特許第6865582号(P6865582)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6865582KIR3DL2は皮膚及び非皮膚末梢T細胞リンパ腫のサブセットをそれぞれ予防及び治療するために有用なバイオマーカー及び治療標的である
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865582
(24)【登録日】2021年4月8日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】KIR3DL2は皮膚及び非皮膚末梢T細胞リンパ腫のサブセットをそれぞれ予防及び治療するために有用なバイオマーカー及び治療標的である
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20210419BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20210419BHJP
   C12N 15/117 20100101ALI20210419BHJP
【FI】
   A61K48/00
   A61P35/02
   C12N15/117ZNA
【請求項の数】1
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2016-516289(P2016-516289)
(86)(22)【出願日】2014年5月28日
(65)【公表番号】特表2016-529208(P2016-529208A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】IB2014061786
(87)【国際公開番号】WO2014191936
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2017年5月1日
【審判番号】不服2019-9881(P2019-9881/J1)
【審判請求日】2019年7月25日
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2013/061107
(32)【優先日】2013年5月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】591140123
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリク−オピトー ドゥ パリ
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE − HOPITAUX DE PARIS
(73)【特許権者】
【識別番号】509319214
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ−エスト・クレテイユ・ヴァル・ドゥ・マルヌ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS−EST CRETEIL VAL DE MARNE
(73)【特許権者】
【識別番号】508266546
【氏名又は名称】ユニベルシテ パリ ディドロ−パリ 7
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS DIDEROT−PARIS 7
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ゴーラール,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】オルトンヌ,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】マリー−カルディーヌ,アンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ベンスーサン,アルマン
【合議体】
【審判長】 森井 隆信
【審判官】 田村 聖子
【審判官】 山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/081890号
【文献】 特表2004−528824号公報
【文献】 国際公開第2010/053580号
【文献】 特開2003−286174号公報
【文献】 Blood,2010,Vol.116,No.10,pp.1637−1647
【文献】 J.Immunol.,Vol.175(2005)p.1619−1627
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00
PubMed
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号5の配列のCpG ODN−A、配列番号6の配列のCpG ODN−B、配列番号7の配列のCpG ODN−C及び配列番号8の配列のGpC ODNを含む群より選択されるオリゴデオキシヌクレオチドを有効成分として含む、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択されるKIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫をアポトーシスにより死滅させることによって、当該KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫を予防及び/又は治療するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、T細胞リンパ腫の診断又は治療的処置の分野に関する。
【0002】
発明の背景
末梢T細胞リンパ腫(PTCL)は、進行性の臨床経過及び現在の処置戦略で大部分は転帰不良によって特徴付けられる、不均質で珍しい非ホジキン腫瘍疾患である。
【0003】
最も差し迫った困難の1つは、細胞標的化学療法、放射線療法及び/又は骨髄移植などの最も適応した処置を患者に提供するために、これらの疾患を適正に分類することである。
【0004】
臨床症状及び遺伝子発現プロファイルを考慮して、PTCL疾患を分類するためのいくつかの試みが過去に行われている。
【0005】
今日、世界保健機関は、(i)播種性リンパ腫;(ii)皮膚リンパ腫;(iii)節性非皮膚リンパ腫;及び(iv)節外性非皮膚リンパ腫などの、国際疾病分類−腫瘍学(ICDO、第3版)に登録されているようなPTCLのいくつかのサブタイプを認知している。
【0006】
皮膚PTCLの中で、セザリー症候群及び形質転換菌状息肉症が最も高頻度に見られる皮膚T細胞リンパ腫である。セザリー症候群は、紅皮症、リンパ節腫大及びセザリー細胞と呼ばれるかなりの数の悪性リンパ球の存在を招く、広範な皮膚波及を伴う進行性の臨床挙動を提示する。逆に、菌状息肉症は、緩徐進行性の臨床挙動を提示するが、約10%の患者で本疾患は、大T細胞リンパ腫(「形質転換菌状息肉症」)に進行し、時にリンパ節又は内臓波及を伴う大型の皮膚の、しばしば潰瘍化した皮膚腫瘍を招く。
【0007】
目下、セザリー症候群及び形質転換菌状息肉症のための治癒法はないものの、患者の生活を改善するために、いくつかの一時緩和のアプローチを採ることができる。例えば、これらのアプローチは:
− 局所コルチコステロイド、イミキモド、レチノイドであるベキサロテン、インターフェロン−α、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDACi、例えばボリノスタット及びロミデプシン)、経口メトトレキサート、デニロイキンジフチトクス(インターロイキン−2とジフテリア毒素とが結合した抗悪性腫瘍薬)、プロテアソーム阻害剤、免疫調節薬(レナリドミド)を含む薬物療法及び化学療法;
− UVB光線療法を含む光線療法;
− ソラレン+紫外線A(PUVA)を含む光線力学的療法;
− 放射線療法;
− 全身電子線照射療法(TSEB);
− 体外循環式光化学療法(ECP);
− 自家幹細胞移植;
− 同種幹細胞移植
を含む。
【0008】
主に、正常な非病原細胞によって耐え抜かれ、そのような処置の患者の利益に影響するおそれがある副作用のせいで、これらのアプローチの大部分は、限界を提示している。
【0009】
したがって、ターゲット療法の必要性がある。この概念は、アレムツズマブ、すなわち、成熟リンパ球、単球及び樹状細胞の表面に見られるペプチドであるCD52に対するモノクローナル抗体を使用することによって最近実行されている(Lundin et al. Phase 2 study of alemtuzumab (anti-CD52 monoclonal antibody) in patients with advanced mycosis fungoides/Sezary syndrome. Blood. 2003 Jun 1; 101(11):4267-72)。
【0010】
以前の研究から、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤チロホスチンAG490、並びにククルビタシンI又はクルクミンを用いたセザリー細胞の処置が、ホスホ−STAT3の脱リン酸化を効率的に促進し、セザリー細胞のアポトーシスを誘導することが実証された(Eriksen et al. Constitutive STAT3-activation in Sezary syndrome: tyrphostin AG490 inhibits STAT3-activation, interleukin-2 receptor expression and growth of leukemic Sezary cells. Leukemia. 2001; 15:787-793; van Kester et al. Cucurbitacin I inhibits Stat3 and induces apoptosis in Sezary cells. J Invest Dermatol. 2008; 128:1691-1695; Zhang et al. Curcumin selectively induces apoptosis in cutaneous T-cell lymphoma cell lines and patients' PBMCs: potential role for STAT-3 and NF-kappaB signaling. J Invest Dermatol. 2010;130:2110-2119)。
【0011】
セザリー症候群の一部の生理学的態様に関して、特に、当技術分野においてセザリーの個体において関連し得るバイオマーカーのうち、4つのバイオマーカーの組み合わせが特に関心対象であることが示されている。それは、PSL3、TWIST、KIR3DL2及びNKp46がセザリーの個体及び形質転換菌状息肉症の個体からのT細胞中に過剰発現されることが示されたからである(Michel et al. Combination of PSL3, Twist, CD158/KIR3DL2 and NKp46 gene expression for the diagnosis of syndrome. J Invest Dermatol. 2012; 132(2), page S50)。
【0012】
しかし、KIR3DL2が、セザリー症候群及び形質転換菌状息肉症に関連するバイオマーカーと見なされるべきであるかどうか紛らわしいデータがある。
【0013】
実際、Bagotら(CD4(+) cutaneous T-cell lymphoma cells express the p140-killer cell immunoglobulin-like receptor. Blood. 2001 Mar 1; 97(5):1388-91)、Poszepczynska-Guigneら(CD158k/KIR3DL2 is a new phenotypic marker of Sezary cells: relevance for the diagnosis and follow-up of Sezary syndrome. J Invest Dermatol. 2004 Mar; 122(3):820-3)及びOrtonneら(CD158k/KIR3DL2 and NKp46 are frequently expressed in transformed mycosis fungoides. Exp Dermatol. 2012 Jun; 21(6):461-3)は、セザリー症候群又は形質転換菌状息肉症を有する患者からのT細胞の表面にKIR3DL2が過剰発現していることを報告した。
【0014】
上記研究と完全に矛盾して、定量RT−PCRによってKIR3DL2のmRNAレベルを測定することによって判定した場合、セザリー細胞においてKIR3DL2の発現がダウンレギュレーションされていることも当技術分野において見出された(国際公開公報第2007/071829号参照)。
【0015】
Bookenら(Sezary syndrome is a unique cutaneous T-cell lymphoma as identified by an expanded gene signature including diagnostic marker molecules CDO1 and DNM3. Leukemia. 2008 (22), 393-399)は、KIR3DL2がセザリー症候群を有する患者の部分集団だけに発現されることを報告した。
【0016】
加えて、Iqbalら(Molecular signature to improve diagnosis in peripheral T-cell lymphoma and prognostication in angioimmunoblastic T-cell lymphoma; Blood, 2010, 115(5):1026-36)は、PTCLの「非特定型」サブセット(PTCL/NOS)についての推定上のバイオマーカーとしてKIR3DL2を報告したが、セザリー症候群及び形質転換菌状息肉症などの皮膚リンパ腫については言及しないままであった。
【0017】
最後に、Nebozhynら(Quantitative PCR on 5 genes reliably identifies CTCL patients with 5% to 99% circulating tumor cells with 90% accuracy. Blood. 2006 Apr 15;107(8):3189-96)は、5つの信頼できるバイオマーカー、すなわちSTAT4、GATA−3、PLS3、CD1D、及びTRAILのセットを示唆し、したがって、KIR3DL2をセザリー症候群の診断のための価値のあるバイオマーカーであることから排除した。
【0018】
Obamaら(Killer cell immunoglobulin-like receptor/3DL2 expression in adult T-cell leukaemia. Br J Haematol. 2007 Sep; 138(5):666-7)に開示されたように、成人T細胞白血病(ATCL)と診断された患者からの一部のT細胞の表面にもKIR3DL2が過剰発現されていることが見出されたことに留意すべきである。しかし、この研究によると、KIR3DL2は、ATCLに対する高度に特異的なバイオマーカーではないと考えられる。
【0019】
キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)は、MHCクラスI分子を特異的に認識するためにヒトナチュラルキラー(NK)細胞及びTリンパ球サブセットによって使用される受容体ファミリーに相当する。
【0020】
KIR3DL2は、3つの免疫グロブリン様ドメイン及び長い細胞質尾部を表しているKIR受容体ファミリーに属する。
【0021】
KIR3DL2に結合するモノクローナル抗体が、KIR3DL2を発現している悪性T細胞に対する抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)を誘発することができるので、KIR3DL2は、標的療法の候補であると報告されている(国際公開公報第2010/081890号)。
【0022】
さらに、Sivoriら(A novel KIR-associated function: evidence that CpG DNA uptake and shuttling to early endosomes is mediated by KIR3DL2; Blood, 2010, 116(10):1637-1647)は、NK細胞(ナチュラルキラー)を処置するため、及び多様なサイトカインを産生及び放出するようにNK細胞を誘導するためのCpGオリゴデオキシヌクレオシドの使用を開示している。
【0023】
当技術分野において、T細胞リンパ腫に対する新規な治療戦略及びこれらの疾患を診断するための信頼できるツールの必要性がある。
【0024】
発明の概要
第一の態様では、本発明は、セザリー症候群、形質転換菌状息肉症、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択されるKIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫の予防及び/又は治療のための、KIR3DL2に特異的に結合するリガンド分子を記載する。
【0025】
一態様では、本発明は、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択されるKIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫の予防及び/又は治療のための、KIR3DL2に特異的に結合するリガンド分子に関する。
【0026】
別の態様では、本発明は、セザリー症候群、形質転換菌状息肉症、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択されるKIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫の予防及び/又は治療のための、本発明において同義のリガンド分子及び薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物を記載する。
【0027】
一態様では、本発明は、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択されるKIR3DL2発現性悪性T細胞リンパ腫の予防及び/又は治療のための、本発明において同義のリガンド分子及び薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物に関する。
【0028】
本発明の別の態様は、KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫を処置することを必要とする個体における該処置のための方法であって、KIR3DL2に特異的に結合するリガンド分子を個体に投与することを含む方法を記載し、その際、該リンパ腫は、形質転換菌状息肉症、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択される。
【0029】
本発明の別の態様は、KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫を処置することを必要とする個体における該処置のための方法であって、KIR3DL2に特異的に結合するリガンド分子を個体に投与することを含む方法に関し、その際、該リンパ腫は、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択される。
【0030】
本発明の別の態様では、KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫を処置することを必要とする個体における該処置のための方法であって、KIR3DL2に特異的に結合するリガンド分子及び薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物を個体に投与することを含む方法に関し、その際、該リンパ腫は、形質転換菌状息肉症、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫、好ましくは皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択される。
【0031】
本発明のなおさらなる態様は、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択されるリンパ腫を診断及び/又は監視するためのバイオマーカーとしての、KIR3DL2の発現レベルのインビトロの使用に関する。
【0032】
別の態様では、本発明は、KIR3DL2の発現レベルを定量する少なくとも1つの段階を含む、個体におけるリンパ腫を診断及び/又は監視するためのインビトロの方法であって、該リンパ腫は、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択される方法に関する。
【0033】
別の態様では、本発明は、また、リンパ腫に対する処置を必要とする個体における治療剤を用いた該処置の有効性を監視するための方法であって:
(i)治療剤の投与前に個体から投与前の生物学的試料を提供する段階;
(ii)投与前の生物学的試料中からKIR3DL2の発現レベルを測定する段階;
(iii)個体から1つ以上の投与後の生物学的試料を提供する段階;
(iv)投与後の生物学的試料中からKIR3DL2の発現レベルを測定する段階;
(v)投与前の生物学的試料について測定されたKIR3DL2の発現レベルを、1つ以上の投与後の生物学的試料について測定されたKIR3DL2の発現レベルと比較する段階;及び
(vi)それに応じて個体への治療剤の投与を変更する段階
を含む方法に関し、その際、リンパ腫は、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択される。
【0034】
さらなる一態様では、本発明は、リンパ腫に対する処置を必要とする個体における治療剤を用いた該処置の有効性を監視するための方法であって:
(i)治療剤の投与前に個体から投与前の生物学的試料を提供する段階;
(ii)投与前の生物学的試料中のKIR3DL2/KIR3DL1の発現レベル比を測定する段階;
(iii)個体から1つ以上の投与後の生物学的試料を提供する段階;
(iv)投与後の生物学的試料中からKIR3DL2/KIR3DL1の発現レベル比を測定する段階;
(v)投与前の生物学的試料中のKIR3DL2/KIR3DL1の発現レベル比を、1つ以上の投与後の生物学的試料中のKIR3DL2/KIR3DL1の発現レベル比と比較する段階;及び
(vi)それに応じて個体への治療剤の投与を変更する段階
を含む方法に関し、その際、該リンパ腫は、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫、及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択される。
【0035】
別の態様では、本発明は、また、リンパ腫に対する処置を、それを必要とする個体において適応させるための方法であって、少なくとも:
a)個体から収集された少なくとも1つの生物学的試料に、本発明によるインビトロの診断方法を行う段階;及び
b)個体に適切な治療法を施すことによって個体のリンパ腫に対する処置を適応させる段階
を含む方法に関し、
その際、リンパ腫は、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択される。
【0036】
本発明の別の態様は、KIR3DL2の発現レベルに影響する化合物候補をスクリーニングするための方法であって:
a)KIR3DL2を発現できる少なくとも1つのT細胞を提供する段階;
b)段階a)で提供された少なくとも1つのT細胞によるKIR3DL2の発現レベルを測定することによって、第1のKIR3DL2発現値が得られる段階;
c)少なくとも1つのKIR3DL2発現T細胞を被験候補化合物と共にインキュベートする段階;
d)段階c)の少なくとも1つのKIR3DL2発現T細胞によるKIR3DL2の発現レベルを測定することによって、第2のKIR3DL2発現値が得られる段階;
e)第1のKIR3DL2発現値を第2のKIR3DL2発現値と比較する段階;及び
f)第2のKIR3DL2発現値が第1のKIR3DL2発現値よりも低いとき、候補化合物を選択する段階
を含む方法に関する。
【0037】
本発明のさらなる一態様は、KIR3DL2の生物学的活性に影響する候補化合物のスクリーニングのための方法であって:
a)KIR3DL2を発現できる少なくとも1つのT細胞を提供する段階;
b)段階a)で提供された少なくとも1つのT細胞中からKIR3DL2の生物学的活性を測定することによって、第1の活性値が得られる段階;
c)KIR3DL2発現T細胞を被験候補化合物と共にインキュベートする段階;
d)段階b)の終わりに得られたKIR3DL2発現T細胞中からKIR3DL2の生物学的活性を測定することによって、第2の活性値が得られる段階;
e)第1の活性値を第2の活性値と比較する段階
を含む方法に関する。
【0038】
最終的に、本発明の別の態様は、KIR3DL2の発現レベル又はKIR3DL1及びKIR3DL2の発現レベルを定量するための手段を含む、個体におけるリンパ腫を診断及び/又は監視するためのキットであって、該リンパ腫は、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択されるキットに関する。
【0039】
本発明は、皮膚リンパ腫並びに節性及び節外性非皮膚リンパ腫のサブセットを診断及び/又は監視するために簡単で、対費用効果が高く、信頼できるアッセイ法を提供する利点を有する。
【0040】
その利点のもう1つによると、本発明は、皮膚リンパ腫並びに節性及び節外性非皮膚リンパ腫のサブセットを予防及び/若しくは治療するために有効であると推定される治療的処置を監視すること、又は皮膚リンパ腫並びに節性及び節外性非皮膚リンパ腫のサブセットを予防及び/若しくは治療するために有効と推定される薬物候補をスクリーニングすることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】皮膚PTCLのサブセットの組織試料中のKIR3DL2タンパク質の発現。RT−PCR研究によってKIR3DL2に比べてKIR3DL1転写物の無発現又は非常に低い発現が示されたので、本発明者らは、KIR3DL2及びKIR3DL1の両方と特異的に反応する、5.133クローン(Miltenyi-Biotec)からの抗体を用いて得られた標識はKIR3DL2を実際に特定したと想定している。(A)及び(B)。抗KIR3DL2モノクローナル抗体で標識された、密な腫瘍性浸潤(A)又は軽微な血管周囲の浸潤(B)を伴う、PHRC KIRからのセザリー症候群の試料は、両方共バックグラウンド標識なしで膜陽性を示す。Aに表皮向性腫瘍細胞を特定することができる(矢尻印)。(C)及び(D)。形質転換菌状息肉症(MF)の1症例は、表皮内の表皮向性腫瘍細胞(Ep、矢尻印)を含む、KIR3DL2の強い膜発現を示した。(E)及び(F)。原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫(CTCL)は、真皮及び表皮向性細胞(矢尻印)の両方において腫瘍細胞によるKIR3DL2のびまん性発現を示した。(G)及び(H)。皮下「脂肪織炎様」T細胞リンパ腫(TCL)は、分散したKIR3DL2+細胞を示した。染色された細胞の一部は、腫瘍細胞が通常局在する脂肪細胞の近傍にあるが、染色は不均一である。本来の倍率:A、B、D、F、G及びH:×200;C及びE:×100。
図2】非皮膚PTCLのサブセットの組織試料におけるKIR3DL2発現。この群ではKIR3DL1転写物に関するデータは利用できないが、トランスクリプトーム解析を用いたKIR3DL2転写物の検出と5.133モノクローナル抗体を用いた標識との間の相関関係は、KIR3DL2だけが腫瘍性T細胞の表面で実際に標識されたことを示唆している。(A)及び(B)。末梢T細胞リンパ腫−非特定型(PTCL/NOS)は、KIR3DL2の有意な発現を示さず、分散しているだけの陽性細胞は、反応性CD8+エフェクターT細胞及び/又はナチュラルキラー細胞(矢尻印)に対応し得る。(C)及び(D)。腸管症関連T細胞リンパ腫(EATL)は、びまん性で強いKIR3DL2陽性を示した。内皮(矢印)にも周皮細胞にも標識化を示さない腫瘍内血管が見られる(V)。(E)及び(F)。成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)は、KIR3DL2の強いびまん性発現を示した。前述の場合と同様、陰性対照として採用された腫瘍内血管は染色されていない(陰性の内皮細胞、矢印)。(G)及び(H)。肝脾T細胞リンパ腫(HSTL)はKIR3DL2のびまん性発現を示した。本来の倍率:A、B、E、G及びH:×200;D及びF:×100。
図3】肝脾T細胞リンパ腫(HSTL)におけるKIR3DL2転写物の発現。このグラフでは、免疫組織化学検査を使用してKIR3DL1/2について陽性であることが示された、PHRC TENOMIC群からの肝脾T細胞リンパ腫(HSTL)、腸管症関連T細胞リンパ腫(EATL)及び成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)の試料(灰色)並びに全てのHSTL及び血管免疫芽球T細胞リンパ腫(AITL)の試料(白)中のKIR3DL2 mRNAの相対レベルを示す。
図4A】CpG ODN−C処置に対する腫瘍性セザリー細胞上のKIR3DL2発現のダウンモジュレーション。(A)セザリー患者からの末梢血単核細胞(PBMC)を未処置のままとするか、又はCpG ODN−C(10g/ml)若しくはAZ158 mAb(2μg/ml)の存在下でインキュベートした。24時間インキュベーション後に、細胞を抗KIR3DL2 mAb(Q66)+FITCコンジュゲーション型ヤギ抗マウスIgM二次抗体、抗TCRV−PEmAb、抗CD3−PC5 mAb及びCD4−PC7 mAbで標識した。ゲート通過したCD3+CD4+Tリンパ球集団に対応するTCRVβ/KIR3DL2の染色を示す。KIR3DL2標識の平均蛍光強度(MFI)を示す。(B)CpG ODN−C、対照(Ctrl)ODN又はAZ158 mAbと共にインキュベーション後に、セザリー患者(n=12)からのCD3+CD4+細胞上に観察されたKIR3DL2のMFIのグラフ表示。
図4B】CpG ODN−C処置に対する腫瘍性セザリー細胞上のKIR3DL2発現のダウンモジュレーション。(A)セザリー患者からの末梢血単核細胞(PBMC)を未処置のままとするか、又はCpG ODN−C(10g/ml)若しくはAZ158 mAb(2μg/ml)の存在下でインキュベートした。24時間インキュベーション後に、細胞を抗KIR3DL2 mAb(Q66)+FITCコンジュゲーション型ヤギ抗マウスIgM二次抗体、抗TCRV−PEmAb、抗CD3−PC5 mAb及びCD4−PC7 mAbで標識した。ゲート通過したCD3+CD4+Tリンパ球集団に対応するTCRVβ/KIR3DL2の染色を示す。KIR3DL2標識の平均蛍光強度(MFI)を示す。(B)CpG ODN−C、対照(Ctrl)ODN又はAZ158 mAbと共にインキュベーション後に、セザリー患者(n=12)からのCD3+CD4+細胞上に観察されたKIR3DL2のMFIのグラフ表示。
図5A】CpG ODN−CではなくAZ158 mAbとのKIR3DL2の結合が、CD3誘導型増殖をダウンモジュレートし、セザリー細胞の細胞死を誘導する。(A)セザリー患者からのPBMCにカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)を前もって負荷し、さらに無処置のままとするか、又は単独若しくは表示のように組み合わせた抗CD3 mAb、AZ158 mAb若しくはCpG ODN−Cと共にインキュベートした。4日培養後、細胞を収集し、フローサイトメトリー分析に供した。ゲート通過したTCRVβ3+CD4+腫瘍T細胞クローンのCFSE染色を示す。(B)細胞の処置を(A)と同様に行った。抗TCRV3−PE mAb及び抗CD4−FITC mAb並びに7AADを使用して免疫標識を行った。TCRV3+CD4+腫瘍細胞内の早期(7AADlow)及び後期(7AADhigh)アポトーシス細胞を示す。(A)及び(B)に示された結果は、セザリー患者4人で行われた実験を代表するものである。(C)新鮮単離されたセザリー症候群細胞を、表示のように抗CD3 mAb及び/又はAZ158 mAbと共にインキュベーションした。アイソタイプが一致する対照mAb(抗CD16)を使用して、各条件に使用された抗体の量を等しくした。休止条件(NT)を除いて、ヤギ抗マウスIgの添加によって架橋形成が誘発された。溶解後、抗体標的分子を収集し、生じた免疫沈降物を電気泳動及びウエスタンブロッティング手順に供した。免疫ブロットを抗ホスホ−CD3 mAbで明らかにし(上欄)、脱ハイブリダイゼーション後に抗CD3 mAbを使用して再探索して効率的な免疫沈降であることを判定した(下欄)。(D)セザリー患者のCD4+T細胞を、抗CD3単独で、又はAZ158 mAb若しくはCpG ODN−Cと一緒に活性化し、溶解に供した。核除去後の溶解物を調製し、SDS−10%PAGEにより分離し、抗ホスホ−Erk mAbを使用するウエスタンブロットによって分析した。ストリッピングし、抗Erk1/2抗体を用いた再探査後に試料の負荷が等しいことを判定した。
図5B】CpG ODN−CではなくAZ158 mAbとのKIR3DL2の結合が、CD3誘導型増殖をダウンモジュレートし、セザリー細胞の細胞死を誘導する。(A)セザリー患者からのPBMCにカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)を前もって負荷し、さらに無処置のままとするか、又は単独若しくは表示のように組み合わせた抗CD3 mAb、AZ158 mAb若しくはCpG ODN−Cと共にインキュベートした。4日培養後、細胞を収集し、フローサイトメトリー分析に供した。ゲート通過したTCRVβ3+CD4+腫瘍T細胞クローンのCFSE染色を示す。(B)細胞の処置を(A)と同様に行った。抗TCRV3−PE mAb及び抗CD4−FITC mAb並びに7AADを使用して免疫標識を行った。TCRV3+CD4+腫瘍細胞内の早期(7AADlow)及び後期(7AADhigh)アポトーシス細胞を示す。(A)及び(B)に示された結果は、セザリー患者4人で行われた実験を代表するものである。(C)新鮮単離されたセザリー症候群細胞を、表示のように抗CD3 mAb及び/又はAZ158 mAbと共にインキュベーションした。アイソタイプが一致する対照mAb(抗CD16)を使用して、各条件に使用された抗体の量を等しくした。休止条件(NT)を除いて、ヤギ抗マウスIgの添加によって架橋形成が誘発された。溶解後、抗体標的分子を収集し、生じた免疫沈降物を電気泳動及びウエスタンブロッティング手順に供した。免疫ブロットを抗ホスホ−CD3 mAbで明らかにし(上欄)、脱ハイブリダイゼーション後に抗CD3 mAbを使用して再探索して効率的な免疫沈降であることを判定した(下欄)。(D)セザリー患者のCD4+T細胞を、抗CD3単独で、又はAZ158 mAb若しくはCpG ODN−Cと一緒に活性化し、溶解に供した。核除去後の溶解物を調製し、SDS−10%PAGEにより分離し、抗ホスホ−Erk mAbを使用するウエスタンブロットによって分析した。ストリッピングし、抗Erk1/2抗体を用いた再探査後に試料の負荷が等しいことを判定した。
図5C】CpG ODN−CではなくAZ158 mAbとのKIR3DL2の結合が、CD3誘導型増殖をダウンモジュレートし、セザリー細胞の細胞死を誘導する。(A)セザリー患者からのPBMCにカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)を前もって負荷し、さらに無処置のままとするか、又は単独若しくは表示のように組み合わせた抗CD3 mAb、AZ158 mAb若しくはCpG ODN−Cと共にインキュベートした。4日培養後、細胞を収集し、フローサイトメトリー分析に供した。ゲート通過したTCRVβ3+CD4+腫瘍T細胞クローンのCFSE染色を示す。(B)細胞の処置を(A)と同様に行った。抗TCRV3−PE mAb及び抗CD4−FITC mAb並びに7AADを使用して免疫標識を行った。TCRV3+CD4+腫瘍細胞内の早期(7AADlow)及び後期(7AADhigh)アポトーシス細胞を示す。(A)及び(B)に示された結果は、セザリー患者4人で行われた実験を代表するものである。(C)新鮮単離されたセザリー症候群細胞を、表示のように抗CD3 mAb及び/又はAZ158 mAbと共にインキュベーションした。アイソタイプが一致する対照mAb(抗CD16)を使用して、各条件に使用された抗体の量を等しくした。休止条件(NT)を除いて、ヤギ抗マウスIgの添加によって架橋形成が誘発された。溶解後、抗体標的分子を収集し、生じた免疫沈降物を電気泳動及びウエスタンブロッティング手順に供した。免疫ブロットを抗ホスホ−CD3 mAbで明らかにし(上欄)、脱ハイブリダイゼーション後に抗CD3 mAbを使用して再探索して効率的な免疫沈降であることを判定した(下欄)。(D)セザリー患者のCD4+T細胞を、抗CD3単独で、又はAZ158 mAb若しくはCpG ODN−Cと一緒に活性化し、溶解に供した。核除去後の溶解物を調製し、SDS−10%PAGEにより分離し、抗ホスホ−Erk mAbを使用するウエスタンブロットによって分析した。ストリッピングし、抗Erk1/2抗体を用いた再探査後に試料の負荷が等しいことを判定した。
図5D】CpG ODN−CではなくAZ158 mAbとのKIR3DL2の結合が、CD3誘導型増殖をダウンモジュレートし、セザリー細胞の細胞死を誘導する。(A)セザリー患者からのPBMCにカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)を前もって負荷し、さらに無処置のままとするか、又は単独若しくは表示のように組み合わせた抗CD3 mAb、AZ158 mAb若しくはCpG ODN−Cと共にインキュベートした。4日培養後、細胞を収集し、フローサイトメトリー分析に供した。ゲート通過したTCRVβ3+CD4+腫瘍T細胞クローンのCFSE染色を示す。(B)細胞の処置を(A)と同様に行った。抗TCRV3−PE mAb及び抗CD4−FITC mAb並びに7AADを使用して免疫標識を行った。TCRV3+CD4+腫瘍細胞内の早期(7AADlow)及び後期(7AADhigh)アポトーシス細胞を示す。(A)及び(B)に示された結果は、セザリー患者4人で行われた実験を代表するものである。(C)新鮮単離されたセザリー症候群細胞を、表示のように抗CD3 mAb及び/又はAZ158 mAbと共にインキュベーションした。アイソタイプが一致する対照mAb(抗CD16)を使用して、各条件に使用された抗体の量を等しくした。休止条件(NT)を除いて、ヤギ抗マウスIgの添加によって架橋形成が誘発された。溶解後、抗体標的分子を収集し、生じた免疫沈降物を電気泳動及びウエスタンブロッティング手順に供した。免疫ブロットを抗ホスホ−CD3 mAbで明らかにし(上欄)、脱ハイブリダイゼーション後に抗CD3 mAbを使用して再探索して効率的な免疫沈降であることを判定した(下欄)。(D)セザリー患者のCD4+T細胞を、抗CD3単独で、又はAZ158 mAb若しくはCpG ODN−Cと一緒に活性化し、溶解に供した。核除去後の溶解物を調製し、SDS−10%PAGEにより分離し、抗ホスホ−Erk mAbを使用するウエスタンブロットによって分析した。ストリッピングし、抗Erk1/2抗体を用いた再探査後に試料の負荷が等しいことを判定した。
図6A】CpG ODN−Cは悪性セザリー細胞のアポトーシスを誘導する。(A)セザリー患者のPBMCをCpG ODN−C、AZ158 mAb又は対照ODNと共に37℃で7日間インキュベートした。アポトーシス性TCRVβ+CD4+腫瘍T細胞の検出のための染色を、図5Bの脚注に記載のように行った。(B)CpG ODN−C又は対照ODN(Ctrl)と共にインキュベーション後のセザリー患者(n=8)のTCRV+CD4+集団内の早期(7AADlow)及び後期(7AADhigh)アポトーシス細胞の率(%)のグラフ表示。(C)セザリー細胞系をCpG ODN−Cと共に表示時間インキュベートした。核除去後の溶解物を調製し、SDS−PAGE及び免疫ブロッティングのために処理した。ブロットを抗切断済みカスパーゼ7抗体、抗切断済みカスパーゼ3抗体、抗切断済みPARP抗体及びErk1/2抗体で連続的に探査した。
図6B】CpG ODN−Cは悪性セザリー細胞のアポトーシスを誘導する。(A)セザリー患者のPBMCをCpG ODN−C、AZ158 mAb又は対照ODNと共に37℃で7日間インキュベートした。アポトーシス性TCRVβ+CD4+腫瘍T細胞の検出のための染色を、図5Bの脚注に記載のように行った。(B)CpG ODN−C又は対照ODN(Ctrl)と共にインキュベーション後のセザリー患者(n=8)のTCRV+CD4+集団内の早期(7AADlow)及び後期(7AADhigh)アポトーシス細胞の率(%)のグラフ表示。(C)セザリー細胞系をCpG ODN−Cと共に表示時間インキュベートした。核除去後の溶解物を調製し、SDS−PAGE及び免疫ブロッティングのために処理した。ブロットを抗切断済みカスパーゼ7抗体、抗切断済みカスパーゼ3抗体、抗切断済みPARP抗体及びErk1/2抗体で連続的に探査した。
図6C】CpG ODN−Cは悪性セザリー細胞のアポトーシスを誘導する。(A)セザリー患者のPBMCをCpG ODN−C、AZ158 mAb又は対照ODNと共に37℃で7日間インキュベートした。アポトーシス性TCRVβ+CD4+腫瘍T細胞の検出のための染色を、図5Bの脚注に記載のように行った。(B)CpG ODN−C又は対照ODN(Ctrl)と共にインキュベーション後のセザリー患者(n=8)のTCRV+CD4+集団内の早期(7AADlow)及び後期(7AADhigh)アポトーシス細胞の率(%)のグラフ表示。(C)セザリー細胞系をCpG ODN−Cと共に表示時間インキュベートした。核除去後の溶解物を調製し、SDS−PAGE及び免疫ブロッティングのために処理した。ブロットを抗切断済みカスパーゼ7抗体、抗切断済みカスパーゼ3抗体、抗切断済みPARP抗体及びErk1/2抗体で連続的に探査した。
図7A】セザリー細胞のCpG ODN−C処置はSTAT3の脱リン酸化を招く。(A)セザリー細胞系をCpG ODN−Cと共に表示時間インキュベートした。細胞溶解物をゲル電気泳動に供し、ニトロセルロースメンブランに移行させた。次に、抗ホスホ−STAT3抗体を使用してブロットを明らかにし、脱ハイブリダイズし、STAT3抗体を用いて再探査した。(B)セザリー患者からの分取後のCD4+T細胞(その98%がKIR3DL2+)を培地単独又はCpG ODN−C、AZ158 mAb若しくは対照ODNを補充された培地中で37℃で24時間インキュベートした。次に、溶解物を(A)と同様に分析した。
図7B】セザリー細胞のCpG ODN−C処置はSTAT3の脱リン酸化を招く。(A)セザリー細胞系をCpG ODN−Cと共に表示時間インキュベートした。細胞溶解物をゲル電気泳動に供し、ニトロセルロースメンブランに移行させた。次に、抗ホスホ−STAT3抗体を使用してブロットを明らかにし、脱ハイブリダイズし、STAT3抗体を用いて再探査した。(B)セザリー患者からの分取後のCD4+T細胞(その98%がKIR3DL2+)を培地単独又はCpG ODN−C、AZ158 mAb若しくは対照ODNを補充された培地中で37℃で24時間インキュベートした。次に、溶解物を(A)と同様に分析した。
図8A】セザリー細胞のGpC ODN処置はアポトーシスを招く。(A)セザリー患者からのPBMCを、オリゴヌクレオチドなし(曲線1)で、又はCpG ODN−C(曲線2)、GpC(曲線3)若しくは対照ODN(曲線4)と共に37℃で7日間インキュベートした。悪性CD4T細胞(TCR Vβ1+細胞として同定)上のKIR3DL2の発現を各インキュベーション条件について判定した。(B)セザリー患者からのPBMCを、CpG ODN−C、GpC又は対照ODNと共に37℃で7日間インキュベートした。アポトーシス性TCRVβ1+CD4+腫瘍T細胞、すなわち早期(7AADlow)及び後期(7AADhigh)アポトーシス細胞の検出用の染色を、前記のように行った(図5B参照)。(C)(B)からの早期(7AADlow)及び後期(7AADhigh)アポトーシス細胞のパーセンテージを各処置タイプ毎にプロットする。
図8B】セザリー細胞のGpC ODN処置はアポトーシスを招く。(A)セザリー患者からのPBMCを、オリゴヌクレオチドなし(曲線1)で、又はCpG ODN−C(曲線2)、GpC(曲線3)若しくは対照ODN(曲線4)と共に37℃で7日間インキュベートした。悪性CD4T細胞(TCR Vβ1+細胞として同定)上のKIR3DL2の発現を各インキュベーション条件について判定した。(B)セザリー患者からのPBMCを、CpG ODN−C、GpC又は対照ODNと共に37℃で7日間インキュベートした。アポトーシス性TCRVβ1+CD4+腫瘍T細胞、すなわち早期(7AADlow)及び後期(7AADhigh)アポトーシス細胞の検出用の染色を、前記のように行った(図5B参照)。(C)(B)からの早期(7AADlow)及び後期(7AADhigh)アポトーシス細胞のパーセンテージを各処置タイプ毎にプロットする。
図8C】セザリー細胞のGpC ODN処置はアポトーシスを招く。(A)セザリー患者からのPBMCを、オリゴヌクレオチドなし(曲線1)で、又はCpG ODN−C(曲線2)、GpC(曲線3)若しくは対照ODN(曲線4)と共に37℃で7日間インキュベートした。悪性CD4T細胞(TCR Vβ1+細胞として同定)上のKIR3DL2の発現を各インキュベーション条件について判定した。(B)セザリー患者からのPBMCを、CpG ODN−C、GpC又は対照ODNと共に37℃で7日間インキュベートした。アポトーシス性TCRVβ1+CD4+腫瘍T細胞、すなわち早期(7AADlow)及び後期(7AADhigh)アポトーシス細胞の検出用の染色を、前記のように行った(図5B参照)。(C)(B)からの早期(7AADlow)及び後期(7AADhigh)アポトーシス細胞のパーセンテージを各処置タイプ毎にプロットする。
【0042】
発明の詳細な説明
当技術分野において入手可能な様々な実験データの間の高度の矛盾を考慮して、本発明者らは、最初からT細胞リンパ腫のための診断及び/又は治療ツールを提供することの実現可能性を判定する目的で実験作業を開始した。
【0043】
本発明は、セザリー症候群、形質転換菌状息肉症及び成人T細胞白血病/リンパ腫などの皮膚PTCL、並びに最も驚くことには、皮膚並びに非皮膚節性及び節外性リンパ腫の両方のサブセットを患う数人の個体からのT細胞表面にKIR3DL2が過剰発現されていることが分かったという結果に依拠している。本発明者の知るところでは、KIR3DL2は、最初は、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫及び原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫などの2つの皮膚PTCL、並びに2つの非皮膚PTCL、すなわち腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫について関連する特異的バイオマーカーとして特定することができた。
【0044】
しかし、KIR3DL2を、原発性皮膚CD30+T細胞リンパ球増殖性障害などの一部の皮膚PTCL、並びに血管免疫芽球T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫−ALK陰性及びALK陽性の両方、節外性NK/T細胞リンパ腫−鼻型及び末梢T細胞リンパ腫−非特定型などの一部の非皮膚PTCLに対する重要で関連する特異的バイオマーカーとして特定することができなかった。したがって、KIR3DL2は、これらの特異的リンパ腫を診断及び/又は監視するための関連するバイオマーカー、並びに皮膚及び非皮膚PTCL疾患の両方の確定されたサブセットの最初の選別を提供するための有利なバイオマーカーからなることが明らかとなった。
【0045】
バイオマーカーとしてのKIR3DL2
Bookenら(Sezary syndrome is a unique cutaneous T-cell lymphoma as identified by an expanded gene signature including diagnostic marker molecules CDO1 and DNM3. Leukemia. 2008 (22), 393-399)、Iqbalら(Molecular signature to improve diagnosis in peripheral T-cell lymphoma and prognostication in antioimmunoblastic T-cell lymphoma; Blood, 2010, 115(5):1026-36)からの結果及び国際公開公報第2007/071829号の教示に矛盾するが、Michelら(Combination of PSL3、Twist, CD158/KIR3DL2 and NKp46 gene expression for the diagnosis of Sezary syndrome. J Invest Dermatol. 2012; 132(2), page S50)、Bagotら(CD4(+) cutaneous T-cell lymphoma cells express the p140-killer cell immunoglobulin-like receptor. Blood. 2001 Mar 1; 97(5):1388-91)、Poszepczynska-Guigneら(CD158k/KIR3DL2 is a new phenotypic marker of Sezary cells: relevance for the diagnosis and follow-up of Sezary syndrome. J Invest Dermatol. 2004 Mar;122(3):820-3)、Ortonneら(CD158k/KIR3DL2 and NKp46 are frequently expressed in transformed mycosis fungoides. Exp Dermatol. 2012 Jun; 21(6):461-3)からの結果及び国際公開公報第02/50122号及び国際公開公報第2010/081890号の教示を考慮して、本発明者らは、セザリー症候群及び形質転換菌状息肉症からのT細胞におけるKIR3DL2の過剰発現を判定した。
【0046】
KIR3DL2発現についての陰性対照として、本発明者らの最初のアプローチは、皮膚PTCLの亜群から他のリンパ腫型を選択すると共に、非皮膚節性及び節外性PTCLの亜群からリンパ腫型を選択することであった。本発明の時点で、いくつかの研究チームによって行われた系統的バイオマーカーアプローチは、KIR3DL2の発現変化と、セザリー症候群、形質転換菌状息肉症及び成人リンパ腫を除くこれらのPTCLのいずれかの発生率との間に全く特定の相関関係を提供しなかったので、他のリンパ腫型は、悪性T細胞の表面にKIR3DL2を発現しないと想定された。
【0047】
すでに言及したように、全てのPTCLがT細胞の細胞型における変更によって特徴付けられるという事実を除き、それらの生理学的、組織学的、臨床的及び予後的特徴は、実に多様で様々であり、これは、これらの多様な疾患を分類する困難を説明している。
【0048】
例えば、上述されたセザリー症候群又は形質転換菌状息肉症以外の皮膚PTCは、以下のように区別され得る:
− 原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫は、中心部の潰瘍形成及び壊死、又は表在性で過角化性の斑及びプラークを示す局所性又は散在性の発疹状丘疹、結節又は腫瘍によって特徴付けられる進行性T細胞型リンパ腫である;
− 皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫は、稀な形式の緩徐進行性T細胞リンパ腫に相当し;患者は、多くの場合に、通常は脚に波及する孤立性又は多発性の結節及びプラークを有するのが見られ;結節及びプラークの潰瘍形成は、どちらかといえばあまり見られない。
【0049】
非皮膚PTCLに関しては:
− 成人T細胞白血病/リンパ腫は、無防備性行為、分娩、母乳哺育、輸血時に伝染し得るヒトT細胞白血病ウイルス−1に関連し、通常その予後は不良である;
− 未分化大細胞非皮膚リンパ腫は、主にリンパ節部位を冒す、希少なリンパ腫であり;それらは、「未分化リンパ腫キナーゼ」(ALK)と呼ばれるタンパク質の不在又は存在に応じて、それぞれALK陰性及びALK陽性リンパ腫に細分される。ALK陰性患者の方が、通常、積極的な処置を要する一方で、ALK陽性患者は化学療法に大いに応答性である;
− 血管免疫芽球T細胞リンパ腫はよく見られるPTCLであり、進行性の経過を見せ;それらは、主にリンパ節を冒し、皮膚、肝臓又は脾臓を冒す場合がある;
− 腸管症関連T細胞リンパ腫は、グルテン過敏症によって起こるセリアック病に有意に関連し;それらは、胃痛、体重減少、消化管出血又は腸穿孔によって特徴付けられる;
− 節外性NK/T細胞リンパ腫−鼻型は、鼻並びに鼻及び頬の奥の副鼻腔領域を冒し、皮膚、消化管及び精巣も冒す場合があり;これらリンパ腫は、エプスタイン−バーウイルスに関連する;
− 肝脾γδT細胞リンパ腫は、肝臓又は脾臓に生じる希少な進行性疾患である;
− 末梢T細胞リンパ腫−非特定型は、最もよく見られるPTCLであり、PTCLの他の下位区分によって包含できない多様な進行性T細胞リンパ腫を含み;骨髄、肝臓、消化管又は皮膚などの節外部位も冒され得るものの、大部分の患者は、リンパ節部位が冒される
と区別され得る。
【0050】
セザリー症候群;形質転換菌状息肉症;原発性皮膚CD30+T細胞リンパ球増殖性障害(皮膚未分化大細胞リンパ腫及びリンパ腫様丘疹症);皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫;原発性皮膚鼻型NK/T細胞リンパ腫;及び原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫などの皮膚PTCLの患者の凍結皮膚試料が、T細胞表面でのKIR3DL2の過剰発現について測定された。
【0051】
血管免疫芽球T細胞リンパ腫(AITL);未分化大細胞リンパ腫−ALK陰性;未分化大細胞リンパ腫−ALK陽性;腸管症関連T細胞リンパ腫(EATL);成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL);節外性NK/T細胞リンパ腫−鼻型;肝脾γδT細胞リンパ腫(HSTL);及び末梢T細胞リンパ腫−非特定型(PTCL/NOS)などの節性又は節外性非皮膚PTCLの患者から得られた組織試料も、T細胞表面でのKIR3DL2の過剰発現について測定された。
【0052】
結果から、全部で7人のセザリー症候群患者から得られたT細胞がT細胞表面にKIR3DL2を発現していたことが明白に確認された(実施例1参照)。
【0053】
しかし驚くことに、セザリー症候群及び形質転換菌状息肉症に加えて、皮膚並びに非皮膚節性及び節外性PTCLの両方のサブセットがT細胞表面でKIR3DL2を過剰発現していることが示された。
【0054】
皮膚悪性T細胞リンパ腫に関しては、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫及び原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫が、KIR3DL2を発現していることが示された。
【0055】
そのうえ、腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫の両方が、2つの非皮膚KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫に相当することが示された。
【0056】
バイオマーカーとしてのKIR3DL2発現の使用
それゆえに、本発明の第1の態様は、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫、及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択されるリンパ腫を診断及び/又は監視するためのバイオマーカーとしての、KIR3DL2発現レベルのインビトロの使用に関する。
【0057】
本発明のさらなる一態様は、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫、及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択されるリンパ腫を診断及び/又は監視するためのバイオマーカーとしてのKIR3DL2/KIR3DL1発現レベル比のインビトロの使用に関する。
【0058】
好ましい一実施態様では、リンパ腫は、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫及び原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫を含む群より選択される皮膚KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫である。
【0059】
別の好ましい実施態様では、リンパ腫は、腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択される非皮膚KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫である。
【0060】
本明細書に使用されるKIR3DL2/KIR3DL1発現レベル比は、(i)測定されたKIR3DL2の発現レベルと測定されたKIR3DL1の発現レベルとの間の比の値及び(ii)測定されたKIR3DL1の発現レベルと測定されたKIR3DL2の発現レベルとの間の比の値の両方を包含する。本明細書において好ましくは、KIR3DL2/KIR3DL1発現レベル比は、測定されたKIR3DL2の発現レベルと測定されたKIR3DL1の発現レベルとの間の比の値からなる。
【0061】
KIR3DL2は、CD158k及びNKAT4遺伝子、又はCD158k/KIR3DL2としても公知である。
【0062】
KIR3DL1は、CD158e、NKB1、NKAT3及びAMB11、又はCD158e/KIR3DL1としても公知である。本発明のために、本発明者らは、これらの名前が等価であると見なしている。
【0063】
KIR3DL1及びKIR3DL2の両方は、HUGO(Human Genome Organisation)Gene Nomenclature Committee(特にhttp://www.gene.ucl.ac.uk/nomenclature/index.htmlから利用可能)からのデータベースを含む配列データベースにおける対応する遺伝子及びタンパク質の国際的に認められた名称を表す。
【0064】
健康な個体及びPTCLを患う個体においてmRNA分析を行ったとき、KIR3DL1がT細胞であまり合成されなかったことが示された。したがって、KIR3DL2及びKIR3DL1のそれぞれの発現レベルの間の比は、1人の個体を別の個体と直接比較できる値を提供する。
【0065】
本発明において、KIR3DL1及びKIR3DL2の発現レベルは、mRNAの発現レベルを測定することによって有利に定量される。
【0066】
mRNAの発現を測定するための当業者に公知の任意の方法が本発明の実施のために適しており、それらは、各ターゲットマーカーに対する特異的プライマー対を使用する周知のRT−PCR法を含む。
【0067】
別の好ましい実施態様では、KIR3DL1及びKIR3DL2の発現レベルは、細胞性タンパク質の発現レベル、好ましくはタンパク質の表面発現レベルを測定することによって定量される。
【0068】
好ましい一実施態様では、本発明による使用は、さらに、バイオマーカーの組み合わせの、すなわちKIR3DL2と、本発明の範囲内である前記皮膚リンパ腫並びに節性及び節外性非皮膚リンパ腫に関連することが公知の1つ以上の追加的なバイオマーカーの組み合わせの、発現レベルを測定することを含む。例証的に、1つ以上の追加的なバイオマーカーは、非限定的に、表面膜複合体CD3、表面膜タンパク質CD8、CD30、CD56及びPD1、CXCL13ケモカイン並びに細胞傷害性タンパク質であるグランザイムB(GrB)及びT細胞細胞内抗原(TiA1)を、EBV(エプスタイン−バーウイルス)特異的EBER(EBVコードRNA)転写物と一緒に包含する。
【0069】
本明細書記載の本発明の一般的な実施態様によると、細胞性タンパク質の発現レベルは、特に(i)全細胞試料中に含有される該タンパク質の量を測定することによって、又は(ii)細胞表面、好ましくはT細胞表面に存在する該タンパク質の量を測定することによって、行われ得る。
【0070】
全細胞試料中に含有される関心対象のタンパク質マーカーの量を測定することは、細胞溶解物の可溶性画分から開始して、関心対象のタンパク質マーカーに対する抗体を当業者に周知の方法に従って使用するウエスタンブロッティングによって行われ得る。
【0071】
KIR3DL2及びKIR3DL1のそれぞれの発現値を含む、関心対象の各バイオマーカーの発現値は、任意の単位として表現され得る。例証的に、関心対象のバイオマーカーの発現値は、(i)該バイオマーカー(例えばKIR3DL2又はKIR3DL1)の測定された発現値と、(ii)CD3δの発現値のように、発現レベルが一定である遺伝子の測定された発現値との間の比として表現され得る。
【0072】
細胞表面に存在する関心対象のタンパク質マーカーの量を測定することは、当業者に周知の方法に従って、固定細胞の免疫標識又はフローイムノサイトメトリーのいずれかの免疫化学法によって行われ得る。
【0073】
したがって、特定の実施態様では、選択されたマーカーを本明細書記載のインビトロの診断方法に従って定量することは:
− (i)免疫検出法によって、例えば1つ以上のタンパク質マーカーのそれぞれに特異的な抗体を使用して周知の免疫検出法、例えばフローサイトメトリーに従って、関心対象のタンパク質マーカーを定量することを含む免疫化学法によって、選択されたマーカーが定量されること、
− (ii)関心対象の1つ以上のマーカーmRNAの定量を含む遺伝子発現解析によって、例えばリアルタイムPCR Taqman PCR解析を行うことによって、選択されたマーカーが定量されること
を包含する。
【0074】
mRNAの発現レベルを測定することによるマーカーの定量
好ましい一実施態様では、マーカーは、mRNAの発現レベルを測定することによって定量される。
【0075】
本明細書記載の実施例に示されるように、KIR3DL2マーカー及びKIR3DL1の発現は、遺伝子KIR3DL2及びKIR3DL1のそれぞれに特異的なプライマーが使用される周知の定量リアルタイムPCR(RT−PCR)増幅技法を行うことによって測定され得る。
【0076】
好ましい一実施態様では、試験されたマーカーのそれぞれについてのmRNAの発現レベルは、RT−PCRの周知の技法を使用し、次に増幅の結果として生じた2本鎖核酸と蛍光SYBR(登録商標)分子との間に複合体を形成させ、次に増幅された核酸と複合体を形成したSYBR(登録商標)分子によって生成した蛍光シグナルを測定することによって行われる。
【0077】
各遺伝子のmRNAに特異的なプライマーは、当業者に日常的な作業からなる。例証的に、当業者は、本明細書の実施例に開示されるKIR3DL2及びKIR3DL1のそれぞれに対して特異的なプライマーを使用してもよい。
【0078】
一部の好ましい実施態様では、KIR3DL2の定量は、配列番号1及び2のプライマー対を使用することによって行われ得る:
配列番号1:フォワード5’−CAACTTCTCCATCGGTCCCTTGATG−3’;及び
配列番号2:リバース5’−GTTTGACCACACGCAGGGCAG−3’。
【0079】
いくつかの好ましい実施態様では、KIR3DL1の定量は、配列番号3及び4のプライマー対を使用することによって行われ得る:
配列番号3:フォワード5’−GGACATCGTGGTCACAGGTCC−3’;及び
配列番号4:リバース5’−GCCTGGAATGTTCTGTTGACCTTGC−3’。
【0080】
タンパク質の発現レベルを測定することによるマーカーの定量
そのような技法は、タンパク質型のマーカーを、それに特異的に結合する核酸(例えば周知のSELEX法により結合について選択された核酸)、抗体及び抗体フラグメントを含む任意の型のリガンド分子を用いて検出及び定量することを含む。
【0081】
注目すべきことに、本明細書記載のように、KIR3DL2からなるバイオマーカー及びKIR3DL1に対する抗体は、現在すでに入手可能である。
【0082】
例証的に、当業者は、会社Aviva Systems Biologyによって参照番号OAAB050807で販売されているモノクローナル抗KIR3DL2抗体を使用してもよい。
【0083】
さらに例証的に、当業者は、会社Novus Biologicalsによって参照番号NPB−147006で販売されているモノクローナル抗KIR3DL1抗体を使用してもよい。
【0084】
なお例証的には、当業者は、KIR3DL2及びKIR3DL1の両方に結合するマウスIgG1モノクローナル抗体を使用してもよい。これらの実施態様では、「KIR3DL2」の発現レベル値は、KIR3DL2及びKIR3DL1の両方の発現レベル値からなる。
【0085】
本明細書記載の実施例に示されるように、KIR3DL2の発現レベルに比べてKIR23DL1の発現レベルは低い。こういうわけで、KIR3DL2の発現レベルのみの測定は、本発明による当該バイオマーカーからなる。
【0086】
さらに、所与のマーカーに対する抗体は、抗体産生ハイブリドーマの作製を含む従来技法を用いて容易に得られ得る。
【0087】
次に、従来技法によって調製されたハイブリドーマは、標準法を用いてスクリーニングされ、生物学的マーカータンパク質又はそのフラグメントと特異的に結合する抗体を産生する1つ以上のハイブリドーマが特定される。本発明は、また、この方法によって製造されたハイブリドーマ及びそのようなハイブリドーマを使用して製造された抗体を包含する。同じくポリクローナル抗体も使用してもよい。
【0088】
したがって、好ましい実施態様では、マーカーの発現は、例えば:
− 放射性標識抗体(特に、本発明に適する放射性部分は、例えばH、121I、123I、99mTc、14C又は32Pを含む群内より選択され得る);
− クロモフォア標識抗体又はフルオロフォア標識抗体(本発明に適する発光マーカー、特に蛍光マーカーは、フルオレセイン、BODIPY、蛍光プローブ型ALEXA、クマリン及びその誘導体、フィコエリトリン及びその誘導体、又はGFP若しくはDsRedなどの蛍光タンパク質のような、当技術分野において通常使用される任意のマーカーであり得る);
− ポリマー骨格抗体、
− 酵素標識抗体(本発明に適する標識化酵素は、アルカリホスファターゼ、チロシナーゼ、ペルオキシダーゼ、又はグルコシダーゼであり得;例えば、適切なアビジン標識型酵素は、アビジン−ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)であり得、適切な基質は、AEC、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスファート(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウムクロリド(NBT)であり得る);
− 抗体誘導体(例えば基材と、又はタンパク質−リガンド対のタンパク質若しくはリガンド、特にビオチン、ストレプトアビジン若しくはポリヒスチジンタグ結合性の抗体とコンジュゲートした抗体);
− 抗体フラグメント(例えば、その正常な翻訳後修飾の全て又は一部を受けたマーカータンパク質を含む、マーカータンパク質又はそのフラグメントに特異的に結合する1本鎖抗体、単離された抗体超可変ドメインなど)
を使用して判定される。
【0089】
生物学的マーカータンパク質の検出のためのインビトロの技法は、酵素結合免疫吸着アッセイ法(ELISA)、ウエスタンブロット法、免疫沈降法及び免疫蛍光法を含む。
【0090】
別の好ましい実施態様では、KIR3DL2の発現レベルは、KIR3DL2/KIR3DL1の発現レベル比として表現される。
【0091】
インビトロで診断及び/又は監視するための方法
別の態様では、本発明は、KIR3DL2の発現レベルを定量する少なくとも1つの段階を含む、個体におけるリンパ腫を診断及び/又は監視するためのインビトロの方法であって、リンパ腫が、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫、及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択されるインビトロの方法に関する。
【0092】
本発明の範囲内で、インビトロで診断及び/又は監視するための方法は、皮膚又は非皮膚KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫の診断及び/又は監視を包含する。
【0093】
好ましい一実施態様では、リンパ腫は、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫及び原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫を含む群より選択される皮膚KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫である。
【0094】
別の好ましい実施態様では、リンパ腫は、腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択される非皮膚KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫である。
【0095】
本発明内で考慮されるべき「個体」は、リンパ腫を患う臨床リスクを示す任意の対象、又はリンパ腫とすでに診断された任意の対象であり得る。好ましくは、個体は、哺乳類、より好ましくは経済的に重要性のある動物、例えばヒツジ、ブタ、ウシ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウマ、家禽、マウス、ラットなどの家畜、実験動物又は食品産業用動物であり得る。また、本発明による個体は、ヒトであり得る。より好ましくは、個体はヒトである。
【0096】
本発明は、また、KIR3DL1及びKIR3DL2の発現レベルを定量する少なくとも1つの段階を含む、個体におけるリンパ腫を診断及び/又は監視するためのインビトロの方法であって、リンパ腫が、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫、及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択されるインビトロの方法に関する。
【0097】
本発明によるインビトロの方法は:
a)被検個体から生物学的試料を提供する段階、
b)生物学的試料中からKIR3DL2の発現レベルを測定する段階、
c)段階b)で見出された値が該発現レベルについて予め定められた閾値と異なり、リンパ腫陽性個体を示す場合、前記リンパ腫と診断する段階
を含む。
【0098】
有利な一実施態様では、該方法は、さらに、KIR3DL2の発現レベルを定量することと組み合わせて、本発明の範囲内にある皮膚リンパ腫並びに節性及び節外性非皮膚リンパ腫と関連することが公知の1つ以上の追加的なバイオマーカーの発現レベルを定量することに依存する。
【0099】
そのような1つ以上の追加的なバイオマーカーは、CD3、CD8、CD30、グランザイムB及びTiA1を含む群より選択され得る。
【0100】
本発明による使用及び方法は、好ましくは単離された生物学的試料を用いて行われる。本明細書に使用される「生物学的試料」は、一般的に、個体から入手、到達、収集又は単離された、インビボ又はインサイツの生物学的試料を表す。そのような試料は、非限定的に、哺乳類から単離された器官、組織、画分及び細胞であり得る。例示的な生物学的試料は、非限定的に、細胞培養物、細胞系、皮膚生検などの組織生検、鼻腔組織生検、消化管組織生検又はリンパ節組織生検、器官、生体液、血液試料などを含む。好ましい生物学的試料は、非限定的に、血液試料、末梢血単核細胞(PBMC)試料、又は皮膚生検、鼻粘膜生検、腸生検若しくはリンパ節生検を含む組織生検を含む)。試料は、粗試料の可能性があり、又は保存、処理、若しくは測定の前に様々な程度精製される可能性もある。
【0101】
本発明の単離された生物学的試料は、T細胞を含む。
【0102】
好ましい一実施態様では、本発明の使用及び方法のために生物学的試料を収集する段階は、本発明による使用又は方法の第1段階に相当し得る。
【0103】
別の好ましい実施態様では、本発明の使用及び方法のために生物学的試料を収集する段階は、本発明を実施する前に行われ、本発明による使用又は方法の段階ではない。
【0104】
一態様では、本発明に適した、T細胞を含む単離された生物学的試料は、血液試料、組織生検、液状試料からなる群より選択され得る。
【0105】
本発明に適した試料を、試験前に精製することができる。一部の実施態様では、血液単核細胞、好ましくはT細胞を、試験前に残りの含有細胞から単離することができる。血液単核細胞又はT細胞を分離することは、当技術分野において公知の任意の方法によって、例えば密度勾配遠心分離によって行われ得る。
【0106】
一実施態様によると、単離された全血液試料を使用する場合、リンパ細胞及び単球細胞を含む末梢血単核細胞(PBMC)が、血漿(非細胞性成分)、好中球細胞及び好酸球などの多核細胞、並びに赤血球から分離され得る。
【0107】
末梢血単核細胞(PBMC)をその他の血液細胞型及び非細胞性成分から分離するための当技術分野において公知の任意の方法が実行され得る。
【0108】
例えば、適切な方法として、遠心分離法などの物理的分離法を挙げてもよい。適切な遠心法の例として、例えばFicoll(登録商標)を使用する勾配密度も挙げてもよい。
【0109】
また、例えば磁気ビーズ及びフローサイトメトリーなどの免疫学的分離法を使用してもよい。
【0110】
特異的マーカーKIR3DL2又は比KIR3DL2/KIR3DL1についての閾値は、各特定のリンパ腫について:
a)(i)本発明の範囲内の皮膚リンパ腫又は節性及び節外性非皮膚リンパ腫のサブセットの少なくとも1つに陽性とすでに診断された個体からの生物学的試料の収集物並びに(ii)該リンパ腫に陰性と診断された個体からの生物学的試料の収集物を提供する段階、
b)段階a)で提供された収集物(i)からの各試料について、KIR3DL2及び場合によりKIR3DL1(比KIR3DL2/KIR3DL1を得るため)の発現レベルを定量することによって、該マーカーについての定量値の第1の収集物が得られる段階、
c)段階a)で提供された収集物(ii)からの各試料について、KIR3DL2及び場合によりKIR3DL1(比KIR3DL2/KIR3DL1を得るため)の発現レベルを定量することによって、該マーカーについての定量値の第2の収集物が得られる段階、
d)段階b)の終わりに得られた定量値の第1の収集物から、リンパ腫陰性個体における該マーカーについての平均定量値を計算する段階、
e)段階b)の終わりに得られた定量値の第2の収集物から、リンパ腫陽性個体の1つにおける該マーカーについての平均定量値を計算する段階、
f)それぞれ段階d)及びe)で得られた平均定量値から、リンパ腫陽性個体とリンパ腫陰性個体とを最適に識別する閾値を計算する段階
を含む方法を実施することによって決定され得る。
【0111】
上記方法の段階f)からのリンパ腫陽性個体が、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択されることが意図されることを了解しなければならない。
【0112】
さらに、明快にするために、上記方法の段階f)を説明するために使用された表現《最適に識別する》は、閾値が計算され、該値が、(i)段階d)で得られた平均定量値と段階e)で得られた平均定量値との間にあり、リンパ腫陽性個体とリンパ腫陰性個体との間を最もよく識別することを意味する。
【0113】
上記閾値は、個体におけるリンパ腫の候補のサブセットからリンパ腫の信頼できる診断を行うために、本発明のインビトロの診断方法において各リンパ腫について行われるものとする。
【0114】
本発明からの診断方法は、具体的に定義された皮膚リンパ腫並びに節性及び節外性非皮膚リンパ腫のサブセットをPTCL疾患の大部分と識別するための第1のアプローチを提供することが意図される。
【0115】
実際に、本明細書開示のインビトロの診断方法を行う場合に使用され得る閾値は、分析された生物学的試料中のKIR3DL2マーカーの発現レベルを反映する任意の単位として表現され得、該発現レベルは、タンパク質の発現レベル、例えば細胞表面発現レベル、又は遺伝子の発現レベル、例えばmRNAの発現レベルのいずれかからなる。
【0116】
一部の実施態様では、本発明によるインビトロの方法は:
a)被験個体から生物学的試料を提供する段階、
b)生物学的試料中の発現レベル比KIR3DL2/KIR3DL1を測定する段階、
c)段階b)で見出された値が、該比について予め決定された閾値と異なり、リンパ腫陽性個体を示す場合、前記リンパ腫を診断する段階
を含む。
【0117】
好ましい一実施態様では、本方法は、さらに、本発明の範囲内にある皮膚リンパ腫並びに節性及び節外性非皮膚リンパ腫に関連することが既知の1つ以上の追加的なバイオマーカーの発現レベルを定量することを包含する。
【0118】
本発明の別の態様は:
(i)治療剤の投与前に個体から投与前の生物学的試料を提供する段階;
(ii)投与前の生物学的試料中からKIR3DL2の発現レベルを測定する段階;
(iii)個体から1つ以上の投与後の生物学的試料を提供する段階;
(iv)投与後の生物学的試料中からKIR3DL2の発現レベルを測定する段階;
(v)投与前の生物学的試料中のKIR3DL2の発現レベルを、1つ以上の投与後の生物学的試料中のKIR3DL2の発現レベルと比較する段階;及び
(vi)それに応じて個体への治療剤の投与を変更する段階
を含む、リンパ腫に対する処置を必要とする個体における、治療剤を用いた該処置の有効性を監視するための方法であって、
リンパ腫が、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択される方法に関する。
【0119】
好ましい一実施態様では、本発明は:
(i)治療剤の投与前に個体から投与前の生物学的試料を提供する段階;
(ii)投与前の生物学的試料中から発現レベル比KIR3DL2/KIR3DL1を測定する段階;
(iii)個体から1つ以上の投与後の生物学的試料を提供する段階;
(iv)投与後の生物学的試料中から発現レベルの比KIR3DL2/KIR3DL1を測定する段階;
(v)投与前の生物学的試料中の発現レベル比KIR3DL2/KIR3DL1を、1つ以上の投与後の生物学的試料中の発現レベル比KIR3DL2/KIR3DL1と比較する段階;及び
(vi)それに応じて個体への治療剤の投与を変更する段階
を含む、リンパ腫に対する処置を必要とする個体における、治療剤を用いた該処置の有効性を監視するための方法であって、
リンパ腫が、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択される方法に関する。
【0120】
有利には、本発明の範囲内のリンパ腫に対する処置の有効性を監視するための方法は、各種リンパ腫に特異的であると当技術分野においてすでに特定された1つ以上の追加的なバイオマーカーのレベルを測定することを含み得る。
【0121】
例えば、処置の経過中にKIR3DL2バイオマーカーの発現レベル又はKIR3DL2/KIR3DL1比を判定することによって決定される、より悪い診断は、無効な投薬量及び投薬量増加の望ましさを示し得る。逆に、選択されたマーカーの発現レベル、すなわちKIR3DL2の発現レベル又は比KIR3DL2/KIR3DL1を判定することによって決定される、より良い診断は、有効な処置であるゆえに、投薬量を変える必要がないことを示し得る。
【0122】
本発明は、また、少なくとも
a)個体から収集された少なくとも1つの生物学的試料に本発明によるインビトロの診断方法を行う段階;及び
b)個体に適切な治療法を施すことによって、個体のリンパ腫に対する処置を適応させる段階
を含む、リンパ腫に対する処置を必要とする個体において該処置を適応させるための方法であって、リンパ腫が、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択される方法に関する。
【0123】
適切な治療法は、化学療法、放射線療法及び骨髄移植を含み得る。
【0124】
本発明の範囲内の皮膚リンパ腫並びに節性及び節外性非皮膚リンパ腫を処置するために適した化学療法の例として、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、エトポシド、イホスファミド、カルボプラチン、ゲムシタビン、ビノレルビン、デキサメタゾン、シタラビン、シスプラチンなどが挙げられ得る。
【0125】
治療的関心対象の化合物をスクリーニングするための方法
KIRD3DL2発現レベルの増加が、皮膚並びに節性及び節外性非皮膚リンパ腫のサブセットと特異的に相関するので、KIR3DL2の発現レベル及び/又は生物学的活性に影響する化合物を単離、スクリーニング及び投与することは、そのような過剰増殖性T細胞リンパ腫の発生を治療及び/又は予防することに有用であり得る。関心対象の化合物は、特に、T細胞におけるKIR3DL2の発現阻害を誘導する化合物である。
【0126】
それゆえに、本発明の別の態様は、KIR3DL2の発現レベルに影響する化合物候補をスクリーニングするための方法であって:
a)KIR3DL2を発現可能な少なくとも1つのT細胞を提供する段階;
b)段階a)で提供された少なくとも1つのT細胞によるKIR3DL2の発現レベルを測定することによって第1のKIR3DL2発現値が得られる段階;
c)KIR3DL2を発現している少なくとも1つのT細胞を被験候補化合物と共にインキュベートする段階;
d)段階c)のKIR3DL2を発現している少なくとも1つのT細胞によるKIR3DL2の発現レベルを測定することによって、第2のKIR3DL2発現値が得られる段階;
e)第1のKIR3DL2発現値を第2のKIR3DL2発現値と比較する段階、及び
f)第2のKIR3DL2発現値が第1のKIR3DL2発現値よりも低い場合に候補化合物を選択する段階
を含む方法に関する。
【0127】
又は、KIR3DL1の発現レベル及びKIR3DL2の発現レベルの両方は、上記のスクリーニング方法の段階b)及びd)で測定され得、第1及び第2の値に対応する比KIR3DL2/KIR3DL1は、それぞれ段階b)及びd)の終わりに計算され、段階e)の終わりに比較される。
【0128】
好ましい一実施態様では、第2のKIR3DL2発現値は、定量的な第1の値の多くとも約2分の1、例えば約3分の1、例えば約4分の1、例えば約5分の1、例えば約10分の1、例えば約20分の1又は例えば約50分の1に低下される。
【0129】
一部の実施態様では、候補化合物は、天然起源からの精製後又は半若しくは全化学合成後のいずれかで得られ得る小有機分子を包含する。KIR3DL2の遺伝子発現を阻害することを目標とする上記化合物に加えて、小分子又は他の天然産物が、KIR3DL2遺伝子のインビボ転写を阻害するために特定及び採用され得ると構想されている。
【0130】
いくつかの実施態様では、候補化合物は、KIR3DL2核酸の適切なヌクレオチド配列に対するリボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせんDNA、RNAアプタマー及び/又は2本鎖RNAを包含する。これらの化合物は、過度の負担も実験もなしに、当業者に公知の従来技術を用いて同定、単離又はデノボ合成され得る。例えば、KIR3DL2遺伝子発現の阻害は、KIR3DL2タンパク質をコードする遺伝子の重要な領域に標的化された、DNA又はRNA型のアンチセンス分子を設計することによって得ることができる。
【0131】
別の態様では、本発明は、KIR3DL2の生物学的活性に影響する候補化合物のスクリーニング方法であって:
a)KIR3DL2を発現できる少なくとも1つのT細胞を提供する段階;
b)段階a)で提供された少なくとも1つのT細胞におけるKIR3DL2の生物学的活性を測定することによって、第1の活性値が得られる段階;
c)KIR3DL2を発現しているT細胞を被験候補化合物と共にインキュベートする段階;
d)段階b)の終わりで得られたKIR3DL2を発現しているT細胞におけるKIR3DL2の生物学的活性を測定することによって、第2の活性値が得られる段階;
e)第1の活性値を第2の活性値と比較する段階
を含む方法に関する。
【0132】
好ましい実施態様では、第2の活性値が第1の活性値よりも低い場合、さらなる段階f)で候補化合物が選択される。
【0133】
有利には、第2の値は、定量的な第1の値の多くとも約2分の1、例えば約3分の1、例えば約4分の1、例えば約5分の1、例えば約10分の1、例えば約20分の1又は例えば約50分の1に低下される。
【0134】
上記方法では、生物学的活性は、非限定的に膜区画でのKIR3DL2の局在又はKIR3DL2がその細胞性及び/若しくは細胞外性パートナー分子と結合及び/若しくは相互作用する能力を表す。
【0135】
別の態様では、本発明は、本明細書記載の皮膚並びに節性及び節外性非皮膚リンパ腫のサブセット内から選択されるリンパ腫の1つを有する個体の状態を処置又は改善するための方法であって、それを必要とする個体に、KIR3DL2の発現レベル及び/又は生物学的活性に影響する少なくとも1つの化合物の、最も好ましくはKIR3DL2の発現レベル又は生物学的活性を阻害する少なくとも1つの化合物の、有効量を含む医薬組成物を投与することを含む方法に関する。
【0136】
別の好ましい実施態様では、KIR3DL2の生物学的活性に影響する化合物は、KIR3DL2のタンパク質活性に対するアンタゴニストを包含する。
【0137】
アンタゴニストの投与の結果として目標とされる生物学的活性の減少は、非限定的に細胞環境中のKIR3DL2量の減少、膜区画でのKIR3DL2局在の欠損、KIR3DL2がその細胞性及び/又は細胞外性パートナー分子と結合及び/又は相互作用する能力の減少によって起こり得る。
【0138】
本明細書に使用される用語「アンタゴニスト」は、KIR3DL2の生物学的活性を減少させる分子を表す。アンタゴニストは、非限定的に、KIR3DL2タンパク質の量又は生物学的活性を減少させるペプチド、タンパク質、核酸(DNA型アプタマー及びRNA型アプタマー)、炭水化物、抗体又は任意の分子を含む可能性がある。
【0139】
好ましい一実施態様では、アンタゴニストは、該生物学的活性に関与するエピトープ決定基と結合する能力がある、抗体、又はFab、F(ab)2、Fab’、F(ab’)2、Fvなどのその活性フラグメントである。
【0140】
抗体又はその活性フラグメントは、当業者に利用可能な周知の方法に従って調製することができる。
【0141】
本発明によって包含される阻害化合物は、医薬組成物として投与することができる。本発明による使用のためのそのような医薬組成物は、1つ以上の生理学的に許容し得る担体又は賦形剤を使用して従来様式で製剤化され得る。
【0142】
したがって、化合物並びにその生理学的に許容し得る塩及び溶媒和物は、非限定的に局所、経口、口内、全身、非経口又は結腸投与を含む任意の可能な投与経路のために製剤化され得る。
【0143】
キット
本発明の別の態様は、KIR3DL2の発現レベル、又はKIR3DL1及びKIR3DL2の発現レベルを定量するための手段を含む、個体におけるリンパ腫を診断及び/又は監視するためのキットであって、リンパ腫が、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択されるキットに関する。
【0144】
好ましい一実施態様では、キットは、さらに、本発明の範囲内の皮膚リンパ腫並びに節性及び節外性非皮膚リンパ腫とすでに相関関係にある1つ以上の追加的なバイオマーカーの発現レベルを定量するための手段を含む。
【0145】
それゆえに、好ましい一実施態様では、本発明は、KIR3DL2の発現レベル、又はKIR3DL1及びKIR3DL2の発現レベルを定量するための手段を含む、個体における皮膚KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫を診断及び/又は監視するためのキットであって、リンパ腫が、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫及び原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫を含む群より選択されるキットに関する。
【0146】
別の好ましい実施態様では、本発明は、KIR3DL2の発現レベル、又はKIR3DL1及びKIR3DL2の発現レベルを定量するための手段を含む、個体における非皮膚KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫を診断及び/又は監視するためのキットであって、リンパ腫が、腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択されるキットに関する。
【0147】
なお好ましい一実施態様では、本発明によって包含されるリンパ腫の1つ以上と相関関係にあることが示された追加的なバイオマーカーを利用してもよい。そのような追加的なバイオマーカーは、非限定的に、CD3、CD8、CD30、CD56、PD1、CXCL13、グランザイムB、TiA1である。
【0148】
マーカー核酸(例えばゲノムDNA、mRNA、スプライスされたmRNA、cDNAなど)との結合に適した試薬は、相補的核酸を含む。例えば、核酸試薬は、基材に固定されたオリゴヌクレオチド(標識又は非標識)、基材と結合していない標識オリゴヌクレオチド、PCRプライマー対、分子ビーコンプローブなどを含み得る。
【0149】
有利には、本発明によるキットは、mRNAの発現レベルを測定することによってKIR3DL2及び/又はKIR3DL1の発現レベルを定量可能にする。
【0150】
好ましい一実施態様では、キットは、KIR3DL2又はKIR3DL1のmRNAの部分と特異的にハイブリダイズする2つのプライマーの少なくとも1つのセットを含む。これらのプライマーは、当業者がRT−PCR技法を実行できるようにする。
【0151】
なお好ましい一実施態様では、本発明によるキットは、細胞性タンパク質の発現レベルを、好ましくはタンパク質の表面発現レベルを測定することによって、KIR3DL2及び/又はKIR3DL1の発現レベルを定量可能にする。
【0152】
タンパク質の発現は、特異的抗体によって定量され得る。なお、本発明に適した抗体は、ポリクローナル又はモノクローナル型のIgG、IgA、IgM、又はIgEであり得る。本発明に適した抗体は、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ウマ、ラマ、ヒト又は他の霊長類由来の抗体より選択され得る。
【0153】
上に定義された結合特性を有する抗体フラグメントも、本発明に適し得る。「抗体フラグメント」によって、Fab、Fab’、F(ab)2、F(ab’)2フラグメント及び他の類似物などの抗体部分が意味される。これらの用語は、また、本発明の検出可能なタンパク質への結合によって上記と同義のタンパク質複合体の状態で抗体として作用できる、任意の合成又は遺伝子操作タンパク質を含む。
【0154】
本発明に適した抗体又は抗体フラグメントは、例えば、「Making and using antibodies: a practical handbook」(Howard & Kaser, Ed CRC, 2006)に記載の、当業者に公知の任意の方法によって調製され得る。
【0155】
キットは、それぞれが核酸マーカー又はタンパク質マーカーKIR3DL2、及び場合により核酸又はタンパク質KIR3DL1と特異的に結合する能力がある複数の試薬を含み得る。
【0156】
マーカータンパク質との結合に適した試薬は、抗体、抗体誘導体、抗体フラグメントなどを含む。
【0157】
したがって、本発明のさらなる一目的は、皮膚並びに節性及び節外性非皮膚リンパ腫のサブセットの発生の診断のためのキットであって、少なくとも1つのマーカー、すなわちKIR3DL2、及び場合によりKIR3DL1を定量するための手段を含むキットからなる。
【0158】
本発明のキットは、場合により、本発明の方法を行うために有用な追加的な成分を含み得る。例として、キットは、相補的核酸をアニーリングするため、又は抗体をそれが特異的に結合するタンパク質と結合させるために適した液体(例えばSSC緩衝液)、1つ以上の試料区画、本発明のインビトロの診断方法の性能を説明する教材などを含み得る。
【0159】
又は、上記のキットは、上記のKIR3DL2の発現レベル及び/又は生物学的活性に影響する化合物候補をスクリーニングするために有用であり得る。
【0160】
以下に示す実施例は、本発明の目的を例証するためのものであって、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0161】
治療ターゲットとしてのKIR3DL2
KIR3DL2は、セザリー症候群の治療法の貴重な標的として見なされると報告されている。
【0162】
実際に、KIR3DL2に対して特異的にターゲティングされたモノクローナル抗体は、細胞増殖を阻害し、抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)を伴うメカニズムによってKIR3DL2発現悪性T細胞の特異的細胞死をさらに促進することが示された(国際公開公報2010/081890)。
【0163】
さらに、Sivoriら(A novel KIR-associated function: evidence that CpG DNA uptake and shuttling to early endosomes is mediated by KIR3DL2; Blood, 2010, 116(10):1637-1647)に開示されたように、CpGジヌクレオチド(CpG ODN)に富むいくつかのオリゴデオキシヌクレオシドが、セザリー個体からのT細胞及びNK細胞(ナチュラルキラーリンパ球)の両方由来のKIR3DL2に結合することが示され、KIR3DL2発現NK細胞からのサイトカイン放出を誘発し得る。
【0164】
CpG ODNは、自然免疫を活性化することによって腫瘍退縮を誘導し、抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)を高め、特異的防御免疫応答を誘発する貴重なワクチンアジュバントであり、様々な種類のがん性及び非がん性疾患の処置のための優れた候補であると報告されている(Bodera et al. Synthetic immunostimulatory oligonucleotides in experimental and clinical practice. Pharmacol Rep. 2012 Sep;64(5):1003-10)。
【0165】
さらに、多くの場合に対照ODNとして使用されるGpC ODN(GpCジヌクレオチドに富むオリゴヌクレオチド)も試験された。
【0166】
KIR3DL2+リンパ腫の処置のための化合物又は医薬組成物
複数の特異的T細胞リンパ腫がT細胞表面にKIR3DL2を発現するという、本明細書に開示された本発明者らの知見は、本発明者らがこれらの特定のT細胞リンパ腫を処置するための新規な治療ツールを設計できるようにした。
【0167】
より正確には、本明細書に開示された本発明者らの知見は、KIR3DL2に結合性のリガンドである治療ツールであって、KIR3DL2へのリガンドの結合事象が悪性T細胞の死滅を引き起こす治療ツールを設計できるようにした。
【0168】
別の態様では、本発明は、セザリー症候群、形質転換菌状息肉症、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択されるKIR3DL2+リンパ腫の予防及び/又は治療のための、KIR3DL2に特異的に結合するリガンド分子を記載する。
【0169】
別の態様では、本発明は、形質転換菌状息肉症、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択されるKIR3DL2+リンパ腫の予防及び/又は治療のための、KIR3DL2に特異的に結合するリガンド分子に関する。
【0170】
別の態様では、本発明は、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択されるKIR3DL2+リンパ腫の予防及び/又は治療のための、KIR3DL2に特異的に結合するリガンド分子に関する。
【0171】
なお別の一態様では、本発明は、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫及び原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫を含む群より選択される皮膚KIR3DL2+リンパ腫の予防及び/又は治療のための、KIR3DL2に特異的に結合するリガンド分子に関する。
【0172】
別の態様では、本発明は、腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択される非皮膚KIR3DL2+リンパ腫の予防及び/又は治療のための、KIR3DL2に特異的に結合するリガンド分子に関する。
【0173】
本発明によるリガンド分子は、KIR3DL2発現悪性T細胞の死滅を特異的に誘導する能力がある。特に、KIR3DL2発現悪性T細胞の死滅は、アポトーシス、抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)及び補体依存性細胞傷害作用(CDC)を含む群より選択される過程によって媒介される。
【0174】
本発明によるリガンド分子は、抗体、抗体のフラグメント及びオリゴデオキシヌクレオチドを含む群より選択される。
【0175】
好ましい一実施態様では、本発明は、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択されるKIR3DL2+リンパ腫の予防及び/又は治療のための、KIR3DL2に特異的に結合する抗KIR3DL2抗体に関する。
【0176】
別の好ましい実施態様では、本発明は、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫及び原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫を含む群より選択される皮膚KIR3DL2+リンパ腫の予防及び/又は治療のための、KIR3DL2に特異的に結合する抗KIR3DL2抗体に関する。
【0177】
なお別の好ましい一実施態様では、本発明は、腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択される非皮膚KIR3DL2+リンパ腫の予防及び/又は治療のための、KIR3DL2に特異的に結合する抗KIR3DL2抗体に関する。
【0178】
本発明の範囲内の抗KIR3DL2抗体は、例えばハイブリドーマ法などの、当業者に公知の方法に従って得ることができる。抗体産生を高めるために、当技術分野において公知の様々なアジュバントを採用することができる。
【0179】
抗KIR3DL2抗体は、モノクローナル抗体が好ましいものの、ポリクローナルであってもよい。
【0180】
当業者は、その表面にKIR3DL2を発現している悪性T細胞を枯渇させるために適した抗KIR3DL2抗体、例えば抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)、補体依存性細胞傷害作用(CDC)、細胞増殖の阻害又は細胞死の誘導(例えばアポトーシスを介する)を介して悪性KIR3DL2発現T細胞を枯渇させる抗KIR3DL2抗体を容易に選択することができる。
【0181】
抗体依存性細胞障害作用(ADCC)は、例えば、Nelsonら(51Cr release assay of antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity (ADCC). Curr Protoc Immunol. 2001 May; Chapter 7: Unit 7.27);Broussasら(Evaluation of antibody-dependent cell cytotoxicity using lactate dehydrogenase (LDH) measurement. Methods Mol Biol. 2013; 988:305-17によって開示されたプロトコールに従って判定してもよい。
【0182】
補体依存性細胞傷害作用(CDC)は、例えば、Harmerら(A highly sensitive, rapid screening method for the detection of antibodies directed against HLA class I and class II antigens. Transpl Int 1993; 6:277-80);Robsonら(A comparison of flow cytometry screening methods. Eur J Immunogenetics 1999; 26:43-80);Broyerら(Evaluation of complement-dependent cytotoxicity using ATP measurement and C1q/C4b binding. Methods Mol Biol. 2013; 988:319-29)によって開示されたプロトコールに従って判定してもよい。
【0183】
アポトーシスは、当業者に周知の多数のプロトコール又はキットによって判定され得る。
【0184】
例えば、アポトーシスは、例えばCaspase 3 Activity Assay(Roche Applied Science)、Apo-ONE(登録商標)Homogeneous Caspase-3/7 Assay(Promega)、EnzChek(登録商標)Caspase-3 Assay Kit #1(Invitrogen)などの市販されているキットの1つを製造業者の説明書に従って使用することによって、カスパーゼ誘導型活性をアッセイすることによって判定してもよい。
【0185】
アポトーシスは、また、例えばApoptotic DNA Ladder Kit(Roche Applied Science)、DeadEnd(商標)Fluorometric TUNEL System(Promega)、APO-BrdU(商標)TUNEL Assay Kit(Invitrogen)、Apoptotic DNA Ladder Kit(Genotech)などの市販されているキットの1つを製造業者の説明書に従って使用することによって、タネル及びDNAのフラグメンテーションをアッセイすることによって判定してもよい。
【0186】
例えば細胞透過性を測定する、アネキシンVによってホスファチジルセリンを染色する、ミトコンドリア膜電位を測定するなどの他の方法が、アポトーシスを判定するために利用可能である。
【0187】
有利には、本発明の範囲内でリガンド分子がKIR3DL2発現悪性T細胞の死滅を誘発する能力は、単離された細胞系でインビトロの判定をされ得る。
【0188】
そのようなアッセイ法のために利用可能なセザリー症候群細胞系の非限定的でもある例証的な一例として、HUT−78(American Type Culture Collection(ATCC)からATCC T1B-161として入手可能);HH(ATCC CRL-2105)、SeAx(Kaltoft et al. A continuous T-cell line from a patient with Sezary syndrome. Arch Dermatol Res. 1987; 279(5):293-8.);MyLa 2059(Kaltoft, University of Aahrus, Denmark);P1(Marie-Cardine et al. Killer cell Ig-like receptors CD158a and CD158b display a coactivatory function, involving the c-Jun NH2-terminal protein kinase signaling pathway, when expressed on malignant CD4+ T cells from a patient with Sezary syndrome. Blood 2007; 109: 5064-5);PNO(Poszepczynska et al. Functional characterization of an IL-7-dependent CD4(+)CD8alphaalpha(+) Th3-type malignant cell line derived from a patient with a cutaneous T-cell lymphoma. Blood 2000; 96:1056-1063)を挙げることができる。
【0189】
ヒト化抗体を含む抗KIR3DL2抗体及びその抗体フラグメントは、公知の技法に従って調製され得る。特定の一実施態様では、抗KIR3DL2抗体は、キメラ、ヒト化又は完全ヒト抗KIR3DL2抗体である。
【0190】
別の特定の実施態様では、抗KIR3DL2抗体は、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFv、すなわち最小認識部分を担持するフラグメントの群より選択される抗体フラグメントである。
【0191】
なお好ましい一実施態様では、抗KIR3DL2抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、及びキメラ抗体からなる群より選択されるモノクローナル抗体である。
【0192】
好ましくは、抗KIR3DL2抗体は、抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)を誘導する。特定の実施態様では、抗KIR3DL2抗体は、IgG1又はIgG3ヒトアイソタイプ抗体である。他の実施態様では、抗KIR3DL2抗体は、IgG2又はIgG4ヒトアイソタイプ抗体である。
【0193】
別の好ましい実施態様では、抗KIR3DL2抗体は、補体細胞傷害メカニズム(CDC)を誘導する。
【0194】
別の好ましい実施態様では、抗KIR3DL2抗体は、アポトーシスを誘導する。
【0195】
好ましい一実施態様では、リガンド分子は、以前にParoliniら(The AZ158 mAb specifically reacts with p70 and p140 inhibitory NK receptors for HLA-B and HLA-A alleles. Leukocyte Typing VII. 2002. In: (Mason D, Andre P, Bensussan A, Buckley C, Civin C, Clark E et al., eds) Oxford: Oxford University Press, 415-417)に記載されたAZ158モノクローナル抗体mAbである。
【0196】
好ましい一実施態様では、リガンド分子は、Q66モノクローナル抗体(Pende et al. The natural killer cell receptor specific for HLA-A allotypes: a novel member of the p58/p70 family of inhibitory receptors that is characterized by three immunoglobulin-like domains and is expressed as a 140-kD disulphide-linked dimer. J Exp Med. 1996;184:505-18)である。
【0197】
好ましい一実施態様では、本発明によるリガンド分子は、AZ158及びQ66モノクローナル抗体を含む群より選択される。
【0198】
別の態様では、本発明は、セザリー症候群、形質転換菌状息肉症、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択されるKIR3DL2+リンパ腫の予防及び/又は治療のための、KIR3DL2に特異的に結合するオリゴデオキシヌクレオチドを記載する。
【0199】
一態様では、本発明は、形質転換菌状息肉症、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択されるKIR3DL2+リンパ腫の予防及び/又は治療のための、KIR3DL2に特異的に結合するオリゴデオキシヌクレオチドに関する。
【0200】
一態様では、本発明は、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択されるKIR3DL2+リンパ腫の予防及び/又は治療のための、KIR3DL2に特異的に結合するオリゴデオキシヌクレオチドに関する。
【0201】
別の態様では、本発明は、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫及び原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫を含む群より選択される皮膚KIR3DL2+リンパ腫の予防及び/又は治療のための、KIR3DL2に特異的に結合するオリゴデオキシヌクレオチドに関する。
【0202】
別の態様では、本発明は、腸管症関連T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択される非皮膚KIR3DL2+リンパ腫の予防及び/又は治療のための、KIR3DL2に特異的に結合するオリゴデオキシヌクレオチドに関する。
【0203】
本明細書の実施例において、セザリー個体由来のT細胞のCpG ODN処置が、(i)T細胞表面でのKIR3DL2へのCpG ODNの結合;(ii)KIR3DL2のインターナリゼーションによるT細胞表面からのその枯渇;及び予想外に(iii)カスパーゼ依存性アポトーシス経路の誘導を招くことが示される。
【0204】
文書である国際公開公報第01/22972号及びEP2290078は、その免疫刺激機能のための、顕著には様々な種類のがんを処置するための、CpG ODNの使用に関するものとして挙げられ得る。
【0205】
有利には、本発明によるリガンド分子は、配列番号5の配列のCpG ODN−A;配列番号6の配列のCpG ODN−B;配列番号7の配列のCpG ODN−C、それらの混合物及びそれらの類似体を含む群より選択されるオリゴデオキシヌクレオチドであり得る。
【0206】
配列番号5の配列のCpG ODN−A;配列番号6の配列のCpG ODN−B;配列番号7の配列のCpG ODN−Cを含む群より選択されるオリゴデオキシヌクレオチドの類似体は、配列番号5、配列番号6又は配列番号7のいずれかと少なくとも50%同一の、例えば少なくとも60%同一の、少なくとも70%同一の、少なくとも80%同一の、少なくとも90%同一の、少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを含む。
【0207】
好ましい一実施態様では、本発明によるリガンド分子は、配列番号7の配列のオリゴデオキシヌクレオチドCpG ODN−Cであり得る。
【0208】
驚くことに、多くの場合にCpG ODN陰性対照として使用されるGpC ODNが、アポトーシスを誘導するためのKIR3DL2発現悪性T細胞処置について判定するために使用された場合、それは、CpG ODN−Cと同じくらい活性であることが見出された。
【0209】
それゆえに、本発明の別の実施態様では、GpC ODNは、KIR3DL2発現悪性T細胞のアポトーシスを誘導するリガンド分子である。
【0210】
好ましい一実施態様では、配列番号8の配列のGpC ODNは、KIR3DL2発現悪性T細胞を処置するためにリガンド分子として使用され得る。
【0211】
別のさらなる実施態様では、配列番号8と少なくとも50%同一の、例えば少なくとも60%同一の、少なくとも70%同一の、少なくとも80%同一の、少なくとも90%同一の、少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを含む、配列番号8の配列のオリゴデオキシヌクレオチドGpC ODNの類似体は、KIR3DL2発現悪性T細胞を処置するリガンド分子として使用され得る。
【0212】
したがって、より有利には、本発明によるリガンド分子は、配列番号5の配列のCpG ODN−A;配列番号6の配列のCpG ODN−B;配列番号7の配列のCpG ODN−C;配列番号8の配列のGpC ODN、それらの混合物及び/又はそれらの類似体を含む群より選択されるオリゴデオキシヌクレオチドであり得る。
【0213】
なお好ましい一実施態様では、抗KIR3DL2抗体は、両方のリガンド分子の作用を増強するようなオリゴヌクレオチド又はその類似体との混合物の状態である。
【0214】
好ましい一実施態様では、本発明の範囲内のリガンド分子は、細胞傷害性アッセイ法で判定されるとき、細胞死の少なくとも約10%、例えば約20%、例えば約30%、例えば約40%、例えば約50%、例えば約60%、例えば約70%、例えば約80%、例えば約90%を誘導する能力がある。
【0215】
皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫,及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択されるKIR3DL2+リンパ腫の予防及び/又は治療のための、本発明において同義のリガンド分子及び薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物。
【0216】
さらに、本発明は、また、皮膚リンパ腫のサブセット並びに非皮膚節性及び節外性リンパ腫のサブセットの予防及び/又は治療のための、KIR3DL2の細胞外ドメインに特異的に結合し、悪性T細胞の細胞死を誘導できるリガンド分子に関する。
【0217】
本発明は、さらに、KIR3DL2受容体、特にKIR3DL2受容体の細胞外ドメインと結合するリガンド分子が、KIR3DL2発現悪性T細胞の増殖低下を、すなわち、KIR3DL2介在性阻害シグナルを誘導することによって誘導する能力があるという発見に起因する。
【0218】
一部の実施態様では、治療組成物及び治療計画は、本明細書に開示され、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫、及び肝脾γδT細胞リンパ腫などのKIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫と以前に診断された個体を処置するために使用される。
【0219】
KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫を処置するための方法
本発明のさらなる一態様は、KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫の処置を必要とする個体における該処置のための方法であって、個体にKIR3DL2に特異的に結合するリガンド分子を投与することを含む方法に関する。
【0220】
特に、KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫は、形質転換菌状息肉症、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択される。
【0221】
本発明のさらなる一態様は、皮膚KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫の処置を必要とする個体における該処置のための方法であって、個体にKIR3DL2に特異的に結合するリガンド分子を投与することを含む方法に関する。
【0222】
特に、皮膚KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫は、形質転換皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫及び原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫を含む群より選択される。
【0223】
本発明のさらなる一態様は、非皮膚KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫の処置を必要とする個体における該処置のための方法であって、個体にKIR3DL2に特異的に結合するリガンド分子を投与することを含む方法に関する。
【0224】
特に、非皮膚KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫は、腸管症関連T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択される。
【0225】
別の態様では、本発明は、KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫の処置を必要とする個体における該処置のための方法であって、個体に、KIR3DL2に特異的に結合するリガンド分子及び薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物を投与することを含む方法に関する。
【0226】
好ましい一実施態様では、本発明は、KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫の処置を必要とする個体における該処置のための方法であって、個体に、KIR3DL2に特異的に結合するリガンド分子及び薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物を投与することを含む方法に関し、その際、リンパ腫は、形質転換菌状息肉症、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、腸管症関連T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択される。
【0227】
別の好ましい実施態様では、本発明は、皮膚KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫の処置を必要とする個体における該処置のための方法であって、個体に、KIR3DL2に特異的に結合するリガンド分子及び薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物を投与することを含む方法に関し、その際、リンパ腫は、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫及び原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫を含む群より選択される。
【0228】
なお別の好ましい一実施態様では、本発明は、非皮膚KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫の処置を必要とする個体における該処置のための方法であって、個体に、KIR3DL2に特異的に結合するリガンド分子及び薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物を投与することを含む方法に関し、その際、リンパ腫は、腸管症関連T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫を含む群より選択される。
【0229】
好ましい一実施態様では、本発明は、KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫の処置を必要とする個体における該処置のための方法であって、個体に、KIR3DL2に特異的に結合するリガンド分子を、T細胞を枯渇させるのに十分な量で投与することを含む方法に関係する。
【0230】
好ましい一実施態様では、KIR3DL2に特異的に結合するリガンド分子は、循環性及び/又は器官局在型の悪性T細胞を枯渇させる。
【0231】
好ましい一実施態様では、本明細書開示のリガンド分子又は医薬組成物の投与計画は、医師によって制定される。処置を必要とする特定の個体に特異的な、治療的に有効な投与計画及びT細胞を枯渇させるために十分な量は、処置されるT細胞リンパ腫及び障害の重症度;年齢;体重;全身の健康状態;性別;食事;投与の時間経過;投与経路;処置の持続期間;本発明の範囲内のリガンド分子又は医薬組成物と一緒に同時投与される薬物を非限定的に含む多様な要因に依存する。
【0232】
最も好ましい一実施態様では、本明細書開示のリガンド分子又は医薬組成物の投与計画は、成人1人あたり1日約0.01〜約1,000mgの範囲であり得る。好ましくは、処置を必要とする特定の個体に最も適した投与計画を調整するために、患者に約0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250及び500mgの量のリガンド分子が投与される。本発明の範囲内の医薬組成物は、リガンド分子約0.01mg〜約500mg、好ましくはリガンド分子約1mg〜約100mgを含有し得る。
【0233】
好ましい一実施態様では、リガンド分子の有効量は、1日約0.0002mg/kg〜約20mg/kg体重、特に1日約0.001mg/kg〜7mg/kg体重の投与計画で日常的に投与される。
【0234】
本発明による薬学的投薬単位中に含まれるべきリガンド分子の最適量は、日常的な公知のプロトコール又は方法を使用して当業者によって容易に適応され得る。
【0235】
本明細書開示のリガンド分子及び医薬組成物は、任意の適切な経路、すなわち非限定的に経口、舌下、口内、皮下、経皮、局所、腹腔内、筋肉内、静脈内、真皮下、くも膜下腔内及び鼻腔内並びに直腸投与を含む経路によって投与される。
【0236】
有利には、本発明に開示の、KIR3DL2発現悪性T細胞リンパ腫の処置を必要とする個体における該処置のための方法は、細胞死の少なくとも約10%、例えば約20%、例えば約30%、例えば約40%、例えば約50%、例えば約60%、例えば約70%、例えば約80%、例えば約90を誘導する能力がある。
【0237】
実施例
実施例1:皮膚、非皮膚末梢節外性及び節性T細胞リンパ腫におけるKIR3DL2の発現
1)材料及び方法
1.1)材料及び方法
組織試料は、様々な収集物から回収し、全ての症例で現行の分類に従って診断を行った(Swerdlow SH, Campo E, Harris NL, et al. In: press IARC, ed. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid tissues (ed 4th). Lyon; 2008)。以下のリストに開示される各リンパ腫群について、国際疾病分類−腫瘍学(ICDO)コードをカッコ内に示す。
【0238】
a)皮膚T細胞リンパ腫
セザリー症候群(9701/3)の患者の凍結皮膚試料KI04028、KI10025及びKI18027を、Nicolas ORTONNE博士を主任研究者及びコーディネーターとする国家研究プロジェクトPHRC(programme hospitalier de recherche clinique)KIRから収集した。それらは、定量RT−PCRを用いて血液及び皮膚の両方においてKIR3DL2 mRNA転写物の強い発現が実証されたが、KIR3DL1の顕著な発現は見られなかったセザリー症候群患者より選択された。加えて、皮膚及び関連するリンパ節標本の両方を用いて、病理部門からの他のセザリー症候群の2症例(日常的な診療)を検討した。
【0239】
他の皮膚T細胞リンパ腫からの凍結皮膚試料を、Henri Mondor病院(AP-HP, groupe hospitalier Henri Mondor Albert Chenevier)の病理部門の保管ファイルから回収した。これらの試料は:
− 3つの形質転換菌状息肉症(9700/3t);
− 4つの原発性皮膚CD30+T細胞リンパ球増殖性障害(2つの皮膚未分化大細胞リンパ腫(9718/3)及び2症例のリンパ腫様丘疹症(9718/1));
− 4つの皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫(9708/3);
− 1つの原発性皮膚鼻型NK/T細胞リンパ腫(9719/3);
− 2つの原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫(9709/3)
を含んだ。
【0240】
b)節性及び非皮膚節外性リンパ腫
節性及び非皮膚節外性リンパ腫からの凍結皮膚試料を、Philippe GAULARDを主任研究者及びコーディネーターとする研究プロジェクトPHRC TENOMICから収集した。本発明者らは、日常的な組織学的管理において70%を超える腫瘍細胞を有する症例を選択した。これらの試料は:
− 4つの血管免疫芽球T細胞リンパ腫(AITL、9705/3):TENOMIC060、268、424、415;
− 3つの未分化大細胞リンパ腫−ALK陰性(9702/3):TENOMIC105、213、238;
− 6つの腸管症関連T細胞リンパ腫(EATL、9717/3):TENOMIC046、418、441、210、319、358、413;
− 8つの成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL、9827/3):TENOMIC285、257、340、361、066、256、540、560;
− 4つの節外性NK/T細胞リンパ腫鼻型(9719/3):TENOMIC053、246、419、579;
− 7つの肝脾γδT細胞リンパ腫(HSTL、9716/3):TENOMIC014、037、181、014、037、181、183;
− 4つの末梢T細胞リンパ腫−非特定型(PTCL/NOS、9702/3):TENOMIC214、225、232、469
を含んだ。
【0241】
加えて、5つの未分化大細胞リンパ腫−ALK陽性(9702/3)P9710730、P055401、P0016632、P00113872、P126370の凍結切片を、Institut Universitaire du Cancer de Toulouse - Oncopoleの病理部門のLaurence LAMANT博士から得た。
【0242】
1.2)免疫組織化学
免疫染色手順について、厚さ3μmの切片をSuperfrost plusスライド(CML, Angers, France)上に適用した。各症例で切片をヘマトキシリン−エオシン及びサフラン(HES)で染色して、組織試料の品質(壊死)をチェックし、腫瘍性浸潤の存在を確認した。
【0243】
KIR3DL2の免疫染色を、1:50希釈したマウスIgG1モノクローナル抗体(クローン5.133, Miltenyi Biotec, Paris, France)を使用して加湿チャンバー内で1時間インキュベーションして手作業で行った。この抗体は、KIR3DL2及びIR3DL1の両方と反応する。染色を、ペルオキシダーゼ(Dako SA, Glostrup, Denmark)にコンジュゲートしたEnVision(登録商標)増幅システムを使用して行った。ペルオキシダーゼ反応をアミノエチルカルバゾールによって明らかにし、ヘマトキシリンを用いて切片を青に対比染色した。
【0244】
各症例で、全試料についてT細胞マーカー(CD3)、未分化大細胞リンパ腫及び原発性皮膚CD30+T細胞リンパ球増殖性障害についてCD30、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫及び原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫についてCD8及びグランザイムB、皮膚及び節外性NK/T細胞リンパ腫鼻型についてCD56及びグランザイムB、AITLについてCXCL13及びPD1、ATLLについてCD25、HSTLについてCD5及びTiA1を含む古典的表現型マーカーの発現についてチェックするために他の免疫染色を行った。これらの追加的な染色を、ペルオキシダーゼ(Vectastain(登録商標)ABC−Pキット、Vector, Burlingame, USA製)にコンジュゲートしたビオチン/アビジンシステムを使用して手作業で、又はBond-Max自動装置(Menarini, Leica)を使用してのいずれかで行った。ペルオキシダーゼ反応をジアミノベンジジン(Sigma-Aldrich, Saint Quentin Fallavier, France)によって明らかにし、ヘマトキシリンを用いて切片を青に対比染色した。
【0245】
Axioskop 2顕微鏡(Zeiss, Germany)を使用してスライドを分析し、デジタルカメラEOS 600D(Canon, France)を使用して画像を取得した。
【0246】
1.3)RT−PCR研究
LightCycler 2.0システム(Roche Diagnostics, Meylan, France)でRoche Diagnostics(Meylan, France)製SYBR Green PCRキットを使用して、CD3(δ鎖)、KIR3DL2及びKIR3DL1についての定量PCR反応を行った。融解曲線及びアガロースゲル電気泳動によって増幅産物の純度を立証した。以前に記載されたようにリンパ球に安定的に発現することから対照ハウスキーピング遺伝子として選択されたスプライシング因子3aの120kDaサブユニットをコードするSF3A1遺伝子のmRNA発現の定量によって規準化を達成した。PCR試料は、4mM MgCL、0.4μMの各プライマーを含有し、増幅サイクリング条件は以下のようであった:94℃変性、ハイブリダイゼーション60℃10秒及び伸長72℃25秒を40サイクル。転写物の発現を、以前に記載されたようにリアルタイムPCRの相対定量によって測定した。異なるアッセイ法の間で等価の最適増幅効率を得るように、全てのPCR条件を調整した。得られた直線グラフを使用することによって、Light Cyclerソフトウェア4.0(Roche)を用いてPCR効率を調整後にΔΔC法により各試料についてC値の差を決定し、検量用試料中に存在するmRNAの相対パーセンテージとして表現した。非特異的産物の存在が対照アガロースゲル上で検出された場合は、定量を信頼できないと見なした。
【0247】
陽性染色された皮膚T細胞リンパ腫、すなわち1つの原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫及び2つの皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫で定量RT−PCR研究を行った。
【0248】
凍結切片に対して総RNAの抽出を行い、Trizol中に移行させ、直ちに均質化し、その後クロロホルム/イソプロパノールで沈殿させた。次にHigh Capacity cDNA Reverse Transcription with RNase Inhibitor kit(Applied Biosystems)を製造業者の説明書に従って使用することによって総mRNAを逆転写させた。
【0249】
KIR3DL2を定量するために使用されたプライマーは、配列番号1及び配列番号2のプライマーであり得る:
配列番号1:フォワード5’−CAACTTCTCCATCGGTCCCTTGATG−3’
配列番号2:リバース5’−GTTTGACCACACGCAGGGCAG−3’。
【0250】
KIR3DL1を定量するために使用されたプライマーは、配列番号3及び4のプライマーであり得る:
配列番号3:フォワード5’−GGACATCGTGGTCACAGGTCC−3’
配列番号4:リバース5’−GCCTGGAATGTTCTGTTGACCTTGC−3’。
【0251】
以前の刊行物(Ortonne et al. CD158k/KIR3DL2 and NKp46 are frequently expressed in transformed mycosis fungoides. Exp Dermatol. 2012 Jun; 21(6):461-3)と同様にKIR3DL1及びKIR3DL2転写物の特異的な検出を可能にする、新たに設計されたプライマー及びSYBR(登録商標)グリーン並びにABI 7900HT装置(Applied Biosystems)を使用して増幅を行った。
【0252】
SF3A1ハウスキーピング遺伝子を検量用試料として使用した。KIR3DL1及びKIR3DL2受容体の発現レベルを、T細胞リンパ球の密度における差による潜在的バイアスを避けるために最終的にCD3δに対する比として表現した。
【0253】
2つのHSTL並びに1つのEATL及びATLL(PHRC TENOMIC)において、凍結標本から総mRNAを抽出後のトランスクリプトーム解析(Affymetrix U133 Plus 2.0)によってKIR3DL2のmRNAレベルを検討し、全てのHSTL及びAITLと比較した。
【0254】
2)結果
2.1)免疫組織化学
図1及び2からの結果を下の表1に要約する。
【0255】
【表1】
【0256】
ICDOは、国際疾病分類−腫瘍学を意味する;IHCは、免疫組織化学を意味する;GrBは、グランザイムBを意味する;腫瘍性及び/又は反応性であり得る、分散した陽性細胞のみが特定された;1症例は原発性皮膚型であり、その他の3症例は鼻腔からであった;EBER転写物。
【0257】
全ての症例で、HESを用いた標準染色は、組織壊死及びT細胞腫瘍浸潤物の存在を全く示さないか、又はわずかだけ示した。古典的表現型マーカーの発現が全試料で実証された(データは示さず)。
【0258】
全てのセザリー症候群の皮膚試料におけるKIR3DL1/2染色は、予想通り腫瘍浸潤物における膜染色を示し、バックグラウンドの染色は示さなかった(図1A及び1B)。表皮、皮膚付属器(cutaneous adenexae)、正常な真皮細胞及び皮下組織を含む無関係の構造では染色は明らかでなかった。2症例からのリンパ節においても強くびまん性の染色が明らかであった。
【0259】
皮膚T細胞リンパ腫群では、形質転換菌状息肉症(n=1/3、図1C及び1D)並びに原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫(図1E及び1F)において顕著なびまん性で強い染色が明示された。全ての皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫において、分散したKIR3DL1/2+細胞が存在したが、主に脂肪細胞周囲に局在する大部分の腫瘍細胞で染色は陽性でなかった。
【0260】
末梢T細胞リンパ腫群では、図2BにおけるPTCL/NOS試料について示されるように、分散したKIR3DL1/2+細胞があるだけで、大部分の症例が染色されなかった。EATLの1症例(n=1/3、図2C及び2D)並びにATLLの1症例(n=1/4、図2E及び2F)は、強くびまん性のKIR3DL1/2の発現を示した一方で、検討されたHSTLの全試料は、びまん性で強いKIR3DL1/2の発現を示した(図2G及び2H)。
【0261】
【表2】
【0262】
追加的な16個体のコホートによって得られた結果から、KIR3DL2が:
− 2つの皮膚PTCL、すなわち皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫及び原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫、並びに
− 2つの非皮膚PTCL、すなわち腸管症関連T細胞リンパ腫及び肝脾γδT細胞リンパ腫
についての関連バイオマーカーであることが確認された。
【0263】
したがって、KIR3DL2は、形質転換菌状息肉症、腸管症関連T細胞リンパ腫及び成人T細胞白血病/リンパ腫などのリンパ腫を有する患者の亜集団を診断するためのバイオマーカーであり得る。KIR3DL2は、これらの特定の皮膚並びに非皮膚節性及び節外性リンパ腫の予後を判定するための優れた候補であり得ることも示唆できる。
【0264】
2.2)RT−PCR研究
定量RT−PCR研究から、研究された全ての皮膚T細胞リンパ腫において顕著に少ないKIR3DL1を伴うKIR3DL2の有意な発現が示された(表3)。
【0265】
【表3】
【0266】
以前に行われたように特異的プライマーを用いてRT−PCR実験を実施した(Ortonne et al. CD158K/KIR3DL2 Transcript detection in lesional skin of patients with erythroderma is a tool for the diagnosis of Sezary syndrome. J Invest Dermatol 2007; 128: 465-72)。SF3A1ハウスキーピング遺伝子を用いて各受容体の発現を較正し、第3及び4列に示したデータは、各受容体とCD3δ鎖との間のΔΔC値の比を表す。
【0267】
セザリー症候群試料についてのKIR3DL2のΔΔC値(×10)は5.83、31.6及び6.4であり、一方でKIR3DL1についての値は、それぞれ0.03、0及び0.43であった。同様に、陽性染色された形質転換菌状息肉症において、ΔΔC値はKIR3DL2について15.16、KIR3DL1について0.23であった。原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫でも、KIR3DL2転写物は、KIR3DL1よりもずっと高い率で、KIR3D2/KIR3DL1比130.14で発現されるように見えた。
【0268】
2つの皮下脂肪織炎様リンパ腫においても、KIR3DL2転写物はKIR3DL1よりも多く発現されたが、KIR3DL1との差はあまり顕著でなかった。したがって、これらの症例はむしろKIR3DL1よりもKIR3DL2を発現し、抗KIR3DL1/2クローン5.133が腫瘍細胞表面でKIR3DL2を染色したと結論することができる。図3に示すように、2つのHSTL試料において、並びに陽性染色を示しているEATL及びATLL試料において、トランスクリプトーム解析によっても、他の末梢T細胞リンパ腫よりもずっと高いレベルで有意なKIR3DL2のmRNA発現が確認された。
【0269】
本結果が、PTCL「非特定型」(PTCL/NOS)のサブセットについての推定上のバイオマーカーとしてとしてKIR3DL2を報告したIqbalら(Molecular signature to improve diagnosis in peripheral T-cell lymphoma and prognostication in angioimmunoblastic T-cell lymphoma; Blood, 2010, 115(5):1026-36)によって得られた結果と矛盾するように見えることに留意すべきである。しかし、PTCL/NOSは、1つの特定の定義済み下位区分に割り当てることができなかったので、それらが別個の性質の多様なリンパ腫を包含することに気づき得る。
【0270】
3)結論
皮膚T細胞リンパ腫(皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫及び原発性皮膚CD8+進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫)並びに真皮外末梢T細胞リンパ腫(一部の肝脾T細胞リンパ腫及び腸管症関連T細胞リンパ腫)のサブセットは、KIR3DL2を発現し、したがって標的化療法の優れた候補であるように見える。
【0271】
皮下「脂肪織炎様」T細胞リンパ腫を除き、大多数の腫瘍細胞が抗KIR3DL1/2モノクローナル抗体で染色された。RT−PCRの結果が入手可能であった全ての症例で、KIR3DL1よりもずっと高いレベルでKIR3DL2転写物が検出された。抗ヒトKIR3DL1/2マウスIgG1モノクローナル抗体(クローン5.133、Miltenyi Biotec, Paris, France)を使用する組織試料におけるKIR3DL2発現の特定は、KIR3DL2+リンパ腫の特定のために信頼できるものであった。
【0272】
実施例2:KIR3DL2に結合性のモノクローナル抗体(MAb)AZ158又はCpG ODNは、セザリー症候群悪性T細胞において別個の細胞死経路を誘導する
1)材料及び方法
1.1)患者及び細胞
セザリー症候群の診断は、承認された国際的な臨床的、組織学的及び生物学的基準で確定された。CD3CD4KIR3DL2細胞が90%を超えるセザリー症候群の患者15人からの血液を本研究のために収集したが、これは、施設内倫理委員会によって承認されたものである(Saint Louis Hospital, Paris)。
【0273】
ヘパリン処理静脈血から、リンパ球分離培地(LSM; PAA Laboratories, Les Mureaux, France)を用いる密度勾配遠心分離によって末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。
【0274】
CD4T細胞単離キットを製造業者のプロトコール(Miltenyi Biotech)に従って使用するMACSによって、CD4T細胞を精製した。本研究に使用されたセザリー細胞系を樹立し、以前に記載されたように増幅させ、安定な表現型を維持した。2mM L−グルタミン、1%ペニシリン−ストレプトマイシン(Invitrogen)及び10%ヒト血清(Jacques Boy Biotechnologies Institute)を補充したRPMI 1640培地中で細胞を培養した。
【0275】
1.2)CpG ODN、GpC ODN又は抗体の細胞処置
CpG ODN及びGpC ODN処置のために、細胞を24ウェルプレート中で2×10個/mlの濃度で表示時間(1、4又は7日)培養した。以下のCpG ODN及びGpC ODNを終濃度10μg/mlで使用した:CpGクラス−A(ODN 2336)、CpGクラス−B(ODN 2006)、CpGクラス−C(ODN 2395)、GpC(ODN 2395対照)及び対照ODN(ODN TTAGGG)(全てInvivogen製)。
【0276】
【表4】
【0277】
大文字の塩基はホスホジエステルであり、小文字の塩基はホスホロチオアートである。
【0278】
インキュベーションは最大12日間処理した。
【0279】
短時間刺激について、細胞を無処置のままとするか、又は抗CD3(CD3x3、IgG1;局所産生)、抗KIR3DL2(AZ158、IgG2a;Innate Pharma, Marseille, Franceによって親切にも提供された)若しくはCpG ODN−Cと共に単独で若しくは組み合わせて処置し、続いてヤギ抗マウスIgG Ab(Beckman Coulter)と37℃で5分間架橋形成させた。
【0280】
増殖アッセイ法及びアポトーシスアッセイ法を、表示の抗体、CpG ODN及び/又はGpC ODNで前もってコーティングされた96ウェルプレート中で37℃で4日間(図5)又は7日間(図6及び8)培養された細胞で行った。インキュベーション後に、細胞を下記のようにフローサイトメトリー又は生化学分析用に処理した。
【0281】
1.3)フローサイトメトリー
抗KIR3DL2 mAb Q66(IgM;Dr A. Moretta, Genova, Italyによって親切にも提供された)+ヤギ抗マウスIgM−FITC抗体、抗CD3−PC7 mAb、抗TCRV−PE mAb及び抗CD4−PC5 mAb(Beckman Coulter, Marseille, France)を使用して標準的な手順に従ってセザリー細胞の染色を行った。増殖アッセイ法のために、活性化前に細胞に0.5μM CFSE(Invitrogen)を前もって負荷し、一方で、PEコンジュゲーション型7AAD(BD Biosciences)を供給業者のプロトコールに従って使用してアポトーシス細胞の検出を行った。FC500サイトメーター(Beckman Coulter)で細胞を分析した。
【0282】
1.4)免疫蛍光
細胞を未処置のままか、又はCpG ODN−C、FITC標識CpG ODN−C若しくは対照ODNの存在下にて37℃で24時間インキュベーションするかのいずれかとした。細胞を、Q66 mAb及びFITC結合型ヤギ抗マウスIgM Abを用いたKIR3DL2免疫標識に供し、洗浄し、ポリ−L−リシンコーティング済みカバーグラス上に固定化した。−20℃でのメタノール固定段階後に、DABCO(Fluka)を有するポリビニルアルコールマウンティング媒質中で細胞をマウントした。KIR3DL2の細胞内染色のために、細胞をポリ−Lリシンカバーグラスに接着させ、メタノール中で固定し、KIR3DL2標識前にPBS/0.1% Tween 20で透過処理をした。洗浄後、カバーガラスを載せ、Leica DMRB顕微鏡で分析した。
【0283】
1.5)免疫沈降及びウエスタンブロッティング
他の箇所に記載のように活性化細胞を溶解に供し、核除去後の上清を調製及び処理した。ウエスタンブロッティングのために、試料をSDS−PAGEによって分離し、ニトロセルロース膜上に移行させた。免疫沈降物を抗ホスホ−CD3 mAb(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)及び抗CD3 mAb(Cell Signaling)で探査した。以下の分子に特異的な抗体を使用して核除去後溶解物の分析を行った:切断されたカスパーゼ3、切断されたカスパーゼ7及び切断されたカスパーゼPARP、ホスホ−STAT3、STAT3、Erk1/2(全てCell Signaling Technology製)及びホスホ−Erk1/2(Sigma-Aldrich)。順番に検出を行う場合、各顕色段階の間にストリッピング手順を行った。適切なホースラディッシュペルオキシダーゼ結合型二次抗体(Jackson Immunoresearch)と共にインキュベーション後、ECLシステム(Perbio Science, Brebieres, France)及びImageQuant LAS 400システム(GE Healthcare)を使用して検出を行った。
【0284】
2)結果
2.1)KIR3DL2のインターナリゼーションはそれがCpG ODNと会合すると誘導されるが、抗KIR3DL2 mAb AZ158では誘導されない
本発明者らは、以前に、セザリー症候群の患者の腫瘍性CD4Tリンパ球の信頼できる細胞表面マーカーとしてKIR3DL2を特定した。KIR3DL2がセザリーCD4T細胞において任意の機能を発揮するかどうかを立証するために、抗KIR3DL2モノクローナル抗体(mAb)AZ158又はその新たに特定されたリガンドCpG ODNのいずれかを使用することによって受容体の会合を達成した。相互作用のAZ158及びCpG ODN−C部位の両方が受容体のD0細胞外ドメイン内に位置づけられたことに留意されたい。
【0285】
CpG ODNは、NK細胞上でKIR3DL2の細胞表面のダウンモジュレーションを促進することが示された(Sivori et al. A novel KIR-associated function: evidence that CpG DNA uptake and shuttling to early endosomes is mediated by KIR3DL2; Blood, 2010, 116(10):1637-1647)ので、本発明者らは、最初に、そのような観測が悪性セザリー細胞にも当てはまるかどうかを試験した。本発明者らは、対照ODNではなく、A、B又はC型のCpG ODNと共にセザリー患者のPBMCをインキュベーションすることが、セザリー患者のCD4T細胞表面での受容体平均蛍光強度の50%低下に対応する、KIR3DL2の実質的なダウンモジュレーションに至ったことを観測した(表5)。
【0286】
【表5】
【0287】
無処置;対照。
【0288】
CpG ODN−CはKIR3DL2の効率的な細胞表面モジュレーションを誘導し、免疫細胞上のクラスA及びクラスB ODN(CpG ODN−A及びCpG ODN−B)の免疫効果を組み合わせたので、それを以下の実験のために優先的に使用した。次に、ODN−C処置細胞又はAZ158 mAb処置細胞を用いてセザリー患者の腫瘍T細胞クローンによるKIR3DL2の発現レベルを平行して監視した。結果として生じたデータから、ODN−CがKIR3DL2のダウンモジュレーションを促進した一方で、KIR3DL2とAZ158 mAbとのライゲーションは、悪性T細胞上で検出された受容体レベルに影響しなかったことが明らかに実証された(それらのクローン性TCRVβの再配列により特定)(図4A)。分析された異なるセザリー患者12人から同一の結果が得られた(図4B)。
【0289】
最終的に、樹立セザリー細胞系での蛍光顕微鏡分析から、休止細胞において、又は対照ODNと接触後に形質膜に均等に分布しているKIR3DL2が、CpG ODN−C細胞処置後に部分的にインターナリゼーションされることが示された。同様に、FITC結合CpG ODN−Cを使用した場合、この後者は、細胞インキュベーション後に形質膜及び細胞内レベルの両方で検出された。まとめると、これらのデータは、KIR3DL2へのAZ158 mAbではなくCpG ODN−Cの結合が、セザリー細胞における受容体のインターナリゼーションを促進することを立証した。
【0290】
2.2)CpG ODN−CではなくAZ158 mAbはKIR3DL2の共受容体阻害機能を促進する
セザリー細胞上でのKIR3DL2トリガーの結果をさらに検討するために、本発明者らは、CD3誘導型悪性T細胞の増殖及びアポトーシスの過程に及ぼすその潜在的機能を最初に評価した。このために、セザリー患者からのPBMCを、抗CD3 mAb単独で、又はAZ158 mAb若しくはCpG ODN−Cと共に4日間活性化した。悪性T細胞クローンの増殖及びアポトーシス状態を免疫標識によってさらに判定した。患者1からのPBMCで得られた代表的な結果を図5A及びBに示す。本発明者らは、悪性T細胞クローン(TCRV8CD4T細胞として特定)のCD3依存性増殖が、KIR3DL2にCpG ODN−CではなくAZ158 mAbが結合すると強く阻害されたことを観測した(図5A)。その結果、CD3が誘導する腫瘍細胞死もAZ158 mAbの存在下で障害されることが見出された一方で、CpG ODN−Cは無作用であった(図5B)。これらの観測に一致して、AZ158 mAbがKIR3DL2に結合したときに、CD3標的化時に誘導されるCD3鎖のリン酸化及びErk1/2活性化のダウンモジュレーションが観測された(図5、C及びD)。対照的に、CD3介在性Erk1/2活性化の著しい改変はCpG ODN−Cの存在下で観測されなかった。したがって、KIR3DL2へのCpG ODN−Cの結合はCD3依存性活性化過程を妨害しなかったように見え、一方でKIR3DL2のAZ158 mAbの結合はその共受容体阻害機能を明らかにした。
【0291】
2.3)長期CpG ODN−C/KIR3DL2相互作用はセザリー細胞のアポトーシスに至る
本発明者らは、最初に、4日間インキュベーションのアッセイ法を行ったとき、腫瘍細胞生存率に及ぼすCpG ODN−Cの影響を全く観測しなかった(図5B参照)。したがって、インキュベーション時間を最大12日間まで延長した。7日目の患者15からのPBMCで得られた代表的な結果を図6Aに示す。
【0292】
著しいことに、7日目に腫瘍細胞生存率は処置の長さ(無処置/NTパネル)又はAZ158 mAb若しくは対照ODNの存在によって影響されなかったものの(全ての条件は5〜6%という自然アポトーシスの検出を生じる)、CpG ODN−Cの添加は、悪性細胞死亡率の有意な増加に至り、腫瘍集団内の7AAD陽性細胞は29%と検出された。
【0293】
対照的に、健康なドナーから単離されたPBMCを用いて行われた類似の実験から、正常なCD4T細胞が実験時間の長さに、より敏感であるように見えたものの、この集団の15%が時間経過中にアポトーシスを受けて、細胞死はCpG ODN−C又はAZ158 mAbの存在によって増幅されなかったことが明らかとなった。
【0294】
患者15(図6A)で得られた結果を、追加的な患者7人を用いて確認し(図6B)、最大CpG ODN−C誘導型アポトーシスが、患者に応じて7〜12日処置後に検出された。
【0295】
最終的に、CpG ODN−Cと共にインキュベーション後のカスパーゼ依存性アポトーシス経路の誘導を免疫ブロッティングによって確認した。図6Cに示すように、セザリー細胞系をCpG ODN−Cと共にインキュベーションすると切断型のカスパーゼ7及びカスパーゼ3、並びにそれらの基質PARPのレベルが増加することが見出され、6時間処置後に最大レベルに達した。まとめると、これらの結果から、CpG ODN−Cを用いた処置によりセザリー悪性細胞の特異的アポトーシスを誘導できたことが立証された。
【0296】
2.4)セザリー細胞のCpG ODN−C処置はホスホ−STAT3の脱リン酸化を招く
以前の研究から、セザリー細胞においてSTAT3は構成的にリン酸化されることができ、その脱リン酸化を促進する処置が悪性細胞死に至ることが立証された。したがって本発明者らは、CpG ODN−C処置細胞におけるSTAT3のリン酸化状態を検討した。セザリー細胞系に行われた動態実験から、CpG ODN処置で有意な時間依存性STAT3脱リン酸化が起こり、それがタンパク質の分解と相関関係にないことが示された(図7A)。この脱リン酸化過程は、さらに、全てのCD4Tリンパ球がKIR3DL2であった患者のソーティング済みCD4T細胞で確認された(図7B)。これらの細胞において、STAT3の完全な脱リン酸化は、ODN−Cインキュベーションの24時間後に視覚化され、一方でホスホ−STAT3レベルは、AZ158 mAb又は対照ODNの存在下で改変されなかった。したがって、セザリー細胞のCpG ODN−C誘導型アポトーシスは、STAT3の脱リン酸化と相関関係にあり得るように見えた。
【0297】
2.5)GpC ODN処置
GpC ODNは、CpGの代わりにGpCジヌクレオチドが存在することがCpG ODNと異なり、通常はCpG ODNについての陰性対照として使用される。
【0298】
予想外に、GpC ODNの存在下で7日間培養されたセザリー細胞の処置は、これによってCpG ODN−Cと共に培養されたセザリー細胞の処置と同程度にセザリー細胞のアポトーシスに対して活性であることが示された(図8A〜8C参照)。
【0299】
セザリー細胞のCpG ODN−C(図8A、曲線2)処置及びGpC(図8A、曲線3)処置の両方が、未処置のまま(図8A、曲線1)又は対照ODN(図8A、曲線4)で処置されたセザリー細胞に比べてKIR3DL2発現の減少を招く。
【0300】
しかし、セザリー細胞に対するGpC ODNの作用は、CpG ODNと異なるように見える。
【0301】
実際に、早期アポトーシスは、GpC ODNで処置されたセザリー細胞におけるアポトーシス事象の21%に相当し、後期アポトーシスは6%に相当するが、一方でCpG ODN−Cで処置されたセザリー細胞は、後期アポトーシス事象と同じ多さの早期アポトーシス事象(16%)を示す(図8B及び8C)。
【0302】
3)結論
KIR3DL2の同じ細胞外ドメイン、すなわちD0ドメインに結合するものの、セザリー細胞に対するAZ158 mAb及びCpG ODNの作用は明らかに異なる。本発明者らは、CpG ODNを介したCD3及びKIR3DL2の共会合が、KIR3DL2依存性陰性シグナルの送達に至らなかったことを示した。さらに、本発明者らは、AZ158 mAbとは異なり、CpG ODNが受容体のインターナリゼーションを促進することを観測した。全ての被験患者について、本発明者らは、CpG ODN処置後にKIR3DL2 MFIの平均50%の低下を経験し、より高い濃度のCpG ODN(最大25μg/ml)又はより長い暴露時間(最大12日)を使用した場合、この閾値を超えない(データは示さず)。NK細胞において、KIR3DL2のインターナリゼーションはエンドソーム区画におけるCpG ODN連結型受容体とTLR9との共局在に至る14。したがって、これらの細胞においてKIR3DL2がCpG ODNをそれらの受容体TLR9にもたらしてNK細胞活性化を招く担体タンパク質として作用し得ることが示唆されている。セザリー細胞系及びセザリー患者腫瘍細胞におけるTLR9転写物の検出にかかわらず、本発明者らは、これらの細胞においてTLR9の発現を全く検出しなかった(データは示さず)。加えて、CpG及び非CpG ODNがTLR9及びMyD88に依存しないメカニズムによってマウス及びヒトCD4+T細胞を共刺激できることが最近報告された28。本発明者らの観測と一緒に、これらのデータから、セザリー細胞においてTLR9の関与なしのKIR3DL2/ODN CpG介在性作用の可能性が示唆された。これは、また、TLR9発現に依存するNK細胞及びセザリー細胞(それぞれ活性化受容体に対するアポトーシス介在性受容体)におけるCpG ODN受容体としてのKIR3DL2についての別個の役割も指している。
【0303】
予想外に、最大であるが単に部分的なKIR3DL2のインターナリゼーション(細胞表面受容体の50%喪失に対応)及びSTAT3の完全な脱リン酸化が、CpG ODN−Cへのセザリー患者腫瘍細胞の曝露の24時間後に観測されるものの、腫瘍T細胞クローンのアポトーシスの検出は7〜12日の処置を必要とする。対照的に、増殖中のセザリー細胞系に対して行われた実験から、CpG ODNの添加の2〜4時間後に受容体の完全なインターナリゼーションが示され(データは示さず)、STAT3の脱リン酸化及び細胞のアポトーシスが6〜8時間後に検出された(図4A及びS1)。これらの時間経過の矛盾が、樹立された増殖中のセザリー細胞に比べて末梢血腫瘍細胞の低代謝回転及びホスホSTAT3依存性抗アポトーシス経路をシャットダウンするために数日必要であることの結果かどうかはまだ決定されていない。それでもなお、結果は、セザリー細胞において、KIR3DL2/CpG ODNの結合及びインターナリゼーションがホスホSTAT3の脱リン酸化及び腫瘍細胞死に至ったことを示している。以前の研究から、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤チロホスチンAG490及びククルビタシンI又はクルクミンを用いたセザリー細胞の処置が、ホスホSTAT3の脱リン酸化を効率的に促進し、セザリー細胞のアポトーシスを誘導することが実証された。セザリー細胞におけるSTAT3の構成性活性化が、SHP−1の喪失のせいではなく、JAKファミリーメンバーの構成性異所性活性化によって媒介されることが最近立証された。セザリー細胞におけるKIR3DL2へのCpG ODNの結合がJAK活性にどのように影響し得るかを決定するための努力が現在行われている。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]