特許第6865586号(P6865586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6865586視差光学部品を組み入れた、パターン化された異方性を持つ光学デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865586
(24)【登録日】2021年4月8日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】視差光学部品を組み入れた、パターン化された異方性を持つ光学デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/00 20060101AFI20210419BHJP
   G03B 35/26 20210101ALI20210419BHJP
   G02B 30/00 20200101ALI20210419BHJP
   G03B 35/24 20210101ALI20210419BHJP
   G03B 35/18 20210101ALI20210419BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20210419BHJP
   G02B 3/06 20060101ALI20210419BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20210419BHJP
   G09F 19/12 20060101ALI20210419BHJP
   B42D 25/391 20140101ALI20210419BHJP
   B42D 25/364 20140101ALI20210419BHJP
【FI】
   G02B5/00 Z
   G03B35/26
   G02B30/00
   G03B35/24
   G03B35/18
   G02B3/00 A
   G02B3/06
   G02B5/30
   G09F19/12 F
   B42D25/391
   B42D25/364
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-560560(P2016-560560)
(86)(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公表番号】特表2017-517024(P2017-517024A)
(43)【公表日】2017年6月22日
(86)【国際出願番号】EP2015056826
(87)【国際公開番号】WO2015150295
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2018年3月14日
(31)【優先権主張番号】14163316.4
(32)【優先日】2014年4月3日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596098438
【氏名又は名称】ロリク アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ROLIC AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ザイベルレ,フーベルト
(72)【発明者】
【氏名】ピレシュ,デービッド
【審査官】 山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0182517(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/042737(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0164345(US,A1)
【文献】 特表2001−525080(JP,A)
【文献】 特開2005−078091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/00−1/08
3/00−3/14
5/00−5/136
5/30
27/00−27/64
G03B 35/00−37/06
G09F 19/00−27/00
B42D 15/02
25/00−25/485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光アライメント層に配向パターンを生成する方法であって、
光アライメント層(1、31)を提供する工程と、
視差光学素子(3、32)を提供する工程と、
光アライメント層から適切な距離をおいて視差光学素子(3)、または視差光学素子(32)の光学活性部を配置する工程と、
視差光学素子の基準面に対する第一の入射角(8)での第一の偏光方向(7)のアライニング光(6)による視差光学素子の照射工程であって、光アライメント層の第一の領域に異方性を誘導するために、アライニング光が視差光学素子により光アライメント層の表面上の第一の領域(9、34)に向けられる工程と、
光アライメント層および視差光学素子の相互の位置および配向を変化させることなく、視差光学素子の基準面に対する第二の入射角(18)での第二の偏光方向(17)のアライニング光(16)による視差光学素子の照射工程であって、光アライメント層の第二の領域に異方性を誘導するために、アライニング光が視差光学素子により光アライメント層(1、31)上の第二の領域(11、36)に向けられる工程と、を含む
方法。
【請求項2】
視差光学素子がマイクロレンズ、レンチキュラーレンズ(33)または視差バリア板(3)を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
光アライメント層(31)が視差光学素子(32)と組み合わされる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
追加的な領域にアライメントを生成するために追加的な偏光方向のアライニング光が追加的な角度で入射する一つ以上の追加的な照射工程によって特徴付けられる、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
パターンを含むフォトマスクが、アライニング光を局所的に遮るために、第一の偏光方向のアライニング光による照射工程で使用され、第一の領域の第一の区域のみが照射される、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
視差光学素子がフォトマスクを伴ってまたは伴わずに第一の入射角で、だが第二の偏光方向のアライニング光によって照射され、第一の区域におけるものとは異なる配向方向を持つ第二の区域に異方性を誘導するために、アライニング光が光アライメント層上の第一の領域内の第二の区域に向けられる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
光アライメント層および視差光学素子の相互の位置および配向を変化させることなく、第二の照射工程がアライニング光の第二の入射角で適用され、前記アライニング光の偏光方向が、第二の入射角(18)照射されるアライニング光の第二の偏光方向(17)と異なる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
アライニング光(26)が視差光学素子(32)を通過することなく、視差光学素子を使用する照射に使用される偏光方向(7、17)とは異なる偏光方向(30)で光アライメント層(31)に照射される照射工程によって特徴付けられる、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、視差光学部品を使用する光アライン可能な材料に配向パターンを生成する方法に関する。本発明は、さらに、パターン化された異方性特性と視差光学部品とを持つ光学デバイスに関する。本発明のデバイスは、様々な適用に対して有効な、角度依存の光学的異方性特性を有する。
【0002】
発明の背景
パターン化された異方性特性を持つ素子は、例として、局所的に異なる光学軸方向を持つ重合したまたは架橋した液晶を含む層を包含する光学素子として公知である。そのような層は、例として、局所的に異なるアライメント方向を呈するアライメント層上に架橋性液晶材料を適用することによって調製される。液晶材料は、下層のアライメント層の局所的なアライメント方向を採用し、配向を固定するために架橋される。
【0003】
そのような種類の光学素子は、大量に作製され、見る者の左右の目に対して画像情報を符号化するために主にパッシブ3Dディスプレイの偏光変換用に使用される。
【0004】
当技術分野において公知の、配向パターンを光アライン可能な材料の層に生成するための異なる方法がある。概して、配向パターンは、光アライメント層の異なる領域を異なる偏光方向を持つアライニング光に露光することによって達成される。例として、米国特許第7,375,888号では、これは、各々が独自の偏光方向を使用する続く露光工程で異なるフォトマスクで光アライメント層の一部を覆うことによって実行される。
【0005】
米国特許第7,375,888号では、分析器を回転させることによって画像を交互に見ることができるように少なくとも二つの画像が保存される、パターン化された異方性を含む層を持つ光学素子が開示されている。画像は、例として、パターン化された異方性を持つ層内の交互ストライプに含まれる。そのような素子の製造方法は、米国特許第7,375,888号に記載されるように、個別の画像を対応する専用のストライプに転送するためにマスクの正確なアライメントを要する、個別の光マスクを持つ続く露光工程を含む。
【0006】
発明の概要
本発明の目的は、光アライン可能な材料を含む層における配向パターンの簡便な生成方法を提供することである。本発明のもう一つの目的は、異方性特性を含む新規光学デバイスを提供することである。
【0007】
本発明の方法では、視差光学部品は、対応する領域に異方性を生成するために、アライニング光を光アライメント層の特定の領域に向けるべく使用される。異なる領域は、視差光学素子に対するアライニング光の入射の角度によって選択される。異なる入射角のアライニング光は、例として、非コリメート光を使用することによって、続く露光工程でまたは同時に適用されることができる。これにより、フォトマスクの置き換えや再配置をすることなく、異なる角度からの照射だけで、アライメントパターンを光アライメント層、例としてストライプの形態、に生成することが可能になる。
【0008】
視差光学部品は、当技術分野において周知であり、多くの場合、異なる視野画像を分離するために特定の視域に光を導くべく使われる。適用は、例として、裸眼立体ディスプレイや、視野角を変化させることによって異なる画像を見ることができる、インターレース画像を持つ反転画像である。
【0009】
本発明の関連では、視差光学素子という用語は、視差光学部品を提供し、光を入射角の関数として異なる領域に導く特性を有する光学素子に対して使用される。視差光学素子の例は、視差バリア、レンチキュラーレンズアレイ、回折格子板およびマイクロレンズアレイである。以下においては、POEという用語は、視差光学素子の略語として使用される。
【0010】
本発明のデバイスは、POEと、パターン化された光学特性を持つ光学素子とを含む。パターンは、光学特性が異方性である少なくとも一つの区域を含む。しかし、パターンにおいてはいかなる異方性特性もない区域があってもよい。異方性であることができる特性は、吸収、散乱、反射、発光および屈折率を包含する。好ましくは、異方性特性の対称軸の配向方向が異なる、異方性特性を持つ少なくとも二つの区域がある。一軸異方性特性に対しては、対称軸は、例えば、一軸リターダのケースの光学軸のようによく定義されている。もう一つの例は、偏光層のケースの消光軸である。異方性が二軸、例えば、二軸リターダ、のケースでは、対称軸という用語は、主軸の一つを指す。POEおよび光学素子は、互いの後ろに配置され、それらは少なくとも一部が互いに重なる。本発明のデバイスは、入射光との相互作用のために光学素子のパターンの具体的な領域を選択するために視差光学部品を使用する。光は、入射光学素子側からまたはPOE側からデバイスへ入射するものであることができる。
【0011】
本出願の関連では、「配向方向」という用語は、異方性特性の対称軸を指す。「配向パターン」という用語は、配向方向において異なる少なくとも二つの域を含むパターンを意味する。
【0012】
パターン化された光学特性を持つ光学素子における配向パターンは、好ましくは光アライメント方法によって光アライン可能な材料を含む層に生成される。あるいは、配向パターンは、他の好適な方法、例として、インプリンティング、ブラッシング、フォトリソグラフィまたは異方性の表面構造を生成するための他の方法によって生成されることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明は、添付図面の図によってさらに説明される。様々な特徴が必ずしも原寸に比例して描かれていないことを強調しておく。
図1図1aに視差バリア板および光アライメント層の配置、図1bに第一の入射方向からの第一の照射、図1cに第二の入射方向からの第二の照射、図1dに生成された配向パターンを示す、本発明の方法の工程を図示する。
図2図2aに光アライメント層が取り付けられた視差バリア素子、図2bに第一の入射方向からの第一の照射、図2cに視差バリア板の逆側からの第二の照射、図2dに生成された配向パターンを示す、本発明の方法の変形態様の工程を図示する。
図3】光アライメント層がレンチキュラーレンズのアレイを含むPOEと組み合わされる、図3a〜3eに図示される方法の例の工程を説明する。
図4】異方性の光学素子がPOEのレンチキュラーレンズの焦点面にない、第一の好ましい実施態様のデバイスを示す。
図5】広範囲の入射角に対して機能する、第一の好ましい実施態様のデバイスを示す。
図6】第一の好ましい実施態様のデバイスが冊子のもう一つのページ上に配置されたパターン化されたリターダにある隠し情報を分析するために冊子に組み入れられる例を示す。
図7】光学素子がパターン化されたリターダ層である、第二の好ましい実施態様のデバイスを示す。
【0014】
発明を実施するための形態
本発明の第一の態様によって、光アライメント層に配向パターンを生成する方法が提供される。
【0015】
本発明の方法は、
光アライメント層を提供する工程と、
視差光学素子を提供する工程と、
光アライメント層から適切な距離をおいて視差光学素子を配置する工程と、
視差光学素子の基準面に対する第一の入射角での第一の偏光方向のアライニング光による視差光学素子の照射工程とを含み、光アライメント層の第一の領域に異方性を誘導するためにアライニング光が光アライメント層の表面上の第一の領域に向けられる。
【0016】
本出願の関連では、光アライメント層という用語は、それが既にアライニング光に露光されたか否かにかかわらず、光アライン可能なおよび/または光アラインされた材料を含む層に対して使用される。それゆえに、本明細書において使用される光アライメント層は、アライニング光に露光されない限り異方性特性を有しなくてもよく、アライニング光に露光された後に異方性特性を有する。光アライメント層は、薄い層として基材に適用されることができる。光アライメント層が十分に厚く、機械的に安定しており、追加的な支持なしで取り扱われることができることも可能である。後者のケースでは、光アライメント層は、基材の機能も有する。
【0017】
光アライン可能な材料は、光の偏光に感度があり、適切な波長の偏光光に露光される際に異方性特性が誘導されることができる材料である。「光アラインされた材料」という用語は、アライニング光への露光によってアラインされた光アライン可能な材料を指すために使用される。
【0018】
本出願の関連では、「アライニング光」という用語は、光アライン可能な材料に異方性を誘導することができ、少なくとも一部が直線的にまたは楕円状に偏光される光を意味する。アライニング光が楕円状に偏光されるケースでは、偏光方向は、偏光楕円の主軸である。好ましくは、アライニング光は、5:1以上の偏光度で直線的に偏光される。アライニング光の波長、光度およびエネルギーは、光アライン可能な材料の感光性に依存して選ばれる。通常、波長は、紫外線A、紫外線Bおよび/もしくは紫外線Cの範囲または可視範囲にある。好ましくは、アライニング光は、波長450nm未満の光を含む。アライニング光が波長400nm未満の光を含むとより好ましい。
【0019】
本発明の方法およびデバイスは、POEを利用する。第一のタイプの好適なPOEは、透過した光をレンズの焦点面の特定の領域に集束させる、レンズおよびレンズのアレイ、とりわけマイクロレンズおよびレンチキュラーレンズのような集束要素を包含する。光の入射角を変化させる際に、光が投射される領域は、それに応じて移動する。POEは、光学的に異方性のレンズを含むこともでき、好ましくは、これらは光学的に異方性のレンチキュラーレンズである。
【0020】
もう一つのタイプのPOEは、遮光部位によって分離された複数個の光透過部位を含む、視差バリア板である。好ましくは、部位は、ストライプの形態を有する。視差バリア板がスクリーンから距離を置いて配置され、斜めに照らされる場合、光透過部位は、視差でスクリーンに投射される。視差は、光の入射角に依存するので、スクリーン上の照らされる領域は、光の入射角の関数として移動する。通常、遮光部位は、支持上に配置され、光を吸収および/または反射することができる。透過の作用のためには、支持は、透過性でなければならないが一方で、反射の作用であれば、これを要しない。POEは、一つ以上の視差バリア板を含むことができる。POEが二つ以上の視差バリア板を含む場合、それらは、好ましくは互いから距離を置いて配置され、他の方向が第二のバリア板の遮光部位によって遮られるので、第一のバリア板を通過する入射光が特定の方向にさらに導かれる。例として、これにより、光のコリメーション度を増加させることが可能になる。例として、透明基材の両側に視差バリア板を有することが可能であるが、視差バリア板は、互いから物理的に分離されることも可能である。当技術分野において公知の任意の方法を使用して、例として、印刷または局所的な材料蒸着のための他の方法によって遮光部位を生成することができる。あるいは、遮光材料は、まず遮光部位のために所望のそれより大きい範囲に適用させ、続いて適切な手段、例えば、ドライまたはウエットエッチング、局所的なアブレーションまたは脱金属化によって除去される。代替として、光透過性部位は、光吸収または反射板の全深さで材料が除去され、従って穴が作られる範囲であってもよい。
【0021】
本発明の方法およびデバイスに使用される視差バリア板では、光透過性および遮光部位の幅は、同じまたは互いに異なることができる。光アライメント層(方法)またはパターン化された光学特性を持つ素子(デバイス)において二つの種類の領域のみが異なる入射角によりそれぞれ区別されなければならない場合、光透過性および遮光部位の幅は、好ましくは同一である。二つ以上の領域が二つ以上の入射角によって扱われる場合、遮光部位の幅は、好ましくは透過性部位のそれより広い。好ましくは、遮光および光透過性部位の幅の和に対する遮光部位の幅の比率は、0.6以上、0.7以上であるとより好ましく、0.8以上であると最も好ましい。
【0022】
本発明の方法に対して合理的な範囲の入射角に十分な視差効果を提供するために、視差板は、光アライメント層からの適切な距離を有する。適切な距離は、視差板の光透過性および遮光部位の幅に依存する。視差板と光アライメント層との間の空間が空気で満たされている場合、視差板と光アライメント層との間の距離は、好ましくは視差板の光透過性部位の幅の0.2倍より大きい。距離が光透過性部位の幅の0.4倍より大きいとより好ましく、視差板の光透過性部位の幅の0.6倍より大きいと最も好ましい。視差板と光アライメント層との間に絶縁材料、例えば、ガラスまたはプラスチックがある場合、視差板と光アライメント層との間の距離は、好ましくは視差板の光透過性部位の幅の0.5倍より大きい。距離が光透過性部位の幅の0.8倍より大きいとより好ましく、視差板の光透過性部位の幅の1倍より大きいと最も好ましい。
【0023】
POEのさらにもう一つの例は、回折構造、例えば、回折格子板を含む。回折された光は、デバイスから距離を置いて位置付けられたスクリーンの特定の領域のみに当たる。光回折は、光の入射角に依存するので、光が回折されるスクリーン上の領域は、光の入射角の関数としてのそれらの位置を変化させる。
【0024】
理想的には、本発明の方法およびデバイスに使用されるPOEは、アライニング光の偏光状態に影響を及ぼさない。よって、POEに使用される材料は、好ましくは低い光学複屈折を有するか、まったく有しない。
【0025】
光アライメント層は、POEを取り付けられることができまたはPOEから分離されることができる。後者のケースでは、光アライメント層およびPOEは、移動し、互いから独立して位置付けられることができる。さらに、光アライメント層がPOEから分離される場合、本発明の方法のためにPOEを多数回使用することができるという利点がある。
【0026】
好ましくは、光アライメント層は、POEと組み合わされる。これは、光アライメント層が本発明のデバイス用の素子を製造するために使用される場合、特に有利である。POEが光アライメント層と組み合わされるので、POEを通った照射によって光アライメント層に生成されたパターンは、既に完璧にPOEとアラインされている。それ故に、パターンを生成する方法と、パターンを分析するデバイスとにおいて同じPOEが使用される。
【0027】
POEと光アライメント層とを組み合わせるとき、POEの光学活性部と光アライメント層の表面との間に適切な距離がある。この目的のために、POEは、厚さを持つデバイスとして提供されることができ、光アライメント層がPOEデバイスの所望の表面に適用されるとき、それは、POEからの適切な距離を有する。あるいは、光アライメント層が適切な距離を提供するために適用されるよう意図されるPOEの側に追加的な層が適用されることができる。光アライメント層は、例として、コーティングまたは印刷によって、POE上に直接作られることができる。あるいは、光アライメント層を持つ基材または光アライン可能な材料を含む基材は、POEに積層されることができる。POEがマイクロレンズアレイまたはレンチキュラーレンズアレイであるケースでは、多数の適用に対して、光アライメント層は、好ましくはレンズアレイの焦点面に位置付けられる。
【0028】
好ましくは、本発明の方法は、光アライメント層および視差光学素子の相互の位置および配向を変化させることなく、視差光学素子が視差光学素子の基準面に対する第二の入射角でアライニング光によって照射され、異方性を作る光アライメント層の表面上の第二の領域にアライニング光が向けられる、追加的な工程を含む。追加的な領域にアライメントを生成するために、アライニング光が追加的な角度で入射する、追加的な露光工程を追加することができる。アライニング光の偏光方向は、露光工程の各々で同じであることができまたはそれらは、二つ以上の露光工程で異なることもできる。先の露光の各々について、アライメント層と視差光学素子との間の相対位置および配向は、同じである。
【0029】
第一のおよび第二の入射角は、互いに異なる。それゆえに、第一のおよび第二の領域は、同一ではない。幾分かの領域の重なりがあってもよいものの、第一の領域の面積と重ならない、第二の領域の少なくとも一部がある。第一の領域の面積と重なる第二の領域の一部の全面積は、好ましくは第二の領域の全面積の50%未満であり、30%未満がより好ましく、10%未満が最も好ましい。
【0030】
好ましくは、アライニング光がPOEを通過することなく光アライメント層に照射される、一つの露光工程がある。アライニング光は、POEを通っても照射される、光アライメント層の同じ側に照射されることができる。好ましくは、アライニング光は、POEを通って照射されるそれとは逆の、光アライメント層の側に照射される。アライニング光は、光アライメント層の全域またはその特定の区域のみに照射されることができる。光アライメント層のさらなる区域が異なる偏光方向のアライニング光によって照射される、一つ以上の続く工程を追加することがさらに可能である。これらの露光工程で照射される区域を画定するために、例として、フォトマスクを使用することができる。好ましくは、POEなしの照射に使用されるアライニング光の偏光方向は、POEを通る照射に使用されるそれらの各々とは異なる。POEありおよびなしの露光工程は、任意の順序であることができる。例として、第一の露光工程は、POEなしで、POEありの露光工程が続くことができる。好ましくは、最後のPOEありの露光工程の後にPOEなしの露光工程がある。
【0031】
図1a〜1dの図面は、本発明の方法の例を図示する。図1aでは、基材2上の光アライメント層1から距離を置いて配置される、POE3として視差バリア板が使用される。視差バリア板は、結果的に遮光ストライプ5および透明ストライプ4になる、遮光材料のストライプを透明支持上に有する。図1bでは、コリメートアライニング光6は、POE表面の法線に対して第一の入射角8でPOEに入射する。アライニング光の偏光方向7は、図面平面にあると仮定される。光が範囲5で遮られるので、透明部位4を通って透過した光は、光アライメント層の第一の領域9のみにおいて配向方向10に異方性を作る。図面は、配向方向が図面の平面にあることを示すものの、光アライメント層に使用される光アライン可能な材料のタイプに依存して、配向が図面平面に垂直であることも可能であることがわかる。図1cは、第二の入射角18で入射する第二の偏光方向17を持つコリメートアライニング光16による第二の照射を説明する。偏光方向は、円17によって示されるように、図面平面に垂直であると仮定される。視差により、POEの透明ストライプ4を通って透過したアライニング光は、第二の領域11を照射し、第一の領域9に作られる配向方向10に垂直な配向方向12を持つ光アライメント層1に異方性を作る。結果として、図1dに示されるように、互いに垂直である配向方向10および12をそれぞれ持つストライプ9および11を有する光アライメント層1に配向パターンが作られる。二つの照射工程におけるアライニング光の二つの具体的な偏光方向が説明を容易にするために選ばれている。しかし、偏光方向の任意の他の組み合わせ、とりわけ互いに垂直である必要のない二つの偏光方向を選ぶことができる。
【0032】
図2a〜2dの図面は、本発明の方法のもう一つの変形態様を図示する。図1における例と反対に、POE23は、遮光材料のストライプを持つ透明基材22を含み、従ってストライプの形態の光透過部位4および遮光部位5を形成する。透明基材22は、特定の入射角を持つ光に対するバリアパターン(裏側)の逆側に所望の視差を提供する厚さを有する。そのようなPOEは、例として染料、とりわけ黒い染料を使用して、不透明ストライプが印刷された、例として透明なホイルであることができる。光アライメント層1は、POE23と組み合わされる。これは、例としてコーティングもしくは印刷方法または積層プロセスによって、基材22の裏側に光アライメント層を直接生成することで実行される。図2bでは、コリメートアライニング光6は、POE表面の法線に対して第一の入射角8でPOEに入射する。アライニング光の偏光方向7は、図面平面にあると仮定される。光が範囲5で遮られるので、透明部位4を通って透過した光は、光アライメント層の第一の領域9のみにおいて配向方向10に異方性を作る。アライニング光26は、POEを通過しないが、基材22の裏側のアライメント層1に直接照射される、追加的な照射工程が図2cに図示される。円27は、図面平面に垂直な偏光方向を示すが、任意の他の偏光方向も可能である。アライニング光26は、第一の領域9に既に確立された配向方向10に垂直な配向方向12を持つ光アライメント層1の領域11に異方性を作る。結果として、図2dに示されるように、互いに垂直である配向方向10および12をそれぞれ持つストライプ9および11を有する光アライメント層1に配向パターンが作られる。先の例にあるように、二つの照射工程におけるアライニング光の二つの偏光方向が説明を容易にするために選ばれている。しかし、偏光方向の任意の他の組み合わせ、とりわけ互いに垂直である必要のない二つの偏光方向を選ぶことができる。
【0033】
本発明の方法の第三の例が図3に図示される。この例におけるPOE32は、図3aに示されるようにレンチキュラーレンズのアレイ33を含む。以下の記載に対して、POEの「前側」という用語は、図3aにおいては上部である、レンチキュラーレンズを呈するPOEの側を意味する。図3aにおいてはPOEの下部であるPOE32の逆側に対しては、「裏側」という用語が使用される。この用語は、記載を容易にするためのみのものであり、本発明の範囲のいかなる限定をも意味するものではない。図3aは、さらにPOEが光アライメント層31と組み合わされることを示す。光アライメント層は、例として、コーティング、印刷または積層によって、POEの裏側に適用される。POEの形状寸法は、第一の入射角8で入射し、第一の偏光方向7を有するアライニング光6によるPOEの第一の照射の際に、アライニング光は、図3bに図示されるように、第一の領域34に向け直される。アライニング光の第一の偏光方向7は、図面平面にあると仮定される。アライニング光は、配向方向35を持つ領域34に異方性をもたらす。図3cは、第二の入射角18で入射し、第二の偏光方向17を有するアライニング光16によるPOEの第二の照射を説明する。第二の偏光方向17は、図3cに円で示され、図面平面に垂直であると仮定される。POEの形状寸法に従って、アライニング光は、それが配向方向37に異方性を作る、光アライメント層の第二の領域36に向け直される。方法の例は、図3dに説明されるように、第三の照射工程を組み入れる。第三の照射工程では、アライニング光は、POEを通過しないが、光アライメント層が取り付けられたPOEの裏側に照射される。アライニング光26は、アライメント層平面に垂直に入射することができ、第三の偏光方向30を有する。照射の際、それまで露光されなかった領域38に、第三の配向方向39に異方性が作られる。図3eは、三つの照射工程によって光アライメント層31に作られる、ストライプの形態の配向パターンを示す。対応する配向方向によって画定された、三つのタイプの領域34、36、38がある。図3b〜3eに示された偏光方向は、例のみとして選ばれており、本発明の範囲を限定するものではない。照射工程のいずれにおいても、任意の他の偏光方向が可能だったであろう。
【0034】
本発明の方法の第一の好ましい実施態様によると、透明および不透明域のパターンを含むマスクは、POEの光学機能に従って、アライニング光の入射角によって選択されたそれら領域の第一の区域のみを照射するために、アライニング光を局所的に遮るべく使用される。
【0035】
マスクが光アライメント層と密接に接触して位置付けられ、アライニング光が高いコリメーション度を有する場合、ミクロメートル範囲のパターン構造でさえも理想的には光アライメント層に転送されることができる。しかし、ミクロメートル範囲のパターン分解能が所望されない場合、より低い光コリメーション度および/または光アライメント層からのマスクのより大きい距離は、十分な再生品質をなおも提供することができる。例として、マスクが光アライメント層から数センチメートル分離される場合でさえ、コリメーション度が十分に高い限り、マスクパターンを光アライメント層の平面に投射することが可能である。よって、POEおよび光アライメント層に対するマスクの位置には幾分かの柔軟性がある。マスクは、マスクの光アライメント層との密接な接触を可能にする、POEと光アライメント層との間に位置付けられることができる。しかし、光アライメント層とは逆のPOEの側にマスクが位置付けられることが好ましい。アライニング光は、まずマスクを、その後、それが光アライメント層に当たる前にPOEを通過する。
【0036】
好ましくは、方法の第一の好ましい実施態様は、マスクが除去されるか、変えられるか、置き換えられるかのいずれかで、光アライメント層および視差光学素子の相互の位置および配向を変化させることなく、視差光学素子がなおも第一の入射角で第二の偏光方向のアライニング光によって照射され、第一の区域におけるものとは異なる配向方向を持つ第二の区域に異方性を誘導するために、アライニング光が光アライメント層上の第一の領域内の第二の区域に向けられる、第二の照射工程を含む。それゆえに、配向パターンは、光アライメント層の第一の領域に生成される。異なる配向方向を持つ区域の数は、各々がアライニング光の異なる偏光方向および異なるもしくは変えられたマスクパターンを持つまたはマスクなしである、第三のおよびさらなる照射工程を追加することによって増加させることができる。
【0037】
方法は、アライニング光の第二の入射角のための第一のならびに場合により第二のおよびさらなる照射工程によってさらに拡張されることができる。第一の、第二のおよびさらなる照射工程は、先の記載に従うが、これは、アライニング光が照射工程の各々において異なる偏光方向を有することを意味する。これは、光アライメント層上の第二の領域内に異方性軸の配向パターンを生成する。
【0038】
追加的な領域をパターン化することが所望される場合、第一の、第二のおよび場合によりさらなる照射工程は、先に記載されたように、光アライメント層および視差光学素子の相互の位置および配向を変化させることなく、アライニング光の第三のおよびさらなる入射角のために適用されることができる。同じマスクが異なる入射角での照射に使用されることができる。
【0039】
好ましくは、アライニング光がPOEを通過することなく光アライメント層に照射される、一つの露光工程がある。アライニング光は、POEを通っても照射される、光アライメント層の同じ側に照射されることができる。好ましくは、アライニング光は、POEを通って照射されるそれとは逆の、光アライメント層の側に照射される。アライニング光は、光アライメント層の全域またはその特定の区域のみに照射されることができる。光アライメント層のさらなる区域が異なる偏光方向のアライニング光によって照射される、一つ以上の続く工程を追加することがさらに可能である。これらの露光工程で照射される区域を画定するために、例として、フォトマスクを使用することができる。好ましくは、POEなしの照射に使用されるアライニング光の偏光方向は、POEを通る照射に使用されるそれらの各々とは異なる。POEありおよびなしの露光工程は、任意の順序であることができる。例として、第一の露光工程は、POEなしで、POEありの露光工程が続くことができる。好ましくは、最後のPOEありの露光工程の後にPOEなしの露光工程がある。
【0040】
最も単純なケースでは、対応する領域の特定の区域に異方性を生成する、アライニング光の各入射角に対するPOEありの第一の照射工程のみがある。区域は、好ましくは各照射工程に対して異なる、フォトマスクのパターンによって画定される。POEなし、マスクなしだが、POEありの照射に使用されたのとは異なる偏光方向のアライニング光による追加的な照射は、POEありの工程で照射されなかった各領域のそれらの区域にも異方性を生成する。当技術分野において公知であるように、二つの異なる偏光方向のアライニング光に続いて露光される区域の異方性軸は、最適バランスが光アライン可能な材料の特質に依存することができる一方で、第一のおよび第二の露光工程の露光エネルギーのバランスが適切に取られるならば、第一の露光工程中に確立された異方性軸方向を実質的に維持することができる。アライニング光の同じ偏光方向がPOEありの照射の各入射角に対して適用された場合、これは、結果的に、異方性軸の方向によって異なる、二つのタイプの区域を有する異方性軸の配向パターンになる。
【0041】
第一の好ましい実施態様の方法によって、配向パターンの形態の情報を光アライメント層の異なる領域に転送することが可能である。異なる領域が異なる入射方向に個別に露光されるため、光アライメント層へ転送された情報は、各入射角に対して異なることができる。
【0042】
第一の好ましい実施態様の方法によって、米国特許第7,375,888号に記載される素子のために要するそれらのように、交互ストライプおよび異なる配向方向を持つパターン化された光アライメント層を製作することがとりわけ可能である。新規の方法は、マスクの正確な配置を要せず、それ故に、レジスタマークの必要がないことが利点である。
【0043】
本発明の方法の第二の好ましい実施態様では、アライニング光は、電子空間光変調器、例えば、透過性または反射型液晶ディスプレイ(LCD)、デジタルミラーデバイス(DMD)または有機発光デバイス(OLED)によって空間的に変調される。本実施態様の目的は、第一の好ましい実施態様と同じであり、すなわちアライニング光を変調して、各領域の所望の区域のみがアライニング光によって照射される。静的空間光変調器と見なすことができる第一の好ましい実施態様のマスクと比較して、電子空間光変調器は、情報を表すパターンの生成に対する、はるかに高い柔軟性という利点を有する。それ故に、作製されるデバイスが各々個別の情報を要する場合、マスクを製造することなく、情報を表す光変調パターンを非常に速く生成することができるため、マスクに代わる電子空間光変調器の使用は、とりわけ有効である。電子空間光変調器が多数の製品、とりわけ投射アプリケーションに使われているため、単一の筐体に光源、空間光変調器および投射光学部品を含む装置は、空間的に変調されたアライニング光を提供するために使用されることができる。方法の第二の好ましい実施態様が第一の好ましい実施態様の方法に非常に類似しているので、第一の好ましい実施態様の記載にある詳細および変形態様は、マスクの詳細に言及するとき以外は、第二の好ましい実施態様にも適用する。
【0044】
具体的な照射方法とは無関係に、光アライメント層に誘導された異方性は、光アライメント層と接触する従材料へさらに転送されることができる。結果として、従材料も異方性特性を呈する。従材料は、それを偏光光に露光するまたは光アラインされた材料の表面と接触するようになる前に、光アライン可能な材料と混合されていることができる。それ故に、本発明の方法の先に記載した実施態様の各々は、例として化学光への露光によって、従材料に異方性特性を確立し重合を開始させるための任意の加熱および硬化工程を包含する、従材料が光アライメント層の上部に適用される追加的な工程によって拡張されることができる。従材料は、コーティングおよび/または印刷によって適用されることができるが、光アライメント層の全面積を覆わなくてもよい。従材料の特質に依存して、不活性雰囲気、例えば、窒素または真空で重合を実施することが有用であることができる。
【0045】
従材料が光アライメント層に包含されるまたはその上部に適用される場合、先の方法は、残りの層に微細構造を生成するために、例として蒸発または溶剤への溶解により従材料から非重合材料を除去する追加的な工程をさらに含むことができる。そのような方法で使用される従材料は、重合材料および非重合材料の相分離が重合開始の際に起こるように設計されることができる。例として、従材料は、非重合性液晶を含むことができる。
【0046】
本出願の関連では、「従材料」は、光アラインされた材料との接触の際に異方性を確立する能力を有する任意の材料を指す。光アラインされた材料および従材料における異方性の特質は、互いに異なることができる。例として、従材料は、可視光に対する光吸収異方性を呈することができ、それ故に偏光子として動作することができるが一方で、光アラインされた材料の異方性は、分子配向にのみ関連することができる。アライニング光に対する感度はないが、アライニング光への露光の際に光反応を起こす感光性の部分との相互作用により異方性特性を作る、光アライン可能な材料、例としてコポリマーの部分があってもよい。そのような材料は、光アライン可能な材料および従材料の特性を呈するが、光アライン可能な材料の意味において包含される。
【0047】
従材料において異方性であることができる特性は、屈折率、吸収、発光、散乱および反射を包含する。
【0048】
従材料は、重合性および/または非重合性化合物を含むことができる。本出願の関連内では、「重合性」および「重合した」という用語は、それぞれ「架橋性」および「架橋した」の意味を包含する。同様に、「重合」は、「架橋」の意味を包含する。
【0049】
好ましくは、従材料は、自己組織化材料である。従材料が液晶材料であることがより好ましく、従材料が液晶ポリマー材料であることがとりわけ好ましい。
【0050】
本出願の関連内で使用される液晶ポリマー(LCP)材料は、液晶モノマーおよび/または液晶オリゴマーおよび/または液晶ポリマーおよび/または架橋した液晶を含む、液晶材料を意味する。液晶材料が液晶モノマーを含むケースでは、そのようなモノマーは、通常、光アラインされた材料との接触に起因してLCP材料で異方性が作られた後、重合されることができる。重合は、熱処理または、好ましくは紫外線光を含む、化学光への露光によって開始させることができる。LCP材料は、単一のタイプの液晶化合物からなることもできるが、すべての化合物が液晶化合物でなくてもよい、異なる重合性および/または非重合性化合物の組成物であることもできる。さらに、LCP材料は、添加剤、例として、光開始剤、ダイクロイック染料または等方性もしくは異方性蛍光および/もしくは非蛍光染料を含有することができる。
【0051】
本発明の第二の態様によると、光学特性が異方性である少なくとも一つの範囲をパターンが含む、POEおよびパターン化された光学特性を持つ光学素子を含むデバイスが提供される。
【0052】
好ましくは、光学素子は、先に記載された本発明の方法によって製造される。
【0053】
好ましくは、異方性光学特性は、屈折率、吸収、発光、光学散乱または反射である。異方性光学特性が屈折率または吸収であることが最も好ましい。
【0054】
デバイスに対して本出願で使用される「情報」という用語は、例として、マイクロテキスト、画像、写真、図形、ロゴおよび一次元または二次元バーコードを包含するテキストの形態の、表示されることができるいかなる種類の符号化されたまたは符号化されていない情報も網羅する。
【0055】
本発明のデバイスの第一の好ましい実施態様は、偏光されていない入射光を光の入射角に依存して異なる偏光方向に偏光する、偏光デバイスである。任意のタイプのPOEがそのようなデバイスに使用されることができる。例として、図4aおよびbは、レンチキュラーレンズのアレイを持つPOE42を使用するデバイス40の断面図を示す。デバイスは、好ましくはストライプとして形成された、異なる領域43、45に異なる偏光方向44、46を持つ偏光層41をさらに含む。領域43と45との間に、偏光機能を有しないまたは任意の偏光方向を有する領域があってもよい。偏光されていない光47がデバイスのPOE側からの第一の方向から入射する場合、図4aに説明されるように、光は、図4aにおいて図面平面にあると仮定される第一の偏光方向44を有する第一の領域43に向けられる。これらの領域を通って透過した光48は、この方向によって偏光され、図4aにおいては、偏光方向49が図面平面内であることを意味する。他方では、図4bに説明されるように、第二の方向から入射する偏光されていない光50は、図4bで図面平面に垂直であると仮定される、第二の偏光方向46を有する領域45に向けられる。これらの領域を通って透過した光51は、この方向によって偏光され、円52によって示されるように、図4bでは偏光方向52が図面平面に垂直であることを意味する。偏光層は、任意のタイプの偏光子であることができる。例として、それは、異なる偏光方向の領域を形成するために製造された市販されているシート偏光子に基づくことができる。これは、例として、異なる偏光方向のストライプを切断し、それらを組み立ててパターン化された偏光子を形成することによって実行されることができる。好ましくは、しかし、偏光層41は、異なる領域がパターン化されたアライメント表面、例えば、配向パターンを持つアライメント層または、例として、インプリンティング、ブラッシング、フォトリソグラフィもしくはLCP材料にパターン化された配向を作るために好適な他の方法によって処理された表面によって作られる、ダイクロイック染料を含むLCP層である。好ましくは、アライメント層は、好ましくは本発明の方法によってアラインされた光アライメント層である。
【0056】
図4のデバイスが機能する光の第一のおよび第二の方向は、偏光層のパターンのみならずPOEの形状寸法によっても画定される。図4の例では、偏光層は、レンチキュラーレンズの焦点面に位置付けられておらず、コリメート光47および50がストライプ43および45の全幅に向けられるという結果を有する。アライニング光による照射の間、光アライメント層が既にレンチキュラーレンズアレイ取り付けられた、本発明の方法によって偏光層のパターンが生成されていた場合、各タイプのストライプは、コリメート光による単一の照射によって作られることができたはずである。図4に示される入射角依存性偏光子は、小範囲の入射角に対してのみよく機能する。他の入射角に対しては、光が向け直される偏光層上の範囲がもはや完全には領域43または45と一致せず、透過した光の偏光度は、低減する。図5は、レンチキュラーレンズアレイを有するPOE62を持ち、偏光方向64および66をそれぞれ有する領域63および65を持つ偏光層61を組み合わせた類似デバイス60を示す。図4との差異は、異なる偏光方向を持つ領域がより広く、偏光層がレンチキュラーレンズの焦点面により近いという点である。結果として、コリメート入射光は、POEによってストライプ63および65の小域にのみそれぞれ向け直される。例として、図5aの偏光されていない光67は、第一の角度で入射し領域63の左側の小域に向け直され、透過した光68を偏光方向69に偏光させる。図5bの偏光されていない光70は、第二の角度で入射し領域63の右側の小域に向け直され、透過した光71も偏光方向69に偏光させる。状況は、逆方向から入射する光に対する場合に対しても類似しており、もう一つの偏光方向66を持つ領域65に向け直される。よって、図5のデバイス60は、それが適切に機能する、はるかにより広い範囲の入射角を有する。
【0057】
図5のデバイスは、本発明の方法を使用して、光アライメント層に配向パターンを生成することによって製造されることができ、例として、ダイクロイック染料を含むLCP層に配向パターンを転送する。光アライメント層は、アライニング光による照射の間、POEに既に取り付けられていることができる。光アライメント層の照射の間のレンチキュラーレンズの集束挙動は、最終的な偏光デバイス60におけるそれとほぼ同じなので、コリメート光による単一の照射は、領域63および65それぞれの全幅を生成するに十分でないだろう。それ故に、作製の間の光アライメント層の照射は、異なる角度で入射するアライニング光による複数の照射工程を使うか、十分な範囲の入射角を提供する、非コリメートアライニング光による単一の照射工程を使用することができる。
【0058】
図4および5の偏光層41、61における仮定された偏光方向は、例にすぎず、限定として解釈されない。先に記載されたデバイスにおいて、異なる偏光方向を持つ数多くの領域を組み入れることでさえ可能である。光入射の角度を調節することによって選択されることができる可能な偏光方向の数は、異なる偏光方向を持つ領域の数によって決定される。特定の偏光方向に対して選択される入射の角度は、パターンおよびPOEの両方の形状寸法に依存する。
【0059】
記載および関連図から明らかなように、先に記載された偏光デバイスは、偏光層側からデバイスに入る光に対しても機能する。さらに、そのようなデバイスは、例として直線偏光光の偏光方向を分析するための、分析器として使用されることもできる。
【0060】
例として、平行から垂直の偏光へ変化させるために90°回転させなければならない標準的なシート偏光子と反対に、本発明のデバイスは、0°および90°の偏光方向を持つ領域が利用可能ならば、同じことを達成するためには傾斜させるだけでよい。応用は、それ故に、好ましくは異なる偏光方向が所望されるが、偏光子の回転が制限されるそれらである。例として、配向パターン化された光学リターダを含み、適切に方向付けられた標準的なシート偏光子で分析されるときポジティブコントラストを持つ画像を示し、偏光子を45°回転させる際に画像のネガティブを示す、とりわけ光学セキュリティ素子の分野における、光学素子がある。そのような素子は、本出願の導入部で既に言及されているように、米国特許第7,375,888号に開示されているそれらに類似している。誰もがそのようなセキュリティ素子を検証するために手近にシート偏光子を有しているわけではないので、セキュリティ素子と共に偏光子を提供することは有利であるだろう。これは、例として、セキュリティ素子および偏光子を同じ基材、例として紙幣、上に配置することによって実行されることができ、偏光子は、基材を折り重ねることにより、セキュリティ素子を分析するために使用されることができる。光学セキュリティ素子と共に偏光子を提供するもう一つの手法は、セキュリティ素子および偏光子を冊子、例としてパスポートの二つの分離するページ上に配置することであり、セキュリティ素子の前に偏光子を持ってくるために、対応するページをめくることによって、セキュリティ素子が分析されることができる。観察される画像の視認性を向上させるために、透明窓を使用することができる。先の応用の欠点は、セキュリティ素子に対して偏光子をほとんど回転させることができないことであり、よって、コントラスト反転した画像を観察することはできない。しかし、先の応用例において第一の好ましい実施態様の偏光デバイスが標準的な偏光シートに代わって使用される場合、偏光子および光学素子を互いの上方に配置すると、視野角度を変化させるか、基材または冊子を傾斜させるだけで、セキュリティ素子に保存された隠し画像をそれぞれポジティブおよびネガティブ画像として可視化することができる。図6は、第一のページ82上のパターン化されたリターダ81に保存された隠し画像と、第二のページ84上の透明窓に第一の好ましい実施態様のデバイス83とを持つ冊子80の例を示す。デバイスは、好ましくは偏光の方向が45°異なる二つのタイプの偏光領域を有する。ページ82を覆うためにページ84がめくられない限り、素子81に保存された画像は、可視ではない。ページ84をめくった後、偏光デバイス83は、素子81と重なり、素子81に保存された画像を、例として、第一の位置85から眺めたときはポジティブコントラストで、第二の位置86から眺めたときはネガティブコントラストで見ることができる。
【0061】
本発明のデバイスの第二の好ましい実施態様は、異なる方向から入射する光に対して異なる光学軸方向を提供する、光学遅延デバイスである。それが実質的に光の偏光状態を変化させない限り、そのようなデバイスに任意のタイプのPOEを使用することができる。光学素子は、光学軸の異なる方向の領域を持つパターン化されたリターダ層である。例として、図7は、上部に視差バリア板を持つPOE92を含む、デバイス90の断面図を示す。POEが絶縁材料、例えば、ガラスまたはプラスチックを含む場合、絶縁材料の屈折率は、図7の図面に示されるように、POEの内側に光路方向の変化をもたらす。視差バリア板は、好ましくはストライプの形態の透明部位93および不透明部位94を含むが、これは、部位93および94が図面平面に垂直な方向に沿って拡張することを意味する。デバイスは、異なる光学軸方向96、98の領域95、97を持つリターダ層91をさらに含む。好ましくは、領域は、ストライプとして形成される。図7の例に対して、リターダ層は、デバイスが設計された入射角に対して4分の1波リターダとして動作すると仮定されている。光は、POE側からまたはリターダ層側から入射することができる。図7aでは、直線偏光光99が第一の方向からリターダ層91上に入射し、偏光方向100が図面平面にあると仮定されている。リターダ層の光学軸が層平面に対して傾斜しておらず、方向96、98が互いに垂直であり、入射光99の偏光平面に45°の角度で方向付けられるとさらに仮定されている。領域97を通って透過した光がバリア板の不透明部位94によって遮られるように光99の入射方向が選ばれるので、領域95を通過した光101のみがデバイスを通って透過される。リターダ層91の4分の1波特性は、直線偏光光を第一の巻き方向102の円偏光光に変換させるが、例として、それは左巻きであることができる。図7bは、図7aと同じ偏光平面内にある、偏光方向104を持つ光103が第二の方向からリターダ層に入射し、領域95を通過する光がバリア板の不透明部位94によって遮られる状況を説明する。それゆえに、リターダ層の領域97を通過した光のみがデバイス90を通って透過される。領域97が4分の1波リターダとしても動作するので、透過した光105は、ここでもまた円状に偏光されるが、領域97の偏光方向98が領域95の偏光方向96に垂直であるため、巻き方向は、図7aの光101のそれとは逆であり、例として、それは右巻きに円状に偏光される。よって、デバイス90は、入射角に依存して、直線偏光光を左巻きまたは右巻き円偏光に変換させる。99および103以外の方向から入射する光に対して、両タイプの領域95および97は、概して楕円状に偏光される、透過した光に寄与する。したがって、入射の角度を変化させることによって、透過した光の楕円率を調整することが可能である。
【0062】
光99および103の両方が左または右巻きいずれかに円状に偏光される場合、デバイス90を通って透過される光101および105は、それぞれ、図面平面に平行および垂直な偏光方向に直線的に偏光される。
【0063】
図7は、第二の好ましい実施態様の具体的な変形態様にすぎない。既に先に述べたように、他のタイプのPOE、例えば、レンチキュラーレンズアレイを選択的に使用することができる。さらに、リターダ層91には、4分の1波以外の任意の数値を遅延として使用することができ、異なる光学軸方向を持つ領域の数は、二つとは異なることができ、光学軸のいかなる方向も可能である。もう一つの特別なケースは、半波板として動作するリターダ層を持つデバイスである。このケースについて、領域95の光学軸方向96が入射直線偏光光99の偏光平面内にあるが一方で、光学軸方向98が45°の角度で方向96と異なると仮定されている場合、図7aのデバイス90は、有効な域の入射光99の偏光状態に影響を及ぼさず、デバイス90を通って透過した光は、同じ方向100に直線的に偏光されるだろう。第二の方向103から入射する偏光光に対して、図7bに対応して、直線偏光光は、領域97の4分の1波リターダを透過する際に、90°回転させられ、偏光方向は、図7bの図面平面に垂直である。この例については、二つの方向から入射する光は、基準面に平行または垂直のいずれかに偏光された直線偏光光として透過される。当業者は、異なる光学軸方向を持つ領域の数が二つとは異なることができ、光学軸方向が45°のみではなく任意の数値によって異なることができることがわかる。
【0064】
好ましくは、第二の好ましい実施態様のデバイスは、例としてパターン化されたリターダ層と隣り合った、追加的なパターン化されたまたはパターン化されていない偏光層を含む。デバイスは、例として、角度依存偏光子または分析器として使用されることができる。
【0065】
第一の好ましい実施態様のデバイスに対するように、第二の好ましい実施態様のデバイスは、例としてデバイスを傾斜させるまたは視野角度を変化させることによって、光の偏光状態を分析するために適用されることができる。とりわけそのようなデバイスは、光の偏光状態を変調するセキュリティ素子、例えば、配向パターン化されたリターダを組み入れる素子の視覚的観察に有効である。
【0066】
本発明のデバイスの第三の好ましい実施態様は、第二の好ましい実施態様のケースにおけるように、POEと、配向パターン化されたリターダ層とを含む。しかし、配向パターンは、特定の入射角の光に対して光学的に有効である異なる領域が光学軸の均一な配向を有しないという点において、第二の好ましい実施態様のそれとは異なる。そればかりではなく、領域は、光学軸の方向によって異なる区域を含む。各区域の光学軸方向は、例として、情報の一部を符号化することができる。異なる光学軸方向の数は、制限されない。光学軸方向が継続的に変化することさえ可能である。本出願の関連では、光学軸方向の継続的変動を含む域は、区域が光学軸のほぼ均一な配向を持つ小域として画定される、複数の隣接区域として解釈される。情報は、例として、特定の光入射または観察角度に対して光学的に有効なすべての領域の区域によって表されることができる。このような手法で、第二のおよびさらなる入射または観察角度によってそれぞれ選択されることができる、第二のおよびさらなる情報を第二のおよびさらなるセットの領域に保存することが可能である。しかし、光が偏光されていない通常の環境光条件では、第一の情報も第二の情報もどちらも可視でない。デバイスが偏光光で照らされる場合でさえ、複屈折層の光学軸によってのみ情報が符号化され、それが光の偏光状態の空間変調をもたらすが、しかし、人間には感度がないため、情報を見ることができない。デバイスに保存された情報は、デバイスが偏光光で照らされ、直線状または円形偏光子を通じて透過した光が観察される場合にのみ、可視になる。偏光光による照明および分析器が適切な位置にある際に、観察の角度を変化させるかデバイスを傾斜させることによって異なる情報を交互に見ることができる。第三の好ましい実施態様のデバイスは、それ故に、好ましくは光学セキュリティデバイスとして使用される。
【0067】
一つの情報が可視である角度範囲は、POEおよびパターンの形状寸法に依存する。例として、複数の入射角に対して同じ画像を保存することによって、情報の各々に対して視野範囲を増進することが可能である。極端なケースでは、例として、左側からデバイスに目を向けるとき、第一の情報が可視であり、右側からデバイスに目を向けるとき、第二の情報が可視である。観察者の両目が異なる画像、例として、人間の脳内で3D−画像として組み合わされる二つの画像を見るようにデバイスを設計することも可能である。
【0068】
好ましくは本発明のセキュリティデバイスは、他のセキュリティの特徴と組み合わされる。単純なケースでは、デバイスは、永続的に可視であり、好ましくは異なる視野角に対して異なる情報と組み合わされることができる。分析器なしでは、永続的な情報のみが可視であるが一方で、分析器で観察されるとき、符号化されたおよび永続的に可視である情報の両方を組み合わせて見ることができる。例として、リターダ層に符号化された情報は、観察者の左右の目に3D−画像のそれぞれの部分を提供することができる。分析器なしでは、永続的な情報のみが可視である。分析器が適切な位置に配置される際、3D−画像は、例として、永続的に可視である画像の上方に距離を置いて現れる。
【0069】
好ましくは、第三の好ましい実施態様のデバイスは、入射する偏光されていない光に対して偏光手段を提供するために、偏光シートまたは層と永続的に組み合わされる。
【0070】
本発明のデバイスの第四の好ましい実施態様は、情報を保存するという観点では第三の好ましい実施態様に類似しているが、第一の好ましい実施態様のリターダ層に代わって、パターン化された偏光層を使用する。第三の好ましい実施態様に類似して、異なる偏光方向の区域のそれぞれの情報を符号化することによって、異なる情報を異なる観察角度に対して保存することができる。異なる視野角に対する情報の符号化およびセキュリティデバイスとしての適用が第三の好ましい実施態様について記載されたそれに類似している一方で、第四の好ましい実施態様のデバイスを分析する手法は、わずかに異なる。差異は、主にパターン化された異方性の層が偏光子として動作し、それ故に入射する偏光光および分析器の両方を要せず、それらのうち一つのみを要するという事実に関連する。例として、入射光が偏光される場合、デバイスのパターン化された偏光子は、分析器として動作し、デバイスの局所的な偏光軸と入射する偏光光の偏光平面との間の角度に依存して、局所的な透過率を制御する。他方では、入射光が偏光されていない場合、デバイスを通って透過した光は、偏光され、偏光方向の空間変調を有する。分析器を使用することによって、光の空間変調は、空間の明るさ変調で変換され、したがって、観察者に対して可視になるか、機械で検出可能になる情報をそれぞれ復号化する。
【0071】
本発明のデバイスの第五の好ましい実施態様は、情報を保存するという観点では第三のおよび第四の好ましい実施態様に類似しているが、しかし、パターン化された光学素子は、最大吸収および/または発光の方向がパターンの異なる区域で異なる、異方性吸収および/または発光蛍光染料を含む。最大吸収の方向は、光の吸収が最大である、層平面における方向を意味する。最大発光の方向は、発光された光の偏光方向に対応する。第三のおよび第四の好ましい実施態様に類似して、異なる異方性方向の区域のそれぞれの情報を符号化することによって、異なる情報を異なる観察角度に対して保存することができる。異なる視野角に対する情報の符号化およびセキュリティデバイスとしての適用は、第三のおよび第四の好ましい実施態様に対して記載されたそれに類似している。多数の適用に対して、最大吸収および/または発光の方向がそれぞれおよそ90°異なる、少なくとも二つの区域があることが好ましい。このケースでは、区域は、最大コントラストで区別されることができる。しかし、例として、グレーレベルを符号化するために、90°以外の任意の角度が可能である。好ましくは、光学素子は、蛍光分子が組み込まれた、パターン化されたLCPの層を含む。蛍光分子が励起光を異方的に吸収する場合、吸収と偏光方向との間により小さい角度を有するそれらの区域がより多くの光を吸収するという効果を有する、好適な偏光方向の入射直線偏光光を観察に使用することができる。他方では、吸収軸が入射光の偏光方向に垂直である区域は、最も低い吸収を有する。蛍光光の光度がより高いほどより多くの励起光が吸収されるので、異なって方向付けられた区域は、異なる光度で蛍光を発する。したがって、情報は、観察者に対して分析器なしで可視である。蛍光分子が異方的に光を発光する場合、これは光が偏光されることを意味し、異なって方向付けられた区域を偏光されていない励起光で照らすことが可能であることができ、その際、異なって方向付けられた区域が異なる偏光方向に蛍光を発し、保存された情報を直線状偏光子によって復号化することができる。
【0072】
本発明のデバイスにおいて視差バリア板がPOEとして使用される場合、遮光部位は、とりわけ異方性の光学素子に向かう側にある、反射型であることもできる。このケースでは、POEは、透過性および反射型モードの両方で作動することができる。透過性モードでは、透過性部位を通って透過した光が所望の光であり、デバイスは、先の好ましい実施態様に対して記載されたように機能する。反射型モードで作動するとき、反射型遮光部位で反射された光が所望の光であるが一方で、透過性部位を通って透過した光は、もはや考慮されない。
【0073】
反射型モードで作動される本発明のデバイスのケースでは、観察光は、それが反射型バリアで反射された後第二回目に通過する、異方性の素子を通ってデバイスに入る。観察のために偏光光を要する複屈折特性に光学素子が基づく場合、侵入する光の光路と反射された光の光路との間の視差は、光学素子の異なる区域間の干渉をもたらすことがある。これは、反射型遮光部位が偏光子によって覆われるか、反射型偏光子を含むかのいずれかの場合、回避することができる。入射光は、偏光されていなくてもよく、それがバリア板の反射型部位で偏光されるまで、複屈折材料と相互作用しない。それゆえに、反射された光のみが偏光され、複屈折光学素子の所望の区域と相互作用することができる。
【0074】
原則的に、本発明のデバイスは、広範囲の厚さに対して機能する。しかし、特定の厚さを超えるデバイスを許容しない、特定の適用がある。視差光学素子は、所望の視差を生成するために特定の距離を必要とするので、POEは、そのような適用に対して特別に設計されなければならない。好ましくは、本発明のデバイスの厚さは、100μm未満であり、60μm未満がより好ましく、30μm未満が最も好ましい。
【0075】
視差板がPOEとして使用される場合、それは、合理的な範囲の視野角に十分な視差効果を提供するために、パターン化された光学特性を持つ素子からの適切な距離を有する。適切な距離は、視差板の光透過性および遮光部位の幅に依存する。視差板とパターン化された光学特性を持つ素子との間の空間が空気で満たされている場合、視差板と光学素子との間の距離は、好ましくは視差板の光透過性部位の幅の0.2倍より大きい。距離が光透過性部位の幅の0.4倍より大きいことがより好ましく、視差板の光透過性部位の幅の0.6倍より大きいことが最も好ましい。しかし、視差板と光学素子との間に絶縁材料、例えば、ガラスまたはプラスチックがある場合、視差板と光学素子との間の距離は、好ましくは視差板の光透過性部位の幅の0.5倍より大きい。距離が光透過性部位の幅の0.8倍より大きいことがより好ましく、視差板の光透過性部位の幅の1倍より大きいことが最も好ましい。
【0076】
本発明のデバイスは、他の光学デバイスと組み合わせて使用されることができる。とりわけ、パターン化された光学特性を持つ光学素子が光学遅延デバイスである場合、パターンは、通常の偏光されていない光においては可視でない。それ故に、本発明のデバイスのPOEは、パターンによって邪魔されることなく、もう一つのデバイスの観察に使用されることができる。他のデバイスは、例として、本発明のデバイスのPOEと組み合わせて特定の光学効果を生成するパターンも有する。結果として生じる効果は、視野角依存であるか、モアレ効果であることもできる。本発明のデバイスおよび他のデバイスは、同じ基材、例えば、紙幣上に配置されることができ、基材を折り重ねることにより、観察時間の間、二つのデバイスは、互いの上方に容易に配置されることができる。
【0077】
先の実施態様のいずれかにおいて、例として仮定された配向方向は、本発明の範囲を限定するものではない。原則的に、明示的に除外されない限り、任意の他の方向が可能である。
【0078】
先に記載された方法およびデバイスのいずれかのための光アライメント層の光アライン可能な材料は、光反応機構とは無関係に、アライニング光への露光の際に異方性特性が作られることができる、任意の種類の感光性の材料であることができる。それ故に、好適な光アライン可能な材料は、例として、アライニング光への露光の際に光二量化、光分解、トランス−シス異性化または光フリース転位によって異方性が誘導される材料である。好ましい光アライン可能な材料は、アライニング光への露光の際に、作られる異方性が光アラインされた材料と接触する従材料が方向付けられることができるものである。好ましくは、そのような従材料は、液晶材料、とりわけLCP材料である。
【0079】
先に記載されるような光アライン可能な材料は、アライニング光への露光の際に好ましい方向を発現し、したがって異方性特性を作る能力がある、光アライン可能な部分を組み入れる。そのような光アライン可能な部分は、好ましくは異方性吸収特性を有する。通常、そのような部分は、波長範囲230〜500nm内で吸収を示す。好ましくは、光アライン可能な部分は、波長範囲300〜450nmで光の吸収を示し、波長範囲350〜420nmで吸収を示す部分がより好ましい。
【0080】
好ましくは、光アライン可能な部分は、炭素−炭素、炭素−窒素または窒素−窒素二重結合を有する。
【0081】
例として、光アライン可能な部分は、置換されたまたは置換されていないアゾ染料、アントラキノン、クマリン、メロシアニン、2−フェニルアゾチアゾール、2−フェニルアゾベンゾチアゾール、スチルベン、シアノスチルベン、フルオロスチルベン、シンナモニトリル、カルコン、シンナメート、シアノシンナメート、スチルバゾリウム、1,4−ビス(2−フェニルエチレニル)ベンゼン、4,4’−ビス(アリールアゾ)スチルベン、ペリレン、4,8−ジアミノ−1,5−ナフトキノン染料、アリールオキシカルボニル誘導体、アリールエステル、N−アリールアミド、ポリイミド、2つの芳香環、例えば、例として置換されたベンゾフェノン、ベンゾフェノンイミン、フェニルヒドラゾンおよびセミカルバゾンと共役したケトン部分またはケトン誘導体を有するジアリールケトンである。
【0082】
先に挙げた異方性吸収材料の調製は、たとえばHoffmanらの米国特許第4,565,424号、Jonesらの米国特許第4,401,369号、Cole, Jr.らの米国特許第4,122,027号、Etzbachらの米国特許第4,667,020号およびShannonらの米国特許第5,389,285号によって示されるように周知である。
【0083】
好ましくは、光アライン可能な部分は、アリールアゾ、ポリ(アリールアゾ)、スチルベン、シアノスチルベン、シンナメートまたはカルコンを含む。
【0084】
光アライン可能な材料は、モノマー、オリゴマーまたはポリマーの形態を有することができる。光アライン可能な部分は、ポリマーもしくはオリゴマーの主鎖中または側鎖中に共有結合されることができまたはそれらは、モノマーの一部であることができる。光アライン可能な材料は、さらに、異なるタイプの光アライン可能な部分を含むコポリマーであることができまたはそれは、光アライン可能な部分ありおよびなしの側鎖を含む、コポリマーであることができる。
【0085】
ポリマーとは、例として、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイミド、ポリアミック酸、ポリマレインイミド、ポリ−2−クロロアクリレート、ポリ−2−フェニルアクリレート;置換されていないまたはC1〜C6アルキル置換されたポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ−2−クロロアクリルアミド、ポリ−2−フェニルアクリルアミド、ポリエーテル、ポリビニルエーテル、ポリエステル、ポリビニルエステル、ポリスチレン誘導体、ポリシロキサン、ポリアクリル酸もしくはポリメタクリル酸の直鎖状もしくは分岐状アルキルエステル;1〜20の炭素原子のアルキル残基を持つポリフェノキシアルキルアクリレート、ポリフェノキシアルキルメタクリレート、ポリフェニルアルキルメタクリレート;ポリアクリルニトリル、ポリメタクリルニトリル、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、ポリ−4−メチルスチレンまたはこれらの混合物を意味する。
【0086】
光アライン可能な材料は、光増感剤、例として、ケトクマリンおよびベンゾフェノンを含むこともできる。
【0087】
さらに、好ましい光アライン可能なモノマーまたはオリゴマーまたはポリマーは、米国特許第5,539,074号、米国特許第6,201,087号、米国特許第6,107,427号、米国特許第6,632,909号および米国特許第7,959,990号に記載される。
【0088】
記載された詳細な実施態様に本発明を限定する意図ではないことを理解すべきである。反対に、本発明の本質および範囲内のすべての変形、均等物および代替を網羅する意図である。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7a
図7b