特許第6865584号(P6865584)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6865584化合物の共有結合性コンジュゲーションのためのmTG基質
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865584
(24)【登録日】2021年4月8日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】化合物の共有結合性コンジュゲーションのためのmTG基質
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/00 20060101AFI20210419BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20210419BHJP
   C12N 15/00 20060101ALN20210419BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20210419BHJP
【FI】
   C07K7/00
   C07K19/00
   !C12N15/00ZNA
   !C12N15/13
【請求項の数】9
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-543155(P2016-543155)
(86)(22)【出願日】2014年12月23日
(65)【公表番号】特表2017-503796(P2017-503796A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】EP2014079278
(87)【国際公開番号】WO2015097267
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2017年12月8日
【審判番号】不服2019-15009(P2019-15009/J1)
【審判請求日】2019年11月8日
(31)【優先権主張番号】13306847.8
(32)【優先日】2013年12月23日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】14305548.1
(32)【優先日】2014年4月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516188179
【氏名又は名称】コヴァラブ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】エル・アラウイ,サイード
(72)【発明者】
【氏名】トマ,ヴァンサン
【合議体】
【審判長】 田村 聖子
【審判官】 中島 庸子
【審判官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/037395号
【文献】 国際公開第2009/106073号
【文献】 J.Proteome Res.,2011年 5月24日,Vol.10,pp.3200−3211
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスグルタミナーゼの基質であって、
5〜15個のアミノ酸を有し、アミノ酸配列:X−3−2−1QX+1
[式中:
−3は、チロシン又はトリプトファンであり;
−2は、グルタミン酸又はプロリンであり;
−1は、アラニン、又はバリンであり;
Qは、グルタミンであり;そして
+1は、リジン又はアルギニンである]
を含むペプチド含み、該ペプチドは第1分子に結合している、前記基質。
【請求項2】
第1分子が、タンパク質、抗体、薬物、核酸、放射性元素、レポーター基、安定化分子、アプタマー、リボザイム、ドメイン抗体、ナノボディ、非免疫グロブリン骨格、ベクター粒子、及び固体支持体に固定された分子から成る群より選択される、請求項1に記載の基質。
【請求項3】
第1分子が、抗体又は抗体の抗原結合部分である、請求項1又は2に記載の基質。
【請求項4】
該ペプチドが、配列番号30、配列番号31、配列番号32、及び配列番号33から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の基質。
【請求項5】
少なくともアルキルアミン又はリジン残基を含む第2分子に共有結合した、請求項1〜4のいずれか1項に記載のトランスグルタミナーゼの基質を含む、コンジュゲートした化合物。
【請求項6】
第2分子が、タンパク質、抗体、薬物、核酸、放射性元素、レポーター基、安定化分子、アプタマー、リボザイム、ドメイン抗体、ナノボディ、非免疫グロブリン骨格、ベクター粒子、及び固体支持体に固定された分子から成る群より選択される、請求項5に記載のコンジュゲートした化合物。
【請求項7】
第1分子が抗体であり、第2分子が薬物である、請求項5又は6に記載のコンジュゲートした化合物。
【請求項8】
ヒト又は動物の身体の治療方法に使用するための、請求項7に記載のコンジュゲートした化合物。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のトランスグルタミナーゼ基質を、少なくともアルキルアミン又はリジン残基を含む第2分子に共有結合させるための方法であって:
トランスグルタミナーゼ基質を第2分子と、トランスグルタミナーゼの存在下で反応させる工程を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルタミンドナーとしてトランスグルタミナーゼと選択的かつ特異的に反応するペプチドに関するものである。
また、本発明は、第1分子に結合したこれらペプチドを含む、トランスグルタミナーゼの基質、及びその使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
タンパク質と、様々な機能性低分子(例えばフルオロフォア、リガンド)や高分子(例えばタンパク質、ポリマー、核酸)との間の共有結合形成は、バイオテクノロジーや生物医学応用において利用されるタンパク質コンジュゲートを創出するための重要な分子基礎を代表してきた。タンパク質と機能性分子とのそのような連結は、該タンパク質の生物学的機能に影響を及ぼしてはならない。
【0003】
標的タンパク質の生物学的機能に対する機能性分子の連結の影響を最小限にするには、酵素経路が興味深い選択肢であるように思われる。
酵素の触媒特性を利用することは、ますます注目を浴び続けている研究分野である。トランスグルタミナーゼ(TGアーゼ)は、タンパク質基質を高い位置選択性及び立体選択性で架橋させる能力のために、基礎研究と応用研究の両方から広い関心を常に惹きつけてきた。
【0004】
TGアーゼ(EC2.3.2.13)は、翻訳後のタンパク質の架橋結合を、比較的プロテアーゼ抵抗性のイソペプチド結合の形成により触媒する、広く分布した酵素ファミリーである。この触媒作用の主要な工程は、ポリペプチド基質のグルタミン(Gln)残基のカルボキサミド基とTGアーゼの活性部位との相互作用により、Cys残基のレベルで反応性のチオアシル部分を生成すること、次いでアミノドナーとの反応により新たなイソペプチドアミド結合を生じることを包含する(FOLK JE、COLE PW、J.Biol.Chem.1965 Jul;240:2951−60)。
【0005】
ごく初期のTGアーゼの生物触媒としての使用は、食品業界においてであった(Zhu,Y.;Rinzema,A.;Tramper,J.、Appl.Microbiol.Biotechnol.1995、44、277−282)。以来、新規のバイオテクノロジー応用により、TGアーゼの使用は食品分野の外に広がっている。
【0006】
Kamiyaらは、タンパク質の共有結合性標識におけるTGアーゼの潜在的な有用性について報告している(New fluorescent substrates of microbial transglutaminase and its application to peptide tag−directed covalent protein labelling「微生物トランスグルタミナーゼの新規蛍光基質、及びペプチドタグ指向性のタンパク質の共有結合性標識へのその応用」,Kamiya N.、Abe H.、Methods Mol.Biol.2011;751:81−94、及びEnzymatic single−step preparation of multifunctional proteins「多機能タンパク質の酵素的単一工程調製」、Abe H.、Goto M.、Kamiya N.、Chem.Commun.(Camb)2010 Oct 14;46(38):7160−2)。
【0007】
WO2013/092983には、TGアーゼを用いて、免疫グロブリンを特に薬物で機能化する方法も開示されている。このアプローチは、部位特異的変異導入によって抗体重鎖内部にQドナーを産生するための新たな部位を得るための方法を記載している。この経験法は、修飾用のグルタミン残基のTGアーゼによる選択を支配する規則が依然としてほとんど知られてないため、多数の突然変異体について試験することが必要である。その結果、この方法を用いてQドナーをもつ新規抗体を開発することは時間がかかり、コスト効率が悪いものである。
【0008】
さらにWO2012/059882は、具体的な遺伝子操作されたポリペプチドコンジュゲート、及びトランスグルタミナーゼを用いてそのようなコンジュゲートを作製する方法を開示している。
【0009】
タンパク質と機能性分子との共有結合のためにTGアーゼを使用することにおける1つの困難性は、取込み率が良好な一般的なリンカーとして使用できる機能的な第1基質を、前記第1基質の機能又は活性を改変することなく設計することである。
【0010】
さらに、機能性分子が該タンパク質といったん連結したら、第1タンパク質と第2分子の両方がそれらの機能又は活性を保持しなければならない。
【発明の概要】
【0011】
出願人は、産生されるか又は第1分子に結合すると、トランスグルタミナーゼの特に効率的で特異的な基質となるペプチドを見出した。
出願人が見出した第1分子に結合するペプチドを含む、トランスグルタミナーゼの基質は、この基質と第2分子との間に高率の共有結合を発揮する。
【0012】
共有結合率は、多様な第1分子について、第2分子(例えば、免疫グロブリン、固体支持体に固定された分子)と効率的に連結することが困難であると知られている分子であっても、高いことが示されている。
【0013】
第1分子と第2分子とを容易に連結する能力に加えて、そのようなペプチドのトランスグルタミネーションへの使用は、第1分子及び第2分子がともに元の機能特性を維持することを可能にする。
【0014】
したがって、本発明は、トランスグルタミナーゼの基質に関するものであり、該基質は、3〜15個のアミノ酸を有し、アミノ酸配列:X−4−3−2−1QX+1+2+3+4
[式中:
−4は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくは負電荷アミノ酸又は非極性アミノ酸であり;
−3は、非存在であるか、又は芳香族アミノ酸、非極性疎水性アミノ酸、及び非極性アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
−2は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくは負電荷アミノ酸又は非極性アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
−1は、極性中性アミノ酸、正電荷アミノ酸、非極性アミノ酸、及び非極性疎水性アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
Qは、グルタミンであり;
+1は、極性中性アミノ酸、正電荷アミノ酸、非極性疎水性アミノ酸、及び負電荷アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
+2は、非存在であるか、又は極性中性アミノ酸、芳香族アミノ酸、非極性疎水性アミノ酸、及び正電荷アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
+3は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくは非極性アミノ酸であり;そして
+4は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸である]
を含むペプチドを含み、前記ペプチドは、第1分子に結合する。
【0015】
特定の態様では、本発明による基質は、上記ペプチドを含むことができ、
(i)X−1はセリンであり、X+1は、ヒスチジン、チロシン、アラニン、又はグルタミン酸である;
(ii)X−1はアラニン又はバリンであり、X+1は、リジン、アルギニン、又はアラニンであり、ここで、X−1がアラニンであるとき、X+1はリジン又はアルギニンである;又は
(iii)X−1はイソロイシンであり、X+1は、アルギニン、リジン、又はグルタミン酸である、
のいずれかである。
【0016】
また、本発明は、少なくともアルキルアミン又はリジンを含む第2分子に共有結合した、本発明のトランスグルタミナーゼの基質を含む、コンジュゲートした化合物に関する。
また、本発明は、ヒト又は動物の身体の治療方法に使用するための、第1分子が抗体で第2分子が薬物である、本発明のコンジュゲートした化合物に関する。
【0017】
また、本発明は、本発明のトランスグルタミナーゼの基質を、少なくともアルキルアミン又はリジン残基を含む第2分子に共有結合させるための方法に関するものであり、該方法は、トランスグルタミナーゼの基質をトランスグルタミナーゼの存在下で第2分子と反応させる工程を含む。
【0018】
また、本発明は、3〜15個のアミノ酸を有し、アミノ酸配列:X−4−3−2−1QX+1+2+3+4
[式中:
−4は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくは負電荷アミノ酸又は非極性アミノ酸であり;
−3は、非存在であるか、又は芳香族アミノ酸、非極性疎水性アミノ酸、及び非極性アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
−2は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくは負電荷アミノ酸又は非極性アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
−1は、極性中性アミノ酸、正電荷アミノ酸、非極性アミノ酸、及び非極性疎水性アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
Qは、グルタミンであり;
+1は、極性中性アミノ酸、正電荷アミノ酸、非極性疎水性アミノ酸、及び負電荷アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
+2は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくは極性中性アミノ酸、芳香族アミノ酸、非極性疎水性アミノ酸、及び正電荷アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
+3は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくは非極性アミノ酸であり;そして
+4は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸である]
を含むペプチドに関するものである。
【0019】
また、本発明は、分子の共有結合性カップリングのためのリンカーとしての、本発明のペプチドの使用に関する。
また、本発明は、第1分子を、少なくともアルキルアミン又はリジンを含む第2分子に共有結合させるための方法に関するものであり、該方法は:
第1分子を本発明のペプチドに結合させて、トランスグルタミナーゼの基質を得て;
トランスグルタミナーゼの基質を第2分子と、トランスグルタミナーゼ、好ましくは細菌トランスグルタミナーゼ、例えば、ストレプトベルチシリウム・モバラエンス(Streptoverticillium mobaraense)トランスグルタミナーゼ(mTG)の存在下で反応させる、
工程を含む。
【0020】
また、本発明は、ポリペプチドに融合した本発明のペプチドを含む、融合タンパク質に関する。
また、本発明は、少なくともリジン又はアルキルアミンを含む分子を標識するためのキットに関するものであり、該キットは、第1分子がレポーター基である本発明の基質を含む。
【0021】
また、本発明は、少なくともアルキルアミン又はリジンを含む分子を標識するための方法に関するものであり、該方法は、第1分子がレポーター基である本発明の基質を、該分子と反応させて、トランスグルタミナーゼの存在下で標識する工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
定義
本発明によれば、「抗体」又は「免疫グロブリン」は、同じ意味を有しており、本発明において同等に使用される。本明細書に使用される「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子、及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、即ち、抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部分を含有する分子を表す。このように、抗体という用語は、抗体分子全体だけでなく、抗原結合性の断片又は部分を含めた抗体断片、並びに抗体及び抗体断片の変異体(誘導体を含む)も包含する。慣用の抗体では、2本の重鎖がジスルフィド結合によって互いに連結しており、各重鎖はジスルフィド結合によって軽鎖に連結している。2種類の軽鎖、λ鎖及びκ鎖がある。抗体分子の機能活性を決定する5種の主要な重鎖クラス(又はアイソタイプ):IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEがある。各鎖は、別個の配列ドメインを含有する。軽鎖には2つのドメイン、可変ドメイン(VL)及び定常ドメイン(CL)が含まれる。重鎖には4つのドメイン、1つの可変ドメイン(VH)及び3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3、まとめてCHと称する)が含まれる。軽鎖の可変領域(VL)及び重鎖の可変領域(VH)は、抗原への結合認識と特異性を決定する。軽鎖の定常領域ドメイン(CL)及び重鎖の定常領域ドメイン(CH)は、抗体鎖の会合、分泌、経胎盤移行、補体結合、及びFc受容体(FcR)への結合といった重要な生物学的特性を付与する。Fv断片は、免疫グロブリンのFab断片のN末端部分であって、1本の軽鎖の可変部分と1本の重鎖の可変部分から成る。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原決定基との構造的相補性にある。抗体結合部位は、主に、超可変領域又は相補性決定領域(CDR)に由来する残基で構成される。時には、非超可変領域又はフレームワーク領域(FR)由来の残基がドメイン構造全体、ひいては結合部位に影響を及ぼすことがある。相補性決定領域すなわちCDRは、自然な免疫グロブリン結合部位の天然のFv領域の結合親和性及び特異性を規定するアミノ酸配列を表す。免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖は、それぞれ3つのCDRを有し、それぞれL−CDR1、L−CDR2、L−CDR3、及びH−CDR1、H−CDR2、H−CDR3と称される。したがって、抗原結合部分には、重鎖及び軽鎖のV領域のそれぞれに由来するCDRセット構成する、6つのCDRが含まれる。フレームワーク領域(FR)は、CDR間に介入されたアミノ酸配列を表す。
【0023】
抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例としては、VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、及びCH1ドメインから成る1価の断片であるFab断片;ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結した2つのFab断片を含む2価の断片であるF(ab)断片;VHドメイン及びCH1ドメインから成るFd断片;抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインから成るFv断片;VHドメインから成るdAb断片(Wardら、1989、Nature 341:544−546);並びに単離された相補性決定領域(CDR)、又はそのような抗原結合部分を含む融合タンパク質が挙げられる。
【0024】
本明細書において、抗体の残基は、カバット・スキームに従って番号付けされている。
「ヒト化抗体」という用語は、抗体分子の実質的な部分が、アミノ酸配列又は構造において、ヒト起源に由来する抗体のそれに類似する抗体を表す。
【0025】
「ヒト化抗体」は、治療目的でヒトに投与される抗体の免疫原性を低減させることが望ましい事例において、より好適であると考えられる。
「Fab」という用語は、プロテアーゼのパパインでIgGを処理することによって得られる断片の中で、H鎖のN末端側の約半分とL鎖全体とがジスルフィド結合によって一緒に結合している、分子量が約50,000で抗原結合活性を有する抗体断片を意味する。
【0026】
「F(ab’)」という用語は、プロテアーゼのペプシンでIgGを処理することによって得られる断片の中で、ヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合した、Fabよりやや大きい、分子量が約100,000で抗原結合活性を有する抗体断片を表す。
【0027】
「Fab’」という用語は、F(ab’)のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することによって得られる、分子量が約50,000で抗原結合活性を有する抗体断片を表す。
【0028】
単鎖Fv(「scFv」)ポリペプチドは、ペプチドをコードするリンカーによって連結されたVHコード遺伝子及びVLコード遺伝子を含む融合遺伝子から通常発現される、共有結合的に連結されたVH::VLヘテロ2量体である。「dsFv」は、ジスルフィド結合によって安定化したVH::VLヘテロ2量体である。2価及び多価の抗体断片は、1価のscFvの会合によって自然発生的に形成されるか、又は2価のsc(Fv)のように、1価のscFvをペプチドリンカーによってカップリングすることによって産生することができる。
【0029】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片を表し、該断片は、同一ポリペプチド鎖(VH−VL)内に軽鎖可変ドメイン(VL)に連結した重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同一鎖の2つのドメイン間で対合させるには短すぎるリンカーを用いることによって、これらのドメインは、別の鎖の相補的なドメインと対合して2つの抗原結合部位を創出することを強いられる。
【0030】
「精製された」及び「単離された」は、ポリペプチド(即ち、本発明による抗体)配列又はヌクレオチド配列に言及する場合、指定の分子が、同種の他の生体高分子が実質的に非存在下で存在していることを意味する。本明細書に使用される「精製された」という用語は、好ましくは、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の同種の生体高分子が存在することを意味する。特定のポリペプチドをコードする「単離された」核酸分子は、該ポリペプチドをコードしない他の核酸分子が実質的に存在しない核酸分子を表す;しかしながら、該分子には、組成物の基本的特徴に悪影響を及ぼさない追加の塩基又は部分がいくらか含まれてもよい。
【0031】
「治療有効量」は、被験者に治療上の利益を付与するのに必要な活性薬剤の最少量を意図する。例えば、哺乳動物への「治療有効量」は、病的症状、疾患の進行、又は障害に屈することに関連するか若しくはそれに抵抗性の生理的状態の改善を誘発、向上、又は他のやり方で引き起こすような量である。
【0032】
本明細書に使用される「被験者」という用語は、齧歯動物、ネコ、イヌ、及び霊長動物のような哺乳動物を意味する。好ましくは、本発明による被験者はヒトである。
「治療又は治療すること」は、治療的処置及び予防的又は防止的手段を表し、その目的は、標的とする病的状態又は障害を予防するか又は遅らせる(少なくする)ことである。治療を必要とする者には、すでに障害のある者だけでなく、障害を有する傾向がある者、又は障害を予防すべき者が含まれる。従って、本発明において治療すべき被験者は、障害を有すると診断されていても、障害への素因又は感受性があってもよい。
【0033】
本明細書に使用される「アルキルアミン」という用語は、式−NHR”(モノアルキルアミン)[式中、R”はアルキルである]の基、又は式−NR”R”(ジアルキルアミン)[式中、それぞれのR”は独立してアルキルである]の基を表す。
【0034】
本明細書に使用される「アプタマー」という用語は、タンパク質又はペプチド、より典型的にはペプチドのような標的分子に特異的に結合することができる、1本鎖又は2本鎖のオリゴDNA、オリゴRNA、又はオリゴ−DNA/RNA、あるいはそれらの類似体を表す。有利にも、アプタマーは、その標的に対してかなり高い特異性及び親和性(例えば1×10−1のオーダーのK[A])を示すことができる。アプタマー産生については、とりわけ、本明細書に具体的に援用される、米国特許第5,270,163号;Ellington&Szostak 1990(Nature 346:818−822);Tuerk&Gold 1990(Science 249:505−510);又は「The Aptamer Handbook:Functional Oligonucleotides and Their Applications(アプタマー便覧:機能性オリゴヌクレオチドとその応用)」Klussmann編、Wiley VCH(2006)、ISBN 3527310592に記載されている。
【0035】
本発明のペプチド
本発明は、3〜15個のアミノ酸を有し、アミノ酸配列:X−4−3−2−1QX+1+2+3+4
[式中:
−4は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくは負電荷アミノ酸又は非極性アミノ酸であり;
−3は、非存在であるか、又は芳香族アミノ酸、非極性疎水性アミノ酸、及び非極性アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
−2は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくは負電荷アミノ酸又は非極性アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
−1は、極性中性アミノ酸、正電荷アミノ酸、非極性アミノ酸、及び非極性疎水性アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
Qは、グルタミンであり;
+1は、極性中性アミノ酸、正電荷アミノ酸、非極性疎水性アミノ酸、及び負電荷アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
+2は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくは極性中性アミノ酸、芳香族アミノ酸、非極性疎水性アミノ酸、及び正電荷アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
+3は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくは非極性アミノ酸であり;そして
+4は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸である]
を含むペプチドに関する。
【0036】
典型的には、本発明のペプチドは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個のアミノ酸を有する。
好ましくは、該ペプチドは、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12個のアミノ酸を有する。
【0037】
本明細書に使用される「負電荷アミノ酸」という用語は、好ましくは、以下のアミノ酸:グルタミン酸(E)及びアスパラギン酸(D)を表す。
本明細書に使用される「芳香族アミノ酸」という用語は、好ましくは、以下のアミノ酸:チロシン(Y)、トリプトファン(W)、及びフェニルアラニン(F)を表す。
【0038】
本明細書に使用される「非極性アミノ酸」という用語は、好ましくは、以下のアミノ酸:イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びシステイン(C)を表す。
本明細書に使用される「正電荷アミノ酸」という用語は、好ましくは、以下のアミノ酸:ヒスチジン(H)、リジン(K)を表す。
【0039】
本明細書に使用される「非極性疎水性アミノ酸」という用語は、好ましくは、以下のアミノ酸:ロイシン(L)、アラニン(A)、及びバリン(V)を表す。
本明細書に使用される「極性中性アミノ酸」という用語は、好ましくは、以下のアミノ酸:セリン(S)及びグルタミン(Q)を表す。
【0040】
具体的な態様では、該ペプチドは、アミノ酸配列:X−4−3−2−1QX+1+2+3+4
[式中:
−4は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくはアスパラギン酸又はプロリンであり;
−3は、非存在であるか、又はチロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、プロリン、バリン、及びロイシンから成る群より選択されるアミノ酸であり;
−2は、非存在であるか、又はグルタミン酸、プロリン、チロシン、トリプトファン、リジン、システイン、ロイシン、ヒスチジン、及びセリンから成る群より選択されるアミノ酸であり;
−1は、セリン、ヒスチジン、イソロイシン、バリン、及びアラニンから成る群より選択されるアミノ酸であり;
Qは、グルタミンであり;
+1は、アルギニン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、セリン、及びアラニンから成る群より選択されるアミノ酸であり;
+2は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくはヒスチジン、チロシン、リジン、グルタミン、ロイシン、及びセリンから成る群より選択されるアミノ酸であり;
+3は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくはプロリンであり;そして
+4は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸である]
を含む。
【0041】
具体的な態様では、X−3はチロシン又はトリプトファンである。
別の具体的な態様では、X−2はグルタミン酸又はプロリンである。
好ましい態様では、X−1は、セリン、アラニン、バリン、ヒスチジン、又はイソロイシンである。別の具体的な態様では、X−1は、セリン、アラニン、又はイソロイシンである。別の具体的な態様では、X−1は、イソロイシン、アラニン、又はバリンである。
【0042】
好ましい態様では、X+1は、ヒスチジン、グルタミン酸、又はセリンである。より好ましくは、X+1はセリンである。別の好ましい態様では、X+1はリジン又はアルギニンである。
【0043】
関連する好ましい態様では、X+1はリジン又はアルギニンであり、X−1はアラニン又はイソロイシンである。
好ましい態様では、X−3はチロシン又はトリプトファンであり、X−2はグルタミン酸又はプロリンであり、X−1は、イソロイシン、アラニン、又はバリンであり、X+1はリジン又はアルギニンである。
【0044】
他の好ましい態様では、
(i)X−1はセリンであり、X+1は、ヒスチジン、チロシン、アラニン、又はグルタミン酸である;
(ii)X−1はアラニン又はバリンであり、X+1は、リジン、アルギニン、又はアラニンであり、ここで、X−1がアラニンであるとき、X+1はリジン又はアルギニンである;又は
(iii)X−1はイソロイシンであり、X+1は、アルギニン、リジン、又はグルタミン酸である。
【0045】
好ましい態様では、該ペプチドは、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、及び配列番号33から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む。
アミノ酸配列を以下の表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
好ましい態様では、該ペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号20、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、及び配列番号33から成る群より選択されるアミノ酸配列を有する。
【0048】
また、本発明は、分子を共有結合的にカップリングするためのリンカーとしての本発明のペプチドの使用に関する。
また、本発明は、タンパク質又は抗体を第2分子に共有結合的にカップリングするためのリンカーとしての本発明のペプチドの使用に関するものであり、第2分子は、タンパク質、抗体、薬物、核酸、放射性元素、レポーター基、安定化分子、及び固体支持体に固定された分子から成る群より選択される。
【0049】
また、本発明は、第1分子を、少なくともアルキルアミン残基又はリジンを含む第2分子に共有結合させるための方法に関するものであり、該方法は:
第1分子を本発明のペプチドに結合させて、トランスグルタミナーゼの基質を得、
トランスグルタミナーゼの基質を、トランスグルタミナーゼの存在下で第2分子と反応させる、
工程を含む。
【0050】
本発明のトランスグルタミナーゼのグルタミンドナー基質
本発明は、トランスグルタミナーゼの基質、より具体的には、Qドナー基質に関するものであり、該基質は、3〜15個のアミノ酸を有し、アミノ酸配列:X−4−3−2−1QX+1+2+3+4
[式中:
−4は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくは負電荷アミノ酸又は非極性アミノ酸であり;
−3は、非存在であるか、又は芳香族アミノ酸、非極性疎水性アミノ酸、及び非極性アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
−2は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくは負電荷アミノ酸又は非極性アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
−1は、極性中性アミノ酸、正電荷アミノ酸、非極性アミノ酸、及び非極性疎水性アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
Qは、グルタミンであり;
+1は、極性中性アミノ酸、正電荷アミノ酸、非極性疎水性アミノ酸、及び負電荷アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
+2は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくは、極性中性アミノ酸、芳香族アミノ酸、非極性疎水性アミノ酸、及び正電荷アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
+3は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくは非極性アミノ酸であり;そして
+4は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸である]
を含み、第1分子へ結合するペプチド、を含む。
【0051】
トランスグルタミナーゼ(TGアーゼ)は、例えば、組織トランスグルタミナーゼ(TG2)(Gentile V.、Saydak M.、Chiocca E.A.、Akande O.、Birckbichler P.J.、Lee K.N.、Stein J.P.、Davies P.J.A.、J.Biol.Chem.266:478−483(1991))でも、微生物トランスグルタミナーゼ(mTG)(Ando H、Adachi M、Umeda K、Matsuura A、Nonaka M、Uchio R、Tanaka H、Motoki M:Agric.Biol.Chem.1989;53:2613−2617)でもよい。
【0052】
好ましくは、トランスグルタミナーゼは、微生物トランスグルタミナーゼ、例えばストレプトベルチシリウム・モバラエンス由来のトランスグルタミナーゼである。
典型的には、Qドナー基質に使用するための本発明のペプチドは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個のアミノ酸を有する。
【0053】
好ましくは、Qドナー基質に使用するためのペプチドは、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸を有する。
好ましい態様では、Qドナー基質に使用するためのペプチドは、アミノ酸配列:X−4−3−2−1QX+1+2+3+4
[式中:
−4は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくはアスパラギン酸又はプロリンであり;
−3は、非存在であるか、又はフェニルアラニン、プロリン、バリン、チロシン、トリプトファン、及びロイシンから成る群より選択されるアミノ酸であり;
−2は、非存在であるか、又はグルタミン酸、プロリン、チロシン、トリプトファン、リジン、システイン、ロイシン、ヒスチジン、及びセリンから成る群より選択されるアミノ酸であり;
−1は、セリン、ヒスチジン、イソロイシン、バリン、及びアラニンから成る群より選択されるアミノ酸であり;
Qは、グルタミンであり;
+1は、リジン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミン酸、セリン、及びアラニンから成る群より選択されるアミノ酸であり;
+2は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくはヒスチジン、チロシン、リジン、グルタミン、ロイシン、及びセリンから成る群より選択されるアミノ酸であり;
+3は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくはプロリンであり;そして
+4は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸である]
を含む。
【0054】
具体的な態様では、X−3はチロシン又はトリプトファンである。
別の具体的な態様では、X−2はグルタミン酸又はプロリンである。
好ましい態様では、X−1は、セリン、アラニン、バリン、ヒスチジン、又はイソロイシンである。別の具体的な態様では、X−1は、セリン、アラニン、又はイソロイシンである。別の具体的な態様では、X−1は、イソロイシン、アラニン、又はバリンである。
【0055】
好ましい態様では、X+1は、ヒスチジン、グルタミン酸、又はセリンである。より好ましくは、X+1はセリンである。別の好ましい態様では、X+1はリジン又はアルギニンである。
【0056】
関連する好ましい態様では、X+1はリジン又はアルギニンであり、X−1はアラニン又はイソロイシンである。
好ましい態様では、X−3はチロシン又はトリプトファンであり、X−2はグルタミン酸又はプロリンであり、X−1は、イソロイシン、アラニン、又はバリンであり、X+1はリジン又はアルギニンである。
【0057】
好ましい態様では、
(i)X−1はセリンであり、X+1は、ヒスチジン、チロシン、アラニン、又はグルタミン酸である;
(ii)X−1はアラニン又はバリンであり、X+1は、リジン、アルギニン、又はアラニンであり、ここで、X−1がアラニンであるとき、X+1はリジン又はアルギニンである;又は
(iii)X−1はイソロイシンであり、X+1は、アルギニン、リジン、又はグルタミン酸である、
のいずれかである。
【0058】
好ましい態様では、Qドナー基質に使用するためのペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号20、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、及び配列番号33から成る群より選択されるアミノ酸配列を有する。
【0059】
好ましい態様では、Qドナー基質に使用するためのペプチドは、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、及び配列番号33から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0060】
好ましい態様では、第1分子は、タンパク質、抗体、薬物、核酸、放射性元素、レポーター基、安定化分子、アプタマー、リボザイム、ドメイン抗体、ナノボディ、非免疫グロブリン骨格、ベクター粒子、及び固体支持体に固定された分子から成る群より選択される。
【0061】
核酸は、例えば、DNA、RNA、又はSiRNAであり得る。
ベクター粒子は、例えば、ナノ粒子、小胞、ウイルスベクター粒子、又はウイルス様粒子であり得る。
【0062】
放射性元素は、例えば、放射性ヨウ化物又は放射性同位体であり得る。
レポーター基は、例えば、放射性標識化合物、イソチオシアネートのような蛍光化合物(例えばFITC又はTRITC)、スクシンイミジルエステル(例えばNHS−フルオレセイン)、マレイミド活性化フルオロフォア(例えばフルオレセイン−5−マレイミド)、ペルオキシダーゼのような酵素、親和性ペプチドタグ、又はNMR若しくはESR分光法によって検出され得る化合物であり得る。
【0063】
安定化分子は、例えばPEGのようなポリマーであり得る。
非免疫グロブリン骨格は、例えば、アドネクチン、アンキリン、リポカリン、アフィリン、タンパク質エピトープ模倣体などであり得る。
【0064】
薬物は、ペプチド及びポリペプチド、比較的大きい化学成分、負電荷化学成分、及び/又は疎水性化学成分であり得る。
薬物は、好ましくは細胞傷害薬である。細胞傷害薬は、例えば、デュオカルマイシン、メイタンシノイド、アルキル化剤、タキサン、MMAE、MMAFであり得る。
【0065】
より好ましい態様では、第1分子は抗体である。
Qドナー基質に使用するためのペプチドは、第1分子に結合している。
本明細書に使用される「結合している(bound)」という用語は、例えば化学的カップリングによる共有結合性でも、又は例えばイオン性相互作用、疎水性相互作用、水素結合などの非共有結合性でもよい結合を表す。
【0066】
共有結合は、例えば、エステル、エーテル、ホスホエステル、アミド、ペプチド、イミド、炭素−イオウ結合、炭素−リン結合などであり得る。この用語には、物質の封入又は部分的封入も含まれる。「結合している」という用語は、「カップリングしている」、「融合している」、「封入されている」、「パッケージされている」、「偽型化されている」、「脂質2重層で発現されている」、及び「付着している」のような用語より広義であって、これらの用語を包含する。
【0067】
好ましい態様では、ペプチドは第1分子に共有結合している。
好ましい態様では、第1分子はポリペプチドであり、ペプチドは第1分子に融合している。
【0068】
本明細書に使用される「融合」又は「融合している」という用語は、1つのポリペプチド鎖における起源の異なるアミノ酸配列の、それらをコードするヌクレオチド配列をインフレームで組み合わせることによる、組み合わせを表す。1つの所与のアミノ酸配列は、遺伝子コードの縮重性により1以上のヌクレオチド配列によってコードされ得ることに留意しなければならない。「融合」という用語は、明示的に内部融合(即ち、ポリペプチド鎖の一方の末端への融合に加えて、その内部への起源の異なる配列の挿入)を包含する。
【0069】
したがって、1つの態様では、本発明は、ポリペプチドに融合した本発明のペプチドを含む融合タンパク質にも関するものである。
融合タンパク質の1つの態様では、ポリペプチドは、抗体の重鎖若しくは軽鎖ポリペプチド、又はそれらの抗原結合部分であって、例えばVHドメイン又はVLドメインを含むポリペプチドが含まれる。
【0070】
融合タンパク質の好ましい態様では、抗体の重鎖及び/又は軽鎖は、本発明のペプチドにC末端又はN末端で融合している。関連する融合タンパク質の具体的な態様では、重鎖及び/又は軽鎖は、配列番号7、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、及び配列番号33から成る群より選択されるペプチドにC末端で融合している。
【0071】
1つの態様では、融合タンパク質は、少なくともアルキルアミン残基又はリジンを含む第2分子にさらにコンジュゲートしている。
また、本発明は、本発明のトランスグルタミナーゼの基質を、少なくともアルキルアミン残基又はリジンを含む第2分子に共有結合させるための方法に関するものであり、該方法は、トランスグルタミナーゼの基質をトランスグルタミナーゼの存在下で第2分子と反応させる工程を含む。
【0072】
また、本発明は、少なくともリジン又はアルキルアミン残基を含む分子を標識するためのキットに関するものであり、該キットは、第1分子がレポーター基である本発明のトランスグルタミナーゼの基質を含む。
【0073】
また、本発明は、少なくともリジン又はアルキルアミン残基を含む分子を標識するための方法に関するものであり、該方法は、第1分子がレポーター基である本発明のトランスグルタミナーゼの基質を、トランスグルタミナーゼの存在下で該分子と反応させて標識する工程を含む。
【0074】
本発明のコンジュゲートした化合物
また、本発明は、少なくともリジン又はアルキルアミン残基を含む第2分子に共有結合した、本発明のトランスグルタミナーゼの基質を含む、コンジュゲートした化合物に関するものである。
【0075】
そのようなコンジュゲートした化合物は、TG介在反応によって容易に産生される。さらに、第1分子及び第2分子は、その特異的な機能特性をともに維持する。例えば、そのFc断片に融合したペプチドを含む抗体の場合、コンジュゲートした抗体は、抗原結合特性を維持する。
【0076】
好ましい態様では、第2分子は、タンパク質、抗体、薬物、核酸、放射性元素、レポーター基、安定化分子、アプタマー、リボザイム、ドメイン抗体、ナノボディ、非免疫グロブリン骨格、ベクター粒子、及び固体支持体に固定された分子から成る群より選択される。
【0077】
ベクター粒子は、例えば、ナノ粒子、小胞、又はウイルスベクター粒子、ウイルス様粒子であり得る。
核酸は、例えば、DNA、RNA、又はSiRNAであり得る。放射性元素は、例えば、放射性ヨウ化物又は放射性同位体であり得る。レポーター基は、例えば、放射性標識化合物、イソチオシアネートのような蛍光化合物(例えばFITC又はTRITC)、スクシンイミジルエステル(例えばNHS−フルオレセイン)、マレイミド活性化フルオロフォア(例えばフルオレセイン−5−マレイミド)、ペルオキシダーゼのような酵素、親和性ペプチドタグ、又はNMR若しくはESR分光法によって検出され得る化合物であり得る。
【0078】
安定化分子は、例えばPEGのようなポリマーであり得る。
非免疫グロブリン骨格は、例えば、アドネクチン、アンキリン、リポカリン、アフィリン、タンパク質エピトープ模倣体などであり得る。
【0079】
薬物は、ペプチド及びポリペプチド、比較的大きい化学成分、負電荷化学成分、及び/又は疎水性化学成分であり得る。
薬物は、好ましくは細胞傷害薬である。
【0080】
細胞傷害薬は、例えば、デュオカルマイシン、メイタンシノイド、アルキル化剤、タキサン、モノメチルオーリスタチン−E(MMAE)、モノメチルオーリスタチン−F(MMAF)であり得る。
【0081】
好ましい態様では、第2分子は薬物、好ましくは細胞傷害薬である。
より好ましい態様では、第1分子は抗体であり、第2分子は薬物、好ましくは細胞傷害薬である。
【0082】
細胞傷害薬にコンジュゲートした抗体は、有望な治療用化合物である。しかしながら、それらを生成することは特に困難である。本発明の方法は、それらを容易に生成することを可能にする。
【0083】
本発明は、本発明のコンジュゲートした化合物及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
また、本発明は、ヒト又は動物の身体の治療方法に使用するための、本発明のコンジュゲートした化合物に関する。
【0084】
また、本発明は、それを必要とする被験者における病的状態又は障害の治療方法に関するものであり、該方法は、本発明のコンジュゲートした化合物の有効量を被験者に投与することを含む。
【0085】
また、本発明は、医薬を調製するための、本発明のコンジュゲートした化合物の使用に関する。
本発明について、以下の図面及び実施例によってさらに例解する。しかしながら、これらの実施例及び図面は、決して本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
図面
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1図1は、covabtestプレートにカップリングしたペプチドへの、mTG介在性のビオチン−X−カダベリンの取込みを示す。
図2図2は、covabtestプレートにカップリングしたペプチドへの、TG2介在性のビオチン−X−カダベリンの取込みを示す。
図3図3は、好ましい基質、及びQ残基をNに置換した対応する変異類似体を用いた、mTG反応の測定を示す。
図4図4は、BSA−HH12Q11コンジュゲートに対するビオチン−カダベリンのmTG介在性架橋結合の特異性の確認を示す(A:BSA(対照ウェル);B、C:BSA−HH12Q11)。ペプチド阻害剤をC:HH12Q11に加えた。
図5図5は、吸着したIgG−HH12Q11コンジュゲート及び遊離IgG対照へのビオチン−カダベリンの取込みの測定を示す。実験条件は、B−I−3、B−I−4、及びB−II−2に記載されている。
図6図6は、遊離IgG及びペプチドがコンジュゲートしたIgGへのmTGによるビオチン−カダベリンの取込みのウエスタンブロットによる分析を示す。アミン基質の酵素的取込みは、B−II−5に記載のように、トリス緩衝液(pH8)中で室温にて2時間インキュベートした。IgGの重鎖(HC)及び軽鎖(LC)の位置を示す。
図7A図7は、ペプチドがコンジュゲートしたIgG及び遊離IgGへのビオチン−カダベリンの取込みの反応速度試験のウエスタンブロット分析を示す。触媒反応のために、mTGをトリス緩衝液(pH8)中で室温にて指定の反応時間インキュベートした。IgGの重鎖(HC)及び軽鎖(LC)の位置を示す。
図7B図7は、ペプチドがコンジュゲートしたIgG及び遊離IgGへのビオチン−カダベリンの取込みの反応速度試験のウエスタンブロット分析を示す。触媒反応のために、mTGをトリス緩衝液(pH8)中で室温にて指定の反応時間インキュベートした。IgGの重鎖(HC)及び軽鎖(LC)の位置を示す。
図8図8は、トランスグルタミナーゼによって触媒される反応のスキームである。
図9図9は、トランスグルタミナーゼの基質と第2分子との共有結合形成のスキームである。
図10図10は、mTGによる、(A)RecAb、(B)D1−3、及び(C)Her2Abへのビオチン−X−カダベリンの取込みである。mTG架橋結合の特異性の確認のために、タグなしの対応抗体を使用した。
図11図11は、mTGによる、D1−3−タグ抗体へのビオチン−X−カダベリンの取込みの動態である。
図12-1】図12は、タグなし対応抗体と比較した、組換えタグ付き抗体の免疫反応性のELISAによる確認である。(A)抗リゾチーム抗体、(B)抗Her2抗体。A及びBでは、抗ヒトIgGAM−HRP抗体を用いた。
図12-2】図12は、タグなし対応抗体と比較した、組換えタグ付き抗体の免疫反応性のELISAによる確認である。(C)抗Her2抗体。Cでは、ストレプトアビジン−HRPを用いた。
【実施例】
【0087】
材料及び方法
A)材料及び試薬
ウシ血清アルブミン(照会番号:A7906)、ヒトIgG(照会番号:I4506)、グルタルアルデヒド(照会番号:G6257)、スペルミン(spm)(照会番号:S2876)、ホウ水素化ナトリウム(照会番号:21,346−2)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDAC)(照会番号:E7750)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(照会番号:13,0672)、透析チューブセルロース膜、平面幅10mm(照会番号:D9277)、及びアクリルアミド/ビス−アクリルアミド、30%溶液(照会番号:A3574)は、シグマ・アルドリッチ(フランス)より購入した。ニトロセルロース膜アマシャムHybondTM−C Extra(照会番号:RPN203E)は、Dutcher(フランス)より提供された。高結合マイクロタイタープレート(コースター照会番号:3590)は、コーニング社(フランス)からのものである。組換え微生物トランスグルタミナーゼ(mTG)(照会番号:opr 0054)、組換えヒトトランスグルタミナーゼ2(hTG2)(照会番号:opr 0027)、ビオチン−X−カダベリン(照会番号:opr 0007)、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(opr 0011)、Covabtest アミンプレート(照会番号:opr 0004)、TMB−RTU(照会番号:opr 0052)は、Covalab(フランス)より提供された。使用したすべてのペプチドは、Covalab(フランス)によって合成された。ペプチドの配列及び純度は、HPLC(Water、フランス)及び質量分光光度計で検査した。
【0088】
【表2】
【0089】
B)方法
B−I: コンジュゲートした基質の調製法
B−I−1: 96ウェルマイクロタイタープレートに共有結合的にカップリングしたペプチド(Covabtest−ペプチド)の調製
カップリング法は、すでに出願人によって記載されており(V.Thomasら、2004)、Covalabより市販されているCovabtest−plateTM(照会番号:opr 0004)の対応するデータシートにも記載されている。簡潔に言えば、別々のチューブにおいて、10mMリン酸緩衝液(pH5)に溶解させた150μMの各ペプチド、5mM EDAC、及び5mM NHSを含有する溶液混合物を穏やかに攪拌しながら30分間インキュベートした。得られた各ペプチド(15ナノモル)の活性化NHS−カルボキシル末端部分を使用して、各ウェルにあたり150μlの0.6%重炭酸ナトリウムで15分間予め脱プロトン化したCovabtest−プレートTMの各ウェルにコンジュゲートさせた。次いで、マイクロタイタープレートを室温で2時間インキュベートしてから、トリス緩衝生理食塩水でしっかり洗浄した。
【0090】
B−I−2: BSAに共有結合的にカップリングしたペプチド(BSA−ペプチドコンジュゲート)の調製
2mgの各ペプチドを1mlの脱イオン水に溶解し、150ナノモルを、50mM重炭酸塩緩衝液(pH9.5)に溶解させた0.5mgのBSAと混合した。攪拌後、グルタルアルデヒドを最終濃度0.25%(v/v)で加えた。混合物を、穏やかに攪拌しながら室温にて16時間維持した。このインキュベーション時間の最後に水素化ホウ素ナトリウムを最終濃度10mg/mlで加え、BSAとペプチドの間の架橋結合を安定化させた。2時間後、ペプチド−BSAの各混合物を別々にPBS中で透析して遊離ペプチドを除去した。
【0091】
B−I−3: IgGに共有結合的にカップリングしたペプチド(IgG−ペプチドコンジュゲート)の調製
脱イオン水に溶解させた600ナノモルのHH12Q11ペプチドを、0.2Mリン酸緩衝液(pH5)中の60μモルのEDAC及び60μモルのNHSと混合して、C末端アミノ酸のαカルボキシルを活性化した。穏やかに攪拌しながら室温で30分インキュベーション後、500μLのペプチド溶液を、0.2Mリン酸緩衝液(pH8.5)で1mg/mlに希釈した0.5mgのヒトIgGに加えた。次いで、最終混合物を穏やかに攪拌しながら室温で16時間インキュベートした。次いで、各溶液をM−1に記載したように別々にPBS中で透析した。
【0092】
B−I−4: BSA−ペプチドコンジュゲート及びhIgG−ペプチドコンジュゲートでコーティングしたマイクロタイタープレートの調製
高結合96ウェルマイクロタイタープレート(コースター)を用いて、M−4及びM−5に記載のように調製したBSA−ペプチドコンジュゲート及びヒトIgG−ペプチドコンジュゲートを固定化した。これらの実験では、コンジュゲートを50mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9)で50μg/mlに調製し、100μlの各溶液を、実験に必要とされるウェル数に分注した。4℃にて一晩インキュベーション後、プレートをトリス緩衝生理食塩水(TBS)でしっかり洗浄し、TG活性のために使用する準備をした。
【0093】
B−I−5: 96ウェルマイクロタイタープレートに共有結合的にカップリングしたスペルミン(Covabtest−spm)の調製
Covabtest−spmプレートを作製するために、Milyら(2009)に記載の手順を用いた。
【0094】
B−II: トランスグルタミナーゼ活性の測定方法
B−II−1: Covabtest−プレートにカップリングしたペプチド(B−I−1)へのビオチン−X−カダベリンのトランスグルタミナーゼ介在性の取込み
この実験のために、V Thomasら(2004)に記載され、Covalabの市販キット(opr 0033)にも記載された同一手順を使用した。簡潔に言えば、凍結乾燥したトランスグルタミナーゼを40mMトリス緩衝液(pH8)でもどし、50μlの200ng/ml及び40ng/mlの各mTGを、50μlのビオチン−X−カダベリンを含有するウェルに加えた。この酵素混合物を穏やかに攪拌しながら室温で15分間インキュベートした。次いで、プレートをTBS−Tween20で3回洗浄し、続いて100μlの希釈HRP標識ストレプトアビジン(TBS−Tween20、0.5%BSAで1/2000)を各ウェルに加えた。室温にて30分後、そしてTBS−Tween20で3回洗浄後、100μLのTMB基質を加え、5分後に100μlの0.5M硫酸により発色を止めた。マイクロプレートリーダー(Multiskan、Labsystems、ヘルシンキ、フィンランド)を用いて450nmの吸光度を測定した。
【0095】
B−II−2: BSA−ペプチドでコーティングしたプレート(B−I−2)へのビオチン−X−カダベリンのトランスグルタミナーゼ介在性の取込み
B−II−1に記載したのと同一の手順を使用した。
【0096】
B−II−3: BSA−ペプチドコンジュゲート(B−I−2)を用いた競合アッセイによるトランスグルタミナーゼ酵素反応の特異性の確認
この実験では、ペプチド−1(TGpan(表2))をB−I−2に記載の方法に従ってBSAにコンジュゲートさせ、B−I−4に記載のように96ウェルマイクロタイタープレートをコーティングするために使用した。次いで、表2に記載のペプチド(非ビオチン化ペプチド)を、40mM TBS(pH8)中にて600μMの濃度で推定競合剤として使用した。各ウェルに以下の試薬を同一2検体で加えた:25μlのペプチド競合剤、25μLの400ng/ml mTG、及び50μlのビオチン−X−カダベリン。室温にて15分インキュベーション後、プレートをTBS−Tween20で3回洗浄し、先の方法に記載の手順に従って、100μlのHRP標識ストレプトアビジンを加えた。陰性対照として、Glu(Q)ドナーを含有しないYV10ペプチドを使用した。
【0097】
B−II−4: 好ましいmTGの基質のスクリーニング
表2に列挙したペプチド(ビオチン化ペプチド)のスクリーニングのために、トランスグルタミナーゼ2(TG2)架橋結合活性を測定するための、照会番号:opr 0033で市販されている比色分析アッセイ(Milyら、2009)を用いた。ここでは、TG2の代わりに、本実験において記載されるmTGを使用した。本法の原理は、カルボキシ置換ポリスチレンプレートに共有結合的にカップリングしたスペルミンとビオチン化ペプチドを使用する、mTGのアミド基転移活性に基づいている。本アッセイは、グルタミンのγ−カルボキサミド基の、固定化スペルミンへの取込みから成る。ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼの活性によって測定される、プレートに結合するビオチン化ペプチドの量は、TG活性に正比例する。マイクロプレートリーダーを使用して、450nmで吸光度を測定した。
【0098】
好ましい基質に対するmTGの親和性を比較するために、ペプチドを、160、80、40、20、10、5、2.5、及び0μMの異なる濃度で使用した。次いで、各ペプチドについて見かけのKmを測定し、ラインウィーバー=バーク法(1/吸光度=f(1/[mTG(μM)]))によって計算した。
【0099】
B−II−5: ビオチン−X−カダベリンのmTGによるヒトIgGへの酵素的取込みのウエスタンブロットによる分析
20μgのペプチドコンジュゲートIgG(IgG−YV10、IgG−CW9Q3、及びIgG−HH12Q11)及び遊離IgG(対照)を、13ナノモルのビオチン−X−カダベリン及び0.6ngのmTGと、最終容量150μlで混合した。反応混合物を、エンドポイント実験のために室温で2時間、そして反応速度試験のために0、10、20、及び60分間インキュベートした。各時間の最後に、4μlの電気泳動ローディング緩衝液(0.3M Tris・HCl(pH6.8)、0.6Mジチオスレイトール、12%SDS、0.6%ブロモフェノールブルー、及び50%グリセロール)を含有するチューブに20μlの各溶液を移し、90℃で5分間煮沸した。Laemmliら、1970に記載のように、変性条件のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により、mTGとhIgGの各種サブユニットとを分離させた。簡潔に言えば、15μl(1、3μg)の各試料を10%ポリアクリルアミドゲルにロードし、100Vで1時間泳動を行った。この時間の最後に、Towbinら、1979の方法により、SDS−ポリアクリルアミドゲルからHybondウエスタンブロット−Cニトロセルロース膜(アマシャム・ライフサイエンス、イギリス)へのタンパク質の転写を100Vにて1時間行った。hIgGに共有結合的にカップリングしたビオチン−X−カダベリンを検出するために、0.5%BSAを含有するトリス緩衝生理食塩水(TBS)中で37℃にて1時間膜をインキュベートしてから、TBS、0.5%Tween−20、0.5%BSAで1/2000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンでプローブした。37℃で30分のインキュベーション後、膜を、TBS、0.5%Tween−20で3回、PBSで2回洗浄した。ペルオキシダーゼ活性を検出するために、膜を化学発光試薬のCovalight(登録商標)中で2分間インキュベートし、最後にウエスタンブロットイメージャーで分析した。本試験におけるウエスタンブロットの結果は、多重測定の代表的なものである。
【0100】
B−III−1: Q−ペプチドタグ付き組換え抗体
3種の異なるQ−ペプチドタグ付き組換え抗体を産生した。RecAb−タグ抗体は、重鎖のカルボキシル末端にQ−ペプチドタグDHQ6Q7(配列番号7)をもつ、ヒト組換え抗RhD1抗体(IgG1)(Siberil S.、Clin.Immunol.(2006)118:170−9;Saurabh K.Gupta、JBC(2007);282、29431−29440)である。D1−3−タグ抗体は、重鎖のカルボキシル末端にQ−ペプチドタグ(配列番号32)をもつ、ヒト組換え抗リゾチーム抗体(IgG2)である。Her2−タグ抗体は、重鎖のカルボキシル末端にQ−ペプチドタグ(配列番号32)をもつ、ヒト組換え抗Her2抗体(IgG2)である。いずれの抗体も、Chapple SD、BMC Biotechnol.(2006)Dec 22;6:49;Martin CD、BMC Biotechnol.(2006)Dec 7;6:46に従って産生した。
【0101】
B−III−2: ビオチン−X−カダベリンのmTGによる組換えIgGのQ−ペプチドタグへの酵素的取込みのウエスタンブロットによる分析
20μgの組換えIgG(タグ付き抗体及びタグなし抗体)を、13ナノモルのビオチン−X−カダベリン及び0.6ngのmTGと、最終容量150μlで混合した。反応混合物を、エンドポイント実験のために室温で15分、そして反応速度試験のために5、15、60分、及び一晩インキュベートした。各時間の最後に、4μlの電気泳動ローディング緩衝液(0.3M Tris・HCl(pH6.8)、0.6Mジチオスレイトール、12%SDS、0.6%ブロモフェノールブルー、及び50%グリセロール)を含有するチューブに20μlの各溶液を移し、90℃で5分間煮沸した。SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動及びウエスタンブロットを、B−II−5に記載のように実施した。
【0102】
B−III−3: 組換え抗リゾチームIgGの免疫反応性のELISAによる確認
50mM NaHCO/NaCO(pH9.5)で希釈した1μg/ウェルの鶏卵リゾチーム(照会番号:L6876−1G;シグマ・アルドリッチ、フランス)を、96ウェルマイクロタイタープレート(高結合、コースター)にコーティングした。4℃で16時間のインキュベーション後、非特異的な結合を防ぐために、150μl/ウェルの0.5%BSA含有PBS溶液を加えた。この溶液を37℃で30分インキュベートし、プレートをPBSで2回洗浄した。次いで、100μlのタグ付きD1−3及びタグなしD1−3組換え抗リゾチーム抗体を、10、5、2.5、1.25μg/mlにて1時間インキュベートした。無関係なヒトIgG(ihIgG)を陰性対照として用いた。TBS−Tween20で3回洗浄後、1/1000に希釈した100μl/ウェルの西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgGAM抗体(PARIS、フランス)を37℃で30分インキュベートした。TBS−Tween20でしっかり洗浄後、B−II−Iに記載のように、TMB/H基質(Covalab、フランス)を用いて、ペルオキシダーゼ活性を測定した。
【0103】
B−III−4: 組換え抗Her2 IgGの免疫反応性のELISAによる確認
50mM NaHCO/NaCO(pH9.5)で希釈した0.1μg/ウェルの組換えヒトErbB−2/HER2タンパク質(Biaffin Gmb、ドイツ)を、96ウェルマイクロタイタープレート(高結合、コースター)にコーティングした。4℃で16時間のインキュベーション後、B−III−3に記載のようにBSAを加えた。次いで、mTG/ビオチン−X−カダベリン処理又は未処理の、100μl/ウェルのタグ付きRec−Her2及び抗リゾチームAD1−3(無関係なタグ付きIgGとして)を、10、5、2.5、1.25μg/mlにて1時間インキュベートした。TBS−Tween20で3回洗浄後、1つの実験では、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgGAM抗体を加えて1次抗体の存在を検出し、別の実験では、ストレプトアビジン−HRP(TBS−Tween20で1/2000に希釈)を加えて、mTGによって取り込まれたビオチン−X−カダベリンを検出した。次いで、B−II−1に記載のようにHRP活性を測定した。
【0104】
結果
すべての実験において、mTG(微生物/細菌トランスグルタミナーゼ)を標的酵素として、Satoら(2001)によって記載されるペプチドGS12Q7及びそのビオチン化誘導体bGS12Q7を標準基質として用い、新規ペプチド基質の反応性及び特異性を比較した。また、mTGとの酵素反応性を比較するため、またペプチド基質の特異性を確認するために、TG2(組織トランスグルタミナーゼ)を適宜使用した。
【0105】
R−1: B−II−1に記載の方法による、好ましいmTG基質のスクリーニング
ペプチドライブラリー(Covalab)をスクリーニングして、mTGの推定される新規基質を同定するために、ペプチドがプレートに共有結合的にカップリングしており、アミン基質のビオチン−カダベリンが溶液中に遊離しているCovabtest−ペプチド(B−I−1に記載)を使用した。この実験では、15ナノモルの各ペプチド(表2)をマイクロタイタープレートに共有結合的にコンジュゲートさせて、mTG(10ng/ウェル)によって触媒されるビオチン−カダベリン(0.1mg/ml)の取込みをB−II−1に記載の実験に従って定量した。図1に示すように、試験したすべてのペプチドの中で、mTGによってGln(Q)ドナーとして認識され、ビオチン−カダベリンを取り込んだのは、ごく少数のペプチドであった。酵素活性は、ペプチド基質間でさまざまであった。ペプチドFE5Q4、HH12Q11、及びDH6Q7はmTGの良好な基質であり、ペプチドFE5Q4及びHH12Q11はより反応性に富むことが見出された。QをNに置換する(ペプチドHH12N11)と、mTGの反応性が観測されず、酵素のGlnドナーへの特異性が確認された。さらに、4種のペプチド(HH12Q11、DH6Q7、HG14Q11、及びWG10Q7)の反応性を比較すると、Glnの反応性はペプチド配列内のその位置に依存することが観測され得る。最も反応性に富むペプチドでは、QはC末端に位置している。トランスグルタミナーゼの良好な基質であることが知られているペプチドGS12Q7及びTGpanは、他のペプチドと比較して、mTGに対する反応性が低かった。YV10は、その配列にQがない陰性対照ペプチドである。表1に列挙した他のペプチドは、mTGとの反応性を示さなかった。
【0106】
R−2: B−II−1に記載の方法による、好ましいTG2基質のスクリーニング
第2の実験では、TG2酵素をmTGと同じ条件で使用して、上記と同じペプチドを試験した。図2に提示した結果は、TGpanがTG2の良好な基質であることを明らかに示しており、この酵素に対する特異性が確認された。HH12Q11は、mTGよりTG2との反応性が低い。この実験条件では、他のペプチドのいずれもこの酵素と反応せず、TG2の基質として使用できない。これらの結果は、グルタミンドナーの位置とそのグルタミンの周囲にあるアミノ酸が、酵素の特異性にとって重要であることを示している。
【0107】
R−3: スクリーニングしたペプチドの親和性の決定
以下の表3は、mTGのペプチド基質の見かけのKmの決定について開示している((b)ビオチンタグ付きペプチド、(nr)酵素に認識されないペプチド)。Qドナーに太字で下線を施した。いくつかのペプチドでは、QをNに置換した。
【0108】
【表3】
【0109】
上記の実験では、いくつかのペプチドがmTGの良好な基質であることが見出された。この試験において、mTGの基質であることが知られていない、Gln残基を含有するペプチドの最適配列を決定した。その目的のために、Qを異なる位置に加えたいくつかのペプチドを作製し、Glnドナーの周囲にあるアミノ酸を変化させた(表1参照)。
【0110】
この実験では、B−II−4に記載のように、スペルミンをプレートにコンジュゲートさせた。表3に記載のビオチン化ペプチドを、mTGとともに異なる濃度(160、80、40、20、10、5、2.5、及び0μM)でインキュベートした。基質に対するmTGの親和性を比較するために、各ペプチドについて見かけのKmを決定し、ラインウィーバー=バーク法(1/吸光度=f(1/[mTG(μM)]))によって計算した。表3から、ペプチドHH12Q11とその短い誘導体(WH8Q7及びDH6Q5)が、mTGとの反応性に富むことが明らかである。これらのペプチドでは、Glnドナーが、mTGによる認識に必須であるセリン(X−1の位置)及びヒスチジン(X+1の位置)に囲まれている。DE6Q5においてヒスチジン(X+1の位置)をグルタミン酸(E)に変更すると、その反応性は失われるようである。ペプチドPH6Q4及びPS6Q4でも同じ結果が得られた。Eがペプチドの反応性を消失させるように見えても、これは、その負電荷のみによるものではなく、X+1、X+2、及びX+3の位置にあるアミノ酸の性質にもよる可能性がある。実際、X+1の位置にEを有するFE5Q4ペプチドは、このペプチドの反対側にあるアミノ酸の環境により、mTGとの高い反応性を示す。このことは、LN11Q8Q10ペプチドで確認される。このペプチドでは、8位にあるQだけがmTGの基質となる。なぜなら、LN11Q10においてそれをSに置換すると、ペプチドの反応性が完全に阻害されるからである。
【0111】
表3は、配列番号29、30、31、32、及び33のペプチドが、トランスグルタミナーゼの優れた基質であることも示している。
この表の他のペプチドに関しては、Glnの位置と周囲にあるアミノ酸のために、反応性が得られなかった。
【0112】
R−4: 選択したペプチドのmTG酵素反応に対する特異性の確認
高反応性ペプチドHH12Q11とその小型誘導体DH6N5に対するmTG反応の特異性を確認するために、Glnドナー(Q)をアスパラギン(N)に置換した変異類似体ペプチドを合成した。図4は、これらのペプチド(HH12Q11/HH12N11及びDH6Q5/DH6N5)を用いて得られた結果を示す。これらの最も好ましいmTGの基質において、QをNに置換すると酵素反応性が完全に失われるので、結果は決定的である。
【0113】
R−5: 好ましいmTG基質とコンジュゲートしたBSAは、酵素の良好な基質になる。
多くのタンパク質は、その構造中に多数のグルタミン残基が存在していたとしてもトランスグルタミナーゼの基質でないことが、文献でよく知られている(Gorman JJ、Folk JE、J.Biol.Chem.1984、Jul 25;259(14):9007−10)。これらのタンパク質には、ウシ血清アルブミン(BSA)及び免疫グロブリン(Ig)がある。本実験では、mTG基質にコンジュゲートしたBSAが酵素によって認識され得るかどうかを検証した。このようにするために、B−I−2に記載のように、ペプチドHH12Q11をBSAに共有結合的にコンジュゲートさせた。次いで、1μg/mlの非修飾BSA及びBSA−HH12Q11コンジュゲートを、mTGによるビオチン−カダベリン取込み用の96ウェルマイクロタイタープレートにコーティングした。別のアッセイでは、遊離HH12Q11を反応混合物に加え、mTGに対するその阻害効果を分析した。この競合アッセイの明確化のために、mTGを100ng/mlで用い、150μMの遊離ペプチド及び0.1mg/mlのビオチン−カダベリンを使用した。
【0114】
図4の結果は、BSA−HH12Q11コンジュゲートではビオチン−カダベリンの良好な取込みが得られ、遊離BSAでは反応性がなかったことを示しており、BSAはmTGの基質でないことが確認された。BSA−HH12Q11に対するmTGの反応性は、遊離ペプチドを加えると減少し、このペプチドに対する酵素の特異性を実証しており、R1において得られた結果が確認された。
【0115】
R−6: 好ましいmTG基質とコンジュゲートしたヒトIgGは、酵素の良好な基質になる。
この実験では、好ましい基質ペプチドHH12Q11を、B−1−2に記載のようにヒトIgGに共有結合的にカップリングさせて、その対照(遊離IgG)とともに、それらをB−I−4に示すように96ウェルマイクロタイタープレートにコーティングした(1mg/ml)。図5に示すように、ビオチン−カダベリン(0.1mg/ml)の取込みについて、異なる量のmTGを使用して検討した。
【0116】
結果は、遊離ヒトIgGがmTGの基質ではないこと、そしてHH12Q11ペプチドにコンジュゲートさせると、1級アミン(ビオチン−カダベリン)の強い取込みが得られたことを明らかに示している。遊離IgGで得られる低い光学密度は、mTG無添加で得られるバックグラウンドレベルと同等である。
【0117】
R−7: ビオチン−カダベリンのmTGによるヒトIgG−HH12Q11コンジュゲートへの酵素的取込みのウエスタンブロット分析
mTG基質の担体としてヒトIgGを使用し得るかどうか判定するために、HH12Q11及びFE5Q4(mTGペプチド基質)及びYV10(ペプチド対照)をヒトIgGにコンジュゲートさせて、B−II−5に記載のようにウエスタンブロットによって分析した。
【0118】
図6に提示する結果は、HH12Q11ペプチドとコンジュゲートさせたIgG及びFE5Q4ペプチドとコンジュゲートさせたIgGがともに、mTGと2時間インキュベーション後にビオチン−カダベリンを取り込むことができたことを示している。IgG−HH12Q11は、染色強度によって示されるように、より多くのビオチン−カダベリンを取り込んだように見える。さらに、IgG−HH12Q11は、アミン基質の取込みが酵素反応初期(T0)(矢印)から始まったので、mTGへの親和性がIgG−FE5Q4より高い。遊離IgG及びペプチド対照(YV10)とコンジュゲートしたIgGは、染色を示さなかった。これらの結果より、R−3で言及したこれまでの結果が確認される。
【0119】
図7に提示する反応速度試験の結果は、HH12Q11とのIgGコンジュゲート及びFE5Q4とのIgGコンジュゲートがともに、ビオチン−カダベリンを10分未満で速やかに取り込み、この取込みが経時的に増加して、1時間で高い取込みとなったことを示している。ここでも、遊離IgG及びペプチド対照(YV10)とコンジュゲートしたIgGは染色を示さず、遊離IgGがmTGの基質でないことを示した。
【0120】
R−8: 組換えタグ付き抗体
Q−ペプチドタグをその重鎖の最もC末端のドメインに含有する3種の異なる抗体を遺伝子操作してHEK−293細胞において産生した。Q−ペプチド(配列番号7)をヒト組換え抗RhD1抗体(IgG1)の重鎖のカルボキシル末端で融合させた。別の実験では、Q−ペプチド(配列番号32)を用いて組換えヒト抗リゾチーム抗体(D1−3)及びヒト抗Her2抗体にタグ付けして構築した。タグは重鎖のC末端で融合させた。次に、mTGがビオチン−X−カダベリンをQ−ペプチドタグ付き抗体に取り込むことができるかどうか検証した。図10のウエスタンブロットの結果は、配列番号7(図10A)及び配列番号32(図10B及び図10C)でタグ付けした抗体の重鎖の明瞭な染色を示したが、一方でタグなし抗体は染色されなかったことを示している。これらの知見より、Q−ペプチド配列は、全長の抗体配列に融合したときも、mTGの良好な基質であることが確認される。染色強度の差異は、ゲル中をロードした抗体の量によるものである。
【0121】
R−9: ビオチン−X−カダベリンのmTGによる取込みの反応速度試験
この実験では、配列番号32でタグ付けした組換えヒト抗リゾチーム抗体(D1−3)を、mTG及びビオチン−X−カダベリンとともに、0、15、及び120分間インキュベートし、材料及び方法に記載のように、酵素的架橋結合反応をストレプトアビジン−ペルオキシダーゼによって測定した。図11の結果は、ビオチン−X−カダベリンのmTGによる取込みが速やかで、取込み(図11中のシグナル強度によって評価)の最大値(>50%)が15分以内に得られたことを示している。この良好で特異的なmTG反応性は、図7に示された、配列HH12Q11及びFE5Q4を用いて得られた結果を確認するものである。
【0122】
R−10: 組換え抗リゾチームIgG及び抗Her2 IgGの免疫反応性のELISAによる確認
ポリヒスチジン及び他のペプチドは、免疫反応性に影響を及ぼすことなく抗体にタグ付けするために使用できることがよく知られている。この実験では、タグ付き抗リゾチーム抗体(D1−3)及び抗Her2抗体の、対応するタンパク質に対する免疫反応性について、B−III−3及びB−III−4の方法に記載のように、ELISAによって測定した。図12Aの結果は、タグ−D1−3が、タグなし対照抗体D1−3に匹敵する免疫反応性を有することを明らかに示している。hIgGは、陰性対照抗体として使用した。図12Bでは、タグ付き抗Her2に関して、そのタグなし抗体と比較して同様の結果を得た。図12Cでは、mTGを介してビオチン−X−カダベリンにコンジュゲートしたとき、抗Her2抗体の免疫反応性が安定していることを確認した。このELISA試験の対照は、タグ付き及びタグなしの抗リゾチームを使用して作製した。これらの実験から、抗体の重鎖のC末端にmTGの基質として小ペプチド配列を付加しても、免疫反応性に影響を及ぼさないことが確認される。
【0123】
本願は以下の発明を包含する。
[項目1] トランスグルタミナーゼの基質であって、
3〜15個のアミノ酸を有し、アミノ酸配列:X−4−3−2−1QX+1+2+3+4
[式中:
−4は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくは負電荷アミノ酸又は非極性アミノ酸であり;
−3は、非存在であるか、又は芳香族アミノ酸、非極性疎水性アミノ酸、及び非極性アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
−2は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくは負電荷アミノ酸又は非極性アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
−1は、極性中性アミノ酸、正電荷アミノ酸、非極性アミノ酸、及び非極性疎水性アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
Qは、グルタミンであり;
+1は、極性中性アミノ酸、正電荷アミノ酸、非極性疎水性アミノ酸、及び負電荷アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
+2は、非存在であるか、又は極性中性アミノ酸、芳香族アミノ酸、非極性疎水性アミノ酸、及び正電荷アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
+3は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくは非極性アミノ酸であり;そして
+4は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸である]
を含み、第1分子に結合するペプチドを含む、前記基質。
[項目2] X−4は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくはアスパラギン酸又はプロリンであり;
−3は、非存在であるか、又はフェニルアラニン、プロリン、バリン、チロシン、トリプトファン、及びロイシンから成る群より選択されるアミノ酸であり;
−2は、非存在であるか、又はグルタミン酸、プロリン、チロシン、トリプトファン、リジン、システイン、ロイシン、ヒスチジン、及びセリンから成る群より選択されるアミノ酸であり;
−1は、セリン、ヒスチジン、イソロイシン、バリン、及びアラニンから成る群より選択されるアミノ酸であり;
Qは、グルタミンであり;
+1は、アルギニン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、セリン、及びアラニンから成る群より選択されるアミノ酸であり;
+2は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくはヒスチジン、チロシン、リジン、グルタミン、ロイシン、及びセリンから成る群より選択されるアミノ酸であり;
+3は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくはプロリンであり;そして
+4は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸である、
項目1に記載の基質。
[項目3] (i)X−1はセリンであり、X+1は、ヒスチジン、チロシン、アラニン、又はグルタミン酸である;
(ii)X−1はアラニン又はバリンであり、X+1は、リジン、アルギニン、又はアラニンであり、ここで、X−1がアラニンであるとき、X+1はリジン又はアルギニンである;又は
(iii)X−1はイソロイシンであり、X+1は、アルギニン、リジン、又はグルタミン酸である、
のいずれかである、項目1又は2に記載の基質。
[項目4] 第1分子が、タンパク質、抗体、薬物、核酸、放射性元素、レポーター基、安定化分子、アプタマー、リボザイム、ドメイン抗体、ナノボディ、非免疫グロブリン骨格、ベクター粒子、及び固体支持体に固定された分子から成る群より選択される、項目1、2、又は3に記載の基質。
[項目5] 第1分子が抗体である、項目1〜4のいずれか1項に記載の基質。
[項目6] 該ペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号20、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、及び配列番号33から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む、項目1〜5のいずれか1項に記載の基質。
[項目7] 少なくともアルキルアミン又はリジン残基を含む第2分子に共有結合した、項目1〜6のいずれか1項に記載のトランスグルタミナーゼの基質を含む、コンジュゲートした化合物。
[項目8] 第2分子が、タンパク質、抗体、薬物、核酸、放射性元素、レポーター基、安定化分子、アプタマー、リボザイム、ドメイン抗体、ナノボディ、非免疫グロブリン骨格、ベクター粒子、及び固体支持体に固定された分子から成る群より選択される、項目7に記載のコンジュゲートした化合物。
[項目9] 第1分子が抗体であり、第2分子が薬物、好ましくは細胞傷害薬である、項目7又は8に記載のコンジュゲートした化合物。
[項目10] ヒト又は動物の身体の治療方法に使用するための、項目9に記載のコンジュゲートした化合物。
[項目11] 項目1〜6のいずれか1項に記載のトランスグルタミナーゼ基質を、少なくともアルキルアミン又はリジン残基を含む第2分子に共有結合させるための方法であって:
トランスグルタミナーゼ基質を第2分子と、トランスグルタミナーゼ、好ましくは細菌トランスグルタミナーゼ、例えば、ストレプトベルチシリウム・モバラエンス(Streptoverticillium mobaraense)トランスグルタミナーゼ(mTG)の存在下で反応させる工程を含む、前記方法。
[項目12] 3〜15個のアミノ酸を有し、アミノ酸配列:X−4−3−2−1QX+1+2+3+4
[式中:
−4は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくは負電荷アミノ酸又は非極性アミノ酸であり;
−3は、非存在であるか、又は芳香族アミノ酸、非極性疎水性アミノ酸、及び非極性アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
−2は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくは負電荷アミノ酸又は非極性アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
−1は、極性中性アミノ酸、正電荷アミノ酸、非極性アミノ酸、及び非極性疎水性アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
Qは、グルタミンであり;
+1は、極性中性アミノ酸、正電荷アミノ酸、非極性疎水性アミノ酸、及び負電荷アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
+2は、非存在であるか、又は極性中性アミノ酸、芳香族アミノ酸、非極性疎水性アミノ酸、及び正電荷アミノ酸から成る群より選択されるアミノ酸であり;
+3は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくは非極性アミノ酸であり;そして
+4は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸である]
を含むペプチド。
[項目13] X−4は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくはアスパラギン酸又はプロリンであり;
−3は、非存在であるか、又はフェニルアラニン、プロリン、バリン、チロシン、トリプトファン、及びロイシンから成る群より選択されるアミノ酸であり;
−2は、非存在であるか、又はグルタミン酸、プロリン、チロシン、トリプトファン、リジン、システイン、ロイシン、ヒスチジン、及びセリンから成る群より選択されるアミノ酸であり;
Qは、グルタミンであり;
−1は、セリン、ヒスチジン、イソロイシン、バリン、及びアラニンから成る群より選択されるアミノ酸であり;
+1は、リジン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミン酸、セリン、及びアラニンから成る群より選択されるアミノ酸であり;
+2は、非存在であるか、又はヒスチジン、チロシン、リジン、グルタミン、ロイシン、及びセリンから成る群より選択され;
+3は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸、好ましくはプロリンであり;そして
+4は、非存在であるか又はいずれかのアミノ酸である、
項目12に記載のペプチド。
[項目14] 配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号20、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、及び配列番号33から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む、項目12又は13に記載のペプチド。
[項目15] ポリペプチドに融合した、項目12〜14のいずれか1項に記載のペプチドを含む、融合タンパク質。
[項目16] 抗体の重鎖及び/又は軽鎖、あるいはFab若しくは(Fab)’のようなそれらの可変断片領域を含み、前記重鎖及び/又は軽鎖、あるいはそれらの可変断片は、項目12〜14のいずれか1項に記載のペプチドに融合している、項目15に記載の融合タンパク質。
参考文献
本願を通して、様々な参考文献が、本発明が関連する当該技術分野の技術水準を記載する。
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12-1】
図12-2】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]