特許第6865568号(P6865568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865568
(24)【登録日】2021年4月8日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/04 20060101AFI20210419BHJP
   C08L 27/18 20060101ALI20210419BHJP
   C08K 3/20 20060101ALI20210419BHJP
   C08K 3/24 20060101ALI20210419BHJP
   C08K 5/03 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   C08L23/04
   C08L27/18
   C08K3/20
   C08K3/24
   C08K5/03
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-234942(P2016-234942)
(22)【出願日】2016年12月2日
(65)【公開番号】特開2018-90697(P2018-90697A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104364
【氏名又は名称】出光ライオンコンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前山 茂
(72)【発明者】
【氏名】重文字 信行
【審査官】 堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−324783(JP,A)
【文献】 特開平02−255848(JP,A)
【文献】 特開昭61−133250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリエチレン 100質量部、
(B)臭素系難燃剤 20〜60質量部、
(C)酸化アンチモン 5〜20質量部、
(D1)金属水酸化物及び金属硫酸塩の少なくとも一方と、金属珪酸塩、金属炭酸塩及び珪素酸化物からなる群から選択される1種以上の化合物とを、合計10〜60質量部、及び
(E)ポリテトラフルオロエチレン 0.1〜10質量部
を含む樹脂組成物。
【請求項2】
前記成分(D1)が、水酸化マグネシウム及び硫酸バリウムの少なくとも一方と、タルク、マイカ、炭酸カルシウム及び酸化珪素からなる群から選択される種以上を含む請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記水酸化マグネシウムの平均粒径が0.1〜10μmである請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記タルクの平均粒径が0.1〜20μmである請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(A)ポリエチレン 100質量部、
(B)臭素系難燃剤 20〜60質量部、
(C)酸化アンチモン 5〜20質量部、
(D2)水酸化マグネシウム 10〜60質量部、及び
(E)ポリテトラフルオロエチレン 0.1〜10質量部
を含む樹脂組成物。
【請求項6】
前記水酸化マグネシウムの平均粒径が0.1〜10μmである請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記成分(A)のメルトフローレートが0.1〜10g/10分である請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記成分(B)の融点が200℃以上である請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記成分(B)がビス(ペンタブロモフェニル)アルカンである請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記成分(B)がビス(ペンタブロモフェニル)エタンである請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記成分(C)が三酸化アンチモンである請求項1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて作製された成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及びそれを用いて作製された成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂は着火しやすく燃えやすいため、通常、種々の難燃化が施される。特に電気部品、自動車部品、住宅設備部品、建築材料、家庭電化部品等の用途においては、高度の難燃化が要求される場合がある。
特許文献1には、ポリプロピレン、ビス(ペンタブロモフェニル)アルカン、三酸化アンチモン、及び平均粒径が0.1〜20μmである無機充填剤を含む難燃性樹脂組成物が開示されている。
特許文献2には、結晶性プロピレン重合体、無機充填材、エチレンビステトラブロモフタルイミド、デカブロモジフエニルエタン又はこれらの混合物のハロゲン含有難燃剤、及び難燃助剤を含む樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−120126号公報
【特許文献2】特開平7−53796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のポリオレフィン系樹脂組成物から得られる成形体は、一定の難燃性を有するものの、引張強度が低いという問題があった。
本発明の目的は、難燃性に優れ、かつ高い引張強度を有する成形体を製造することができる樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、以下の樹脂組成物等が提供される。
1.(A)ポリオレフィン系熱可塑性樹脂 100質量部、
(B)臭素系難燃剤 20〜60質量部、
(C)酸化アンチモン 5〜20質量部、
(D1)金属水酸化物、金属硫酸塩、金属珪酸塩、金属炭酸塩及び珪素酸化物からなる群から選択される2種以上の化合物 10〜60質量部、及び
(E)ポリテトラフルオロエチレン 0.1〜10質量部
を含む樹脂組成物。
2.前記成分(D1)が、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ、炭酸カルシウム及び酸化珪素からなる群から選択される2種以上を含む1に記載の樹脂組成物。
3.前記水酸化マグネシウムの平均粒径が0.1〜10μmである2に記載の樹脂組成物。
4.前記タルクの平均粒径が0.1〜20μmである2に記載の樹脂組成物。
5.(A)ポリオレフィン系熱可塑性樹脂 100質量部、
(B)臭素系難燃剤 20〜60質量部、
(C)酸化アンチモン 5〜20質量部、
(D2)水酸化マグネシウム 10〜60質量部、及び
(E)ポリテトラフルオロエチレン 0.1〜10質量部
を含む樹脂組成物。
6.前記水酸化マグネシウムの平均粒径が0.1〜10μmである5に記載の樹脂組成物。
7.前記成分(A)がポリエチレンである1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
8.前記成分(A)のメルトフローレートが0.1〜10g/10分である1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
9.前記成分(B)の融点が200℃以上である1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
10.前記成分(B)がビス(ペンタブロモフェニル)アルカンである1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物。
11.前記成分(B)がビス(ペンタブロモフェニル)エタンである1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物。
12.前記成分(C)が三酸化アンチモンである1〜11のいずれかに記載の樹脂組成物。
13.1〜12のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて作製された成形体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、難燃性に優れ、かつ高い引張強度を有する成形体を製造することができる樹脂組成物が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1の樹脂組成物]
第1の樹脂組成物は下記の成分を下記の割合で含む。成分(B)〜(E)の含有割合は、成分(A)100質量部に対する各質量部である。
(A)ポリオレフィン系熱可塑性樹脂 100質量部
(B)臭素系難燃剤 20〜60質量部
(C)酸化アンチモン 5〜20質量部
(D1)金属水酸化物、金属硫酸塩、金属珪酸塩、金属炭酸塩及び珪素酸化物からなる群から選択される2種以上の化合物 10〜60質量部
(E)ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と言う場合がある。) 0.1〜10質量部
【0008】
第1の樹脂組成物は上記の成分を上記の割合で含むため、当該樹脂組成物から得られた成形体は難燃性に優れ、かつ高い引張強度を有する。
以下、第1の樹脂組成物に用いる各成分について説明する。本明細書において、「x〜y」は「x以上、y以下」の数値範囲を表すものとする。
【0009】
(成分(A):ポリオレフィン系熱可塑性樹脂)
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂は、オレフィンに由来する単量体単位を含有する熱可塑性樹脂である。
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、エチレン−カルボン酸アルケニルエステル共重合体樹脂、エチレン−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂等が例示される。これらのうち、例えば、ポリエチレン系樹脂を用いることができる。
【0010】
ポリエチレン系樹脂は、エチレンの単独重合体(ホモポリマー)、及びエチレンを主成分とする共重合体等からなる群より選ばれる1種又は2種以上で構成することができる。
【0011】
エチレンの単独重合体としては特に制限はないが、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン)(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。
【0012】
エチレンを主成分とする共重合体としては、特に制限はないが、例えば、エチレンとエチレン以外のα−オレフィンとのランダム共重合体、及びエチレンとエチレン以外のα−オレフィンとのブロック共重合体等が挙げられる。
「エチレンを主成分とする共重合体」の「エチレンを主成分とする」とは、共重合体においてエチレン由来の構造が一番多く占めることをいう。
【0013】
エチレン以外のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、及び1−エイコセン等が挙げられる。
【0014】
成分(A)のメルトフローレート(以下、「MFR」と言う場合がある。)は、0.1〜10g/10分とすることができる。この範囲内であれば、引張特性(機械物性)に優れる。
メルトフローレートは、ASTM規格D1238に従い、190℃、荷重2.16kgで測定する。
【0015】
なお、成分(A)としてポリエチレン系樹脂を用いると、他のポリオレフィン系熱可塑性樹脂(例えばポリプロピレン系樹脂)を用いた場合に比べて、成形体の引張強度をより向上することができる。
【0016】
市販のポリオレフィン系熱可塑性樹脂としては、例えば、プライムポリマー株式会社製の各種ポリエチレン樹脂「ハイゼックス」、「ネオゼックス」、「ウルトゼックス」、「モアテック」、「エボリュー」の各シリーズ、東ソー株式会社製の低密度ポリエチレン等が挙げられる。
【0017】
成分(A)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第1の樹脂組成物において、樹脂組成物の全質量を基準とした成分(A)の割合は、例えば、30〜80質量%であり、35〜75質量%としてもよい。
【0018】
(成分(B):臭素系難燃剤)
臭素系難燃剤としては特に制限はないが、例えば、ビス(ペンタブロモフェニル)アルカンを用いることができる。ビス(ペンタブロモフェニル)アルカンのうち、アルカン部分の炭素数が1〜3である化合物は優れた難燃性を示す。具体的に、1,1−ビス(ペンタブロモフェニル)メタン、1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、1,3−ビス(ペンタブロモフェニル)プロパン等が挙げられ、例えば、1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタンを用いることができる。
【0019】
上記以外の臭素系難燃剤としては、例えば、2,2−ビス[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)フェニル]プロパン、ビス[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)フェニル]スルホン、リン酸トリス[3−ブロモ−2,2−ビス(ブロモメチル)プロピル]、ペンタブロモベンジルアクリレートポリマー、1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカン、2,4,6−トリス−(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、2,2−ビス(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオール、トリブロモ−ネオペンチルアルコール、2,2−ビス(4−アリルオキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、BC−52テトラブロモビスフェノールA、BC−58テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、イソシアヌル酸トリス(2,3−ジブロモプロピル)、1,1’−[エチレンビス(オキシ)]ビス(2,4,6−トリブロモベンゼン)、ペンタブロモベンジルアクリレート、トリブロモフェノールアクリレート、オクタブロモジフェニルエーテル、2,2’−[イソプロピリデンビス[(2,6−ジブロモ−4,1−フェニレン)オキシ]]ジエタノール、N−メチルヘキサブロモジフェニルアミン、TBAビスブロモエチルエーテル等が挙げられる。
【0020】
成分(B)として、融点が200℃以上である化合物を用いることができる。融点が200℃以上であると、得られる成形体を燃焼させた場合に火炎のついた溶融液滴が落下する、いわゆるドリップ現象を抑制することができる。特に1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタンは、融点が高いのみならず(354℃)、化学的構造上ドリップしにくい難燃剤である。
融点は示差走査熱量計(DSC)により測定する。
【0021】
第1の樹脂組成物における成分(B)の含有量は、成分(A)100質量部に対して20〜60質量部であり、20〜50質量部としてもよく、30〜40質量部としてもよい。
成分(A)100質量部に対して20〜60質量部であると、十分な難燃性を得られる。
【0022】
(成分(C):酸化アンチモン)
酸化アンチモンは、三酸化アンチモン(Sb)、五酸化アンチモン(Sb)等、一般に入手可能なものであれば特に制限なく使用できる。酸化アンチモンは、通常、難燃助剤として用いられる。酸化アンチモンは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0023】
第1の樹脂組成物における成分(C)の含有量は、成分(A)100質量部に対して5〜20質量部であり、5〜15質量部としてもよい。酸化アンチモンの含有量が、成分(A)100質量部に対して5質量部以上であれば、難燃剤との相乗効果が高く、十分な難燃効果が得られる。また、成分(A)100質量部に対して20質量部以下であれば、成形体の機械物性が低下するおそれがなく、また、経済的である。
【0024】
(成分(D):無機フィラー)
第1の樹脂組成物及び後述する第2の樹脂組成物は、無機フィラーとして特定の化合物を含む。第1の樹脂組成物に用いる無機フィラーを成分(D1)、第2の樹脂組成物に用いる無機フィラーを成分(D2)とする。
【0025】
(成分(D1))
第1の樹脂組成物は、無機フィラーとして、金属水酸化物、金属硫酸塩、金属珪酸塩、金属炭酸塩及び珪素酸化物からなる群から選択される2種以上の化合物を含む(成分(D1))。2以上の化合物としては特に制限はなく、上記の化合物を任意に組み合わせて用いることができる。
【0026】
化合物の組み合わせとして、例えば、[金属水酸化物、金属硫酸塩]、[金属水酸化物、金属珪酸塩]、[金属水酸化物、金属炭酸塩]、[金属水酸化物、珪素酸化物]、[金属硫酸塩、金属珪酸塩]、[金属硫酸塩、金属炭酸塩]、[金属硫酸塩、珪素酸化物]、[金属珪酸塩、金属炭酸塩]、[金属珪酸塩、珪素酸化物]、[金属炭酸塩、珪素酸化物]等が挙げられる。[A、B]はAとBの組み合わせを示す。
なお、「2種以上の化合物」とは、例えば、2種類の金属水酸化物を含むような場合も含む。
【0027】
金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等が挙げられる。金属硫酸塩としては、硫酸バリウム(例えば沈降性硫酸バリウム)、硫酸アルミニウム等が挙げられる。金属珪酸塩としては、タルク、マイカ、ワラストナイト等が挙げられる。金属炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛等が挙げられる。珪素酸化物としては、酸化珪素、シリカ等が挙げられる。
【0028】
成分(D1)の形状に特に制限はなく、例えば、繊維状、板状、粒状、粉末状のものを用いることができる。
成分(D1)として平均粒径の小さい粒状のものを用いると、得られる成形体の引張強度を高くすることができる。
【0029】
水酸化マグネシウムは、平均粒径0.1〜10μmの粒子状のものを用いてもよい。平均粒径は0.5〜5μmとしてもよい。
【0030】
タルクは、平均粒径0.1〜20μmの粒子状のものを用いてもよい。平均粒径は5〜15μmとしてもよい。
【0031】
硫酸バリウムは、平均粒径0.1〜10μmの粒子状のものを用いてもよい。平均粒径は0.5〜5μmとしてもよい。
【0032】
上記の平均粒径は、電子顕微鏡(日本電子株式会社製、製品名:JSM−6390LA)により撮影した写真を用いて、1mm角の領域における粒径0.01〜100μmの粒子を目視により無差別に100個選択し、当該100個の粒子の粒径の単純平均(算術平均)を算出することにより求める。粒径として粒子の長径を用いる。
【0033】
成分(D1)は、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ、炭酸カルシウム及び酸化珪素からなる群から選択される2種以上としてもよく、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、タルクからなる群から選択される2種以上としてもよい。
【0034】
第1の樹脂組成物における成分(D1)の含有量(2種類以上の化合物の合計量)は、成分(A)100質量部に対して10〜60質量部であり、20〜50質量部としてもよく、30〜40質量部としてもよい。
また、成分(D1)を構成する各成分の含有割合は、2成分の場合、成分1:成分2(質量比)は、例えば10:90〜90:10であり、20:80〜80:20としてもよい。
【0035】
(成分(E):PTFE)
PTFEとしては、例えば、テトラフルオロエチレンの単独重合体又はテトラフルオロエチレンを主成分とする共重合体等が挙げられる。PTFEを含むことにより、得られる成形体のドリップ現象を抑制することができる。PTFEは市販のものを用いることができる。
【0036】
テトラフルオロエチレンと共重合するコモノマーとしては、ジフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フルオロアルキルエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルなどの含フッ素オレフィンや、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレートなどの含フッ素アルキル(メタ)アクリレートを用いることができる。共重合成分の含有量は、テトラフルオロエチレンに対して10質量%以下としてもよい。
【0037】
第1の樹脂組成物における成分(E)の含有量は、成分(A)100質量部に対して0.1〜10質量部であり、0.5〜5質量部としてもよい。
【0038】
(その他の添加剤)
第1の樹脂組成物は、上記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて従来公知の添加剤を添加することができる。添加剤としては、フェノール系、リン系又はイオウ系酸化防止剤、帯電防止剤、ベンゾトリアゾール系又はベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の光安定剤(耐候剤)、抗菌剤、相溶化剤、着色剤(染料、顔料)等が挙げられる。
【0039】
第1の樹脂組成物の、例えば、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、99.5質量%以上、99.9質量%以上が成分(A)、(B),(C),(D1)及び(E)、又は(A)、(B),(C),(D1)、(E)及び任意成分であってもよい。
第1の樹脂組成物は、本質的に、(A)、(B),(C),(D1)及び(E)、又は(A)、(B),(C),(D1)、(E)及び任意成分からなってもよい。この場合、不可避不純物を含んでもよい。
第1の樹脂組成物は、(A)、(B),(C),(D1)及び(E)のみ、又は(A)、(B),(C),(D1)、(E)及び任意成分のみからなってもよい。
【0040】
[第2の樹脂組成物]
第2の樹脂組成物は下記の成分を下記の割合で含む。成分(B)〜(E)の含有割合は、成分(A)100質量部に対する各質量部である。
(A)ポリオレフィン系熱可塑性樹脂 100質量部
(B)臭素系難燃剤 20〜60質量部
(C)酸化アンチモン 5〜20質量部
(D2)水酸化マグネシウム 10〜60質量部
(E)ポリテトラフルオロエチレン 0.1〜10質量部
【0041】
第2の樹脂組成物は上記の成分を上記の割合で含むため、当該樹脂組成物から得られた成形体は難燃性に優れ、かつ高い引張強度を有する。
【0042】
第2の樹脂組成物は、無機フィラーとして水酸化マグネシウムを含む以外は第1の樹脂組成物と同じである。即ち、成分(A)、(B)、(C)及び(E)の各成分及びその含有量やその他の成分等は上記で説明した通りである。
【0043】
成分(D2)の水酸化マグネシウムも上記で説明した通りである。水酸化マグネシウムは、無機フィラーとしての役割の他に難燃性としての性質も有するため、水酸化マグネシウムを含むことにより難燃性を向上することもできる。
第2の樹脂組成物における水酸化マグネシウムの含有量は、成分(A)100質量部に対して10〜60質量部であり、20〜50質量部としてもよく、30〜40質量部としてもよい。
【0044】
第2の樹脂組成物は、水酸化マグネシウム以外の無機フィラーを含んでもよいし含まなくてもよい。水酸化マグネシウム以外の無機フィラーの含有量は、例えば、成分(A)100質量部に対して1質量%以下又は0.1質量%以下としてもよい。
【0045】
第2の樹脂組成物の、例えば、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、99.5質量%以上、99.9質量%以上が成分(A)、(B),(C),(D2)及び(E)、又は(A)、(B),(C),(D2)、(E)及び任意成分であってもよい。
第2の樹脂組成物は、本質的に、(A)、(B),(C),(D2)及び(E)、又は(A)、(B),(C),(D2)、(E)及び任意成分からなってもよい。この場合、不可避不純物を含んでもよい。
第2の樹脂組成物は、(A)、(B),(C),(D2)及び(E)のみ、又は(A)、(B),(C),(D2)、(E)及び任意成分のみからなってもよい。
【0046】
[樹脂組成物の製造方法]
第1の樹脂組成物及び第2の樹脂組成物(以下、これらをまとめて「本発明の一態様による樹脂組成物」と言う場合がある。)は、各成分を任意の方法で溶融混練することによって製造することができる。例えば、ヘンシェルミキサー等の高速撹拌機、バンバリーミキサー等のバッチ式混練機、単軸又は二軸の連続混練機、ロールミキサー等を単独で、又は組み合わせて用いる方法が挙げられる。
【0047】
[成形体]
本発明の一態様による樹脂組成物を成形することによって、シート等の成形体を製造することができる。成形方法としては従来公知の成形方法を採用することができ、例えば、射出成形、シート成形、押出成形、異形押出成形、熱プレス成形等が挙げられる。このうち、得られる成形品の外観に優れることや経済性な観点から、溶融押出機を用いてシート成形する方法を用いることができる。これらの成形条件は特に限定されない。
本発明の一態様による成形体は、自動車、産業資材、建材分野、電子・電気、OA、機械等の分野において用いることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。
実施例及び比較例で用いた成分及び物性は下記の通りである。
【0049】
(成分(A))
・PE(A):ポリエチレン(商品名「ウルトゼックス 1020L」、株式会社プライムポリマー製、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、MFR:2.0g/10分)
・PE(B):ポリエチレン(商品名「ハイゼックス 5100E」、株式会社プライムポリマー製、高密度ポリエチレン(HDPE)、MFR:0.2g/10分)
【0050】
(成分(B))
・1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタン(商品名「サイテックス8010」、アルベマール日本株式会社製、融点:354℃)
【0051】
(成分(C))
・三酸化アンチモン(商品名「PATOX−KF」、日本精鉱株式会社製)
【0052】
(成分(D1)及び/又は(D2))
・水酸化マグネシウム(商品名「キスマ5AC」、平均粒径1μm、協和化学工業株式会社製)
・タルクA:タルク(商品名「タルクSWB」、平均粒径12μm、浅田製粉株式会社製)
・タルクB:タルク(商品名「ミストロン750」、平均粒径10μm、イメリススペシャリティーズジャパン株式会社製)
・タルクC:タルク(商品名「ミストロン950JSA」、平均粒径5μm、イメリススペシャリティーズジャパン株式会社製)
・沈降性硫酸バリウム(商品名「KS−NANFUN」、平均粒径1μm、川津産業株式会社製)
【0053】
(成分(E))
・ポリテトラフルオロエチレン(商品名「メタブレンA3000」、三菱レーヨン株式会社製)
【0054】
実施例1〜8、比較例1〜6
[樹脂組成物の調製]
表1に示す配合量で各成分を配合し、押出成形機(機種名「CTM35」、株式会社シーティーイー製)により混合物を220〜240℃で溶融混練し、ペレタイザーにて造粒することで樹脂ペレットとした。
表1に示す各成分の配合量は成分(A)100質量部に対する各成分の質量部である。
【0055】
[成形体の製造・評価]
得られた樹脂ペレットを、日精樹脂工業株式会社製の射出成形機「NEX110III」及び東芝機械株式会社製の射出成形機「EC100」を用いて、シリンダー温度190〜210℃、金型温度50℃で射出成形して、下記評価方法に合わせた形状の試験片を作製し、特性を下記方法で評価した。
【0056】
(1)難燃性評価(UL−94V)及びドリップの有無
試験機として、株式会社東洋精機製作所製、HVULプラスチックUL燃焼テストチャンバー「Atlas」を用い、厚み1/16インチの試験片について、UL−94V規格に従って垂直燃焼試験を行った。
5本の試験片について、それぞれ1回目と2回目の燃焼時間、及び綿の発火の有無等から、UL−94V規格にしたがって燃焼ランクをつけた。燃焼ランクはV−0が最高のものであり、V−1、V−2となるにしたがって難燃性は低下する。但し、V−0〜V−2のランクのいずれにも該当しないものはnot−Vとした。また、上記の難燃性評価において溶融滴下(ドリップ)の有無を確認した。
【0057】
(2)引張最大強度及び引張伸び率
2mm厚の3号ダンベル試験片を用い、JIS K6251に準拠する方法(引張速度200mm/分)で引張最大強度と引張伸び率を測定した。
【0058】
【表1】
【0059】
表1より、本発明の一態様による樹脂組成物から得られる成形体は難燃性に優れ、ドリップを発生せず、かつ高い引張最大強度及び引張伸び率を有することが分かる。