(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
図10(a)及び
図10(b)は、通帳伝票プリンタなどの画像取得装置に搭載される読取部91の一例を示す図である。なお、X方向、Y方向、及びZ方向は、それぞれ、3次元の各方向を示している。X方向は、通帳や伝票などの媒体92が搬送路93を移動する方向である。Z方向は、高さ方向である。Y方向は、XZ平面に直交する方向である。
【0003】
図10(a)及び
図10(b)に示す読取部91は、プリント基板94に搭載されるラインセンサ95と、ラインセンサ95の下方に配置される2つの光源96とを備える。
【0004】
ラインセンサ95は、Y方向のラインに複数配置される受光素子(例えば、CCD(Charge Coupled Device)素子)や受光素子の受光面側に配置されるレンズなどを備える。なお、
図10(b)に示す破線は、ラインセンサ95の読取範囲を示す。
【0005】
光源96は、搬送路93側に光を照射する。
読取部91は、2つの光源96からそれぞれ照射され搬送路93を移動する媒体92で反射された光を、ラインセンサ95がX方向に複数ライン読み取ることにより、XY平面に対応する媒体92の画像(イメージ)を出力する。
【0006】
図11は、ラインセンサ95の1ライン分の各受光素子のそれぞれの位置(主走査方向位置)とラインセンサ95の1ライン分の各受光素子のそれぞれの出力(輝度値)との関係を示す光源特性を示す図である。なお、
図11に示すYminは、ラインセンサ95の一方端に配置される受光素子の位置を示し、
図11に示すYmaxは、ラインセンサ95の他方端に配置される受光素子の位置を示し、
図11に示すYmidは、ラインセンサ95の中央に配置される受光素子の位置を示す。
【0007】
図11に示すように、YminやYmax付近の受光素子の出力はYmid付近の受光素子の出力に比べて小さくなる。これは、
図10(b)に示すように、媒体92の端部とラインセンサ95との距離が、媒体92の中央部とラインセンサ95との距離に比べて、長いため、YminやYmax付近の受光素子に入る光が、Ymid付近の受光素子に入る光に比べて、弱くなるからである。
【0008】
そのため、読取部91から出力される画像は、
図12(a)に示すように、端部と中央部との間で濃淡が生じてしまう。すなわち、画像の両端に影ができてしまう。
【0009】
そこで、ラインセンサ95の1ライン分の各受光素子のそれぞれの出力がそれぞれ同じ値になるように、読取部91を構成することが考えられるが、そのように読取部91を構成することは現実的に難しい。
【0010】
そこで、媒体92が画像取得装置に挿入される前において、地色が全体にわたって均一の媒体の画像をマスタ画像として読取部91から事前に出力させておき、読取部91から出力される媒体92の画像の輝度値をマスタ画像の輝度値で除算することにより、媒体92の画像の濃淡を抑える、いわゆる、シェーディング補正を行うことが考えられる。なお、シェーディング補正とは、画像全体の各画素の輝度値が互いに同じような輝度値になるように、画像全体の各画素の輝度値を補正することである。関連する技術として、特許文献1〜3がある。
【0011】
また、近年、取引の種類(入金、出金、振込など)毎にフォーマットが異なる媒体92をユーザが見て区別し易いように、取引の種類毎に媒体92の地色(罫線の色、罫線内の文字の色、及び地紋の色などを含む)を変えることが行われている。
【0012】
そこで、ラインセンサ95の受光素子としてカラーCCDなどのカラー受光素子を採用し、そのカラー受光素子によりRGBに分解された各画像に対してそれぞれシェーディング補正を行うことが考えられる。
【0013】
しかしながら、ラインセンサ95の受光素子としてカラー受光素子を採用する場合は、RGBに分解された各画像に対してそれぞれシェーディング補正を行うため、画像処理で扱われるデータ量が比較的多く、読取部91の画像処理負荷が高くなるという懸念がある。
【0014】
そこで、ラインセンサ95の受光素子としてモノクロームCCDなどのモノクローム受光素子を採用することが考えられる。ラインセンサ95の受光素子としてモノクローム受光素子を採用する場合は、モノクローム受光素子から出力される画像の輝度値はグレースケールのみとなり、ラインセンサ95の受光素子としてカラー受光素子を採用する場合に比べて、画像処理で扱われるデータ量を低減することができるため、読取部91の画像処理負荷を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施形態について説明する。
本実施形態の画像取得装置では、画像取得装置で使用可能な様々な地色の媒体の画像のうち、濃淡の差が最も大きくなるマスタ画像a(第1のマスタ画像)よりも輝度値が大きく、かつ、画像取得装置で使用可能な様々な地色の媒体の画像のうち、濃淡の差が最も小さくなるマスタ画像b(第2のマスタ画像)よりも輝度値が小さい画像を、シェーディング補正用のマスタ画像Yとする。
【0023】
このようなマスタ画像Yを用いてシェーディング補正を行った後の媒体の画像は、ラインセンサの受光素子としてモノクローム受光素子を採用し、かつ、媒体の地色がどのような色であっても、マスタ画像aの輝度値よりも大きく、かつ、マスタ画像bの輝度値よりも小さい輝度値で除算されたものになる。
【0024】
そのため、マスタ画像Yを用いてシェーディング補正を行った後の媒体の画像は、例えば、マスタ画像aに相当する画像に対してマスタ画像bを用いてシェーディング補正を行った後の画像、または、マスタ画像bに相当する画像に対してマスタ画像aを用いてシェーディング補正を行った後の画像に比べて、各画素の輝度値の互いのズレ量を小さくすることができるため、その分、画像に生じる濃淡を抑えることができる。
【0025】
すなわち、本実施形態の画像取得装置によれば、ラインセンサの受光素子としてモノクローム受光素子を採用し、かつ、画像取得装置に挿入される媒体が様々な地色の媒体である場合において、シェーディング補正後の媒体の画像に生じる濃淡を抑えることができる。
【0026】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の画像取得装置の外観の一例を示す図である。なお、X方向、Y方向、及びZ方向は、それぞれ、3次元の各方向を示している。
【0027】
図1に示す画像取得装置1は、例えば、金融機関などで使用される通帳伝票プリンタであり、通帳挿排口2と、伝票挿排口3とを備える。
【0028】
通帳挿排口2は、通帳が挿入されたり、通帳が排出されたりするところである。
伝票挿排口3は、伝票が挿入されたり、伝票が排出されたりするところである。
【0029】
図2は、第1実施形態の画像取得装置1の内部構成の一例を示す図である。なお、
図1及び
図10に示す構成と同じ構成には同じ符号を付している。また、X方向、Y方向、及びZ方向は、それぞれ、3次元の各方向を示している。X方向は、通帳や伝票などの媒体92が搬送路93を移動する方向である。Z方向は、高さ方向である。Y方向は、XZ平面に直交する方向である。
【0030】
図2に示す画像取得装置1は、読取部91と、搬送路93と、搬送ローラ4uと、搬送ローラ4dと、磁気読取部5と、印字部6と、プラテン7と、背景部8と、捲り部9と、記憶部10と、制御部11とを備える。
【0031】
搬送ローラ4uは、搬送路93の上側に複数設けられている。搬送ローラ4dは、搬送路93の下側に複数設けられている。搬送ローラ4u及び搬送ローラ4dが媒体92を挟み込みながら搬送ローラ4u及び搬送ローラ4dがそれぞれ回転することにより、媒体92が搬送路93を移動する。
【0032】
磁気読取部5は、通帳である媒体92に形成されている磁気情報を読み取る。
印字部6は、通帳である媒体92に対して印字を行う。
【0033】
プラテン7は、例えば、樹脂で構成され、媒体92に対する印字時において媒体92の下部を支える。
【0034】
背景部8は、読取部91の下方の搬送路93の下部に配置されており、読取部91により媒体92の画像が読み取られる際、その画像の背景(例えば、黒の背景)をつくる。
【0035】
捲り部9は、通帳である媒体92の次のページを開く。
記憶部10は、例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などにより構成され、マスタ画像a、マスタ画像b、及びマスタ画像Yなどを記憶する。
【0036】
制御部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やメモリなどを含むコンピュータである。CPUがメモリに格納されているプログラムを読み出し実行することによって、後述する
図3に示す動作、
図6に示す動作、及び
図7に示す動作が実行される。
【0037】
図3は、媒体92が画像取得装置1に挿入される前に実行される、制御部11の動作を示すフローチャートである。なお、
図3に示す動作は、例えば、画像取得装置1の製造工場出荷時において、または、金融機関の営業開始前において、実行されるものとする。
【0038】
まず、制御部11は、マスタ画像aを取得する(S11)。例えば、製造者またはユーザは、画像取得装置1で使用可能な様々な地色の媒体92のうち、読取部91から出力される画像に生じる濃淡の差が最も大きくなる媒体92(例えば、地色が青色または赤色の媒体92)を、画像取得装置1の伝票挿排口3に挿入する。すると、読取部91は、濃淡の差が最も大きくなる第1のマスタ画像としてマスタ画像aを出力する。
図4に示す実線は、マスタ画像aの1ライン分の各受光素子(主走査方向の各受光素子)の位置と、マスタ画像aの1ライン分の各受光素子の出力(輝度値)との関係を示す。なお、
図4に示す縦軸(出力)の値は輝度値を示しており、上に行くほど値が高くなり、下に行くほど値が低くなるものとする。マスタ画像aの1ライン分の各受光素子の出力の最大値と最小値との差Daは、画像取得装置1で使用可能な他の媒体92に比べて、最も大きいものとする。すなわち、マスタ画像aの主走査方向の中央部と端部との間に生じる濃淡の差は、画像取得装置1で使用可能な他の媒体92に比べて、最も大きくなるものとする。
【0039】
次に、制御部11は、マスタ画像bを取得する(S12)。例えば、製造者またはユーザは、画像取得装置1で使用可能な様々な地色の媒体92のうち、読取部91から出力される画像に生じる濃淡の差が最も小さくなる媒体92(例えば、地色が白色または黄色の媒体92)を、画像取得装置1の伝票挿排口3に挿入する。すると、読取部91は、濃淡の差が最も小さくなる第2のマスタ画像としてマスタ画像bを出力する。
図4に示す破線は、マスタ画像bの1ライン分の各受光素子(主走査方向の各受光素子)の位置と、マスタ画像bの1ライン分の各受光素子の出力(輝度値)との関係を示す。マスタ画像bの1ライン分の各受光素子の出力の最大値と最小値との差Dbは、画像取得装置1で使用可能な他の媒体92に比べて、最も小さいものとする。すなわち、マスタ画像bの主走査方向の中央部と端部との間に生じる濃淡の差は、画像取得装置1で使用可能な他の媒体92に比べて、最も小さくなるものとする。
【0040】
次に、制御部11は、マスタ画像aの輝度値とマスタ画像bの輝度値との加算値を2で除算した結果を、マスタ画像Yとする(S13)。
図4に示す一点鎖線は、マスタ画像Yの1ライン分の各画素の位置と、マスタ画像Yの1ライン分の各画素の輝度値との関係を示す。マスタ画像Yの1ライン分の各画素の輝度値は、マスタ画像aの1ライン分の各画素の輝度値とマスタ画像bの1ライン分の各画素の輝度値との中間値となる。すなわち、マスタ画像Yの輝度値は、マスタ画像aの輝度値とマスタ画像bの輝度値との中間値となる。
【0041】
次に、制御部11は、マスタ画像Yを記憶部10に記憶させる(S14)。
そして、制御部11は、金融機関の営業開始後において、画像取得装置1に媒体92が挿入され、その媒体92の画像が読取部91から出力されると、ラインセンサ95の1ライン分の各受光素子のそれぞれの主走査方向位置毎に、読取部91から出力される画像の1ライン分の各画素の輝度値をマスタ画像Y(
図4に示す一点鎖線)の1ライン分の各画素の輝度値で除算することを、読取部91から出力される画像の全てのラインに対して行い、その結果をシェーディング補正後の媒体92の画像とする。
【0042】
なお、制御部11は、読取部91から出力される画像の1ライン分の各画素の輝度値(例えば、
図4に示す実線)をマスタ画像Yの1ライン分の各画素の輝度値(例えば、
図4に示す一点鎖線)で除算するとき、主走査方向位置の中央部Ymidにおいて、読取部91から出力される画像の画素の輝度値と、マスタ画像Yの画素の輝度値とが互いに同じ値になるように、読取部91から出力される画像の1ライン分の各画素の輝度値全体、または、マスタ画像Yの1ライン分の各画素の輝度値全体をスライドさせてもよい。
【0043】
このように、主走査方向位置の中央部Ymidにおいて、読取部91から出力される画像の画素の輝度値と、マスタ画像Yの画素の輝度値とが互いに同じ値になるように、読取部91から出力される画像及びマスタ画像Yのどちらか一方の1ライン分の画素の輝度値全体をスライドさせることにより、シェーディング補正後の画像の中央部Ymidの画素の輝度値が端部Ymin、Ymaxに比べて低くなることを防止することができる。これにより、シェーディング補正後の画像の中央部に影ができてしまうことを防ぐことができる。
【0044】
ところで、マスタ画像Y以外のマスタ画像を用いてシェーディング補正を行った後の媒体92の画像は、媒体92の地色によっては、各画素の輝度値の互いのズレ量が比較的大きくなるおそれがある。例えば、マスタ画像aに相当する画像に対してマスタ画像bを用いてシェーディング補正を行った場合、シェーディング補正後の画像の1ライン分の各画素の輝度値は、
図4に示す点線Aのようになる。
【0045】
一方、マスタ画像Yを用いてシェーディング補正を行った後の媒体92の画像は、ラインセンサ95の受光素子としてモノクローム受光素子を採用し、かつ、媒体92の地色がどのような色であっても、マスタ画像aの輝度値とマスタ画像bの輝度値との中間値で除算されたものになる。例えば、マスタ画像aに相当する画像に対してマスタ画像Yを用いてシェーディング補正を行った場合、シェーディング補正後の画像の1ライン分の各画素の輝度値は、
図4に示す点線Bのようになる。
【0046】
そのため、マスタ画像Yを用いてシェーディング補正を行った後の媒体92の画像は、マスタ画像aに相当する画像に対してマスタ画像bを用いてシェーディング補正を行った後の画像、または、マスタ画像bに相当する画像に対してマスタ画像aを用いてシェーディング補正を行った後の画像に比べて、各画素の輝度値の互いのズレ量を半分にすることができるため、その分、画像に生じる濃淡を抑えることができる。例えば、
図4に示す点線Bの中央部Ymidの画素の輝度値と点線Bの端部Yminまたは端部Ymaxの画素の輝度値との差は、
図4に示す点線Aの中央部Ymidの画素の輝度値と点線Aの端部Yminまたは端部Ymaxの画素の輝度値との差の半分になる。
【0047】
従って、第1実施形態の画像取得装置1によれば、ラインセンサ95の受光素子としてモノクローム受光素子を採用し、かつ、画像取得装置1に挿入される媒体92が様々な地色の媒体92である場合において、シェーディング補正後の媒体92の画像に生じる濃淡を抑えることができる。
【0048】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の画像取得装置1の内部構成の一例を示す図である。なお、
図2に示す構成と同じ構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0049】
図5に示す画像取得装置1において、
図2に示す画像取得装置1と異なる点は、外部制御部12から送信される情報を用いて、画像取得装置1に挿入される媒体92の地色に対応したマスタ画像Yを求める点である。なお、画像取得装置1に挿入される媒体92の地色に対応したマスタ画像Yとは、画像取得装置1に挿入される媒体92と同じまたはほぼ同じ光源特性をもつマスタ画像Yとする。また、外部制御部12は、例えば、CPUやメモリなどを含むコンピュータとする。また、外部制御部12は、例えば、金融機関の窓口に設置される営業店端末として構成してもよい。
【0050】
図6は、媒体92が画像取得装置1に挿入される前に実行される、制御部11の動作を示すフローチャートである。なお、
図6に示す動作は、例えば、画像取得装置1及び外部制御部12の製造工場出荷時において、または、金融機関の営業開始前において、実行されるものとする。
【0051】
まず、制御部11は、マスタ画像aを取得し(S21)、そのマスタ画像aを記憶部10に記憶させる(S22)。マスタ画像aの取得方法は、
図3のS11に示すマスタ画像aの取得方法と同様とする。
【0052】
次に、制御部11は、マスタ画像bを取得し(S23)、そのマスタ画像bを記憶部10に記憶させる(S24)。マスタ画像bの取得方法は、
図3のS12に示すマスタ画像bの取得方法と同様とする。
【0053】
図7は、媒体92が画像取得装置1に挿入されたときに実行される、制御部11の動作を示すフローチャートである。
【0054】
まず、制御部11は、伝票である媒体92が画像取得装置1に挿入されると、その媒体92に対応する取引名を取得する(S31)。例えば、まず、制御部11は、各取引名にそれぞれ対応する選択ボタンを外部制御部12に備えられる不図示のタッチパネルに表示させる。次に、画像取得装置1及び外部制御部12を操作するユーザ(テラー)は、画像取得装置1に挿入した媒体92の取引名に対応する選択ボタンをタッチする。次に、媒体92が画像取得装置1に挿入されると、外部制御部12に問い合わせを行う。次に、外部制御部12は、制御部11から問い合わせを受信すると、ユーザによりタッチされた選択ボタンに対応する取引名を制御部11に送信する。そして、制御部11は、媒体92に対応する取得名を外部制御部12から受信することにより、媒体92に対応する取引名を取得する。なお、取引名の種類毎に、対応する媒体92の地色が異なるものとする。
【0055】
次に、制御部11は、記憶部10に予め記憶されている、取引名と重み係数αとが対応付けられた情報Dを参照し、S31で取得した取引名に対応する重み係数αを取得する(S32)。なお、重み係数αは、1よりも小さい値とする。また、重み係数αは、ラインセンサ95の受光素子としてモノクローム受光素子を採用し、かつ、画像取得装置1に挿入される媒体92の地色がどのような色であっても、シェーディング補正後の画像の各画素の輝度値の互いのズレ量がゼロまたは略ゼロになるように、実験やシミュレーションなどにより取引名の種類毎に予め求められているものとする。
【0056】
図8は、記憶部10に記憶される情報Dの一例を示す図である。
図8に示す情報Dは、取引名としての「入金」と、重み係数αとしての「0.5」とが対応付けられ、取引名としての「出金」と、重み係数αとしての「0.3」とが対応付けられ、取引名としての「振込」と、重み係数αとしての「0.7」とが対応付けられている。例えば、制御部11は、S31で取得した取引名が「入金」であった場合、「入金」に対応する重み係数αとして「0.5」を取得する。なお、媒体92の地色が青色または赤色である場合、重み係数αは1になり、媒体92の地色が白色または黄色である場合、重み係数αは0になる。これにより、「入金」に対応する重み係数αは「0.5」であるため、「入金」に対応する媒体92の地色は青色または赤色と白色または黄色の中間色に近い色になる。また、「出金」に対応する重み係数αは比較的0に近い「0.3」であるため、「出金」に対応する媒体92の地色は白色または黄色に近い色になる。また、「振込」に対応する重み係数αは比較的1に近い「0.7」であるため、「振込」に対応する媒体92の地色は青色または赤色に近い色になる。
【0057】
次に、
図7に示すフローチャートにおいて、制御部11は、S32で取得した重み係数αと記憶部10に記憶されているマスタ画像aの1ライン分の各画素の輝度値との乗算値と、1から重み係数αを減算した値と記憶部10に記憶されているマスタ画像bの1ライン分の各画素の輝度値との乗算値と、を加算した結果を、マスタ画像Yとする(S33)。
【0058】
これにより、重み係数αが1に近づくほどマスタ画像Yの1ライン分の各画素の輝度値がマスタ画像aの1ライン分の各画素の輝度値に近づき、重み係数αが0に近づくほどマスタ画像Yの1ライン分の各画素の輝度値がマスタ画像bの1ライン分の各画素の輝度値に近づく。そのため、取引名の種類に応じて重み係数αを変えることにより、マスタ画像Yの1ライン分の各画素の輝度値を取引名の種類に対応する媒体92の地色に応じた適切な輝度値にすることができる。すなわち、マスタ画像Yの光源特性を、画像取得装置1に挿入される媒体92と同じまたはほぼ同じ光源特性とすることができる。
【0059】
例えば、
図9に示す一点鎖線0.5は、「入金」に対応するマスタ画像Yの1ライン分の各画素の位置と、マスタ画像Yの1ライン分の各画素の輝度値との関係を示す。また、
図9に示す一点鎖線0.3は、「出金」に対応するマスタ画像Yの1ライン分の各画素の位置と、マスタ画像Yの1ライン分の各画素の輝度値との関係を示す。また、
図9に示す一点鎖線0.7は、「振込」に対応するマスタ画像Yの1ライン分の各画素の位置と、マスタ画像Yの1ライン分の各画素の輝度値との関係を示す。
図9に示す各マスタ画像Yの輝度値は、それぞれ、マスタ画像aの輝度値よりも大きく、かつ、マスタ画像bの輝度値よりも小さくなる。
【0060】
そして、
図7に示すフローチャートにおいて、制御部11は、ラインセンサ95の1ライン分の各受光素子のそれぞれの主走査方向位置毎に、読取部91から出力される媒体92の画像の1ライン分の各画素の輝度値をマスタ画像Yの1ライン分の各画素の輝度値で除算した結果を、読取部91から出力される画像の全てのラインに対して行い、シェーディング補正後の媒体92の画像とする(S34)。
【0061】
なお、制御部11は、読取部91から出力される画像の1ライン分の各画素の輝度値(例えば、
図9に示す一点鎖線0.7)をマスタ画像Yの1ライン分の各画素の輝度値(例えば、
図9に示す一点鎖線0.7)で除算するとき、主走査方向位置の中央部Ymidにおいて、読取部91から出力される画像の画素の輝度値と、マスタ画像Yの画素の輝度値とが互いに同じ値になるように、読取部91から出力される画像の1ライン分の各画素の輝度値全体、または、マスタ画像Yの1ライン分の各画素の輝度値全体をスライドさせてもよい。
【0062】
このように、主走査方向位置の中央部Ymidにおいて、読取部91から出力される画像の画素の輝度値と、マスタ画像Yの画素の輝度値とが互いに同じ値になるように、読取部91から出力される画像及びマスタ画像Yのどちらか一方の1ライン分の画素の輝度値全体をスライドさせることにより、シェーディング補正後の画像の中央部Ymidの画素の輝度値が端部Ymin、Ymaxに比べて低くなることを防止することができる。これにより、シェーディング補正後の画像の中央部に影ができてしまうことを防ぐことができる。
【0063】
また、第2実施形態の画像取得装置1によれば、マスタ画像Yを用いてシェーディング補正を行った後の媒体92の画像は、ラインセンサ95の受光素子としてモノクローム受光素子を採用し、かつ、媒体92の地色がどのような色であっても、マスタ画像aの輝度値よりも大きく、かつ、マスタ画像bの輝度値よりも小さい輝度値で除算されたものになる。
【0064】
従って、第2実施形態の画像取得装置1によれば、第1実施形態の画像取得装置1と同様に、ラインセンサ95の受光素子としてモノクローム受光素子を採用し、かつ、画像取得装置1に挿入される媒体92が様々な地色の媒体92である場合において、シェーディング補正後の媒体92の画像に生じる濃淡を抑えることができる。
【0065】
また、第2実施形態の画像取得装置1によれば、マスタ画像Yの光源特性を、画像取得装置1に挿入される媒体92と同じ光源特性とすることができるため、シェーディング補正後の画像の1ライン分の各画素の輝度値の互いのズレ量を略ゼロにすることができる。例えば、「入金」に対応する媒体92の画像(
図9に示す一点鎖線0.5に相当する画像)に対して
図9に示す一点鎖線0.5を用いてシェーディング補正を行った場合、シェーディング補正後の画像の1ライン分の各画素の輝度値は、
図9に示す点線Cのように互いにほぼ同じ値になる。また、「出金」に対応する媒体92の画像(
図9に示す一点鎖線0.3に相当する画像)に対して
図9に示す一点鎖線0.3を用いてシェーディング補正を行った場合も、シェーディング補正後の画像の1ライン分の各画素の輝度値は、
図9に示す点線Cのように互いにほぼ同じ値になる。また、「振込」に対応する媒体92の画像(
図9に示す一点鎖線0.7に相当する画像)に対して
図9に示す一点鎖線0.7を用いてシェーディング補正を行った場合も、シェーディング補正後の画像の1ライン分の各画素の輝度値は、
図9に示す点線Cのように互いにほぼ同じ値になる。すなわち、
図9に示す点線Cの中央部Ymidの画素の輝度値と点線Cの端部Yminまたは端部Ymaxの画素の輝度値とをほぼ同じ値にすることができる。
【0066】
従って、第2実施形態の画像取得装置1によれば、ラインセンサ95の受光素子がモノクロームであり、かつ、画像取得装置1に挿入される媒体92の地色がどのような色であっても、画像取得装置1に挿入される媒体92と同じ光源特性をもつマスタ画像Yを用いてシェーディング補正を行うことができるため、シェーディング補正後の画像の各画素の輝度値の互いのズレ量を略ゼロに近づけることができる。そのため、第2実施形態の画像取得装置1によれば、第1実施形態の画像取得装置1に比べて、シェーディング補正後の媒体92の画像に生じる濃淡をより抑えることができる。
【0067】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。