特許第6865723号(P6865723)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865723
(24)【登録日】2021年4月8日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/207 20060101AFI20210419BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20210419BHJP
【FI】
   B60R21/207
   B60R21/2338
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-190554(P2018-190554)
(22)【出願日】2018年10月8日
(65)【公開番号】特開2020-59334(P2020-59334A)
(43)【公開日】2020年4月16日
【審査請求日】2020年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】小林 優斗
(72)【発明者】
【氏名】桜井 努
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/209192(WO,A1)
【文献】 特開2001−354103(JP,A)
【文献】 特開2011−093479(JP,A)
【文献】 特開2008−247211(JP,A)
【文献】 特開2017−226381(JP,A)
【文献】 米国特許第05967603(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面を形成するシートクッションと背もたれを形成するシートバックとを有する車両用シートにおいて、
前記シートバックは、車幅方向側部において前方に膨出したサイドサポート部を備え、
前記サイドサポート部の内部には、当該サイドサポート部の長手方向に沿って延びるサイドフレームが配置され、更に、エアバッグモジュールが収容されており、
前記エアバッグモジュールは、膨張展開することで乗員を拘束するエアバッグと、前記サイドフレームの車両幅方向内側に設けられ、前記エアバッグに対して膨張ガスを供給するインフレータとを含み、
前記シートバック内部には、収容状態の前記エアバッグモジュールを囲うように力布が設けられ、
前記エアバッグの展開時に、乗員による圧力が前記シートバックに加わっている時には、前記力布が開放されて前記エアバッグが前記シートバックの外部に膨出するとともに、乗員による圧力が前記シートバックに加わっていない時には、前記力布が開放されずに、前記エアバッグが前記シートバックの内部でのみ展開するように構成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記エアバッグモジュールの後方部分は、前記力布によって囲われていない力布開口部を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記シートバック内部の前記エアバッグモジュールの後方には、前記エアバッグが展開可能な空間が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記力布の開放は、当該力布の開裂によって実行されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記力布は、前記エアバッグが前記シートバックの外部に膨出する際に開裂する縫製部を備えることを特徴とする請求項4に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記力布は、前記エアバッグモジュールを挟んで車両幅方向外側に配置される第1力布と、車幅方向内側に配置される第2力布とを備え、
前記第1力布は、前記サイドサポート部の前縁付近に位置する前端と、前記サイドフレームに連結される後端とを有することを特徴とする請求項5に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記第2力布は、前記サイドサポート部の前縁付近に位置する前端と、前記シートバックの一部に固定される後端とを有することを特徴とする請求項6に記載の車両用シート。
【請求項8】
前記第1力布の前端と、前記第2力布の前端とを縫製することで、前記縫製部が形成されることを特徴とする請求項7に記載の車両用シート。
【請求項9】
前記シートバックは、前記エアバッグモジュールの周囲に配置されたクッション層と、当該クッション層の外側に位置する表皮とを備え、
前記力布は、前記クッション層と前記表皮との間に配置されることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドエアバッグ装置を備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の事故発生時に乗員を保護するために1つまたは複数のエアバッグを車両に設けることは周知である。エアバッグは、例えば、ステアリングホイールの中心付近から膨張して運転者を保護する、いわゆる運転者用エアバッグ、自動車の窓の内側で下方向に展開して車両横方向の衝撃や横転、転覆事故時に乗員を保護するカーテンエアバッグ、更には、車両横方向の衝撃時に乗員を保護すべく乗員とサイドパネルとの間で展開するサイドエアバッグなどの様々な形態がある。本発明は、車両用シートに備えられるサイドエアバッグ装置に関するものである。
【0003】
サイドエアバッグ装置においては、設置領域における制約が大きいため、装置のコンパクト化の要請が強い。また、展開速度の向上や展開挙動、展開形状の安定化による適切な乗員保護性能が要求される。
更に、乗員がシートに対して正常に着座していない、所謂OOP(アウト・オブ・ポジション)の状況において、エアバッグによる乗員へのダメージを低減する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記のような状況に鑑みてなされたものであり、乗員がシートに対して正常に着座していない、所謂OOP(アウト・オブ・ポジション)の状況において、エアバッグによる乗員へのダメージを低減可能な車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下に、上記課題を解決するための手段に及び、その効果について説明する。なお、本発明において、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員が向いている方向を「前方」、その反対方向を「後方」と称し、座標の軸を示すときは「前後方向」と言う。また、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員の右側を「右方向」、乗員の左側を「左方向」と称し、座標の軸を示すときは「左右方向」と言う。更に、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員の頭部方向を「上方」、乗員の腰部方向を「下方」と称し、座標の軸を示すときは「上下方向」と言う。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、座面を形成するシートクッションと背もたれを形成するシートバックとを有する車両用シートにおいて、前記シートバックは、車幅方向側部において前方に膨出したサイドサポート部を備える。 前記サイドサポート部の内部には、当該サイドサポート部の長手方向に沿って延びるサイドフレームが配置され、更に、エアバッグモジュールが収容される。 前記エアバッグモジュールは、膨張展開することで乗員を拘束するエアバッグと、前記サイドフレームの車両幅方向内側に設けられ、前記エアバッグに対して膨張ガスを供給するインフレータとを含む。前記シートバック内部には、収容状態の前記エアバッグモジュールを囲うように力布が設けられる。
そして、前記エアバッグの展開時に、乗員による圧力が前記シートバックに加わっている時には、前記力布が開放されて前記エアバッグが前記シートバックの外部に膨出するとともに、乗員による圧力が前記シートバックに加わっていない時には、前記力布が開放されずに、前記エアバッグが前記シートバックの内部でのみ展開するように構成される。
【0007】
ここで、「サイドサポート部の長手方向」とは、上下方向、縦方向あるいは、シートバックの上下方向と表現することができる。
また、「車両幅方向内側」は、シートに乗員が着座している状態では乗員側となる。
また、「エアバッグモジュールを囲う」とは、エアバッグモジュールに接している必要は無く、エアバッグモジュールとの間に他の部材(パッド、クッション層等)を介在した状態を含むものである。そして、エアバッグモジュールの全体を連続的に包囲することに限定されず、部分的に包囲する場合を含むものである。
「乗員による圧力がシートバックに加わっている時」とは、通常は、乗員がシートに正常に着座している状態を意味し、「乗員による圧力がシートバックに加わっていない時」とは、乗員がシートに着座していないか、非正規の状態(アウトオブポジション)で着座しているような状態を意味する。
「力布が開放」とは、力布によるエアバッグへの拘束が解き放たれる状態を意味し、縫製された連結箇所が破断(開裂)する状態、力布自体が破断(開裂)する状態を含む。
【0008】
上記のような構成の車両用シートにおいては、エアバッグの展開時に、乗員による圧力がシートバックに加わっている時には、力布が開放されてエアバッグがシートバックの外部に膨出する。これにより、前方に大きく展開したエアバッグによって、乗員の横方向への移動を確実に拘束することができる。
【0009】
一方、乗員による圧力がシートバックに加わっていない時には、力布が開放されずに、エアバッグがシートバックの内部でのみ展開する。これにより、非正規な姿勢で着座しているような(アウトオブポジション)乗員へのダメージを最小限に抑えることができる。
【0010】
また、本発明は、力布の構成及びシートバックの構造を工夫するものであり、エアバッグの圧縮方法や、エアバッグ自体の形状を変更する等の特別な対策が必要ないため、既存のエアバッグモジュールをそのまま使用でき、製造コストの低減に寄与するものとなる。
【0011】
シートバック内部のエアバッグモジュールの後方に、エアバッグが展開可能な空間を形成することにより、エアバッグが更に後方に展開しやすい状況となり、エアバッグを確実にシート内部で展開させることができる。
【0012】
前記力布の開放は、当該力布の開裂によって実行することができる。例えば、前記力布が、前記エアバッグが前記シートバックの外部に膨出する際に開裂する縫製部を備える構造とすることができる。
【0013】
前記力布は、前記エアバッグモジュールを挟んで車両幅方向外側に配置される第1力布と、車幅方向内側に配置される第2力布とを備えることができる。そして、前記第1力布は、前記サイドサポート部の前縁付近に位置する前端と、前記サイドフレームに連結される後端とを有する構造とすることができる。また、前記第2力布は、前記サイドサポート部の前縁付近に位置する前端と、前記シートバックの一部に固定される後端とを有する構造とすることができる。
【0014】
そして、前記第1力布の前端と、前記第2力布の前端とを縫製することで、前記縫製部を形成することができる。
【0015】
前記シートバックは、前記エアバッグモジュールの周囲に配置されたクッション層(ウレタンパッド等)と、当該クッション層の外側に位置する表皮とを備え、前記力布は、前記クッション層と前記表皮との間に配置することができる。
【0016】
なお、本発明に係るサイドエアバッグは、シートのドア側(外側)に展開するタイプの他、シートの車両中心側に展開するタイプにも適用可能である。また、シートの車両中心側に展開するタイプのサイドエアバッグは、例えば、ファーサイドエアバッグ、フロントセンターエアバッグ、リアセンターエアバッグ等と称される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施例に係る車両用シートの主に外観形状を示す斜視図であり、エアバッグユニットの図示は省略する。
図2図2は、図1に示す車両用シートの骨組みとして機能する内部構造体(シートフレーム)を示す斜視図であり、エアバッグユニットの図示は省略する。
図3図3は、本発明の実施例に係る車両用シートの概略側面図であり、エアバッグユニットが収容された状態を車幅方向の外側から観察(透視)した様子を示す。
図4図4は、本発明の実施例に係るサイドエアバッグが展開した状態を示す模式図(側面図)である。
図5図5は、本発明の実施例に係る車両用シートの構造を示す断面図であり、図3のA1−A1方向の断面の一部に対応する。
図6図6は、本発明の実施例に係る車両用シートに採用されるエアバッグの展開状態を示す概略図であり、図4のA2−A2方向の断面に対応する。
図7図7は、本発明の実施例に係る車両用シートに採用されるエアバッグの展開状態を示す断面図である。
図8図8は、本発明の実施例に係る車両用シートに採用されるエアバッグの展開状態を示す断面図である。
図9図9は、本発明に係る車両用シートの他の態様(実施例)を示す側面図(透視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る車両用シートについて、添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図に表示する「前」とは車両の前方(進行方向)、「後」とは車両の後方(進行方向と反対側)、「内」とは車幅方向の内側(乗員側)、「外」とは車幅方向外側(ドアパネル側)をそれぞれ示す。
【0019】
図1は、本発明の実施例に係る車両用シートの主に外観形状を示す斜視図であり、エアバッグモジュール(20)の図示は省略する。図2は、図1に示す車両用シートの骨組みとして機能する内部構造体(シートフレーム)を示す斜視図であり、ここでも、エアバッグモジュール(20)の図示は省略する。図3は、本発明の実施例に係る車両用シートの概略側面図であり、ドアに近い側面(ニアサイド)にエアバッグモジュール20が収容された状態を車幅方向の外側から観察した様子を示す。
【0020】
本実施例に係る車両シートは、部位として観たときには、図1及び図2に示すように、乗員が着座する部分のシートクッション2と;背もたれを形成するシートバック1と;シートバック1の上端に連結されるヘッドレスト3とから構成されている。
【0021】
シートバック1の内部にはシートの骨格を形成するシートバックフレーム1fが設けられ、その表面及び周囲にはウレタン発泡材等からなるパッド16(図4参照)が設けられ、当該パッド16の表面は皮革、ファブリック等の表皮14(図4参照)によって覆われている。シートクッション2の底側には着座フレーム2fが配置され、その上面及び周囲にはウレタン発泡材等からなるパッドが設けられ、当該パッドの表面は皮革、ファブリック等の表皮14によって覆われている。着座フレーム2fとシートバックフレーム1fとは、リクライニング機構4を介して連結されている。
【0022】
シートバックフレーム1fは、図2に示すように、左右に離間して配置され上下方向に延在するサイドフレーム10と、このサイドフレーム10の上端部を連結する上部フレームと、下端部を連結する下部フレームとにより枠状に構成されている。ヘッドレストフレームの外側にクッション部材を設けることでヘッドレスト3が構成される。
【0023】
図3に示すように、サイドサポート部12の内部には、エアバッグモジュール20を囲む力布40が設けられている。力布40は、サイドフレーム10の長手方向と概ね直交する方向に延びている。なお、力布40の詳細については、後述する。
【0024】
図4は、エアバッグ31(34,36)が展開した状態を示す模式図(側面図)である。図4に示すように、エアバッグ31(34,36)は、サイドサポート部12の前方に向かって展開する第1チャンバ34と;第1チャンバ34の車幅方向内側で展開する第2チャンバ36とを備える。
【0025】
図5は、本発明の実施例に係る車両用シートの構造を示す断面図であり、図3のA1−A1方向の断面の一部に対応する。上述したサイドフレーム10は、樹脂又は金属によって成形され、図5に示すようなコの字断面形状とすることができ、コの字の向きは図5と左右反転させることもでき、あるいは平板状とすることもできる。サイドフレーム10は、水平断面を上方から見たときに車両進行方向に沿って延び、このサイドフレーム10の内側(シート中心側)にエアバッグモジュール20(インフレータ30)が配置される。
【0026】
図5に示すように、シートバック1は、車幅方向側部(端部)において車両進行方向(車両前方)に膨出したサイドサポート部12を備える。サイドサポート部12の内部において、ウレタンパッド16が配置されていない隙間にエアバッグモジュール20が収容される。エアバッグモジュール20は、膨張展開することで乗員を拘束するエアバッグ31(34,36)と;エアバッグ31(34,36)に対して膨張ガスを供給するインフレータ30とを備える。なお、符号25はドアトリムを示す。
【0027】
シートバック1の表皮14の継ぎ目18,22は内側に織り込まれて縫製によって連結されている。なお、前方の継ぎ目18は、エアバッグ31が展開した時に開裂するようになっている。
【0028】
収容状態のエアバッグ31の外面は、図示しないファブリック製の柔軟なカバーによって覆われている。第1チャンバ34と第2チャンバ36との関係において、エアバッグ31は蛇腹状に折り畳むもしくはロールする(「折り畳み」にはロールすることも含む)他、適宜最適な圧縮方法を採用することができる。
【0029】
力布40は、2本の帯状の第1力布401及び第2力布402によって成形することができる。第1力布401は、サイドサポート部12の車幅方向外側(左側面)に沿って、表皮14とウレタンパッド16との隙間を通って延びており、前端部401fがサイドサポート部12の前端付近に達し、後端部401rがスリット42を通ってサイドフレーム10に固定されている。一方、第2力布402は、サイドサポート部12の車幅方向内側(右側面)に沿って、表皮14とウレタンパッド16との隙間を通って延びており、前端部402fがサイドサポート部12の前端付近に達し、後端部402rがサイドサポート部12から概ねフラットな背もたれ部との境界付近において縫製によって表皮14に連結されている。
【0030】
図5に示すように、力布40(401,402)の前端部401f、402f同士は、サイドサポート部12の先端部分にある表皮14の縫い目18の内側において、縫製46によって連結されている。この縫製部46、エアバッグが展開した時に開裂する起点となる。これにより、エアバッグ31の展開時にサイドサポート部12が開裂する動作を阻害しないようになっている。力布40(401,402)を開裂させることにより、当該開裂した部分(46)からエアバッグ31(主に、第1チャンバ34)が一気に膨張し、サイドサポート部12の外側に速やかに展開可能となる。
【0031】
エアバッグモジュール20の後方部分は、力布40が開放されており、エアバッグモジュール20は囲われていない構造となっている。すなわち、力布40は環状につながっているものではなく、後方部分が非連続な状態で開放されている。また、シートバック1の内部には、エアバッグモジュール20の後方に、エアバッグ31が展開可能な空間404が形成されている。この空間404の範囲(大きさ、容積)は、ウレタンパッド16の形状によって適宜調整することができる。
【0032】
そして、エアバッグ20の展開時に、乗員による圧力がシートバック1(12)に加わっている時には、力布40(401,402)の前端部401f、402fにおける縫製46が破断して、エアバッグ31がシートバック1の外部に膨出するようになっている。他方、乗員による圧力がシートバック1(12)に加わっていない時には、力布40(401,402)の前端部401f、402fの縫製46が破断せずに、エアバッグ20がシートバック1の内部でのみ展開するようになっている。
【0033】
例えば、乗員がシートベルトを着用せず、車両進行方向と反対側を向いてシートに正座しているような、所謂アウトオブポジションの状況では、ウレタンパッド16とサイドフレーム10に挟まれたエアバッグ31の後方部分への圧迫が無いか微弱であるため、エアバッグ31は力布40に囲われていない後方に向かってより展開しやすい状況となり、エアバッグ31はシートバック1の内部(空間404)で展開を完結させることになる。このため、非正規な姿勢で着座しているような乗員が、シートから膨出したエアバッグ31によって大きなダメージを受けるようなことがない。
【0034】
図6は、図4のA2−A2方向の断面に対応するエアバッグの展開状態を示す概略図である。図6に示すように、本実施例においては、インフレータ30は第2チャンバ36の内部に収容される。インフレータ30は、例えば、円柱状のシリンダータイプのインフレータを使用することができる。インフレータ30の外周部からは、車幅方向内側に向かって上下一対のスタッドボルト32が突出している。これらのスタッドボルト32は、ナットによってサイドフレーム10に取り付けられている(締結固定されている)。インフレータ30には、周方向に並んだ複数のガス噴出口が形成されており、当該ガス噴出口から放射状にガスが噴出される。なお、必要に応じてガスの流れを制御するディフューザを設けることができる。
【0035】
このインフレータ30には、車両に搭載されたエアバッグ制御用ECUが電気的に接続されている。このエアバッグ制御用ECUには、側面衝突を検知するサテライトセンサが電気的に接続されている。このサテライトセンサからの信号に基づいてエアバッグ制御用ECUが側面衝突を検知した際にインフレータ30を作動するように構成することができる。
【0036】
第2チャンバ36は、サイドサポート部12の少なくとも前側部分を乗員側に向かって突出変形させ、サイドサポート部12が乗員の腰部や肩部に接触、押圧するようになっている。これによって事故発生時の初期段階における乗員拘束性能が向上する。第2チャンバ36の容量は第1チャンバ34の容量よりも小さく設定されている。好ましくは、第2チャンバの形状と容量を調節して、第2チャンバ36が、常にサイドサポート部12の内部でのみで展開するようにしてもよい。これによって、第2チャンバ36を第1チャンバ34よりも早くフル展開とすることができる一方、第1チャンバ34により多くのガスを充填することが出来るようになる。
【0037】
第1チャンバ34は、サイドサポート部12の外側で前方に向かって展開する。第1チャンバ34の展開形状及び、展開方向は、エアバッグの折り畳み方、折り畳まれたエアバッグの配置、インフレータのガス噴射方向の設定、第2チャンバ36と第1チャンバ34間のガスの流れる方向などによって調整可能である。これらにより、第2チャンバ36の展開による第1チャンバ34の展開が妨げられることが少なくなり、第1チャンバ34の展開がスムーズになる。第1チャンバ34の展開とともに第2チャンバ36の展開との協働により乗員保護性能が向上する。
【0038】
図6に示すように、第1チャンバ34を構成する2枚のパネル34a,34bは同一形状に成形され、縫製によって膨張領域34dが形成される。同様に、第2チャンバ36を構成する2枚のパネル36a,36bは同一形状に成形され、外縁部の縫製によって膨張領域36dが形成される。
【0039】
第1チャンバ34の内側パネル34bには、第1チャンバ34と第2チャンバ36とに連通するベントホールV1が形成されており、第2チャンバ36内部の膨張ガスがベントホールV1を介して第1チャンバ34に流れるようになっている。
なお、本発明においては、必ずしもエアバッグ31を2つのチャンバ34,36によって構成する必要は無く、単一のチャンバからなるエアバッグや、3つ以上のチャンバに区切られたエアバッグにも適用可能である。
【0040】
図7は、本実施例に係るエアバッグ31の展開状態を示す断面図であり、シートに乗員が正規の姿勢で着座している場合の状況を示す。一方、図8は、シートに乗員が非正規の姿勢で着座している場合又は、乗員がいない場合の状況を示す。
【0041】
図7に示すように、シートに乗員が正規の姿勢で着座している場合には、ウレタンパッド16とサイドフレーム10に挟まれたエアバッグ31の後方部分が圧迫され、後方に展開し難く、前方に展開しやすい状況となる。このため、エアバッグ31にはサイドサポート部12の前方に向かって展開する力が大きく働き、力布40の縫製部46及び表皮14の縫製部18(図5参照)が開裂して、展開したエアバッグ31がシートバック1(サイドサポート部12)の外部に膨出することになる。これにより、前方に大きく展開したエアバッグ31によって、乗員の横方向への移動を確実に拘束することができる。なお、第2チャンバ36の展開によって、シートバック1(主に、サイドサポート部12)自体は、車幅方向内側に向かって凸の状態に変形することになる。
【0042】
一方、図8に示すように、乗員による圧力がシートバック1に加わっていない時、例えば、乗員がシートベルトを着用せずに車両進行方向と反対側を向いてシートに正座しているような、所謂アウトオブポジションの状況では、ウレタンパッド16とサイドフレーム10に挟まれたエアバッグ31の後方部分への圧迫が無いか微弱であるため、エアバッグ31は力布40に囲われていない後方に向かってより展開しやすい状況となる。また、ウレタンパッド16は比較的容易に変形し、又は車幅方向内側に向かって移動しやすい状況となる。その結果、エアバッグ31はウレタンパッド16を車幅方向内側に押し込みつつ、後方の空間404に向かって展開する。
【0043】
このように、乗員が正規な姿勢でシートに着座していな状況では、エアバッグ31がシートバック1の内部で展開を完結させて、外部に膨出しないため、乗員へのダメージを最小限に抑えることができる。なお、展開したエアバッグ31がシートの外部に膨出しない場合でも、シートバック1(主に、サイドサポート部12)自体が、車幅方向内側に向かって凸の状態に変形するように構成することができる。
【0044】
図9は、本発明の実施例に係る車両用シートの他の態様を示す側面図(透視図)である。図9に示す態様では、2本の力布40U,40Lを平行な状態で上下に配置したものであり、他の構成については既に説明した実施例(図3等)と同様である。2本(2セット)の力布40U,40Lを採用することにより、エアバッグ31の展開挙動をより確実に規制することが可能となる。なお、力布の本数は、1本又は2本に限定されることなく、3本以上とすることもできる。
【0045】
本発明を上記の例示的な実施形態と関連させて説明してきたが、当業者には本開示により多くの等価の変更および変形が自明であろう。したがって、本発明の上記の例示的な実施形態は、例示的であるが限定的なものではないと考えられる。本発明の精神と範囲を逸脱することなく、記載した実施形態に様々な変化が加えられ得る。例えば、発明を実施するための形態では、ニアサイドのサイドエアバッグについて重点的に述べたが、ファーサイドエアバッグ(車両用シートの車両ドアから遠い側の面)や、スモールモビリティなど超小型車両等における単座の車両(ドアの有る無しにかかわらず一列にシートが一つしかない部分を含むような車両)等にも用いることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9