(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1、3又は5記載の多層歯科切削加工用レジン材料において最上面層(U)と最下面層(L)との体積比が1:3〜1:1であることを特徴とする多層歯科切削加工用レジン材料。
請求項2、4又は6記載の多層歯科切削加工用レジン材料において最上面層(U)と中間層(M)との体積比、中間層(M)と最下面層(L)との体積比、及び、最上面層(U)と最下面層(L)との体積比の少なくとも一つが、1:3〜1:1であることを特徴とする多層歯科切削加工用レジン材料。
未硬化のペースト状物を層状に重ねて順次重合硬化させることにより製造する請求項1〜8記載の多層歯科切削加工用レジン材料の製造方法であって、それぞれの層の線重合収縮率の差が1.0%以下及び/又はそれぞれの層の重合発熱量の差が50J/g以下であることを特徴とする多層歯科切削加工用レジン材料の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前述した先行技術は、いずれも歯科用CAD/CAM技術に用いるブロックの材料の色調及び層構造に関するものである。これら先行技術では、色調設計に関する技術が不十分であるため天然歯牙の色調を適切に再現できないことや、色調を再現するためには複雑な層構造や6層を超える層構造のブロックを製造することが必要となる為、技術的に複雑となるという課題を有している。特に、重合性モノマーとフィラーを混合したコンポジットレジンを原料としてブロック材料を製造する場合は、層構造が複雑であったり連続的であるブロック材料を製造することは技術的に非常に困難であり、製造コストも高くなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明者らは、コンポジットレジンを原材料としたCAD/CAM用ブロック材料に、天然歯牙に類似した高い審美的特徴を付与できる層構造を鋭意研究し、本発明の技術を見出した。すなわち、透明性及び色調の異なる複数層よりなるブロック形状の材料において、2つあるいは3つの層の異なる透明性(コントラスト比)をある一定の関係性を満たすように規定すること、かつ各層の色調設計を比較的近似した色調にすることである。このような設計のブロックより切削加工された歯冠補綴装置は、天然歯牙同様の象牙色、エナメル色を呈しつつ各層間の境目が目立たないものとなる。
【0018】
本発明では、材料の透明性をコントラスト比で表す。コントラスト比は、厚さ1mmの材料を白バック上と黒バック上で測色し、それぞれのY値より求める。具体的には、白バック上で測色したY値をYW、黒バック上で測色したY値をYBとしたとき、(コントラスト比)=YB/YWで求められる。
また本発明では、材料の色調をL*a*b*表色系により表記する。厚さ1mmに加工した材料を白バック上で測色したときのL*値、a*値、b*値で示すこととする。
【0019】
本発明の多層歯科切削加工用レジン材料は、(1)無機フィラーを40重量%以上含有し、透明性及び色調が異なる複数の層からなる多層歯科切削加工用レジン材料であって、
最上面層(U)及び最下面層(L)の厚みがそれぞれ1mm以上であり、
最上面層(U)及び最下面層(L)における透明性の指標であるコントラスト比(最上面層:C
U、最下面層:C
L)が
0.30≦C
U≦0.60、
0.55≦C
L≦0.90、且つ、
C
U<C
L
の関係にあり、且つ、
最上面層(U)及び前記最下面層(L)における色調の指標であるL*a*b*表色系による色度(最上面層:L
U・a
U・b
U、最下面層:L
L・a
L・b
L)が
60≦L
U・L
L≦80、
−3≦a
U・a
L≦2、且つ、
0≦b
U・b
L≦30
の関係にあることを特徴とする多層歯科切削加工用レジン材料である。
本明細書において、例えば60≦L
U・L
L≦80とは、60≦L
U≦80、かつ、60≦L
L≦80を示すものである。同様に、例えば−3≦a
U・a
L≦2とは、−3≦a
U≦2、かつ、−3≦a
L≦2を示すものである。
【0020】
(2)上記(1)記載の多層歯科切削加工用レジン材料において、最上面層(U)と最下面層(L)の間に位置する中間層(M)の厚みが0.5mm以上であり、
中間層(M)における透明性の指標であるコントラスト比(C
M)が
0.45≦C
M≦0.65、且つ、
C
U<C
M<C
Lの関係にあり、且つ、
中間層(M)における色調の指標であるL*a*b*表色系による色度(中間層:L
M・a
M・b
M)が
60≦L
M≦80、
−3≦a
M≦2、且つ、
0≦b
M≦30
の関係にあることが好ましい。
本明細書においては、中間層が2以上ある場合には、少なくとも1つの中間層が、上記厚み、コントラスト比及び色度の規定を満たしていればよく、全ての中間層が満たしていることがより好ましい。
【0021】
(3)上記(1)又は(2)記載の多層歯科切削加工用レジン材料において最上面層(U)と最下面層(L)とのコントラスト比の差(|C
U−C
L|)が0.03〜0.15であることが好ましい。
【0022】
(4)上記(2)記載の多層歯科切削加工用レジン材料において最上面層(U)と中間層(M)とのコントラスト比の差(|C
U−C
M|)が0.03〜0.15で、且つ中間層(M)と最下面層(L)とのコントラスト比の差(|C
M−C
L|)が0.03〜0.15であることが好ましい。
本明細書においては、中間層が2以上ある場合には、少なくとも1つの中間層が、上記コントラスト比の差の規定を満たしていればよく、全ての中間層が満たしていることがより好ましい。
【0023】
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の多層歯科切削加工用レジン材料において最上面層(U)と最下面層と(L)の色差ΔE
ULが0.1〜15.0であることが好ましい。
【0024】
(6)上記(2)又は(4)記載の多層歯科切削加工用レジン材料において最上面層(U)と中間層(M)との色差ΔE
UM及び中間層(M)と最下面層(L)のと色差ΔE
MLが0.1〜15.0であることが好ましい。
本明細書においては、中間層が2以上ある場合には、少なくとも1つの中間層が、上記色差の規定を満たしていればよく、全ての中間層が満たしていることがより好ましい。
【0025】
(7)上記(1)、(3)又は(5)の多層歯科切削加工用レジン材料において最上面層(U)と最下面層(L)との体積比が1:3〜1:1であることが好ましい。
【0026】
(8)上記(2)、(4)又は(6)記載の多層歯科切削加工用レジン材料において最上面層(U)と中間層(M)との体積比、中間層(M)と最下面層(L)との体積比、及び、最上面層(U)と最下面層(L)との体積比の少なくとも一つが、1:3〜1:1であることが好ましい。
本明細書においては、中間層が2以上ある場合には、少なくとも1つの中間層が、上記体積比の規定を満たしていればよく、全ての中間層が満たしていることがより好ましい。
【0027】
本発明の多層歯科切削加工用レジン材料の製造方法は、(9)未硬化のペースト状物を層状に重ねて順次重合硬化させることにより製造する(1)〜(8)記載の多層歯科切削加工用レジン材料において、それぞれの層の線重合収縮率の差が1.0%以下及び/又はそれぞれの層の重合発熱量の差が50J/g以下であることを特徴とする多層歯科切削加工用レジン材料の製造方法である。
【発明の効果】
【0028】
本発明における歯科切削加工用レジン材料によれば、2層ないし3層といった比較的少ない層構成においても、また各層間の境界面が平面状などの比較的単純な形状においても、高度な審美性をもつ歯冠補綴装置の作製が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の歯科切削加工用レジン材料は、無機フィラーを40重量%以上含むものである。本発明の歯科切削加工用レジン材料は、例えば、重合性単量体、無機フィラー、重合触媒、着色材を主成分として混合したペースト状物を所望の形状の金型中で重合硬化させることで得ることができる。以下に、本発明の歯科切削加工用レジン材料に用いることができるそれら成分について記述する。構成成分の1つである重合性単量体には、一般的に歯科用材料に用いられている公知の重合性単量体が、特に制限なく使用できる。重合性単量体として、一般的にラジカル重合性の単量体が挙げられる。単官能の重合性単量体として、例えば、メチル(メタ)アクリレ−ト、エチル(メタ)アクリレ−ト、ノルマルブチル(メタ)アクリレ−ト、イソブチル(メタ)アクリレ−ト、tert−ブチル(メタ)アクリレ−ト、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレ−ト、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールアセトアセテート(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、β−(メタ)アクリロキシエチルハイドロゲンフタレート、β−(メタ)アクリロキシエチルハイドロゲンサクシネート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレン(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)−N−フェニルグリシン、N−(メタ)アクリロイルグリシン、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物等の(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、(メタ)アクリルアルデヒドエチルアセタール等のビニルエーテル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロロスチレン等のアルケニルベンゼン;アクリロニトリル、(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;(メタ)アクリルアルデヒド、3−シアノ(メタ)アクリルアルデヒド等の(メタ)アクリル酸アルデヒド;(メタ)アクリルアミド、N−スクシン(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド;(メタ)アクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸基を含有する重合性単量体もしくはそれらの金属塩;アシッドホスホエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル燐酸等の燐酸エステル基を含有する重合性単量体もしくはそれらの金属塩;アリルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、tert−ブチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸等のスルホン酸基を含有する重合性単量体もしくはそれらの金属塩が挙げられる。
【0030】
また、二官能の重合性単量体としては、例えば、エチレンジオ−ルジ(メタ)アクリレート、プロピレンジオ−ルジ(メタ)アクリレート、プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エイコサンジオールジ(メタ)アクリレート等のジオ−ルジ(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のグリコールジ(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基を有するビニル単量体とヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフオロンジイソシアネート、メチルビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加物から誘導されるウレタン系重合性単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基を有するビニル単量体とジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族環含有ジイソシアネート化合物との付加物から誘導される芳香族環とウレタン結合を有する(メタ)アクリレート系重合性単量体;2,2−ビス((メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロキシジプロポキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシイソプロポキシフェニル)プロパン等の芳香族環とエーテル結合を有する(メタ)アクリレート系重合性単量体、ビスフェノ−ルAもしくは水添ビスフェノ−ルAとグリシジル(メタ)アクリレ−トの1:2反応物、例えば、ビスフェノ−ルAジグリシジルエ−テル(メタ)アクリル酸付加物等のビスフェノ−ルAもしくは水添ビスフェノ−ルAとエポキシ基を持つ(メタ)アクリレ−トの1:2付加物等が挙げられる。
【0031】
また、重合性官能基を3個以上有する多官能の重合性単量体の例としては、
トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ホスファゼン骨格を持つトリ(メタ)アクリレ−ト、イソシアヌル酸骨格を持つトリ(メタ)アクリレ−ト、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレートおよびテトラ(メタ)アクリレート、またジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフオロンジイソシアネート、メチルビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物とグリシドールジ(メタ)アクリレートのような水酸基を有するビニルモノマーから誘導されるウレタン系重合性単量体、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレートのようなエチレン性不飽和基を5個以上有する重合性単量体、ポリエチレン性不飽和カルバモイルイソシアヌレートを含む重合性多官能アクリレート;フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテルトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー及びペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどのウレタン結合を有する重合性多官能アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0032】
本発明では、前述した重合性単量体を単独、もしくは2種以上を混合して配合することができる。2種以上の重合性単量体を混合することで、重合性単量体の屈折率や物性を調整することができる。重合性単量体の配合量は、本発明の歯科切削加工用レジン材料において5重量%以上60重量%未満であることが好ましい。さらに好ましくは10重量%以上50重量%未満である。重合性単量体の配合量が少なすぎると、無機フィラーとの混合によるペースト状物の作製が困難となる。重合性単量体の配合量の上限は、無機フィラーの配合量により決定される。
【0033】
本発明の構成成分の1つである無機フィラーには、歯科用材料に用いられている公知の無機フィラーが特に制限なく使用できる。材質としては、カオリン、タルク、石英、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミノシリケート、窒化珪素、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、種々のガラス類(フッ素ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、バリウムガラス、ストロンチウムやジルコニウムを含むガラス、ガラスセラミックス、フルオロアルミノシリケートガラス、ゾルゲル法による合成ガラスなど)、ジルコニア、ジルコニウムシリケート、ヒドロキシアパタイトなどが挙げられる。無機フィラーの形状、粒度分布及び平均粒径等に特に制限はない。しかしながら、一般的な無機フィラーを配合した歯科用レジン材料(コンポジットレジンなど)と同様に、材料強度を上げつつ、材料の表面滑沢性を両立させる必要がある。このため、平均粒径は50μm以下、好ましくは10μm 以下、更に好ましくは1μm以下であることが望ましい。
【0034】
本発明に用いる無機フィラーには、表面処理が施されていることが好ましい。表面処理材の例としては、シラン化合物、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0035】
本発明の構成成分である無機フィラーは、多層歯科切削加工用レジン材料中に40重量%以上含まれることを必須要件としている。本発明による多層歯科切削加工用レジン材料を切削加工して得た補綴装置は、基本的に、口腔内にて長期的(2年以上)に機能することを目的とする。このため、口腔内特有の高温高湿度下での耐久性が要求され、これを達成するために一定量以上の無機フィラーにて強化する必要がある。無機フィラーの配合率が40重量%未満の場合は、本発明の多層歯科切削加工用レジン材料による補綴装置等を口腔内にて長期的に安定して機能させることが難しい。本発明の材料は、無機フィラーを好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上配合させることが望ましい。
【0036】
本発明の構成成分である重合触媒には、歯科用材料に用いられている公知の重合触媒が制限なく使用される。例えば光重合触媒として、ベンゾフェノン、ジアセチル、ベンジル、4,4’−ジメトキシベンジル、4,4’−オキシベンジル、4,4’−ジクロロベンジル、カンファーキノン、カンファーキノンカルボン酸、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、9,10−フェナンスレンキノン、アセナフテンキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチル、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸フェニルエステルなどが挙げられる。
【0037】
また、例えば熱(化学)重合触媒として、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ケトンパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類などが有効である。具体的には、ジアシルパーオキサイド類としてはベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0038】
また、前述した重合触媒と組み合わせて、公知の重合促進剤が制限なく使用されてもよい。例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸、N,N−ジエチルアミノ安息香酸、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、N,N−ジエチルアミノ安息香酸エチル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸メチル、N,N−ジエチルアミノ安息香酸メチル、N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、p−ジメチルアミノフェネチルアルコ−ル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、N−エチルエタノ−ルアミン等が挙げられる。
【0039】
上述した重合触媒の配合量は、重合性単量体100重量部に対して、0.01〜5重量部、より好ましくは0.05〜3重量部、さらに好ましくは0.1〜2重量部である。重合触媒の配合量が少なすぎる場合、重合性単量体の重合が不十分となる。一方、重合触媒の配合量が多すぎる場合は、重合時の停止反応が促進され結果として材料の強度低下を招く。
【0040】
また本発明の歯科切削加工用レジン材料において、重合性単量体に連鎖移動剤を配合しておくことで均一に重合硬化させることができる。連鎖移動剤は、公知の化合物が制限無く使用することができる。具体的に例示すると、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタンなどのメルカプタン化合物、リモネン、ミルセン、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、β−ピネン、α−ピネンなどのテルペノイド系化合物、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。これらの連鎖移動剤の中でもテルペノイド系化合物が特に好ましい。具体的にはα−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネンが特に好ましい。連鎖移動剤の配合量は、重合性単量体100重量部に対して、0.001〜1重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.1重量部以上0.5重量部以下である。
【0041】
本発明の歯科切削加工用レジン材料において、構成成分である着色材は、歯科用材料に用いられている公知の着色材が制限なく使用される。着色材には、無機化合物系着色材及び有機化合物系着色材のいずれも使用可能である。特に白色着色材は、本発明の各層の透明性を調節するのに有用である。
【0042】
本発明の歯科切削加工用レジン材料には、必要に応じて公知の有機フィラーを配合することができる。有機フィラーとしては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。また、有機質複合フィラーとして、無機フィラーの表面を重合性単量体で重合被覆した後に適当な粒子径に粉砕したもの、あるいは、予め重合性単量体に無機フィラーを混合配合させておいた後に重合・粉砕して得られる粒子等が挙げられる。
【0043】
本発明の歯科切削加工用レジン材料には、必要に応じて公知の各種添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては重合禁止剤、変色防止剤、蛍光剤、紫外線吸収剤、抗菌剤などが挙げられる。
【0044】
本発明の歯科切削加工用レジン材料は、歯科用CAD/CAMシステムに用いられるブロック状の材料とすることができるものである。一般的なブロック状の材料は、その一辺の寸法が10〜20mm程度であり、これは天然歯牙の歯冠長5〜15mmに対応させることを想定している。本発明において、最上面層〜最下面層にかけての一辺は、通常10〜20mmに設定される歯冠長方向に適応することを想定している。
【0045】
本発明の歯科切削加工用レジン材料における最上面層(U)〜最下面層(L)の一辺が歯冠長方向に適応するという前提より、最上面層(U)〜最下面層(L)にかけての層構造は、歯冠先端部より歯冠根元部にかけての層構造と想定することができる。一方、天然歯牙は構造上、先端部はエナメル質のみで構成されるためエナメル色を呈し、根元方向に向かうに従ってエナメル質が薄くなるため象牙色が強くなってくる。これより、本発明の歯科切削加工用レジン材料における最上面層(U)をエナメル色に、最下面層(L)を象牙色に設計するのであるが、ここで本発明のようなブロック体に付与される層構造と、エナメル質と象牙質を含む天然歯牙の層構造が一致していないことが課題となる。
【0046】
先に述べた先行技術の中では、ブロック体の層構造に曲面を付与し、天然歯牙の層構造に少しでも類似させようとしたり、層の数を増やして各層で細かく色調を変化させる努力がなされていた。しかし、層構造に曲面を付与することや層の数を増やすことは、製造上の技術面やコスト面の負担が大きくなり実用的ではない。本発明では、ブロック体の層構造が比較的単純な平面層である場合や、層の数が2〜3層と少ない場合であっても、各層の色調の移行がスムーズに見えることを目的としている。具体的には各層の透明性と色調を詳細に規定して設計することにより、ブロック体全体として色調変化がスムーズに視覚できる技術である。本発明の最上面層(U)のコントラスト比と色調をエナメル色に適するように、最下面層(L)のコントラスト比と色調を象牙色に適するように、更に最上面層(U)と最下面層(L)の色調を類似したものとして設計し、最上面層(U)を歯冠先端側に、最下面層を歯冠根元側として設計・切削加工することで、比較的単純な層構造でありながら天然歯類似の色調をもつ補綴装置が得られる。
【0047】
実臨床では、歯科切削加工用レジン材料より、様々な形態・大きさの歯冠補綴装置が作製される。従って、歯冠補綴装置の作製のために供給するブロック状材料の層構成や各層の厚さを画一的に設定することは難しい。しかし、加工後の補綴装置において、ある一部分の色調を明確に視覚可能な層厚さとして1mm以上が必要と考える。この考えより、本発明の歯科切削加工用レジン材料における最上面層(U)及び最下面層(L)の厚さを1mm以上と設定する。成人の天然歯牙に適用させることを考えると、最上面層(U)、最下面層(L)の厚さは2mm以上に設定することが好ましいと考える。
【0048】
最上面層(U)と最下面層(L)の間に中間層(M)を設定する場合、中間層(M)は、最上面層(U)と最下面層(L)との間のコントラスト比・色調の変化を更に移行的にする役割を担う。このため、中間層(M)のコントラスト比と色調は独立して設定される必要はなく、層厚さは最低で0.5mmあれば中間層(M)としての役割を達成する。
【0049】
先に述べたように、ブロック状材料の層構成や各層の厚さを画一的に設定することは難しいが、天然歯牙の構造に倣って、エナメル色を想定する最上面層(U)と象牙色を想定する最下面層(L)との体積比を1:3〜1:1に設定することが好ましい。最上面層(U)と最下面層(L)の体積比が1:3〜1:1からはずれた場合、加工後の補綴装置のエナメル色が極端に少なくなったり、逆に、象牙色が極端に少なくなったりし、各層を明確に視覚できる効果が得られない場合が生じうる。これにより、補綴装置の色調が単調となり、天然歯牙と比較して不自然な色調になってしまう場合が生じうる。また、最上面層(U)と最下面層(L)の間に中間層(M)を設定する場合は、最上面層(U)と中間層(M)との体積比が1:3〜1:1、中間層(M)と最下面層(L)の体積比が1:3〜1:1に設定されることが好ましい。最上面層(U)と中間層(M)との体積比が1:3〜1:1からはずれた場合、または、中間層(M)と最下面層(L)との体積比が1:3〜1:1からはずれた場合、加工後の補綴装置のエナメル色が極端に少なくなったり、逆に、象牙色が極端に少なくなったりし、各層を明確に視覚できる効果が得られない場合が生じうる。これにより、補綴装置の色調が単調となり、天然歯牙と比較して不自然な色調になってしまう場合が生じうる。
【0050】
陶材材料や硬質レジン材料等の歯科材料では従来、象牙色やエナメル色など透明性と色調の異なる複数の材料を積層することで歯冠補綴装置を作製してきた。長年の研究により、象牙色を再現する材料の透明性(コントラスト比)、エナメル色を再現する材料の透明性(コントラスト比)が調査されている。本発明では、従来技術の知見とブロック状材料から歯冠補綴装置を加工した場合の色調再現性を鋭意検討した結果、エナメル色を想定する最上面層(U)のコントラスト比C
Uを0.30〜0.60に設定した。最上面層(U)のコントラスト比C
Uの更に好ましい範囲は0.35〜0.52である。また象牙色を想定する最下面層(L)のコントラスト比C
Lを0.55〜0.90に設定した。最下面層(L)のコントラスト比C
Lの更に好ましい範囲は0.58〜0.85である。さらに、最上面層(U)のコントラスト比C
Uと、最下面層(L)のコントラスト比C
Lとの関係を、C
U<C
Lとする。中間層(M)を設定する場合、コントラスト比(C
M)を0.45〜0.65に設定する。中間層(M)のコントラスト比(C
M)の更に好ましい範囲は0.50〜0.60である。さらに、最上面層(U)のコントラスト比C
U及び最下面層(L)のコントラスト比C
Lとの関係を、C
U<C
M<C
Lとする。
【0051】
本発明の歯科切削加工用レジン材料における最上面層(U)、最下面層(L)(及び中間層(M))は、それぞれ異なった透明性に設計する必要がある。各層のコントラスト比の差(|C
U−C
L|)(及び(|C
U−C
M|)、(|C
M−C
L|))は、少なくとも0.03、好ましくは0.05であることが好ましい。これにより各層の差異が明確に認識可能となる。一方、各層の透明性が大きく異なると作製された補綴装置の色調が不自然になってしまう。ゆえに各層のコントラスト比の差(|C
U−C
L|)(及び(|C
U−C
M|)、(|C
M−C
L|))は、0.15を超えないように、好ましくは0.12を超えないように設計する必要がある。
【0052】
本発明では、各層の透明性(コントラスト比)を変化させる必要がある。無機フィラーを含有するレジン材料(複合材料)において、材料の透明性を調整する方法は、2つに大別される。1つは、重合性単量体と無機フィラーの屈折率の差を調整することである。両者の屈折率の差が小さいと材料の透明性が上がり、逆に屈折率の差が大きくなると材料の透明性が下がる。材料の透明性を調整するもう1つの方法は、不透明着色材(白色着色材)の配合量を調整する方法である。本発明の多層歯科切削加工用レジン材料の製造方法の実施において、特に色調の異なる複数層の材料を同時に均一に重合させる手法を取る場合には、各層が同様の重合反応を進めることが好ましい。このため、層ごとに重合性単量体の種類や無機フィラーの種類が異なることは、層ごとに重合反応の進行が異なる可能性があるため注意が必要となる。各層の重合性単量体と無機フィラーの種類を同種のものとし、不透明着色材(白色着色材)の微量配合により各層の透明性を変化させる方法は、各層の重合反応を均一に進行させることができる。ただし、不透明着色材を添加する方法の場合でも、材料を光重合により硬化させる場合には更なる注意が必要となる。光重合によりブロック体を成形する場合は、各層ごとに重合、充填を繰り返して成形することが好ましい。
【0053】
本発明においては、最上面層(U)、最下面層(L)、(及び中間層(M))の色調を近似させることが特徴である。本発明の材料より切削加工された歯冠補綴装置を観察するとき、各層の透明性(コントラスト比)が異なることにより各層がエナメル部分、象牙部分(及び中間部分)と認識され、その上で各層の色調が近似しているため各層間の境目が知覚されにくくなる。本発明において、各層の色調設計は、従来の陶材材料や硬質レジン材料で実施されてきた色調設計を参考に、エナメル色と象牙色のいずれの色調としても機能可能な範囲を設定する。具体的にはL*a*b*表色系において、60≦L*≦80、−3≦a*≦2、0≦b*≦30である。更に好ましくは、65≦L*≦75、−2.5≦a*≦0.5、5≦b*≦20である。
【0054】
本発明において、最上面層(U)、最下面層(L)(及び中間層(M))の各層間の色差は、ΔEで表したとき0.1〜15.0であることが好ましい。更に好ましくは、ΔEが0.1〜12.0である。これにより、各層の色調の移行がスムーズに見え、且つ、天然歯類似の補綴装置を得ることが可能となる。ここで、本明細書においては、最上面層(U)と最下面層(L)との色差ΔE
ULは、ΔE
UL=((L
U−L
L)
2+(a
U−a
L)
2+(b
U−b
L)
2)
0.5で定義される。同様に、最上面層(U)と中間層(M)との色差ΔE
UMは、ΔE
UM=((L
U−L
M)
2+(a
U−a
M)
2+(b
U−b
M)
2)
0.5で定義される。また、中間層(M)と最下面層(L)の色差ΔE
MLは、ΔE
ML=((L
M−L
L)
2+(a
M−a
L)
2+(b
M−b
L)
2)
0.5で定義される。
【0055】
本発明の実施において、その製造方法は特に限定されない。重合性単量体、無機フィラー、重合触媒、着色材等を混合したペーストを金型に充填し、重合硬化させる。層構造の付与については、1つの層を金型に充填・重合後に次の層を金型に充填・重合する方法、異なる色調に着色された各層のペーストを順次金型に充填後まとめて重合する方法などがある。これらの製造方法に応じて、適宜、金型を設計する。すなわち、各層ごとに充填・重合を繰り返す場合は各層の構造を設計した金型を複数組用意する。また複数の層をまとめて重合する場合はブロック体全体の形状を設計した金型を用意することになる。また、光重合により重合硬化させる場合は、金型を樹脂製やシリコン製の光透過性を持つ素材にする必要がある。
【0056】
本発明の多層歯科切削加工用レジン材料の製造方法の実施において、特に複数の層を同時に重合硬化させる場合、各層を構成する材料が均等に重合反応を進めることが重要となる。本発明では構成要素の重合性単量体として、ラジカル重合性の重合性単量体の使用を想定するが、これらの重合性単量体は重合時に数%から20%程度の重合収縮を伴う。仮に、各層に用いる重合性単量体の種類が異なったり、各層の無機フィラー配合量が異なると、各層で重合収縮率が異なってくる。各層の重合収縮率が大きく異なると、重合硬化後の層間にひずみが生じる。ひずみが大きいと製造途中においてブロック体に破損が生じてしまう場合がある。また、多層ブロック体が製造できた場合でもブロック体の内部に残留応力が生じているため耐久性を低下させる場合がある。よって、各層の重合収縮率は極力近似している必要がある。各層を構成する未硬化のペースト状物同士の重合収縮率の差は、線重合収縮率として1.0%以下であることが好ましい。更に好ましくは0.6%以下である。
【0057】
ブロック体内部に残留応力を発生させないという観点では、重合反応に伴う発熱量も大きな要素となる。重合発熱は、材料の重合率、材料の熱膨張(収縮)などに影響する。仮に、各層で重合発熱量が異なった場合、各層の重合率が異なる結果となり層間で重合時ひずみが発生する。また製造後のブロック体に外部応力が加わったときも、各層で弾性率が異なることより層間でひずみ応力が発生する。更に、重合反応時にはブロック体が重合発熱により高温となるが、反応終了後には冷却される。このとき材料の熱収縮を伴うが、各層の重合発熱量が異なると当然熱収縮量が異なってくる。すなわち、層間にひずみを発生させる要因となる。従って、各層を構成する成分の重合発熱量を極力合わせる必要がある。各層を構成する未硬化のペースト状物同士の重合発熱量の差は、50J/g以下であることが好ましい。更に好ましくは、10J/g以下である。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明をより詳細に、且つ具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0059】
(色度及びコントラスト比測定)
実施例の各層に使用する未硬化のペースト状物をφ15mm×1.2mmの金型に充填・重合硬化させた。成形後のディスク状物を耐水研磨紙により厚み1.0mmに調整後、表面をバフ研磨により仕上げ研磨を行った。研磨後のディスク状物を、分光測色計(CM−3500d:コニカミノルタ)により、白バックでのL*a*b*値を測定した。また黒バックでも同様の測色を行い、白バック測色のY値(YW)と黒バック測色のY値(YB)より、YB/YWをコントラスト比とした。
【0060】
(線収縮率)
実施例の各層に使用する未硬化のペースト状物を12×14×18mmのブロック体作製用金型に充填し、重合硬化させた。12mm辺の金型寸法と、重合硬化後のブロック体の12mm辺の寸法を正確に測定し、(金型寸法−ブロック体寸法)/金型寸法×100により、ペースト状物の線重合収縮率を求めた。
【0061】
(重合発熱量)
実施例の各層に使用する未硬化のペースト状物を示差走査熱量計(DSC)にて分析し、重合発熱量を測定した。
【0062】
(補綴装置の色調評価)
成形したブロック体を歯科用CAD/CAM切削加工機DWX−50(ローランド)により切削加工し、下顎右側第一小臼歯クラウンを作製した。作製したクラウンを10人が目視観察し、歯冠補綴装置としての色調再現性(エナメル色、象牙色の再現性)の評価及び層間の境目の評価を総合して補綴装置の色調の評価として行った。表1及び表2中、「補綴装置の色調」の欄の評価は、色調再現性が良好、かつ、層間の境目が確認できない、との評価が、目視観察者10人中、10人の場合を「AA:色調が完全に再現されている」、9人の場合を「A:色調再現性が非常に良好」、8人または7人の場合を「B:色調再現性良好」、6人以下の場合を「C:色調再現性不良」で表した。
【0063】
(ブロック体成型時の割れ、クラック評価)
成型したブロック体の外観を目視により確認し、割れ及びクラックの評価を行った。表1中、「ブロック体成型時の割れ、クラック」の欄の評価は、割れ、クラックが無い場合を「A(無し)」、割れ、クラックの発生割合が5%未満の場合を、「B(少量発生)、割れ、クラックの発生割合が5%以上の場合を、「C(大量に発生)」として表した。なお、表中に示すように、5%以上の割合での割れ、クラックの発生は、いずれの実施例・比較例においても確認されなかった。
【0064】
(高温高湿度下での耐久性)
上述の作製したクラウンを、高温高湿度下にある口腔内を想定した強制試験として温度37℃水中の条件下で1年放置し、クラウンとしての色調安定性が損なわれていないか否かにより、高温高湿度下での耐久性の評価を行った。表1中、「高温高湿度下での耐久性」の欄の評価は、クラウンとしての色調安定性が損なわれたものがない場合を「A(良好)」、一部のクラウンで色調安定性が損なわれた場合を「B(発生)」として表した。
【0065】
(ペーストP−1〜11、19〜43、47〜51の作製)
1,6−ビスメタクリルエチルオキシカルボニルアミノ(2,2,4−)トリメチルヘキサン:UDMAを70重量部、トリエチレングリコールジメタクリレート:3Gを30重量部、ベンゾイルパーオキサイド:BPOを0.3重量部配合した重合性単量体混合液を作製した。この重合性単量体混合液40重量部に対して、シリカフィラーとジルコニウムシリケートフィラーの混合フィラー60重量部を加え、白色着色材、赤色着色材、黄色着色材、黒色着色材を各微量(重合性単量体混合液と混合フィラーとの混合物100重量部に対して、着色材の合計量で1重量部未満)、混練しペースト状物を作製した。なお、各着色材の配合量を変化させることにより、所望の透明性と色調を有するペースト状物44種(P−1〜11、19〜43、47〜51)を作製した。
【0066】
(ペーストP−12〜14の作製)
1,6−ビスメタクリルエチルオキシカルボニルアミノ(2,2,4−)トリメチルヘキサン:UDMAを70重量部、トリエチレングリコールジメタクリレート:3Gを30重量部、ベンゾイルパーオキサイド:BPOを0.1重量部配合した重合性単量体混合液を作製した。この重合性単量体混合液20重量部に対して、シリカフィラーとジルコニウムシリケートフィラーの混合フィラー80重量部を加え、白色着色材、赤色着色材、黄色着色材、黒色着色材を各微量(重合性単量体混合液と混合フィラーとの混合物100重量部に対して、着色材の合計量で1重量部未満)、混練しペースト状物を作製した。なお、各着色材の配合量を変化させることにより、所望の透明性と色調を有するペースト状物3種(P−12〜14)を作製した。
【0067】
(ペーストP−15〜16の作製)
1,6−ビスメタクリルエチルオキシカルボニルアミノ(2,2,4−)トリメチルヘキサン:UDMAを70重量部、トリエチレングリコールジメタクリレート:3Gを30重量部、ベンゾイルパーオキサイド:BPOを0.3重量部配合した重合性単量体混合液を作製した。この重合性単量体混合液60重量部に対して、シリカフィラーとジルコニウムシリケートフィラーの混合フィラー40重量部を加え、白色着色材、赤色着色材、黄色着色材、黒色着色材を各微量(重合性単量体混合液と混合フィラーとの混合物100重量部に対して、着色材の合計量で1重量部未満)、混練しペースト状物を作製した。なお、各着色材の配合量を変化させることにより、所望の透明性と色調を有するペースト状物2種(P−15〜16)を作製した。
【0068】
(ペーストP−17〜18の作製)
1,6−ビスメタクリルエチルオキシカルボニルアミノ(2,2,4−)トリメチルヘキサン:UDMAを70重量部、トリエチレングリコールジメタクリレート:3Gを30重量部、ベンゾイルパーオキサイド:BPOを0.3重量部配合した重合性単量体混合液を作製した。この重合性単量体混合液65重量部に対して、シリカフィラーとジルコニウムシリケートフィラーの混合フィラー35重量部を加え、白色着色材、赤色着色材、黄色着色材、黒色着色材を各微量(重合性単量体混合液と混合フィラーとの混合物100重量部に対して、着色材の合計量で1重量部未満)、混練しペースト状物を作製した。なお、各着色材の配合量を変化させることにより、所望の透明性と色調を有するペースト状物2種(P−17〜18)を作製した。
【0069】
(ペーストP−44の作製)
1,6−ビスメタクリルエチルオキシカルボニルアミノ(2,2,4−)トリメチルヘキサン:UDMAを70重量部、トリエチレングリコールジメタクリレート:3Gを30重量部、ベンゾイルパーオキサイド:BPOを0.2重量部配合した重合性単量体混合液を作製した。この重合性単量体混合液40重量部に対して、シリカフィラーとジルコニウムシリケートフィラーの混合フィラー60重量部を加え、白色着色材、赤色着色材、黄色着色材、黒色着色材を各微量(重合性単量体混合液と混合フィラーとの混合物100重量部に対して、着色材の合計量で1重量部未満)、混練しペースト状物(P−44)を作製した。
【0070】
(ペーストP−45の作製)
1,6−ビスメタクリルエチルオキシカルボニルアミノ(2,2,4−)トリメチルヘキサン:UDMAを70重量部、トリエチレングリコールジメタクリレート:3Gを30重量部、ベンゾイルパーオキサイド:BPOを0.1重量部配合した重合性単量体混合液を作製した。この重合性単量体混合液40重量部に対して、シリカフィラーとジルコニウムシリケートフィラーの混合フィラー60重量部を加え、白色着色材、赤色着色材、黄色着色材、黒色着色材を各微量(重合性単量体混合液と混合フィラーとの混合物100重量部に対して、着色材の合計量で1重量部未満)、混練しペースト状物(P−45)を作製した。
【0071】
(ペーストP−46の作製)
1,6−ビスメタクリルエチルオキシカルボニルアミノ(2,2,4−)トリメチルヘキサン:UDMAを70重量部、トリエチレングリコールジメタクリレート:3Gを30重量部、ベンゾイルパーオキサイド:BPOを0.05重量部配合した重合性単量体混合液を作製した。この重合性単量体混合液40重量部に対して、シリカフィラーとジルコニウムシリケートフィラーの混合フィラー60重量部を加え、白色着色材、赤色着色材、黄色着色材、黒色着色材を各微量(重合性単量体混合液と混合フィラーとの混合物100重量部に対して、着色材の合計量で1重量部未満)、混練しペースト状物(P−46)を作製した。
【0072】
(実施例1〜6、実施例8〜25、実施例30〜33、比較例1〜2、比較例4〜13)
12×14×18mmのブロック体作製用金型に、最下面層用ペースト状物を12mm辺の高さに対し8mmの高さまで充填した。続けてその上に最上面層用ペースト状物を充填した(最上面層の高さ4mm)。金型を100℃に加熱し、ペースト状物を重合硬化させ2層構造のブロック体を得た。透明性と色調を変化させたペースト状物を使用し、表1に示す実施例1〜6、実施例8〜25、実施例30〜33、比較例1〜2、比較例4〜13を作製した。なお表1〜5には使用したペースト状物のペースト番号を、測定した色度及びコントラスト比とともに記載している。
【0073】
(実施例7)
12×14×18mmのブロック体作製用金型に、最下面層用ペースト状物を12mm辺の高さに対し3mmの高さまで充填した。続けてその上に最上面層用ペースト状物を充填した(最上面層の高さ9mm)。金型を100℃に加熱し、ペースト状物を重合硬化させ2層構造のブロック体を得た。透明性と色調を変化させたペースト状物を使用し、表1に示す実施例7を作製した。なお表1には使用したペースト状物のペースト番号を、測定した色度及びコントラスト比とともに記載している。
【0074】
(実施例26〜29)
12×14×18mmのブロック体作製用金型に、最下面層用ペースト状物を12mm辺の高さに対し、実施例26〜29においてそれぞれ9.6mm、9mm、6mm、4mmの高さまで充填した。続けてその上に最上面層用ペースト状物を充填した(最上面層の高さは、実施例26〜29においてそれぞれ、2.4mm、3mm、6mm、8mm)。金型を100℃に加熱し、ペースト状物を重合硬化させ2層構造のブロック体を得た。透明性と色調を変化させたペースト状物を使用し、表5に示す実施例26〜29を作製した。なお表5には使用したペースト状物のペースト番号を、測定した色度及びコントラスト比とともに記載している。
【0075】
(比較例3)
12×14×18mmのブロック体作製用金型に、最下面層用ペースト状物を12mm辺の高さに対し11.2mmの高さまで充填した。続けてその上に最上面層用ペースト状物を充填した(最上面層の高さ0.8mm)。金型を100℃に加熱し、ペースト状物を重合硬化させ2層構造のブロック体を得た。透明性と色調を変化させたペースト状物を使用し、表1に示す比較例3を作製した。なお表1には使用したペースト状物のペースト番号を、測定した色度及びコントラスト比とともに記載している。
【0076】
(実施例34〜40)
12×14×18mmのブロック体作製用金型に、最下面層用ペースト状物を12mm辺の高さに対し6mmの高さまで充填した。続けてその上に中間層用ペースト状物を充填した(中間層の高さ3mm)。さらにその上に最上面層用ペースト状物を充填した(最上面層の高さ3mm)。金型を100℃に加熱し、ペースト状物を重合硬化させ3層構造のブロック体を得た。透明性と色調を変化させたペースト状物を使用し、表6に示す実施例34〜40を作製した。なお表6には使用したペースト状物のペースト番号を、測定した色度及びコントラスト比とともに記載している。
【0077】
(実施例41)
12×14×18mmのブロック体作製用金型に、最下面層用ペースト状物を12mm辺の高さに対し2mmの高さまで充填した。続けてその上に中間層用ペースト状物を充填した(中間層の高さ4mm)。さらにその上に最上面層用ペースト状物を充填した(最上面層の高さ6mm)。金型を100℃に加熱し、ペースト状物を重合硬化させ3層構造のブロック体を得た。透明性と色調を変化させたペースト状物を使用し、表6に示す実施例41を作製した。なお表6には使用したペースト状物のペースト番号を、測定した色度及びコントラスト比とともに記載している。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】