特許第6865583号(P6865583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6865583半導体デバイスのウェハーのスクライビング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865583
(24)【登録日】2021年4月8日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】半導体デバイスのウェハーのスクライビング
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20210419BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20210419BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20210419BHJP
【FI】
   H01L21/78 B
   B23K26/364
   B23K26/53
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-527257(P2016-527257)
(86)(22)【出願日】2014年10月13日
(65)【公表番号】特表2016-541115(P2016-541115A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(86)【国際出願番号】IB2014065251
(87)【国際公開番号】WO2015063633
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2017年10月12日
【審判番号】不服2019-7433(P2019-7433/J1)
【審判請求日】2019年6月5日
(31)【優先権主張番号】61/896,842
(32)【優先日】2013年10月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517152128
【氏名又は名称】ルミレッズ ホールディング ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ペッダーダ,エス ラオ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,フランク リリー
(72)【発明者】
【氏名】カサヘ,エンリコ
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ,ラジャット
【合議体】
【審判長】 辻本 泰隆
【審判官】 恩田 春香
【審判官】 脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−114322(JP,A)
【文献】 特開2006−245062(JP,A)
【文献】 特開2008−98465(JP,A)
【文献】 特開2005−268752(JP,A)
【文献】 特開2012−227187(JP,A)
【文献】 特開2007−173475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成長基板と、該成長基板の上にエピタキシャル成長した材料と、該材料の上に形成されたデバイスとを含むウェハーを分離するための方法であって、
前記ウェハーの前側から、第1のスクライブラインをアブレーションスクライビングするステップであり、前記ウェハー内の2列のデバイスを分離するストリートに前記第1のスクライブラインが整合する、ステップ、
前記ウェハーの後側から、前記ストリートに整合する第2のスクライブラインをレーザーを用いてステルススクライビングすると同時に
前記後側から、前記レーザーのエネルギーを分離して前記第2のスクライブラインよりも浅い深さの場所にもレーザービームを収束させ前記第2のスクライブラインをステルススクライビングする間に前記ストリートに整合する第3のスクライブラインをステルススクライビングするステップ、
を含み、
前記第1のスクライブラインは、前記成長基板の上にエピタキシャル成長した前記材料の厚さを貫通して前記成長基板内にまで延びる深さであり、前記成長基板内部で延びる前記深さは、前記成長基板の上にエピタキシャル成長した前記材料の厚さ以上であり、前記材料の厚さの3倍以下である、
方法。
【請求項2】
前記成長基板は200ミクロンよりも大きな厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ストリートは、50ミクロン未満の幅を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記後側で、前記ストリートに整合した第4のスクライブラインをスクライビングするステップをさらに含み、前記第4のスクライブラインは、前記成長基板内において前記第2及び第3のスクライブラインとは異なる深さにある、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のスクライブラインをアブレーションスクライビングするステップの前に、エピタキシャル成長した材料を部分的にエッチ除去することにより、2つのデバイスを分離するストリートをもたらすステップ、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年10月29日に出願された米国仮出願第61/896842号に基づく優先権を主張して2014年10月13日に発明の名称を「半導体発光デバイスのウェハーのスクライビング」として出願された国際出願PCT/IB2014/065251の国内移行出願である。国際出願PCT/IB2014/065251及び米国仮出願第61/896842号を参照して本明細書に引用する。
本発明は、透明基板上に形成した半導体発光デバイスのウェハーをスクライビングする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LEDs)、共振空洞発光ダイオード(RCLEDs)、垂直空洞レーザーダイオード(VCSELs)及び端面発光レーザー(edge emitting lasers)を含む半導体発光デバイスは、現在利用可能な最も高率がよい発光源の範疇に入る。可視スペクトルに亘って動作可能な高輝度発光デバイスの製造において現在興味のある材料システムは、III−V族半導体であり、特に、III族窒化物材料とも呼ばれる、ガリウム、アルミニウム、インジウム及び窒素の二元、三元及び四元合金を含む。典型的には、III族窒化物発光デバイスは、異なる組成及びドーパント濃度の半導体層のスタックを、サファイア、シリコンカーバイド、III族窒化物又は他の好適な基板上に、金属有機化学蒸着法(MOCVD)、分子ビームエピタクシー成長法(MBE)その他のエピタキシャル技術を用いて、エピタキシャル成長させることにより製造される。当該スタックは、しばしば、基板上に形成され、例えばシリコンでドープされた1層以上のn型層、n型の単層又は複数層の上に形成された活性領域中の1層以上の発光層、及び上記活性領域の上に形成され、例えばマグネシウムでドープされた1層以上のp型層を含む。n型及びp型領域上に電気的接触が形成される。
【0003】
ウェハーのデバイス行(rows of devices)とデバイス行との間のストリート(streets)に沿ってウェハーをスクライビング(scribing)しブレーキング(breaking)することにより、しばしば個々のデバイス又はデバイス群がウェハーから分離される。図1は、米国特許出願公開第2011/0132885号明細書に詳細に記載されており両面スクライビングとして知られている、ウェハーをスクライビングする一方法を示している。図1において、LED406がストリート408から分離されている。カメラ430及び434がウェハーの前側及び後側で用いられて、ストリート408に対してスクライブラインを整合させる。米国特許出願公開第2011/0132885号明細書のパラグラフ45は、以下の記載がある。「本方法に従って、第1の浅い後側スクライブ423がウェハー402の後側405のアブレーションにより形成できる。次に、ウェハー402の基板404の内部にレーザービーム422を収束させて内部結晶損傷(例えば、ステルス又は擬ステルススクライビング(stealth or quasi-stealth scribing))を作ることにより、ウェハー402の前側403から第2の前側スクライブ427を形成できる。」
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0132885号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一目的は、半導体発光デバイスのウェハーをスクライビングする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、成長基板と、該成長基板上に形成され、少なくとも1つのストリートにより分離された複数の行内に配置された複数のデバイスとを含むウェハーを分離するための方法を含む。当該ウェハーは、複数のデバイスが形成される前側と、成長基板の表面である後側とを有する。当該方法は、前側で、ストリートに整合した第1のスクライブラインをスクライビングするステップと、後側で、ストリートに整合した第2のスクライブラインをスクライビングするステップと、後側で、ストリートに整合した第3のスクライブラインをスクライビングするステップとを含む。
【0007】
本発明の実施形態は、成長基板と、該成長基板上に形成され、少なくとも1つのストリートにより分離された複数の行内に配置された複数のデバイスとを含むウェハーを分離するための方法を含む。当該ウェハーは、複数のデバイスが形成される前側と、成長基板の表面である後側とを有する。当該方法は、前側で、ストリートに整合した第1のスクライブラインをスクライビングするステップと、後側で、ストリートに整合した第2のスクライブラインをスクライビングするステップとを含む。成長基板は、100ミクロンを超える厚さを有する。ストリートは50ミクロン未満の幅を有する。
【0008】
本発明の実施形態は、成長基板と、該成長基板上に形成され、少なくとも1つのストリートにより分離された複数の行内に配置された複数のデバイスとを含むウェハーを分離するための方法を含む。当該ウェハーは、複数のデバイスが形成される前側と、成長基板の表面である後側とを有する。当該方法は、ストリートに整合した第1のスクライブラインをスクライビングするステップと、ストリートに整合した第2のスクライブラインをスクライビングするステップとを含む。第1及び第2のスクライブラインの両方はウェハーの同じ側に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】半導体ウェハーのための従来のスクライビング技術を示す図である。
図2】III族窒化物LEDの一例を示す図である。
図3】デバイスのウェハーをスクライビングすることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示す技術において、ウェハーの前側及び後側に浅いスクライブラインが形成される。スクライブラインが浅いために、この技術により許容できる歩留まり率でスクライビングしブレーキングできる基板の厚さが制限される。例えばサファイアなどの典型的な基板材料の硬度が硬いことがこの問題を悪化させる。図1に示す技術は、例えば90μm未満の厚さの成長基板を伴うデバイスをスクライビングしブレーキングするのに用いることができる。
【0011】
ある発光デバイスにおいては、例えば、デバイスの発光層から離れた成長基板上に波長変換層その他の構造のスペースのために、発光デバイスが付いた厚い成長基板を残すことが望ましい。本発明の実施形態は、厚い成長基板を伴って発光デバイスのウェハーをスクライビングしてブレーキングするための技術に向けられている。
【0012】
以下の実施例を通じ、半導体発光デバイスは、青色光又は紫外光を発するIII族窒化物LED、レーザーダイオードなどのLED以外の半導体発光デバイスであり、他のIII−V族材料、III−燐化物、III−ヒ化物、II−VI族材料、ZnO又はSi系材料などの他の材料システムから作られる半導体発光デバイスを用いることもできる。
【0013】
図2は、本発明の実施形態においてIII族窒化物LEDが用いられ得ることを示している。如何なる好適な半導体発光デバイスをも持ちいることができ、本発明の実施形態は、図2に示すデバイスに限定されない。図2のデバイスは、従来技術において知られているように、成長基板10の上にIII族窒化物半導体構造12を成長させることにより形成される。成長基板はしばしば、サファイアであるが、例えば、SiC, Si, GaN 又は複合基板などの如何なる好適な基板であってもよい。III族窒化物半導体構造を成長させる成長基板の表面は、成長前にパターン加工され(patterned)、粗面加工され(roughened)又は質感加工され(textured)てもよく、それらの加工がデバイスからの光取り出しを改良しうる。
【0014】
半導体構造12は、n型領域及びp型領域に挟まれた発光領域又は活性領域を含む。n型領域16が最初に成長されてよく、異なる組成及びドーパント濃度の多層を含んでよい。上記多層は、例えば、n型の又は故意にドープしてはいなくてよいバッファ層又は核生成層(nucleation layers)などの製造層(preparation layers)、及び故意にドープしてはいない又はn型若しくはp型であり、効率的に発光するための発光領域に適した特定の光学的、材料的又は電気的な特性をねらって設計されたデバイス層を含む。発光領域又は活性領域18が上記n型領域の上に成長する。好適な発光領域の例として、単一の厚い若しくは薄い発光層、又はバリア層により分離された多重の薄い若しくは厚い発光層を含む多重量子井戸発光領域がある。p型領域20が次に、上記発光領域の上に成長してもよい。上記n型領域と同様に、上記p型領域も、故意にドープしてはいない又はn型の層を含む異なる組成、厚さ及びドーパント濃度の多層を含んでよい。
【0015】
成長後に、p型領域の表面上にp型コンタクトが形成される。p型コンタクト21はしばしば、反射金属、及び反射金属のエレクトロマイグレーションを防止し又は減少させるガード金属などの多重導電層を含む。反射金属はしばしば、銀であるが、如何なる好適な単一の又は複数の材料であってよい。p型コンタクト21の形成後に、p型コンタクト21、p型領域20及び活性領域18の一部が除去されて、n型領域16の一部を露出させる。露出したn型領域の上にn型コンタクト22が形成される。n型コンタクト22及びp型コンタクト21は、ギャップ25によって互いに電気的に絶縁される。ギャップ25は、シリコンの酸化物又は他の好適な材料などの誘電体で充填してもよい。多重のn型コンタクトビアを形成してもよく、n型コンタクト22及びp型コンタクト21は、図2に示す構成に限定されない。従来技術で知られているように、誘電/金属スタックを伴う複数のボンドパッドを形成するために、n型コンタクト及びp型コンタクトを再分配してもよい。
【0016】
LEDへの電気的接続を形成するために、1つ以上の相互接続体26及び28が、n型コンタクト22及びp型コンタクト21の上に形成され或いはそれらに電気的に接続される。
【0017】
図2において、相互接続体26はn型コンタクト22に電気的に接続されている。相互接続体28は、p型コンタクト21に電気的に接続されている。誘電層24及びギャップ27により、相互接続体28及び26はそれぞれ、n型コンタクト22及びp型コンタクト21から電気的に絶縁されており、かつ、互いに電気的に絶縁されている。相互接続体26及び28は、例えば、ハンダ、スタッドバンプ、金層その他の好適な構造であってよい。
【0018】
多くの個々的なLEDが単一のウェハー上に形成され、次に、後述するように、スクライビング及びブレーキングすることにより、ウェハーからダイシングされる。成長基板はしばしば、スクライビング及びブレーキングする前に薄層化される。成長基板は、エッチング技術、又は研削(grinding)、研磨(polishing)若しくはラップ磨き(lapping)などの機械的技術を含むあらゆる好適な技術により薄層化することができる。薄層化後の成長基板10は、ある実施形態では少なくとも100μm厚であってよく、ある実施形態では少なくとも180μm厚であってよく、ある実施形態では少なくとも200μm厚であってよく、ある実施形態では360μm厚未満であってよく、ある実施形態では少なくとも220μm厚であってよく、ある実施形態では260μm厚未満であってもよい。薄層化後に、成長基板の成長表面とは反対側の表面(すなわち、フリップチップ構成において多くの光を通し取り出す表面)が、パターン加工、粗面加工又は質感加工されてもよく、それらの加工がデバイスからの光取り出しを改良しうる。
【0019】
図2に示すデバイスは、後述するようにウェハー上の個々のデバイス間のストリート32においてスクライビングしブレーキングすることにより、ウェハーから分離される。図2に示すような、ある実施形態において、何らかのエピタキシャル成長した材料33が、隣接するLED1間のストリート32内に残る(LED1の両側の各ストリート32の一部のみが図2に示されている。)。例えば、n型領域16の大部分をエッチ除去することができ、故意にドープしてはおらず実質的に絶縁性の材料33を露わにできる。ある実施形態において、スクライビング及びブレーキングに先立ち、ストリート32において、半導体構造が完全に除去され、成長基板10の表面を露出させる。個々のデバイス又はデバイス群を形成するためのスクライビング及びブレーキングの後に、波長変換層、レンズその他の光学構造などの1つ以上の構造体を、LED1とは反対側の成長基板の表面30上に形成してもよい。
【0020】
エピタキシャル成長構造12,n型コンタクト22及びp型コンタクト21、並びに相互接続体26および28を含む個々のLEDは、次の図面においてブロック1で表す。
【0021】
図3は、本発明の実施形態に従った方法により形成され、スクライビングされたウェハーの一部を示す。図3は、ストリート32により分離された2つのLED1を示す。図3に示すウェハーは、LED1が配置された前側48と、成長基板10の表面である後側50を有する。ストリート32が前側48からスクライビングされ、少なくとも一本のスクライブライン40を形成する。スクライブライン40は、スクライビング技術の一つであるアブレーションスクライビングにより形成することができる。該技術は、スクライビングされたラインに沿って材料を除去し、スクライビングされたラインに沿ってノッチ又は開口を形成するものである。アブレーションスクライビングは、例えばドライエッチング、鋸又はダイヤモンドブレードを伴う機械的スクライビング、又はレーザースクライビングにより遂行可能である。レーザースクライビングは、例えば266nm又は355nmのダイオードポンプ固体レーザーを用いて実行できる。レーザービームは、パルス化されても、連続ビームでもよい。レーザースクライビングツールは、当技術分野で知られており、市販されている。
【0022】
ウェハーの前側48上に形成されるスクライブライン40は、LED1を形成する半導体構造の一部としての成長基板上にエピタキシャル成長されストリート32内に残る半導体材料33の全厚さを貫通して、成長基板10に達する。成長基板10内のスクライブライン40の深さは、ある実施形態において少なくとも材料33の厚さであり、ある実施形態において材料33の厚さの3倍以下である。エピタキシャル成長材料33は、ある実施形態において16μm厚以下であり、ある実施形態において8μm厚以下である。
【0023】
ストリート32は後側50からもスクライビングされ、少なくとも1本のスクライブラインを形成する。2本のスクライブライン42および44が図3に図示されている。ある実施形態において、ステルススクライビングによりスクライブライン42及び44を形成できる。ステルススクライビング(stealth scribing)は、例えばナノ秒赤外イットリウム・アルミニウム・ガーネット・レーザーを用いて実行できる。1つ以上のレンズを用いて、当該レーザービームを透明サファイヤ基板10内部に収束する。レーザービームは、サファイヤ基板を変更して、欠陥領域を形成する。欠陥領域は、機械的負荷の下で、周囲の非欠陥サファイヤよりも容易にブレーキングされる。ステルススクライビングツールは、当技術分野で知られており、市販されている。ある実施形態において、ステルススクライビングツールで多数回パスする間に、すなわち当該ツールがウェハー上を多数回スキャンされる間に、スクライブライン42及び44などの多重ステルススクライブラインが形成される。ある実施形態においては、レーザーエネルギーを空間的に離れた2本以上のビームへと分離して異なる深さの2以上の欠陥領域を生じさせることによって、1回のパスの間に、すなわちツールがウェハー上を1回だけスキャンされる間に、多重ステルススクライブラインが形成される。
【0024】
第1の後側スクライブライン42は、成長基板10内部で、第2の後側スクライブライン44とは異なる深さに位置される。欠陥領域42及び44は、ある実施形態において少なくとも10μm幅であってよく、ある実施形態において50μm幅以下であってよい。ある実施形態において、欠陥領域42及び44は、少なくとも20μm長でよく、120μm長以下であってよい。ある実施形態において、浅い欠陥領域44は、成長基板10の表面30から(の距離が)少なくとも20μmであってよく、50μm以下であってよい。ある実施形態において、深い欠陥領域42は、成長基板10の表面30から(の距離が)少なくとも40μmであってよく、120μm以下であってよい。表面30に対するスクライブライン42及び44の深さは、市販のステルススクライビングツール上で光学素子を調節することにより選択可能である。
【0025】
ある実施形態において、浅い後側スクライブライン44は擬ステルススクライビングにより形成できる。その擬ステルススクライビングでは、レーザースアブレーションクライビングにより、基板10の表面30に一部のスクライブラインが形成され、レーザービームを収束して欠陥領域を形成することにより、基板10の内部に一部のスクライブラインを形成する。ある実施形態において、浅い後側スクライブライン44はアブレーションスクライビングにより形成できる。アブレーションスクライブラインは、前側スクライブライン40に関連して上述した。
【0026】
スクライビングしたライン40,42は、如何なる順序でも形成することができる。ある実施形態において、前側スクライブライン40が最初に形成され、次にウェハーが反転されて、後側スクライブライン42及び44が形成される。ある実施形態において、後側スクライブライン42及び44が最初に形成され、次にウェハーが反転されて、側スクライブライン40が形成される。深い後側スクライブライン42を浅いスクライブライン44よりも前に形成してもよく、浅い後側スクライブライン44を深いスクライブライン42よりも前に形成してもよい。
【0027】
ある実施形態において、ブレーキング前に3本のスクライブラインを形成してもよい。より厚い基板のブレーキングを容易にするための必要性に応じて、追加的なスクライブラインを形成してもよい。ある実施形態において、異なる深さでステルススクライビングすることにより形成される1本以上の追加的な後側スクライブラインを追加してもよい。特に、後側からのステルススクライビングによって、第4及び第5のスクライブラインを形成することができる。
【0028】
少なくとも1本のスクライブライン42を、図1で説明した浅いスクライブラインに比較して、成長基板内部にかなり深く形成する。したがって、図3に示す構造においては、ストリート32はかなり正確にブレーキングされることができる。何故ならば、多重スクライブライン40,42及び44に沿って信頼性をもって割れ目が伝搬することによる。ブレーキング中の割れ目の伝搬をかなりよく制御できることから、図3のデバイス内のストリート32は、図1(単に2本の浅いスクライブラインが形成されている)の構成内の厚い基板をブレーキングするのに要するストリートよりも狭くすることができる。有る実施形態において、ストリート32は、50μm幅未満である。さらに、ブレーキングゾーン内の多重スクライブラインにより基板が脆弱化しているので、わずか1本又は2本のスクライブラインを有する動圧の基板に比較して、基板をブレーキングするのに要する力が小さくてよい。
【0029】
前側及び後側スクライブラインは全て、例えば当技術分野で知られた視覚整合(visual alignment)を用いて、実質的同一平面内に整合されている。
【0030】
ある実施形態において、前側スクライブライン40が削除され、ウェハーの後側50っから異なる深さの少なくとも2本のスクライブラインを形成した後にウェハーをブレーキングする。ある実施形態において、ウェハーの後側50から、例えばステルススクライビングを用いて、第1、第2、第3のスクライブラインが形成される。第1、第2、第3のスクライブラインのうちの1本が基板10の前側表面48に近接した領域内に形成され、それにより、このスクライブラインは前側スクライブライン40を効果的に代替する。ある実施形態において、基板10の前側表面に最も近接したスクライブラインは、基板10の前側表面から20μm以内に形成されてもよい。
【0031】
ある実施形態において、ウェハーの前側48から異なる深さに少なくとも2本のスクライブラインを形成した後に、ウェハーがブレーキングされる。後側スクライブラインは削除される。例えば、前側アブレーションスクライビングしたライン及び前側ステルススクライビングしたラインを形成した後に、ウェハーをブレーキングする。
【0032】
第1の例において、図3に示すような1本の前側スクライブラインと、2本の後側スクライブラインとを用いて、基板がスクライブされる。基板10は、240ミクロン厚であり、前側スクライブライン40が基板中へ6ミクロン延び、後側スクライブライン42は、基板中の深さ15ミクロンと35ミクロンとの間にあり、後側スクライブライン44は基板内の深さ45ミクロンと75ミクロンとの間にある。
【0033】
第2の例において、一本の前側スクライブライン及び4本の後側スクライブラインを用いて、基板がスクライビングされる。基板10は、350ミクロン厚であり、前側スクライブラインが基板中へ6ミクロン延び、第1の後側スクライブライン(ウェハーの前側48に最も近接する後側スクライブライン)は、基板中の深さ15ミクロンと35ミクロンとの間にあり、第2の後側スクライブラインは基板内の深さ45ミクロンと75ミクロンとの間にあり、第3の後側スクライブラインは基板内の深さ80ミクロンと110ミクロンとの間にあり、第4の後側スクライブライン(ウェハーの後側50に最も近接した後側スクライブライン)は基板内の深さ115ミクロンと150ミクロンとの間の深さにある。
【0034】
ウェハーを上述したようにスクライビングした後に、当技術分野において知られており市販されているギロチン状のダイブレイカーを用いて、ウェハーをスクライブラインに沿ってブレーキングすることができる。ウェハーが支持台上に位置される。支持台のギャップが、ブレーキングすべきスクライブラインに整合される。ウェハーは、当該ウェハーと支持台との間に位置されるカバーにより保護される。ブレーカーブレード(breaker blade)がブレーキングすべきスクライブラインに整合され、力がブレードに印加される。ブレード上の力が、スクライブライン間の割れ目伝搬を引き起こし、結果として分離が生じる。
【0035】
本発明の実施形態を詳細に説明してきたが、本開示から判断すると、ここで述べた本発明概念の範囲から外れることなく、実施形態への変更がなされうることを当業者は理解する。ゆえに、本発明の範囲は、ここで図示し説明した特定実施形態に限定されるものであると意図していない。
図1
図2
図3