(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
身の周りの日用品や家電、電気・電子分野をはじめとして、自動車や農業、工業、航空・宇宙分野に至るまで、プラスチック材料は広範に使用されている。プラスチック材料、中でも熱可塑性樹脂が広範に使用されている主な理由としては、金属材料やセラミック材料と比較して、成型加工の容易性と軽量性に優れるといった特徴があるためである。
【0003】
プラスチック材料の中でも、特にポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂などに代表されるポリオレフィン樹脂は様々な用途で使用されているが、機械物性や耐熱性が低いため、過酷環境下に曝される部材への使用は難しいのが現状である。
【0004】
過酷環境下で使用される部材としては、機械強度や耐熱性の高い材料として汎用エンジニアリングプラスチックであるポリアミド樹脂やポリカーボネート樹脂などが好適に使用されているが、これらの樹脂はポリオレフィン樹脂と比較して比重が大きいため軽量性に劣り、耐熱性が高いことによって成型加工の容易性も損なわれるといった課題がある。
【0005】
特に電気・電子や機械の分野においては持ち運びの容易性の点から、自動車や航空・宇宙分野においては省エネルギー化に向けた燃費効率向上の点から、優れた軽量性と成型加工性とともに、高い機械強度や耐熱性を有した熱可塑性樹脂が求められている。
【0006】
このような観点から近年、様々な熱可塑性樹脂の開発が進んでいる。例えば、ポリオレフィン樹脂に対してポリアミド樹脂やポリブチレンテレフタレート樹脂をブレンドさせた、熱可塑性樹脂組成物が提案されている(特許文献1、特許文献2)。しかし、特許文献1に記載の樹脂組成物は吸水率が高く、吸水時の強度低下が大きいことに加え、道路凍結防止剤として広く用いられる塩化カルシウムに対しての抵抗性が不十分であるため、使用できる範囲が限られていた。また、特許文献2に記載の樹脂組成物は高強度ではあるものの、比重が大きいため軽量性に劣り、成形加工性も良好であるとは言えなかった。
【0007】
一方、ポリオレフィン樹脂の一つであるポリメチルペンテン樹脂は、ポリオレフィン樹脂の中でも結晶融解温度が高く、耐熱性に優れるとともに、汎用されている熱可塑性樹脂の中で最も軽いという特性を生かし、軽量化が要求されている分野への利用が検討されている。
【0008】
しかしながら、ポリメチルペンテン樹脂は成形加工性が十分であるとは言えず、また、より高い耐熱性が要求される分野への利用には適さないものであった。
【0009】
したがって、ポリメチルペンテン樹脂の特徴である軽量性を維持しながら耐熱性、成形加工性を向上させた熱可塑性樹脂の開発が求められていた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に用いられるポリメチルペンテン樹脂は、4−メチル−1−ペンテンを含むモノマーからなる重合体であり、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体、あるいは4−メチル−1−ペンテンと他のモノマーとの共重合体でもよい。
【0017】
他のモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ヘキセンなどが挙げられ、一種単独または二種以上組み合わせて用いることができる。
【0018】
本発明に用いられるポリメチルペンテン樹脂の結晶融解温度は特に制限されないが、耐熱性に優れる点で、180℃以上であることが好ましく、190℃以上であることがさらに好ましく、200℃以上であることが特に好ましい。
【0019】
本発明において「単独のポリメチルペンテン樹脂」とは、樹脂成分として上記のポリメチルペンテン樹脂のみを含むものをいう。
【0020】
本発明において、ポリメチルペンテン樹脂に配合される液晶ポリマーは、異方性溶融相を形成するものであり、当業者にサーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるものであって、結晶融解温度が300℃以下である液晶ポリマーであれば、特に制限されない。
【0021】
異方性溶融相の性質は直交偏向子を利用した通常の偏向検査法、すなわちホットステージに載せた試料を窒素雰囲気下で観察することにより確認できる。
【0022】
本発明において、300℃以下の結晶融解温度範囲を満たす液晶ポリマーとして、式[I]および式[II]で表される繰返し単位を含む液晶ポリエステルが好適に使用される。さらに、式[I]および式[II]で表される繰返し単位から構成される液晶ポリエステルが特に好適に使用される。
【化1】
【化2】
【0023】
本明細書および特許請求の範囲において、「式[I]および式[II]で表される繰返し単位を含む液晶ポリエステル」とは、液晶ポリマーがその構成成分として式[I]および式[II]で表される繰返し単位の他に、液晶ポリマーの結晶融解温度が300℃以下となる限り、他の繰返し単位を含有していてもよいことを意味する。
【0024】
また、本明細書および特許請求の範囲において、「式[I]および式[II]で表される繰返し単位から構成される液晶ポリエステル」とは、液晶ポリマーがその構成成分として式[I]および式[II]で表される繰返し単位を合計量で90モル%以上含む液晶ポリエステルを意味する。
【0025】
これらの各繰返し単位から構成される液晶ポリエステルは構成成分およびポリマー中の組成比、シークエンス分布によって、異方性溶融相を形成するものと異方性溶融相を形成しないものとが存在するが、本発明に使用される液晶ポリエステルは異方性溶融相を形成するものに限られる。
【0026】
本発明に用いる液晶ポリマーは、式[I]で表される繰返し単位を全繰返し単位中、好ましくは20モル%以上含むものであり、より好ましくは25〜45モル%含むものである。式[I]でされる繰返し単位が全繰返し単位中20モル%未満である場合、液晶ポリマーの結晶融解温度が高くなる傾向があり好ましくない。
【0027】
式[I]で表される繰返し単位を与える単量体としては、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ならびに、そのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性の誘導体が挙げられる。
【0028】
式[II]で表される繰返し単位を与える単量体としては、4−ヒドロキシ安息香酸ならびに、そのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性の誘導体が挙げられる。
【0029】
本発明に用いる液晶ポリマーを構成する、式[I]および式[II]で表される繰返し単位以外の主たる繰返し単位は、(1)芳香族オキシカルボニル繰返し単位、(2)芳香族ジカルボニル繰返し単位および(3)芳香族ジオキシ繰返し単位が挙げられる。
【0030】
(1)芳香族オキシカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、メタヒドロキシ安息香酸、オルトヒドロキシ安息香酸、5−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、3’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、4’−ヒドロキシフェニル−3−安息香酸、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0031】
(2)芳香族ジカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシビフェニル等の芳香族ジカルボン酸、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中では、得られる液晶ポリエステルの機械物性、耐熱性、結晶融解温度、成形性を適度なレベルに調整しやすいことから、テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。
【0032】
(3)芳香族ジオキシ繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(4,4’−ビフェノール)、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニルエ−テル等の芳香族ジオール、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中では、重合時の反応性や得られる液晶ポリエステルの特性などの点から、ハイドロキノンおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニルが好ましい。
【0033】
以上、本発明に用いる液晶ポリマーに含まれる繰返し単位とそれを与える単量体について説明したが、本発明において用いる液晶ポリマーとしては、示差走査熱量計により測定される結晶融解温度が300℃以下のものであればよい。
【0034】
尚、本明細書および特許請求の範囲において、「結晶融解温度」とは、示差走査熱量計(Differential scanning calorimeter、以下DSCと略す)によって、昇温速度20℃/分で測定した際の結晶融解温度ピーク温度から求めたものである。より具体的には、液晶ポリマーの試料を、室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1より50℃高い温度で10分間保持し、次いで、20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却した後に、再度20℃/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を液晶ポリマーの結晶融解温度とする。測定機器としては、例えば、セイコーインスツルメンツ株式会社製Exstar6000等を用いることができる。
【0035】
本発明に用いる液晶ポリマーの結晶融解温度の上限値は300℃以下、好ましくは295℃以下、さらに好ましくは290℃以下である。
【0036】
液晶ポリマーの結晶融解温度が300℃を上回る場合、混練時や成形加工時にポリメチルペンテン樹脂の分解が進行するため、ポリメチルペンテン樹脂が有する機械強度、耐熱性などの優れた特性が損なわれる傾向がある。
【0037】
また、本発明に用いる液晶ポリマーの結晶融解温度の下限値は、180℃以上が好ましい。液晶ポリマーの結晶融解温度が180℃を下回る場合、ポリメチルペンテン連続相中での液晶ポリマー相の分散が不均一になる傾向がある。
【0038】
本発明で好ましく用いられる液晶ポリマーは、式[I]および式[II]で表される繰返し単位を含むことにより、結晶融解温度が300℃以下である液晶ポリマーを得ることができる。
【0039】
本発明に用いる液晶ポリマーは、キャピラリーレオメーターで測定した溶融粘度が1〜1000Pa・sであるものが好ましく、5〜300Pa・sであるものがより好ましい。
【0040】
本発明に用いる液晶ポリマーの製造方法に特に限定はなく、前記の単量体成分によるエステル結合を形成させる公知のポリエステルの重縮合法、たとえば溶融アシドリシス法、スラリー重合法などを用いることができる。
【0041】
溶融アシドリシス法とは、本発明に用いる液晶ポリマーを製造するのに適した方法であり、この方法は、最初に単量体を加熱して反応物質の溶融液を形成し、反応を継続することにより溶融ポリマーを得るものである。なお、縮合の最終段階で副生する揮発物(たとえば酢酸、水など)の除去を容易にするために真空を適用してもよい。
【0042】
スラリー重合法とは、熱交換流体の存在下で反応させる方法であって、固体生成物は熱交換媒質中に懸濁した状態で得られる。
【0043】
溶融アシドリシス法およびスラリー重合法のいずれの場合においても、液晶ポリマーを製造する際に使用する重合性単量体成分は、常温において、ヒドロキシル基をアシル化した変性形態、すなわち低級アシル化物として反応に供することもできる。低級アシル基は炭素原子数2〜5のものが好ましく、炭素原子数2または3のものがより好ましい。特に好ましくは前記単量体成分のアセチル化物を反応に用いる方法が挙げられる。
【0044】
単量体の低級アシル化物は、別途アシル化して予め合成したものを用いてもよいし、液晶ポリマーの製造時にモノマーに無水酢酸等のアシル化剤を加えて反応系内で生成せしめることもできる。
【0045】
溶融アシドリシス法またはスラリー重合法のいずれの場合においても反応時、必要に応じて触媒を用いてもよい。
【0046】
触媒の具体例としては、ジアルキルスズオキシド(たとえばジブチルスズオキシド)、ジアリールスズオキシドなどの有機スズ化合物;二酸化チタン、三酸化アンチモン、アルコキシチタンシリケート、チタンアルコキシドなどの有機チタン化合物;カルボン酸のアルカリおよびアルカリ土類金属塩(たとえば酢酸カリウム);ルイス酸(たとえばBF
3)、ハロゲン化水素(たとえばHCl)などの気体状酸触媒などが挙げられる。
【0047】
触媒の使用割合は、通常モノマーに対し10〜1000ppm、好ましくは20〜200ppmである。
【0048】
このような重縮合反応によって得られた液晶ポリマーは、溶融状態で重合反応槽より抜き出された後に、ペレット状、フレーク状、または粉末状に加工され、ポリメチルペンテン樹脂との混合に供される。
【0049】
本発明のポリメチルペンテン樹脂組成物における、ポリメチルペンテン樹脂と液晶ポリマーの配合比は、ポリメチルペンテン樹脂100重量部に対し、液晶ポリエステル0.1〜100重量部、好ましくは1〜90重量部、より好ましくは2〜70重量部、さらに好ましくは5〜50重量部である。
【0050】
ポリメチルペンテン樹脂100重量部に対する液晶ポリマーの比率が0.1重量部を下回ると、耐熱性および流動性改良効果が十分に得られない。液晶ポリマーの比率が100重量部を上回ると、得られるポリメチルペンテン樹脂組成物の軽量性が損なわれる。
【0051】
本発明のポリメチルペンテン樹脂組成物は、混合する液晶ポリマーの結晶融解温度が300℃以下であるという特徴により、マトリクス樹脂であるポリメチルペンテン樹脂に液晶ポリマーが均一に分散し、本発明の目的である耐熱性および流動性に優れた樹脂組成物となり得るものである。
【0052】
したがって、混合に際して相溶化剤は特に必要ないが、ポリメチルペンテン樹脂と液晶ポリマーの相溶性を向上させる目的で、相溶化剤を添加してもよい。ここで、相溶化剤とは、混合ポリマーを構成する各ポリマーの相の界面に局在し、それらの相間の界面張力を低下させる機能を有するものをいう。
【0053】
相溶化剤としては、本発明の目的が達成される限り特にその種類は限定されないが、従来から知られているもの、例えば特開2014−148616に記載のものを用いることができる。相溶化剤を添加する場合、ポリメチルペンテン樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがより好ましい。
【0054】
本発明のポリメチルペンテン樹脂組成物は、比重が1.00g/cm
3以下であることが好ましく、0.95g/cm
3以下であることがより好ましい。比重が1.00g/cm
3を上回ると、ポリメチルペンテン樹脂の特性である軽量性が損なわれ、軽量部材としての使用に適さなくなる傾向がある。
【0055】
本発明のポリメチルペンテン樹脂組成物には、必要により、無機充填材および/または有機充填材を配合してもよい。
【0056】
本発明のポリメチルペンテン樹脂組成物に配合してもよい、無機充填材および/または有機充填材としては、たとえばガラス繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、ホウ酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ドロマイト、クレイ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスバルーン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、および酸化チタンからなる群から選択される1種以上が挙げられる。これらの中では、ガラス繊維が物性とコストのバランスが優れている点で好ましい。
【0057】
無機充填材および/または有機充填材を用いる場合、該充填材の配合量は、ポリメチルペンテン樹脂および液晶ポリマーの合計量100重量部に対して、0.1〜200重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜100重量部、さらに好ましくは5〜50重量部である。
【0058】
本発明のポリメチルペンテン樹脂組成物には、ポリメチルペンテン樹脂および液晶ポリマー以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに他の樹脂成分や添加剤を配合してもよい。他の樹脂成分としては、たとえばポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、およびその変性物、ならびにポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどの熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。添加剤としては、着色剤、難燃剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0059】
他の樹脂成分および添加剤はそれぞれ、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0060】
他の樹脂成分を配合する場合、該樹脂成分の配合量は、ポリメチルペンテン樹脂および液晶ポリマーの合計量100重量部に対して0.1〜100重量部であることが好ましく、0.1〜80重量部であることがより好ましい。
【0061】
添加剤を配合する場合、該添加剤の配合量は、ポリメチルペンテン樹脂および液晶ポリマーの合計量100重量部に対して0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがより好ましい。
【0062】
本発明のポリメチルペンテン樹脂組成物は、上記のポリメチルペンテン樹脂および液晶ポリマーを、必要により上記の相溶化剤、無機充填材および/または有機充填材、他の樹脂成分、添加剤と共に、混練機で溶融混練することにより製造することができる。溶融混練は従来のブレンド条件にて良好に行うことができる。相溶化剤、無機充填材および/または有機充填材、他の樹脂成分および添加剤は、予めポリメチルペンテン樹脂または液晶ポリマーのいずれかに配合してもよく、また、ポリメチルペンテン樹脂組成物を成形加工する際に配合してもよい。
【0063】
混練機としては、バンバリーミキサー、ニーダー、一軸もしくは二軸押出し機などが使用される。例えば、二軸押出し機を用いた場合などは、ベントポートを真空にしながら混練を行うのがよいが、これに限らず、不活性ガス雰囲気下で混練を行ってもよい。
【0064】
本発明のポリメチルペンテン樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、プレス成形、一軸延伸、二軸延伸、インフレーションなどの公知の成形方法によって、容器やシート、フィルム、パイプ、チューブ、ボトル、繊維などに加工される。本発明のポリメチルペンテン樹脂組成物は流動性に優れるため、特に射出成形によって好適に成形される。
【0065】
これらの方法により、本発明のポリメチルペンテン樹脂組成物を成形して成る容器やシート、フィルム、パイプ、チューブ、ボトル、繊維などの成形品は、優れた耐熱性、軽量性を発揮するものである。
【0066】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0067】
実施例における特性値は以下の方法によって測定した。
〈結晶融解温度〉
示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製Exstar6000)を用いて、試料を室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)を測定した後、Tm1より50℃高い温度で10分間保持する。次いで、20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却し、さらに再度20℃/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を結晶融解温度(Tm)とした。
【0068】
〈流動長(流動性)〉
射出成形機(日精樹脂工業株式会社製 UH1000−110)にて、厚み0.5mm、幅12.7mmのバーフロー流動長測定金型を用いて、シリンダー温度300℃、射出圧力75MPaにて成形したときの流動長で評価した。
【0069】
〈溶融粘度〉
溶融粘度測定装置(東洋精機(株)製キャピログラフ1D)により、0.7mmφ×10mmのキャピラリーレオメーターを用いて、300℃にて溶融粘度を測定した。
【0070】
〈荷重たわみ温度〉
射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH1000−110)を用いて、結晶融解温度+20〜40℃のシリンダー温度、金型温度70℃にて、短冊状試験片(長さ127mm×幅12.7mm×厚さ3.2mm)を射出成形し、これを用いてASTM D648に準拠し、荷重0.46MPa、昇温速度2℃/分で所定たわみ量(0.254mm)になる温度を測定した。
【0071】
〈比重〉
射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH1000−110)を用いて、結晶融解温度+20〜40℃のシリンダー温度、金型温度70℃にて、円板状試験片(直径50mm×厚さ3mm)を射出成形し、これを用いてASTM D792に準拠して測定した。
【0072】
〈引張強度および引張弾性率〉
射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH1000−110)を用いて、結晶融解温度+20〜40℃のシリンダー温度、金型温度70℃にて、ダンベル状引張試験片(長さ115mm×幅6mm×厚さ3.2mm)を射出成形した。INSTRON5567(インストロンジャパン カンパニイリミテッド社製万能試験機)を用いて、ASTM D638に準拠し、チャック間距離64.0mm、引張速度5mm/minで測定した。
【0073】
〈曲げ強度および曲げ弾性率〉
引張強度および引張弾性率測定に用いた成形片と同条件にし、短冊状曲げ試験片(長さ127mm×幅12.7mm×厚さ3.2mm)を射出成形した。曲げ試験は、3点曲げ試験をINSTRON5567(インストロンジャパン カンパニイリミテッド社製万能試験機)を用いて、ASTM D790に準拠し、スパン間距離50.0mm、圧縮速度1.3mm/minで行った。
【0074】
実施例において、下記の略号は以下の化合物を表す。
PMP:ポリメチルペンテン
LCP:液晶ポリエステル
POB:4−ヒドロキシ安息香酸
BON6:6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸
HQ:ハイドロキノン
BP:4,4’−ビフェノール
TPA:テレフタル酸
【0075】
(ポリメチルペンテン樹脂)
実施例において、ポリメチルペンテン樹脂として以下のものを使用した。
PMP:三井化学社製TPX(MX004)
【0076】
以下、LCPの合成例を記す
[合成例1(LCP1)]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた2Lの反応容器に、POB、BON6を表1に示す組成比で、総量6.5molとなるように仕込み、全モノマーの水酸基量(モル)に対して1.03倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
【0077】
【表1】
【0078】
重合は、窒素ガス雰囲気下に室温から150℃まで1時間で昇温し、同温度にて30分間保持した。次いで、副生する酢酸を留去しながら210℃まで速やかに昇温し、同温度にて30分間保持した。その後、325℃まで5時間かけて昇温した後、90分かけて20mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器内容物を取り出し、粉砕機により液晶ポリエステルのペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。得られたペレットのDSCにより測定された結晶融解温度は278℃であった。
【0079】
[合成例2(LCP2)]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた2Lの反応容器に、POB、BON6、HQ、BPおよびTPAを表2に示す組成比にて、総量6.5molとなるように仕込み、さらに全モノマーの水酸基量(モル)に対して1.03倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
【0080】
【表2】
【0081】
窒素ガス雰囲気下に室温から150℃まで1時間で昇温し、同温度にて30分間保持した。次いで、副生する酢酸を留去しながら350℃まで7時間かけ昇温した後、80分かけて5mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器内容物を取り出し、粉砕機により液晶ポリエステル樹脂のペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。得られたペレットの結晶融解温度(Tm)は341℃であった。
【0082】
[実施例1]
ポリメチルペンテンおよびLCP1を、表3に記載の重量比となるようにブレンドし、二軸押出機TEX−30(日本製鋼所株式会社製)を用いて、300℃にて溶融混練を行い、LCPが均一に分散されたポリメチルペンテン樹脂組成物のペレットを得た。その後、流動性、溶融粘度、荷重たわみ温度、比重、引張強度、引張弾性率、曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。
【0083】
[参考例1〜2]
ポリメチルペンテン樹脂、LCP1をそれぞれ単独で、実施例1と同様に流動性、溶融粘度、荷重たわみ温度、比重、引張強度、引張弾性率、曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。結果を表3に示す。
【0084】
[実施例2〜3、および比較例1]
ポリメチルペンテン樹脂、LCP1を表3に示すような比率に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリメチルペンテン樹脂組成物のペレットを作製し、流動性、溶融粘度、荷重たわみ温度、比重、引張強度、引張弾性率、曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。結果を表3に示す。
【0085】
[比較例2]
ポリメチルペンテンおよびLCP2を、表3に記載の重量比となるようにブレンドし、二軸押出機TEX−30(日本製鋼所株式会社製)を用いて、355℃にて溶融混練を試みたが、混練開始直後からPMPの分解に伴うガスが大量に発生したため、溶融混練を中止した。
【0086】
【表3】
【0087】
表3から明らかなように、実施例1〜3の本発明によるポリメチルペンテン樹脂組成物は、単独のポリメチルペンテン樹脂と比較して、耐熱性および流動性が改良されるものであり、さらに、比重が1.00g/cm
3以下と低く、軽量性に優れるものであった。
【0088】
これに対し、LCPを過剰量含有する比較例1のポリメチルペンテン樹脂組成物は、比重が高く、軽量性に劣るものであった。
【0089】
また、結晶融解温度が300℃を超えるLCP2をブレンドした比較例2では、溶融混練が著しく困難であり、ポリメチルペンテン樹脂組成物を得ることができなかった。
本発明の好ましい態様は以下を包含する。
〔1〕ポリメチルペンテン樹脂100重量部に対して、結晶融解温度が300℃以下である液晶ポリマー0.1〜100重量部を含有するポリメチルペンテン樹脂組成物。
〔2〕液晶ポリマーが、式[I]および式[II]で表される繰返し単位を含む液晶ポリエステルである、〔1〕に記載のポリメチルペンテン樹脂組成物。
【化1】
【化2】
〔3〕液晶ポリマーが、式[I]で表される繰返し単位を全繰返し単位中20モル%以上含む液晶ポリエステルである、〔1〕または〔2〕に記載のポリメチルペンテン樹脂組成物。
【化3】
〔4〕液晶ポリマーが、式[I]および式[II]で表される繰返し単位から構成される液晶ポリエステルである、〔1〕〜〔3〕の何れかに記載のポリメチルペンテン樹脂組成物。
【化4】
【化5】
〔5〕比重が1.00g/cm3以下である、〔1〕〜〔4〕の何れかに記載のポリメチルペンテン樹脂組成物。
〔6〕〔1〕〜〔5〕の何れかに記載のポリメチルペンテン樹脂組成物から構成される成形品。