(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物、及びそのインキ組成物を印刷して
得られる表刷りグラビア印刷物について、その構成毎に具体的に説明する。
【0010】
(ポリウレタン樹脂)
本発明において使用されるポリウレタン樹脂としては、まずポリエステルポリオールとポリイソシアネート成分から得られたポリウレタン樹脂、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールの混合物からなるポリオール成分とポリイソシアネート成分からなるポリウレタン樹脂、を含有するポリウレタンである。
また、ポリエステルポリオールとポリイソシアネート成分から得られたポリウレタン樹脂と、ポリエーテルポリオールとポリイソシアネート成分からなるポリウレタン樹脂の混合物でも良い。
このポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールは、数平均分子量が500より大きく3000以下、より好ましくは、500より大きく2000以下のものである。これらのジオール化合物の数平均分子量が500以下の場合は、接着性が低下する傾向があり、一方、数平均分子量が3000を超えると、耐油性が低下する傾向がある。
【0011】
(ポリエステルポリオール)
このポリエステルポリオールを構成するジカルボン酸成分は、セバシン酸を含有することが必要である。このとき、セバシン酸の含有量としてはジカルボン酸の全モル数のうち50モル%以上であることが望ましい。
その他のジカルボン酸成分としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、グルタル酸等を使用することができる。
【0012】
本発明中のポリウレタンを構成するポリエステルポリオールとしては、ジカルボン酸成分の全てがセバシン酸からなるものでも良く、ジカルボン酸成分をセバシン酸と上記の他のジカルボン酸の混合物とすることもできる。
いずれにしても、本発明におけるポリウレタン成分中のポリエステルポリオールを構成するジカルボン酸のうち、セバシン酸の含有量を50モル%以上とすることが必要である。セバシン酸の含有量が50モル%未満であると、本発明による効果を十分に発揮できない可能性がある。
【0013】
このポリエステルポリオールを構成するために上記ジカルボン酸成分と反応するポリオールは、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の直鎖状グリコール類、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、エチルブチルプロパンジオール等の分岐グリコール類等の低分子ジオール化合物等やトリオール化合物である。
【0014】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールとしては、分子量が100以上のアルキレングリコール化合物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブタジエングリコール等のポリアルキレングリコール化合物、および低分子量アルキレングリコールやビスフェノールなどのジオール化合物に、酸化エチレン、酸化プロピレン等のオキシアルキレンやテトラヒドロフラン等を重付加させて得られる高分子ポリエーテルジオール化合物を挙げることができる。
【0015】
上記ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールと反応するジイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4−シクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0016】
さらに本発明において、鎖伸長剤や反応停止剤を用いて得られたポリウレタン樹脂を利用することも可能であり、鎖伸長剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類、エチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、イソホロンジアミン、アミノエチルエタノールアミン等の脂肪族ジアミン類等を挙げることができる。
【0017】
反応停止剤としては、メタノール、エタノール等のモノアルコール類、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等のアルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、エチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、イソホロンジアミン、アミノエチルエタノールアミン等の脂肪族ジアミン類等を挙げることができる。
【0018】
以上の合成成分を用いて本発明における表刷り用グラビア印刷インキ組成物に使用されるポリウレタン樹脂を得るためには、まず、ジイソシアネート化合物のNCOと高分子ジオール化合物のOHのモル当量比(ジイソシアネート化合物のNCOのモル当量/高分子ジオール化合物のOHのモル当量)が0.5以上3.0以下、好ましくは1.2以上1.5以下となるように反応させ、次いで、必要に応じて鎖伸長剤、反応停止剤を反応させることにより得ることができる。
ジイソシアネート化合物のNCOのモル当量/高分子ジオール化合物のOHのモル当量が0.5未満であると、耐熱性、耐油性が低下する傾向があり、一方、ジイソシアネート化合物のNCOのモル当量/高分子ジオール化合物のOHのモル当量が3.0を超えると、延伸性が低下する傾向がある。
本発明における表刷り用グラビア印刷インキ組成物の樹脂フィルムに対する接着性、耐ブロッキング性、耐油性、耐熱性、耐塩ビブロッキング性等の面から、ポリウレタン樹脂の中でも水酸基を有するポリウレタン樹脂が好ましく、特に、鎖伸長剤として、グリセリン、アミノエチルエタノールアミン等のジアミノアルコール化合物を使用してポリウレタン樹脂の分子内に水酸基を導入したものが好ましい。
【0019】
そのような水酸基を有するポリウレタン樹脂を得る方法としては、(1)鎖伸長剤や反応停止剤を用いずに、有機ジイソシアネート化合物をジオール化合物の1.0倍未満のモル比率で反応させる方法、(2)有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物を反応させてウレタンプレポリマーを合成した後、鎖伸長剤として、グリセリン、アミノエチルエタノールアミン等のジアミノアルコール化合物、反応停止剤として、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン化合物を反応させて水酸基を導入する方法等、いずれか既知の方法を利用できる。
【0020】
(セルロース誘導体)
本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物に使用してもよいセルロース誘導体としては、従来から表刷り用印刷インキ組成物に使用されているセルロース誘導体が使用できる。セルロース誘導体としては、ニトロセルロース(ニトロ基置換体)、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどの低級アシル基置換体、メチルセルロース、エチルセルロースなどの低級アルキル基置換体を挙げることができる。これらセルロース誘導体の分子量や水酸基に対する置換度などは、通常のインキ組成物や塗料で使用される範囲のものが、本発明でも支障なく利用でき、水酸基の置換度は、概ね、1.3〜2.7程度のものが好ましい。また、耐熱性の面からはニトロ基置換体の使用が有利であり、接着性の面からは低級アシル基置換体および低級アルキル基置換体が有利であるため、目的に応じて適宜選択して使用することが好ましい。
【0021】
(キレート架橋剤)
本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物に使用するキレート架橋剤としては、金属キレート架橋剤として、チタンキレート、ジルコニウムキレート等が使用できる。
チタンキレートの代表例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド、トリエタノールアミンチタネート、チタニウムアセチルアセテート、チタニウムエチルアセトアセテート、チタニウムラクテート、オクチレングリコールチタネート、チタンテトラアセチルアセトナート、n−ブチルリン酸エステルチタン、プロパンジオキソチタンビス(エチルアセチルアセテート)などのチタンキレートを挙げることができる。ジルコニウムキレートとしては、ジルコニウムプロピオネート、ジルコニウムアセチルアセテート等が例示できる。
【0022】
(塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体)
本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物に使用してもよい塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体としては、従来から表刷り用グラビア印刷インキ組成物に使用されている塩化ビニルモノマーと酢酸ビニルモノマーの共重合体が使用できる。
この塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体の塩化ビニル単位と酢酸ビニル単位のモル比率は、塩化ビニル:酢酸ビニル=80:20〜95:5であることが好ましい。
塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体のなかでも、環境に配慮したインキの有機溶剤系において、本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物により得られる諸性能をバランスよく向上させるためには、水酸基を有する塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体がさらに好適である。このような水酸基を有する塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体は、例えば、酢酸ビニルモノマー部分の一部のエステル基をケン化することにより得ることができる。
酢酸エステル部分の一部をケン化することにより得られた水酸基を有する塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体を採用する場合には、分子中の塩化ビニルの反応部位に基づく構成単位(下記式1)、酢酸ビニルの反応部位に基づく構成単位(下記式2)、および酢酸ビニルの反応部位のケン化に基づく構成単位(下記式3)の比率により樹脂の皮膜物性や溶解挙動が決定される。
すなわち、塩化ビニルの反応部位に基づく構成単位は樹脂皮膜の強靭さや硬さを付与し、酢酸ビニルの反応部位に基づく構成単位は接着性や柔軟性を付与し、酢酸ビニルの反応部位のケン化に基づく構成単位は環境に配慮したインキの有機溶剤系への良好な溶解性を付与することができる。
式1 ‐CH
2-CHCl-
式2 ‐CH
2-CH(OCOCH
3)-
式3 ‐CH
2-CH(OH)-
【0023】
環境上の観点からは、キレート架橋剤のなかでも、架橋反応後にアセチルアセトンを発生しないキレート架橋剤が好ましい。
キレート剤の含有量は、表刷り用グラビア印刷インキ組成物中0.1〜8.0質量%、好ましくは1.0〜5.0質量%、特に好ましくは1.0〜4.0質量%である。含有量が0.1質量%未満であると耐熱性、耐油性、耐塩ビブロッキング性が低下する傾向となり、8.0質量%を超える場合は、インキの経時保存安定性が低下する傾向がある。
本発明はこのようなキレート架橋剤を使用することによって、プラスチックフィルムに対する接着性が高くなるとともに、形成されたインキ皮膜は耐熱性、耐油性に優れる上に、耐ブロッキング性、耐塩ビブロッキング性を向上させるという効果を奏する。
【0024】
(脂肪酸アミド)
本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物の耐熱性、耐油性、耐塩ビブロッキング性を向上させるために、脂肪酸アミド、ポリアミド樹脂及びハードレジンを併用して使用することが好ましい。
本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物に使用する脂肪酸アミドとしては、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、変性脂肪酸アミド等が挙げられ、テーブルクロスに用いられる軟質塩化ビニルシートへの耐塩ビブロッキング性を向上させるためには、変性脂肪酸アミドを使用することが特に好ましい。
脂肪酸アミドを含有させる際の含有量は、表刷り用グラビア印刷インキ組成物中、好ましくは0.1〜3.0質量%、より好ましくは0.5〜2.0質量%である。
含有量が0.1質量%未満であると耐塩ビブロッキング性が低下する可能性があり、3.0質量%を超える場合は、耐油性が低下する可能性がある。
本発明はこれらの脂肪酸アミドを使用することによって、耐塩ビブロッキング性に優れるという効果を奏する。
【0025】
(ハードレジン)
本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物に必要に応じて使用するハードレジンとしては、ダイマー酸系樹脂、ロジン系樹脂、マレイン酸系樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、ダンマル樹脂、コーパル樹脂、塩素化ポリプロピレン、酸化ポリプロピレン等が挙げられる。これらハードレジンを利用すると、特に表面処理の行なわれていないプラスチックフィルムに対して、接着性の向上を期待できる。そして、本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物中におけるハードレジンの含有量は、5.0質量%未満が好ましい。
【0026】
(顔料)
本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物に使用する顔料としては、一般に有機溶剤を含有するグラビア印刷インキ組成物で使用できる無機顔料及び有機顔料を使用できる。例えば、ここで使用可能な無機顔料としては、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛など、有機顔料としては、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等を挙げることができる。さらに、炭酸カルシウム、カオリンクレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルクなどの体質顔料も併用して使用することができる。これら顔料の含有量としては、本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物中に0.5〜20.0質量%が好ましく、5.0〜15.0質量%とすることがさらに好ましい。
【0027】
(顔料分散剤)
本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物に使用する顔料分散剤としては、一般に有機溶剤を含有するグラビア印刷インキ組成物で使用できるポリエステル系顔料分散剤が使用できる。具体的には、アジスパーPB821、PB822、PB824、PB881(味の素ファインテクノ社製)、ソルスパース24000、56000(日本ルーブリゾール社製)等が挙げられ、これらの中でも塩基性基含有ポリエステル系高分子分散剤が好適に使用できる。
顔料分散剤の含有量は、表刷り用グラビア印刷インキ組成物中の全顔料100質量部に対して、通常1〜200質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜60質量部である。上記顔料分散剤の含有量が1質量部未満では、インク組成物の保存安定性が低下するおそれがあり、一方200質量部を超えて含有させることもできるが、さらなる顔料分散効果を望めない場合がある。
【0028】
(有機溶剤)
本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物に使用する有機溶剤としては、環境に配慮して芳香族炭化水素系有機溶剤を含有しない有機溶剤とすることが好ましい。芳香族炭化水素系有機溶剤を含有しない有機溶剤としては、主に、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系有機溶剤、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶剤、および、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素系有機溶剤を挙げることができ、バインダー樹脂の溶解性や乾燥性などを考慮して、混合して利用することもできる。但し、環境上の面を考慮して、上記の有機溶剤の中でも可能な限りケトン系有機溶剤を抑制することが好ましい。
これら有機溶剤の使用量としては、印刷性を考慮して本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物においては15.0質量%以上含有される。また、印刷適性の点から、酢酸プロピルを表刷り用グラビア印刷インキ組成物中に5.0質量%以上、より好ましくは10.0質量%以上含有させることが好ましい。
【0029】
(必要に応じて添加することができる添加剤)
さらに、本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物には、耐摩擦性の向上を目的として、本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物の性能が低下しない範囲で、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスなどの既知の各種ワックスを添加することができる。また、耐塩ビブロッキング性の向上を目的として、本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物の性能が低下しない範囲で、質量平均分子量500〜15,000のポリアミド樹脂を添加することもできる。さらに、本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物には、レベリング剤、界面活性剤、可塑剤等の各種インキ用添加剤を任意に添加できる。
【0030】
[本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物の製造法]
これらの材料を利用して本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物を製造する方法としては、まず、顔料、顔料分散剤、バインダー樹脂、有機溶剤、および必要に応じて界面活性剤などを撹拌混合した後、各種練肉機、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、パールミル等を利用して練肉し、さらに、キレート架橋剤、必要に応じて、脂肪酸アミド、ハードレジン及び残りの材料を添加混合する方法が利用される。
【0031】
[本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物を用いた印刷方法]
次に、本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物を用いたグラビア印刷方法について説明する。
本発明のグラビア印刷方法としては、例えば、樹脂フィルムに、まず、表刷り用グラビア印刷インキ組成物の白色インキ組成物をグラビア印刷方式で乾燥皮膜0〜2.0g/m
2の塗布量で印刷を行いドライヤーにより乾燥させる。次いで、先に印刷した白色インキ皮膜層の上に重ねて、表刷り用グラビア印刷インキ組成物の色インキ組成物を、グラビア印刷方式で、乾燥皮膜0〜2.0g/m
2の塗布量で印刷を行いドライヤーにより乾燥させることにより得ることができる。
上記のグラビア印刷方法により得られた表刷りグラビア印刷物は、製袋されて、食品などの包装容器に利用される。
【0032】
[表刷りグラビア印刷]
次に、本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物による表刷りグラビア印刷物について具体的に説明する。
印刷される基材としては、金属、木材、紙及びプラスチックフィルムのいずれでも良いが、中でもプラスチックフィルムが好ましい。このようなプラスチックフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの延伸および無延伸ポリオレフィンフィルム、ポリエステル、ナイロン、セロファン、ビニロン等のフィルムを挙げることができる。さらにこれらプラスチックフィルムについては、予め防曇剤の塗工、練り込み、マット剤の表面塗工、練り込みなどプラスチックフィルムを加工して得られるフィルムも使用することが可能である。
本発明の表刷りグラビア印刷物は、例えば、上記プラスチックフィルムに、上記表刷り用グラビア印刷インキ組成物の単色印刷あるいは各色重ね刷り印刷をグラビア印刷方式で行い、ドライヤーで乾燥させることにより得られるものである。そして、印刷により形成されるインキ皮膜は、乾燥皮膜として0.1〜2.0g/m
2の塗布量であることが適当である。
そして、必要に応じてポリアミド樹脂や脂肪酸アミドを含有しながら、高速印刷が可能という特長から、短時間のうちに多量の印刷物を得ることができ、日配食品を個包装するための印刷物の製造に好適に利用されるものである。
【0033】
(実施例)
実施例及び比較例を表1に示すが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0034】
<ポリウレタン樹脂1>(セバシン酸系ポリエステルジオール100%)
撹拌機、冷却管および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量1,000の3−メチル−1,5−ペンチレンセバケートジオール400gおよびイソホロンジイソシアネート106.6g、テトラブチルチタネート0.1gを仕込み、窒素ガスを導入しながら100℃で4時間反応させた。酢酸エチル364g、酢酸プロピル485g、イソプロピルアルコール364gを加えた後、イソホロンジアミン11.92gを加えて20分間反応させ、さらにブチルアミン1.4gを加えて反応を停止し、ポリウレタン樹脂1(固形分30%)を得た。
【0035】
<ポリウレタン樹脂2>(セバシン酸系ポリエステルジオール/アジピン酸系ポリエステルジオール=5/5)
撹拌機、冷却管および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量1,000の3−メチル−1,5−ペンチレンセバケートジオール200g、数平均分子量1,000の3−メチル−1,5−ペンチレンアジペートジオール200gおよびイソホロンジイソシアネート106.6g、テトラブチルチタネート0.1gを仕込み、窒素ガスを導入しながら100℃で4時間反応させた。酢酸エチル364g、酢酸プロピル485g、イソプロピルアルコール364gを加えた後、イソホロンジアミン11.92gを加えて20分間反応させ、さらにブチルアミン1.4gを加えて反応を停止し、ポリウレタン樹脂2(固形分30%)を得た。
【0036】
<ポリウレタン樹脂3>(セバシン酸系ポリエステルジオール/ポリエーテルジオール=5/5)
撹拌機、冷却管および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量1,000の3−メチル−1,5−ペンチレンセバケートジオール200g、数平均分子量1,000のポリプロピレングリコール200gおよびイソホロンジイソシアネート106.6g、テトラブチルチタネート0.1gを仕込み、窒素ガスを導入しながら100℃で4時間反応させた。酢酸エチル364g、酢酸プロピル485g、イソプロピルアルコール364gを加えた後、イソホロンジアミン11.92gを加えて20分間反応させ、さらにブチルアミン1.4gを加えて反応を停止し、ポリウレタン樹脂3(固形分30%)を得た。
【0037】
<ポリウレタン樹脂4>(アジピン酸系ポリエステルジオール100%)
撹拌機、冷却管および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量1,000の3−メチル−1,5−ペンチレンアジペートジオール400gおよびイソホロンジイソシアネート106.6g、テトラブチルチタネート0.1gを仕込み、窒素ガスを導入しながら100℃で4時間反応させた。酢酸エチル364g、酢酸プロピル485g、イソプロピルアルコール364gを加えた後、イソホロンジアミン11.92gを加えて20分間反応させ、さらにブチルアミン1.4gを加えて反応を停止し、ポリウレタン樹脂4(固形分30%)を得た。
【0038】
<ポリウレタン樹脂5>(ポリエーテルジオール100%)
撹拌機、冷却管および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量1,000のポリプロピレングリコール400gおよびイソホロンジイソシアネート106.6g、テトラブチルチタネート0.1gを仕込み、窒素ガスを導入しながら100℃で4時間反応させた。酢酸エチル364g、酢酸プロピル485g、イソプロピルアルコール364gを加えた後、イソホロンジアミン11.92gを加えて20分間反応させ、さらにブチルアミン1.4gを加えて反応を停止し、ポリウレタン樹脂5(固形分30%)を得た。
【0039】
<塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体溶液>
塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体(商品名:ソルバインTA5R、日信化学工業社製)20部を、メチルエチルケトン40部、酢酸エチル20部、酢酸プロピル20部からなる混合有機溶剤中に溶解させて固形分20%の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体溶液を得た。
【0040】
<ニトロセルロース溶液>
ニトロセルロース(商品名:NC RS−2、KOREA CNC社製)20部を、酢酸プロピル35部及びイソプロピルアルコール45部からなる混合溶媒に溶解させて固形分20%のニトロセルロース溶液を得た。
【0041】
<金属キレート架橋剤>
ジイソプロポキシチタンビスアセチルアセテート
【0042】
(実施例1〜7、比較例1〜2の表刷り用グラビア印刷インキ組成物の調製)
表1に示す材料をペイントコンディショナーで混練し、実施例1〜7、比較例1〜2の表刷り用グラビア印刷インキ組成物を調製した。なお、表1に記載の数値は質量%である。
【0043】
(実施例1〜7、比較例1〜2の表刷り用グラビア印刷インキ組成物の評価試験)
実施例1〜7、比較例1〜2の表刷り用グラビア印刷インキ組成物の経時安定性を評価した。
さらに実施例1〜7、比較例1〜2の表刷り用グラビア印刷インキ組成物を、コロナ放電処理した延伸ポリプロピレンフィルム(商品名OPPP−2161、25μm、東洋紡社製)に、下記条件で印刷、乾燥させ、1日経過させた後、下記の方法で、耐熱性、耐油性、耐塩ビブロッキング性、接着性、耐ブロッキング性、印刷適性、延伸性に関する印刷評価を行った。
顔料として、酸化チタンを使用した。
塗工機 :グラビア校正機
塗工速度:100m/min
印刷版 :ダイレクト175線ベタ版
乾燥温度:100℃(風量80%)
その具体的な評価方法を以下に示す。
【0044】
(インキの経時安定性)
実施例1〜7、比較例1〜2の表刷り用グラビア印刷インキ組成物を、その調製直後の粘度に対する、40℃で7日間経時後の粘度の変化(B型粘度計の30rpmでのインキ粘度測定データ)から経時粘度安定性の評価を行った。
A:経時後/調製直後の粘度比率が1.5未満である
B:経時後/調製直後の粘度比率が1.5以上、2.0未満である
C:経時後/調製直後の粘度比率が2.0以上、3.0未満である
D:経時後/調製直後の粘度比率が3.0以上である
【0045】
(接着性)
各印刷面にセロハンテープを貼り付け、これを急速に剥がしたときの印刷皮膜がフィルから剥離する度合いから、接着性を評価した。
A:印刷皮膜の面積比率として、フィルムからの剥離が5%未満である
B:印刷皮膜の面積比率として、5%以上30未満がフィルムから剥離する
C:印刷皮膜の面積比率として、30%以上がフィルムから剥離する
【0046】
(耐ブロッキング性)
各印刷面と非印刷面を合わせて、バイスでしめこみ、40℃で1日経過後に手で剥がし、インキの剥離の程度と剥離抵抗の強度から耐ブロッキング性を評価した。
A:印刷皮膜の剥離が全くない
B:印刷皮膜が少し剥離し、剥離抵抗が強く感じられる
C:印刷皮膜がほとんど剥離し、剥離抵抗が強く感じられる
【0047】
(耐塩ビブロッキング性)
各印刷物と同じ大きさに切った(A)市販品の軟質透明塩化ビニルシート(ニトリ社製
)、(B)軟質透明抗菌テーブルマット(明和グラビア社製)と印刷面とを重ね合わせて、0.5kg/cm
2の荷重をかけ、50℃湿度80%の雰囲気下で24時間放置後、印刷面と塩化ビニルシートを引き剥がし、インキの剥離の程度から耐塩ビブロッキング性を評価した。これらの2種の軟質塩化ビニルシートを対象とすることで、より広範囲の種類の軟質塩化ビニルシートに対する耐塩ビブロッキング性を確認した。
A:印刷皮膜がフィルムから剥離した面積が0〜20%のもの
B:印刷皮膜がフィルムから剥離した面積が20〜50%のもの
C:印刷皮膜がフィルムから剥離した面積が50%を超えるのもの
【0048】
(耐熱性)
80〜200℃の熱傾斜を有する熱板を備えたヒートシール試験機を用いて、印刷面とアルミ箔を2.0kg/cm
2の圧力で、1秒間押圧した。
<印刷面のインキがアルミ箔に転移する最低温度から耐熱性を評価>
A:160℃以上のもの
B:140℃以上、160℃未満のもの
C:140℃未満のもの
【0049】
(耐油性)
学振型耐摩擦試験機を用いて、各印刷物の印刷面をサラダ油をしみ込ませたあて布で200gの荷重下100回摩擦し、印刷面の変化から耐油性を評価した。
A:印刷面に変化がないもの
B:印刷面に筋状の傷が認められる
C:印刷面に面状の傷が認められる
【0050】
(印刷適性)
印刷適性については、印刷終了時の印刷部分における、版にインキが詰まったことに起因するカスレの面積の割合から印刷適性を評価した。
A:カスレが全くみられない
B:カスレが少しみられる
C:カスレが多くみられる
【0051】
(延伸性)
各印刷物のインキ皮膜の基材への追随性は、表刷り用グラビア印刷インキ組成物を印刷した基材を400%まで引き延ばし、インキ受理層の剥離・破壊を2段階で評価した。
A:インキ皮膜の剥離・破壊が全くない
B:インキ皮膜に剥離や破壊がある
【0053】
実施例1〜7に示すように、本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物は経時安定性に優れると共に、これらのインキ組成物を用いて印刷した場合には、アルミニウム箔面に対する耐熱性、耐油性、非印刷面に対する耐ブロッキング性、市販の軟質透明塩化ビニルシート及び軟質透明抗菌テーブルマット表面への耐ブロッキング性、プラスチックフィルムへの接着性、印刷適性、延伸性に優れるという結果を得た。
これに対して、ポリウレタン樹脂としてセバシン酸成分を有しないポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールを使用してなるポリウレタン樹脂のみを含有する比較例1及び2によれば、特に塩ビ樹脂に対するブロッキング性に劣る結果となった。