(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の触媒コート層中の白金の質量とパラジウムの質量との合計が、前記第2の触媒コート層及び前記第3の触媒コート層中の白金の質量とパラジウムの質量との合計よりも多い、請求項1〜4のいずれか一項に記載の排ガス浄化用酸化触媒装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
《排ガス浄化用触媒装置》
本発明の排ガス浄化用触媒装置は、
基材と、この基材上の第1〜第3の触媒コート層とを有する排ガス浄化用酸化触媒装置であって、
第1の触媒コート層は排ガス流れ上流側に存在し、第2の触媒コート層は排ガス流れ下流側上層に存在し、第3の触媒コート層は排ガス流れ下流側下層に存在し、
第1の触媒コート層は、白金及びパラジウムを含み、白金の質量(W
Pt1)とパラジウムの質量(W
Pd1)との比(W
Pt1/W
Pd1)は、0.75以上4.50以下であり、
第2の触媒コート層は、白金及びパラジウムを含み、白金の質量(W
Pt2)とパラジウムの質量(W
Pd2)との比(W
Pt2/W
Pd2)は、4.50超25.0以下であり、
第3の触媒コート層は、少なくともパラジウムを含み、白金の質量(W
Pt3)とパラジウムの質量(W
Pd3)との比(W
Pt3/W
Pd3)は、0.12以下であり、
第1の触媒コート層の長さは、上記基材の長さの8%以上55%以下であり、
第2の触媒コート層の長さは、上記基材の長さの45%以上95%以下であり、かつ、
第3の触媒コート層の長さは、上記基材の長さの45%以上95%以下である、
触媒装置である。
【0014】
ここで、第1〜第3の触媒コート層の長さとは、排ガス流れ方向に沿った長さを意味している。
【0015】
本発明者らは、本発明の目的を達成しようと検討を行った。その結果、貴金属として白金(Pt)及びパラジウム(Pd)を含む排ガス浄化用酸化触媒装置では、HCの酸化、COの酸化、及びNOの酸化について、それぞれ別個に好適な白金とパラジウムとの質量比の範囲が存在し、1つの触媒コート層中で白金とパラジウムとの質量比を調整するのみでは、HC、CO、及びNOのすべてに対する酸化効率を十分に高いものとすることは困難であることを見出した。また、Pdが排ガス中のHCによって被毒されることは知られている。
【0016】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものである。
【0017】
図1に、本発明の排ガス浄化用酸化触媒装置の構成の例を、概略断面図として示した。
【0018】
図1の排ガス浄化用触媒装置は、基材(5)、並びに基材(5)上の第1の触媒コート層(1)、第2の触媒コート層(2)、及び第3の触媒コート層(3)を有する。第1の触媒コート層(1)は、排ガス流れ上流側に配置され、主としてHCの酸化反応に寄与する。第2の触媒コート層(2)は、排ガス流れ下流側上層に配置され、主としてNOの酸化反応に寄与する。第3の触媒コート層(3)は、排ガス流れ下流側下層に配置され、主としてCOの酸化反応に寄与する。
【0019】
第1の触媒コート層(1)は、白金及びパラジウムを含む。第1の触媒コート層(1)では、白金の質量(W
Pt1)とパラジウムの質量(W
Pd1)との比(W
Pt1/W
Pd1)が、HCの酸化反応に適切な範囲に調節されている。これにより、第1の触媒コート層(1)は、HCの酸化反応に高い活性を示す。
【0020】
また、第1の触媒コート層(1)の長さ(L
1)は、触媒装置に流入した排ガス中のHCが第1の触媒コート層(1)上で十分に酸化される程度に長く、かつ、第1の触媒コート層(1)中の貴金属濃度を高く保ち、第1の触媒コート層の「着火」が可能な程度に短い。第1の触媒コート層の「着火」とは、HCの酸化による発熱によって第1の触媒コート層(1)の温度が十分に高くなり、第1の触媒コート層の触媒作用によるHCの酸化反応が更に促進されることをいう。
【0021】
更に、第1の触媒コート層(1)は、排ガス流れ上流側に配置されている。このことにより、排ガス浄化用触媒装置に流入した排ガスは、先ず、HCの酸化反応の活性が高い第1の触媒コート層(1)と接触して、HCが高効率で除去された後に、排ガス流れ下流側の第2の触媒コート層(2)及び第3の触媒コート層(3)と接触することになる。したがって、本発明の排ガス浄化用酸化触媒装置では、第2の触媒コート層(2)及び第3の触媒コート層(3)中のパラジウムのHC被毒の程度は、抑制されている。
【0022】
第2の触媒コート層(2)は、白金及びパラジウムを含む。NOの酸化反応の活性は、触媒コート層中の白金の割合が大きく、かつ少量のパラジウムが共存しているときに向上する。また、触媒コート層は、白金とともに少量のパラジウムを含むときに優れた耐熱性を示す。このような観点から、本発明の排ガス浄化用酸化触媒装置の第2の触媒コート層(2)では、白金の質量(W
Pt1)とパラジウムの質量(W
Pd1)との比(W
Pt1/W
Pd1)が、NOの酸化反応の活性と、第2の触媒コート層の耐熱性とが高い水準で両立させるために最適な範囲に調節されている。これにより、第2の触媒コート層(2)は、NOの酸化反応に高い活性を示す。
【0023】
また、第2の触媒コート層(2)の長さ(L
2)は、ガス中のNOが第2の触媒コート層(2)上で十分に酸化される程度に長い。したがって、第1の触媒コート層(1)通過後のガス中のNOを、高い効率で酸化してNO
2とすることができる。一方で、第2の触媒コート層(2)の長さ(L
2)は、第1の触媒コート層(1)によって浄化される前の、HC濃度が高いガスと接触しない程度に短い。すなわち、第2の触媒コート層(2)は、排ガス流れ下流側に、基材(5)の長さ(d)よりも短い長さで配置されている。したがって、触媒装置に流入した排ガスは、第1の触媒コート層(1)によってHCが高効率で酸化除去された後に、第2の触媒コート層(2)と接触する。そのため、第2の触媒コート層(2)中のPdはHCによる被毒が抑制されており、NOの酸化反応を所期の高効率で進行することができる。
【0024】
更に、第2の触媒コート層(2)は、排ガス流れ下流側上層に配置されている。このことにより、第1の触媒コート層(1)を通過した後の排ガスは、第2の触媒コート層(2)と直ちに接触することができ、したがって排ガス中のNOは、速やかに第2の触媒コート層(2)による酸化反応に供される。
【0025】
第3の触媒コート層(3)は、少なくともパラジウムを含む。一般に、COの酸化反応は、触媒コート層中のパラジウムの割合が大きいときに向上する。したがって、パラジウムを大きな割合で含む第3の触媒コート層(3)は、COの浄化に高い活性を示す。本発明の効果が減殺されない範囲であれば、第3の触媒コート層(3)は白金を含んでいてもよい。
【0026】
第3の触媒コート層(3)の長さ(L
3)は、ガス中のCOが第3の触媒コート層(3)上で十分に酸化される程度に長く、ガス中のCOを高い効率でCO
2に酸化して浄化することができる。一方で第3の触媒コート層(3)の長さ(L
3)は、第1の触媒コート層(1)によって浄化される前の、HC濃度が高いガスと接触しない程度に短い。すなわち、第3の触媒コート層(3)は、排ガス流れ下流側に、基材(5)の長さ(d)よりも短い長さで配置されている。したがって、触媒装置に流入した排ガスは、第1の触媒コート層(1)によってHCが高効率で酸化除去された後に、第3の触媒コート層(3)と接触する。そのため、第3の触媒コート層(3)中のPdに対するHC被毒は抑制されている。
【0027】
更に、第3の触媒コート層(3)は、排ガス流れ下流側下層に配置されている。このことにより、第1の触媒コート層(1)を通過した後の排ガスは、第2の触媒コート層(2)を介して第3の触媒コート層(3)に接触することになる。したがって、第1の触媒コート層(1)を通過した後の排ガスが残存HCを含んでいる場合でも、この残存HCが第3の触媒コート層(3)中のPdと接触する頻度は低減されている。
【0028】
このように、本実施形態の排ガス浄化用酸化触媒装置では、第3の触媒コート層(3)中のPdに対するHC被毒は、第3の触媒コート層(3)が、排ガス流れの下流側、かつ下層にあることによって、高度に抑制されている。
【0029】
以下、本発明の排ガス浄化用酸化触媒装置の構成要素について詳説する。
【0030】
〈第1の触媒コート層〉
本発明の排ガス浄化用触媒装置における第1の触媒コート層は、白金及びパラジウムを含み、白金の質量とパラジウムの質量との比が、HCの酸化反応に好適な比に調整されており、かつ、排ガス流れ上流側に配置されている。
【0031】
第1の触媒コート層によるHCの酸化反応の活性を高くする観点から、第1の触媒コート層中の白金の質量(W
Pt1)とパラジウムの質量(W
Pd1)との比(W
Pt1/W
Pd1)は、0.75以上であり、4.50以下である。この比(W
Pt1/W
Pd1)は、0.80以上、0.90以上、1.00以上、1.25以上、1.50以上、又は1.75以上であってよく、4.25以下、4.00以下、3.75以下、3.50以下、3.25以下、3.00以下、2.75以下、2.50以下、又は2.25以下であってよい。
【0032】
第1の触媒コート層中の比(W
Pt1/W
Pd1)は、最も好ましくは、約2.00である。
【0033】
第1の触媒コート層に含有される白金の質量(W
Pt1)とパラジウムの質量(W
Pd1)との合計(W
Pt1+Pd1)の基材容量1L(リットル)に対する割合は、例えば、0.50g/L以上、1.75g/L以上、1.00g/L以上、又は1.25g/L以上であってよく、例えば、2.50g/L以下、2.25g/L以下、2.25g/L以下、又は1.75g/L以下であってよい。
【0034】
本発明の排ガス浄化用酸化触媒装置では、触媒装置に流入した排ガス中のHCを第1の触媒コート層によって十分に酸化して、第1の触媒コート層よりも下流のガス中のHC濃度を低いものとし、第2及び第3の触媒コート層中のPdのHC被毒を抑制することによって、第2の触媒コート層によるNO酸化、及び第3の触媒コート層におけるCOの酸化反応の効率が高くされている。
【0035】
したがって、第1の触媒コート層におけるHCの酸化を十分に行うとの観点から、第1の触媒コート層中の白金の質量とパラジウムの質量との合計は、第2の触媒コート層及び第3の触媒コート層中の白金の質量とパラジウムの質量との合計よりも多くてよい。
【0036】
具体的には、第1の触媒コート層中の白金の質量(W
Pt1)とパラジウムの質量(W
Pd1)との合計(W
Pt1+Pd1)は、第2の触媒コート層中の白金の質(W
Pt2)量及びパラジウムの質量(W
Pd2)の合計(W
Pt2+Pd2)と、第3の触媒コート層中の白金の質量(W
Pt3)及びパラジウムの質量(W
Pd3)の合計(W
Pt3+Pd3)との総計(W
Pt2+Pd2+W
Pt3+Pd3)よりも、多くてよい。
【0037】
第1の触媒コート層中の白金の質量及びパラジウムの質量の合計(W
Pt1+Pd1)が、第1〜第3の触媒コート層中の白金の質量及びパラジウムの質量の総計(W
Pt1+Pdt1+W
Pt2+Pd2+W
Pt3+Pd3)に占める割合は、第1の触媒コート層におけるHCの酸化を十分に行うとの観点から、例えば、50質量%超、55質量%以上、又は60質量%以上であってよく、第2及び第3の触媒コート層の触媒活性を高いものに維持するとの観点から、例えば、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、又は65質量%以下であってよい。
【0038】
第1の触媒コート層中の白金及びパラジウムは、それぞれ、適当な担体粒子上に担持されていてよい。この担体粒子は、例えば、Al、Si、Ce、及びZrから選択される1種以上の酸化物の粒子であってよい。担体粒子は、具体的には例えば、アルミナ、シリカ、セリア、ジルコニア等、及びこれらの複合酸化物等から構成される粒子から選択されてよい。
【0039】
第1の触媒コート層中の白金及びパラジウムは、同じ担体粒子上に担持されていてよく、それぞれ別個の担体粒子上に担持されていてよい。耐久による粒径増大に伴う触媒活性の低下を、白金とパラジウムとの合金化によって抑制する観点からは、白金及びパラジウムのうちの少なくとも一部、好ましくは全部は、同じ担体粒子上に担持されていてよい。
【0040】
第1の触媒コート層の長さは、触媒装置に流入した排ガス中のHCを、第1の触媒コート層上で十分に酸化するとの観点から、基材の長さに対して、8%以上であり、9%以上、10%以上、20%以上、30%以上、又は40%以上であってよい。一方で、第1の触媒コート層中の貴金属濃度を高く保ち、第1の触媒コート層の着火を可能とする観点から、第1の触媒コート層の長さは、基材の長さに対して、55%以下であり、50%以下、40%以下、30%以下、又は20%以下であってよい。
【0041】
第1の触媒コート層は、更に必要に応じてその他の成分を含有していてよい。その他の成分は、例えば、白金及びパラジウムを担持していない酸化物粒子、無機バインダー等であってよい。また、第1の触媒コート層は、白金及びパラジウム以外の貴金属、例えばロジウム(Rh)等を更に含有していてよい。
【0042】
白金及びパラジウムを担持していない酸化物粒子は、例えば、Al、Si、Ce、及びZrから選択される1種以上の酸化物の粒子であってよく、具体的には例えば、アルミナ、シリカ、セリア、ジルコニア等、及びこれらの複合酸化物、例えばゼオライト等から構成される粒子から選択されてよい。
【0043】
無機バインダーは、例えば、アルミナゾル、チタニアゾル等であってよい。
【0044】
〈第2の触媒コート層〉
本発明の排ガス浄化用触媒装置における第2の触媒コート層は、白金及びパラジウムを含み、白金の質量とパラジウムの質量との比が、NOの酸化反応の活性と、第2の触媒コート層の耐熱性とが高水準で両立するのに好適な比に調整されており、かつ、排ガス流れ下流側の上層に配置されている。
【0045】
第2の触媒コート層中の白金の質量(W
Pt2)とパラジウムの質量(W
Pd2)との比(W
Pt2/W
Pd2)は、NOの酸化反応に対する触媒活性を高くする観点から、4.50超であり、5.00以上、6.00以上、8.00以上、10.00以上、12.00以上、又は15.00以上であってよい。一方で、第2の触媒コート層のNOの酸化活性と耐熱性とを両立させる観点から、第2の触媒コート層中の比(W
Pt2/W
Pd2)は、25.0以下であり、22.0以下、20.0以下、18.0以下、16.0以下、又は15.0以下であってよい。
【0046】
第2の触媒コート層に含有される白金の質量(W
Pt2)とパラジウムの質量(W
Pd2)との合計(W
Pt2+Pd2)の、基材容量1Lに対する割合は、例えば、0.60g/L以上、0.30g/L以上、1.40g/L以上、又は0.50g/L以上であってよく、例えば、1.00g/L以下、0.90g/L以下、又は0.75g/L以下であってよい。
【0047】
第2の触媒コート層中の白金及びパラジウムは、第1の触媒コート層におけるのと同様の担体粒子上に、両者一緒に、又はそれぞれ別個に担持されていてよい。
【0048】
第2の触媒コート層の長さは、ガス中のNOが第2の触媒コート層上で十分に酸化されてNO
2を生成するとの観点から、基材の長さに対して、45%以上であり、50%以上、60%以上、70%以上、又は80%以上であってよい。一方で、流入した排ガスが、第1の触媒コート層と十分に接触して、HC濃度が低くなった後に第2の触媒コート層と接触し、第2の触媒コート層中のPdのHC被毒を抑制する観点から、第2の触媒コート層の長さは、基材の長さに対して、95%以下であり、90%以下、85%以下、80%以下、又は75%以下であってよい。
【0049】
第2の触媒コート層は、必要に応じて、第1の触媒コート層におけるのと同様のその他の成分を含有していてよい。その他の成分は、例えば、白金及びパラジウムを担持していない酸化物粒子、無機バインダー、白金及びパラジウム以外の貴金属(例えばロジウム等)等であってよい。
【0050】
〈第3の触媒コート層〉
本発明の排ガス浄化用触媒装置における第3の触媒コート層は、少なくともパラジウムを含み、任意的に更に白金を含んでよい。第3の触媒コート層は、白金の質量とパラジウムの質量との比が、COの酸化反応に好適な比に調整されており、かつ、排ガス流れ下流側の下層に配置されている。
【0051】
第3の触媒コート層中の白金の質量(W
Pt3)とパラジウムの質量(W
Pd3)との比(W
Pt3/W
Pd3)は、COの酸化反応に対する触媒活性を高くする観点から、0.12以下であり、0.11以下、0.10以下、0.09以下、0.08以下、又は0.05以下であってよい。第3の触媒コート層には、白金が含まれていなくてもよい。
【0052】
第3の触媒コート層に含有される白金の質量(W
Pt3)とパラジウムの質量(W
Pd3)との合計(W
Pt3+Pd3)の、基材容量1Lに対する割合は、例えば、0.15g/L以上、0.20g/L以上、又は0.25g/L以上であってよく、例えば、0.50g/L以下、0.45g/L以下、0.40g/L以下、又は0.35g/L以下であってよい。
【0053】
第3の触媒コート層中の白金、及び存在する場合にはパラジウムは、第1の触媒コート層におけるのと同様の担体粒子上に、両者一緒に、又はそれぞれ別個に担持されていてよい。
【0054】
第3の触媒コート層の長さは、ガス中のCOが第3の触媒コート層上で十分に酸化されるとの観点から、基材の長さに対して、45%以上であり、50%以上、60%以上、70%以上、又は80%以上であってよい。一方で、流入した排ガスが、第1の触媒コート層と十分に接触して、HC濃度が低くなった後に第3の触媒コート層と接触し、第3の触媒コート層中のPdのHC被毒を抑制する観点から、第3の触媒コート層の長さは、基材の長さに対して、95%以下であり、90%以下、85%以下、80%以下、又は75%以下であってよい。
【0055】
第3の触媒コート層は、必要に応じて、第1の触媒コート層におけるのと同様のその他の成分を含有していてよい。その他の成分は、例えば、白金及びパラジウムを担持していない酸化物粒子、無機バインダー、白金及びパラジウム以外の貴金属(例えばロジウム等)等であってよい。
【0056】
〈第1〜第3の触媒コート層中の、白金及びパラジウムの総量〉
第1〜第3の触媒コート層中の白金の質量及びパラジウムの質量の総計(W
Pt1+Pdt1+W
Pt2+Pd2+W
Pt3+Pd3)の、基材容量1Lに対する割合は、排ガス成分の酸化活性を十分に高くするとの観点から、例えば、1.50g/L以上、1.75g/L以上、2.00g/L以上、又は2.25g/L以上であってよく、排ガス浄化用酸化触媒装置の製造コストを抑制するとの観点から、例えば、4.00g/L以下、3.50g/L以下、3.00g/L以下、2.75g/L以下、又は2.50g/L以下であってよい。
【0057】
〈基材〉
本発明における基材としては、排ガス浄化用触媒の基材として一般に使用されているものを使用してよい。例えば、コージェライト、SiC、金属、金属酸化物粒子等によって構成される、フロースルー型(「オープンフロー型」ともいう)の基材であってよく、例えば、モノリスハニカム基材等であってよい。モノリスハニカム基材は、典型的には、略円柱状又は略多角柱状の外形を有し、軸方向に連通する多数のセルを有していてよい。
【0058】
基材の容量は、例えば、0.1L(リットル)以上、0.2L以上、0.3L以上、0.4L以上、又は0.5L以上であってよく、例えば、4.0L以下、3.5L以下、3.0L以下、2.5L以下、2.0L以下、又は1.5L以下であってよい。
【0059】
本発明の排ガス浄化用触媒装置において、基材は、その長さの全部にわたって、第1〜第3の触媒コート層のうちの少なくとも1つに覆われていてよい。基材が長さの全部にわたって第1〜第3の触媒コート層のうちの少なくとも1つに覆われていることにより、基材と、第1〜第3の触媒コート層との熱膨張率の違いによる基材の破壊を抑制することができる。
【0060】
基材が長さの全部にわたって第1〜第3の触媒コート層のうちの少なくとも1つに覆われているとは、具体的には例えば、第1の触媒コート層が基材の排ガス入口側端部から排ガス下流方向に向けて存在し、第2の触媒コート層及び第3の触媒コート層が、それぞれ、基材の排ガス出口側端部から排ガス上流方向に向けて存在し、かつ、第1の触媒コート層の長さと、第2の触媒コート層の長さ及び第3の触媒コート層の長さのうちの長い方の長さと、の合計が、基材の長さ以上である場合が挙げられる。
【0061】
第1の触媒コート層の長さと、第2の触媒コート層の長さ及び第3の触媒コート層の長さのうちの長い方の長さとの合計は、基材の長さを超えてもよい。この場合、第1の触媒コート層と、第2の触媒コート層及び第3の触媒コート層の少なくとも一方とが、基材上で積層して存在している積層領域を有することになる。この積層領域では、第1の触媒コート層が上層であってよい。
【0062】
図1の排ガス浄化用触媒装置では、第1の触媒コート層(1)が基材(5)の排ガス入口側端部から排ガス下流方向に向けて存在し、第2の触媒コート層(2)及び第3の触媒コート層(3)が、それぞれ、基材(5)の排ガス出口側端部から排ガス上流方向に向けて存在し、第2の触媒コート層(2)の長さ(L
2)よりも第3の触媒コート層(3)の長さ(L
3)の方が長く、かつ、第1の触媒コート層(1)の長さ(L
1)と、第3の触媒コート層(3)の長さ(L
3)との合計が、基材(5)の長さ(d)を超えており、これにより、基材(5)が長さ(d)の全部にわたって第1〜第3の触媒コート層のうちの少なくとも1つに覆われている。
【0063】
図1の排ガス浄化用触媒装置では更に、第1の触媒コート層(1)と、第2の触媒コート層(2)及び第3の触媒コート層(3)とが、基材上で積層して存在している積層領域を有しており、この積層領域では、第1の触媒コート層(1)が上層である。
【0064】
《排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法》
本実施形態の排ガス浄化用酸化触媒装置は、基材上の所定の位置に、第1〜第3の触媒コート層を形成することにより、製造されてよい。具体的には例えば、以下の方法によって製造されてよい。
【0065】
第3の触媒コート層形成用スラリーを、所望の基材の排ガス出口側端部から所定の長さで塗布し、次いで焼成して、第3の触媒コート層を形成すること、
第2の触媒コート層形成用スラリーを、第3の触媒コート層形成後の基材の排ガス出口側端部から所定の長さで塗布し、次いで焼成して、第2の触媒コート層を形成すること、及び
第1の触媒コート層形成用スラリーを、第2及び第3の触媒コート層形成後の基材の排ガス入口側端部から所定の長さで塗布し、次いで焼成して、第1の触媒コート層を形成すること
を含む、排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法。
【0066】
基材としては、本実施形態の排ガス浄化用酸化触媒装置における基材として上記に例示した基材から、適宜に選択して用いてよい。
【0067】
第1〜第3の触媒コート層形成用スラリーは、それぞれ、所定割合の白金及びパラジウム、並びにこれらを同時に又はそれぞれ別個に担持している酸化物粒子、並びに任意的に使用されるその他の成分が、例えば水中に分散されているスラリーであってよい。第3の触媒コート層形成用スラリーは、所望の排ガス浄化用酸化触媒装置における第3の触媒コート層の組成に応じて、白金を含まなくてよい場合がある。
【0068】
白金及びパラジウムを同時に又はそれぞれ別個に担持している酸化物粒子は、所望の貴金属前駆体と酸化物粒子を適当な媒体、例えば水中で混合し、次いで焼成することによって調製されてよい。貴金属前駆体は、白金又はパラジウムの、ハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩等であってよい。
【0069】
第1〜第3の触媒コート層形成用スラリー中の各成分の種類及び量は、所望の排ガス浄化用酸化触媒装置における第1〜第3の触媒コート層の組成に応じて、適宜に設定されてよい。
【0070】
基材上への各触媒コート層形成用スラリーの塗布は、例えば、公知のウォッシュコート法によってよい。基材上へ各触媒コート層形成用スラリーを塗布した後の焼成は、公知の方法によってよく、例えば、400℃以上又は450℃以上、例えば、1,000℃以下、900℃以下、又は800℃以下の温度において、例えば、10分以上、30分以上、又は1時間以上、例えば、48時間以下、24時間以下、12時間以下、又は6時間以下の時間で行われてよい。
【0071】
《排ガス浄化用触媒システム》
本発明の排ガス浄化用酸化触媒装置は、内燃機関、特にディーゼル機関から排出される排ガスを浄化するための触媒システムにおけるDOCとして好適である。したがって本発明の別の観点によると、本発明の排ガス浄化用酸化触媒装置、及びその排ガス流れ下流側の排ガス浄化用選択還元触媒装置を含む、排ガス浄化用触媒システムが提供される。
【0072】
本発明の排ガス浄化用触媒システムは、スートフィルター、後段酸化触媒等を更に有していてよく、例えば、排ガス流れの上流側から、本発明の排ガス浄化用酸化触媒装置、スートフィルター、排ガス浄化用選択還元触媒装置、及び後段酸化触媒の順に配置されていてよい。
【0073】
スートフィルターは、内燃機関から排出されるすすを捕集する。捕集したすすは、酸素又は本発明の排ガス浄化用酸化触媒装置からのNO
2によって酸化して処理されてよい。
【0074】
排ガス浄化用選択還元触媒装置は、例えば、尿素水を供給し、この尿素水から生成されるNH
3によって、本発明の排ガス浄化用酸化触媒装置によって生成したNO
2と、残りのNOとを還元し、N
2及びH
2Oとして浄化してよい。
【0075】
後段酸化触媒は、排ガス浄化用選択還元触媒装置から排出された過剰のNH
3を酸化して、N
2及びH
2Oとして浄化してよい。
【実施例】
【0076】
《触媒コート層形成用スラリーの調製》
〈第1の触媒コート層形成用スラリーの調製〉
(調製例1A)
Pt金属換算で2.00g相当の硝酸白金を含む水溶液、Pd金属換算で1.00g相当の硝酸パラジウムを含む水溶液、アルミナ50g、及び純水150gを混合し、100℃にて乾燥した後、500℃にて焼成して、Pt/Pd担持アルミナ粉末1を得た。
【0077】
Pt/Pd担持アルミナ粉末1の全量、β型ゼオライト粉末30g、アルミナゾルを2.0g(固形分換算)、及び純水180gを混合した後、整粒することにより、スラリー1Aを調製した。
【0078】
(調製例1B〜1E)
硝酸白金及び硝酸パラジウムの使用量を、それぞれ、表1に記載のとおりとした他は、調製例1Aと同様にして、スラリー1B〜1Eを調製した。表1には、調製例1A〜1Eで使用した原料成分の構成を合わせて示した。
【0079】
【表1】
【0080】
〈第2の触媒コート層形成用スラリーの調製〉
(調製例2A)
Pt金属換算で1.00g相当の硝酸白金を含む水溶液、Pd金属換算で0.20g相当の硝酸パラジウムを含む水溶液、アルミナ25g、及び純水70gを混合し、100℃にて乾燥した後、500℃にて焼成して、Pt/Pd担持アルミナ粉末2を得た。
【0081】
Pt/Pd担持アルミナ粉末2の全量、β型ゼオライト粉末20g、アルミナゾルを2.0g(固形分換算)、及び純水80gを混合した後、整粒することにより、スラリー2Aを得た。
【0082】
(調製例2B〜2E)
硝酸白金及び硝酸パラジウムの使用量を、それぞれ、表2に記載のとおりとした他は、調製例2Aと同様にして、スラリー2B〜2Eを調製した。表2には、調製例2A〜2Eで使用した原料成分の構成を合わせて示した。
【0083】
【表2】
【0084】
〈第3の触媒コート層形成用スラリーの調製〉
(調製例3A)
Pd金属換算で0.60g相当の硝酸パラジウムを含む水溶液、アルミナ40g、及び純水120gを混合し、100℃にて乾燥した後、500℃にて焼成して、Pd担持アルミナ粉末3aを得た。
【0085】
Pd担持アルミナ粉末3aの全量、β型ゼオライト粉末10g、アルミナゾル2.0g(固形分換算)、及び純水160gを混合した後、整粒することにより、スラリー3Aを得た。
【0086】
(調製例3B)
Pt金属換算で0.05g相当の硝酸白金を含む水溶液、Pd金属換算で0.55g相当の硝酸パラジウムを含む水溶液、アルミナ40g、及び純水120gを混合し、100℃にて乾燥した後、500℃にて焼成して、Pt/Pd担持アルミナ粉末3bを得た。
【0087】
Pt/Pd担持アルミナ粉末3bの全量、β型ゼオライト粉末10g、アルミナゾル2.0g(固形分換算)、及び純水160gを混合した後、整粒することにより、スラリー3Bを得た。
【0088】
(調製例3C〜3E)
硝酸白金及び硝酸パラジウムの使用量を、それぞれ、表3に記載のとおりとした他は、調製例3Bと同様にして、スラリー3C〜3Eを調製した。表3には、調製例3A〜3Eで使用した原料成分の構成を合わせて示した。
【0089】
【表3】
【0090】
〈比較用触媒コート層形成用スラリーの調製〉
(調製例4A)
Pt金属換算で2.00g相当の硝酸白金を含む水溶液、Pd金属換算で1.00g相当の硝酸パラジウムを含む水溶液、アルミナ50g、及び純水150gを混合し、100℃にて乾燥した後、500℃にて焼成して、Pt/Pd担持アルミナ粉末4aを得た。
【0091】
Pd金属換算で0.60g相当の硝酸パラジウムを含む水溶液、アルミナ40g、及び純水120gを混合し、100℃にて乾燥した後、500℃にて焼成して、Pd担持アルミナ粉末4bを得た。
【0092】
上記で得られたPt/Pd担持アルミナ粉末4aの全量、Pd担持アルミナ粉末4bの全量、β型ゼオライト粉末40g、アルミナゾルを固形分換算で4.0g、及び純水340gを混合した後、整粒することにより、スラリー4Aを得た。
【0093】
(調製例4B)
Pt金属換算で1.00g相当の硝酸白金を含む水溶液、Pd金属換算で0.20g相当の硝酸パラジウムを含む水溶液、アルミナ25g、及び純水70gを混合し、100℃にて乾燥した後、500℃にて焼成して、Pt/Pd担持アルミナ粉末4cを得た。
【0094】
Pd金属換算で0.60g相当の硝酸パラジウムを含む水溶液、アルミナ40g、及び純水120gを混合し、100℃にて乾燥した後、500℃にて焼成して、Pd担持アルミナ粉末4dを得た。
【0095】
上記で得られたPt/Pd担持アルミナ粉末4cの全量、Pd担持アルミナ粉末4dの全量、β型ゼオライト粉末30g、アルミナゾルを固形分換算で4.0g、及び純水240gを混合した後、整粒することにより、スラリー4Bを得た。
【0096】
調製例4A及び4Bで使用した原料成分の構成を、表4にまとめた。
【0097】
【表4】
【0098】
《実施例1》
〈触媒装置の製造〉
基材(5)として、直径129mm、長さ150mmのコージェライト製のフロースルー型ハニカム基材(容量1.96L)を用いて、2(a)に示す触媒コート層構成の触媒装置を製造した。具体的な製造は、下記にようにして行った。
【0099】
調製例3Aにしたがって調製したスラリー3Aの全量を、基材(5)の排ガス出口側端面上に配置し、反対側端面である排ガス入口側端面から吸引して、コーティング層の長さが基材(5)のガス出口側端部から基材(5)の長さ(d)の80%の長さになるようにコーティングを施した。
【0100】
次いで、コーティング層を100℃にて乾燥した後、500℃にて加熱処理して、基材(5)上に第3の触媒コート層(3)を形成した。この第3の触媒コート層(3)は、基材(5)の排ガス出口側端部から排ガス上流方向に向けて存在し、かつ、第3の触媒コート層(3)の長さ(L
3)は、基材(5)の長さ(d)の80%であった。
【0101】
次に、調製例2Aにしたがって調製したスラリー2Aの全量を、第3の触媒コート層形成後の基材(5)の排ガス出口側端面上に配置し、反対側端面である排ガス入口側端面から吸引して、コーティング層の長さが基材(5)の該ガス出口側端部から基材(5)の長さ(d)の80%の長さになるようにコーティングを施した。
【0102】
次いで、コーティング層を100℃にて乾燥した後、500℃にて加熱処理して、基材(5)上の第3の触媒コート層(3)の上層に、第2の触媒コート層(2)を形成した。この第2の触媒コート層(2)は、基材(5)の排ガス出口側端部から排ガス上流方向に向けて、第3の触媒コート層(3)の上層に存在し、かつ、第2の触媒コート層(2)の長さ(L
2)は、基材(5)の長さ(d)の80%であった。
【0103】
続いて、調製例1Aにしたがって調製したスラリー1Aの全量を、第2の触媒コート層(2)及び第3の触媒コート層(3)を形成した後の基材(5)の排ガス入口側端面上に配置し、反対側端面である排ガス出口側端面から吸引して、コーティング層の長さが基材(5)のガス入口側端部から基材(5)の長さ(d)の40%の長さになるようにコーティングを施した。
【0104】
次いで、コーティング層を100℃にて乾燥した後、500℃にて加熱処理して、第2の触媒コート層(2)及び第3の触媒コート層(3)を有する基材(5)上に、第1の触媒コート層(1)を形成することにより、触媒装置を製造した。この第1の触媒コート層(1)は、基材(5)の排ガス入口側端部から排ガス下流方向に向けて存在し、かつ、第1の触媒コート層(1)の長さ(L
1)は、基材(5)の長さ(d)の40%であった。第1の触媒コート層(1)と、第2の触媒コート層(2)及び第3の触媒コート層(3)との積層部分では、第1の触媒コート層(1)が最上層であった。
【0105】
〈触媒装置の評価〉
触媒装置を、リーン雰囲気下で耐久後、排気量2,500ccのコモンレール式ディーゼルエンジンの排ガス経路に装着し、NEDC(新欧州ドライビングサイクル)モードにて運転したときのHCの浄化率、NO
2の生成率、及びCOの浄化率を測定した。具体的には、負荷の調節により運転中の平均排ガス温度を160℃に設定して、エンジンをNEDCモードにて運転し、このNEDCモード運転中に排出された排ガス中の各種ガスの合計量を、触媒装置の入口及び出口においてそれぞれ測定した。そして、得られた測定値を下記式に代入することによって、NEDCモード運転中のHCの浄化率、NO
2の生成率、及びCOの浄化率を算出した。その結果、HC浄化率は83%、NO
2生成率は30%、CO浄化率は85%であった。
【数1】
【0106】
《実施例2〜6及び比較例1〜7》
第1〜第3の各コート層の形成に用いたスラリーを、それぞれ、表5に記載のものに変更した他は、実施例1と同様にして、
図2(a)に示す触媒コート層構成の触媒装置を製造し、評価した。評価結果は、実施例1の評価結果とともに表6に示した。
【0107】
《比較例8》
図2(b)に示す触媒コート層構成の触媒装置を製造し、評価した。具体的な製造及び評価は、下記のようにして行った。基材(5)としては、実施例1と同じフロースルー型ハニカム基材を用いた。
【0108】
〈触媒装置の製造〉
調製例2Aにしたがって調製したスラリー2Aの全量を、基材(5)の排ガス出口側端面上に配置し、反対側端面である排ガス入口側端面から吸引して、コーティング層の長さが、基材(5)の排ガス出口側端面から、基材(5)の長さ(d)の80%の長さになるようにコーティングを施した。
【0109】
次いで、コーティング層を100℃にて乾燥した後、500℃にて加熱処理して、基材(5)上に第2の触媒コート層(2)を形成した。この第2の触媒コート層(2)は、基材(5)の排ガス出口側端部から排ガス上流方向に向けて存在し、かつ、第2の触媒コート層(2)の長さ(L
2)は、基材(5)の長さ(d)の80%であった。
【0110】
続いて、調製例4Aにしたがって調製したスラリー4Aの全量を、第2の触媒コート層(2)形成後の基材(5)の排ガス入口側端面上に配置し、反対側端面である排ガス出口側端面から吸引して、コーティング層の長さが基材(5)の排ガス入口側端部から基材(5)の長さ(d)の40%の長さになるようにコーティングを施した。
【0111】
次いで、コーティング層を100℃にて乾燥した後、500℃にて加熱処理して、第2の触媒コート層(2)を有する基材(5)上に第1の触媒コート層(1)を形成することにより、触媒装置を製造した。この第1の触媒コート層(1)は、基材(5)の排ガス入口側端部から排ガス下流方向に向けて存在し、かつ、第1の触媒コート層(1)の長さ(L
1)は、基材(5)の長さ(d)の40%であった。第1の触媒コート層(1)と、第2の触媒コート層(2)との積層部分では、第1の触媒コート層(1)が上層であった。
【0112】
〈触媒装置の評価〉
得られた触媒装置を、実施例1と同様にして評価した。結果は、表6に示した。
【0113】
《比較例9》
第1の触媒コート層及び第2の触媒コート層の形成に用いたスラリーを、それぞれ、表5に記載のものに変更した他は、比較例8と同様にして、
図2(b)に示す触媒コート層構成の触媒装置を製造し、評価した。結果は、表6に示した。
【0114】
【表5】
【0115】
【表6】
【0116】
表5及び表6中の比(W
Pt1/W
Pd1、W
Pt2/W
Pd2、W
Pt3/W
Pd3)は、第1〜第3の触媒コート層中の白金の質量(W
Pt1、W
Pt2、W
Pt3)と、パラジウムの質量(W
Pd1、W
Pd2、W
Pd3)との比を意味する。
【0117】
表6を参照すると、第1の触媒コート層における白金の質量(W
Pt1)とパラジウムの質量(W
Pd1)との比(W
Pt1/W
Pd1)が、本発明所定の範囲よりも小さい比較例1、及び本発明所定の範囲よりも大きい比較例2の触媒装置では、HC浄化率が低かったとともに、特にCO浄化率が低い値を示した。これに対し、第1の触媒コート層における両者の比(W
Pt1/W
Pd1)が本発明所定の範囲内である実施例1〜3の触媒装置では、HC浄化率が78%以上、NO
2生成率が28%以上、及びCO浄化率が80%以上と、いずれも高い値を示した。
【0118】
比較例1及び2の触媒装置によるHC浄化率及びCO浄化率が低かったのは、第1の触媒コート層中の白金の質量(W
Pt1)とパラジウムの質量(W
Pd1)との比(W
Pt1/W
Pd1)が、HC浄化に対して適正ではなかったことに起因すると考えられる。即ち、比較例1及び2の触媒装置では、触媒装置に流入した排ガス中のHCが第1の触媒コート層によって十分に浄化されず、第1の触媒コート層の通過後にもHC濃度が高い値に維持されていたため、第3の触媒コート層中のPdのHC被毒が進行することにより、第3の触媒コート層のCO浄化能が損なわれたと考えられる。
【0119】
これに対して、実施例1〜3の触媒装置では、第1の触媒コート層中の白金の質量(W
Pt1)とパラジウムの質量(W
Pd1)との比(W
Pt1/W
Pd1)がHC浄化に対して適正であったと考えられる。そのため、触媒装置に流入した排ガス中のHC濃度が第1の触媒コート層の通過後には十分に低くなり、第3の触媒コート層中のPdの被毒が抑制されて、第3の触媒コート層が所期のCO浄化能を発揮したと考えられる。
【0120】
表6を参照すると、第2の触媒コート層中の白金の質量(W
Pt2)とパラジウムの質量(W
Pd2)との比(W
Pt2/W
Pd2)が、本発明所定の範囲よりも小さい比較例3、及び本発明所定の範囲よりも大きい比較例4の触媒装置では、NO
2生成率が低い値を示した。これらに対し、第2の触媒コート層における両者の比(W
Pt3/W
Pd3)が本発明所定の範囲内である実施例1、4、及び5の触媒装置では、NO
2生成率が30%以上の高い値を示した。第2の触媒コート層中の白金の質量(W
Pt2)とパラジウムの質量(W
Pd2)との比(W
Pt2/W
Pd2)が本発明所定の範囲であると、Ptによる酸化反応の迅速性と、Pdによる耐熱性とが両立され、これによってNOの酸化によるNO
2生成が適切に進行したためと考えられる。
【0121】
同様に、第3の触媒コート層中の白金の質量(W
Pt3)とパラジウムの質量(W
Pd3)との比(W
Pt3/W
Pd3)が本発明所定の範囲を外れる比較例5〜7の触媒装置では、CO浄化率が低い値を示した。これに対し、第3の触媒コート層における両者の比(W
Pt3/W
Pd3)が本発明所定の範囲内である実施例1及び6の触媒装置では、CO浄化率がいずれも83%と高い値を示した。第3の触媒コート層中の白金の質量(W
Pt3)とパラジウムの質量(W
Pd3)との比(W
Pt3/W
Pd3)が本発明所定の範囲であることは、COの酸化浄化に対して適切な範囲であることが理解される。
【0122】
表6によると、更に、触媒コート層を2つしか有さない比較例8及び9の触媒装置では、HC浄化率、CO浄化率、及びNO
2生成率のすべてが同時に高い値を示すことはなかった。これは、白金の質量とパラジウムの質量との比の適切な値が、HCの酸化、COの酸化、及びNOの酸化それぞれで互いに異なるため、2つの触媒コート層でこれら3つの反応をカバーすることができなかったためと考えられる。
【0123】
《実施例7〜12及び比較例10〜15》
図3(a)〜(d)、
図4(a)〜(d)、及び
図5(a)〜(d)にそれぞれ示す触媒コート層構成の触媒装置を製造し、評価した。
【0124】
〈触媒装置の製造〉
第1〜第3の触媒コート層を形成する際に、各所定の触媒コート層形成用スラリーを基材(5)の排ガス入口端面又は出口側端面上に配置した後に、反対側端面から吸引する際の吸引風量を調節して、各コーティング層の端面からの長さの、基材(5)の長さ(d)に対する割合を変更して、第1〜第3の触媒コート層(1、2、3)の長さ(L
1、L
2、L
3)をそれぞれ表7に記載のとおりとした他は実施例1と同様にして、触媒装置をそれぞれ製造した。
【0125】
〈触媒装置の評価〉
得られた触媒装置を、実施例1と同様にして評価した。評価結果は、実施例1の評価結果とともに、表7にそれぞれ示した。
【0126】
【表7】
【0127】
表7中の比(W
Pt1/W
Pd1、W
Pt2/W
Pd2、W
Pt3/W
Pd3)は、それぞれ、第1〜第3の触媒コート層中の白金の質量(W
Pt1、W
Pt2、W
Pt3)と、パラジウムの質量(W
Pd1、W
Pd2、W
Pd3)との比を意味する。
【0128】
表7によると、第1の触媒コート層(1)の長さ(L
1)が、本発明所定の範囲よりも短い比較例10では、HC浄化率及びCO浄化率が低い値を示した。この比較例10では、第1の触媒コート層(1)の長さ(L
1)が過小であったため、HCの酸化反応の進行が不十分であったと考えられる。そのため、第1の触媒コート層の通過後にもHC濃度が高い値に維持されており、第3の触媒コート層中のPdのHC被毒により、第3の触媒コート層のCO浄化能が損なわれたと考えられる。
【0129】
更に、第1の触媒コート層(1)の長さ(L
1)が、本発明所定の範囲よりも長い比較例11の触媒装置では、HC浄化率が低い値を示し、CO浄化率及びNO
2生成率も高い値とはならなかった。
【0130】
比較例11では、第1の触媒コート層(1)の長さ(L
1)が過大であるため、第1の触媒コート層(1)に含まれる白金及びパラジウムが過大な長さに分散されて存在している。そのため、第1の触媒コート層(1)の単位長さ当たりの白金及びパラジウムの濃度が低くなり、HCの酸化によって発生する発熱量が不十分となって、第1の触媒コート層(1)の「着火」に至らなかったと考えられる。そのため、第1の触媒コート層の通過後にもHC濃度が高い値に維持されており、第3の触媒コート層中のPdのHC被毒により、第3の触媒コート層のCO浄化能が損なわれたと考えられる。
【0131】
また、比較例11の触媒装置でNO
2生成率が低かったのは、上層である第1の触媒コート層(1)の長さ(L
1)が長く、したがって、第2の触媒コート層(2)のうちの下層となっている部分の割合が多くなり、これにより第2の触媒コート層(2)の活性点へのNO吸着が制限されたためと考えられる。
【0132】
これらに対して第1の触媒コート層(1)の長さ(L
1)が本発明所定の範囲内である実施例1、7、及び8の触媒装置では、HC浄化率が81%以上と高く、NO
2生成率が28%以上、CO浄化率が82%以上と、いずれも高い値を示した。
【0133】
第2の触媒コート層(2)の長さ(L
2)が、本発明所定の範囲よりも短い比較例12では、NO
2生成率が低かった。比較例12では、第2の触媒コート層(2)の長さ(L
2)が過小であったため、NOの酸化によるNO
2の生成反応の進行が不十分であったと考えられる。
【0134】
一方、第2の触媒コート層(2)の長さ(L
2)が、本発明所定の範囲よりも長く、基材(5)の長さ(d)と同じ長さの第2の触媒コート層(2)を有する比較例13の触媒装置でも、NO
2生成率が低かった。比較例13の触媒装置は、第2の触媒コート層(2)の長さ(L
2)が基材(5)の長さ(d)と同じであり、流入する排ガスに対して前端部が露出されている。そのため、排ガスは、HCが浄化される前の高い濃度のまま、第2の触媒コート層(2)の前端部に直接接触して、PdがHC被毒され、これにより第2の触媒コート層(2)のNO酸化能が損なわれたと考えられる。
【0135】
これらに対して、第2の触媒コート層(2)の長さ(L
2)が本発明所定の範囲内である実施例1、9、及び10の触媒装置では、24%以上の高いNO
2生成率を示した。
【0136】
表7によると、更に、第3の触媒コート層(3)の長さ(L
3)が、本発明所定の範囲よりも短い比較例14、及び本発明所定の範囲よりも長く、基材(5)の長さ(d)と同じ長さの第3の触媒コート層(3)を有する比較例15の触媒装置では、CO浄化率が低かった。
【0137】
第3の触媒コート層(3)の長さ(L
3)が過小の比較例14では、COの酸化反応の進行が不十分であったため、CO浄化率が低くなったと考えられる。
【0138】
比較例15の触媒装置は、第3の触媒コート層(3)の長さ(L
3)が基材(5)の長さ(d)と同じであり、流入する排ガスに対して前端部が露出されている。そのため、排ガスは、HCが浄化される前の高い濃度のまま、第3の触媒コート層(3)の前端部に直接接触して、第3の触媒コート層(3)中のPdが流入排ガス中のHCによって被毒されたため、第3の触媒コート層(3)のCOの浄化性能が損なわれたと考えられる。これらに対して、第3の触媒コート層(3)の長さ(L
3)が本発明所定の範囲内である実施例1、11、及び12の触媒装置では、83%以上の高いCO浄化率を示した。
【0139】
以上説明してきたとおり、本発明の排ガス浄化用酸化触媒装置は、基材上に、排ガス流れ上流側の第1の触媒コート層、排ガス流れ下流側上層の第2の触媒コート層、及び排ガス流れ下流側下層の第3の触媒コート層を有し、かつこれら第1〜第3の触媒コート層のそれぞれは、長さ、及び白金の質量とパラジウムの質量との比が、最適の範囲に調整されている。そのため、本発明の触媒装置は、HCの酸化、NOの酸化によるNO
2の生成、及びCOの酸化のすべてを高い効率で行うことができ、例えば、ディーゼル機関から排出される排ガスを浄化するための触媒システムにおけるDOCとして、極めて好適である。