特許第6865576号(P6865576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6865576点灯回路およびプロジェクタ装置、プロジェクタ装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865576
(24)【登録日】2021年4月8日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】点灯回路およびプロジェクタ装置、プロジェクタ装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/105 20200101AFI20210419BHJP
   H05B 47/155 20200101ALI20210419BHJP
   H05B 47/16 20200101ALI20210419BHJP
   H05B 47/165 20200101ALI20210419BHJP
   H05B 45/10 20200101ALI20210419BHJP
   H05B 45/32 20200101ALI20210419BHJP
   H05B 45/345 20200101ALI20210419BHJP
   H05B 45/48 20200101ALI20210419BHJP
【FI】
   H05B47/105
   H05B47/155
   H05B47/16
   H05B47/165
   H05B45/10
   H05B45/32
   H05B45/345
   H05B45/48
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-254941(P2016-254941)
(22)【出願日】2016年12月28日
(65)【公開番号】特開2018-107066(P2018-107066A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】村松 隆雄
【審査官】 野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−175216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00、47/00
G03B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有するデジタルマイクロミラーデバイスとともに使用される光源の点灯回路であって、
フレーム期間を周期として所定のパターンの電流を繰り返し生成し、
M、Nそれぞれを2以上の任意の整数とするとき、前記フレーム期間は、等しい長さtを有するM個の第1サブフレームおよびN個の第2サブフレームに分割され、
i番目(1≦i≦M)の第1サブフレームにおいて、長さtのオン時間の間、振幅が2i−1×Iの電流を前記光源に供給し、
j番目(1≦j≦N)の第2サブフレームにおいて、長さ2−j×tのオン時間の間、振幅がIの電流を前記光源に供給し、
前記デジタルマイクロミラーデバイスの画素のオン、オフは、(M+N)ビットのバイナリデータに応じて制御され前記i番目の第1サブフレームにおける前記画素は、前記バイナリデータの上位Mビットのうちの、iビット目に応じて制御され、前記j番目の第2サブフレームにおける前記画素は、前記バイナリデータの下位Nビットのうちのjビット目に応じて制御されることを特徴とする点灯回路。
【請求項2】
光源の点灯回路であって、
フレーム期間を周期として所定のパターンの電流を繰り返し生成し、
M、Nそれぞれを2以上の任意の整数とするとき、前記フレーム期間は、等しい長さtを有するM個の第1サブフレームおよびN個の第2サブフレームに分割され、
i番目(1≦i≦M)の第1サブフレームにおいて、長さtのオン時間の間、振幅が2i−1×Iの電流を前記光源に供給し、
j番目(1≦j≦N)の第2サブフレームにおいて、長さ2−j×tのオン時間の間、振幅がIの電流を前記光源に供給し、
前記点灯回路は、
前記光源と並列に設けられ、第1状態、第2状態が切りかえ可能であり、前記第1状態においてハイインピーダンスとなり、前記第2状態において前記光源と並列な電流経路を形成するバイパス回路と、
振幅がIの第1電流を生成する第1定電流回路と、
振幅がIの第2電流を生成する少なくともひとつの第2定電流回路と、
少なくともひとつの第2定電流回路と対応し、それぞれが、対応する第2定電流回路の一方の出力と前記光源の一端の間に設けられる、少なくともひとつのシリーズスイッチと、
少なくともひとつの第2定電流回路と対応し、それぞれが、前記第2定電流回路の前記一方の出力と他方の出力の間に設けられる、少なくともひとつのシャントスイッチと、
を備えることを特徴とする点灯回路。
【請求項3】
前記バイパス回路は、
前記光源を消灯すべき期間において、前記光源の両端間電圧を、ゼロより大きく前記光源の点消灯のしきい値電圧より低く規定されるクランプレベルにクランプするクランプ回路を含むことを特徴とする請求項2に記載の点灯回路。
【請求項4】
前記クランプ回路は、前記光源の消灯指示に応答して直ちに、前記光源の両端間電圧を実質的にゼロまで低下させ、その後、前記クランプレベルにクランプし
前記クランプ回路は、前記光源と並列な第2経路の上に設けられた第2スイッチをさらに含み、
前記第2スイッチは、前記光源の消灯指示後、直ちにターンオンし、前記光源の点灯指示に先だってターンオフすることを特徴とする請求項3に記載の点灯回路。
【請求項5】
前記点灯回路は、複数の画素を含むデジタルマイクロミラーデバイスとともに使用され、
前記デジタルマイクロミラーデバイスの画素のオン、オフは、(M+N)ビットのバイナリデータに応じて制御され、前記i番目の第1サブフレームにおける前記画素は、前記バイナリデータの上位Mビットのうちの、iビット目に応じて制御され、前記j番目の第2サブフレームにおける前記画素は、前記バイナリデータの下位Nビットのうちのjビット目に応じて制御されることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の点灯回路。
【請求項6】
光源の点灯回路であって、
前記光源と並列に設けられ、第1状態、第2状態が切りかえ可能であり、前記第1状態においてハイインピーダンスとなり、前記第2状態において前記光源と並列な電流経路を形成するバイパス回路と、
振幅がIの第1電流を生成する第1定電流回路と、
振幅がIの第2電流を生成するK個(Kは自然数)の第2定電流回路と、
K個のシリーズスイッチであって、i番目(1≦i≦K)のシリーズスイッチは、対応する第2定電流回路の一方の出力と前記光源の一端の間に設けられるK個のシリーズスイッチと、
K個のシャントスイッチであって、i番目(1≦i≦K)のシャントスイッチは、対応する第2定電流回路の一方の出力と他方の出力の間に設けられるK個のシャントスイッチと、
前記バイパス回路、前記シリーズスイッチおよび前記シャントスイッチを制御するコントローラと、
を備えることを特徴とする点灯回路。
【請求項7】
デジタルマイクロミラーデバイスと、
前記デジタルマイクロミラーデバイスに光を照射する光源と、
前記光源を点灯する請求項1から6のいずれかに記載の点灯回路と、
を備えることを特徴とするプロジェクタ装置。
【請求項8】
デジタルマイクロミラーデバイスを備えるプロジェクタ装置の制御方法であって、
M、Nそれぞれを2以上の任意の整数とするとき、等しい長さtを有するM個の第1サブフレームおよびN個の第2サブフレームを含むフレーム期間を1周期として所定のパターンにしたがって光強度が変化する照明光を生成するステップと、
サブフレームごとに、前記デジタルマイクロミラーデバイスの複数の画素それぞれのオン、オフを、(M+N)ビットのバイナリデータに応じて制御するステップと、
を備え、
前記照明光を生成するステップは、単位強度をIとするとき、
i番目(1≦i≦M)の第1サブフレームにおいて、長さtのオン時間の間、強度が2i−1×Iの照明光を生成するステップと、
j番目(1≦j≦N)の第2サブフレームにおいて、長さ2−j×tのオン時間の間、強度がIの照明光を生成するステップと、
を備え、
前記制御するステップは、
前記i番目の第1サブフレームにおける前記画素を、前記バイナリデータの上位Mビットのうちの、iビット目に応じて制御するステップと、
前記j番目の第2サブフレームにおける前記画素を、前記バイナリデータの下位Nビットのうちのjビット目に応じて制御するステップと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の生成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光に任意のパターンを形成するデバイスとして、DMD(Digital Micromirror Device)が知られている。DMDは、マトリクス状に配置された可動式のマイクロミラーのアレイを備える。各マイクロミラーの傾斜角を切りかえることにより、画素毎に、光のオン、オフが切りかえ可能となっている。
【0003】
DMD自体は、オン、オフの2値制御であるが、オン、オフ時間の時間比率を変調することにより、階調表現が可能となる。図1(a)、(b)は、DMDの階調制御を説明する図である。理解の容易化のため、1画素のマイクロミラーに着目する。
【0004】
図1(a)には、一般的なパルス変調による階調制御が示される。マイクロミラーにはCW(Continuous Wave)の入射光LDが入射しており、オン状態において、入射光LDを出射光路側に反射し、オフ状態において、入射光LDを出射光路とは別の光路に反射する。
【0005】
図1(a)には、1フレーム期間TFRAMEが示される。たとえば8ビット、256階調で制御する場合、1フレーム期間TFRAMEは、複数8個のサブ期間T〜Tに分割される。複数のサブ期間T〜Tの長さはバイナリで重み付けされており、階調制御の1LSBに相当するサブ期間Tの長さをtとするとき、サブ期間Tの長さは、t×2となる。
【0006】
各サブ期間T〜Tにおけるマイクロミラーのオン、オフは、8ビットのバイナリデータb[7:0]にもとづいて制御される。たとえばb[i]=1のとき、対応するサブ期間Tの間、マイクロミラーはオンとなる。1フレーム期間TFRAMEにおいて、マイクロミラーがオンとなる時間TONは、
ON=Σi=0〜7)(b[i]×T)=Σi=0〜7)(b[i]×t×2
となる。
【0007】
図1(a)の制御方式におけるフレームレートについて検討する。N階調制御する場合、1フレーム期間TFRAMEはN×t、フレームレートは、1/(N×t)となる。したがって、フレームレートの上限は、最小制御時間tによって制約を受ける。現状利用可能なDMDでは、t=44μs程度であり、1フレーム期間TFRAMEは11.22msとなり、フレームレートは、89fps(frame per sec)が上限となる。
【0008】
図1(b)は、高速なフレームレートを実現可能な制御方式を説明する図である。図1(b)の制御方式では、マイクロミラーのオン時間TONに加えて、入射光LDのオン時間が階調制御される。この例では、下位4ビットに対応するサブ期間T〜Tにおいて、入射光LDのオン時間がバイナリで重み付けされており、上位4ビットに対応するサブ期間T〜Tにおいて、入射光LDは一定である。
【0009】
サブ期間T〜Tの長さは等しくtであり、入射光LDのオン時間t(i=1,2,3,4)は、
=t×2
×2≦tであり、tは入射光LDの最小オン幅である。
【0010】
上位4ビットのサブ期間T〜Tの長さT(j=4,5,6,7)は、
=t×2
となる。
【0011】
図1(b)の制御によれば、1フレーム期間TFRAMEの長さは、4t+240tとなる。入射光LDのスイッチングは、マイクロミラーのスイッチングより高速化が可能である。たとえばt=1ms、t=44μsとすれば、1フレーム期間TFRAMEは1msとなり、1000fpsを実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2016−091976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図1(b)の方式において、フレームレートをさらに高めるためには、入射光の最小オン時間tをさらに小さくする必要がある。光源としては主として、LD(レーザダイオード)やLED(発光ダイオード)などの半導体光源が使用される。半導体光源の点消灯制御は、定電流出力のスイッチングコンバータによって、駆動電流を生成し、(i)駆動電流自体をスイッチングするか、(ii)駆動電流を定常的に生成し、駆動電流の経路を、半導体光源か別経路かで切りかえる必要がある。いずれの方式においても、最小オン時間tを短くすることは容易ではない。
【0014】
本発明はかかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、バイナリで重み付けされた多階調の電流を時分割で高速に生成可能な点灯回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のある態様は、光源の点灯回路に関する。点灯回路は、フレーム期間を周期として所定のパターンの電流を繰り返し生成する。M、Nそれぞれを2以上の任意の整数とするとき、フレーム期間は、等しい長さtを有するM個の第1サブフレームおよびN個の第2サブフレームに分割される。点灯回路は、i番目(1≦i≦M)の第1サブフレームにおいて、長さtのオン時間の間、振幅が2i−1×Iの電流を光源に供給し、j番目(1≦j≦N)の第2サブフレームにおいて、長さ2−j×tのオン時間の間、振幅がIの電流を光源に供給する。
【0016】
i番目、j番目は便宜的なものであり、時系列とは無関係である。この点灯回路によれば、バイナリで重み付けされた複数階調の電流列で生成できる。最小の時間幅はt/2である。電流振幅を一定Iとして同じ階調数を実現するためには、最小時間幅をt/2N+M−1としなければならない。この態様によれば、同じ階調数を、より長い最小オン時間で実現できる。あるいは、同じ最小オン時間を仮定した場合に、より大きな階調数を実現できる。
【0017】
点灯回路は、光源と並列に設けられ、第1状態、第2状態が切りかえ可能であり、第1状態においてハイインピーダンスとなり、第2状態において光源と並列な電流経路を形成するバイパス回路と、振幅がIの第1電流を生成する第1定電流回路と、振幅がIの第2電流を生成する少なくともひとつの第2定電流回路と、少なくともひとつの第2定電流回路と対応し、それぞれが、対応する第2定電流回路の一方の出力と光源の一端の間に設けられる、少なくともひとつのシリーズスイッチと、少なくともひとつの第2定電流回路と対応し、それぞれが、第2定電流回路の一方の出力と他方の出力の間に設けられる、少なくともひとつのシャントスイッチと、を備えてもよい。
【0018】
バイパス回路は、光源を消灯すべき期間において、光源の両端間電圧を、ゼロより大きく光源の点消灯のしきい値電圧より低く規定されるクランプレベルにクランプするクランプ回路を含んでもよい。
点灯期間における光源の両端間電圧をVON、クランプレベルをVCLとする。この態様では、光源の消灯期間において両端間電圧は、クランプレベルVCLにクランプされるため、消灯から点灯に切りかえる際の、両端間電圧の変化幅ΔVは、VON−VCLとなる。VCLを点消灯のしきい値電圧VTHに近づけることで、消灯から点灯に切りかえる際の変動幅ΔVを小さくでき、したがって光源を短い時間で点灯させることができる。また、駆動回路から見たときの負荷変動を小さくできるため、第2電流ドライバの設計上の制約を緩和できる。
【0019】
クランプ回路は、光源の消灯指示に応答して直ちに、光源の両端間電圧を実質的にゼロまで低下させ、その後、クランプレベルにクランプしてもよい。
これにより、光源の消灯指示後、光源を短時間で消灯することができる。
【0020】
クランプ回路は、光源と並列な第2経路の上に設けられた第2スイッチをさらに含んでもよい。第2スイッチは、光源の消灯指示後、直ちにターンオンし、光源の点灯指示に先だってターンオフしてもよい。
これにより、点灯から消灯への切りかえを高速にできる。
【0021】
本発明の別の態様もまた、点灯回路に関する。この点灯回路は、光源と並列に設けられ、第1状態、第2状態が切りかえ可能であり、第1状態においてハイインピーダンスとなり、第2状態において光源と並列な電流経路を形成するバイパス回路と、振幅がIの第1電流を生成する第1定電流回路と、振幅がIの第2電流を生成する第2定電流回路と、第1定電流回路の一方の出力と光源の一端の間に設けられるシリーズスイッチと、第1定電流回路の一方の出力と他方の出力の間に設けられるシャントスイッチと、バイパス回路、シリーズスイッチおよびシャントスイッチを制御するコントローラと、を備える。
【0022】
コントローラは、等しい単位長さtを有する複数のサブフレームを含むフレーム期間を繰り返し、フレーム期間は、シリーズスイッチをオン、シャントスイッチをオフ、バイパス回路を第1状態とするサブフレームと、シリーズスイッチをオフ、シャントスイッチをオン、バイパス回路を第1状態とするサブフレームと、シリーズスイッチをオフ、シャントスイッチをオン、バイパス回路をt/2の間、第1状態とし、残りの時間、第2状態とするサブフレームと、シリーズスイッチをオフ、シャントスイッチをオン、バイパス回路をt/4の間、第1状態とし、残りの時間、第2状態とするサブフレームと、… シリーズスイッチをオフ、シャントスイッチをオン、バイパス回路をt/2N(N≧3)間、第1状態とし、残りの時間、第2状態とするサブフレームと、を含んでもよい。
【0023】
本発明のべつの態様は、プロジェクタ装置に関する。プロジェクタ装置は、デジタルマイクロミラーデバイスと、デジタルマイクロミラーデバイスに光を照射する光源と、光源を点灯する上述のいずれかの点灯回路と、を備える。
【0024】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【0025】
さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0026】
本発明のある態様によれば、バイナリで重み付けされた多階調の電流を時分割で高速に生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1(a)、(b)は、DMDの階調制御を説明する図である。
図2】実施の形態に係るプロジェクタ装置のブロック図である。
図3】駆動電流IOUTを示す波形図である。
図4】比較技術における駆動電流IOUTの波形図である。
図5】実施の形態に係る点灯回路の一実施例のブロック図である。
図6図5の点灯回路の動作波形図である。
図7】シリーズスイッチSWAおよびシャントスイッチSWBの一構成例の回路図である。
図8】実施の形態に係る点灯回路の一実施例のブロック図である。
図9図8の点灯回路の動作波形図である。
図10】バイパス回路の一実施例の回路図である。
図11】光源のI/V特性を示す図である。
図12図10の点灯回路の動作波形図である。
図13】バイパススイッチを用いた点灯回路の動作波形図である。
図14】第2機能を備える点灯回路の動作波形図である。
図15】クランプ回路の第1構成例の回路図である。
図16】クランプ回路の第2構成例の回路図である。
図17図17(a)、(b)は、図8のクランプ回路の具体的な構成例を示す回路図である。
図18図18(a)〜(e)は、クランプ回路の変形例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0029】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0030】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0031】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは抵抗値、容量値を表すものとする。
【0032】
本明細書において参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0033】
図2は、実施の形態に係るプロジェクタ装置400のブロック図である。プロジェクタ装置400は、DMD402および照明装置100を備える。DMD402は、マトリクス状に配置された複数の画素、すなわちマイクロミラー404のアレイを備える。各画素のマイクロミラー404は、パターン制御信号SPATに応じて個別にオン、オフが切りかえ可能となっている。
【0034】
照明装置100は、断面の光強度分布が均一な照明光104を発生し、DMD402に照射する。DMD402の反射光106は、パターン制御信号SPATに応じた強度分布を有する。
【0035】
照明装置100は、光源102および点灯回路200を備える。点灯回路200は、フレーム期間TFRAMEを周期として所定のパターンの駆動電流IOUTを繰り返し生成し、光源102に供給する。光源102は、たとえばLDやLED、有機EL素子などであり、点灯回路200が生成する駆動電流IOUTに応じた輝度で発光する。
【0036】
図3は、駆動電流IOUTを示す波形図である。M、Nそれぞれを2以上の任意の整数とするとき、フレーム期間TFRAMEは、等しい長さtを有するM個の第1サブフレームTA1〜TAMおよびN個の第2サブフレームTB1〜TBNに分割される。図3では、M=2、N=6であるがその限りではない。
【0037】
M個の第1サブフレームTA1〜TAMに着目すると、i番目(1≦i≦M)の第1サブフレームTAiにおいて、長さtのオン時間の間、振幅が2i−1×Iの駆動電流IOUTが生成される。
【0038】
N個の第2サブフレームTB1〜TBNに着目すると、j番目(1≦j≦N)の第2サブフレームTBjにおいて、長さ2−j×tのオン時間の間、振幅がIの駆動電流IOUTが生成される。
【0039】
照明装置100が発生する照明光104の光強度は、図3の駆動電流IOUTと実質的に同一の波形を有する。DMD402の各画素(マイクロミラー404)は、サブフレーム単位でオン、オフが切りかえられる。
【0040】
1画素に着目する。M個の第1サブフレームTAM〜TA1、N個の第2サブフレームTB1〜TBNそれぞれにおける画素のオン、オフは、8ビットのバイナリ信号b[7:0]の対応するビットに応じて制御される。b[7]=1のとき、対応するサブフレームTAMの間、画素はオンであり、b[7]=0のとき、サブフレームTAMの間、画素はオフである。1フレーム期間TFRAMEの平均光強度は、バイナリ信号b[7:0]の値に応じて規定される。
【0041】
以上が実施の形態に係る照明装置100の構成および動作である。続いてその利点を説明する。
【0042】
この点灯回路200によれば、振幅制御とパルス幅制御を組み合わせることにより、バイナリで重み付けされた多階調(図3では階調数8)の電流を時分割で高速に生成できる。
【0043】
この点灯回路200の利点は、以下の比較技術との対比によって明確となる。比較技術において、駆動電流IOUTの振幅をIの一定が一定とされる。図4は、比較技術における駆動電流IOUTの波形図である。比較技術において図3と同様に8階調の電流列を生成しようとすれば、電流振幅を2×Iとし、TA2を省略し、オン時間がt/128であるサブフレームを追加する必要がある。
【0044】
つまり、実施の形態に係る点灯回路200によれば、比較技術と同じ階調を実現するために必要な最小オン時間を2倍とすることができる。電流パルスの精度は、パルス幅が短くなるほど悪化するところ、実施の形態に係る点灯回路200によれば、同じ階調を実現した場合の精度を高めることができる。
【0045】
別の観点から言えば、比較技術と同じ精度を確保した場合、階調数を増加させることができる。
【0046】
同じ階調数を仮定して、M=3とすれば最小パルス幅は比較技術の4倍、M=4とすれば最小パルス幅は比較技術の8倍となるため、より一層、精度を高めることが可能となる。あるいは、同じ最小パルス幅(すなわち精度)を仮定すると、M=3、M=4と増やすにしたがって、階調数を増やすことができる。
【0047】
また、電流のスイッチングは、その振幅が大きくなるほど速度が低下し、あるいは精度が悪化する。比較技術では、振幅が2×Iの電流をスイッチングさせる必要があるのに対して、実施の形態では、半分Iの電流をスイッチングさせればよい。したがってこの点においても、高速動作が可能であり、あるいは高精度化が可能となる。
【0048】
なお、図3の例では、光強度が高い順に並べられているが、複数のサブサブフレームの順序は任意に入れ替えることができる。たとえば光強度が低い順に並べ替えてもよい。
【0049】
あるいはM個の第1サブフレームTAM〜TA1の中で、時系列の順序を入れ替えてもよい。同様に、N個の第2サブフレームTB1〜TBNの中で、時系列の順序を入れ替えてもよい。
【0050】
また、N個の第2サブフレームTB1〜TBNをM個の第1サブフレームTAM〜TA1より時間軸上で前に配置してもよい。あるいは、M個の第1サブフレームTAM〜TA1とN個の第2サブフレームTB1〜TBNを時間軸上でシャッフルして配置してもよい。
【0051】
また図3では、N個の第2サブフレームTB1〜TBNにおいて、それぞれのオン時間が第2サブフレームの最後端に配置されているがその限りでなく、最先端に配置してもよいし、中央に配置してもよい。
【0052】
続いて点灯回路200の構成例を説明する。図5は、実施の形態に係る点灯回路の一実施例(200A)のブロック図である。この点灯回路200Aは、図3に示したように、M=2である駆動電流IOUTの波形を生成する。点灯回路200Aは、1個の第1定電流回路202と、1個の第2定電流回路204と、1個のシリーズスイッチSWA、1個のシャントスイッチSWB、バイパス回路206、コントローラ208を備える。
【0053】
第1定電流回路202、第2定電流回路204はそれぞれ、振幅がIの第1電流I、第2電流Iを生成する。第1定電流回路202、第2定電流回路204の構成は特に限定されないが、定電流出力のスイッチングコンバータを用いることができ、好ましくは高速性に優れるリップル制御のコンバータを用いることができる。なお第1定電流回路202、第2定電流回路204はリニア電流源を用いてもよい。
【0054】
バイパス回路206は、光源102と並列に設けられ、第1状態φ、第2状態φが切りかえ可能である。バイパス回路206は、第1状態φにおいてハイインピーダンスとなり、このとき光源102には非ゼロの駆動電流IOUTが供給される。バイパス回路206は第2状態φにおいて光源102と並列な電流経路(迂回経路)207を形成し、このとき光源102に流れる電流はゼロとなる。
【0055】
たとえばバイパス回路206は、光源102の両端間に設けられたバイパススイッチ207を含み、バイパススイッチのオフが第1状態φに、バイパススイッチのオンが第2状態φに対応してもよい。
【0056】
シリーズスイッチSWAは、第2定電流回路204の一方の出力OUT1と光源102の一端(アノード)の間に設けられる。シリーズスイッチSWAは、第2定電流回路204の一方の出力OUT2と光源102の一端(カソード)の間に設けてもよい。
【0057】
シャントスイッチSWBは、第2定電流回路204の一方の出力OUT1と他方の出力OUT2の間に設けられる。
【0058】
コントローラ208は、シリーズスイッチSWA、シャントスイッチSWBおよびバイパス回路206を制御する。シリーズスイッチSWAとシャントスイッチSWBは相補的にオン、オフが切りかえられ、一方がオンのとき、他方がオフの関係にある。
【0059】
以上が点灯回路200Aの構成である。続いてその動作を説明する。
図6は、図5の点灯回路200Aの動作波形図である。シリーズスイッチSWAはサブフレームTA2においてオン、残りの期間、オフである。シャントスイッチSWBはサブフレームTA2においてオフ、残りの期間、オンである。
【0060】
バイパス回路206は、2個の第1サブフレームTA2,TA1において第1状態φとなる。バイパス回路206は、j番目の第2サブフレームTBjにおいて、長さ2−j×tのオン時間の間、第1状態φとなり、残りのオフ時間の間、第2状態φとなる。
【0061】
図5の点灯回路200Aによれば、図3の駆動電流IOUTを好適に生成できる。
【0062】
図7は、シリーズスイッチSWAおよびシャントスイッチSWBの一構成例の回路図である。シリーズスイッチSWA、シャントスイッチSWBは、NチャンネルMOSFETで構成される。シリーズスイッチSWAのMOSFETのバックゲートは、第2定電流回路204の出力OUT1と接続され、したがってこのMOSFETのボディダイオードBD1のカソードは光源102のアノードと接続される。シャントスイッチSWBのMOSFETのバックゲートは、第2定電流回路204の出力OUT2と接続され、したがってこのMOSFETのボディダイオードBD2のカソードは光源102のアノードと接続される。
【0063】
この構成により、シリーズスイッチSWAがオン、シャントスイッチSWBがオフの状態では、第2定電流回路204の出力電流IをOUT1,SWB,OUT2の経路に流しつつ、第1定電流回路202の出力電流IがシャントスイッチSWBに流れるのを防止できる。
【0064】
図8は、実施の形態に係る点灯回路の一実施例(200B)のブロック図である。この点灯回路200Bは、1個の第1定電流回路202と、K個の第2定電流回路204_1〜204_Kと、K個のシリーズスイッチSWA_1〜SWA_K、K個のシャントスイッチSWB_1〜SWB_K、バイパス回路206、コントローラ208を備える。
【0065】
第1定電流回路202は、振幅がIである第1電流Iを生成する。i番目(1≦i≦K)の第2定電流回路204_iは、振幅が2i−1である第2電流IY_iを生成する。
【0066】
i番目(1≦i≦K)のシリーズスイッチSWA_iは、対応する第2定電流回路204_iの一方の出力OUT1と光源102の一端(アノード)の間に設けられる。i番目(1≦i≦K)のシャントスイッチSWB_iは、対応する第2定電流回路204_iの一方の出力OUT1と他方の出力OUT2の間に設けられる。
【0067】
コントローラ208は、K個のシリーズスイッチSWA_1〜SWA_K、K個のシャントスイッチSWB_1〜SWB_K、バイパス回路206を制御する。共通の第2定電流回路204_iに接続されるシリーズスイッチSWA_iとシャントスイッチSWB_iは相補的に制御される。
【0068】
図9は、図8の点灯回路200Bの動作波形図である。第1サブフレームTの個数Mと、第2定電流回路204の個数Kの間には、K=M+1の関係が成り立つ。K=2としたとき、1フレームには3個の第1サブフレームTA3〜TA1が含まれる。図9ではN=5である。
【0069】
1番目のシリーズスイッチSWA_1は、サブフレームTA3,TA2においてオン、残りのサブフレームTA1においてオフである。シャントスイッチはシリーズスイッチと相補的に制御されるため省略する。
【0070】
2番目のシリーズスイッチSWA_2は、サブフレームTA3においてオン、残りのサブフレームTA2,TA1においてオフである。
【0071】
任意のKに拡張すると、K個のうちi番目のシリーズスイッチSWA_iは、K+1個の第1サブフレームTAK+1〜TA1のうち、TA1…TAiにおいてオフであり、残りにおいてオンである。
【0072】
バイパス回路206は、N個の第1サブフレームTA3〜TA3において第1状態φとなる。バイパス回路206は、j番目の第2サブフレームTBjにおいて、長さ2−j×tのオン時間の間、第1状態φとなり、残りのオフ時間の間、第2状態φとなる。
【0073】
図8の点灯回路200Bによれば、図9の駆動電流IOUTを好適に生成できる。
【0074】
(変形例)
これまでの説明では、照明装置100が生成する照明光は、フレーム期間を1周期として所定のパターンにしたがって光強度が変化したが、その限りではなく、照明光104は、サブフレーム毎に照明装置100自身によってオフ、オフが制御されてもよい。つまり、点灯回路200が生成する駆動電流IOUTは、サブフレームごとに、オン、オフが切りかえ可能である。
【0075】
この変形例では、バイパス回路206の動作が修正される。あるサブフレームにおいて、駆動電流IOUTをオフにする場合、そのサブフレームの間、バイパス回路206を第2状態φに固定すればよい。
【0076】
この変形例によれば、照明装置100単独で、フレーム毎の光強度を変調することができる。
【0077】
続いて、バイパス回路206の好ましい構成例を説明する。図10は、バイパス回路206の一実施例の回路図である。図10の駆動回路201は、第1定電流回路202と第2定電流回路204の合成回路に相当し、その出力電流をIDRVと記す。
【0078】
バイパス回路206は、クランプ回路210を含む。クランプ回路210は、光源102を消灯すべき期間において、光源102の両端間電圧VをクランプレベルVCLにクランプする。クランプレベルVCLは、ゼロより大きく光源102の点消灯のしきい値電圧VTHより低く規定される。より詳しくは、クランプ回路210は、光源102の点消灯を指示する制御信号Sに応じてイネーブル(活性化)、ディセーブル(不活性化)が切りかえ可能に構成される。制御信号Sは、点灯回路200の内部で生成されてもよいし、外部から供給されてもよい。
【0079】
クランプ回路210は、制御信号Sが、第1レベル(点灯レベル)であるときにディセーブルとなり、光源102や駆動回路201には電気的に作用しない状態となる。クランプ回路210のディセーブルは、バイパス回路206の第1状態φに対応する。クランプ回路210は、ディセーブル状態で、ハイインピーダンス状態となってもよい。
【0080】
クランプ回路210は、制御信号Sが、第2レベル(消灯レベル)であるときにイネーブル状態となり、光源102の両端間電圧Vを、クランプレベルVCLにクランプする。これを第1機能という。クランプ回路210のイネーブルは、バイパス回路206の第2状態φに対応する。
【0081】
図11は、光源102のI/V特性を示す図である。横軸は光源102の両端間電圧、すなわち順方向電圧Vであり、縦軸は順電流Iを示す。光源102がLEDである場合、順方向電圧Vがオン電圧VONより低い領域において、順電流Iは実質的にゼロであり、光源102は消灯とみなせる。順方向電圧Vがオン電圧VONより高い領域においては、順電流Iは順方向電圧Vに応じて増加し、光源102は順電流Iに応じた輝度で発光する。したがって、光源102がLEDの場合には、しきい値電圧VTHは、オン電圧VONと対応付けることができる。
【0082】
なお、しきい値電圧VTHは、光源102の点灯状態と消灯状態の境界であるところ、ここでの消灯状態は、光源102から放射される光子が完全にゼロであることを要求するものでない。たとえば、光源102の光量が多階調制御される場合、1LSBに相当する光量よりも、十分に少ない光子を放出する状態は、消灯状態とみなすことができる。あるいは、人間が知覚できる光量よりも少ない光子を放出する状態を、消灯状態とみなすこともできる。
【0083】
図11において、VON=VTHとすると、クランプレベルVCLは、0Vとオン電圧VONの間に設定される。
【0084】
以上が点灯回路200の構成である。続いてその動作を説明する。
図12は、図10の点灯回路200の動作波形図である。時刻tより前において制御信号Sは点灯レベル(ハイレベル)であり、クランプ回路210はディセーブル状態(DIS)である。このとき光源102の順電流Iは、駆動回路201が生成する駆動電流IDRVと等しくなり、光源102は、駆動電流IDRVに応じた輝度で発光する。順方向電圧Vは、駆動電流IDRVに相当する電圧レベルVONである。
【0085】
時刻tに制御信号Sが消灯レベル(ローレベル)に遷移すると、クランプ回路210がイネーブル状態(EN)となる。クランプ回路210がイネーブル状態となると、光源102の両端間電圧(順方向電圧)VはクランプレベルVCLにクランプされる。クランプ回路210の動作遅延によって、順方向電圧Vは、ある傾きでクランプレベルVCLに向かって低下していき、光源102の順電流I、すなわち輝度も、時間と共に減少していく。光源102が生成する駆動電流IDRVと順電流Iの差分は、クランプ回路210に流れることに留意されたい。
【0086】
時刻tに順方向電圧Vがしきい値電圧VTHと交差すると、順電流Iがゼロとなり、光源102が消灯する。その後、時刻tに順方向電圧VがクランプレベルVCLに到達し、その後、同じ電圧レベルを維持する。
【0087】
時刻tに制御信号Sが点灯レベル(ハイレベル)に遷移すると、クランプ回路210がディセーブル状態(DIS)となる。クランプ回路210がディセーブル状態となると、光源102の順方向電圧Vのクランプが解除され、消灯期間においてクランプ回路210に流れていた駆動電流IDRVが、光源102に流れ、順方向電圧Vは、もとの電圧レベルVONに向かって増大していく。VCL<V<VTHである時刻t〜tの間、順電流Iは実質的にゼロであり、光源102は消灯している。
【0088】
順方向電圧Vがしきい値電圧VTHと交差する時刻t以降、順電流Iが流れ初め、光源102の輝度が増大する。そして時刻tに、駆動電流IDRVのすべてが光源102に流れるようになり、順電流Iが駆動電流IDRVと等しくなる。
【0089】
以上が点灯回路200の動作である。クランプ回路210の利点は、バイパススイッチを用いた回路との対比によって明確となる。図13は、バイパススイッチを用いた点灯回路の動作波形図である。
【0090】
時刻t10より前において制御信号Sは点灯レベル(ハイレベル)であり、バイパススイッチはオフであり、駆動回路201が生成する駆動電流IDRVは、光源102に流れ、光源102は、駆動電流IDRVに応じた輝度で発光する。順方向電圧Vは、駆動電流IDRVに相当する電圧レベルVONである。
【0091】
時刻t10に制御信号Sが消灯レベル(ローレベル)に遷移すると、バイパススイッチがオンする。これにより、それまで光源102に流れていた駆動電流IDRVがバイパススイッチに流れ、順電流Iが減少する。
【0092】
時刻t11に順方向電圧Vがしきい値電圧VTHと交差すると、順電流Iがゼロとなり、光源102が消灯する。その後、時刻t12に順方向電圧Vがゼロ(0V)まで低下する。
【0093】
時刻t13に制御信号Sが点灯レベル(ハイレベル)に遷移すると、バイパススイッチがオフし、消灯期間においてバイパススイッチに流れていた駆動電流IDRVが、光源102に流れ、順方向電圧Vは、もとの電圧レベルVONに向かって増大していく。0<V<VTHである時刻t13〜t14の間、順電流Iは実質的にゼロであり、光源102は消灯している。
【0094】
順方向電圧Vがしきい値電圧VTHと交差する時刻t14以降、順電流Iが流れ初め、光源102の輝度が増大する。そして時刻t15に、駆動電流IDRVのすべてが光源102に流れるようになり、順電流Iが駆動電流IDRVと等しくなる。
【0095】
以上がクランプ回路210の動作である。バイパススイッチを用いた回路では、制御信号Sが点灯レベルに遷移した時刻t13から、順方向電圧Vがしきい値電圧VTHに到達する時刻t14までの期間(点灯不能期間と称する)τ、順電流Iはゼロであり、光源102を点灯させることができない。
【0096】
制御信号Sの周期(スイッチング周期T)が短くなるにしたがい、言い換えればスイッチング周波数が高くなるにしたがって、点灯不能期間τが周期Tに占める割合が高くなる。言い換えれば、スイッチング周期Tは点灯不能期間τの制約を受ける。
【0097】
なお、図13における点灯不能期間τの長さは、順方向電圧Vの上昇速度(スルーレートSR)を用いて、
τ=VTH/SR
と近似できる。
【0098】
図12に戻る。図12において、時刻t〜tが点灯不能期間τに相当する。点灯不能期間τの長さは、順方向電圧Vの上昇速度(スルーレートSR)を用いて、
τ=(VTH−VCL)/SR
と近似できる。仮に、図12図13のスルーレートが等しい(SR=SR)とすると、図12の点灯不能期間τは、図13の点灯不能期間τより短くなる。
【0099】
このように、図10のクランプ回路210によれば、光源102を消灯から点灯に切りかえる際の点灯不能期間τを短くできるため、高速なスイッチングが可能となる。
【0100】
また、駆動回路201から見たときの負荷変動を小さくできるため、駆動回路201の設計上の制約を緩和でき、したがって駆動回路201の設計が容易となる。
【0101】
たとえば駆動回路201は、出力電流が定電流制御されるスイッチングコンバータ(スイッチモード電源)で構成することができる。定電流出力のスイッチングコンバータには、出力電圧の変動にかかわらず、出力電流を一定に保つ機能が要求される。出力電圧が高速にかつ大振幅で変動する用途では、スイッチングコンバータに要求される応答速度が非常に速くなり、その設計は困難を極める。クランプ回路210の第1機能によって、出力電圧の変動幅が小さくなるため、スイッチングコンバータの設計が容易となるという利点もある。駆動回路201をリニア電源で構成することも可能であるが、この場合であっても、同様のメリットを享受できる。
【0102】
点灯不能期間τは、消灯期間と点灯期間における順方向電圧Vの変動幅ΔV(=VTH−VCL)を小さくするほど短くなる。したがって、スイッチング周波数を高めるためには、クランプレベルVCLを、しきい値電圧VTHを超えない範囲において可能な限り高く設定することが好ましい。この観点から、クランプレベルVCLは、しきい値電圧VTHの1/3より高く、より好ましくはしきい値電圧VTHの1/2より高く定めることが望ましい。
【0103】
その反面、クランプレベルVCLを高くしすぎると、しきい値電圧VTHのばらつきや温度変動によって、消灯期間において光源102が誤点灯するおそれがある。この観点から、クランプレベルVCLは、しきい値電圧VTHの4/5より低く、より好ましくはしきい値電圧VTHの3/4より低く定めることが望ましい。
【0104】
続いて、クランプ回路210のより好ましい機能(第2機能)を説明する。クランプ回路210は光源102の消灯指示(即ち制御信号Sのネガエッジ)に応答して直ちに、光源102の両端間電圧Vを実質的にゼロまで低下させる。クランプ回路210は、その後、光源102の点灯より前に、両端間電圧VをクランプレベルVCLにクランプする(第2機能)。
【0105】
図14は、第2機能を備える点灯回路の動作波形図である。時刻tにおいて制御信号Sが消灯レベルに切りかわると、光源102の両端間電圧Vは直ちにゼロ(0V)まで低下する。これにより、順電流Iは直ちにゼロまで低下する。
【0106】
その後、制御信号Sが点灯レベルに切り替わる時刻tに先立つ時刻tにおいて、光源102の両端間電圧Vは、クランプレベルVCLに戻される。
【0107】
このように、第2機能を備えるクランプ回路210によれば、光源102を高速に消灯することができる。
【0108】
図15は、クランプ回路210の第1構成例210Aの回路図である。クランプ回路210Aは、上述の第1機能を備える。クランプ回路210Aは、光源102と並列な第1経路212の上に、直列に設けられた第1スイッチSWおよびクランプ抵抗214を含む。第1スイッチSWのオンが、クランプ回路210Aのイネーブル状態に、第1スイッチSWのオフがクランプ回路210Aのディセーブル状態に対応する。
【0109】
第1経路212の抵抗値をR、駆動回路201が生成する駆動電流をIDRVとするとき、イネーブル状態において、第1経路212の両端間の電圧は、R×IDRVとなる。つまり、クランプレベルVCLは、以下の式で与えられる。
CL=R×IDRV
したがって、0<R×IDRV<VTHが成り立っていればよい。
第1経路212の抵抗値Rは、クランプ抵抗214の抵抗値と、第1スイッチSWの抵抗値の和である。
【0110】
クランプ回路210Aは、コントローラ220をさらに含んでもよい。コントローラ220は、制御信号Sにもとづいて第1スイッチSWのオン、オフを制御する。具体的にはコントローラ220は、制御信号Sが点灯レベルのときに第1スイッチSWをオフし、制御信号Sが消灯レベルのときに第1スイッチSWをオンする。
【0111】
図16は、クランプ回路210の第2構成例210Bの回路図である。クランプ回路210Bは、上述の第1機能および第2機能を備える。クランプ回路210Bは、図7のクランプ回路210Aに加えて、光源102と並列な第2経路216の上に設けられた第2スイッチSWをさらに備える。
【0112】
コントローラ220は、光源102の消灯期間(制御信号Sが消灯レベル)において第1スイッチSWをオンし、光源102の点灯期間(制御信号Sが点灯レベル)において第1スイッチSWをオフする。またコントローラ220は、光源102の消灯指示(すなわち制御信号Sの対応するエッジ)を契機として直ちに第2スイッチSWをターンオンし、その後、光源102の点灯指示に先立って第2スイッチSWをターンオフする。たとえば点灯レベルがハイであるとき、コントローラ220は、制御信号Sのネガエッジをトリガとして、ごく短い間、第2スイッチSWをターンオンしてもよい。あるいはコントローラ220は、制御信号Sのネガエッジから所定時間の間、第2スイッチSWをオンしてもよい。
【0113】
図17(a)、(b)は、図8のクランプ回路210Bの具体的な構成例を示す回路図である。第1スイッチSW、第2スイッチSWはいずれもNチャンネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。
【0114】
図17(a)を参照する。#Sは、制御信号Sの反転信号であり、消灯レベルがハイ、点灯レベルがローの信号である。第1ドライバ222は、制御信号#Sにもとづいて第1スイッチSWを駆動する。微分器226は、制御信号Sを微分する。たとえば微分器226は、ハイパスフィルタで構成してもよく、たとえば信号経路上に設けられたキャパシタを含んでもよい。微分器226の出力は、制御信号#Sのポジエッジによって上昇し、すぐにゼロに戻る。第2ドライバ224は微分器226の出力にもとづいて第2スイッチSWを駆動する。
【0115】
図17(a)において、微分器226と第2ドライバ224を入れ替えてもよい。また図17(a)において、第2ドライバ224を省略し、第1ドライバ222の出力をそのまま第1スイッチSWのゲートに供給し、第1ドライバ222の出力を微分器226を介して第2スイッチSWのゲートに供給してもよい。
【0116】
図17(b)を参照する。第1ドライバ223は、制御信号Sにもとづいて第1スイッチSWを駆動する。エッジ検出器228は、制御信号Sの消灯指示に対応するエッジ(消灯レベルがローであるとき、ポジエッジ)を検出し、検出したエッジから所定時間、ハイレベルとなるエッジ検出信号Sを生成する。第2ドライバ224は、エッジ検出信号Sに応じて第2スイッチSWを駆動する。
【0117】
図18(a)〜(e)は、クランプ回路210の変形例を示す回路図である。ここでは、第1機能に関連する部分のみを示す。図18(a)のクランプ回路210においてクランプ抵抗は省略され、第1スイッチSWとして、クランプ抵抗の抵抗値に相当する大きいオン抵抗RONを有するMOSFETを用いてもよい。すなわちオン抵抗RONが、第1経路212の抵抗値Rとなり、RON×IDRVが、クランプレベルVCLとなる。
【0118】
図18(b)のクランプ回路210において、第1経路212の上には、ダイオード215と第1スイッチSWが直列に設けられる。ダイオード215には、駆動電流IDRVが流れることにより、実質的に一定の順方向電圧Vが発生する。第1スイッチSWのオン抵抗が十分に小さいときには、VCL=Vとなる。第1スイッチSWのオン抵抗RONが大きい場合、VCL=V+IDRV×RONとなる。
【0119】
図18(c)のクランプ回路210において、第1経路212の上には、ツェナーダイオード217と第1スイッチSWが直列に設けられる。ツェナーダイオード217には、駆動電流IDRVが流れることにより、実質的に一定のツェナー電圧Vが発生する。第1スイッチSWのオン抵抗が十分に小さいときには、VCL=Vとなる。第1スイッチSWのオン抵抗RONが大きい場合、VCL=V+IDRV×RONとなる。
【0120】
図18(d)のクランプ回路210では、クランプ抵抗214の抵抗値をRとすると、VCL=V+(R+RON)IDRVである。図18(e)のクランプ回路210では、クランプ抵抗214の抵抗値をRとすると、VCL=V+(R+RON)IDRVである。
【0121】
まとめると、クランプ回路210は、抵抗、ダイオード、ツェナーダイオードの任意の組み合わせで構成することができる。
【0122】
(用途)
続いて点灯回路200の用途を説明する。図2のプロジェクタ装置400は、車両用灯具の前照灯に使用できる。この場合、車両前方の路面状況や前方車、歩行者などの状況に応じて、DMD402を高速に制御して適切な配光を形成することで、視認性を高めることができる。
【0123】
あるいはプロジェクタ装置400によって、路面にさまざまな図形や文字などを描くことが可能となる。たとえば、車両が走行すべきレーンに沿って、図形を描画することにより、運転しやすくなる。
【0124】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0125】
100…照明装置、102…光源、104…照明光、200…点灯回路、202…第1定電流回路、204…第2定電流回路、SWA…シリーズスイッチ、SWB…シャントスイッチ、206…バイパス回路、208…コントローラ、210…クランプ回路、212…第1経路、SW1…第1スイッチ、214…クランプ抵抗、216…第2経路、SW2…第2スイッチ、220…コントローラ、300…車両用灯具、400…プロジェクタ装置、402…DMD、404…マイクロミラー。
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