(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明では、自動二輪車1が前進する方向を前として、前後左右の方向を定義する(即ち、自動二輪車1に乗車した運転者から見た方向で左右方向を定義する)。従って、前後方向は車長方向に一致し、左右方向は車幅方向に一致する。また、鉛直方向上側及び下側を上側及び下側と定義する。また、位置関係、大きさ、又は形状等を説明する用語は、その用語の意味が完全に成立している状態だけでなく、その用語の意味が略成立している状態も含むものとする。また、AがBに取り付けられている(支持されている)と称したときにおいて、AがBに直接取り付けられている(支持されている)構成だけでなく、他の取付部材等を介してAがBに取り付けられている(支持されている)構成も含むものとする。
【0012】
<自動輪車の全体構成>初めに、自動二輪車1の概要について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、自動二輪車1の側面図である。
図2は、自動二輪車1の正面図である。
【0013】
図1に示すように、自動二輪車1は、車体フレーム10と、エンジン40と、フロントタイヤ27と、リアタイヤ45と、を備える。
【0014】
車体フレーム10は、ステアリングシャフトが挿入される図略のヘッドパイプフレームを含んで構成されている。ヘッドパイプフレームの上部には、アッパーブラケット12が取り付けられている。アッパーブラケット12及びその下方に配置される図略のロアブラケットには、左右一対で配置されるフロントフォーク21を挿入するためのフォーク挿入孔がそれぞれ形成されている。
【0015】
フロントフォーク21は、アウターチューブ22と、インナーチューブ23と、から構成されている。アウターチューブ22は、アッパーブラケット12及びロアブラケットのフォーク挿入孔に挿入されている。インナーチューブ23は、アウターチューブ22に挿入されており、アウターチューブ22に対して長手方向に移動可能である。インナーチューブ23には、フロントアクスル24及びフロントホイール26を介して、フロントタイヤ27が回転可能に取り付けられている。
【0016】
アウターチューブ22とインナーチューブ23は、図略のスプリングを介して接続されている。この構成により、路面の凹凸等によりフロントタイヤ27が振動した場合であっても、この振動を車体フレーム10に伝達しにくくすることができる。また、インナーチューブ23の後方であって、フロントアクスル24の近傍には、減衰力発生部31及びサブタンク32が配置されている。
【0017】
フロントフォーク21の内部にはオイルが封入されており、アウターチューブ22に対してインナーチューブ23を移動させることでオイルが移動する。このオイルが減衰力発生部31を通過することで抵抗力が発生し、この抵抗力(減衰力)により振動を短時間で減衰することができる。また、減衰力発生部31は、後述のサスペンション制御ユニット61が送信した電気信号及び電流値の大きさ等に応じて内部のソレノイドバルブ等のアクチュエータが動作することで、オイルの通過時に発生する減衰力(サスペンションの特性の1つ)を調整可能に構成されている。また、サブタンク32には、ガスが封入されている。サブタンク32は、このオイルを加圧することで安定した減衰力を発揮させる。
【0018】
このように、本実施形態では、フロントフォーク21と、減衰力発生部31と、サブタンク32と、によりフロントサスペンション28が構成されている。また、減衰力発生部31及びサブタンク32は、左右一対で配置されている。なお、フロントサスペンション28としては、サブタンク32を備えない構成であってもよいし、減衰力発生部31がフロントフォーク21に内蔵されている構成であってもよい。また、フロントサスペンション28は、減衰力に加えて又は代えて、他の特性を調整可能であってもよい。他の特性とは、例えば、スプリングに予め付与するイニシャル荷重(プリロード)、及び、フロントサスペンション28の全長等である。また、これらの調整は、走行中及び停車中の少なくとも何れかで行われる。また、本実施形態のフロントフォーク21は、インナーチューブ23がアウターチューブ22よりも下側にあり、インナーチューブ23がフロントアクスル24及びブレーキキャリパ34等を支持している倒立式フロントフォークである。これ代えて、フロントフォークは、アウターチューブがインナーチューブよりも下側にあり、アウターチューブがフロントアクスル及びブレーキキャリパ等を支持している正立式フロントフォークであってもよい。
【0019】
なお、以下の説明では、フロントサスペンション28又は後述のリアサスペンション41により、路面からの振動が抑制されている側の部材を「制振側の部材」等と称する。また、フロントサスペンション28又はリアサスペンション41により振動が抑制されておらず、フロントタイヤ27及びリアタイヤ45等と一体的に振動する部材を「振動側の部材」等と称する。
【0020】
フロントホイール26には、ブレーキディスク33と、ロータ35と、が取り付けられている。また、フロントフォーク21(詳細にはインナーチューブ23)には、ブレーキキャリパ34と、車速センサ36と、フロントフェンダ37と、が取り付けられている。ブレーキディスク33からフロントフェンダ37までの部材は何れも振動側の部材である。
【0021】
ブレーキディスク33は、自動二輪車1の走行時にフロントホイール26と一体的に回転する。ブレーキキャリパ34は、フロントホイール26とともに回転しない。ブレーキキャリパ34は、運転者の操作に応じてブレーキディスク33に図略のブレーキパッドを押し付けることで、自動二輪車1を制動する。ブレーキディスク33及びブレーキキャリパ34は、左右のフロントホイール26にそれぞれ取り付けられている。
【0022】
ロータ35は、自動二輪車1の走行時にフロントホイール26と一体的に回転する。一方で、車速センサ36は、フロントホイール26とともに回転しない。車速センサ36は、ロータ35の回転速度を検出する。ロータ35の回転速度及びフロントタイヤ27の径に基づいて車速を計算できる。ロータ35及び車速センサ36は、左側のフロントフォーク21のみに取り付けられており、右側のフロントフォーク21には取り付けられていない。
【0023】
フロントフェンダ37は、側面視(
図1)において、フロントタイヤ27と重なるように配置されている。フロントフェンダ37は、走行時に路面の泥等を上方に跳ね上げないようにフロントタイヤ27(特にフロントタイヤ27の上方と後方)を覆っている。
【0024】
車体フレーム10の後端には、スイングアーム13が取り付けられている。スイングアーム13は、後方に延びるように配置されている。スイングアーム13の後部には、リアアクスル42を介してリアホイール44と一体になったリアタイヤ45が回転可能に取り付けられている。また、車体フレーム10とスイングアーム13(リアホイール44)の間には、リアサスペンション41が取り付けられている。この構成により、路面の凹凸等によりリアタイヤ45が振動した場合であっても、この振動を車体フレーム10に伝達しにくくすることができる。
【0025】
また、リアサスペンション41は、フロントサスペンション28と同様に、サスペンション制御ユニット61が送信した電気信号及び電流値の大きさ等に応じて内部のソレノイドバルブ等のアクチュエータが動作することで、減衰力を調整可能に構成されている。また、リアサスペンション41は、減衰力に加えて又は代えて、他の特性(上述のイニシャル荷重及び全長等)を調整可能であってもよい。
【0026】
リアホイール44には、スプロケットを介してドライブチェーン46が取り付けられている。また、ドライブチェーン46は、エンジン40が発生させた駆動力によって回転するスプロケットにも取り付けられている。この構成により、エンジン40が発生させた駆動力は、ドライブチェーン46を介してリアタイヤ45に伝達される。これにより、自動二輪車1を走行させることができる。
【0027】
フロントフォーク21のうちアッパーブラケット12とロアブラケットの間の部分には、ステアリングハンドル51が取り付けられている。なお、ステアリングハンドル51はアッパーブラケット12に取り付けられていてもよい。運転者はステアリングハンドル51を回動させることで、自動二輪車1の操舵を行うことができる。ステアリングハンドル51の前方には、車速、エンジン回転速度、及び警告情報等を表示可能なメータ装置52が配置されている。メータ装置52の上方には、ウインドシールド53が配置されている。ウインドシールド53は、走行風の導風を行うことで、走行風を運転者に当たりにくくする。従って、ウインドシールド53は、下端部(基端部)から後ろ斜め上方に延びるように配置されている。また、ステアリングハンドル51及びメータ装置52の前方には、前方に光を照射するためのヘッドライト54が配置されている。
【0028】
アッパーブラケット12の後方には、エンジン40に供給するための燃料が貯留される燃料タンク55が配置されている。燃料タンク55の下方には、エンジン40が配置されている。燃料タンク55の後方には、運転者が着座するためのシート56が配置されている。シート56の下方には、シート56に着座した運転者が足を載せるためのステップ57が配置されている。運転者は、シート56に着座し、燃料タンク55及びその下方を足で挟み、ステップ57に足を載せることで、体を安定させるとともに重心を左右に移動させて操舵の一部を行う。
【0029】
フロントタイヤ27の後方には、ラジエータ58が配置されている。ラジエータ58は、左右一対のサイドタンク58aと、これらの間に配置されるラジエータコア58bと、から構成されている。サイドタンク58aの一方には、エンジン40を通過して高温になった冷却水(冷却媒体)を供給する図略のホースが接続される。導入タンクから供給された冷却水は、ラジエータコア58bを通過する際に外気と熱交換されることで、温度が低下する。ラジエータコア58bを通過して温度が低下した冷却水は、他方のサイドタンク58aに接続された図略ホースを介して再びエンジン40へ送られる。なお、本実施形態では、ラジエータコア58bが湾曲状(詳細には車幅方向の中央に近づくに連れて後方に近づくように湾曲している形状)であるが、直方体状であってもよい。
【0030】
ラジエータ58の前方には、サスペンション制御ユニット61が配置されている。サスペンション制御ユニット61は、上述のように、減衰力発生部31及びリアサスペンション41の減衰力を調整する制御を行うことができる。なお、サスペンション制御ユニット61の配置及び取付方法については後述する。
【0031】
ラジエータ58の上方には、レギュレータ65が配置されている。レギュレータ65は、エンジン40に内蔵された発電機(オルタネータ)で発電された交流電流を直流電流に変換するとともに、電圧を調整する(電圧が高くなり過ぎないように調整する)。
【0032】
自動二輪車1の側面の一部には、左右一対のサイドカウル81が配置されている。サイドカウル81は、自動二輪車1の左右方向外側の面を構成している。サイドカウル81は、
図1に示すように、ステアリングハンドル51の下方、メータ装置52の下方、燃料タンク55の下方、及びエンジン40の周囲等に配置されている。サイドカウル81は複数枚のカウル部材から構成されているが、サイドカウル81を構成するカウル部材の枚数及び配置は限定されない。
【0033】
また、
図2に示すように、サイドカウル81の車幅方向内側には、左右一対のインナーカウル82が配置されている。具体的には、サイドカウル81のうち、ステアリングハンドル51、メータ装置52、及びウインドシールド53の下方であって、ヘッドライト54の後方の部分に、インナーカウル82が配置されている。
図2に示すように、サイドカウル81とインナーカウル82とは車幅方向に間隔を空けて配置されている。また、サイドカウル81とインナーカウル82の間の空間のうち前部は、フロントカバー83によって覆われている。
【0034】
また、サイドカウル81の車幅方向内側には、各種電装品に接続される複数のハーネスが配置されている。本実施形態では、
図1に示すように、車幅方向の一側方に、具体的には車幅方向の中央よりも左側に複数種類の機器(例えば左側のヘッドライト54)に接続されるハーネスをまとめたハーネス束70が配置されている。なお、このようなハーネス束70が更に車幅方向の中央よりも右側にも配置されていてもよい。
【0035】
<サスペンション制御ユニットの取付構造>次に、
図1から
図3を参照して、サスペンション制御ユニット61の構成及び取付方法について詳細に説明する。
図3は、サスペンション制御ユニット61の取付方法を説明する斜視図である。
図3に示すように、サスペンション制御ユニット61は、本体部61aと、コネクタ61bと、を備える。
【0036】
本体部61aは、内部に基板等が配置された直方体状のケースである。ここで、本明細書では、直方体状とは、6面が正確な長方形である構成だけでなく、少なくとも1つの角部が面取りされている構成を含み、長方形の対向する辺が平行だけでなく略平行(例えば10°以下又は20°以下の誤差がある場合も含む)である構成を含み、更に、長方形の各辺が直線ではなく若干湾曲している構成も含む。また、本体部61aは直方体状であるため、2種類又は3種類の長さの辺を有する。なお、本体部61aと比較してコネクタ61bは相当に小さいため、コネクタ61bを含むサスペンション制御ユニット61も同様に直方体状である。
【0037】
コネクタ61bは、本体部61aの内部の基板等にハーネスを接続するための部材である。以下、このハーネスをサスペンション制御ハーネス71と称する。サスペンション制御ハーネス71は複数の電線を含んで構成されている。具体的には、サスペンション制御用電線、電力供給用電線、及び通信用電線等が含まれている。サスペンション制御用電線は3本含まれており、左右のフロントサスペンション28とリアサスペンション41の特性(本実施形態では減衰力)を調整する電気信号及び電流値の大きさ等をそれぞれ伝達する。電力供給用電線は、サスペンション制御ユニット61を動作させるための電力を供給する。通信用電線は、例えば自動二輪車1の姿勢、車速、路面の状態に関する情報を伝達する。通信用電線は例えばCAN(Controller Area Network)通信を行うための電線であるが、所定の機器(例えばエンジン制御ユニット)に直接接続されて通信を行う電線であってもよい。このように、サスペンション制御ハーネス71には複数の電線が含まれているため、径が大きくなるので急峻に曲げることは困難である。
【0038】
また、本体部61aには、取付ブラケット63が取り付けられている。取付ブラケット63は、板状の部材(板金)を折り曲げることで形成されている。取付ブラケット63は、本体部61aの外形に沿うように曲げられた部分が含まれている。また、取付ブラケット63には、ゴムバンド取付部63aが形成されており、このゴムバンド取付部63aにゴムバンド62が取り付けられることで、本体部61aを保持している。
【0039】
また、取付ブラケット63には、インナーカウル取付部63bと、サイドカウル取付部63cと、が形成されている。インナーカウル取付部63bは、インナーカウル82の車幅方向外側の面にボルト等の固定具によって取り付けられる。また、サイドカウル取付部63cは、サイドカウル81の車幅方向内側の面にボルト等の固定具によって取り付けられる。また、本実施形態ではインナーカウル取付部63bがサイドカウル取付部63cよりも下方に形成されているが、上方に形成されていてもよい。また、複数の取付部によりサイドカウル81又はインナーカウル82に取り付けられていてもよい。
【0040】
従って、取付ブラケット63及びサスペンション制御ユニット61は、サイドカウル81とインナーカウル82の間の空間に配置されるとともに、サイドカウル81とインナーカウル82の両方に取り付けられて支持されている。また、取付ブラケット63はサイドカウル81及びインナーカウル82にのみ取り付けられており、他の部材には取り付けられていない。ここで、本実施形態では、サイドカウル81及びインナーカウル82は樹脂製であるため、エンジン40及び路面等からサスペンション制御ユニット61に伝達する振動を低減できる。更に、サイドカウル81及びインナーカウル82は制振側の部材であるため、路面からの振動を一層低減できる。
【0041】
また、サスペンション制御ユニット61の車幅方向内側がインナーカウル82で保護されることとなるので、路面で跳ねた石等がサスペンション制御ユニット61に衝突することを防止できる。また、本実施形態では、サイドカウル81とインナーカウル82の間にフロントカバー83が配置されているため、サスペンション制御ユニット61を路面で跳ねた石及び水から更に確実に保護することができる。
【0042】
<サスペンション制御ユニットの配置>次に、
図1から
図3を参照して、サスペンション制御ユニット61の配置について説明する。
【0043】
側面視において、サイドカウル81及びインナーカウル82の前側の輪郭線は、傾斜状(具体的には、前方に近づくに連れて上方に近づくように傾斜した形状)である。従って、側面視において、サイドカウル81とインナーカウル82の間の空間の前端も同様に傾斜している。一方で、側面視において、この空間の後端は、側面視において傾斜しておらず上下方向に平行である。また、
図2及び
図3に示すように、インナーカウル82には、車幅方向内側に膨らむ膨出部82aが形成されている。膨出部82aは、左側にのみ形成されており、右側には形成されていない。従って、インナーカウル82は左右で非対称である(具体的には、正面視において車幅方向の中央を上下に通る線に対して線対称ではない)。
【0044】
サスペンション制御ユニット61は、短辺と車幅方向が同じとなるように配置されているため、車幅方向のサイズを小さくすることができる。特に、サイドカウル81とインナーカウル82の間の空間は車幅方向のサイズが小さいため、このような配置が好適である。また、上述の膨出部82aは、サイドカウル81とインナーカウル82の間の空間の車幅方向のサイズを大きくするための部分である。この膨出部82aは、サスペンション制御ユニット61をこの空間に収めるために形成されている。従って、正面視において、膨出部82aと、サスペンション制御ユニット61の一部及び取付ブラケット63の一部と、が重なるように配置されている。
【0045】
また、膨出部82aは、正面視においてラジエータコア58bと重なるように配置されている。従って、サスペンション制御ユニット61が配置される側(左側)のみに膨出部82aが形成されていることで、ラジエータコア58bに供給される外気への影響を抑えることができる。また、膨出部82aは、曲面状に膨らんでいるため、この曲面に沿って外気を案内することができるので、ラジエータコア58bに供給される外気への影響を最小限にすることができ、ラジエータの冷却効率の低下を抑制できる。
【0046】
また、サイドカウル81とインナーカウル82の間の空間は、上述のように前側が傾斜状であること等により、特に下側の領域において前後方向のサイズが小さい。この空間の形状を考慮し、サスペンション制御ユニット61は、長辺が上下方向と同じとなるように配置されている。更に、この空間は、上側の領域において前後方向のサイズが大きいため、この領域にコネクタ61bが配置されている。具体的には、コネクタ61bは、側面視においてサスペンション制御ユニット61(本体部61a)の上下方向の中央よりも上側であって、かつ、前側の面に配置されている。
【0047】
この構成により、前後方向のサイズが大きい上側の領域を活用できる。更に、本実施形態では、コネクタ61bから延びるサスペンション制御ハーネス71は、後側に向かってハーネス束70に合流するように配置される。ここで、上述のようにサスペンション制御ハーネス71は複数の電線を含んでいるため急峻に曲げることは困難である。従って、コネクタ61bの更に前側にもサスペンション制御ハーネス71を緩やかに曲げるためのスペースが必要となる。この点においても、上側の領域において前後方向のサイズが大きいという上記の空間の形状を有効に活用している。
【0048】
また、サスペンション制御ユニット61は、側面視においてラジエータ58の前方に配置されている。つまり、ラジエータ58の前端よりも前方にラジエータ58の後端が配置されている。また、正面視において、サスペンション制御ユニット61の一部とラジエータ58とが重なるように配置されている。具体的には、正面視でサスペンション制御ユニット61の半分以上が一方のサイドタンク58aと重なるように(言い換えれば、ラジエータコア58bよりもサイドタンク58aに多く重なるように)配置されている。また、正面視においてサスペンション制御ユニット61の車幅方向内側の輪郭(長辺)と、サイドタンク58aの車幅方向の内側の輪郭と、は平行かつ位置が一致するように配置されている。このように、サスペンション制御ユニット61は、主としてサイドタンク58aに重なるように配置されているため、ラジエータコア58bへ供給される外気への影響を抑えることができ、ラジエータの冷却効率の低下を抑制できる。また、ラジエータ58の前方に配置されることにより、ラジエータ58から後方へ放出される熱の影響を受けにくくすることができる。
【0049】
また、サスペンション制御ユニット61は、レギュレータ65の下方に当該レギュレータ65に上下方向で隣接するように配置されている。従って、レギュレータ65も、ラジエータ58から後方へ排出される熱の影響を受けにくい。特に、レギュレータ65は発熱量が多いため、この効果を有効に発揮できる。
【0050】
また、側面視において、フロントタイヤ27よりも上方(上端の円弧状の輪郭よりも上方)であって、燃料タンク55よりも前方の領域には、メータ装置52、ヘッドライト54、サスペンション制御ユニット61、及びレギュレータ65が配置される。なお、サスペンション制御ユニット61の全体がこの領域に配置されていてもよいし、一部だけがこの領域に配置されていてもよい。このように、主要な電装品をまとめて配置することで、ハーネスの構成をシンプルにすることができる可能性がある。なお、更に詳細には、サスペンション制御ユニット61は、上下方向において、ステアリングハンドル51、メータ装置52、ウインドシールド53、及びヘッドライト54よりも下方に配置されている。また、前後方向において、サスペンション制御ユニット61は、ステアリングハンドル51と重なるかステアリングハンドル51よりも前方であって、メータ装置52及びヘッドライト54よりも後方に配置されている。また、車幅方向において、サスペンション制御ユニット61は、フロントフォーク21よりも外側であってヘッドライト54と重なるように配置されている。
【0051】
<フロントホイール近傍のハーネス及びホースの配置>次に、
図1から
図5を参照して、フロントホイール26近傍のハーネス及びホースの配置について説明する。
図4は、左側のフロントホイール26の近傍に配置されるハーネス及びホースを示す側面図である。
図5は、右側のフロントホイール26の近傍に配置されるハーネス及びホースを示す側面図である。
【0052】
上述のように、左側のフロントホイール26又はフロントフォーク21には、減衰力発生部31、ブレーキキャリパ34、及び車速センサ36が配置されている。
図4に示すように、減衰力発生部31からは、サスペンション制御ユニット61からの電気信号及び電流等を受信するためのサスペンションハーネス72が延びている。ブレーキキャリパ34からは、ブレーキキャリパ34を動作させるためのブレーキフルードを供給するためのブレーキホース73が延びている。車速センサ36からは、車速センサ36の検出結果を出力するための車速センサハーネス74が延びている。
【0053】
減衰力発生部31、ブレーキキャリパ34、及び車速センサ36は何れもフロントアクスル24に対して後方に配置されている。サスペンションハーネス72は、減衰力発生部31から上側(後斜め上側)に延びた後に保持部材75に保持される。保持部材75は、フロントフェンダ37に固定されており、線状の部材を束ねて保持する部材である。ブレーキホース73は、上側に延びた後に保持部材75に保持される。ブレーキホース73は、減衰力発生部31の輪郭に沿って減衰力発生部31の長手方向に沿って延びた後に、上方に延びて保持部材75に保持される。なお、減衰力発生部31、ブレーキキャリパ34、及び車速センサ36の少なくとも1つがフロントアクスル24に対して前方に配置されていてもよい。
【0054】
このように、本実施形態では、3つのハーネス及びセンサが、同じ保持部材75に保持される。従って、保持部材75の数を減らすことができる。また、比較的下方(フロントフェンダ37)にハーネス等が保持されるため、ハーネス等が絡まりにくくなるとともに、外観をシンプルにすることができる。また、本実施形態ではフロントフェンダ37は振動側の部材であるため、フロントホイール26とともに振動する。従って、振動時においてもハーネス等と保持部材75の位置関係が変わらないため、ハーネス等に大きな遊びを持たせる必要がない。
【0055】
また、
図5に示すように、右側のフロントフォーク21には、減衰力発生部31及びブレーキキャリパ34が配置されており、車速センサ36は配置されていない。右側では、サスペンションハーネス72及びブレーキホース73は、左側と同様に延び、保持部材75に接続される。また、右側及び左側のハーネス等は、保持部材75に保持されている箇所から更に上方に延び、例えばロアブラケット等にまとめて保持される。
【0056】
以上に説明したように、本実施形態の自動二輪車1は、サイドカウル81と、インナーカウル82と、ラジエータ58と、サスペンション(フロントサスペンション28及びリアサスペンション41)と、サスペンション制御ユニット61と、を備える。サイドカウル81は、車体側部を覆う。インナーカウル82は、サイドカウル81の車幅方向内側に配置される。ラジエータ58は、外気と冷却媒体との熱交換により冷却媒体の温度を下げる。サスペンションは、フロントタイヤ27及びリアタイヤ45の少なくとも一方から車体へ伝達される振動を軽減する。サスペンション制御ユニット61は、サスペンションの特性を調整する制御を行い、サイドカウル81とインナーカウル82の間の空間に少なくとも一部が配置されており、側面視においてラジエータ58よりも前方に配置されている。
【0057】
これにより、サイドカウル81とインナーカウル82の間の空間を有効に活用してサスペンション制御ユニット61を配置できる。また、サスペンション制御ユニット61は、ラジエータ58の前方に配置されるため、ラジエータ58から後方に放出される熱の影響を受けにくくなる。更に、サスペンション制御ユニット61がインナーカウル82に覆われているため、路面で跳ねた石等が当たりにくくなる。
【0058】
また、本実施形態の自動二輪車1は、サスペンション制御ユニット61を取り付けるための取付ブラケット63を備える。取付ブラケット63は、サイドカウル81とインナーカウル82の両方に取り付けられる。
【0059】
これにより、サスペンション制御ユニット61が車幅方向の両側においてカウルに固定されるため、サスペンション制御ユニット61を安定させることができる。特に、取付ブラケット63、サイドカウル81、及びインナーカウル82を介して支持されることで、車体及び路面からサスペンション制御ユニット61に伝わる振動を軽減できる。
【0060】
また、本実施形態の自動二輪車1において、ラジエータ58は、ラジエータコア58bと、サイドタンク58aと、を備える。ラジエータコア58bは、外気と冷却媒体との熱交換を行う。サイドタンク58aは、ラジエータコア58bの車幅方向外側に配置される。正面視において、サスペンション制御ユニット61の半分以上がサイドタンク58aと重なるように配置されている。
【0061】
これにより、サスペンション制御ユニット61がラジエータコア58bと重なる範囲が小さいので、ラジエータ58の冷却効率の低下を抑制しつつ、ラジエータ58の前にサスペンション制御ユニット61を配置できる。
【0062】
また、本実施形態の自動二輪車1は、燃料タンク55と、前方を照射するヘッドライト54と、少なくとも車速を表示するメータ装置52と、フロントフォーク21と、フロントフォーク21に回転可能に支持されたフロントアクスル24にフロントホイール26を介して保持されるフロントタイヤ27と、を備える。側面視において、燃料タンク55よりも前方であって、かつ、フロントタイヤ27よりも上方の領域に、ヘッドライト54及びメータ装置52が配置されており、当該領域にサスペンション制御ユニット61の少なくとも一部が位置している。
【0063】
これにより、主要な電装品であるヘッドライト54及びメータ装置52の近傍にサスペンション制御ユニット61を配置できるので、ハーネスの経路をシンプルにする又は短くすることができる。
【0064】
また、本実施形態の自動二輪車1では、車幅方向のうち、少なくともサスペンション制御ユニット61が配置される側の端部には、サスペンション及びサスペンション制御ユニット61以外の複数の機器にそれぞれ接続される複数のハーネスを束ねたハーネス束70が前後方向に延びるように配置されている。サスペンション制御ユニット61に接続されるサスペンション制御ハーネス71が、ハーネス束70に接続されている。
【0065】
これにより、サスペンション制御ユニット61は、インナーカウル82とサイドカウル81の間に配置されるため比較的車幅方向外側に位置しているため、サスペンション制御ユニット61とハーネス束70とを接続するサスペンション制御ハーネス71を短くすることができる。
【0066】
また、本実施形態の自動二輪車1は、発電された電気の電圧を調整するレギュレータ65を備える。レギュレータ65は、サスペンション制御ユニット61の上方であって、平面視で当該サスペンション制御ユニット61と重なるように配置されている。
【0067】
これにより、サスペンション制御ユニット61と他の電装品をまとめて配置することができる。特に、レギュレータ65は発熱し易いため、高温となりにくい空間を有効に活用できる。
【0068】
また、本実施形態の自動二輪車1では、インナーカウル82は左右一対で配置されている。正面視において、少なくとも一側のインナーカウル82には、車幅方向内側に膨らむ膨出部82aが形成されており、当該膨出部82aの車幅方向外側の空間に、サスペンション制御ユニット61及び当該サスペンション制御ユニット61を取り付けるための部材(取付ブラケット63)のうち少なくとも一部が位置している。
【0069】
これにより、膨出部によって広い空間が形成されている箇所を有効に活用してサスペンション制御ユニット61を配置できる。
【0070】
また、本実施形態の自動二輪車1では、側面視において、サイドカウル81及びインナーカウル82の間の空間の前端は、前方に近づくに連れて上方に近づくように傾斜している。側面視において、サスペンション制御ユニット61は長方形であり、上下方向の中央よりも上側から前側に延びるように形成されたコネクタ61bにサスペンション制御ハーネス71が接続されている。
【0071】
上記の形状の空間に側面視で長方形のサスペンション制御ユニット61を配置する場合、サスペンション制御ユニット61の上部の前側に空間が形成されるので、この空間を利用してコネクタ61bを及びサスペンション制御ハーネス71を配置できる。
【0072】
また、本実施形態の自動二輪車1は、フロントフォーク21に設けられたフロントサスペンション28に対して路面側には、車速を計測するための車速センサ36と、ブレーキを作用させるためのブレーキキャリパ34と、フロントサスペンション28の特性を調整するためのアクチュエータ(減衰力発生部31のソレノイドバルブ等)と、が取り付けられている。車速センサ36と接続される車速センサハーネス74、ブレーキキャリパ34と接続されるブレーキホース73、及び、減衰力発生部31と接続されるサスペンションハーネス72の全てがフロントフェンダ37にまとめて保持されている。
【0073】
これにより、3つの機器から延びる配線が早い段階で保持されているため、外観を良好にすることができるとともに、取回しが容易となる。
【0074】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0075】
<サスペンション制御ユニットの取付構造>上記実施形態では、サスペンション制御ユニット61は、取付ブラケット63を介してサイドカウル81及びインナーカウル82に取り付けられているが、本体部61aに固定具等を挿入可能な取付部等を形成することで、サスペンション制御ユニット61が直接的にサイドカウル81及びインナーカウル82に取り付けられる構成であってもよい。
【0076】
<サスペンション制御ユニットの配置>上記実施形態では、サスペンション制御ユニット61は車幅方向の中央よりも左側に配置されているが、右側に配置されていてもよい。サスペンション制御ユニット61の上方には、レギュレータ65以外の電装品が隣接するように配置されていてもよい。本体部61a及びインナーカウル82等の形状によっては、膨出部82aが形成されていなくてもよい。また、左右の両方に膨出部82aが形成されていてもよい。また、コネクタ61bが前方ではなく異なる方向(例えば上方又は後方)に突出するように配置されていてもよい。
【0077】
<サスペンション制御ユニットの制御対象>上記実施形態では、サスペンション制御ユニット61は、フロントサスペンション28とリアサスペンション41の両方の特性を調整する制御を行うが、何れか一方のみの特性を調整する制御を行ってもよい。
【0078】
<駆動源>上記実施形態では、自動二輪車1は動力機関(駆動源)としてエンジン40を備える構成であるが、エンジンに代えて又は加えて他の動力機関である電動モータを用いてもよい。この場合、ラジエータは、電動モータ及びインバータのうち少なくとも何れかで発生した熱を冷却するために用いられる。
【0079】
<本発明の適用対象>上記実施形態では、スーパースポーツタイプの自動二輪車に本発明を適用する例を説明したが、他の自動二輪車(ネイキッドタイプ、モトクロスタイプ、ツアラータイプ、又はクルーズタイプ等)にも本発明を適用できる。