(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865645
(24)【登録日】2021年4月8日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物およびシート
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20210419BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20210419BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
C08F290/06
C08J5/18
C08G18/67 010
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-123810(P2017-123810)
(22)【出願日】2017年6月26日
(65)【公開番号】特開2019-6897(P2019-6897A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 正章
(72)【発明者】
【氏名】青谷 光
【審査官】
牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−24168(JP,A)
【文献】
特開2012−7028(JP,A)
【文献】
特開2016−89156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ポリ)エチレングリコール(a1)と脂肪族環式ジイソシアネート(a2)とヒドロキシル(メタ)アクリレート(a3)との反応で得られる重量平均分子量が1,000〜10,000の2官能ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と、反応性希釈モノマー(B)と、光重合開始剤(C)とを含み、前記(B)がメチルメタクリレートを含むことを特徴とする成形に用いるシートに塗布される光硬化樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)が更に極性官能基を持つ(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする請求項1記載の成形に用いるシートに塗布される光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)の配合量が、組成物の全固形分に対し35〜70重量%であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の成形に用いるシートに塗布される光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)の配合量が、組成物の全固形分に対し25〜60重量%であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の成形に用いるシートに塗布される光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形に用いるシートに塗布される光硬化性樹脂組成物を重合硬化させて得られる成型用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体成形加工に適したシートを形成するための光硬化性樹脂組成物、およびそれを用いた成形用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系の光硬化型樹脂は、プラスチックフィルムやプラスチック成型物表面に特別な性能を付与するために多くの分野で使用されている。例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗布して高硬度を付与したハードコートフィルムは、タッチパネル用フィルムや成形用フィルムとして大量に使用されている。
【0003】
これらのなかで特に成型用としては、フィルム表面に絵柄を印刷後、加熱により軟化させた状態で3次元成形を行うインサートフィルムが良く知られているが、フィルムに塗布されたハードコート樹脂層を硬くすると、立体形状に加工する際に曲面においてマイクロクラックが入りやすくなり、加工形状には制約があった。そのため表面硬度と成型性を両立させるインサート成形用のハードコート樹脂として例えば、トリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマーと平均一次粒子径が80〜500nmの有機微粒子を含むハードコート剤が提案されている(特許文献1)。
【0004】
こうした成形用途に適したハードコート剤を選定することで、加工面での制約はある程度解消するものの、曲面のRが小さい部分ではやはりマイクロクラックが入る場合があり、更なる改善策として成型性に優れるPMMA(ポリメチルメタクリレート)系アクリル樹脂を成形用シートとして使用する場合もある。しかしながら、この場合は成型物の表面にアクリル樹脂が露出しているため、例えば車載内装用途で長期間使用された場合、ハンドクリームや日焼け止めなどの化粧品が付着した部分が経時的に白化するなどの問題が新たに発生する場合があった。そのため、アクリル樹脂シートの表層に更に耐薬品層を塗布する等の対策を行うこともあるが、こうした対策はコストアップの要因となるため、表面にコーティングをせずとも充分な耐薬品性を有する成型性に優れた成形シートが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4848200号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
請求項1記載の発明は、
(ポリ)エチレングリコール(a1)と脂肪族環式ジイソシアネート(a2)とヒドロキシル(メタ)アクリレート(a3)との反応で得られる重量平均分子量が1,000〜10,000の2官能ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と、反応性希釈モノマー(B)と、光重合開始
剤(C)とを含
み、前記(B)がメチルメタクリレートを含むことを特徴とする成形
に用いるシート
に塗布される光硬化樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項2記載の発明は、前記
(B)が更に極性官能基を持つ(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする請求項1記載の成形
に用いるシート
に塗布される光硬化性樹脂組成物を提供する。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記
(A)の配合量が、組成物の全固形分に対し35〜70重量%であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の成形
に用いるシート
に塗布される光硬化性樹脂組成物を提供する。
【0009】
請求項4記載の発明は、
前記(B)の配合量が、組成物の全固形分に対し25〜60重量%であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の成形
に用いるシート
に塗布される光硬化性樹脂組成物を提供する。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形
に用いるシート
に塗布される光硬化性樹脂組成物を重合硬化させて得られる成型用シートを提供する。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形シート用光硬化性樹脂組成物を重合硬化させて得られる成型用シートを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光硬化性樹脂は、光学特性および伸び性に優れた形成用シートを形成するための光硬化性樹脂組成物であり、電子機器や自動車等の車両内装用の加飾用途に適用可能で、耐薬品性に優れ立体成形加工に適した成形用シート用樹脂組成物として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の組成物の構成は、重量平均分子量(以下Mwと表記)が1,000〜10,000の2官能ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)と、反応性希釈モノマー(B)と、光重合開始剤(C)である。なお本明細書において、(メタ)アクリレートとはアクリレートとメタクリレートとの双方を包含する。また(ポリ)アルキレングリコールとは、アルキレングリコールとポリアルキレングリコールの双方を包含する。
【0015】
本発明で使用する前記(A)は、(ポリ)アルキレングリコール(a1)と脂肪族環式ジイソシアネート(a2)とヒドロキシル(メタ)アクリレート(a3)との反応で有られるウレタン(メタ)アクリレートで、分子内に可撓性の高いウレタン結合を持つ、反応性の高いオリゴマーである。Mwは1,000〜10,000であり、2,000〜6,000が好ましく、2,500〜4,000が更に好ましい。Mwが1,000未満では重合化合物の分子量が小さくなり凝集力が低くまた硬化収縮が大きくなり、10,000超では粘度が高くなり作業性に難がありまた架橋性が低下し耐熱性も低下して不適である。官能基数は2官能であり、3官能以上では架橋点が多くなり可撓性が低下するため成形性が低くなる。なおMwはゲル透過クロマトグラフィー法により、標準ポリスチレン換算の分子量を測定・換算した。
【0016】
上記(A)において使用する(ポリ)アルキレングリコール(a1)としては、例えば(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)テトラメチレンエーテルグリコール、ヘキサエチレングリコール、1,3−(ポリ)ブチレングリコール、1,4−(ポリ)ブチレングリコールなどがあり、これらを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。これらの中ではエーテル結合点が多く可撓性が高い(ポリ)エチレングリコールが好ましい。
【0017】
上記(A)において使用する脂肪族環式ジイソシアネート(a2)としては、例えばイソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、6−ノルボルナンジイソシアネートなどがあり、これらを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。これらの中では剛性を向上できるイソホロンジイソシアネートが好ましい。芳香族系のポリイソシアネートは反応活性が非常に高いが、耐候性が低く黄変しやすいため不適である。
【0018】
上記(A)において使用するヒドロキシル(メタ)アクリレート(a3)としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどがあり、これらを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。これらの中では合成した樹脂の結晶化抑制やゲル化抑制の点で2‐ヒドロキシプロピルアクリレートおよび2ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。
【0019】
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造方法としては、(ポリ)アルキレングリコール(a1)を脂肪族環式ジイソシアネート(a2)が過剰な条件下で反応させた、末端がイソシアネートのウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル(メタ)アクリレート(a3)を反応させるプレポリマー法に加え、(a1)(a2)(a3)を同時に添加して反応させるワンショット方法などがある。ワンショット法と比較してプレポリマー法は、反応がコントロールしやすく副生成物も少ないため好ましい。
【0020】
全固形分に対する(A)の配合量は35〜75重量%が好ましく、40〜70重量%が更に好ましい。35重量部以上とする事で充分な凝集力と皮膜強度を確保でき、また75重量部以下とする事で組成物の粘度を適度にコントロールでき良好な作業性を確保できる。
【0021】
本発明で使用する前記(B)は、(A)を希釈すると共に硬化反応性を向上させ樹脂皮膜を構成する主要材料である。例えばアルキル系(メタ)アクリレート、芳香族系(メタ)アクリレート、およびこれらの(メタ)アクリレートに水酸基やアミノ基等の極性基を含有したものがある。具体的にはアルキル系(メタ)アクリレートとしてメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、エチルへキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート等がある。
【0022】
また芳香族(メタ)アクリレートとしてはフェノキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート等がある。更に水酸基を含有したモノマーとしては2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等があり、アミノ基を含有したモノマーとしてはアクリルアミド、N,N‐ジメチルアクリルアミド、N,N‐ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリルロイルモルホリン等がある。これらのモノマーは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記(B)は配合物の粘度を調整しやすくするため粘度は10,000mPa・s以下である事が望ましく、また硬化収縮を抑え伸び率を高くするため単官能であることが好ましい。(A)との相溶性から極性の高いモノマーが好ましく、C数の少ないアクリレートや極性基を有するアクリレートが例示される。極性の目安となるSP値では9〜12が好ましく、例えばC数が少ないアクリレートではMMA(メチルメタクリレート)が、また極性基であるアミノ基を有するN,N‐ジエチルアクリルアミド、アクリルロイルモルホリンなどが好適である。極性の高いモノマーとの併用であれば、9〜12のSP値から外れたモノマーを使用しても何ら問題はない。
【0024】
(B)の全固形分に対する配合量は20〜60重量部が好ましく、25〜55重量部が更に好ましい。20重量%以上とすることで速硬化性を得られ、60重量%以下とすることで硬化収縮率を小さくコントロールする事ができる。
【0025】
本発明で使用される光重合開始剤(C)は、紫外線や電子線などの照射でラジカルを生じ、そのラジカルが重合反応のきっかけとなるもので、汎用の光重合開始剤が使用できる。具体的には2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン等があり、単独または2種以上を併用してもよい。ラジカル重合性成分に対して、0.5〜15重量%配合することが好ましい。市販品としてはIrgacure127、184、369、651、500、819、907、2959、1173、TPO、MBF、OXE01、OXE02、OXE04(商品名:BASFジャパン社製)などが挙げられる。
【0026】
更に加えて本発明の光硬化性樹脂組成物は、性能を損なわない範囲で、必要に応じ酸化防止剤、紫外線吸収剤、(近)赤外吸収剤、蛍光増白剤、増感剤、難燃剤、充填剤、有機微粒子、無機微粒子、分散剤、シランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤、界面活性剤、防指紋剤、帯電防止剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、重合禁止剤、顔料や染料や色素などの着色剤、可塑剤などの添加剤を併用することができる。またシート化する際の塗工特性を向上させるため、溶剤で希釈することもできる。
【0027】
本発明の光硬化性樹脂組成物の成形シートへの形成方法としては、例えば厚みが75μm程度であれば、離型シート上に本組成物を塗布し、露光硬化後にそのままロール状に巻き取る方法が例示できる。塗布する方法はバーコーター法、アプリケーター法、カーテンコーター法、ロールコーター法、グラビアコーター法、リバースコーター法、コンマコーター法、リップコーター法、ダイコーター法など、公知の方法が適用できる。また、離型シート無しでのフィルム成形方法としては溶剤キャスティング法、押出成形法(Tダイ法、インフレーション法)等の公知の方法が適用できる。
【0028】
露光条件としては例えば厚みが75μm程度であれば、500mW/cm
2〜3,000mW/cm
2の照射強度で、積算光量としては100mJ/cm
2〜2,000mJ/cm
2が例示できる。光源としては高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LEDランプ等の公知の光源が適用可能である。
【0029】
成形シートの厚みは用途に応じて適宜決められるが、薄すぎると強度が不足し、厚すぎると成型性が低下するため50μm〜300μmが例示されるが、50μm未満であっても、300μm超であっても問題はない。また本光硬化性樹脂組成物を用いた成形シートの表面に、他の機能を付与するような塗膜を形成しても良く、更に他の材料を積層した複合シートにしても良い。またシート厚が75μmの時に、雰囲気温度が130℃における伸び率が80%以上あれば、加飾用途の成形シートとして充分な成型性を確保できる。
【0030】
以下、本発明を実施例、比較例に基づき詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。なお表記が無い場合は、室温は25℃相対湿度65%の条件下で測定を行った。
【0031】
2官能ウレタンアクリレートAの合成
ポリエチレングリコール200(東邦化学工業株式会社製 商品名PEG200 固形分100%)200重量部とイソホロンジイソシアネート(住化バイエルウレタン株式会社製 商品名デスモジュールI NCO基37.5%)445重量部とをMMAモノマーに加え、30℃で30分攪拌・反応させ、赤外吸収分析でイソシアネート基のピークが2分の1になった時点で反応を終了させた。次に、2ヒドロキシプロピルアクリレート(共栄社化学株式会社製 商品名ライトエステルHOP−A 固形分100%)130重量部を添加し、10℃で30分攪拌・反応させた後、60℃で30分攪拌・反応させ、赤外吸収分析でイソシアネート基の消滅したことを確認し、MMAの比率が30%になるように調整して、Mw.3,200のウレタンアクリレートAを得た。
【0032】
2官能ウレタンアクリレートBの合成
エチレングリコール62重量部とイソホロンジイソシアネート(住化バイエルウレタン株式会社製 商品名デスモジュールI NCO基37.5%)445重量部とをMMAモノマーに加え、30℃で30分攪拌・反応させ、赤外吸収分析でイソシアネート基のピークが2分の1になった時点で反応を終了させた。次に、2ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学株式会社製 商品名ライトエステルHOA 固形分100%)116重量部を添加し、10℃で30分攪拌・反応させた後、60℃で30分攪拌・反応させ、赤外吸収分析でイソシアネート基の消滅したことを確認し、MMAの比率が30%になるように調整して、Mw.3,200のウレタンアクリレートBを得た。
【0033】
6官能ウレタンアクリレートCの合成
ポリエチレングリコール200重量部とイソホロンジイソシアネート(住化バイエルウレタン株式会社製 商品名デスモジュールI NCO基37.5%)778重量部とをMMAモノマーに加え30℃で30分攪拌・反応させ、赤外吸収分析でイソシアネート基のピークが所定の量になった時点で反応を終了させた。次に、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬株式会社製 商品名PET30 固形分100%)150重量部を添加し、10℃で30分攪拌・反応させた後、60℃で30分攪拌・反応させ、赤外吸収分析でイソシアネート基の消滅したことを確認し、MMAの比率が40%になるように調整して、Mw.4,900のウレタンアクリレートBを得た。
【0034】
実施例1
(A)としてウレタンアクリレートAを、(B)としてMMAを、(C)としてIrgacure1173(商品名:BASFジャパン社製)を表1記載の配合で均一に溶解するまで撹拌し、実施例1の成形シート用光硬化樹脂組成物を調製した。
【0035】
実施例2〜8
実施例1で用いた材料の他、(A)としてウレタンアクリレートBを、前記(B)としてACMO(商品名:KJケミカルズ株式会社製、アクリロイルモルホリン)およびDEAA(商品名:KJケミカルズ株式会社製、ジエチルアクリルアミド)およびIBXA(商品名:共栄社化学株式会社製、イソボルニルアクリレート)およびEC−A(商品名:共栄社化学株式会社社製、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート)を表1記載の配合で均一に溶解するまで撹拌し、実施例2〜8の成形シート用光硬化樹脂組成物を調製した。
【0036】
比較例1〜6
実施例で用いた材料の他、ウレタンアクリレートとして上記Cと下記D〜Fを、表1記載の配合で均一に溶解するまで撹拌し、比較例1〜5の成形シート用光硬化樹脂組成物を調製した。また比較のため505NAH(商品名:株式会社カネカ製、厚さ75μm、アクリルフィルム)を比較例6として追加した。
D:原料としてポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートと2ヒドロキシエチルアクリレートを使用、Mw.2,000
E:原料としてカプロラクトンと水添ジフェニルメタンイソシアネートと2ヒドロキシエチルアクリレートを使用、Mw.1,100
F:原料として1.4ブタンジオールとイソホロンジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネートと2ヒドロキシエチルアクリレートを使用、Mw.3,100
【0039】
外観:厚さ75μmの樹脂組成物に、無電極高圧水銀ランプで出力1,000mW/cm2、積算光量が800mJとなる様に紫外線照射した塗膜の全光線透過率を測定し、90%以上を○、90%以下を×とした。なお全光線透過率はJISK7361−1に準拠し、東洋精機製作所製のヘイズガードを用いて測定した。
【0040】
伸び率:ミネベア製の引っ張り試験機TGI−1kNを用い、クロスヘッドスピード300mm/分、雰囲気温度130℃で測定した。測定サンプルは厚さ75μmの樹脂組成物に、無電極高圧水銀ランプで出力1,000mW/cm2、積算光量が800mJとなる様に紫外線照射し、その後25mm×100mmにカットして調製し、前記条件で測定サンプルを引っ張り、50mmを基準として破断した時点での伸び率で80%以上を○、それ未満を×とした。計算式:伸び率(%)=伸びた長さ(mm)/50mm×100
【0041】
耐薬品性:厚さ75μmの樹脂組成物に、無電極高圧水銀ランプで出力1,000mW/cm2、積算光量が800mJとなる様に紫外線照射した塗膜に、ハンドクリームであるニュートロジーナSPF45(商品名:ジョンソン・アンド・ジョンソン社製)を塗布し、80℃6時間放置後に室温に戻し、拭き取ったのち表面状態を観察し、跡が無いものまたは微小なものを○、明確な跡があるものを×とした。
【0043】
実施例の各樹脂組成物は外観、耐薬品性、伸び率等の評価項目でいずれも良好な結果を得た。
【0044】
一方、6官能のウレタンアクリレートを使用した比較例1〜2、(B)がなくイソシアネートおよびポリオールが異なるウレタンアクリレートを使用した比較例3〜5は伸び率が低く、いずれも本願発明に適さないものであった。また比較のために入れたアクリルシートの比較例6は耐薬品性が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本願発明は、光学特性および伸び性に優れた成型用シートを形成するための光硬化性樹脂組成物であり、電子機器や自動車等の車両内装用の加飾用途に適用可能で、耐薬品性に優れ立体成形加工に適した成形用シートとして有用である。