【実施例1】
【0018】
本発明に関わる光学式内面測定装置の実施形態について説明する。
図1〜
図8は本発明に係る光学式内面測定装置の実施形態を示している。
【0019】
図1は本発明の実施の形態に係る光学式内面測定装置の構成図である。測定機ベース80にスタンド81が固定され、スライダ用モータ83によりスライダ82が光プローブ34と共に上下に移動する。被測定物100は測定ベース80上にセットされており、光プローブ34の先端部又は透光性パイプ21は被測定物100の深穴に出入りするよう構成されている。光線はチューブ6の先端に固定された透光性パイプ21を通して被測定物100の内周面に照射され、この反射光は、透光性パイプ21を通してチューブ6の内部を通過して固定側光ファイバー1を進み、さらに測定機本体85の接続部84を通過して、光干渉解析部88に入り、コンピュータ89で解析してモニタ90に画像もしくは測定数値を表示する。
【0020】
この光学式内面測定装置は、直径測定機能、真円度測定機能、および三次元的に表示して得る円筒度測定機能を有している。
【0021】
図2は本発明の実施形態に係る光学式内面測定装置の光プローブ34の先端部断面図である。光プローブ34の後端側から先端側に光線を導く固定側光ファイバー1は十分に長いチューブ6の内部に挿通され、光ファイバー固定具4により固定されている。
【0022】
固定側光ファイバー1の先端側には回転側光ファイバー2が回転自在に配置されている。回転側光ファイバー2のさらに先端側には略平面状のミラー等からなる第1光路変換手段3a、3bが第1モータ12により回転側光ファイバー2とは独立して回転自在に取り付けられ、回転する事で光線を360度の全周方向に放射するよう構成されている。
【0023】
回転側光ファイバー2と固定側光ファイバー1のそれぞれの端面は5ミクロン程度の微小距離を隔てて対向し,回転する遮光板5,光ファイバー固定具4を含めて回転光コネクター22を構成し,回転側光ファイバー2と固定側光ファイバー1の間は高い透過率が維持でき、ほとんど損失なく光学的に接続されている。
【0024】
また、第1光路変換手段3a、3bと第1モータ12との間に位置において、固定側光ファイバー1と回転光コネクター22を透過してきた光線を集光して回転しながら先端方向に少々の角度を付けて第1光路変換手段3a、3bに向けて光線を放射する第2光路変換手段20が回転側光ファイバー2の先端に取り付けられている。
【0025】
第1モータ12は、モータケース24に第1モータコイル7、第1軸受9b、9a、モータスラスト板8が固定され、第1ロータ磁石11が取り付けられた第1中空回転軸10が回転する。第1モータコイル7には電線17から電圧が印加され、回転する第1中空回転軸10にはミラー等を用いた第1光路変換手段3が取り付けられている。
【0026】
第2モータ19は、第1モータ12より後方に位置すると共に、モータケース24に第2軸受16a、16bと、第2モータコイル15が取り付けられ、第2軸受16a、16bは第2ロータ磁石14を有する第2中空回転軸13を回転自在に支持し、第2電線18から電圧が印加され回転する。第2中空回転軸13の穴13aには回転側光ファイバー2が挿通固定され、その先端にはプリズム等からなる第2光路変換手段20が取り付けられこれらは一体的に回転する。また回転側光ファイバー2の一部は第1モータ12の第1中空回転軸の穴に回転自在に挿入され相対的に回転する。
【0027】
第1モータ12及び第2モータ19は、固定ダボ33a、33bによりモータケース24に隙間を空けて固定される。第1モ−タ12より先端側において、チューブ6または透光性パイプ21には、少なくとも1個以上の吸気穴6aが空けられ、透光性パイプ21またはチューブ6には、パイプ用温度センサ31が設けられている。
図1において、チューブ6には吸気チューブ29と吸気ファン30が取り付けられており、
図2の吸気穴6aから気体を吸い込み、吸い込まれた気体は吸気ファン29から排気されるまでの間、第1モータ12、第2モータ19を冷却し、これらモータからの発熱が透光性パイプ21と被測定物100に伝搬することを防止し、熱膨張による被測定物の測定寸法が防止されている。
【0028】
図2の第1モータ12には
図1に示す第1モータドライバ回路86から電力が供給されて回転駆動され、第2モータ19は第2モータドライバ回路87から電圧が印加されて回転駆動される。
【0029】
光線26,27が放射される第1光路変換手段3の外周近傍には光線が透過可能な透光性パイプ21がチューブ6と一体的に取り付けられている。透光性パイプ21の内周面または外周の表面には必要に応じて表面反射を減らし、光線の透過率を高めるためのコーティング等がなされている。また、第1光路変換手段3は回転可能なミラー又はプリズムで構成されており、反射効率が高く光学的損失を減らして高精度な精度測定が可能である。
【0030】
第2光路変換手段20は先端に傾斜する略平面を有するプリズム等で構成されており、光線の集光性が高く、光学的損失を減らして高精度な精度測定が可能である。
【0031】
次に
図2に示した三次元走査型の光プローブを用いた
図1の光学式内面測定装置について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
【0032】
図1および
図2において測定機本体85内から発光された近赤外またはレーザ等の光線はチューブ6に内蔵された固定側光ファイバー1の中を通過して進む。
【0033】
電線17、18から電力が供給され、第1モータ12と第2モータ19の2個のモータが約900〜2万rpmの範囲の同一回転数で同期回転すると、導かれた光線は回転光コネクター22と回転側光ファイバー2を通過し,
図2に示すように、第2光路変換手段20から放出され、第1光路変換手段3aの略平面部で反射し一定の角度方向(
図2においてはθ1の角度)に方向を変えて360度方向に回転放射され、この時の放射範囲は
図4の様に角度θ1の傘状の範囲になる。
【0034】
光線はさらに透光性パイプ21を通過し、被検査物100の内周面から反射した光線を上記と同じ光路を逆方向に透光性パイプ21⇒第1光路変換手段3⇒第2光路変換手段20⇒回転側光ファイバー2⇒回転光コネクター22⇒固定側光ファイバー1を通過して光干渉解析部88に導かれる。
【0035】
次に、第1モータ12と第2モータ19の回転数が例えば、第1モータ12の回転数が3600rpm一定で、一方第2モータ19の回転数は3570rpm一定で回転させ、これら2個のモータ回転数に若干の差を与える回転状態に切り換える。この状態では、
図3に示すように第1光路変換手段3が回転すると同時に、第2光路変換手段21との相対回転角度位相が徐々に変化していき、やがて光線は回転する第1光路変換手段3で反射し光線は360度に全周方向に放射されつつ、長手方向の放射角度が徐々に変化し
図5の図中θ2に示すように変わる。すなわち、この瞬間の光線の放射範囲は
図5に示すような傾斜した傘状の走査範囲に変わっている。
【0036】
この回転角度位相差は、第1モータ12が1分間に3600回転する間に第2モータ19の回転数との差分である30回転(即ち、3600−3570=30回転/分)ずれるので、即ち1分間あたり30回(即ち30往復)、回転角度位相差が生じ、引き続き第1光路変換手段3と第2光路変換手段20の回転位相差がゆっくりと1分間に30回ずつ生じ続ける、この動作により、光線の放射方向が
図6に示すように、θ1〜θ2の範囲で連続的に変化し、光線の放射範囲79はθ1+θ2の範囲で三次元的に繰り返し照射される。
【0037】
図2において、回転パルス発生器28が第1光路変換手段3または、第1中空回転軸10の1回転当り1回のパルスを発生し、このパルス信号は
図1の第1モータドライバ回路に送られ、第1モータ12の回転速度を調整し、また、コンピュータ89に送られ、三次元ディジタル画像を1フレーム毎に描写するためのトリガー信号に使用される。
【0038】
本発明の光学式内面測定装置において、被測定物100の内径100aの測定を行う手順は次のとおりである。
【0039】
まず、測定を行う前の準備としてキャリブレーション(校正)を行う。
図7に示すように、内径寸法(D1)が既知のリングゲージ78の穴部に光プローブ34の透光性パイプ21を挿入し、透光性パイプ21の外径からリングゲージ78内周面までの半径差(L1−L2)と(L1’−L2’)と、リングゲージ内周面から光プローブ34の仮想中点までの距離L1とL1’を求める。ここで、透光性パイプ21の半径数値(R=D1/2―(L1−L2)、 R’=D1/2―(L1’−L2’)を求め、このR、R’の基準半径数値を透光性パイプ21の基準半径データとして、コンピュータ89に記憶させキャリブレーションを完了する。このキャリブレーションは1ケ月に1回程度定期的に行うものである。
【0040】
キャリブレーション(校正)が終わると次に測定を開始する。別の被検査物の内周面100aに光プローブ34の透光性パイプ21挿入し、第1モータ12及び第2モータ19を回転させ、光線を放射し、被測定物100の内径寸法(D)=R+(L1−L2)+R’+(L1’−L2’)を求めることができる。
【0041】
図8及び
図9は、
図1及び
図2において、吸気穴6aから気体を吸い込み、第1モータ12、第2モータ19を吸気ファン30の運転により冷却している場合と、吸気ファン30を停止し冷却していない場合の差異を示している。
図8の示すように冷却有りでは約20秒で透光性パイプ21が0.5℃上昇するがその後は上昇が止まり一定温度が保たれ、被測定物100への温度伝搬はほぼ無く温度変化による測定精度の狂いは防止できている。一方、冷却無しでは透光性パイプ21の温度は約1分で3℃上昇しその後も徐々に上昇を続け、被測定物100も温度上昇を始めるため、高精度な測定が行い難い。
【0042】
図9は本発明内面測定装置で被測定物100に内径寸法を繰り返し測定した場合の測定ばらつきの大きさを示している。冷却有りの条件で30分の時間内に計100回繰返し測定を行った結果のばらつきは(繰返し再現性:σ)が0.05マイクロメートルに収まり、高精度な測定が行えたが、一方冷却が無い場合は0.15マイクロメートルのばらつきが生じ、高精度な測定は困難であった。
【0043】
このように
図2に示す光プローブ34を用いることにより、
図1の被測定物100の内周面100aから、光ファイバー1および2を経て導き入れた反射光をコンピュータ89で計算することにより、透光性パイプを基準に寸法測定が行え、スライダ82が静止した状態で三次元データの収集が可能になり、また、測定プローブ34内のモータ12,19からの発熱の伝搬が防止でき、従来問題であった、測定用プローブ内モータの軸受振れや振動の影響を排除し、正しく精密な内径及び内周面の精度測定が可能である。
【実施例3】
【0047】
図11及ぶ
図12は本発明に係る光学式面測定装置の第3の実施形態を示している。
図11において通気穴6aが開けられたチューブ6又は薄肉の石英やガラスからなる透光性パイプ21は強度が弱くなっており、測定作業中にうっかり被測定物100に強く当接すると折れて損傷する危険性がある。そこで
図11のようにチューブ6はプローブ固定具37に対し摺動自在にセットされ、例えばボール等による予圧手段39a、39b、39cにより押圧された摺動部材38に固定されることにより、被測定物100に強く当接した場合には、例えばボールと切り欠きの組合せで構成される荷重リミッター40が外れて光プローブ34は図中上方向にスライドし、衝突による損傷が防止されるよう構成されている。尚、拡大鏡(カメラ)35は被測定物100の穴100a付近の状態を常にモニタ90に表示し、測定機の使用者に光プローブ34が衝突させないよう注意を促す働きをしている。
【0048】
この構成によれば、光プローブ34は摺動部材38に固定され、透光性パイプ21又はチューブ6が被測定物100に強く当接した場合には、一定以上の当接荷重により前記摺動部材38が透光性パイプ21と共に上方へ摺動し損傷を防止することができ、正しく精密な内径及び内周面の精度測定を安全に行うことができる。
【0049】
尚、
図2及び
図10において、チューブ6はその直径は約2ミリメートル以下程度でありその内部に貫通する固定側光ファイバー1は、屈曲自在なグラスファイバーであり直径は0.085〜0.125ミリメートル程度の物を採用している。
【0050】
第1光路変換手段3は平滑な反射面を有するミラーかプリズムで構成されており、反射率を高めるため、その表面粗さと平面度は一般の光学部品と同等以上の精度に磨きあげられている。
【0051】
第1中空回転軸10は、金属またはセラミックスからなり、溶融金属のダイによる引き抜き加工か、または焼成前のセラミックスのダイによる押し出し加工で中空が成形され、硬化処理後に研磨加工法等により仕上げ加工される。
【0052】
第1中空回転軸10の穴は直径が0.1〜0.5ミリメートルであり、回転側光ファイバー2の直径より十分大きくしているため、光ファイバー固定具4で固定された固定側光ファイバー1が第1中空回転軸10に接触する危険性はなく、仮に軽く接触しても摩耗粉が発生するほどではない。また、この部分で回転摩擦トルクが変動する問題もない。
【0053】
本発明によれば、測定用プローブ34を被測定物100の穴内に侵入させて、穴内から光線を放射することで、内周面の表面形状や粗さの影響なく安定に測定が行えると共に、光プローブ34内のモータ12,19からの発熱の伝搬を防止する。また、従来問題であった、光プローブ内モータの軸受振れや振動の影響が排除でき、また、光プローブの損傷を防止する荷重リミッターを設けることで、正しく精密な内径及び内周面の精度測定が安全に行える。