収容するための第2バッグと、添加溶液が収容された第3バッグと、を備え、前記第1バッグに接続された第1チューブは、前記第2バッグに接続された第2チューブと前記第3バッグに接続された第3チューブとに分岐部を介して連結された血液バッグシステムであって、
前記第2チューブ及び前記第3チューブのそれぞれの流路を閉塞可能な1つのクランプを備え、
前記クランプは、板状のベース部を有し、
前記ベース部には、
前記第2チューブが挿通された第1挿通孔と、
前記第3チューブが挿通された第2挿通孔と、
前記第1挿通孔から延出し、前記第2チューブの流路が閉塞されるように前記第2チューブの外周面を内方に押圧するための第1スリットと、
前記第2挿通孔から延出し、前記第3チューブの流路が閉塞されるように前記第3チューブの外周面を内方に押圧するための第2スリットと、が設けられており
前記ベース部に挿通されたチューブは、前記第2チューブと前記第3チューブの2本のみであり、
前記ベース部に設けられたスリットは、前記第1スリットと前記第2スリットの2つのみであり、
前記ベース部は、互いに反対側に位置する第1辺及び第2辺を有し、
前記第1挿通孔と前記第2挿通孔とは、前記第1辺側から前記第2辺側に向かう方向に沿って並んでおり、
前記第1スリットと前記第2スリットは、前記第1挿通孔と前記第2挿通孔とからそれぞれ前記第1辺に向かって延出しており、
前記第1辺及び前記第2辺のうち前記第2辺にのみ、ユーザの手指によって操作可能な操作部が設けられている、血液バッグシステム。
【請求項2】
請求項1記載の血液バッグシステムであって、
前記第1スリットは、
前記第2チューブを保持する保持スリットと、
前記保持スリットと前記第1挿通孔との間に位置する中間スリットと、を含み、
前記中間スリットのスリット幅は、前記保持スリットのスリット幅以下である、血液バッグシステム。
【請求項3】
請求項2記載の血液バッグシステムであって、
前記中間スリットは、曲がって延在している、血液バッグシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の血液バッグシステムであって、
前記第1スリットを形成する壁部には、前記第2チューブが前記第1スリットから前記第1挿通孔に戻ることを抑制する戻り抑制部が設けられている、血液バッグシステム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の血液バッグシステムであって、
前記第2スリットは、前記第3チューブが前記第2スリットから前記第2挿通孔に戻ることにより前記第3チューブの流路が開放可能なように形成されている、血液バッグシステム。
【請求項6】
請求項記載の血液バッグシステムであって、
前記第1スリット及び前記第2スリットは、前記第2チューブ及び前記第3チューブに対して前記ベース部を一方向にスライドさせることにより、前記第2チューブが前記第1スリットに挿入されるとともに前記第3チューブが前記第2スリットに挿入されるように形成されている、血液バッグシステム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の血液バッグシステムであって、
前記操作部は、平板部を有する、血液バッグシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液バッグシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2016−106012号公報には、血液を収容するための第1バッグ(親バッグ)と、第1バッグ内の血液を遠心分離して得られた血液成分を収容するための第2バッグ(子バッグ)と、添加溶液が収容された第3バッグ(薬液バッグ)とを備えた血液バッグシステムが開示されている。
【0003】
第1バッグに接続された第1チューブは、第2バッグに接続された第2チューブと第3バッグに接続された第3チューブとに分岐部を介して連結されている。
【発明の概要】
【0004】
上述したような血液バッグシステムでは、遠心分離移送装置に血液バッグシステムをセットし、第1バッグ内の血液を遠心分離する。そして、遠心分離によって得られた血液成分を第1バッグから第1チューブ及び第2チューブを介して第2バッグに移送する。その後、第1のクランプによって第2チューブの流路を閉塞するとともに第2のクランプによって第3チューブの流路を閉塞した状態で、血液バッグシステムを遠心分離移送装置から取り外す。続いて、第3バッグを懸架台に吊るし、第2のクランプを第3チューブから外し、赤血球保存液等の添加溶液を第3チューブ及び第1チューブを介して第1バッグに移送する。
【0005】
このように、第2チューブの流路を閉塞するための第1のクランプと第3チューブの流路を閉塞するための第2のクランプとが互いに別部品であると、2つのチューブ(第2チューブ及び第3チューブ)のそれぞれの流路を効率的に閉塞することができないおそれがある。
【0006】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、1つのクランプによって2つのチューブのそれぞれの流路を効率的に閉塞することができる血液バッグシステムを提供することを目的とする。
【0007】
本発明の一態様は、血液を収容するための第1バッグと、前記第1バッグ内の血液を遠心分離して得られた血液成分を収容するための第2バッグと、添加溶液が収容された第3バッグと、を備え、前記第1バッグに接続された第1チューブは、前記第2バッグに接続された第2チューブと前記第3バッグに接続された第3チューブとに分岐部を介して連結された血液バッグシステムであって、前記第2チューブ及び前記第3チューブのそれぞれの流路を閉塞可能な1つのクランプを備え、前記クランプは、前記第2チューブ及び前記第3チューブが挿通された挿通孔が形成されたベース部を有し、前記挿通孔を形成する壁部には、前記第2チューブの流路が閉塞されるように前記第2チューブの外周面を内方に押圧するための第1スリットと、前記第3チューブの流路が閉塞されるように前記第3チューブの外周面を内方に押圧するための第2スリットと、が設けられている、血液バッグシステムである。
【0008】
本発明の他の態様は、血液を収容するための第1バッグと、前記第1バッグ内の血液を遠心分離して得られた血液成分を収容するための第2バッグと、添加溶液が収容された第3バッグと、一端が前記第1バッグに接続され、他端が分岐部に接続された第1チューブと、前記分岐部と前記第2バッグとを接続する第2チューブと、前記分岐部と前記第3バッグとを接続する第3チューブとからなる血液バッグシステムにおいて、前記第2チューブ及び前記第3チューブのそれぞれの流路を閉塞可能なクランプであって、前記第2チューブ及び前記第3チューブが挿通される挿通孔が形成されたベース部を有し、前記挿通孔を形成する壁部には、前記第2チューブの流路が閉塞されるように前記第2チューブの外周面を内方に押圧するための第1スリットと、前記第3チューブの流路が閉塞されるように前記第3チューブの外周面を内方に押圧するための第2スリットと、が設けられている、クランプである。
【0009】
本発明によれば、ベース部に形成された挿通孔に第2チューブ及び第3チューブが挿通され、挿通孔を形成する壁部に第1スリットと第2スリットとを設けているため、1つのクランプによって第2チューブ及び第3チューブのそれぞれの流路を効率的に閉塞することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る血液バッグシステム及び遠心分離移送装置の全体構成を示す説明図である。
図2】遠心分離移送装置の単位セットエリアを示す平面図である。
図3図3Aは、図1のクランプの斜視説明図であり、図3Bは、図1のクランプの平面説明図である。
図4】薬液バッグから血液バッグに赤血球保存液を移送させる手順の説明図である。
図5図5Aは、第1構成例に係る第1スリットの平面説明図であり、図5Bは、第2構成例に係る第1スリットの平面説明図であり、図5Cは、第3構成例に係る第1スリットの平面説明図である。
図6図6Aは、第4構成例に係る第1スリットの平面説明図であり、図6Bは、第5構成例に係る第1スリットの平面説明図である。
図7】第1変形例に係るクランプの平面説明図である。
図8図8Aは、第2変形例に係るクランプの斜視説明図であり、図8Bは、図8Aのクランプの平面説明図であり、図8Cは、図8Aのクランプを形成する操作部の構成例の説明図である。
図9】第3変形例に係るクランプの平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
本発明の一実施形態に係る血液バッグシステム10は、医療従事者等のユーザにより、図1に示すように遠心分離移送装置12にセットされる。遠心分離移送装置12は、血液バッグシステム10の血液を遠心分離し、複数種類の血液成分を生成して保存する。以下では、血液バッグシステム10と遠心分離移送装置12とを含む構成を血液製剤製造システム14という。
【0013】
血液バッグシステム10は、遠心分離前の採血に使用される図示しない前処理部と、遠心分離により血液成分を生成して個別に保存する分離処理部16とを有し、両部を中継チューブ18で接続している。分離処理部16は、遠心分離前に、前処理部に繋がる中継チューブ18が切断されて図1中に示される状態となり、遠心分離移送装置12にセットされる。
【0014】
血液バッグシステム10の前処理部は、ドナー(供血者)から全血を採取し、また全血から所定の血液成分(例えば、白血球)を除去する。このため前処理部は、採血針、採血バッグ、初流血バッグ、フィルタ(例えば、白血球除去フィルタ)等を有し、複数のチューブにより各部材を接続することで構成される。また分離処理部16は、中継チューブ18を介してフィルタの下流側に接続されている。具体的には、前処理部は、採血針を通して採取したドナーの全血のうち最初の血液を初流血バッグに貯留し、その後に残りの血液を採血バッグに貯留する。さらに前処理部は、採血バッグに貯留された全血をフィルタに流動させることで、フィルタにおいて白血球を除去し、この除去血液(白血球除去血液)を分離処理部16に移送する。
【0015】
一方、血液バッグシステム10の分離処理部16は、複数のバッグ20(血液バッグ22、PPPバッグ24及び薬液バッグ26)を有し、複数のチューブ30により各バッグ20を接続することで構成される。
【0016】
血液バッグ22(第1バッグ)は、血液バッグシステム10の製品提供状態で、前処理部と繋がる中継チューブ18に直接接続されている。このため、血液バッグ22は、採血時においてフィルタから移送されてきた除去血液を貯留する。この血液バッグ22には、遠心分離移送装置12にセットされ、遠心分離移送装置12の動作により遠心力が付与される。これにより血液バッグ22の除去血液は、比重の異なる血液成分(乏血小板血漿(platelet poor plasma:PPP)、濃厚赤血球(red blood cells:RBC))等に遠心分離される。そして、血液バッグ22は、遠心分離後に遠心分離移送装置12の動作下に、PPPが移送されることで、残留したRBCのみを貯留する。
【0017】
PPPバッグ24(第2バッグ)は、血液バッグ22からPPPが供給されることで、このPPPを保存する。一方、薬液バッグ26(第3バッグ)は、MAP液、SAGM液、OPTISOL等の赤血球保存液(添加溶液)を予め収容している。
【0018】
また、分離処理部16は、遠心分離移送装置12にセットされる前に、セグメントチューブ28が形成される。セグメントチューブ28は、ドナーの血液(除去血液)が内部に存在する密閉チューブ28aを複数有する。複数の密閉チューブ28aは、血液バッグ22と前処理部(フィルタ)との間を接続していた中継チューブ18がフィルタ付近で切断され、さらに所定間隔毎にシールされることで一連に連なるように形成される。このセグメントチューブ28は、ユーザにより必要に応じて切り取られ、血液のチェックに等用いられる。
【0019】
分離処理部16の複数のチューブ30は、分岐部としての分岐コネクタ32(Y型コネクタ)を介して複数に分岐している。詳細には、複数のチューブ30は、血液バッグ22と分岐コネクタ32を接続する第1チューブ34、PPPバッグ24と分岐コネクタ32を接続する第2チューブ36、及び薬液バッグ26と分岐コネクタ32を接続する第3チューブ38を含む。第1チューブ34は第1流路34aを有し、第2チューブ36は第2流路36aを有し、第3チューブ38は第3流路38aを有する。第1チューブ34、第2チューブ36及び第3チューブ38のそれぞれは、可撓性を有する。第1流路34a、第2流路36a及び第3流路38aは分岐コネクタ32内の流路を介して相互に連通している。
【0020】
第1チューブ34の血液バッグ22側の端部には、破断可能な封止部材40(クリックチップ)が設けられている。同様に、第3チューブ38の薬液バッグ26側の端部には、破断可能な封止部材42が設けられている。封止部材40、42は、破断操作が行われるまで第1流路34a、第3流路38aを遮断し、血液バッグ22や薬液バッグ26内の液体を他のバッグ20に移送することを防止する。
【0021】
分離処理部16は、第2チューブ36及び第3チューブ38のそれぞれの流路(第2流路36a及び第3流路38a)を少なくとも閉塞するクランプ43を有する。クランプ43の構成については後述する。
【0022】
一方、血液バッグシステム10の分離処理部16がセットされる遠心分離移送装置12は、箱状の基体44と、基体44の上面を開閉可能な蓋46と、基体44に設けられる遠心ドラム48とを備える。また、遠心分離移送装置12の基体44には、遠心ドラム48を回転させるモータ(不図示)、遠心分離移送装置12の動作を制御する制御部50、及びユーザが確認及び操作を行うための操作表示部52が設けられている。
【0023】
遠心ドラム48は、分離処理部16をセット可能な単位セットエリア54を複数(6つ)有する。1つの単位セットエリア54は、その高さがバッグ20の長手方向長さよりも長く、また遠心ドラム48の回転中心に対し60°の範囲に設定されている。つまり、6つの単位セットエリア54は、周方向に沿って隙間なく並ぶことで、環状の構造体である遠心ドラム48を構成する。
【0024】
図1及び図2に示すように、単位セットエリア54は、遠心ドラム48の回転に伴い血液バッグ22に遠心力を付与する。具体的には、単位セットエリア54は、血液バッグ22を収容する血液バッグポケット56と、PPPバッグ24を収容するPPPバッグポケット58と、薬液バッグ26を収容する薬液バッグポケット60とを遠心ドラム48の径方向外側位置に備える。
【0025】
血液バッグポケット56は、単位セットエリア54の周方向中央部に設けられ、PPPバッグポケット58や薬液バッグポケット60よりも大きな容積を有する。PPPバッグポケット58と薬液バッグポケット60は、血液バッグポケット56よりも径方向外側において周方向に並んで設けられる。
【0026】
また、単位セットエリア54の上面54aは、血液バッグシステム10の複数のチューブ30を配置し保持するように構成されている。上面54aにおいて血液バッグポケット56よりも径方向内側の中央領域54a1(第1領域)には、第1チューブ34及びセグメントチューブ28の一部分が配置される。また中央領域54a1には、血液バッグポケット56の開口を開閉する蓋体62が設けられている。さらに蓋体62に閉塞される第1チューブ34の配置位置には、封止部材40を破断する破断部64の一部、第1チューブ34を流動する血液の状態を検出するセンサ66(光学センサ)が設けられている。
【0027】
上面54aの左領域54a2(第2領域)には、中央領域54a1を通った第1チューブ34の一部分、分岐コネクタ32、第2チューブ36及び第3チューブ38の一部分が配置される。この左領域54a2には、分岐コネクタ32を保持するホルダ68が設けられている。
【0028】
上面54aの右領域54a3(第3領域)には、中央領域54a1を通ったセグメントチューブ28の一部分が配置される。この右領域54a3には、セグメントチューブ28の複数の密閉チューブ28aを収容するセグメントポケット74が設けられている。
【0029】
さらに、単位セットエリア54のPPPバッグポケット58や薬液バッグポケット60よりも径方向外側には、上面54aよりも上方に突出するチューブ保持部76が設けられている。チューブ保持部76は、単位セットエリア54の外周縁に連なる外壁78と、外周縁から外壁78よりも内側に突出する内壁80とを有し、外壁78と内壁80の間に第2チューブ36を配置させる。内壁80は、薬液バッグポケット60の左側からPPPバッグポケット58の周方向途中位置まで延在し、第2チューブ36をPPPバッグポケット58にガイドする。
【0030】
また、単位セットエリア54は、遠心分離後の血液バッグ22を押圧するスライダ82(押し子)を血液バッグポケット56の径方向内側に備える。スライダ82は、制御部50(図1参照)の制御下に、遠心ドラム48の径方向に沿って進退する。
【0031】
上記の単位セットエリア54では、ユーザにより、除去血液を貯留した血液バッグ22が血液バッグポケット56に、空のPPPバッグ24がPPPバッグポケット58に、赤血球保存液を貯留した薬液バッグ26が薬液バッグポケット60にそれぞれ収容される。そして、単位セットエリア54は、遠心ドラム48の回転により血液バッグ22の除去血液を遠心分離し、遠心分離後にスライダ82を進出して血液バッグ22を押圧する。これにより、血液バッグ22内で遠心分離により生じたPPPがPPPバッグ24に移送され、PPPの移送後は血液バッグ22にRBCが残留する。その後、血液バッグシステム10は、ユーザにより遠心分離移送装置12から取り出されて、図示しないスタンドに薬液バッグ26が吊り下げられる。これにより薬液バッグ26から血液バッグ22に赤血球保存液が供給され、血液バッグ22は薬液を含むRBC(血液製剤)を貯留した状態となる。
【0032】
図3A及び図3Bに示すように、血液バッグシステム10のクランプ43は、第2チューブ36及び第3チューブ38が挿通された挿通孔90が形成されたベース部92と、ベース部92に設けられて手指によって操作可能な操作部94とを有する。すなわち、クランプ43は、第2チューブ36及び第3チューブ38に設けられている。ベース部92は、硬質な樹脂材料によって矩形の板状に形成されている。つまり、ベース部92は、互いに平行に延在する第1長辺96a及び第2長辺96bと、互いに平行に延在する第1短辺98a及び第2短辺98bとを含む。
【0033】
挿通孔90は、第2チューブ36が挿通された第1挿通孔100と、第3チューブ38が挿通された第2挿通孔102とを含む。第1挿通孔100の直径は、第2チューブ36の外径以上の大きさに形成されている。第2挿通孔102の直径は、第3チューブ38の外径以上の大きさに形成されている。第1挿通孔100と第2挿通孔102とは、ベース部92の長手方向に沿って並んでいる。第1挿通孔100と第2挿通孔102とは、ベース部92の壁部によって互いに隔てられている。
【0034】
第1挿通孔100を形成する壁部には、第2チューブ36の第2流路36aが閉塞されるように第2チューブ36の外周面を内方に押圧するための第1スリット104が設けられている。第1スリット104は、第1挿通孔100から第2挿通孔102とは反対側(第1短辺98a)に向かって延出している。第1スリット104は、ベース部92の長手方向(第1挿通孔100と第2挿通孔102の並び方向)に沿って直線状に延在している。
【0035】
第1スリット104は、その延出方向に向かって幅狭に形成されている。第1スリット104のうち第1挿通孔100側の端部の幅寸法(第1スリット104の最大幅寸法)は、第2チューブ36の外径よりも小さい。第1スリット104の延出長は、第2チューブ36の外径以上である。
【0036】
第2挿通孔102を形成する壁部には、第3チューブ38の第3流路38aが閉塞されるように第3チューブ38の外周面を内方に押圧するための第2スリット106が設けられている。第2スリット106は、第2挿通孔102から第1挿通孔100側に向かって延出している。第2スリット106は、ベース部92の長手方向(第1挿通孔100と第2挿通孔102の並び方向)に沿って直線状に延在している。第2スリット106の第2挿通孔102からの延出方向は、第1スリット104の第1挿通孔100からの延出方向と略同じである。
【0037】
第2スリット106は、その延出方向に向かって幅狭に形成されている。第2スリット106のうち第2挿通孔102側の端部の幅寸法(第2スリット106の最大幅寸法)は、第3チューブ38の外径よりも小さい。第2スリット106の延出長は、第3チューブ38の外径以上である。第2スリット106は、第3チューブ38が第2スリット106から第2挿通孔102に戻ることが可能に形成されている。すなわち、第2スリット106は、第3チューブ38が第2スリット106から第2挿通孔102に戻ることにより第3チューブ38の第3流路38aが開放可能なように形成されている。
【0038】
操作部94は、ベース部92のうち第1スリット104及び第2スリット106の延出方向とは反対方向の端部(第2短辺98b)に設けられている。具体的に、操作部94は、第2短辺98bのうち第2長辺96bが位置する端部に設けられている。換言すれば、操作部94は、ベース部92の短手方向の中央よりも第2長辺96b側に位置している。
【0039】
操作部94は、平板部108と、平板部108の少なくとも一方の平面に設けられた滑り止め部110とを有する。平板部108は、ベース部92の第2短辺98bから第1挿通孔100及び第2挿通孔102とは反対側に延出している。滑り止め部110は、ベース部92の長手方向に沿って並ぶ複数の凸部112を有している。各凸部112は、ベース部92の短手方向に沿って延びている。
【0040】
滑り止め部110は、複数の凸部112を有する例に限定されず、操作部94に対する手指の滑りを抑制することができればどのような構成であってもよい。
【0041】
クランプ43は、血液バッグシステム10を遠心分離移送装置12にセットした状態で第2長辺96b(操作部94)が第1長辺96aよりも上方に位置するように第2チューブ36及び第3チューブ38に設けられている。
【0042】
本実施形態に係る血液バッグシステム10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下その動作について説明する。
【0043】
上述したように、血液バッグシステム10は、ユーザ(医療従事者)により採血時に前処理部が使用されることで、ドナーの全血から所定成分(白血球)を除いた除去血液を血液バッグ22に貯留する。血液バッグ22には、ドナーに応じた適宜の血液量(例えば、400cc)の血液が貯留される。
【0044】
その後、ユーザは、除去血液を遠心分離するために、血液バッグシステム10の分離処理部16を前処理部から切り離して遠心分離移送装置12にセットする。血液バッグ22は、単位セットエリア54の血液バッグポケット56に挿入される。第1チューブ34は、上面54aの中央領域54a1に配置される。薬液バッグ26は、薬液バッグポケット60に挿入され、PPPバッグ24は、PPPバッグポケット58に挿入される。また、分岐コネクタ32がホルダ68にセットされ、クランプ43が上面54aの左領域54a2のホルダ68の近傍に配置される。そして、ユーザが蓋体62を閉じると、破断部64が封止部材40を確実に破断して、第1チューブ34の第1流路34aを開放する。
【0045】
血液バッグシステム10のセット後に、遠心分離移送装置12は、制御部50の制御下に遠心ドラム48を回転させることで、血液バッグ22の除去血液を、比重が異なる血液成分(PPP、RBC等)に遠心分離する。この遠心分離後、遠心分離移送装置12は、スライダ82により血液バッグ22を押圧する。これにより、比重が軽いPPPが血液バッグ22から流出し、このPPPは、第1チューブ34、分岐コネクタ32、第2チューブ36を順に流動してPPPバッグ24に流入する。
【0046】
遠心分離移送装置12は、血液バッグ22からPPPバッグ24にPPPを移送すると、スライダ82を後退させ、血液バッグポケット56から血液バッグ22を取り出し可能とする。そして、ユーザは、クランプ43によって第2チューブ36の第2流路36aと第3チューブ38の第3流路38aとのそれぞれを閉塞する。
【0047】
すなわち、ユーザは、手指で操作部94を持ち、第2チューブ36及び第3チューブ38に対してベース部92が操作部94側に移動するように操作部94を引っ張る。そうすると、図3Bに示すように、第1挿通孔100に挿通されていた第2チューブ36が第1スリット104に挿入されるとともに第2挿通孔102に挿通されていた第3チューブ38が第2スリット106に挿入される。
【0048】
第2チューブ36が第1スリット104に挿入されると、第2チューブ36は、第1スリット104を形成する壁部によって径方向内方に押圧されて扁平形状に圧縮変形するため、第2チューブ36の第2流路36aが閉塞する。第3チューブ38が第2スリット106に挿入されると、第3チューブ38は、第2スリット106を形成する壁部によって径方向内方に押圧されて扁平形状に圧縮変形するため、第3チューブ38の第3流路38aが閉塞する。
【0049】
その後、ユーザは、図4に示すように、血液バッグシステム10を遠心分離移送装置12から取り出して、薬液バッグ26を図示しないスタンドに吊り下げる。そして、第3チューブ38を第2スリット106から第2挿通孔102に移動させる。すなわち、第3チューブ38の第3流路38aを開放する。これにより、薬液バッグ26内の赤血球保存液が重力の作用によって、第3チューブ38、分岐コネクタ32、第1チューブ34を通り血液バッグ22に供給される。この際、第2チューブ36は、第1スリット104に位置させたままである。つまり、第2チューブ36の第2流路36aは、閉塞状態のまま維持される。そのため、赤血球保存液がPPPバッグ24内に流入することが防止される。これにより、血液バッグ22には、赤血球保存液を含むRBCが貯留される。
【0050】
この場合、本実施形態に係る血液バッグシステム10及びクランプ43は、以下の効果を奏する。
【0051】
血液バッグシステム10は、血液を収容するための第1バッグ(血液バッグ22)と、第1バッグ(血液バッグ22)内の血液を遠心分離して得られた血液成分を収容するための第2バッグ(PPPバッグ24)と、添加溶液が収容された第3バッグ(薬液バッグ26)と、を備える。第1バッグ(血液バッグ22)に接続された第1チューブ34は、第2バッグ(PPPバッグ24)に接続された第2チューブ36と第3バッグ(薬液バッグ26)に接続された第3チューブ38とに分岐部(分岐コネクタ32)を介して連結されている。
【0052】
血液バッグシステム10は、第2チューブ36及び第3チューブ38のそれぞれの流路(第2流路36a及び第3流路38a)を閉塞可能な1つのクランプ43を備える。クランプ43は、第2チューブ36及び第3チューブ38が挿通された挿通孔90が形成されたベース部92を有する。挿通孔90を形成する壁部には、第2チューブ36の流路(第2流路36a)が閉塞されるように第2チューブ36の外周面を内方に押圧するための第1スリット104と、第3チューブ38の流路(第3流路38a)が閉塞されるように第3チューブ38の外周面を内方に押圧するための第2スリット106と、が設けられている。
【0053】
このような構成によれば、ベース部92に形成された挿通孔90に第2チューブ36及び第3チューブ38が挿通され、挿通孔90を形成する壁部に第1スリット104と第2スリット106とを設けているため、1つのクランプ43によって第2チューブ36及び第3チューブ38のそれぞれの流路(第2流路36a及び第3流路38a)を効率的に閉塞することができる。
【0054】
第2スリット106は、第3チューブ38が第2スリット106から挿通孔90に戻ることにより第3チューブ38の流路(第3流路38a)が開放可能なように形成されている。
【0055】
このような構成によれば、第3チューブ38の流路(第3流路38a)を容易に閉塞及び開放することができる。
【0056】
挿通孔90は、第2チューブ36が挿通された第1挿通孔100と、第3チューブ38が挿通された第2挿通孔102と、を含む。第1スリット104は、第1挿通孔100を形成する壁部に設けられ、第2スリット106は、第2挿通孔102を形成する壁部に設けられている。
【0057】
このような構成によれば、第2チューブ36及び第3チューブ38を第1スリット104及び第2スリット106のそれぞれに容易に挿入させることができる。
【0058】
第1スリット104及び第2スリット106は、第2チューブ36及び第3チューブ38に対してベース部92を一方向にスライドさせることにより、第2チューブ36が第1スリット104に挿入されるとともに第3チューブ38が第2スリット106に挿入されるように形成されている。
【0059】
このような構成によれば、第2チューブ36及び第3チューブ38のそれぞれの流路(第2流路36a及び第3流路38a)を効率的に閉塞することができる。
【0060】
第1スリット104の第1挿通孔100からの延出方向は、第2スリット106の第2挿通孔102からの延出方向と略同じである。
【0061】
このような構成によれば、第2チューブ36及び第3チューブ38に対してベース部92を一方向にスライドさせることにより、第2チューブ36及び第3チューブ38を第1スリット104及び第2スリット106のそれぞれに容易に挿入させることができる。
【0062】
第1スリット104及び第2スリット106のそれぞれは、第1挿通孔100と第2挿通孔102の並び方向に沿って延在している。
【0063】
このような構成によれば、第1挿通孔100と第2挿通孔102の並び方向に沿ってベース部92をスライドさせることにより、第2チューブ36及び第3チューブ38を第1スリット104及び第2スリット106のそれぞれに挿入させることができる。
【0064】
クランプ43は、ベース部92のうち第1スリット104及び第2スリット106の延出方向とは反対方向の端部に設けられて手指によって操作可能な操作部94を有する。
【0065】
このような構成によれば、ベース部92のスライド操作を容易に行うことができる。
【0066】
操作部94は、平板部108を有する。
【0067】
このような構成によれば、ベース部92のスライド操作を容易に行うことができる。
【0068】
血液バッグシステム10では、血液バッグ22内のPPPをPPPバッグ24に移送した後でクランプ43によって第2チューブ36の第2流路36aを一度閉塞すると、後工程で第2チューブ36の第2流路36aを開放することはない。そのため、クランプ43は、第1スリット104に代えて、第2チューブ36が第1スリット104から第1挿通孔100に戻ることを抑制する以下に説明する第1〜第5構成例に係る第1スリット104a〜104eを有していてもよい。
【0069】
(第1構成例)
第1構成例に係る第1スリット104aは、図5Aに示すように、第2チューブ36を保持する保持スリット120と、保持スリット120と第1挿通孔100との間に位置する中間スリット122とを含む。中間スリット122は、第1挿通孔100から第1短辺98aに向かって直線状に延出している。保持スリット120は、中間スリット122の延出端から第1短辺98aに向かって直線状に延出している。中間スリット122のスリット幅は、保持スリット120のスリット幅と同一に設定されている。
【0070】
この場合、第1スリット104aは、第2チューブ36を保持する保持スリット120と、保持スリット120と第1挿通孔100との間に位置する中間スリット122と、を含み、中間スリット122のスリット幅は、保持スリット120のスリット幅と略同一である。そのため、簡易な構成により第2チューブ36の流路(第2流路36a)を閉塞した状態で維持することができる。
【0071】
(第2構成例)
第2構成例に係る第1スリット104bは、図5Bに示すように、上述した第1構成例に係る第1スリット104aの中間スリット122に代えて、中間スリット124を備える。中間スリット124のスリット幅は、保持スリット120のスリット幅よりも狭い。
【0072】
この場合、中間スリット124のスリット幅が保持スリット120のスリット幅よりも小さい。そのため、第2チューブ36が保持スリット120から第1挿通孔100に戻ることを効果的に抑えることができる。
【0073】
(第3構成例)
第3構成例に係る第1スリット104cは、図5Cに示すように、上述した第1構成例に係る第1スリット104aの中間スリット122に代えて中間スリット126を備える。中間スリット126は、曲がって延在している(湾曲している)。換言すれば、中間スリット126は、曲線状(円弧状)に延在している。
【0074】
この場合、中間スリット126が曲がって延在している。そのため、第2チューブ36が保持スリット120から第1挿通孔100に戻ることを効果的に抑えることができる。
【0075】
(第4構成例)
第4構成例に係る第1スリット104dは、図6Aに示すように、上述した第1構成例に係る第1スリット104aの中間スリット122に代えて中間スリット128を備える。中間スリット128(第1スリット104d)を形成する壁部129a、129bには、第2チューブ36が保持スリット120から第1挿通孔100に戻ることを抑制する戻り抑制部130が設けられている。
【0076】
戻り抑制部130は、中間スリット128を形成する互いに対向する壁部129a、129bのそれぞれに設けられた凸部132a、132bを有する。凸部132a、132bは、中間スリット128における保持スリット120側に位置する。凸部132aは、一方の壁部129aから他方の壁部129bに向かって突出している。凸部132bは、他方の壁部129bから一方の壁部129aに向かって突出している。凸部132aと凸部132bとは、互いに対向している。
【0077】
凸部132aは、先細りの三角形状に形成されている。凸部132aには、第1挿通孔100側に位置する傾斜部134と、保持スリット120側に位置するストッパ部136とが設けられている。
【0078】
傾斜部134は、凸部132aの突出端に向かって第1挿通孔100が位置する側に傾斜している。ストッパ部136は、保持スリット120の延在方向に対して略垂直に延在している。凸部132bは、凸部132aと同様に構成されている。そのため、凸部132bの構成の説明については省略する。
【0079】
このような第1スリット104dにおいて、第2チューブ36は、第1挿通孔100から中間スリット128を介して凸部132a、132bの傾斜部134を乗り越えて保持スリット120に移動することができる。一方、保持スリット120に位置する第2チューブ36は、凸部132a、132bのストッパ部136を乗り越えることができない。
【0080】
この場合、第1スリット104dを形成する壁部129a、129bには、第2チューブ36が第1スリット104dから第1挿通孔100に戻ることを抑制する戻り抑制部130が設けられている。そのため、第2チューブ36が第1スリット104d(保持スリット120)から第1挿通孔100に戻ることを一層効果的に抑えることができる。
【0081】
ストッパ部136は、凸部132aの突出端に向かって第1挿通孔100とは反対側に傾斜していてもよい。凸部132a、132bの形状は、先細りの三角形状に限定されない。凸部132a、132bは、半円状に形成されていてもよい。凸部132a、132bは、中間スリット128のうち第1挿通孔100側に位置していてもよい。戻り抑制部130は、凸部132a及び凸部132bのいずれか一方のみを有し他方を省略してもよい。
【0082】
(第5構成例)
第5構成例に係る第1スリット104eは、図6Bに示すように、上述した第1構成例に係る第1スリット104aの保持スリット120を備える。なお、第1スリット104eは、上述した中間スリット122を有しない。
【0083】
第1スリット104eを形成する壁部141a、141bには、第2チューブ36が第1スリット104eから第1挿通孔100に戻ることを抑制する戻り抑制部140が設けられている。戻り抑制部140は、第1スリット104eを形成する互いに対向する壁部141a、141bのそれぞれに設けられた凸部142a、142bを有する。
【0084】
凸部142a、142bは、第1スリット104eにおける第1挿通孔100側の端部に位置する。凸部142aは、一方の壁部141aから他方の壁部141bに向かって突出している。凸部142bは、他方の壁部141bから一方の壁部141aに向かって突出している。凸部142aと凸部142bとは、互いに対向している。凸部142a、142bは、半円状に形成されている。
【0085】
この場合、第1スリット104eは、上述した第4構成例に係る第1スリット104dと同様の効果を奏する。また、第1スリット104eは、上述した中間スリット122を有しないため、クランプ43の長手方向の寸法を比較的短くすることができる。
【0086】
(第1変形例)
次に、第1変形例に係るクランプ43Aについて説明する。なお、本変形例に係るクランプ43Aにおいて、上述したクランプ43と同一の構成については同一の参照符号を付し、その説明については省略する。後述する第2変形例に係るクランプ43B及び第3変形例に係るクランプ43Cについても同様である。
【0087】
図7に示すように、第1変形例に係るクランプ43Aは、上述したクランプ43の第1スリット104及び第2スリット106に代えて第1スリット150及び第2スリット152を備える。第1スリット150は、第1スリット104と比較して、第1挿通孔100からの延出方向のみが異なっている。つまり、第1スリット150は、第1挿通孔100から第1短辺98aに向かって第1長辺96a側に傾斜するように延出している。
【0088】
第2スリット152は、第2スリット106と比較して、第2挿通孔102からの延出方向のみが異なっている。すなわち、第2スリット152は、第2挿通孔102から第1短辺98aに向かって第1長辺96a側に傾斜するように延出している。
【0089】
本変形例に係るクランプ43Aによれば、ユーザは、手指で操作部94を持った状態で斜め上方に引き上げることにより、第1挿通孔100に位置する第2チューブ36を第1スリット150に容易に挿入させることができるとともに第2挿通孔102に位置する第3チューブ38を第2スリット152に容易に挿入することができる。
【0090】
本変形例に係るクランプ43Aの第1スリット150の形状は、上述した第1〜第5構成例に係る第1スリット104a〜104eの形状を採用してもよい。
【0091】
(第2変形例)
次に、第2変形例に係るクランプ43Bについて説明する。図8A及び図8Bに示すように、クランプ43Bは、矩形状のベース部154と、ベース部154の一方の長辺に設けられた操作部156とを有する。ベース部154には、挿通孔90(第1挿通孔100及び第2挿通孔102)が形成されている。第1挿通孔100を形成する壁部には第1スリット158が設けられ、第2挿通孔102を形成する壁部には第2スリット160が設けられている。
【0092】
第1スリット158及び第2スリット160のそれぞれは、第1挿通孔100と第2挿通孔102との並び方向と直交する方向(ベース部154の短手方向)に沿って延在している。具体的に、第1スリット158は、第1挿通孔100から他方の長辺側(操作部156とは反対側)に向かって延出している。第1スリット158の形状は、上述した第1スリット104の形状と同様である。第2スリット160は、第2挿通孔102から他方の長辺側(操作部156とは反対側)に向かって延出している。第2スリット160の形状は、上述した第2スリット106の形状と同じである。
【0093】
操作部156は、ベース部154の一方の長辺からベース部154とは反対方向に延出した平板部162(支持部)と、平板部162の延出端部に設けられたフック部164とを有する。フック部164は、ユーザが手指を引っ掛けるためのものであって、平板部162の延出端部からベース部154の一方の面側に円弧状に湾曲している。フック部164は、ベース部154の長手方向の中央よりも第2挿通孔102側に位置する。ただし、ベース部154の長手方向におけるフック部164の位置は任意に設定可能である。
【0094】
本変形例に係るクランプ43Bにおいて、第1スリット158及び第2スリット160のそれぞれは、第1挿通孔100と第2挿通孔102の並び方向と直交する方向に沿って延在している。
【0095】
このような構成によれば、第1挿通孔100と第2挿通孔102の並び方向と直交する方向に沿ってベース部154をスライドさせることにより、第1挿通孔100に位置する第2チューブ36を第1スリット158に容易に挿入させることができるとともに第2挿通孔102に位置する第3チューブ38を第2スリット160に容易に挿入することができる。
【0096】
操作部156は、手指を引っ掛けるためのフック部164を有する。このような構成によれば、ベース部154のスライド操作を容易に行うことができる。
【0097】
図8Cに示すように、本変形例に係るクランプ43Bは、操作部156に代えて操作部156aを備えていてもよい。操作部156aは、ユーザの手指を挿入可能な孔166が形成された平板部168を有する。孔166は、ベース部154の長手方向の略中央に位置する。ただし、ベース部154の長手方向に対する孔166の位置は、任意に設定可能である。このような孔166を平板部168に設けた場合、フック部164と同様の効果を奏する。
【0098】
本変形例に係るクランプ43Bの第1スリット158の形状は、上述した第1〜第5構成例に係る第1スリット104a〜104eの形状を採用してもよい。
【0099】
(第3変形例)
次に、第3変形例に係るクランプ43Cについて説明する。図9に示すように、クランプ43Cは、第2チューブ36及び第3チューブ38の両方が挿通された1つの挿通孔170が形成されたベース部172を有する。ベース部172は、硬質な樹脂材料によって矩形の板状に形成されている。つまり、ベース部172は、互いに平行に延在する第1長辺174a及び第2長辺174bと、互いに平行に延在する第1短辺176a及び第2短辺176bとを含む。
【0100】
挿通孔170は、ベース部172の中央に位置するとともにベース部172の長手方向に延在している。ベース部172の一端部(第1短辺176a側の端部)には、第2チューブ36の第2流路36aが閉塞されるように第2チューブ36の外周面を内方に押圧するための第1スリット180が設けられている。
【0101】
第1スリット180は、挿通孔170から第1短辺176a側に向かって直線状に延出している。第1スリット180のスリット幅は、第2チューブ36の外径よりも小さい。第1スリット180は、ベース部172の一端部における短手方向の略中央に設けられている。
【0102】
ベース部172の他端部(第2短辺176b側の端部)には、第3チューブ38の第3流路38aが閉塞されるように第3チューブ38の外周面を内方に押圧するための第2スリット182が設けられている。
【0103】
第2スリット182は、挿通孔170から第2短辺176b側に向かって直線状に延出している。つまり、第1スリット180と第2スリット182とは、挿通孔170から互いに反対方向に延出している。第2スリット182のスリット幅は、第3チューブ38の外径よりも小さい。第2スリット182は、ベース部172の他端部における短手方向の略中央に設けられている。
【0104】
挿通孔170を形成する壁部には、第2チューブ36を第1スリット180に案内する第1案内部171aと、第3チューブ38を第2スリット182に案内する第2案内部171bとが設けられている。第1案内部171aは、挿通孔170の一端部(第1短辺176a側の端部)が第1スリット180に向かって幅狭になるように形成されている。第2案内部171bは、挿通孔170の他端部(第2短辺176bの端部)が第2スリット182に向かって幅狭になるように形成されている。
【0105】
本変形例に係るクランプ43Cにおいて、挿通孔170は、第2チューブ36及び第3チューブ38の両方が挿入される1つの孔である。
【0106】
このような構成によれば、クランプ43Cの構成を簡素化することができる。
【0107】
第1スリット180と第2スリット182とは、挿通孔170から互いに反対方向に延出している。
【0108】
このような構成によれば、第2チューブ36及び第3チューブ38を第1スリット180及び第2スリット182のそれぞれに容易に挿入させることができる。
【0109】
本変形例に係るクランプ43Cの第1スリット180の形状は、上述した第1〜第5構成例に係る第1スリット104a〜104eの形状を採用してもよい。
【0110】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9