(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヒートシール性樹脂組成物中の前記酸変性スチレン系共重合体(B)の含有量をX質量%(ただし、前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)、前記酸変性スチレン系共重合体(B)および粘着付与樹脂(C)の合計を100質量%とする)、前記酸変性スチレン系共重合体(B)の酸価をYmgCH3ONa/gとしたとき、0<Y<20であり、かつ、Y≧1.14X−9.3を満たす請求項1乃至11のいずれか一項に記載のヒートシール性樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
食品や医薬品の容器の蓋体等に用いられるヒートシール材について要求される技術水準は、ますます高くなっている。本発明者らは、特許文献1に記載されているようなオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物に関し、以下のような課題を見出した。
本発明者らの検討によれば、オレフィン系樹脂およびスチレン系共重合体を含有する従来のヒートシール材は、低温ヒートシール性、ヒートシール強度の温度依存性および易剥離性のバランスという観点において、改善の余地があることが明らかになった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、より低い温度でヒートシールしても良好なシール強度が得られるとともに、ヒールシール温度を変化させた場合においてシール強度の変動が小さく適度なシール強度を有し、さらに易剥離性であるヒートシール材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、エチレン・不飽和エステル共重合体に対し、酸変性スチレン系共重合体を組み合わせることで、より低い温度でヒートシールしても良好なシール強度が得られるとともに、ヒールシール温度を変化させた場合においてシール強度の変動が小さく適度なシール強度を有し、さらに易剥離性であるヒートシール材が得られることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示すヒートシール性樹脂組成物、ヒートシール材、包装材および包装容器が提供される。
【0009】
[1]
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、酸変性スチレン系共重合体(B)と、を含むヒートシール性樹脂組成物
であって、
前記酸変性スチレン系共重合体(B)が不飽和カルボン酸および前記不飽和カルボン酸の誘導体から選択される少なくとも一種の化合物によりグラフト変性されたスチレン系共重合体を含む、ヒートシール性樹脂組成物。
[2]
上記[1]に記載のヒートシール性樹脂組成物において、
上記不飽和カルボン酸がマレイン酸および無水マレイン酸から選択される少なくとも一種を含むヒートシール性樹脂組成物。
[3]
上記[1]または[2]に記載のヒートシール性樹脂組成物において、
上記酸変性スチレン系共重合体(B)を構成する上記スチレン系共重合体がスチレン−エチレン・ブテンブロック共重合体(SEB)、スチレン−エチレン・ブテン−スチレンブロック共重合体(SEBS)およびスチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)から選択される一種または二種以上を含むヒートシール性樹脂組成物。
[4]
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、酸変性スチレン系共重合体(B)と、を含むヒートシール性樹脂組成物であって、
酸変性スチレン系共重合体(B)の酸価は、0mgCH3ONa/gを超え20mgCH3ONa/g未満である、ヒートシール性樹脂組成物。
[5]
上記1乃至4のいずれか一つに記載のヒートシール性樹脂組成物において、
上記ヒートシール性樹脂組成物中の前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の含有量に対する前記酸変性スチレン系共重合体(B)の含有量の質量比(B/A)が0.005以上1.0以下であるヒートシール性樹脂組成物。
[6]
上記[1]
乃至[5]のいずれか1つに記載のヒートシール性樹脂組成物において、
上記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)がエチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体から選択される少なくとも一種の重合体を含むヒートシール性樹脂組成物。
[7]
上記[
6]に記載のヒートシール性樹脂組成物において、
上記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)がエチレン・酢酸ビニル共重合体を含むヒートシール性樹脂組成物。
[8]
上記[1]乃至[7]のいずれか一つに記載のヒートシール性樹脂組成物において、
粘着付与樹脂(C)をさらに含むヒートシール性樹脂組成物。
[9]
上記[8]に記載のヒートシール性樹脂組成物において、
上記粘着付与樹脂(C)が石油系樹脂の水素添加物を含むヒートシール性樹脂組成物。
[10]
上記[1]乃至[9]のいずれか一つに記載のヒートシール性樹脂組成物において、
上記ヒートシール性樹脂組成物中の上記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および上記酸変性スチレン系共重合体(B)の合計含有量に対する上記粘着付与樹脂(C)の含有量の質量比(C/(A+B))が0.01以上1.0以下であるヒートシール性樹脂組成物。
[11]
上記[1]乃至[10]のいずれか一つに記載のヒートシール性樹脂組成物において、
下記方法により測定されるヒートシール強度F
120に対するヒートシール強度F
160の比(F
160/F
120)が0.8以上1.4未満であるヒートシール性樹脂組成物。
(方法)
上記ヒートシール性樹脂組成物を加工温度240℃、加工速度30m/分の押出ラミネート法により予め作製した基材(PET(12μm)/PE(15μm))のPE上に30μm厚で積層させ、ヒートシール材(積層体)を得る。次いで、上記ヒートシール材をアモルファス・ポリエチレンテレフタレートシートに対してヒートシールテスターにてヒートシール温度120℃または160℃、0.2MPa(実圧)で1秒間ヒートシールを行い、上記アモルファス・ポリエチレンテレフタレートフィルムに上記ヒートシール材を接着させ、室温(23℃)で24時間放置する。次いで、積層体から切り出した15mm幅の試験片を23℃の環境下において、引張速度300mm/分で上記ヒートシール材を上記アモルファス・ポリエチレンテレフタレートシートから引き離し、最大応力を上記アモルファス・ポリエチレンテレフタレートシートに対するヒートシール強度(N/15mm)として算出する。ヒートシール温度120℃でのヒートシール強度をF
120とし、ヒートシール温度160℃でのヒートシール強度をF
160とする。
[12]
上記ヒートシール性樹脂組成物中の上記酸変性スチレン系共重合体(B)の含有量をX質量%(ただし、上記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)、上記酸変性スチレン系共重合体(B)および粘着付与樹脂(C)の合計を100質量%とする)、上記酸変性スチレン系共重合体(B)の酸価をYmgCH
3ONa/gとしたとき、0<Y<20であり、かつ、Y≧1.14X−9.3を満たす上記[1]乃至[11]のいずれか一つに記載のヒートシール性樹脂組成物。
[13]
0<Y<11であり、かつ、Y≧1.14X―1.42を満たす上記[12]に記載のヒートシール性樹脂組成物。
[14]
上記[1]乃至[13]のいずれか一つに記載のヒートシール性樹脂組成物により構成されたヒートシール材。
[15]
基材層と、上記基材層の一方の面に設けられた上記[14]に記載のヒートシール材からなるヒートシール層と、を備える包装材。
[16]
蓋材である上記[15]に記載の包装材。
[17]
開口を有する容器本体と、上記容器本体の上記開口に蓋をする上記[15]に記載の包装材からなる蓋体と、を備える包装容器。
[18]
上記[17]に記載の包装容器において、
上記容器本体の少なくとも一部がアモルファス・ポリエチレンテレフタレートを含む包装容器。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より低い温度でヒートシールしても良好なシール強度が得られるとともに、ヒールシール温度を変化させた場合においてシール強度の変動が小さく適度なシール強度を有し、さらに易剥離性であるヒートシール材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、数値範囲の「X〜Y」は特に断りがなければ、X以上Y以下を表す。また、本実施形態において、「(メタ)アクリル」とは」アクリル、メタクリルまたはアクリルとメタクリルの両方を意味する。
【0012】
1.ヒートシール性樹脂組成物(P)
本実施形態に係るヒートシール性樹脂組成物(P)は、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、酸変性スチレン系共重合体(B)と、を含む。
【0013】
本発明者らの検討によれば、食品や医薬品の包装容器を蓋体で密封シールするために用いられるオレフィン系樹脂およびスチレン系共重合体を含有する従来のヒートシール材は、低温ヒートシール性、ヒートシール強度の温度依存性および易剥離性のバランスという観点において、改善の余地があることが明らかになった。
【0014】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、エチレン・不飽和エステル共重合体に対し、酸変性スチレン系共重合体を組み合わせることで、より低い温度でヒートシールしても良好なシール強度が得られるとともに、ヒールシール温度を変化させた場合においてシール強度の変動が小さく適度なシール強度を有し、さらに易剥離性であるヒートシール材が得られることを見出した。
すなわち、本実施形態に係るヒートシール性樹脂組成物(P)は、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、酸変性スチレン系共重合体(B)と、を含むことで、より低い温度でヒートシールした際のシール強度を良好にし、またヒールシール温度を変化させた場合においてシール強度の変動を小さくすることができ、さらに易剥離性も良好にすることができる。
また、本実施形態に係るヒートシール性樹脂組成物(P)により構成されたヒートシール材は、アモルファス・ポリエチレンテレフタレート(以下、A−PETとも呼ぶ。)に対し、より低い温度でヒートシールした際のシール強度が特に良好であるため、本実施形態に係るヒートシール性樹脂組成物(P)はA−PET製の容器の蓋体を構成する蓋材を形成する材料として特に好適に用いることができる。
【0015】
本実施形態に係るヒートシール性樹脂組成物(P)において、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および酸変性スチレン系共重合体(B)の合計含有量は、ヒートシール性樹脂組成物(P)の全体を100質量%としたとき、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および酸変性スチレン系共重合体(B)の合計含有量が上記範囲内であると、得られるヒートシール材のシール強度や柔軟性、機械的特性、耐熱性、取扱い性、加工性等のバランスをより一層良好なものとすることができる。
【0016】
本実施形態に係るヒートシール性樹脂組成物(P)において、ヒートシール性樹脂組成物(P)中のエチレン・不飽和エステル共重合体(A)の含有量に対する酸変性スチレン系共重合体(B)の含有量の質量比(B/A)が0.005以上1.0以下であることが好ましく、0.01以上0.5以下であることがより好ましく、0.02以上0.3以下がさらに好ましく、0.03以上0.2以下が特に好ましい。エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の含有量に対する酸変性スチレン系共重合体(B)の含有量の質量比(B/A)が上記範囲内であると、得られるヒートシール材のシール強度や柔軟性、機械的特性、耐熱性、取扱い性、加工性等のバランスをより一層良好なものとすることができる。
【0017】
本実施形態に係るヒートシール性樹脂組成物(P)において、加工安定性をより向上させる観点から、JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、ヒートシール性樹脂組成物(P)のメルトフローレート(MFR)が、0.01g/10分以上150g/10分以下であることが好ましく、0.1g/10分以上100g/10分以下であることがより好ましく、0.5g/10分以上50g/10分以下であることがさらに好ましい。
【0018】
以下、本実施形態に係るヒートシール性樹脂組成物(P)を構成する各成分について説明する。
【0019】
<エチレン・不飽和エステル共重合体(A)>
本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル共重合体(A)は、エチレンと、不飽和エステルの少なくとも1種とを共重合した重合体である。エチレン・不飽和エステル共重合体(A)としては、エチレンと不飽和エステルとを含む共重合体を例示することができる。
また、本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル共重合体(A)はエチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体から選択される少なくとも一種の重合体を含むことが好ましい。
また、本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル共重合体(A)は、エチレンおよび不飽和エステル以外の重合性モノマーを含んでいてもよく、例えばプロピレン、ブテン、ヘキセン等のオレフィンを例示することができる。
【0020】
本実施形態に係るエチレン・ビニルエステル共重合体としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・ステアリン酸ビニル共重合体等から選択される一種または二種以上を用いることができる。
【0021】
本実施形態に係るエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、エチレンと、不飽和カルボン酸エステルの少なくとも1種とを共重合した重合体である。
具体的には、エチレンと、不飽和カルボン酸アルキルエステルと、からなる共重合体を例示することができる。
【0022】
不飽和カルボン酸エステルにおける不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2−エチルアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル等が挙げられる。
これらの中でも、上記不飽和カルボン酸は、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の生産性、衛生性等の観点から、アクリル酸およびメタクリル酸から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。これらの不飽和カルボン酸は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
不飽和カルボン酸アルキルエステルにおけるアルキル部位としては、炭素数1〜12のものを挙げることができ、より具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、セカンダリーブチル、2−エチルヘキシル、イソオクチル等のアルキル基を例示することができる。本実施形態では、アルキルエステルのアルキル部位の炭素数は、1〜8が好ましい。
【0024】
不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、および(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルから選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。これらの不飽和カルボン酸エステルは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、および(メタ)アクリル酸n−ブチルから選択される一種または二種以上を含むことがより好ましい。
【0025】
本実施形態において、好ましいエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体である。その中でも(メタ)アクリル酸エステルとして1種類の化合物からなる共重合体が好ましい。このような共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n−プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソオクチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体等が挙げられる。
【0026】
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)は、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n−プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n−ブチル共重合体から選択される一種または二種以上を含むことが好ましく、エチレン・酢酸ビニル共重合体を含むことがより好ましい。
なお、本実施形態においてはエチレン・不飽和エステル共重合体(A)は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本実施形態において、加工安定性をより向上させる観点から、JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)のメルトフローレート(MFR)が、0.01g/10分以上150g/10分以下であることが好ましく、0.1g/10分以上100g/10分以下であることがより好ましく、0.5g/10分以上50g/10分以下であることがさらに好ましい。
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)のMFRは、異なるMFRを有するエチレン・不飽和エステル共重合体(A)を複数ブレンドして調整してもよい。
【0028】
本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル共重合体(A)において、エチレン・不飽和エステル共重合体を構成する構成単位の全体を100質量%としたとき、エチレンから導かれる構成単位は、好ましくは70質量%以上95質量%以下、より好ましくは72質量%以上93質量%以下、特に好ましくは75質量%以上92質量%以下である。
エチレンから導かれる構成単位が上記下限値以上であると、得られるヒートシール材の耐熱性や機械的強度、耐水性、加工性等をより良好にすることができる。また、エチレンから導かれる構成単位が上記上限値以下であると、得られるヒートシール材の透明性や柔軟性、接着性等をより良好にすることができる。
【0029】
本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル共重合体(A)において、エチレン・不飽和エステル共重合体を構成する構成単位の全体を100質量%としたとき、不飽和エステルから導かれる構成単位は、好ましくは5質量%以上30質量%以下、より好ましくは7質量%以上28質量%以下、特に好ましくは8質量%以上25質量%以下である。
不飽和エステルから導かれる構成単位が上記下限値以上であると、得られるヒートシール材の透明性や柔軟性、接着性等をより良好にすることができる。また、不飽和エステルから導かれる構成単位が上記上限値以下であると、得られるヒートシール材の耐熱性や機械的強度、耐水性、加工性等をより良好にすることができる。
【0030】
本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル共重合体(A)の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。例えば、各重合成分を高温および高圧下でラジカル共重合することによって得ることができる。また、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)は市販されているものを用いてもよい。
【0031】
<酸変性スチレン系共重合体(B)>
本実施形態に係る酸変性スチレン系共重合体(B)は、酸変性スチレン系ブロック共重合体が好ましく、少なくともハードセグメントであるスチレンブロックとソフトセグメントであるゴムブロックとを有するスチレン系ブロック共重合体を酸変性した重合体がより好ましい。酸変性スチレン系共重合体(B)としては、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体から選択される少なくとも一種の化合物によりグラフト変性されたスチレン系共重合体を例示することができる。
【0032】
酸変性スチレン系共重合体(B)における上記不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2−エチルアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、が挙げられる。これらの中でも、上記不飽和カルボン酸は、酸変性スチレン系共重合体(B)の生産性、衛生性等の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、マレイン酸を含むことがより好ましい。
酸変性スチレン系共重合体(B)における上記不飽和カルボン酸の誘導体としては、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸等の酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル等の酸エステル、酸アミド、酸ハロゲン化物等が挙げられる。これらの中でも、上記不飽和カルボン酸の誘導体は無水マレイン酸を含むことが好ましい。
これらの不飽和カルボン酸および上記不飽和カルボン酸の誘導体は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
酸変性スチレン系共重合体(B)を構成するスチレン系共重合体は、少なくともハードセグメントであるスチレンブロックとソフトセグメントであるゴムブロックとを有するブロック共重合体が好ましく、ソフトセグメントであるゴムブロックはハードセグメントであるスチレンブロックの中間に位置していることが好ましい。このようなスチレンブロックとゴムブロックとを有する重合体は、スチレンブロック部分が物理的架橋(ドメイン)を形成して橋掛け点となり、ゴムブロックは重合体にゴム弾性を与える。
ソフトセグメントであるゴムブロックとしては、ポリブタジエン(B)、ポリイソプレン(I)およびポリオレフィンエラストマー(エチレン・プロピレン(EP))等が挙げられる。
ハードセグメントであるポリスチレン(S)との配列の様式によって、直鎖状(リニアタイプ)および放射状(ラジカルタイプ)とに分かれる。
【0034】
酸変性スチレン系共重合体(B)を構成するスチレン系共重合体としては、スチレン系ブロック共重合体が好ましく、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SI)およびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)若しくはそれらブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。
かかる水素添加物は、スチレンブロックとジエンブロックの全てが水素添加されたブロック共重合体であっても、ジエンブロックのみ水素添加されたブロック共重合体あるいはスチレンブロックとジエンブロックの一部が水素添加されたブロック共重合体等の部分水素添加物であってもよい。
これらのスチレン系共重合体は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
これらブロック共重合体の中でも、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB)の水素添加物、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)の水素添加物、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIS)の水素添加物、スチレン−イソブチレンブロック共重合体(SI)の水素添加物等のスチレンブロックとジエンブロックとを含有するブロック共重合体の水素添加物がより好ましく、具体的には、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB)の水素添加物であるスチレン−エチレン・ブテンブロック共重合体(SEB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)の水素添加物であるスチレン−エチレン・ブテン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)の水素添加物であるスチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)が押出成形時の熱安定性に優れ、加工時の安定性や劣化物の発生および臭いの発生を抑制する観点から好ましい。
【0036】
本実施形態に係る酸変性スチレン系共重合体(B)は、スチレン系共重合体に不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体から選択される少なくとも一種の化合物をラジカル開始剤の存在下において溶融状態でグラフトさせたものを用いることもできる。ラジカル開始剤はポリオレフィンのグラフト反応に一般的に用いられるものであればよい。
【0037】
本実施形態において、加工安定性をより向上させる観点から、JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、酸変性スチレン系共重合体(B)のメルトフローレート(MFR)が、0.01g/10分以上150g/10分以下であることが好ましく、0.1g/10分以上100g/10分以下であることがより好ましく、0.5g/10分以上50g/10分以下であることがさらに好ましい。
酸変性スチレン系共重合体(B)のMFRは、異なるMFRを有する酸変性スチレン系共重合体(B)を複数ブレンドして調整してもよい。
【0038】
酸変性スチレン系共重合体(B)の酸価は、0mgCH
3ONa/gを超え20mgCH
3ONa/g未満が好ましく、0mgCH
3ONa/gを超え11mgCH
3ONa/g未満がより好ましく、0.5mgCH
3ONa/g以上8mgCH
3ONa/g以下がさらに好ましい。本実施形態に係るヒートシール性樹脂組成物中の酸変性スチレン系共重合体(B)の含有量をX質量%(ただし、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(A)、酸変性スチレン系共重合体(B)および粘着付与剤(C)の合計を100質量%とする)とし、酸変性スチレン系共重合体(B)の酸価をYmgCH
3ONa/gとしたとき、3<X×Y<180の関係を満たすことが好ましく、3<X×Y<100の関係を満たすことがより好ましい。
【0039】
また、0<Y<20であり、かつ、Y≧1.14X−9.3を満たすことが好ましく、0<Y<11であり、かつ、Y≧1.14X―1.42を満たすことがさらに好ましい。Xは、0<X<20の範囲がより好ましい。
酸変性スチレン系共重合体(B)の含有量と酸価が上記範囲にあることにより、ヒートシール材のシール強度や柔軟性、機械特性、耐熱性、取扱い性、加工性等のバランスをより一層良好なものとすることができる。
【0040】
酸変性スチレン系共重合体(B)の市販品としては、例えば、旭化成ケミカルズ社製のタフテックM1913やタフテックM1943等が挙げられる。
【0041】
<粘着付与樹脂(C)>
本実施形態に係るヒートシール性樹脂組成物(P)は、得られるヒートシール材の粘着性を向上させる観点から、粘着付与樹脂(C)をさらに含んでもよい。
【0042】
粘着付与樹脂(C)としては、例えば、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族−芳香族共重合体系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂等の石油系樹脂の水素添加物;ピネン樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂等のテルペン系樹脂の水素添加物;重合ロジン系樹脂の水素添加物;(アルキル)フェノール系樹脂の水素添加物;キシレン系樹脂の水素添加物;スチレン系樹脂の水素添加物等が挙げられる。これらの中でも、石油系樹脂の水素添加物が好ましく、脂環族系炭化水素樹脂の水素添加物および芳香族系炭化水素樹脂の水素添加物から選択される少なくとも一種がとくに好ましい。
これらの粘着付与樹脂(C)には、オレフィン樹脂が含まれていてもよい。
【0043】
石油系樹脂の水素添加物としては、ビニルトルエン、インデン、α−メチルスチレン等のC
8〜C
10のビニル芳香族炭化水素を主成分とする樹脂の水素添加物等が挙げられる。
テルペン系樹脂の水素添加物としては、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体、テルペン・フェノール共重合体等の水素添加物が挙げられる。
重合ロジン系樹脂の水素添加物としては、例えば、水素化ロジン、水素化ロジンのグリセリンエステルまたはその重合体、および水素化ロジンのペンタエリスリットエステルまたはその重合体等が挙げられる。
スチレン系樹脂の水素添加物としては、例えば、スチレン系モノマーの単独重合体、スチレン・オレフィン共重合体、ビニルトルエン・α−メチルスチレン共重合体等の水素添加物が挙げられる。
【0044】
本実施形態に係るヒートシール性樹脂組成物(P)において、粘着付与樹脂(C)をさらに含む場合、ヒートシール性樹脂組成物(P)中のエチレン・不飽和エステル共重合体(A)および酸変性スチレン系共重合体(B)の合計含有量に対する粘着付与樹脂(C)の含有量の質量比(C/(A+B))が0.01以上1.0以下であることが好ましく、0.05以上0.4以下であることがより好ましく、0.1以上0.3以下がさらに好ましい。エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および酸変性スチレン系共重合体(B)の合計含有量に対する粘着付与樹脂(C)の含有量の質量比(C/(A+B))が上記範囲内であると、得られるヒートシール材の粘着性やシール強度、柔軟性、機械的特性、耐熱性、取扱い性、加工性等のバランスをより一層良好なものとすることができる。
【0045】
<その他の成分>
本実施形態に係るヒートシール性樹脂組成物(P)は、本発明の効果を損なわない範囲で、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)、酸変性スチレン系共重合体(B)および粘着付与樹脂(C)以外の成分を含有してもよい。その他の成分としては特に限定されないが、例えば、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、着色剤、光安定剤、発泡剤、潤滑剤、結晶核剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、触媒失活剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、無機充填剤、有機充填剤、耐衝撃性改良剤、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、シランカップリング剤、加工助剤、離型剤、加水分解防止剤、耐熱安定剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、難燃剤、難燃助剤、光拡散剤、抗菌剤、防黴剤、分散剤、その他の樹脂等を挙げることができる。その他の成分は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
<ヒートシール性樹脂組成物(P)の調製方法>
本実施形態に係るヒートシール性樹脂組成物(P)の調製方法としては特に限定されないが、例えば、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、酸変性スチレン系共重合体(B)と、必要に応じて添加される粘着付与樹脂(C)およびその他の成分と、をドライブレンドして混合することにより調製する方法;エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、酸変性スチレン系共重合体(B)と、必要に応じて添加される粘着付与樹脂(C)およびその他の成分と、を押出機等で溶融混練することにより調製する方法;等を採用することができる。
【0047】
<ヒートシール強度比>
本実施形態に係るヒートシール性樹脂組成物(P)において、下記方法により測定されるヒートシール強度F
120に対するヒートシール強度F
160の比(F
160/F
120)が0.8以上1.4未満であることが好ましく、より好ましくは0.9以上1.2未満である。これにより、幅広いヒートシール温度で良好なヒートシール強度を実現できるヒートシール材を得ることができる。その結果、ヒートシール材のプロセスウィンドウを広げることができ、得られるヒートシール材を、例えば、食品や医薬品の包装容器の蓋材として適用した場合、シール強度が良好で、かつ、易剥離性の包装容器を安定的に得ることができる。
このようなヒートシール強度を達成するためには、ヒートシール性樹脂組成物(P)中のエチレン・不飽和エステル共重合体(A)の含有量に対する酸変性スチレン系共重合体(B)の含有量の質量比(B/A)や、本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル共重合体(A)、酸変性スチレン系共重合体(B)の種類および粘着付与樹脂(C)の種類や量等を適宜調整すればよい。
(方法)
本実施形態に係るヒートシール性樹脂組成物(P)を加工温度240℃、加工速度30m/分の押出ラミネート法により予め作製した基材(PET(12μm)/PE(15μm))のPE上に30μm厚で積層させ、ヒートシール材(積層体)を得る。次いで、得られた上記ヒートシール材をアモルファス・ポリエチレンテレフタレートフィルムに対してヒートシールテスターにてヒートシール温度120℃または160℃、0.2MPa(実圧)で1秒間ヒートシールを行い、上記アモルファス・ポリエチレンテレフタレートフィルムに上記ヒートシール材を接着させ、室温(23℃)で24時間放置する。次いで、積層体から切り出した15mm幅の試験片を23℃の環境下において、引張速度300mm/分で上記ヒートシール材を上記アモルファス・ポリエチレンテレフタレートフィルムから引き離し、最大応力を上記アモルファス・ポリエチレンテレフタレートフィルムに対するヒートシール強度(N/15mm)として算出する。ヒートシール温度120℃でのヒートシール強度をF
120とし、ヒートシール温度160℃でのヒートシール強度をF
160とする。
ここで、上記A−PETフィルムとしては、例えば、RP東プラ社製のNOACRYSTAL−V(厚み:300μm)を用いる。
【0048】
2.ヒートシール材
本実施形態に係るヒートシール材は、本実施形態に係るヒートシール性樹脂組成物(P)により構成される。
本実施形態に係るヒートシール材は、ヒートシール性樹脂組成物(P)により構成されているため、より低い温度でヒートシールした際のシール強度に優れている。
また、本実施形態に係るヒートシール材はA−PETに対し、より低い温度でヒートシールした際のシール強度が特に良好であるため、本実施形態に係るヒートシール材はA−PET製の容器の蓋体を構成する蓋材として特に好適に用いることができる。
【0049】
本実施形態に係るヒートシール材の製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法を用いることができ、例えば、プレス成形法、押出成形法、射出成形法、圧縮成形法、キャスト成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法等を用いることができる。
【0050】
3.包装材
本実施形態に係る包装材は、例えば、基材層と、上記基材層の一方の面に設けられた本実施形態に係るヒートシール材からなるヒートシール層と、を備える。
本実施形態に係る包装材は、本実施形態に係るヒートシール材からなるヒートシール層を備えるため、より低い温度での良好なシール強度が得られるとともに、ヒールシール温度を変化させた場合においてシール強度の変動が小さく適度なシール強度を有し、さらに易剥離性である。そのため、容器の蓋体を構成する蓋材として特に好適に用いることができる。
また、本実施形態に係る包装材は、A−PETに対し、より低い温度でヒートシールした際のシール強度が特に良好であるため、本実施形態に係る包装材はA−PET製の容器の蓋体を構成する蓋材として特に好適に用いることができる。
【0051】
本実施形態に係る包装材において、本実施形態に係るヒートシール材からなるヒートシール層の厚さは、例えば、5μm以上200μm以下であり、好ましくは10μm以上100μm以下である。
【0052】
基材層は、包装材の取り扱い性や機械的特性、導電性、断熱性、耐熱性、防湿性等の特性をより良好にすることを目的として設けられる層である。基材層としては、例えば、紙、不織布、金属層(アルミニウム箔等)、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、アルミニウム蒸着プラスチックフィルム、シリカ蒸着プラスチックフィルム、アルミナ蒸着プラスチックフィルム、アモルファス・ポリエチレンテレフタレートフィルム等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらは一軸あるいは二軸に延伸されたものであってもよい。
【0053】
基材層はヒートシール層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
基材層の厚さは、1μm以上100μm以下が好ましく、2μm以上50μm以下がより好ましく、5μm以上40μm以下がさらに好ましい。
基材層の形状は、特に限定されないが、例えば、シート、フィルム等の形状が挙げられる。
【0054】
本実施形態に係る包装材は、基材層とヒートシール層とのみで構成されていてもよいし、包装材に様々な機能を付与する観点から、基材層とヒートシール層以外の層(以下、その他の層とも呼ぶ。)を有していてもよい。その他の層としては、例えば、発泡層、金属層、無機物層、ガスバリア性樹脂層、帯電防止層、ハードコート層、接着層、反射防止層、防汚層等を挙げることができる。その他の層は1層単独で用いてもよいし、2層以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、接着層は、各層同士の接着性を高めるために設けられる層である。
【0055】
本実施形態に係る包装材には、必要に応じて、任意の率で一軸または二軸延伸を加えてもよい。
【0056】
押出成形、射出成形、ブロー成形、フィルムやシート成形等の成形方法を用いて、本実施形態に係るヒートシール性樹脂組成物(P)を成形することにより、本実施形態に係る包装材は各種形状とすることができる。
本実施形態に係る包装材の形状は特に限定されないが、フィルムやシートが好ましい。
【0057】
本実施形態に係る包装材は、例えば、食品、医薬品、工業用品、日用品、化粧品等を包装するために用いられる包装材として好適に用いることができ、食品および医薬品の包装材として特に好適に用いることができる。
【0058】
4.包装容器
本実施形態に係る包装容器は、例えば、開口を有する容器本体と、上記容器本体の上記開口に蓋をする本実施形態に係る包装材からなる蓋体と、を備える。
ここで、本実施形態に係る包装材からなる蓋体は、A−PETに対し、より低い温度でヒートシールした際に良好なシール強度が得られるとともに、ヒールシール温度を変化させた場合においてシール強度の変動が小さく適度なシール強度を有し、さらに易剥離性であるため、開口を有する容器本体としては少なくとも一部にA−PETを含む容器が好適に用いられる。
【0059】
また、開口を有する容器本体としては、A−PET製容器のみならず、他の材料の容器、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等の容器でもよい。
本実施形態に係る包装容器は、例えば、食品、医薬品、工業用品、日用品、化粧品等を包装するために用いられる包装容器として好適に用いることができ、食品および医薬品の包装容器として特に好適に用いることができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、酸変性スチレン系共重合体(B)と、を含むヒートシール性樹脂組成物。
2. 1.に記載のヒートシール性樹脂組成物において、
前記ヒートシール性樹脂組成物中の前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の含有量に対する前記酸変性スチレン系共重合体(B)の含有量の質量比(B/A)が0.005以上1.0以下であるヒートシール性樹脂組成物。
3. 1.または2.に記載のヒートシール性樹脂組成物において、
前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)がエチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体から選択される少なくとも一種の重合体を含むヒートシール性樹脂組成物。
4. 3.に記載のヒートシール性樹脂組成物において、
前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)がエチレン・酢酸ビニル共重合体を含むヒートシール性樹脂組成物。
5. 1.乃至4.のいずれか一つに記載のヒートシール性樹脂組成物において、
前記酸変性スチレン系共重合体(B)が不飽和カルボン酸および前記不飽和カルボン酸の誘導体から選択される少なくとも一種の化合物によりグラフト変性されたスチレン系共重合体を含むヒートシール性樹脂組成物。
6. 5.に記載のヒートシール性樹脂組成物において、
前記不飽和カルボン酸がマレイン酸および無水マレイン酸から選択される少なくとも一種を含むヒートシール性樹脂組成物。
7. 5.または6.に記載のヒートシール性樹脂組成物において、
前記酸変性スチレン系共重合体(B)を構成する前記スチレン系共重合体がスチレン−エチレン・ブテンブロック共重合体(SEB)、スチレン−エチレン・ブテン−スチレンブロック共重合体(SEBS)およびスチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)から選択される一種または二種以上を含むヒートシール性樹脂組成物。
8. 1.乃至7.のいずれか一つ項に記載のヒートシール性樹脂組成物において、
粘着付与樹脂(C)をさらに含むヒートシール性樹脂組成物。
9. 8.に記載のヒートシール性樹脂組成物において、
前記粘着付与樹脂(C)が石油系樹脂の水素添加物を含むヒートシール性樹脂組成物。
10. 8.または9.に記載のヒートシール性樹脂組成物において、
前記ヒートシール性樹脂組成物中の前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および前記酸変性スチレン系共重合体(B)の合計含有量に対する前記粘着付与樹脂(C)の含有量の質量比(C/(A+B))が0.01以上1.0以下であるヒートシール性樹脂組成物。
11. 1.乃至10.のいずれか一つに記載のヒートシール性樹脂組成物において、
下記方法により測定されるヒートシール強度F120に対するヒートシール強度F160の比(F160/F120)が0.8以上1.4未満であるヒートシール性樹脂組成物。
(方法)
前記ヒートシール性樹脂組成物を加工温度240℃、加工速度30m/分の押出ラミネート法により予め作製した基材(PET(12μm)/PE(15μm))のPE上に30μm厚で積層させ、ヒートシール材(積層体)を得る。次いで、得られた前記ヒートシール材をアモルファス・ポリエチレンテレフタレートシートに対してヒートシールテスターにてヒートシール温度120℃または160℃、0.2MPa(実圧)で1秒間ヒートシールを行い、前記アモルファス・ポリエチレンテレフタレートシートに前記ヒートシール材を接着させ、室温(23℃)で24時間放置する。次いで、積層体から切り出した15mm幅の試験片を23℃の環境下において、引張速度300mm/分で前記ヒートシール材を前記アモルファス・ポリエチレンテレフタレートシートから引き離し、最大応力を前記アモルファス・ポリエチレンテレフタレートシートに対するヒートシール強度(N/15mm)として算出する。ヒートシール温度120℃でのヒートシール強度をF120とし、ヒートシール温度160℃でのヒートシール強度をF160とする。
12. 前記ヒートシール性樹脂組成物中の前記酸変性スチレン系共重合体(B)の含有量をX質量%(ただし、前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)、前記酸変性スチレン系共重合体(B)および粘着付与樹脂(C)の合計を100質量%とする)、前記酸変性スチレン系共重合体(B)の酸価をYmgCH3ONa/gとしたとき、0<Y<20であり、かつ、Y≧1.14X−9.3を満たす1.乃至11.のいずれか一つに記載のヒートシール性樹脂組成物。
13. 0<Y<11であり、かつ、Y≧1.14X―1.42を満たす12.に記載のヒートシール性樹脂組成物。
14. 1.乃至13.いずれか一つに記載のヒートシール性樹脂組成物により構成されたヒートシール材。
15. 基材層と、前記基材層の一方の面に設けられた14.に記載のヒートシール材からなるヒートシール層と、を備える包装材。
16. 蓋材である15.に記載の包装材。
17. 開口を有する容器本体と、前記容器本体の前記開口に蓋をする15.に記載の包装材からなる蓋体と、を備える包装容器。
18. 17.に記載の包装容器において、
前記容器本体の少なくとも一部がアモルファス・ポリエチレンテレフタレートを含む包装容器。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
ヒートシール性樹脂組成物(P)の調製に用いた成分の詳細は以下の通りである。
【0063】
<エチレン・不飽和エステル共重合体(A)>
EVA1:エチレン・酢酸ビニル共重合体(MFR=9g/10min、エチレン含量=90質量%、酢酸ビニル含量=10質量%)
EVA2:エチレン・酢酸ビニル共重合体(MFR=3g/10min、エチレン含量=90質量%、酢酸ビニル含量=10質量%)
EVA3:エチレン・酢酸ビニル共重合体(MFR=15g/10min、エチレン含量=86質量%、酢酸ビニル含量=14質量%)
EVA4:無水マレイン酸変性エチレン・酢酸ビニル共重合体(MFR=2.2g/10min、エチレン含量=90質量%、酢酸ビニル含量=10質量%、無水マレイン酸グラフト率=0.95質量%)
EVA5:エチレン・酢酸ビニル共重合体(MFR=19g/10min、エチレン含量=90質量%、酢酸ビニル含量=10質量%)
EMA1:エチレン・アクリル酸メチル共重合体(MFR=6g/10min、エチレン含量91質量%、アクリル酸メチル含量=9質量%)
【0064】
<その他エチレン系ポリマー>
LDPE:低密度ポリエチレン(MFR=7g/10min)
EMAA:エチレン・メタクリル酸共重合体(MFR=8g/10min、エチレン含量=91質量%、メタクリル酸含量=9質量%)
【0065】
<酸変性スチレン系共重合体(B)>
酸変性SEBS1:無水マレイン酸変性スチレン−エチレン・ブテン−スチレンブロック共重合体(旭化成ケミカルズ社製、タフテックM1943)、酸価10mgCH
3ONa/g
酸変性SEBS2:無水マレイン酸変性スチレン−エチレン・ブテン−スチレンブロック共重合体(旭化成ケミカルズ社製、タフテックM1913)、酸価10mgCH
3ONa/g
酸変性SEBS3:無水マレイン酸変性スチレン−エチレン・ブテン−スチレンブロック共重合体(旭化成ケミカルズ社製、タフテックM1911)、酸価2mgCH
3ONa/g
【0066】
<粘着付与樹脂(C)>
粘着付与樹脂1:芳香族炭化水素樹脂の水素添加物(荒川化学工業社製、アルコンP115)
【0067】
<その他の樹脂>
酸変性PO1:無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学社製、アドマーLF128)
酸変性PO2:無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学社製、アドマーNF518)
酸変性PO3:無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学社製、アドマーSF731)
【0068】
[実施例1〜12、比較例1〜10]
表1〜4に示す配合割合で各成分を押出機(先端ダルメージフライトスクリュー)にて160℃で溶融混練し、ヒートシール性樹脂組成物(P)をそれぞれ得た。なお、EVA4(無水マレイン酸変性エチレン・酢酸ビニル共重合体)は、表5に示す配合割合で押出機(フルフライトスクリュー)にて180℃で有機過酸化物存在下、無水マレイン酸をエチレン・酢酸ビニル共重合体に反応させることにより作製した。
次いで、得られたヒートシール性樹脂組成物(P)について、以下の条件で押出ラミネート加工をおこない、包装材をそれぞれ作製した。
シングル押出ラミネーターを用いて、押出機ダイ出口樹脂温度240℃、引取速度30m/分、成形後のヒートシール性樹脂組成物(P)からなるヒートシール層の厚みが30μmとなるような押出条件で、得られたヒートシール性樹脂組成物(P)をTダイから基材層(PET層(12μm)/PE層(15μm)の2層積層体)のPE層上に溶融押出し、フィルム状にラミネート成形した。
得られた包装材について、以下の評価をおこなった。その結果を表1に示す。
【0069】
[ヒートシール強度]
実施例および比較例で得られた包装材をヒートシール層側がA−PETシート(RP東プラ社製NOACRYSTAL−V)に接するようにA−PETシート上に積層し、ヒートシールテスター(テスター産業株式会社製TP−701S HEAT SEAL TESTER)にてヒートシール温度、120℃、140℃または160℃、0.2MPa(実圧)で1秒間ヒートシールを行い、A−PETシートに包装材を接着させ、室温(23℃)で24時間放置した。
次いで、23℃の環境下において、引張速度300mm/分で包装材(15mm幅の試験片)をA−PETシートから引き離し、最大応力をA−PETシートに対するヒートシール強度(N/15mm)として算出した。
【0070】
次いで、以下の基準により実施例および比較例で包装材のヒートシール強度を評価した。
◎:ヒートシール強度が15N/15mm以上20N/15mm未満
○:ヒートシール強度が12.5N/15mm以上15N/15mm未満または20N/15mm以上26N/15mm未満
△:ヒートシール強度が11.0N/15mm以上12.5N/15mm未満または26N/15mm以上30N/15mm未満
×:ヒートシール強度が11.0N/15mm未満または30N/15mm以上
【0071】
また、ヒートシール温度120℃でのヒートシール強度をF
120とし、ヒートシール温度160℃でのヒートシール強度をF
160とし、F
160/F
120を算出した。次いで、以下の基準によりヒートシール材のプロセスウィンドウを評価した。
◎:0.9以上1.2未満
○:0.8以上0.9未満または1.2以上1.4未満
×:1.4以上または0.8未満
【0072】
【表1】
【0073】
実施例1〜5の包装材はより低い温度でヒートシールしても良好なシール強度が得られた。これに対し、比較例1の包装材はヒートシール温度を下げると、シール強度が悪化してしまった。
【0074】
【表2】
【0075】
実施例6〜9の包装材はより低い温度でヒートシールしても良好なシール強度が得られた。これに対し、比較例2の包装材はヒートシール温度を下げると、シール強度が悪化してしまった。
【0076】
【表3】
【0077】
比較例3〜8の包装材はヒートシール温度を下げると、シール強度が悪化してしまった。
【0078】
【表4】
【0079】
実施例10〜12の包装材はより低い温度でヒートシールしても比較的良好なシール強度が得られ、シール温度によるシール強度のばらつきも小さかった。比較例9の包装材はヒートシール温度によってシール強度のばらつきが大きかった。比較例10はシール強度が低かった。
【0080】
【表5】