(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
患部からの光をIR成分、青色成分、赤色成分、緑色成分にそれぞれ分解するIRプリズム、青色プリズム、赤色プリズムおよび緑色プリズムからなる4つのプリズムを有し、使用者が手で把持可能なカメラヘッドを有する、手術時に使用される内視鏡であって、
前記IRプリズム、前記青色プリズム、前記赤色プリズム、前記緑色プリズムのうち、前記患部に最も近い側に配置されたプリズムを第1プリズム、前記第1プリズムに隣接する前記患部から2番目に近い側に配置されたプリズムを第2プリズム、前記第2プリズムに隣接する前記患部から3番目に近い側に配置されたプリズムを第3プリズムとし、
前記第1プリズムと前記第2プリズムとの第1の境界、および前記第2プリズムと前記第3プリズムとの第2の境界で光を反射させ、
前記IRプリズム、前記青色プリズム、前記赤色プリズム、前記緑色プリズムのそれぞれの出射面に対向させて接続して前記カメラヘッド内に設けられ、前記IRプリズム、前記青色プリズム、前記赤色プリズム、前記緑色プリズムのそれぞれで反射した出射光を入射して撮像する、IRイメージセンサ、青色イメージセンサ、赤色イメージセンサ、緑色イメージセンサのそれぞれを更に有する、
内視鏡。
前記IRプリズムを介して出力されるIR画像と、前記青色プリズム、前記赤色プリズムおよび前記緑色プリズムから出力されるRGB画像とを同時出力、もしくは前記IR画像と前記RGB画像とが重畳された合成画像を出力する信号出力部を更に有する、
請求項1に記載の内視鏡。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0010】
(本開示の一形態を得るに至った経緯)
【0011】
内視鏡を用いた手術では、蛍光物質であるインドシアニングリーン(ICG:Indocyamine Green)を体内に投与し、過剰に集積した腫瘍等の部位(患部)に近赤外光を当てて患部を光らせ、患部を含む部位を撮像することがある。ICGは、近赤外光(例えばピーク波長805nm、750〜810nm)で励起すると、より長波長の近赤外光(例えばピーク波長835nm)で蛍光発光する物質である。
【0012】
イメージセンサが1個である単板式カメラが、IR成分を含む光を受光して患部の画像を取得する場合、イメージセンサの入射面に4分割されたR(赤色)成分,G(緑色)成分,B(青色)成分、及びIR成分用のフィルタを設ける。そのため、所望の色再現性及び解像度を得ようとすると、イメージセンサのサイズが大きくなる。このため、内視鏡に単板式カメラを適用することは困難である。
【0013】
また、特許文献1に記載の内視鏡システムに示されるように、3色分解プリズムを用いた3板式カメラが、IR成分を含む光を受光して患部の画像を取得する場合、
図8に示すように、IR成分(例えば800nm以上の波長を有する光)の信号強度が小さい。
【0014】
図8は、3色分解プリズムの分光特性を示すグラフである。
図8では、縦軸は各色の透過率を表し、横軸は波長を表す。この透過率は、R成分,G成分,B成分用の各プリズムへの入射光の光量と、各プリズムに対応する撮像素子への入射光の光量と、の比率に相当する。h11は、R成分の光の透過率を示す。h12は、G成分の光の透過率を示す。h13は、B成分の光の透過率を示す。尚、h11は、IR成分の光の透過率も含んでいる。
【0015】
図8に示すように、R成分(波形h11参照)の光を受光するイメージセンサによりIR成分の光が取得されるが、IR成分(例えば波長800nm以上の成分)の透過率は、R成分,G成分,B成分の光の透過率と比較すると、低い。そのため、IR成分の信号強度が小さく、IR成分により得られる画像(IR画像)は不鮮明となる。
【0016】
一方、特許文献1の内視鏡システムがIR成分の信号強度を大きくするためにIR成分を増幅すると、画像がぼけたりノイズが強調されたりする。そのため、IR画像の画質が低下する。従って、増幅されたIR成分により得られた画像では、IR成分を含む所望の部位(患部)を目視することが困難である。
【0017】
以下、赤外光成分を加味した画質を向上できる内視鏡及び内視鏡システムについて説明する。
【0018】
以下の実施形態の内視鏡は、腹腔内等の体内の部位(対象物)を観察するために用いられる。
【0019】
(第1の実施形態)
[内視鏡の構成]
図1は第1の実施形態における内視鏡10の外観を示す模式図である。
図2は内視鏡10の概略構成を示す模式図である。内視鏡10は、使用者が片手で取扱い可能な医療器具である。内視鏡10は、例えば、スコープ11、マウントアダプタ12、リレーレンズ13、カメラヘッド14、操作スイッチ19及び光源コネクタ18を含んで構成される。
【0020】
スコープ11は、体内に挿入される、例えば硬性内視鏡の主要部であり、末端から先端まで光を導くことが可能な細長い導光部材である。スコープ11は、先端に撮像窓11zを有し、撮像窓11zから入射した光学像が伝送される光ファイバと、光源コネクタ18から導入された光Lを先端まで導く光ファイバと、を有する。撮像窓11zには、光学ガラスや光学プラスチック等の光学材料が用いられる。
【0021】
マウントアダプタ12は、スコープ11をカメラヘッド14に取り付けるための部材である。マウントアダプタ12には、種々のスコープが着脱自在に装着可能である。また、マウントアダプタ12には、光源コネクタ18が装着される。
【0022】
光源コネクタ18は、光源装置(不図示)から、体内の部位(患部等)を照明するための照明光を導入する。この照明光は、可視光及びIR光を含む。光源コネクタ18に導入された光は、スコープ11を通ってスコープ11の先端まで導かれ、撮像窓11zから体内の部位(患部等)に照射される。光源は、例えば、LED光源である。尚、光源は、LED光源の代わりに、キセノンランプやハロゲンランプ等の光源でもよい。
【0023】
リレーレンズ13は、スコープ11を通して伝達される光学像を撮像面に収束させる。リレーレンズ13は、複数のレンズを有し、操作スイッチ19の操作量に応じて、レンズを移動させて焦点調整及び倍率調整を行う。
【0024】
カメラヘッド14は、使用者が手で把持可能な筐体を有し、4色分解プリズム20(
図3参照)、4個のイメージセンサ230,231,232,233(
図3参照)、及び電子基板250を有する(
図5参照)。
【0025】
4色分解プリズム20は、リレーレンズ13で収束された光を、R光(R成分)、G光(G成分)、B光(B成分)、の3原色光及びIR光(IR成分)に分解する4板方式のプリズムである。イメージセンサ230〜233は、4色分解プリズム20で分解され、各々の撮像面に結像した光学像を画像信号(電気信号)に変換する。
【0026】
イメージセンサ230〜233には、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサが用いられる。
【0027】
4個のイメージセンサ230〜233は、IR成分、B成分、R成分、及びG成分の光をそれぞれ受光する専用のセンサである。そのため、1個のイメージセンサでIR成分、R成分、G成分、及びB成分の光を受光する単板式カメラと異なり、個々のイメージセンサとしてサイズの小さいイメージセンサを採用できる。例えば、1/3type(4.8mm×3.6mm)のサイズのイメージセンサが用いられる。尚、単板式のカメラの場合、少なくとも2/3type(8.8mm×6.6mm)のサイズのイメージセンサが必要であった。
【0028】
電子基板250(
図5参照)には、例えば、LVDS(Low Volt Digital Signal)方式で信号を出力する信号出力回路と、タイミングジェネレータ(TG:Timing Generator)の回路(TG回路)と、を含む回路が搭載される。
【0029】
信号出力回路は、各イメージセンサ230〜233で撮像された画像のRGB信号及びIR信号を、LVDS(Low Volt Digital Signal)方式でパルス信号として出力する。TG回路は、カメラヘッド14内の各部にタイミング信号(同期信号)等を供給する。尚、RGB信号は、R成分、G成分、及びB成分の少なくとも1つを含む信号である。
【0030】
カメラヘッド14には、後述するCCU(Camera Control Unit)30に対して画像信号を伝送するための信号ケーブル14zが装着される。
【0031】
[4色分解プリズムの構成]
図3は4色分解プリズム20の構造の一例を示す図である。
【0032】
4色分解プリズム20は、リレーレンズ13により導かれる入射光を、R成分、G成分、B成分の3原色の光及びIR成分の光に分解する。4色分解プリズム20では、IR分解プリズム220、青色分解プリズム221、赤色分解プリズム222、及び緑色分解プリズム223が、光軸方向に順に組み付けられる。
【0033】
IR用のイメージセンサ230は、IR分解プリズム220の出射面220cと対向して配置される。青色用のイメージセンサ231は、青色分解プリズム221の出射面221cと対向して配置される。赤色用のイメージセンサ232は、赤色分解プリズム222の出射面222cと対向して配置される。緑色用のイメージセンサ233は、緑色分解プリズム223の出射面223cと対向して配置される。
【0034】
イメージセンサ230〜233は、例えば、水平(H)方向及び垂直(V)方向に配列した各画素を含むCCD又はCMOSイメージセンサである。イメージセンサ230〜233は、IR及びR,G,Bの各色に分解された光が各撮像面に結像した光学像を電気信号に変換する。
【0035】
IR分解プリズム220では、入射光は、IR分解プリズム220の入射面220aに入射される。入射面220aと対向する反射面220bで反射された光は、IR分解プリズム220の入射面220aの境界で全反射され、入射面220aと対向する出射面220cから出射され、IR用のイメージセンサ230に入射される。反射面220bには、IR反射膜240が例えば蒸着によって形成される。IR分解プリズム220は、入射光のうち、IR成分の光を反射させ、その他の光(B成分、R成分及びG成分の光)を透過させる。IR用のイメージセンサ230は、反射面220b及び入射面220aで反射された光を入射し、受光する。このようにIR分解プリズム220において光が進行するよう、IR分解プリズム220が成形される。
【0036】
青色分解プリズム221では、IR分解プリズム220を透過した光(入射光)は、青色分解プリズム221の入射面221aに入射される。入射面221aと対向する反射面221bで反射された光は、青色分解プリズム221の入射面221aの境界で全反射され、入射面221aと対向する出射面221cから出射され、青色用のイメージセンサ231に入射される。反射面221bには、青色反射膜241が例えば蒸着によって形成される。青色分解プリズム221は、入射光のうち、B成分の光を反射させ、その他の光(R成分及びG成分の光)を透過させる。青色用のイメージセンサ231は、反射面221b及び入射面221aで反射された光を入射し、受光する。このように青色分解プリズム221において光が進行するよう、青色分解プリズム221が成形される。
【0037】
赤色分解プリズム222では、青色分解プリズム221を透過した光(入射光)は、赤色分解プリズム222の入射面222aに入射される。入射面222aと対向する反射面222bで反射された光は、赤色分解プリズム222の入射面222aの境界で全反射され、入射面222aと対向する出射面222cから出射され、赤色用のイメージセンサ232に入射される。反射面222bには、赤色反射膜242が例えば蒸着によって形成される。赤色分解プリズム222は、入射光のうち、R成分の光を反射させ、その他の光(G成分の光)を透過させる。赤色用のイメージセンサ232は、反射面222b及び入射面222aで反射された光を入射し、受光する。このように赤色分解プリズム222において光が進行するよう、赤色分解プリズム222が成形される。
【0038】
緑色分解プリズム223では、赤色分解プリズム222を透過した光(入射光)は、緑色分解プリズム223の入射面223aに入射し、入射面223aと対向する出射面223cから出射され、緑色用のイメージセンサ233に入射される。このように緑色分解プリズム223において光が進行するよう、緑色分解プリズム223が成形される。
【0039】
ここで、IR用のイメージセンサ230は、そのまま各画素値(信号レベル)の電気信号を出力してもよいが、水平(H)及び垂直(V)方向に隣接する画素の画素値を加算するH/V画素加算処理を行い、H/V画素加算処理後の画素値の電気信号を出力してもよい。
【0040】
H/V画素加算されると、例えば、IR用のイメージセンサ230の画素値が「30」程度である場合、画素加算を行うことで、IR成分の画素値が「120」(=30×4)となる。
【0041】
従来のIR成分の画素値が「10」程度であるとすると、本実施形態の内視鏡10によれば、IR用のイメージセンサ230を独立に設けたことで、従来と比較すると、およそ3倍〜12倍のIR成分の画素値が得られる。
【0042】
また、本実施形態のRGB用の各イメージセンサ231,232,233の画素値が「100」程度であるとする。この場合、H/V画素加算を加味すると、R成分、G成分、B成分の各信号レベルとIR成分の信号レベルとが同程度となり、RGB画像及びIR画像を見易くなる。RGB画像は、R成分、G成分、B成分の少なくとも1つの信号により得られる画像である。IR画像は、IR成分の信号により得られる画像である。
【0043】
[4色分解プリズムの分光特性]
図4は4色分解プリズム20の分光特性の一例を示すグラフである。
図4の縦軸は、各透過率(%)を示し、各プリズムへの入射光の光量に対する、各プリズムに対するイメージセンサ230〜233への入射光の光量の比率に相当する。
図4の横軸は、各イメージセンサ230〜233に入射する光の波長(nm)を表す。
【0044】
図4では、波形h1(実線)は、IR用のイメージセンサ230に入射するIR成分の光の分光特性を示す。4色分解プリズム20に入射した光のうち、IR用のイメージセンサ230に入射するIR成分の光の透過率は、波長800〜1000nmにかけて、波長900nm付近で透過率が70%程度となるピーク波形を有する。
【0045】
波形h2(一点鎖線)は、赤色用のイメージセンサ232に入射するR成分の光の分光特性を示す。赤色用のイメージセンサ232に入射するR成分の光の透過率は、波長600nm付近で透過率が80%程度となるピーク波形を有する。
【0046】
波形h3(点線)は、青色用のイメージセンサ231に入射するB成分の光の分光特性を示す。青色用のイメージセンサ231に入射するB成分の光の透過率は、波長450nm近辺で透過率が60%を超えるピーク波形を有する。
【0047】
波形h4(二点鎖線)は、緑色用のイメージセンサ233に入射するG成分の光の分光特性を示す。緑色用のイメージセンサ233に入射するG成分の光の透過率は、波長530nm近辺で透過率が90%程度となるピーク波形を有する。
【0048】
このように、4色分解プリズム20で分散されたIR成分、R成分、B成分、及びG成分の光の透過率は、いずれも60%を超える。従って、IR成分、R成分、B成分、及びG成分の各画素値を好適に得られ、IR成分の信号を大きく増幅しなくても済む。これにより、患部を撮像した場合に、IR成分を含めて撮像画像の色再現性が向上する。
【0049】
[内視鏡システムの構成]
図5は内視鏡システム5の構成を示すブロック図である。内視鏡システム5は、内視鏡10、CCU30、及び表示部40を含んで構成される。内視鏡10のカメラヘッド14は、前述した4色分解プリズム20及びイメージセンサ230,231,232,233を有する。
図5では、カメラヘッド14は、更に、各素子駆動部141i,141r,141b,141g,駆動信号発生部142、同期信号発生部143、及び信号出力部145を有する。
【0050】
素子駆動部141iは、イメージセンサ230を駆動信号に従って駆動する。素子駆動部141rは、イメージセンサ231を駆動信号に従って駆動する。素子駆動部141bは、イメージセンサ232を駆動信号に従って駆動する。素子駆動部141gは、イメージセンサ233を駆動信号に従って駆動する。
【0051】
駆動信号発生部142は、各素子駆動部141i,141r,141b,141gに対し、駆動信号を発生する。同期信号発生部143は、タイミングジェネレータ(TG)開路の機能に相当し、駆動信号発生部142等に同期信号(タイミング信号)を供給する。
【0052】
信号出力部145は、信号ケーブル14zを介してイメージセンサ230,231,232,233からの電気信号を、例えばLVDS方式でCCU30に伝送する。信号出力部145は、信号ケーブル14zを介して、同期信号発生部143からの同期信号をCCU30に伝送してもよい。信号出力部145は、信号ケーブル14zを介して、操作スイッチ19の操作信号をCCU30に伝送してもよい。信号出力部145は、信号出力回路の機能に相当する。
【0053】
CCU30は、CCU30の内部又は外部のメモリ(不図示)が保持するプログラムを実行することで、各種機能を実現する。各種機能は、RGB信号処理部22、IR信号処理部23及び出力部28の機能を含む。
【0054】
RGB信号処理部22は、イメージセンサ231,232,233からのB成分、R成分、G成分の電気信号を、表示部40に表示可能な映像信号に変換し、出力部28に出力する。
【0055】
IR信号処理部23は、イメージセンサ230からのIR成分の電気信号を映像信号に変換し、出力部28に出力する。また、IR信号処理部23は、ゲイン調整部23zを有してもよい。ゲイン調整部23zは、IR用のイメージセンサ230からのIR成分の電気信号を映像信号に変換する際、増幅度(ゲイン)を調整する。ゲイン調整部23zは、例えば、RGB成分の映像信号の信号強度とIR成分の映像信号の信号強度とを略同一に調整してもよい。
【0056】
ゲイン調整部23zにより、使用者がRGB画像に対するIR画像を任意の強度で再現可能である。尚、IR成分の電気信号の増幅度が調整される代わりに、又はこの調整とともに、RGB信号処理部22は、RGB成分の電気信号の増幅度を調整してもよい。
【0057】
RGB信号処理部22及びIR信号処理部23は、信号処理を行う際、同期信号発生部143からの同期信号を受け取り、この同期信号に従って動作する。これにより、RGB各色成分の画像(映像)及びIR成分の画像は、時間的なずれが生じないように調整される。
【0058】
出力部28は、同期信号発生部143からの同期信号に従い、RGB各色成分の映像信号及びIR成分の映像信号の少なくとも一方を表示部40に出力する。例えば、出力部28は、同時出力モード及び重畳出力モードのいずれかに基づいて、映像信号を出力する。
【0059】
同時出力モードでは、出力部28は、RGB画像G1とIR画像G2(
図6参照)とを別画面により同時に出力する。同時出力モードにより、RGB画像とIR画像とを別画面にて比較して、患部tgを観察できる。
【0060】
重畳出力モードでは、出力部28は、RGB画像とIR画像とが重畳された合成画像GZを出力する。重畳出力モードにより、例えば、RGB画像内で、ICG及び照明光としてのIR光により蛍光発光した患部tgを明瞭に観察できる。
【0061】
尚、RGB信号処理部22、IR信号処理部23及び出力部28は、CCU30内のプロセッサがメモリと協働してソフトウェアにより処理することを例示したが、それぞれ専用のハードウェアで構成されてもよい。
【0062】
表示部40は、CCU30からの映像信号に基づいて、内視鏡10で撮像され、CCU30から出力される患部tg等の対象物の画像を画面に表示する。同時出力モードの場合、表示部40は、画面を複数に分割(例えば2分割)し、各画面にRGB画像G1及びIR画像G2を並べて表示する(
図6参照)。重畳出力モードの場合、表示部40は、RGB画像G1とIR画像G2とが重ねられた合成画像GZを1画面で表示する(
図7参照)。
【0063】
このように、内視鏡システム5では、内視鏡10を使用して体内の部位を撮像する場合、蛍光物質であるインドシアニングリーン(ICG)を体内に投与し、過剰に集積した腫瘍等の部位(患部)に近赤外光を当てて患部を光らせて患部を撮像してもよい。
【0064】
使用者が操作スイッチ19を操作して光源コネクタ18に導入された光Lは、スコープ11の先端側に導かれ、撮像窓11zから投射されることで、患部を含む患部周囲の部位を照明する。患部等で反射された光は、撮像窓11zを通してスコープ11の後端側に導かれ、リレーレンズ13で収束し、カメラヘッド14の4色分解プリズム20に入射する。
【0065】
4色分解プリズム20では、入射した光のうち、IR分解プリズム220によって分解したIR成分の光は、IR用のイメージセンサ230で赤外光成分の光学像として撮像される。青色分解プリズム221によって分解したB成分の光は、青色用のイメージセンサ231で青色成分の光学像として撮像される。赤色分解プリズム222によって分解したR成分の光は、赤色用のイメージセンサ232で赤色成分の光学像として撮像される。緑色分解プリズム223によって分解したG成分の光は、緑色用のイメージセンサ233で緑色成分の光学像として撮像される。
【0066】
IR用のイメージセンサ230で変換されたIR成分の電気信号は、CCU30内のIR信号処理部23で映像信号に変換され、出力部28に出力される。可視光用のイメージセンサ231,232,233でそれぞれ変換されたB成分、R成分、G成分の各電気信号は、CCU30内のRGB信号処理部22で各映像信号に変換され、出力部28に出力される。IR成分の映像信号及びB成分、R成分、G成分の各映像信号は、同期して、表示部40に出力される。
【0067】
表示部40には、出力部28で同時出力モードが設定されている場合、RGB画像G1とIR画像G2とが同時に2画面で表示される。
図6は表示部40に表示された同時出力モード時の画像を示す模式図である。RGB画像G1は、患部tgを含む部位を可視光を照射して撮像したカラー画像である。IR画像G2は、患部tgを含む部位をIR光を照射して撮像した白黒画像(任意な色設定可能)である。
【0068】
表示部40には、出力部28で重畳出力モードが設定されている場合、RGB画像G1とIR画像G2とが重畳(合成)された合成画像GZが表示される。
図7は表示部40に表示された重畳出力モード時の画像を示す模式図である。
【0069】
[効果等]
内視鏡10によれば、内視鏡10に4色分解プリズム20を用い、IR光に対し大きな透過率を有するIR分解プリズム220から出射されるIR光を、IR用のイメージセンサ230が受光する。そのため、内視鏡10は、IR光の受光量を増大できる。従って、IR成分の信号を過大に増幅させる必要が無くなり、IR成分を加味した内視鏡10による撮像画像の画質の低下を抑制できる。
【0070】
4色分解プリズム20を用いることで、単板式カメラのイメージセンサと比べ、イメージセンサのサイズを小さくでき、内視鏡10を小型化できる。例えば、単板式カメラのイメージセンサのサイズは、1インチ又は38mmであり、本実施形態のイメージセンサ230〜233のサイズは、1/3インチ以下である。
【0071】
また、4色分解プリズム20がIRカットフィルタを用いていないので、内視鏡システム5は、RGB画像とIR画像とを同時に出力可能である。そのため、ユーザは、例えば、患者の患部を含む全体の部位をRGB画像で確認できるとともに、蛍光発光した患部をIR画像で確認でき、患部周辺における患部の位置を視認し易くなる。ここでのRGB画像は、RGB成分の画像であり、IR画像は、IR成分の画像である。
【0072】
また、IR成分の光を電気信号に変換するIR用のイメージセンサ230は、H/V画素加算処理を行い、加算された画素値の電気信号を出力してもよい。これにより、内視鏡10は、IR成分の信号強度を更に増大でき、表示部40により表示されるIR成分の画像をより強調でき、患部を視認し易くなる。
【0073】
また、内視鏡システム5は、RGB各成分の信号強度とIR成分の信号強度とが略同等になるように、ゲイン調整してもよい。この場合、RGB各成分の画素値とIR成分の画素値とを均一化でき、画像を見え易くできる。
【0074】
また、内視鏡システム5は、RGB各成分の信号強度とIR成分による信号強度との間で差を持たせるように、ゲイン調整してもよい。この場合、内視鏡システム5は、ユーザ所望の画質でRGB画像及びIR画像を表示できる。
【0075】
また、4色分解プリズム20を使用する場合、3色分解プリズムを使用する場合と比較すると、IR用のイメージセンサに入射されるIR成分の信号強度が大きくなる。そのため、RGB成分の画素値とIR成分の画素値との差が小さくなり、CCU30によりIR用のイメージセンサ230から出力される電気信号を過度に増幅しなくても、RGB成分とIR成分との間でバランス良く色を再現できる。従って、内視鏡システム5は、ノイズの増幅を抑制しながら、鮮明なRGB成分及びIR成分を含む画像が得られる。
【0076】
また、RGB画像とIR画像とが同時に2画面で表示されることで、ユーザは両画像を見比べて確認でき、ユーザの利便性が向上する。
【0077】
また、RGB画像とIR画像とが重畳して1画面で表示されること、ユーザは1つの画像でRGB成分及びIR成分の画像を確認でき、ユーザの利便性が向上する。
【0078】
(他の実施形態)
以上のように、本開示における技術の例示として、第1の実施形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用できる。
【0079】
第1の実施形態では、内視鏡10として硬性内視鏡を例示したが、4色分解プリズム20をも用いれば他の構成を有する硬性内視鏡でもよく、軟性内視鏡でもよい。
【0080】
第1の実施形態では、生体内に光造影剤としてICGを投与することを例示したが、ICG以外の光造影剤が投与されてもよい。この場合、光造影剤を励起するための励起光の波長に応じて、非可視光の波長領域における分光特性を定めてもよい。
【0081】
第1の実施形態では、赤外光の波長領域において蛍光発光する薬品を用いたが、紫外光の波長領域において蛍光発光する薬品を用いてもよい。この場合でも、近赤外域で蛍光発光する光造影剤を用いた場合と同様に、内視鏡は、蛍光発光された患部の画像を撮像できる。
【0082】
第1の実施形態では、4色分解プリズム20において、光の入射側から、IR分解プリズム220、青色分解プリズム221、赤色分解プリズム222、及び緑色分解プリズム223の順に配置されることを例示したが、この配置順序は一例であり、他の配置順序でもよい。
【0083】
第1の実施形態では、プロセッサの一例としてCCU30を説明した。プロセッサは、内視鏡システム5を制御すれば、物理的にどのように構成してもよい。従って、プロセッサは、CCU30に限定されない。ただし、プログラム可能なCCU30を用いれば、プログラムの変更により処理内容を変更できるので、プロセッサの設計の自由度を高めることができる。また、プロセッサは、1つの半導体チップで構成してもよいし、物理的に複数の半導体チップで構成してもよい。複数の半導体チップで構成する場合、第1の実施形態の各制御をそれぞれ別の半導体チップで実現してもよい。この場合、それらの複数の半導体チップで1つのプロセッサを構成すると考えることができる。また、プロセッサは、半導体チップと別の機能を有する部材(コンデンサ等)で構成してもよい。また、プロセッサが有する機能とそれ以外の機能とを実現するように、1つの半導体チップを構成してもよい。また、電子基板250に搭載される回路についても、プログラム可能な回路を用いれば、プログラムの変更により処理内容を変更できる。また、回路の数は1つでも複数でもよい。
【0084】
(本開示の実施形態の概要)
本開示の実施形態の内視鏡10は、4色分解プリズム20と、4個のイメージセンサ230〜233と、アウトプットデバイスと、を備える。4色分解プリズム20は、対象物からの光を3原色光及び赤外光に分解する。イメージセンサ230〜233は、分解された3原色光及び赤外光の光学像をそれぞれ電気信号に変換する。アウトプットデバイスは、変換された電気信号を出力する。アプトプットデバイスは、例えば信号出力部145である。
【0085】
これにより、内視鏡10は、3原色光及び赤外光の各々に専用のイメージセンサ230〜233を備えるので、検出される赤外光の信号強度を増大できる。従って、赤外光についての過大な信号増幅が不要となり、内視鏡10は、赤外光成分を加味した画質を向上できる。また、内視鏡10は、4色分解プリズム20を用いることで、単板方式のイメージセンサを用いる場合と比較すると、内視鏡10のイメージセンサを小型化でき、例えば1/3インチ以下にできる。その結果、内視鏡10を小型化できる。
【0086】
また、イメージセンサ230は、複数の画素を用いて赤外光の光学像を電気信号に変換する際、隣接する画素の画素値を加算してもよい。アウトプットデバイスは、加算された画素値の電気信号を出力してもよい。
【0087】
これにより、内視鏡10は、赤外光の信号強度を更に増大でき、赤外光成分を含む画像を一層鮮明化できる。
【0088】
本開示の実施形態の内視鏡システム5は、内視鏡10、プロセッサ、メモリ、及びディスプレイを備える。プロセッサは、メモリと協働して、3原色光の光学像が変換された第1の電気信号を第1の映像信号に変換し、赤外光の光学像が変換された第2の電気信号を第2の映像信号に変換してもよい。ディスプレイは、第1の映像信号及び第2の映像信号に基づいて表示してもよい。プロセッサは、例えばCCU30である。ディスプレイは、例えば表示部40である。
【0089】
これにより、内視鏡システム5は、3原色光及び赤外光の各々に専用のイメージセンサ230〜233を備えるので、検出される赤外光の信号強度を増大できる。従って、赤外光についての過大な信号増幅が不要となり、内視鏡システム5は、赤外光成分を加味した画質を向上できる。また、内視鏡システム5では、4色分解プリズム20を用いることで、単板方式のイメージセンサを用いる場合と比較すると、内視鏡10のイメージセンサを小型化でき、例えば1/3インチ以下にできる。その結果、内視鏡10を小型化できる。
【0090】
また、プロセッサは、メモリと協働して、第1の映像信号の信号強度と第2の映像信号の信号強度とを略均等に調整してもよい。
【0091】
これにより、内視鏡システム5は、3原色光により得られる画像と赤外光により得られる画像との画素値を均一化でき、画像を見え易くできる。また、3原色光により得られる画像と赤外光により得られる画像との画素値を均一化する場合でも、4色分解プリズム20により得られる赤外光の信号強度を大きくできるので、プロセッサでの信号強度の増幅度を小さくでき、画質の劣化を抑制できる。
【0092】
また、ディスプレイは、第1の映像信号及び第2の映像信号を同時に表示してもよい。
【0093】
これにより、ユーザは、3原色光により得られる画像と赤外光により得られる画像とを同時に確認できるので、赤外光を加味して対象物の視認性良く観察できる。