(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記縦型ホール素子を囲み、前記縦型ホール素子を周囲から電気的に分離する第1導電型の素子分離拡散層をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
前記両端に位置する電極の一方の電極と前記素子分離拡散層の前記第1の内側面との間、及び前記両端に位置する電極の他方の電極と前記素子分離拡散層の前記第2の内側面との間は、それぞれ少なくとも前記第1の間隔を有していることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【背景技術】
【0002】
ホール素子は磁気センサとして非接触での位置検知や角度検知が可能であることから様々な用途に用いられている。中でも半導体基板表面に対して垂直な磁界成分を検出する横型ホール素子を用いた磁気センサが一般的に良く知られているが、基板の表面に対して平行な磁界成分を検出する縦型ホール素子を用いた磁気センサも各種提案されている。
【0003】
縦型ホール素子の構造の一つとして、複数の電極を直線上に並べて配置したものが、例えば特許文献1に示されている。
特許文献1では、N型の高濃度不純物領域からなる5つの電極を直線上に配置し、各電極間及び両端の電極の外側にP型の電極分離拡散層を設け、端から2番目と4番目の電極をホール電圧出力電極とし、中央及び両端の電極を制御電流供給電極として中央の制御電流供給電極から両端の制御電流供給電極へ電流を流し、端から2番目と4番目のホール電圧出力電極間に発生する電圧差を出力電圧として得ることにより、基板に平行な磁界を検出している。
【0004】
ホール素子においては、磁界が印加されていないときでも、いわゆるオフセット電圧が出力されることが知られている。一般的にオフセット電圧は、素子毎に異なり、磁気センサとして用いる場合、オフセット電圧は除去する必要がある。しかし、特許文献1では、オフセット電圧については認識されていない。
【0005】
一方、特許文献1のような複数の電極を直線上に並べて配置した構成の縦型ホール素子において、スピニングカレント法を用いて、オフセット電圧を除去する方法(オフセットキャンセル)が、例えば、特許文献2に提案されている。
【0006】
特許文献2では、直線上に並べられた複数の電極を、交互に制御電流供給電極とホール電圧出力電極として使用できるようにし、電流を流す方向を切り替え、且つ制御電流供給電極とホール電圧出力電極との役割を入れ替えることにより、オフセットキャンセルを可能としている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の第1の例の縦型ホール素子を有する半導体装置を説明するための図であり、
図1(a)は平面図、
図1(b)は、
図1(a)のL−L’線に沿った断面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の第1の例の半導体装置は、第1導電型であるP型の半導体基板10と、半導体基板10上に設けられた縦型ホール素子100と、縦型ホール素子100の周囲を取り囲むように設けられたP型の素子分離拡散層70とを備えている。
【0017】
縦型ホール素子100は、半導体基板10上に設けられた第2導電型であるN型の半導体層20と、N型半導体層20の表面に直線上に設けられた半導体層よりも高濃度のN型の不純物領域からなる電極31〜35と、N型半導体層20の表面に設けられたP型の拡散層からなる電極分離層41〜44と、両端の電極31及び35の外側にそれぞれ設けられたP型の拡散層からなる付加層51及び52とを備えて構成されている。
【0018】
電極31〜35は、互いに略同一形状を有しており、また、間隔S1を置いて設けられている。
電極分離層41〜44は、電極31〜35の各電極間にそれぞれ設けられ、電極31〜35をそれぞれ分離している。また、電極分離層41〜44は、互いに略同一形状を有しており、間隔S2を置いて設けられている。
【0019】
付加層51及び52は、電極31〜35のうち、両端に位置する電極31と35の外側に、上記直線上にそれぞれ設けられており、電極分離層41〜44と略同一構造を有している。さらに、付加層51は、電極31に隣接する電極分離層41から間隔S2を置いて配置され、付加層52は、電極35に隣接する電極分離層44から間隔S2を置いて配置されている。
【0020】
以上のように、本実施形態によれば、電極31〜35のそれぞれは、その両側に、電極分離層と電極分離層、あるいは電極分離層と付加層が配置された状態となる。そして、電極分離層と付加層が全て略同一の構造であることから、電極31〜35のそれぞれは、その両側に位置する電極分離層、及び電極分離層又は付加層を含めた構成がいずれも同様の構成C0(
図1(b)参照)となる。
【0021】
これにより、スピニングカレントによって、電流を流す方向を変えたり、電流を流す場所を変えたときでも、電流経路の形状の同一性及び対称性を確保することができる。したがって、スピニングカレントにより、オフセット電圧を効果的に除去することが可能となる。
【0022】
また、本例の縦型ホール素子100においては、電極31〜35、電極分離層41〜44及び付加層51、52が並べられた上記直線の延在方向において、素子分離拡散層70の付加層51に隣接する内側面71と付加層51、及び素子分離拡散層70の付加層52に隣接する内側面72と付加層52は、いずれも間隔を置いておらず、それぞれが互いに接している。すなわち、いずれの間隔もゼロである。
かかる構成により、縦型ホール素子100のサイズの増加を最小限に抑えつつ、スピニングカレントによるオフセットキャンセルを効果的に行うことが可能となる。
【0023】
なお、本実施形態においては、N型半導体層20の表面の電極31〜35が設けられている領域を除く領域を覆うように、絶縁膜として、例えばSiO
2膜60が設けられている。これにより、N型半導体層20の表面において、半導体基板10と平行に流れる電流を抑制することができる。
【0024】
N型半導体層20は、磁気感度を高くするためには不純物の濃度分布が一定であることが好ましく、エピタキシャル成長にて形成することができる。また、N型半導体層20の厚さは、同じく磁気感度を高くするためには厚いほど好ましく、例えば、6μm以上であることが望ましい。
【0025】
素子分離拡散層70は、N型半導体層20の底よりも深く、P型の半導体基板10に達するように形成されている。これにより、縦型ホール素子100を半導体基板10上の他の領域(図示せず)から電気的に分離している。P型素子分離拡散層70によって縦型ホール素子100と電気的に分離された半導体基板10上の他の領域(図示せず)には、縦型ホール素子100からの出力信号を処理する、あるいは縦型ホール素子100へ信号を供給するための回路を構成するトランジスタ等の素子が設けられる。
【0026】
電極分離層41〜44及び付加層51、52は、例えば、N型半導体層20内にP型の不純物を選択的に拡散することにより同時に形成される。
電極31〜35は、例えば、電極分離層41〜44及び付加層51、52の形成後に、電極分離層41〜44及び付加層51、52上を覆い、電極31〜35を形成する領域を残すようにSiO
2膜60を例えばLOCOS法により形成し、これをマスクとしてN型不純物を導入することにより形成される。このとき、電極31〜35の深さは、電極分離層41〜44及び付加層51、52の深さと同等か、より浅くなるように形成される。
【0027】
ここで、本実施形態の縦型ホール素子100において、スピニングカレントによりオフセット電圧を除去する方法について、以下に説明する。
図1を参照して、まず、電極31、33及び35を制御電流供給電極として、電極33から電極31及び35へ電流を流したときに、電極32及び34をホール電圧出力電極とし、電極32と電極34との間の電圧を出力電圧Vout1として得る。また、電流を流す方向を逆方向にする、すなわち、電極31及び35から電極33へ電流を流した時の電極32と電極34との間の電圧を出力電圧Vout2として得る。
【0028】
さらに、制御電流供給電極とホール電圧出力電極を入れ替えて、電極32から電極34へ電流を流したときに、電極33と電極31及び35との間の電圧を出力電圧Vout3として得る。また、電流を流す方向を逆方向にする、すなわち、電極34から電極32へ電流を流したときに電極33と電極31及び35との間の電圧を出力電圧Vout4として得る。
【0029】
そして、これらの出力電圧Vout1〜Vout4を加減算することにより、オフセット電圧を除去することができる。
このように、一直線上に配置された複数の電極を、交互に制御電流供給電極とホール電圧出力電極として使用できるようにし、適宜、電流を流す方向を切り替え、且つ制御電流供給電極とホール電圧出力電極との役割を入れ替えるスピニングカレントにより、オフセット電圧を除去することが可能となる。
【0030】
このとき、本実施形態によれば、制御電流供給電極として使用する電極を切り替えて電流の流れる場所を変えたときや、電流の方向を変えたときでも、電流の流れる場所や方向によって、電流経路の形状が変化することを防止することができ、電流経路の形状を略同一又は対称にすることが可能となる。
【0031】
すなわち、付加層51及び52の存在により、例えば、電極33から電極31及び35へ電流を流したときと、電極31及び35から電極33へ電流を流したときの二つの電流経路の形状対称性が確保されたり、電極33から電極35へ電流を流したときと、電極32から電極34へ電流を流したときの二つの電流経路の形状の同一性が確保が確保されることとなる。
【0032】
以上のように、本実施形態によれば、スピニングカレントによりオフセット電圧を効果的に除去することが可能な縦型ホール素子を有する半導体装置を提供することが可能となる。
【0033】
次に、第1の実施形態において、スピニングカレントによるオフセットキャンセルをさらに効果的に行うことを可能とする構成を、第1の実施形態の第2の例として、以下に説明する。
【0034】
図2(a)は、本発明の第1の実施形態の第2の例の縦型ホール素子を有する半導体装置の平面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のM−M’線に沿った断面図である。なお、
図1に示す縦型ホール素子100を有する半導体装置と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0035】
図2に示す縦型ホール素子101と
図1に示す縦型ホール素子100との相違点は、電極31〜35、電極分離層41〜44及び付加層51、52が並べられた上記直線の延在方向において、素子分離拡散層70の内側面71と付加層51との間、及び素子分離拡散層70の内側面72と付加層52との間にそれぞれ間隔S3を設けている点である。
【0036】
本例では、間隔S3は、電極31と素子分離拡散層70の内側面71との間隔及び電極35と素子分離拡散層70の内側面72との間隔が、電極31〜35の配置間隔S1と略同一になるように設定されている。
【0037】
したがって、電極31〜35のそれぞれは、その両側の電極分離層、及び電極分離層又は付加層と、さらにその両側に位置する電極の端部又は素子分離拡散層70の内側面71、72に至るまでの半導体層20を含めた構成がいずれも同様の構成C1(
図2(b)参照)となっている。
【0038】
すなわち、
図1に示す縦型ホール素子100に対して、
図2に示す縦型ホール素子101における構成C1は、例えば、中央の電極33に着目すると、
図1における電極33とその両側に位置する電極分離層42及び43とを含む構成C0の両側に、電極分離層42と電極32との間及び電極分離層43と電極34との間にそれぞれ存在する半導体層20をさらに含んだ構成となっている。
【0039】
これにより、両端の電極31及び35においても、それぞれその両側の領域を含んだ構成が、内側に配置される電極32〜34部と同様の構成C1となる。
このように、第2の例の縦型ホール素子101によれば、付加層51及び52それぞれと素子分離拡散層70との間に、各電極とそれに隣接する電極分離層との間の距離と同等の間隔で半導体層20が設けられることとなる。
【0040】
このような構成とする理由は、例えば、電極31から電極33へ電流を流した場合、電流成分の一部が電極分離層43を超えた半導体層20の領域にまで広がることがあるためである。すなわち、反対に、電極33から電極31へ電流を流した場合にも、電流成分の一部が電極分離層と同じ構造である付加層51を超えた領域にまで広がることを可能とするために付加層51と素子分離拡散層70との間にも半導体層20を配置するようにしている。このようにすることで、電流経路の形状の対称性及び同一性をより確実に確保している。同様の理由で、付加層52と素子分離拡散層70との間にも半導体層20を配置している。
【0041】
かかる構成によれば、上記第1の例の縦型ホール素子100と比べて、多少サイズが増加することになるものの、スピニングカレントによって、電流を流す方向を変えたときや、電流を流す場所を変えたときやの電流経路の形状の対称性及び同一性をより向上させることが可能となる。
【0042】
したがって、上記第1の例の縦型ホール素子100におけるスピニングカレントによるオフセットキャンセルの精度が必要な精度に満たない場合には、本例の縦型ホール素子101の構成を用いることが望ましい。
【0043】
なお、間隔S3は、本例においては、上述のとおり、電極31と素子分離拡散層70の内側面71との間隔が間隔S1と略同一になるように設定されている例を示したが、必ずしもこのような間隔としなくてもよく、本例よりも狭くしても構わない。これは、例えば、上述した電極31から電極33へ電流を流した場合に、電極分離層43を超えた半導体層20の領域にまで広がる電流成分の一部は、ごくわずかと考えられ、付加層51、52と素子分離拡散層70との間隔が狭くても、間隔がゼロである上記第1の例と比べれば、オフセットキャンセルの精度を上げることができるためである。
【0044】
さらに、間隔S3は、本例よりも広くしても問題はない。ただし、広くするほど縦型ホール素子101のサイズが増加してしまうため、本例のような間隔S3とするのが最も好ましい。
【0045】
次に、本発明の第2の実施形態について、以下に説明する。
図3(a)は、本発明の第2の実施形態の縦型ホール素子を有する半導体装置の平面図であり、
図3(b)は、
図3(a)のN−N’線に沿った断面図である。なお、
図1に示す縦型ホール素子100を有する半導体装置と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0046】
本実施形態の縦型ホール素子200を有する半導体装置は、縦型ホール素子200において、上記第1の実施形態におけるP型の拡散層からなる電極分離層41〜44と付加層51、52に代えて、トレンチに埋め込まれた絶縁膜からなる電極分離層81〜84及び付加層91、92を設けたものである。
【0047】
すなわち、電極31〜35は、間隔S1
2を置いて直線上に設けられ、電極分離層81〜84は、電極31〜35の各電極間にそれぞれ設けられ、電極31〜35をそれぞれ分離している。また、電極分離層81〜84は、互いに略同一形状を有しており、間隔S2
2を置いて設けられている。
【0048】
付加層91及び92は、電極31〜35のうち、両端に位置する電極31と35の外側に、上記直線上にそれぞれ設けられており、電極分離層81〜84と略同一構造を有している。さらに、付加層91は、電極31に隣接する電極分離層81から間隔S2
2を置いて配置され、付加層92は、電極35に隣接する電極分離層84から間隔S2
2を置いて配置されている。
【0049】
このように、本実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様、電極31〜35のそれぞれは、その両側に、電極分離層と電極分離層、あるいは電極分離層と付加層が配置された状態となる。そして、電極分離層と付加層が全て略同一の構造であることから、電極31〜35のそれぞれは、その両側に位置する電極分離層、及び電極分離層又は付加層を含めた構成がいずれも同様の構成C2(
図3(b)参照)となる。
【0050】
これにより、スピニングカレントによって、電流を流す方向や電流を流す場所を変えたときでも、電流経路の形状を略同一又は対称性にすることができる。したがって、スピニングカレントにより、オフセット電圧を効果的に除去することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態においては、上述のとおり、電極分離層81〜84及び付加層91、92がトレンチに埋め込まれた絶縁膜で構成されている。したがって、電極分離層81〜84及び付加層91、92の周囲に空乏層が形成されることがないため、電極31〜35と間隔を置かずに、それぞれと接して配置することができる。
このため、本実施形態の縦型ホール素子200によれば、縦型ホール素子200のサイズを非常に小さくすることが可能となる。
【0052】
なお、本実施形態における電極分離層81〜84及び付加層91、92は、例えば、N型半導体層20上に、電極分離層81〜84及び付加層91、92用のトレンチを形成する領域に開口を有するマスクを形成し、このマスクを用いて、半導体層20に6つのトレンチを形成し、各トレンチ内に絶縁膜(例えば、SiO
2膜)を埋め込むことにより形成される。
【0053】
電極31〜35は、電極分離層81〜84及び付加層91、92を形成した後、全面にN型不純物を導入することにより形成される。このとき、電極31〜35の深さは、電極分離層81〜84及び付加層91、92の深さと同等か、より浅くなるように形成される。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態においては、第1導電型をP型、第2導電型をN型として説明したが、導電型を入れ替えて、第1導電型をN型、第2導電型をP型としても構わない。
【0055】
また、N型半導体層20は、例えば6μm以上と厚めに形成することができ、所望の磁気感度を得ることができれば、不純物の濃度分布は必ずしも一定でなくてもよく、Nウェル等の拡散層で形成されても良い。
【0056】
さらに、半導体基板10とN型半導体層20との間に、高濃度のN型埋込層を設けても構わない。この場合、当該N型埋込層は、N型半導体層20をエピタキシャル成長により形成する前に、半導体基板10上に形成しておく。
また、上記実施形態では、電極の数は5つとしたが、スピニングカレントによるオフセットキャンセルが可能な電極数であればよいため、4つ以上の電極があればよい。