(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0012】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0013】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0014】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0015】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0016】
また、実施の形態で平面視とは、半導体基板の主面に垂直な方向から視た場合を意味する。
【0017】
<発明者の研究結果>
図1左右はコイルのQ値をコンピュータによりシミュレーションするためのモデルの一例を示す半導体基板の要部断面図である。
図1左右のいずれも半導体基板100上には多層配線層101が形成されており、その多層配線層101の上部にはコイル102の導体パターン102aが形成されている。
図1左ではコイル102の直下に配線103が配置されていないのに対して、
図1右ではコイル102の直下に配線103が配置されている。
図1右の配線103は、集積回路用の配線を意図したもので、平面視でコイル102の全域を覆うように形成されている(いわゆる、ベタ配線)。なお、半導体基板100は、シリコン(Si)単結晶を想定している。
【0018】
図2左は
図1のコイルの一例の平面図である。コイル102は、例えば、銅(Cu)配線で構成されている。コイル102のライン/スペースは、例えば、10.9/8.1μm、内径は、例えば、70μm、巻き数は、例えば、3、シート抵抗は、例えば、3.4mΩ/□である。また、
図2右は
図2左のコイルを動作させた場合の等価回路を示した回路図である。符号Lはコイル102のインダクタンス、符号Rは直列抵抗、符号Cg1,Cg2は対基板容量、符号Rg1,Rg2は対基板抵抗を示している。
【0019】
ここで、コイル102の特性においては、Q値(誘導リアクタンス(ωL)/抵抗(R))が重要なパラメータとされており、Q値を大きくすることが重要とされている。そこで、上記
図1左右のコイル102についてQ値のシミュレーションを行った。
図3は
図1左右についてコイルのQ値のシミュレーションの結果をまとめたグラフ図である。
図3の縦軸はQ値である。
図3の横軸の左のモデルMD1は
図1左(配線103が無い場合)の結果を示している。一方、
図3の横軸の右のモデルMD2は
図1右(配線103が有る場合)の結果を示しており、
図3左のモデルMD1に比べてコイル102のQ値が著しく低下していることが分かる。このコイル102のQ値の低下は、コイル102で発生した磁界によってコイル102下の配線103(ベタ配線)で発生した誘導起電力により配線103に渦電流が発生したことに起因している。
【0020】
図4はコイルのQ値の対策例を示す半導体装置の要部断面図である。半導体装置の回路領域104には、例えば、pチャネル型の電界効果トランジスタ105pやnチャネル型の電界効果トランジスタ105n等のような素子が形成されている。これらの素子は、半導体基板100上の多層配線層101の配線106によって電気的に接続されている。
【0021】
一方、コイル領域107には、コイル102が形成されている。コイル102は、多層配線層の上部の配線形成用の導体パターン102aで形成されている。コイル102のQ値の低下を小さくするために、コイル102の直下には配線も素子も配置されていない上、回路領域104とコイル領域107との間には、空き領域108が設けられている。空き領域108にも配線も素子も配置されていない。空き領域108の水平距離は、例えば、200〜400μm程度である。このように
図4の対策では、回路領域104とコイル領域107とを離して配置しているので、チップサイズが大きくなる。その結果、半導体装置のコストが高くなる。
【0022】
ところで、本発明者は、2つのコイルを磁気結合(誘導結合)させて電気信号を伝達するアイソレータを備える半導体装置について再度検討した。その結果、上記アイソレータを備える半導体装置では、2つのコイルが近接配置(Near field)されているため、回路特性を左右するのはQ値ではなく結合係数Kであり、
図4の構成にする必要がないことが判明した。
【0023】
また、半導体装置の集積回路を構成する配線は、微細化により配線幅が細くなってきているので、コイルの直下に集積回路用の配線を配置しても、渦電流に対する影響が小さいことが判明した。
図5はアイソレータを備える半導体装置のコイルのQ値のシミュレーションの結果をまとめたグラフ図である。
図5の最も左のモデルMD1は
図1左の結果を示し、
図5の最も右のモデルMD2は
図1右の結果を示している。
図5の中央のモデルMD3は、コイルの直下に、配線幅が数μm〜数十μmの実際の集積回路の配線を模した配線を配置した場合のシミュレーションの結果を示している。この図から、コイルの直下に実際の集積回路用の配線を配置する場合は、コイルのQ値の低下が小さいことが分かる。
【0024】
さらに、本発明者は、アイソレータを備える半導体装置の動作周波数とコイルのQ値との関係について検討した。
図6はアイソレータを備える半導体装置の動作周波数に対するコイルのQ値のシミュレーションの結果を示すグラフ図である。縦軸はコイルのQ値を示し、横軸は動作周波数F(MHz)を示している。アイソレータを備える半導体装置では、
図6の太枠で示すように、数十kHz〜数百MHz程度の動作周波数を使用している。この図から、アイソレータを備える半導体装置の動作周波数では、コイルの直下に素子や配線があっても、コイルのQ値は全く影響を受けないことが分かる。これは、2つのコイル間の距離が、信号の波長よりもはるかに小さいので、2つのコイル間で生じる磁場への影響が極めて小さいからである。
【0025】
(実施の形態1)
<回路の構成例>
図7は本実施の形態1の半導体装置を用いた電子装置の一例の回路図である。
【0026】
図7に示す電子装置ELDは、パッケージPKGと、負荷LODとを有している。パッケージPKGには、2個の半導体チップ(半導体装置)CP1,CP2が収容されている。なお、以下、半導体チップを単にチップという。
【0027】
一方のチップ(第1半導体チップ)CP1内には、制御回路CCと、送信回路TX1と、受信回路RX2と、コイルCL1a,CL1b(CL1:第1コイル)とが設けられている。他方のチップ(第2半導体チップ)CP2内には、受信回路RX1と、送信回路TX2と、コイルCL2a,CL2b(CL2:第2コイル)と、駆動回路DRとが設けられている。
【0028】
送信回路TX1および受信回路RX1は、制御回路CCからの制御信号を駆動回路DRに伝達するための回路である。この送信回路TX1と受信回路RX1との間には、アイソレータ(絶縁素子、トランス、変成器、変換器、磁気結合素子、電磁結合素子)IS1が介在されている。アイソレータIS1は、コイル(インダクタ)CL1a,CL2aを有している。コイルCL1aは、送信回路TX1に電気的に接続され、コイルCL2aは受信回路RX1に電気的に接続されている。これらのコイルCL1a,CL2aは、導体で接続されておらず、電子装置ELDの動作時に磁気結合(誘導結合)される。すなわち、送信回路TX1からコイルCL1a(一次コイル)に信号が送られ電流が流れると、その電流の変化に応じてコイルCL2a(二次コイル)に誘導起電力が発生して誘導電流が流れるようになっている。このため、受信回路RX1は、コイルCL2aに生じた誘導電流により、送信回路TX1から送られた信号に応じた信号を受信できる。これにより、送信回路TX1は、アイソレータIS1(すなわち、磁気結合したコイルCL1a,CL2a)を介して受信回路RX1へ信号を送信することができる。また、受信回路RX1は、アイソレータIS1(すなわち、磁気結合したコイルCL1a,CL2a)を介して、送信回路TX1からの信号を受信できる。したがって、制御回路CCは、送信回路TX1、アイソレータIS1および受信回路RX1を介して、駆動回路DRに信号(制御信号)を伝達できる。
【0029】
一方、送信回路TX2および受信回路RX2は、駆動回路DRからの信号を制御回路CCに伝達するための回路である。この送信回路TX2と受信回路RX2との間には、アイソレータ(絶縁素子、トランス、変成器、変換器、磁気結合素子、電磁結合素子)IS2が介在されている。アイソレータIS2は、コイル(インダクタ)CL1b,CL2bを有している。コイルCL2bは、送信回路TX2に電気的に接続され、コイルCL1bは受信回路RX2に電気的に接続されている。これらのコイルCL1b,CL2bは、導体で接続されておらず、電子装置ELDの動作時に磁気結合(誘導結合)される。すなわち、送信回路TX2からコイルCL2b(一次コイル)に信号が送られ電流が流れると、その電流の変化に応じてコイルCL1b(二次コイル)に誘導起電力が発生して誘導電流が流れるようになっている。このため、受信回路RX2は、コイルCL1bに生じた誘導電流により、送信回路TX2から送られた信号に応じた信号を受信できる。これにより、送信回路TX2は、アイソレータIS2(すなわち、磁気結合したコイルCL1b,CL2b)を介して受信回路RX2へ信号を送信することができる。また、受信回路RX2は、アイソレータIS2(すなわち、磁気結合したコイルCL1b,CL2b)を介して、送信回路TX2からの信号を受信できる。したがって、駆動回路DRは、送信回路TX2、アイソレータIS2および受信回路RX2を介して、制御回路CCに信号を伝達できる。
【0030】
チップCP1とチップCP2とは、電圧レベル(基準電位)が異なっている。例えば、チップCP1は、低電圧(例えば数V〜数十V)で動作または駆動される回路を有する低電圧領域に、後述のボンディングワイヤBWおよびリードLD等を介して接続される。また、チップCP2は、前記低電圧よりも高電圧(例えば100V以上)で動作または駆動される回路(例えば負荷LODや負荷LOD用のスイッチ等)を有する高電圧領域に、後述のボンディングワイヤBWおよびリードLDなどを介して接続される。しかし、チップCP1,CP2間での信号の伝達はアイソレータIS1,IS2を介在しているため、異電圧回路間での信号の伝達が可能である。
【0031】
また、アイソレータIS1,IS2では、コイルCL1aとコイルCL2aとの間やコイルCL1bとコイルCL2bとの間に、大きな電位差が発生する場合がある。逆に言えば、大きな電位差が発生する場合があるため、コイルCL1a,コイルCL2a同士やコイルCL1b,CL2b同士を導体で接続せずに磁気結合させている。このため、コイルCL1aとコイルCL2aおよびコイルCL1bとコイルCL2bとの間の絶縁耐圧をできるだけ高くしておくことが、チップCP1、チップCP2を内蔵するパッケージPKG、あるいはそれを用いた電子装置ELDの信頼性を向上させる上で重要である。
【0032】
アイソレータIS1,IS2(すなわち、コイルCL1,CL2)の動作周波数は、上記した
図6から、例えば、200MHz以下、具体的には、例えば、数10kHz〜100MHz以下、さらに具体的には、例えば、10MHzを使用している。これにより、コイルCL1a,CL1b,CL2a,CL2bの直下に素子や配線等を配置しても、コイルCL1a,CL1b,CL2a,CL2bのQ値は影響を受けない。
【0033】
パッケージPKG内の駆動回路DRは、チップCP1からチップCP2に送信された信号(すなわち、送信回路TX1からアイソレータIS1を介して受信回路RX1に送信された信号)に応じて、負荷LODを駆動させる回路である。駆動回路DRとしては、種々の回路があるが、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のようなパワー系の回路を例示できる。負荷LODはパッケージPKGの外部に設けられている。負荷LODとしては、用途に応じて様々な負荷があるが、モータ(電気自動車やハイブリッド車等に搭載される電動モータ等)を例示できる。
【0034】
なお、
図7では、制御回路CCをチップCP1内に内蔵させる場合について説明したが、他の形態として、制御回路CCをチップCP1,CP2以外のチップに内蔵させることもできる。また、
図7では、駆動回路DRをチップCP2内に内蔵させる場合について説明したが、他の形態として、駆動回路DRをチップCP1,CP2以外のチップに内蔵させることもできる。
【0035】
<信号伝達例>
図8は、信号の伝送例を説明する説明図である。
【0036】
送信回路TX1は、送信回路TX1に入力された方形波の信号SG1を微分波の信号SG2に変調して、アイソレータIS1のコイルCL1a(一次コイル)に送る。この微分波の信号SG2による電流がアイソレータIS1のコイルCL1a(一次コイル)に流れると、それに応じた信号SG3が誘導起電力によりアイソレータIS1のコイルCL2a(二次コイル)に流れる。この信号SG3を受信回路RX1で増幅し、更に方形波に変調することで、方形波の信号SG4が受信回路RX1から出力される。これにより、送信回路TX1に入力された信号SG1に応じた信号SG4を、受信回路RX1から出力できる。
【0037】
なお、送信回路TX2から受信回路RX2への信号の伝達も同様である。また、
図8では、送信回路TX1から受信回路RX1への信号の伝達の一例を挙げたが、これに限定されず種々変更可能であり、磁気結合されたコイル(一次コイルおよび二次コイル)を介して信号を伝達する手法であれば良い。
【0038】
<パッケージの構成例>
次に、本実施の形態1の半導体装置(パッケージPKG)について
図9〜
図11を参照して説明する。
図9は本実施の形態1の半導体装置の断面図、
図10は
図9の半導体装置内のチップの平面図、
図11は
図4の場合と本実施の形態1の場合とで比較して示したチップの平面図である。なお、
図9では図面を見易くするため、封止体MBのハッチングを省略した。また、
図10および
図11では、1個のチップに2個のチップCP1,CP2の符号を付した。
【0039】
図9に示すように、パッケージPKGは、2個のチップCP1,CP2と、絶縁フィルムISFと、ダイパッドDP1,DP2と、複数のリードLD(LD1,LD2)と、ボンディングワイヤ(以下、単にワイヤという)BWと、封止体MBとを有している。
【0040】
2個のチップCP1,CP2は、それらの間に絶縁フィルムISFを介して、互いに対向した状態(平面視で一部を重ねた状態)で、封止体MB内に収容されている。封止体MBは、例えば、エポキシ樹脂等のような熱硬化性樹脂からなり、その厚さと交差する平面形状(外形形状)は、例えば、矩形(四角形)状に形成されている。この封止体MBにより、チップCP1,CP2、ダイパッドDP1,DP2、複数のリードLD(LD1,LD2)および複数のワイヤBWが封止され、電気的および機械的に保護されている。なお、封止体MB内にフィラーなどを含ませることもできる。
【0041】
図9の下段側のチップCP1の半導体基板(第1半導体基板)SB1は、素子形成面である主面(第1面)とその反対側の裏面(第2面)とを有している。チップCP1は、半導体基板SB1の主面を上に向け、かつ、半導体基板SB1の裏面をダイパッドDP1に向けた状態で、ダイボンド材(図示せず)を介してダイパッドDP1に搭載されている。ダイパッドDP1は、例えば、銅(Cu)または銅合金等の金属材料からなる。
【0042】
チップCP1の半導体基板SB1の主面と絶縁フィルムISFとの間には、多層配線層(第1多層配線層)WL1が形成されている。多層配線層WL1には集積回路を形成する配線が形成されている。この多層配線層WL1の上層の配線層(ここでは絶縁フィルムISFに最も近い最上の配線層)には、複数のボンディングパッド(以下、単にパッドという)PD1(
図9および
図10参照)と、コイルCL1(CL1a,CL1b)とが形成されている。
【0043】
パッドPD1は、チップCP1に形成された集積回路の引出電極であり、ワイヤBWを通じてリードLD1と電気的に接続されている。すなわち、ワイヤBWの一端はパッドPD1と接合され、ワイヤBWの他端はリードLD1のインナーリード部と接合されている。ワイヤBWは、導電性の接続部材(接続用部材)であるが、より特定的には導電性のワイヤであり、例えば金(Au)線または銅(Cu)線等のような金属細線からなる。ワイヤBWは、封止体MB内に封止されており、封止体MBから露出されない。
【0044】
各リードLDは、ダイパッドDP1と同じ導体で形成されており、好ましくは銅(Cu)または銅合金等のような金属材料からなる。各リードLDは、リードLDのうちの封止体MB内に位置するインナーリード部と、リードLDのうちの封止体MBの外に位置するアウタリード部とを有している。隣り合うリードLDのインナーリード部間は、封止体MBを構成する材料により満たされている。リードLDのアウタリード部は、パッケージPKGの外部接続用端子部(外部端子)として機能する部分であり、封止体MBの側面から封止体MBの外に突出し、ガルウィング状に成形されている。
【0045】
コイル(第1コイル)CL1は、例えば、パッドPD1と同じ配線層(ここでは最上の配線層)に形成されている。そして、本実施の形態1では、
図9に示すように、コイルCL1の直下に回路領域(第1回路領域)CARの一部(領域CAR1)が配置されている。すなわち、
図10に示すように、コイル領域CLR1(コイルCL1)は、回路領域CARの一部(
図9の領域CAR1)に平面視で重なるように配置されている。回路領域CARおよび領域CAR1には、上記した制御回路CC、送信回路TX1または受信回路RX2あるいはアイソレータIS1,IS2のコントロール回路のような他の回路等、チップCP1内の集積回路を構成する回路が配置されている。このような配置により、
図11に示すように、上段のチップCP0(
図4の回路領域104をコイル領域107から離して配置した場合)に比べて、下段の本実施の形態1のチップCP1のサイズを大幅に小さくすることができる。このため、パッケージPKGも小さくすることができる。なお、領域CAR1に配置される回路については後述する。
【0046】
一方、
図9の上段側のチップCP2の半導体基板(第2半導体基板)SB2は、素子形成面である主面(第3面)とその反対側の裏面(第4面)とを有している。チップCP2は、半導体基板SB2の主面をチップCP1の半導体基板SB1の主面に向け、かつ、半導体基板SB2の裏面をダイパッドDP2に向けた状態で、ダイボンド材(図示せず)を介してダイパッドDP2に搭載されている。ダイパッドDP2の材料は、ダイパッドDP1と同じである。
【0047】
チップCP2の半導体基板SB2の主面と絶縁フィルムISFとの間には、多層配線層(第2多層配線層)WL2が形成されている。多層配線層WL2には集積回路を形成する配線が形成されている。この多層配線層WL2の上層の配線層(ここでは絶縁膜フィルムISFに最も近い最上の配線層)には、複数のパッドPD2(
図9および
図10参照)と、コイルCL2(上記コイルCL2a,CL2b)とが形成されている。
【0048】
パッドPD2は、チップCP2に形成された集積回路の引出電極であり、ワイヤBWを通じてリードLD2と電気的に接続されている。すなわち、ワイヤBWの一端はパッドPD2と接合され、ワイヤBWの他端はリードLD2のインナーリード部と接合されている。
【0049】
各リードLD2の材料は、ダイパッドDP1,DP2と同じである。各リードLD2は、リードLD1と同様に、インナーリード部とアウタリード部とを有している。隣り合うリードLD2のインナーリード部間は、封止体MBを構成する材料により満たされている。リードLD2のアウタリード部は、パッケージPKGの外部接続用端子部(外部端子)として機能する部分であり、封止体MBの側面から封止体MBの外に突出し、リードLD1と同じ方向に折り曲げられ、ガルウィング状に成形されている。
【0050】
コイル(第2コイル)CL2は、パッドPD2と同じ配線層(ここでは最上の配線層)に形成されている。そして、本実施の形態1では、
図9に示すように、コイルCL2の直下(
図9では直上)に回路領域(第2回路領域)CBRの一部(領域CBR1)が配置されている。すなわち、
図10に示すように、コイル領域CLR2(コイルCL2)は、回路領域CBRの一部(
図9の領域CBR1)に平面視で重なるように配置されている。回路領域CBRおよび領域CBR1には、上記した送信回路TX2または受信回路RX1あるいはアイソレータIS1,IS2のコントロール回路のような他の回路等、チップCP2内の集積回路を構成する回路が配置されている。このような配置により、
図11に示すように、上段のチップCP0(
図4の回路領域104をコイル領域107から離して配置した場合)に比べて、下段の本実施の形態1のチップCP2のサイズを大幅に小さくすることができる。このため、パッケージPKGも小さくすることができる。なお、領域CBR1に配置される回路については後述する。
【0051】
このように本実施の形態1では、チップCP1,CP2の各々のサイズを小さくすることができるので、半導体装置を小型にすることができる。このため、半導体装置のコストを低減することができる。
【0052】
<チップの構成例>
次に、チップCP1,CP2の構成例について
図12〜
図14を参照して説明する。
図12は半導体装置を構成する2個のチップの概略断面図、
図13はコイルの一例の平面図、
図14は
図13のI−I線の断面図である。なお、
図12では図面を見易くするため多層配線層WL1,WL2の絶縁層のハッチングを省略した。また、
図12では、
図7の一方の一対のコイルCL1,CL2を示している。
【0053】
図12に示すように、半導体基板SB1,SB2は、例えば、p型のシリコン(Si)単結晶からなり、その各々の主面には、例えば、溝型の分離部STIが形成されている。なお、ここでは、半導体基板としてシリコン単結晶を例示したが、他の形態として、半導体基板として、SOI(Silicon On Insulator)基板や炭化シリコン(SiC)基板等を用いることもできる。
【0054】
この半導体基板SB1,SB2の各々の主面において分離部STIで囲まれた活性領域には、例えば、pチャネル型の電界効果トランジスタTpおよびnチャネル型の電界効果トランジスタTn等のような集積回路素子が形成されている。なお、ここでは、集積回路素子として電界効果トランジスタを例示したが、この他、容量素子、抵抗素子、メモリ素子または他の構成のトランジスタを形成しても良い。
【0055】
pチャネル型の電界効果トランジスタTpは、ゲート電極Gpと、ゲート絶縁膜Gpiと、ソースおよびドレイン用のp型の半導体領域PR,PRとを有している。nチャネル型の電界効果トランジスタTnは、ゲート電極Gnと、ゲート絶縁膜Gniと、ソースおよびドレイン用のn型の半導体領域NR,NRとを有している。
【0056】
ゲート電極Gp,Gnは、例えば、低抵抗な多結晶シリコン膜からなる。ゲート絶縁膜Gpi,Gniは、例えば、酸化シリコン膜からなる。p型の半導体領域PRは、半導体基板SB1,SB2のnウエルNW内にホウ素等のような不純物が導入されることで形成されている。n型の半導体領域NRは、半導体基板SB1,SB2のpウエルPW内にリンまたはヒ素等のような不純物が導入されることで形成されている。
【0057】
多層配線層WL1,WL2は、例えば、4層の配線層を有している。すなわち、多層配線層WL1,WL2には、配線層と絶縁層とが、半導体基板SB1,SB2の厚さ方向に沿って交互に積層されている。多層配線層WL1,WL2の各々の複数の配線層には配線Wが配置されている。配線Wの幅は、数μm〜数十μm(コイルCL1,CL2に最も近いもので、例えば、10μm〜20μm)程度である。
【0058】
また、第1配線層の配線Wと、半導体基板SB1,SB2およびゲート電極Gp,Gnとの間にはプラグWpが配置されている。プラグWpは、第1配線層の配線Wと半導体基板SB1,SB2の半導体領域NR,PR等とを電気的に接続し、第1配線層の配線Wとゲート電極Gp,Gn等とを電気的に接続する配線部材であり、例えば、タングステン等のような金属材料からなる。また、それ以外の配線層間にはビア部Wvが配置されている。ビア部Wvは、異なる配線層の配線W,W間を電気的に接続する配線部材であり、例えば、アルミニウムまたは銅等のような金属材料からなる。ビア部Wvは、ビア部Wvより上位の配線層の配線Wの一部で形成することもできる。
【0059】
これらの配線W、プラグWpおよびビア部Wvによって上記した電界効果トランジスタTp,Tn等のような集積回路素子同士を互いに電気的に接続することで、上記した種々の回路が形成されている。多層配線層WL1,WL2の絶縁層を構成する絶縁膜IFは、例えば、酸化シリコンからなる。なお、ここでは、多層配線層WL1,WL2が4層の場合を例示したが、これに限定されるものではなく種々変更可能であるが、3層以上が好ましい。配線層が3層以上あれば、コイルCL1,CL2や配線Wのレイアウトを容易にすることができる。
【0060】
多層配線層WL1,WL2の最上配線層には、上記したコイルCL1,CL2が形成されている。コイルCL1,CL2を構成する導体パターンCLP1,CLP2は、例えば、パッドPD1,PD2と同時に形成される。このため、コイルCL1,CL2の導体パターンCLP1,CLP2は、パッドPD1,PD2と同じ導体で形成されており、好ましくは、アルミニウム(Al)または銅等のような金属材料からなる。
【0061】
パッドPD1,PD2およびコイルCL1,CL2は、絶縁膜IFの上部の表面保護膜PF1,PF2によって覆われている。表面保護膜PF1,PF2は、例えば、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜とを下位層から順に積層することで構成されている。表面保護膜PF1,PF2の一部には、パッドPD1,PD2の一部が露出される開口部KA1,KA2が形成されている。上記ワイヤBWの一端部は、開口部KA1,KA2を通じてパッドPD1,PD2に接合される。
【0062】
絶縁フィルムISFは、例えば、半導体基板SB1の多層配線層WL1上に貼り付けられた絶縁フィルムISF1と、半導体基板SB2の多層配線WL2上に貼り付けられた絶縁フィルムISF2とを有している。絶縁フィルムISF1,ISF2同士も各々の接触部で互いに接着されている。絶縁フィルムISF1,ISF2は、例えば、ポリイミド等のような樹脂材料からなり、その積層厚さは、例えば、数十μm〜100μmとされている。この絶縁フィルムISFの材料および厚さ等より、コイルCL1,CL2間の耐圧が確保される。ここでは、絶縁フィルムISFを、2枚の絶縁フィルムISF1,ISF2で構成したが、1枚の絶縁フィルムで構成することもできる。
【0063】
コイルCL1,CL2は、
図13に示すように、例えば、平面視で渦巻状に形成されている。コイルCL1,CL2は、各々を対向させたときに、その各々の巻方向が同方向になるように配置されている。また、コイルCL1,CL2は、その各々の導体パターンCLP1,CLP2同士が平面視で重なるように配置されている。
【0064】
コイルCL1,CL2の間には、表面保護膜PF1,PF2および絶縁フィルムISF1,ISF2の積層絶縁膜(第1絶縁膜)が介在されており、コイルCL1,CL2同士は絶縁されているが、アイソレータIS1,IS2の動作時に磁気的に結合されるようになっている。コイルCL1,CL2の対向間隔は、例えば、5μm〜20μm程度である。コイルCL1,CL2の直径は、例えば、100μm〜500μmである。また、コイルCL1,CL2の巻き数は、例えば、11〜21巻(具体的には、例えば、15巻)である。コイルCL1,CL2の個々の導体パターンCLP1,CLP2の幅(短方向寸法)は、例えば、数μm程度である。コイルCL1,CL2の導体パターンCLP1,DLP2の隣接ピッチは、例えば、数μm〜数十μm程度である。
【0065】
<コイル領域と平面視で重なる回路の例>
次に、コイル領域CLR1,CLR2(コイルCL1,CL2)に平面視で重ねて配置される回路について
図9、
図10、
図15および
図16を参照して説明する。
【0066】
図9および
図10に示すように、コイル領域CR1,CLR2(コイルCL1,CL2)と平面視で重なる領域CAR1,CBR1に配置する回路としては、例えば、デジタル回路(デジタル回路を構成する集積回路素子や配線Wの集合体の全体または一部)が好ましい。これは、デジタル回路の場合、ある程度の信号レベルの変動を無視できるからである。
【0067】
ただし、電子装置ELDに高い精度が求められない場合は、相対的に感度の低いアナログ回路等をコイル領域CLR1,CLR2と平面視で重なる領域CAR1,CBR1に配置することもできる。この場合、相対的に感度の高いアナログ回路等はコイル領域CLR1,CLR2と平面視で重ならない領域に配置する。一方、電子装置ELDに高い精度が求められる場合は、感度の低いアナログ回路も感度の高いアナログ回路と同様にコイル領域CLR1,CLR2と平面視で重ならない領域に配置することが好ましい。
【0068】
ここで、
図15および
図16はコイル領域CLR1,CLR2と平面視で重なる領域CAR1,CBR1に配置することが可能なアナログ回路の一例の回路図である。
【0069】
図15はアクティブミラークランプ回路を内蔵するドライバ回路DRCの例である。ドライバ回路DRCは、ハイサイドのトランジスタHTと、これに直列に接続されたローサイドのトランジスタLTとを駆動する回路である。トランジスタHT,LTは、例えば、IGBTで構成されている。ドライバ回路DRCは、ハイサイドの駆動回路HDと、ローサイドの駆動回路LDとを備えるとともに、アクティブミラークランプ回路MCを備えている。アクティブミラークランプ回路MCは、ローサイドのトランジスタLTのゲート−コレクタ間の容量結合等によるローサイドのトランジスタLTのセルフターンオンを防ぐ回路である。すなわち、ハイサイドのトランジスタHTがオンすると、そのトランジスタHTのエミッタ電位およびローサイドのトランジスタLTのコレクタ電位が上昇し、dv/dtが印加される。このとき、ローサイドのトランジスタLTのコレクタ−ゲート間の寄生容量(ミラー容量Cm)およびゲート抵抗Rbを介して電流Icgが流れ込むことでローサイドのトランジスタLTのゲート電位が上昇し、トランジスタLTのしきい値電圧を超えるとハイサイド/ローサイドのトランジスタHT,LTがアーム短絡する。その対策として、アクティブミラークランプ回路MCは、ミラー容量Cmを流れる電流IcgをローサイドのトランジスタLTのエミッタにバイパスし、トランジスタLTのゲート電位の上昇を抑制する。このようなアクティブミラークランプ回路MCは、上記コイル領域CLR1,CLR2と平面視で重ねて配置できる。すなわち、アクティブミラークランプ回路MCは、その全体または一部を回路領域CAR,CBRの領域CAR1,CBR1に配置できる。
【0070】
図16はソフトターンオフ回路を備えるドライバ回路の例である。
図16は
図15のドライバ回路DRCの一部を示している。IGBTは短時間内での保護が必要であるが、IGBTのターンオフ時間は極めて早いので通常のドライブ信号で過電流を遮断するとコレクタ電圧の跳ね上がりが大きくなり、IGBTが過電圧で破壊する可能性がある。ソフトターンオフ回路SFは、過電流等のような異常状態を検知した場合、IGBT(ローサイドのトランジスタLT)のゲート電圧をゆっくりと下げてオフさせる回路である。ここでは、ソフトターンオフ回路SFが、バッファ回路BFと電界効果トランジスタTFとを有している。バッファ回路BFの入力は、制御回路CCと電気的に接続されている。バッファ回路BFの出力は、電界効果トランジスタTFのゲート電極に接続されている。電界効果トランジスタTFの出力は、抵抗Rb2を介してローサイドのトランジスタLTのゲート電極に電気的に接続されている。このようなソフトターンオフ回路SFは、上記コイル領域CLR1,CLR2と平面視で重ねて配置できる。すなわち、ソフトターンオフ回路SFは、その全体または一部を回路領域CAR,CBRの領域CAR1,CBR1に配置できる。
【0071】
<半導体装置の製造方法の例>
次に、本実施の形態の半導体装置の製造方法の一例を
図17〜
図20を参照して説明する。
図17〜
図20は半導体装置を構成するチップの製造工程中の要部断面図である。なお、チップCP1,CP2の製造方法は同じなので、チップCP1の製造方法を一例として説明する。また、この段階の半導体基板SB1は、平面視で略円形状の半導体ウエハである。
【0072】
まず、
図17に示すように、p型のシリコン(Si)単結晶からなる半導体基板SB1の主面上にnウエルNWおよびpウエルPWを形成する。nウエルNWは、半導体基板SB1に、例えば、リンまたはヒ素をイオン注入法等により導入することで形成する。pウエルPWは、半導体基板SB1に、例えば、ホウ素をイオン注入法等により導入することで形成する。
【0073】
続いて、半導体基板SB1の主面に溝型の分離部STIを形成する。その後、その分離部STIで囲まれた活性領域にpチャネル型の電界効果トランジスタTpおよびnチャネル型の電界効果トランジスタTn等のような集積回路素子を形成する。本実施の形態1では、コイル領域CLR1に平面視で重なる領域にも電界効果トランジスタTp,Tn等のような集積回路素子が形成される。
【0074】
次いで、
図18に示すように、半導体基板SB1の主面上に多層配線層WL1を形成する。
図18では、最上配線層の1つ下位の配線層までを形成したところを示している。本実施の形態1では、コイル領域CLR1に平面視で重なる領域にも配線Wが形成される。
【0075】
続いて、多層配線層WL1の最上の配線層上に、例えば、アルミニウム等のような導体膜をスパッタリング法等で堆積した後、その導体膜をリソグラフィ技術およびエッチング技術によりパターニングする。これにより、
図19に示すように、パッドPD1を形成するとともに、コイル領域CLR1にコイルCL1(導体パターンCLP1)を形成する。なお、配線WやコイルCL1をダマシン法で形成することもできる。すなわち、絶縁膜に形成された溝内に導体膜を埋め込むことで配線WやコイルCL1を形成することもできる。
【0076】
その後、
図20に示すように、パッドPD1およびコイルCL1を覆うように多層配線層WL1の最上層に表面保護膜PF1を堆積する。表面保護膜PF1は、例えば、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜とを下位層から順に積層することで形成されている。その後、表面保護膜PF1にパッドPD1等の一部が露出される開口部KA1を形成する。
【0077】
<実施の形態1の変形例1>
次に、前記実施の形態1の変形例1のチップCP1,CP2の構成例について
図21を参照して説明する。
図21は変形例1の半導体装置を構成する2個のチップの概略断面図である。なお、
図21では、
図12と同様に、封止体MB、リードLDおよびワイヤBWを省略しているが、これらの構成は前記実施の形態1の
図9と同じである。
【0078】
この変形例1では、チップCP1,CP2において、コイルCL1,CL2が配置された最上の配線層の直下の配線層(1つ下位の配線層)に、シールドパターン(第1シールドパターン、第2シールドパターン)SD1,SD2が配置されている。シールドパターンSD1,SD2は、同じの配線層の配線Wと同一形成工程時に同一材料で形成されている。シールドパターンSD1,SD2は、例えば、平面視でコイルCL1,CL2を覆うようにベタパターンで形成されている。このようなシールドパターンSD1,SD2を設けたことにより、コイルCL1,CL2と直下の配線層の配線Wとの寄生容量を小さくすることができるので、コイルCL1,CL2(アイソレータIS1,IS2(
図7参照))の回路特性を安定化させることができる。なお、回路特性としては、信号伝達速度やノイズ耐性を例示できる。
【0079】
また、シールドパターンSD1,SD2は、配線Wを通じて基準電位(例えば、グランドGNDで、0V)に電気的に接続されている。シールドパターンSD1,SD2は、フローティング状態でもコイルCL1,CL2の回路特性を向上させることができるが、基準電位と電気的に接続されることで、コイルCL1,CL2(アイソレータIS1,IS2)の回路特性をさらに安定化させることができる。
【0080】
また、シールドパターンSD1,SD2の平面視での範囲はコイルCL1,CL2の直径より大きい。シールドパターンSD1,SD2の平面視での範囲をコイルCL1,CL2の直径と同じにしても良いが、コイルCL1,CL2の外周端部より外方に数十μm程度の長さXだけ大きくすることで、コイルCL1,CL2(アイソレータIS1,IS2)の回路特性をより一層安定化させることができる。これ以外の構成および効果は前記実施の形態1と同じである。
【0081】
なお、シールドパターンは一方のチップのみに設けても良い。すなわち、一方のチップにはシールドパターンを設け、他方のチップにはシールドパターンを設けないようにしても良い。
【0082】
<実施の形態1の変形例2>
次に、実施の形態1の変形例2のチップCP1,CP2の構成例について
図22を参照して説明する。
図22は変形例2の半導体装置を構成する2個のチップの概略断面図である。
図22では、
図12と同様に、封止体MB、リードLDおよびワイヤBWを省略しているが、これらの構成は前記実施の形態1の
図9と同じである。
【0083】
この変形例2では、チップCP1,CP2において、コイルCL1,CL2が配置された最上配線層の直下の配線層(1つ下位の配線層)に、配線禁止領域(第1配線禁止領域、第2配線禁止領域)PA1,PA2が配置されている。配線禁止領域PA1,PA2は、平面視でコイルCL1,CL2の全域を覆うように配置されている。この配線禁止領域PA1,PA2には、回路を構成する配線Wが配置されていない。なお、配線禁止領域PA1,PA2が配置された配線層においてもコイルCL1,CL2と平面視で重ならない領域には配線Wが配置されている。
【0084】
このような配線禁止領域PA1,PA2を設けたことにより、コイルCL1,CL2の1つ下位の配線層に配線Wがある場合に比べて、コイルCL1,CL2とそれらの直下の配線層の配線Wとの距離を長くすることができる。配線容量は、配線間距離に反比例することが分かっているので、コイルCL1,CL2とそれらより下位の配線層の配線Wとの距離を長くすることで、コイルCL1,CL2とそれらより下位の配線層の配線Wとの配線容量を低減できる。したがって、コイルCL1,CL2(アイソレータIS1,IS2)の回路特性を安定化させることができる。
【0085】
ここで、
図23は多層配線層の配線構造のいくつかのモデルを示している。ここでは6層の配線層を例示している。6層目は最上配線層で配線Wmが配置されている。モデルMD5は、最上配線層の配線Wmの直下の配線層(1つ下位の配線層)に配線W5がある場合を示している。モデルMD6は、最上配線層の配線Wmの1つ下位の配線層(5層目)に配線が無く、2つ下位の配線層(4層目)に配線W4がある場合を示している。モデルMD7は、4層目および5層目の配線層に配線が無く、3層目に配線W3がある場合を示している。また、モデルMD8は、3層目〜5層目の配線層に配線が無く、2層目に配線W2がある場合を示し、モデルMD9は、2層目〜5層目の配線層に配線が無く、1層目に配線W1がある場合を示している。
【0086】
図24は
図23の各モデルMD5〜MD9の配線容量のシミュレーション結果を示している。縦軸は配線容量Cwを示している。この
図24からモデルMD5(最上配線層の配線Wmの1つ下位の配線層に配線W5がある場合)は配線容量が著しく大きいことが分かる。これに比べて、モデルMD6〜MD9(最上配線層の配線Wmの1つ下位の配線層に配線が無い場合)は、配線容量に大きな違いが無いことが分かる。すなわち、対象の配線Wmの1つ下位の配線層の配線を無くせば配線容量が小さくなることが分かる。したがって、コイルCL1,CL2の1つ下位の配線層の配線のみを無くすことでコイルCL1,CL2と配線Wとの配線容量を低減できる上、コイルCL1,CL2の各々の2つ下位以降の配線層に配線Wを配置して回路を形成することができる。
【0087】
また、配線禁止領域PA1,PA2の平面視での範囲はコイルCL1,CL2の直径より大きい。配線禁止領域PA1,PA2の平面視での範囲をコイルCL1,CL2の直径と同じにしても良いが、コイルCL1,CL2の外周端部より外方に数十μm程度の長さXだけ大きくすることで、コイルCL1,CL2(アイソレータIS1,IS2)の回路特性をより一層安定化させることができる。これ以外の構成および効果は前記実施の形態1と同じである。
【0088】
なお、配線禁止領域は一方のチップのみに設けても良い。すなわち、一方のチップには配線禁止領域を設け、他方のチップには配線禁止領域を設けないようにしても良い。また、変形例1,2を組み合わせることもできる。すなわち、一方のチップにシールドパターンを設け、他方のチップに配線禁止領域を配置することもできる。
【0089】
(実施の形態2)
図25は本実施の形態2の半導体装置を用いた電子装置の他の例の回路図である。
【0090】
図25に示す電子装置ELDでは、チップCP3の内部(多層配線層)にアイソレータIS1が設けられ、チップCP4の内部(多層配線層)にアイソレータIS2が設けられている。それ以外は、
図7と同じである。なお、ここでは、各々のチップCP3,CP4を半導体装置とみなすことができる。
【0091】
次に、
図26は本実施の形態2のパッケージの断面図である。なお、
図26では図面を見易くするため、封止体MBのハッチングを省略した。
【0092】
本実施の形態2では、パッケージPKGの封止体MB内のチップCP3,CP4が積み重ねられておらず、同一面内に並んだ状態で配置されている。すなわち、チップCP3,CP4は、その各々の半導体基板SB3,SB4の主面(第5面)を上に向け、かつ、その各々の半導体基板SB3,SB4の主面の反対側の裏面(第6面)をダイパッドDP1,DP2に向けた状態で、ダイパッドDP1,DP2上にダイボンド材(図示せず)を介して搭載されている。チップCP3,CP4の各々の回路同士はワイヤBWを通じて電気的に接続されている。これ以外の構成は、
図9と同じである。
【0093】
次に、
図27は本実施の形態2の半導体装置を構成するチップの概略断面図である。なお、ここでは、チップCP3,CP4のアイソレータの構造は同じなので、チップCP3の構造を説明する。
【0094】
本実施の形態2では、半導体基板SB3の主面(第5面)上に多層配線層WL3が設けられている。この多層配線層WL3は、例えば、上記と同様の多層配線層WL1と、その上位の再配線層RWLとを有している。
【0095】
ここでは、例えば、多層配線層WL1の第3配線層に、アイソレータIS1の一次側のコイル(第3コイル)CL1が形成されている。このため、コイルCL1は、第3配線層の配線Wと同一形成工程時に同一材料で形成されている。これ以外のコイルCL1の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0096】
また、多層配線層WL1において第4配線層には、第4配線層の配線Wの一部であるパッドPD1が形成されている。そして、多層配線層WL1の絶縁膜IF上には、パッドPD1等を覆うように表面保護膜PF1が形成されており、この表面保護膜PF1上に、再配線層RWLが形成されている。すなわち、表面保護膜PF1上に、絶縁膜LFを介して再配線RWが形成されている
絶縁膜LFは、例えば、ポリイミド(polyimide)膜からなる。ポリイミド膜は、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子であり、有機絶縁膜の一種である。絶縁膜LFとしては、ポリイミド膜の他に、エポキシ系、PBO系、アクリル系、WRP系の樹脂等、他の有機絶縁膜を用いることもできる。ポリイミド系樹脂は、200℃以上の高耐熱が求められるデバイスに好適に使用される有機樹脂であるが、材料の熱膨張係数や延性等の機械的強度、キュア温度等に応じて使い分けることができる。
【0097】
再配線RWは、パッドPD1をチップCP3の所望の領域まで引き出す配線である。すなわち、再配線RWの一端側は、絶縁膜LFおよび表面保護膜PF1に穿孔された開口部KA1を通じて、パッドPD1と接合されている。一方、再配線RWの他端側は、パッドPD1と平面視で重ならない所望の領域まで延在している。再配線RWは、例えば、下地金属膜上に、銅等のような金属膜が積層されることで構成されている。下地金属膜は、例えば、ニッケル(Ni)膜と該ニッケル(Ni)膜上の金(Au)膜との積層膜からなる。本実施の形態2では再配線層RWLが最上配線層になる。
【0098】
また、本実施の形態2では、パッドPD1や再配線RWの配置領域から離れた位置(すなわち、平面視で重ならない位置)にコイル領域CLRが配置されている。そして、このコイル領域CLRにおいて再配線層RWLには、アイソレータIS1の二次側のコイル(第4コイル)CL2が形成されている。このコイルCL2の導体パターンCLP2は、再配線RWと同一形成工程時に同一材料で形成されている。これ以外のコイルCL2の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0099】
また、再配線層RWLのコイルCL2は、前記実施の形態1と同様に、多層配線層WL1のコイルCL1に対向した状態で配置されている。ただし、コイルCL1,CL2は、前記実施の形態1と異なり、同じチップCP3の異なる配線層に形成されている。すなわち、コイルCL1,CL2の間には、チップCP3内の複数の絶縁膜が介在されている。なお、前記実施の形態1と同様に、コイルCL1,CL2同士は絶縁膜で絶縁されているが、アイソレータIS1の動作時に磁気的に結合されるようになっている。
【0100】
ここで、上記のようにアイソレータでは、一次コイルと二次コイルとの間に、大きな電位差が発生する場合があるので、一次コイルと二次コイルとの間の絶縁耐圧をできるだけ高くしておくことが重要である。特に、同一チップ内にアイソレータ(すなわち、一次コイルと二次コイル)を形成する場合は、チップ自体の薄型化が進む傾向にあるので、一次コイルと二次コイルとの間の絶縁膜の厚さを確保するのが難しく、一次コイルと二次コイルとの間の絶縁耐圧を確保するための工夫が必要である。
【0101】
そこで、本実施の形態2では、二次側のコイルCL2を再配線層RWLに形成することで、コイルCL1,CL2の間の絶縁耐圧を確保できるようにしている。すなわち、本実施の形態2では、コイルCL1,CL2の間に、絶縁膜IFの一部(第3配線層の配線Wを覆う酸化シリコン膜)と、表面保護膜PF1(酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層膜)と、絶縁膜LF(ポリイミド膜等のような樹脂膜)との積層絶縁膜(第2絶縁膜)が介在されている。これにより、コイルCL1,CL2の間の距離を確保できる上、コイルCL1,CL2間に耐性の高い絶縁膜(ポリイミド膜等のような樹脂膜)を介在させることができるので、コイルCL1,CL2間の絶縁耐圧を確保できる。
【0102】
また、本実施の形態2でも、コイルCL1,CL2が配置されたコイル領域CLRと、回路領域CAR(
図9および
図10等参照)の一部(領域CAR1)とが平面視で重なっている。これにより、前記実施の形態1と同様に、チップCP3のサイズを小さくすることができる。
【0103】
絶縁膜LF上には、再配線RWおよびコイルCL2を覆うように、絶縁性の表面保護膜PF3が形成されている。この表面保護膜PF3により、再配線RWおよびコイルCL2が保護されている。この表面保護膜PF3が、チップCP3の最表面の膜となる。表面保護膜PF3としては、樹脂膜が好ましく、例えば、ポリイミド膜を好適に用いることができる。
【0104】
この表面保護膜PF3の一部には、開口部KA3が形成されており、その開口部KA3から再配線RWの表面の一部(パッドPD1から離れた側の表面の一部)が露出されている。この開口部KA3から露出される再配線RWの一部がパッドPD3になっている。このパッドPD3にワイヤBWの一端が接合される。なお、表面保護膜PF3は、省略もできるが、表面保護膜PF3を設けることにより、再配線RWとコイルCL2とを表面保護膜PF3で保護できるため、信頼性を向上させることができる上、チップCP3の取扱いを容易にすることができる。
【0105】
本実施の形態2の場合も、前記実施の形態1の変形例1と同様に、チップCP3,CP4の多層配線層WL1,WL2の一次側のコイルCL1の1つ下位の配線層にシールドパターンを設けても良い。また、本実施の形態2の場合も、前記実施の形態1の変形例2と同様に、チップCP3,CP4の多層配線層WL1,WL2の一次側のコイルCL1の1つ下位の配線層に配線禁止領域を設けても良い。
【0106】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。