【文献】
KAMBARA, H. et al.,Cyclophosphamide allows for in vivo dose reduction of a potent oncolytic virus,Cancer Research,2005年,Vol.65, No.24,P.11255-11258
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の説明
本明細書において引用される参考文献はすべて、あたかも十分に記述されているかのように、その全体が参照により組み入れられる。本明細書において別途定義されない限り、本出願に関連して使用される科学用語および技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって共通して理解されている意味を有する。本発明が、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコール、および試薬等に限定されず、したがって変動し得ることが、理解されるべきである。一般用語の定義は、Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 3
rd ed., J. Wiley & Sons New York, NY (2001);March, Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure 5
th ed., J. Wiley & Sons New York, NY (2001);Michael Richard Green and Joseph Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., USA (2012);Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier Science Publishing, Inc., New York, USA (2012);Jon Lorsch (ed.) Laboratory Methods in Enzymology: DNA, Elsevier, (2013);Frederick M. Ausubel (ed.), Current Protocols in Molecular Biology (CPMB), John Wiley and Sons, (2014);John E. Coligan (ed.), Current Protocols in Protein Science (CPPS), John Wiley and Sons, Inc., (2005);およびEthan M Shevach, Warren Strobe, (eds.) Current Protocols in Immunology (CPI) (John E. Coligan, ADA M Kruisbeek, David H Margulies, John Wiley and Sons, Inc., (2003) において見出すことができ、そのそれぞれが、本出願において使用される用語の多くに対する一般的な手引きを当業者に提供する。
【0019】
当業者は、本発明の実施において使用され得る、本明細書に記載されるものと類似または同等の多くの方法および材料を認識するであろう。実際に、本発明は、記載される方法および材料に決して限定されるものではない。本発明の目的のために、ある特定の用語を以下に定義する。
【0020】
いくつかの態様において、本出願のある特定の態様を説明し主張するために使用される、成分の量、分子量などの特性、反応条件等を表す数字は、ある場合には「約」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、いくつかの態様において、本明細書および添付の特許請求の範囲に記述される数値パラメータは、特定の態様によって獲得しようとする所望の特性に応じて変動し得る近似値である。いくつかの態様において、数値パラメータは、報告された有効数字の数に照らして、通常の四捨五入法を適用することにより、解釈されるべきである。本出願のいくつかの態様の広い範囲を記述する数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例において記述される数値は、可能な限り正確に報告される。
【0021】
本明細書で用いられる「哺乳動物」という用語は、非限定的に、ヒト、ならびに、チンパンジーならびに他の類人猿およびサル種などの非ヒト霊長類;ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、およびウマなどの家畜;イヌおよびネコなどの家庭内哺乳動物;マウス、ラット、およびモルモットなどのげっ歯類を含む実験動物等を含む、哺乳綱のメンバーを指す。
【0022】
本明細書で用いられる「ベクター」という用語は、それが複製され得る細胞に導入するための、その中に核酸配列を挿入することができる担体核酸分子を指す。核酸配列は「外因性」であってよく、「外因性」とは、その核酸配列が、ベクターを導入しようとしている細胞にとって外来性であること、またはその配列が細胞中の配列と相同的であるが、その配列が通常は見出されないような宿主細胞核酸内の位置に存在することを意味する。ベクターには、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、および植物ウイルス)、ならびに人工染色体(例えば、YAC)が含まれる。当業者は、標準的な組換え技法によってベクターを構築する能力を十分に備えているであろう(例えば、いずれも参照により本明細書に組み入れられる、Maniatis et al., 1988およびAusubel et al., 1994を参照されたい)。さらに、本明細書に記載され、参照図において実証される技法もまた、効果的なベクター構築に関して有益である。
【0023】
「腫瘍溶解性HSV-1ベクター」という用語は、標的細胞に形質導入することができ、複製することができ、かつHSV-1ビリオン内にパッケージングされ得る、HSV-1のゲノムの少なくとも一部に相当する遺伝子操作されたHSV-1ウイルスを指す。遺伝子操作されたウイルスは、ウイルスを腫瘍溶解性にする、核酸の欠失およびまたは変異およびまたは挿入を含み、その結果、操作されたウイルスは腫瘍溶解活性によって腫瘍細胞内で複製しこれを死滅させる。ウイルスは弱毒化されてもよいし、または弱毒化されなくてもよい。ウイルスは、HSVウイルスゲノムと異なる導入遺伝子を送達してもよいし、または送達しなくてもよい。1つの態様において、腫瘍溶解性HSV-1ベクターは、ウイルスにとって外来性のタンパク質を生成するための導入遺伝子を発現しない。
【0024】
HSV-1は、実質的にすべての脊椎動物細胞に感染し得るヒト神経向性ウイルスである。自然感染は、溶解性の複製サイクルをたどるか、または通常は末梢神経節において潜伏を確立し、DNAがエピソーム状態で無期限に維持されるかのいずれかである。HSV-1は、153キロベース長の二本鎖線状DNAゲノムを含み、これはMcGeochによって完全に配列決定されている(McGeoch et al., J. Gen. Virol. 69: 1531 (1988);McGeoch et al., Nucleic Acids Res 14: 1727 (1986);McGeoch et al., J. Mol. Biol. 181: 1 (1985);Perry and McGeoch, J. Gen. Virol. 69:2831 (1988))。DNA複製およびビリオン構築は、感染細胞の核内で起こる。感染後期に、鎖状体ウイルスDNAがゲノム長分子に切断され、この分子がビリオン内にパッケージングされる。CNSにおいて、単純ヘルペスウイルスは経ニューロン的に伝播し、続いて逆行的または順行的のいずれかで核に軸索内輸送され、そこで複製が起こる。
【0025】
「発現ベクター」という用語は、転写され得るRNAをコードする核酸を含む、任意の種類の遺伝子構築物を指す。場合により、RNA分子はその後、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに翻訳される。他の場合には、これらの配列は、例えばアンチセンス分子またはリボザイムの産生において翻訳されない。発現ベクターは種々の「制御配列」を含み得、「制御配列」とは、機能的に連結されたコード配列の特定の宿主細胞における転写およびおそらくは翻訳に必要な核酸配列を指す。転写および翻訳を支配する制御配列に加えて、ベクターおよび発現ベクターは、他の機能を果たす核酸配列もまた含む場合があり、これらについては以下に記載する。
【0026】
本明細書で用いられる「プロモーター」という用語は、それが機能的に連結されている対応核酸コード配列の転写を直接的または間接的に調節する核酸配列を指す。プロモーターは、単独で機能して転写を調節し得るか、または場合によっては、エンハンサーもしくはサイレンサーなどの1つもしくは複数の他の調節配列と協調して作用して、関心対象の遺伝子の転写を調節し得る。プロモーターは、RNAポリメラーゼと結合し、下流(3'方向)のコード配列の転写を開始させ得る、遺伝子に由来するDNA調節配列を含む。プロモーターは一般に、RNA合成の開始部位を位置付けるように機能する配列を含む。その最もよく知られた例はTATAボックスであるが、例えば哺乳動物の末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子のプロモーターおよびSV40後期遺伝子のプロモーターなどの、TATAボックスを欠いているいくつかのプロモーターでは、開始部位を覆う別個のエレメントがそれ自体で開始場所を決定するのを助ける。さらなるプロモーターエレメントが、転写開始の頻度を調節する。典型的には、これらは開始部位の30〜110 bp上流の領域に位置するが、いくつかのプロモーターは、開始部位の下流にも機能エレメントを含むことが示されている。コード配列をプロモーターの「制御下」に置くには、転写リーディングフレームの転写開始部位の5'末端を、選択されたプロモーターの「下流」(すなわち、3'側)に配置することができる。「上流」のプロモーターは、DNAの転写を刺激し、コードされたRNAの発現を促進する。
【0027】
プロモーターエレメント間の間隔は融通が利く場合が多いため、エレメントが互いに関して反転または移動しても、プロモーター機能は保持される。使用されるプロモーターに応じて、個々のエレメントは、協同的にまたは独立的に機能して、転写を活性化し得る。本明細書に記載されるプロモーターは、「エンハンサー」と併用されてもよく、またはされなくてもよく、「エンハンサー」とは、本明細書に収載される遺伝子またはその一部もしくは機能的等価物の核酸配列などの、核酸配列の転写活性化に関与するシス作用性調節配列を指す。
【0028】
プロモーターは、コードセグメントおよび/またはエキソンの上流に位置する5'非コード配列を単離することにより得られ得るような、核酸配列に天然に付随するものであってよい。そのようなプロモーターは「内因性」と称され得る。同様に、エンハンサーも、核酸配列の下流または上流のいずれかに位置する、その配列に天然に付随するものであってよい。あるいは、コード核酸セグメントを組換えまたは異種プロモーターの制御下に配置することによっても、ある特定の利点が得られ得ると考えられ、組換えまたは異種プロモーターとは、その天然環境において核酸配列に通常付随していないプロモーターを指す。組換えまたは異種エンハンサーもまた、その天然環境において核酸配列に通常付随していないエンハンサーを指す。そのようなプロモーターまたはエンハンサーには、他の遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー、ならびに任意の他のウイルスまたは原核細胞もしくは真核細胞から単離されたプロモーターまたはエンハンサー、ならびに非「天然の」、すなわち異なる転写調節領域の異なるエレメントおよび/または発現を変化させる突然変異を含むプロモーターまたはエンハンサーが含まれ得る。例えば、組換えDNA構築において最も一般的に使用されるプロモーターには、βラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトース、およびトリプトファン (trp) プロモーター系が含まれる。本明細書において実証されるように、いくつかの態様においては、関心対象の遺伝子の発現を駆動するためにネスチンプロモーターが使用される。プロモーターおよびエンハンサーの核酸配列を合成的に生成するのに加えて、本明細書に開示される組成物と共に組換えクローニングおよび/または核酸増幅技術を用いて、配列を生成してもよい(それぞれ参照によって本明細書に組み入れられる、米国特許第4,683,202号および同第5,928,906号を参照されたい)。さらに、ミトコンドリア、葉緑体等などの核以外の細胞小器官内の配列の転写および/または発現を指示する制御配列も同様に使用され得ることが企図される。
【0029】
「遺伝子」または特定のタンパク質を「コードする配列」は、1つまたは複数の適切な調節配列の制御下に配置された場合に、インビトロまたはインビボにおいて転写され(DNAの場合)およびポリペプチドに翻訳される(mRNAの場合)核酸分子である。関心対象の遺伝子には、真核生物のmRNA由来のcDNA、真核生物のDNA由来のゲノムDNA配列、およびさらには合成DNA配列が含まれ得るが、決してこれらに限定されない転写終結配列は通常、遺伝子配列の3'側に位置している。典型的には、組換えウイルスに挿入された遺伝子の転写を終結するために、ポリアデニル化シグナルが提供される。
【0030】
本明細書で用いられる「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、ペプチド結合により特定の配列において連結されたアミノ酸の重合体を意味する。本明細書で用いられる場合、「アミノ酸」という用語は、特に別段の指定がない限り、アミノ酸のDまたはL立体異性体型のいずれかを指す。
【0031】
「導入遺伝子」という用語は、核酸配列が挿入された細胞において発現されるべきポリペプチドまたはポリペプチドの一部をコードする特定の核酸配列を指す。「導入遺伝子」という用語は、(1) 細胞において天然では見出されない核酸配列(すなわち、異種核酸配列);(2) それが挿入された細胞において天然で見出される核酸配列の突然変異型である核酸配列;(3) それが挿入された細胞において天然に存在する同じ(すなわち、相同的)もしくは類似の核酸配列の追加的コピーを付加するよう働く核酸配列;または (4) それが挿入された細胞において発現が誘導される、天然に存在するもしくは相同的なサイレント核酸配列を含むことが意図される。「突然変異型」または「改変核酸」または「改変ヌクレオチド」配列とは、野生型または天然に存在する配列とは異なる1つまたは複数のヌクレオチドを含む配列を意味し、すなわち、突然変異核酸配列は、1つまたは複数のヌクレオチドの置換、欠失、および/または挿入を含む。場合によっては、関心対象の遺伝子は、導入遺伝子産物が細胞から分泌され得るように、リーダーペプチドまたはシグナル配列をコードする配列もまた含み得る。
【0032】
本明細書で用いられる場合、「トランスフェクション」という用語は、哺乳動物細胞による外来DNAの取り込みを指す。外因性DNAが細胞膜の内側に導入されている場合に、細胞は「トランスフェクト」されている。いくつかのトランスフェクション技法が当技術分野で公知である。Michael Richard Green and Joseph Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., USA (2012);Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier Science Publishing, Inc., New York, USA (2012);Jon Lorsch (ed.) Laboratory Methods in Enzymology: DNA, Elsevier, (2013);Frederick M. Ausubel (ed.), Current Protocols in Molecular Biology (CPMB), John Wiley and Sons, (2014) を参照されたい。そのような技法を使用して、ウイルスベクターおよび他の核酸分子などの1つまたは複数の外因性DNA部分を、適切な宿主細胞に導入することができる。
【0033】
本明細書で用いられる「腫瘍溶解活性」という用語は、同じ条件下で正常細胞には任意の明らかなまたは顕著な有害作用をもたらすことなく、腫瘍細胞において発揮されるインビトロおよび/またはインビボでの細胞毒性効果を指す。インビトロ条件下での細胞毒性効果は、先行技術において公知の様々な手段により、例えば、DNA合成を阻害することによるまたはアポトーシスによる死細胞に対する選択的染色を用いて染色することにより、検出される。インビボ条件下での細胞毒性効果の検出は、当技術分野で公知の方法によって行われる。
【0034】
本明細書で用いられる、分子の「生物活性」部分とは、より大きな分子と類似の機能を果たし得る、より大きな分子の一部分を指す。単なる非限定的な例として、プロモーターの生物活性部分は、たとえごくわずかであっても、遺伝子発現に影響を及ぼす能力を保持する、プロモーターの任意の部分である。同様に、タンパク質の生物活性部分は、たとえごくわずかであっても、全長タンパク質の1つまたは複数の生物学的機能(例えば、別の分子との結合、リン酸化等)を果たす能力を保持する、タンパク質の任意の部分である。
【0035】
上述の予備的な説明および定義を考慮に入れて、本明細書に記載される本発明のベクター、組成物、および方法の起源および開発に関する状況を提供するために、さらなる背景を本明細書において以下に提供する。
【0036】
悪性神経膠腫を標的とする現在の変異HSV-1ベクターは、2つの欠失変異遺伝子、HSV-1リボヌクレオチド還元酵素 (RR) の大サブユニットであるICP6(U
L39遺伝子産物)、および神経毒性にも関連している多機能タンパク質であるICP34.5(34.5遺伝子産物)に基づいている。ICP6の欠如により、非分裂細胞でのウイルス複製は制限されるが、p16腫瘍抑制経路に欠陥のある細胞では複製の継続が可能となる一方、両方のγ
2 34.5遺伝子の欠失によってHSV-1脳炎が抑制される。これは、神経毒性に必須である、ベクリン1オートファジー機能のICP34.5による促進に起因する可能性がある。このオートファジー阻害効果に加えて、ICP34.5はまた、ウイルス感染によって誘発される宿主防御機構に対抗する。この機構によってPKR(二本鎖RNAプロテインキナーゼ)が活性化され、これは次に翻訳因子、eIF2αをリン酸化し、翻訳阻害をもたらす。ICP34.5は、eIF2αを脱リン酸化するPP1(プロテインホスファターゼ1)と直接結合してこれを活性化し、ウイルスmRNA翻訳の継続を可能にする。γ34.5遺伝子に変異を有する腫瘍溶解性HSV-1(例えば、G207、1716)は、複数回の臨床試験において、神経膠腫を有するヒトへの投与に安全であることが判明したが、おそらくはそのウイルス複製が制限されるために、有効性はわかりにくかった。この制限を克服するため、ICP34.5遺伝子がネスチンの神経膠腫幹細胞プロモーターの転写制御下にあるHSV1が以前に操作された。rQNestin34.5は、神経膠腫モデルにおいて有効性の増加を示した。
【0037】
ネスチンは、胚形成中に神経幹細胞において主に発現される中間径フィラメントであり、神経膠腫において上方制御されると考えられている。中枢神経系 (CNS) の種々の原発腫瘍は、腫瘍および/または内皮細胞内で高レベルのネスチンを示す。この転写駆動性の腫瘍溶解性ウイルスは、インビトロおよびインビボにおいて、CNSおよび神経芽細胞腫腫瘍に対して効果的な抗腫瘍効果を示した。ネスチン遺伝子配列は、Genebank Gene ID: 10763, Chromosome 1 - NC_000001.11 (156668763..156677397, complement) において見出すことができる。
【0038】
ヘルペスガンマ(γ)34.5遺伝子
公開された結果から、ヘルペスγ34.5遺伝子(あるいはγ134.5遺伝子としても公知である)の少なくとも1つの機能が、ウイルス感染に対する宿主細胞の応答を妨げること、すなわちアポトーシス様応答における宿主タンパク質合成遮断の誘発を妨げることであることが実証された(Chou, J., et al., Science 250:1262-1266 (1990);Chou, J. and Roizman, B., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:3266-3270 (1992);Chou, J., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:10516-10520 (1995))。類似の機能は、病原性ウイルスの間にも広まっている(Cosentino, G. P., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:9445-9449 (1995);Gale, M., Jr., et al., Mol. Cell Biol. 18:5208-5218 (1998);Katze, M. G., et al., Trends Microbiol. 3:75-78 (1995); Sharp, T. V., et al., Nuc. Acids Res. 21:4483-4490 (1993))。
【0039】
γ34.5は、ベロ細胞の培養においてウイルス増殖に必須ではないものの、ウイルスがマウスの中枢神経系 (CNS) において伝播することを可能にし、以前にCNS複製に関連付けられたHSVゲノムの領域に位置する(Markovitz, N. S., et al., J. Virol. 71:5560-5569 (1997);Centifanto-Fitzgerald, Y. M., et al., J. Esp. Med 155:475-489 (1982))。これは、γ34.5にコードされるタンパク質が、二本鎖RNA依存性キナーゼ (PKR) を阻害するという事実に起因し得る。ウイルス感染に伴って一般的に見られるような、二本鎖RNA分子への曝露に際して、PKRは伸長開始因子eIF-2のαサブユニットをリン酸化し、タンパク質合成の阻害を引き起こす(Chou, J., et al., Science 250:1262-1266 (1990);Chou, J. and Roizman, B., Proc. Natl. Acad. Sci USA 89:3266-3270 (1992);Chou, J., et al., J. Virol. 68:8304-8311 (1994))。γ34.5を発現することができない変異体による神経細胞起源の細胞の感染は、細胞タンパク質合成の遮断を引き起こし、結果としてウイルス産生が制限される。
【0040】
要約すると、γ34.5の存在下において、HSVは、アポトーシスを妨げ、ひいては子孫ウイルスの産生を可能にする。γ34.5の非存在下では、細胞は死滅し、感染性HSVは子孫ウイルスを産生することができない。したがって、臓器全体へのHSV感染/増殖は排除される。
【0041】
したがって、本発明のネスチンプロモーター/γ34.5アプローチにより、そのプロモーターを使用することができる細胞におけるウイルスの産生は可能となるが、そのプロモーターをオンにすることができない細胞は感染を伝播しない。
【0042】
本発明のヘルペスウイルス変異体は、γ34.5遺伝子の両コピーにおいて欠失または不活性化変異を含み、γ34.5遺伝子の少なくとも1コピーは、細胞特異的または腫瘍特異的プロモーターの制御下に再導入される。
【0043】
本明細書で用いられる場合、「欠失」という用語は、γ34.5遺伝子などの遺伝子からの核酸の除去を意味することが意図される。
【0044】
本明細書で用いられる場合、「不活性化変異」という用語は、その遺伝子の発現が有意に減少するか、または遺伝子産物が非機能的となるか、または機能するその能力が有意に減少する、遺伝子に対する変異または変更を広く意味することが意図される。
【0045】
「遺伝子」という用語は、別段の指示がない限り、遺伝子産物をコードする領域、およびプロモーターまたはエンハンサーなどのその遺伝子の調節領域の両方を含む。
【0046】
そのような変更を達成するための方法には (a) 遺伝子産物の発現を破壊する任意の方法、または (b) 発現される遺伝子を非機能的にする任意の方法が含まれる。遺伝子の発現を破壊する多くの方法が公知であり、これには、挿入、欠失、および/または塩基の変更による、遺伝子のコード領域またはそのプロモーター配列の変更が含まれる(Roizman, B. and Jenkins, F. J., Science 229: 1208-1214 (1985) を参照されたい)。
【0047】
本発明者らは、改良型腫瘍溶解性rQNestin34.5 HSVウイルスである、rQNestin34.5.v2と称される第2世代ウイルスを作製した。遺伝子改変HSV1 rQNestin34.5.v2は、以下の手技によって神経膠腫選択的となった:(1) ウイルスタンパク質 (ICP6) をコードするウイルス遺伝子の1つを除去した。この遺伝子がないと、HSV1は、効率的に増殖し複製するために感染細胞内の因子を用いなければならず、本発明者らは、そのような因子が、有糸分裂が活発である細胞、または大部分の神経膠腫において欠損している細胞遺伝子 (p16) に欠陥のある細胞内に存在することを示した;および(2) 感染細胞での強力なウイルス増殖に必要なタンパク質 (ICP34.5) をコードするウイルス遺伝子の2コピーもまた除去し、1コピーを、成人脳において選択的に神経膠腫にも存在するネスチンプロモーターの制御下に再挿入した。このようにこれら2つの手技により、この新規HSV1(rQNestin34.5v.2と命名される)は、神経膠腫を破壊し正常脳細胞は破壊しないという点で比較的選択的となり得、本発明者らはこれらの記載を培養細胞および動物モデルにおいて確認した。加えて、第1世代rQNestin34.5 (Kambara et al. An oncolytic HSV-1 mutant expression ICP34.5 under control of a Nestin promoter increases survival of animals even when symptomatic from a brain tumor, (2005) Cancer Res. 65(7): 2832-2839) に存在するICP6-EGFP融合タンパク質が欠如しており、ゲノムの不安定性および毒性の原因がさらに取り除かれる。
【0048】
したがって、(a) γ35.5をコードする遺伝子の両コピーにおける欠失または不活性化変異;(b) ネスチンプロモーターの転写制御下へのHSV γ35.5遺伝子の少なくとも1コピーの挿入;および(c) HSVウイルスタンパク質ICP6をコードする遺伝子における欠失または不活性化変異を含み、緑色蛍光タンパク質、例えば第1世代HSV-1ベクターrQNestin34.5に存在するICP6-EGFP融合タンパク質を発現しない腫瘍選択的腫瘍溶解性ヘルペスウイルスベクターが、本明細書において提供される。
【0049】
ある特定の態様において、ベクターはUL39核酸調節配列(プロモーターおよびエンハンサーエレメント)を含まない。ある特定の態様において、ベクターはICP6の融合タンパク質を含まない。
【0050】
1つの態様において、ネスチンプロモーターの転写制御下のγ35.5遺伝子の少なくとも1コピーは、リボヌクレオチド還元酵素の大サブユニットICP6(感染細胞タンパク質6)をコードするUL39遺伝子に挿入される。1つの態様において、ネスチンプロモーターはSEQ ID NO: 2またはその縮重変種を含む。1つの態様において、ネスチンプロモーターおよび熱ショックタンパク質68プロモーターのエレメントを含むハイブリッドプロモーターが使用される(全体として参照により組み入れられる、Kambara et al. An oncolytic HSV-1 mutant expression ICP34.5 under control of a Nestin promoter increases survival of Animals even when symptomatic from a brain tumor, (2005) Cancer Res. 65(7): 2832-2839;およびKawaguchi et al.Nestin EGFP transgenic mice, visualization of the self-renewal and multipotentcy of CNS stem cells Mol. Cell Neurosci. (2001)17:259-273を参照されたい)。
【0051】
1つの態様において、腫瘍選択的腫瘍溶解性ヘルペスウイルスベクターは、SEQ ID NO: 1の配列またはその縮重変種を含む。
【0052】
当業者は、本明細書において開示された配列の改変型が類似の生物活性を保持する限り、それもまた使用され得ることを、容易に認識するであろう。単なる非限定的な例として、本明細書において企図される様々な構築物を設計する場合に、SEQ ID NO: 4に示されるネスチン第2イントロン配列(エンハンサー)およびSEQ ID NO: 5に示されるhsp68最小プロモーターを、単独でまたは組み合わせて使用することができる。いくつかの態様において、γ34.5の発現を駆動するために、ネスチンエンハンサーエレメントは熱ショックタンパク質68 (hsp68) 最小プロモーターに機能的に連結され得る。いくつかの態様においては、関心対象の上述のヌクレオチド配列のいずれかの発現を開始させるかまたは発現に影響を及ぼすために、別のまたは付加的な発現制御配列を腫瘍溶解性発現ベクターに組み入れてもよい。単なる非限定的な例として、ネスチンプロモーターはマイクロRNA標的配列を取り込み得る。miR翻訳制御配列の例には、神経膠腫細胞を正常神経細胞と区別するためのmiR128またはmiR124が含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
様々な態様において、本発明は対象における新生物疾患を処置するための方法を提供する。ある特定の態様において、本方法は、腫瘍溶解活性を有する発現ベクターの治療有効量を対象に投与する段階を含む。いくつかの態様において、がんは脳がんである。単なる非限定的な例として、処置され得る脳がんの種類には、神経膠芽腫、未分化星状細胞腫、星状細胞腫、毛様細胞性星状細胞腫、びまん性内在性橋膠腫、乏突起膠腫、退形成性乏突起膠腫、混合乏突起星状細胞腫、および上衣腫 (pendymoma) が含まれ得る。いくつかの態様において、がん幹細胞は本発明の方法で処置される。いくつかの態様において、処置される対象は哺乳動物である。ある特定の態様において、処置される対象はヒトである。
【0054】
脳がんを含む、本明細書に記載される新生物疾患のいずれかを処置する方法は、単一活性剤としての、またはこれらに限定されないが、幹細胞に基づいた治療法、免疫療法、放射線療法、免疫抑制剤、サイトカインを含む化学療法剤または抗増殖剤を用いる治療法を含む、付加的な処置方法と組み合わせた、例示的態様の化合物の投与を含み得る。本発明の処置方法は、付加的な処置方法と平行してよいか、その前であってよいか、またはその後であってよい。
【0055】
本明細書で用いられる「治療的利点」には、がん細胞の数、がん細胞の増殖速度、または転移の任意の減少が含まれる。いくつかの態様において、本明細書において用いられるプロモーターは、正常細胞と比較して、関心対象の1つまたは複数のがん細胞型において関心対象の関連遺伝子の選択的発現または発現増加を促進する。
【0056】
本明細書で用いられる「機能的に連結される」という用語は、様々な核酸分子エレメントが機能的に結合され、互いに相互作用し得るような、互いに関する該エレメントの配置を指す。そのようなエレメントには、非限定的に、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化配列、1つまたは複数のイントロンおよび/またはエキソン、ならびに発現されるべき関心対象の遺伝子のコード配列が含まれ得る。核酸配列エレメントは、機能的に連結された場合に、共に作用して互いの活性を調節することができ、最終的には、上記の配列によってコードされるもののいずれかを含む関心対象の遺伝子の発現レベルに影響を及ぼし得る。
【0057】
当業者は、特定の配列が本明細書において提供されるが、本発明のベクター、組成物、および方法において使用される核酸分子が、SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 7、およびSEQ ID NO: 8として記述される配列を含む分子に厳密に限定されないことを理解するであろう。むしろ、特定の態様は、置換、小さな欠失、挿入、または逆位などの改変を保有する核酸分子を包含する。そのヌクレオチド配列が、配列表においてSEQ ID NO: 1、2、3、4、5、6、7、および8として示されるヌクレオチド配列と少なくとも95%同一(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一)である核酸分子が、本発明に含まれる。
【0058】
本明細書において開示される核酸、例えば、SEQ ID NO: 1、2、3、4、5、6、7、および8の縮重変種であるヌクレオチド配列を有する核酸分子もまた、本発明に含まれる。3つのヌクレオチドが連続してグループ化したものである「コドン」は、1つのアミノ酸をコードする。64個の可能なコドンが存在するが、天然アミノ酸は20個しか存在しないため、大部分のアミノ酸は2つ以上のコドンによってコードされる。遺伝コードのこの天然の「縮重」または「冗長性」は、当技術分野において周知である。したがって、配列表に示される核酸配列は、上記のポリペプチドをコードする核酸配列の大きいが明確な群の中の一例を提供するにすぎないことが、認識されると考えられる。
【0059】
重要なことには、本明細書に記載される態様のベクターは、遺伝子治療においてさらなる遺伝子を導入するのに有用であり得る。したがって、例えば、本発明のHSVベクターは、p53、Rb、もしくはマイトシン、またはそれらの生物活性変種などの細胞周期の調節に効果的なタンパク質、または、効果的であるためにはチミジンキナーゼ代謝産物と共に使用されなければならない、条件的自殺遺伝子チミジンキナーゼなどの細胞死の誘導に効果的なタンパク質の発現、のための1つまたは複数のさらなる外因性遺伝子、あるいは例えば毒素などの任意の他の抗腫瘍遺伝子を含み得る。
【0060】
薬学的に使用される場合、本明細書において考察される腫瘍溶解性ベクター態様は、薬学的に許容される様々な担体と組み合わせることができる。薬学的に許容される適切な担体は、当業者に周知である。次いで、以下により詳細に記載される有効量で、組成物を治療的にまたは予防的に投与することができる。
【0061】
本明細書で用いられる場合、「治療有効量」という用語は、腫瘍溶解活性を発揮して、腫瘍細胞増殖の減弱または阻害を引き起こし、腫瘍退縮をもたらす、ベクターの量を意味することが意図される。有効量は、処置されるべき病態または状態に応じて、患者および患者の状態、ならびに当業者に周知の他の要因によって変動する。有効量は、当業者によって容易に決定される。いくつかの態様において、治療的範囲は、一度に導入される10
3〜10
12プラーク形成単位である。いくつかの態様においては、上述の治療範囲における治療用量が、腫瘍内、髄腔内、対流強化、静脈内、または動脈内経路により、毎日から毎月の間隔で投与される。
【0062】
本発明に従って、前述の記載においてある特定の投与経路が提供されるが、ベクターの任意の適切な投与経路が適合化され得、したがって上記の投与経路は限定的であることが意図されない。投与経路には、静脈内、経口、頬側、鼻腔内、吸入、粘膜への局所適用、または腫瘍内、皮内、髄腔内、嚢内、病巣内を含む注射、もしくは他の任意の種類の注射が含まれ得るが、それらに限定されない。投与は、連続的または間欠的に達成され得、処置されるべき対象および状態によって変動する。当業者は、本明細書に記載される様々な投与経路により、本発明のベクターまたは組成物が、腫瘍または標的化がん細胞の上、中、または近くに送達され得ることを、容易に認識するであろう。当業者は、本明細書に記載される様々な投与経路により、本明細書に記載されるベクターおよび組成物が、処置されるべき腫瘍または個々の細胞の近傍の領域に送達され得ることもまた、容易に認識するであろう。「近傍の」には、対象に投与されるべきベクターまたは組成物の少なくとも一部が、それらの意図される標的に達し、かつそれらの治療効果を発揮するような、腫瘍または個々のがん細胞に十分に近接近している、対象における任意の組織または体液が含まれ得る。
【0063】
薬学的に許容される担体は当技術分野において周知であり、これには、生理学的緩衝生理食塩水などの水溶液、またはグリコール、グリセロール、植物油(例えば、オリーブ油)、もしくは注射可能な有機エステルなどの、他の溶媒もしくは媒体が含まれる。薬学的に許容される担体を用いて、本発明の組成物をインビトロで細胞にまたはインビボで対象に投与することができる。薬学的に許容される担体は、例えば組成物を安定化するようにまたは剤の吸収を増加させるように作用する、生理学的に許容される化合物を含有し得る。生理学的に許容される化合物には、例えば、グルコース、スクロース、もしくはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸もしくはグルタチオンなどの抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質、または他の安定剤もしくは賦形剤が含まれ得る。他の生理学的に許容される化合物には、湿潤剤、乳化剤、分散剤、または保存剤が含まれ、それらは微生物の増殖または作用を防止するのに特に有用である。様々な保存剤が周知であり、これには例えばフェノールおよびアスコルビン酸が含まれる。当業者は、生理学的に許容される化合物を含めた薬学的に許容される担体の選択が、例えばポリペプチドの投与経路に依存することを知っているであろう。
【0064】
本明細書に記載される技術のいくつかの態様は、以下の番号を付した項目のいずれかによって規定され得る。
項目1. (a) γ34.5をコードする遺伝子の両コピーにおける欠失または不活性化変異;および
(b) ネスチンプロモーターの転写制御下へのHSV γ34.5遺伝子の少なくとも1コピーの挿入;および
(c) HSVウイルスタンパク質ICP6をコードする遺伝子における欠失または不活性化変異
を含み、緑色蛍光タンパク質を発現しない、腫瘍選択的腫瘍溶解性ヘルペスウイルスベクター。
項目2. UL39核酸調節配列を含まない、項目1に記載の腫瘍選択的腫瘍溶解性ヘルペスウイルスベクター。
項目3. ICP6の融合タンパク質を含まない、項目1または2に記載の腫瘍選択的腫瘍溶解性ヘルペスウイルスベクター。
項目4. ネスチンプロモーターの転写制御下の前記γ34.5遺伝子の少なくとも1コピーが、リボヌクレオチド還元酵素の大サブユニットICP6をコードするUL39遺伝子に挿入されている、項目1〜3のいずれかに記載の腫瘍選択的腫瘍溶解性ヘルペスウイルスベクター。
項目5. 前記ネスチンプロモーターがSEQ ID NO: 2またはその縮重変種を含む、項目1〜4のいずれかに記載の腫瘍溶解性発現ベクター。
項目6. SEQ ID NO: 1の配列またはその縮重変種を含む、項目1に記載の腫瘍選択的腫瘍溶解性ヘルペスウイルスベクター。
項目7. 項目1〜6のいずれかに記載の腫瘍選択的腫瘍溶解性ヘルペスウイルスベクターの近傍に導入する段階を含む、対象における頭蓋内腫瘍細胞を選択的に死滅させるための方法。
項目8. シクロホスファミド (CPA) を投与する段階をさらに含む、項目7に記載の方法。
項目9. 前記CPAが、前記腫瘍溶解性ヘルペスウイルスベクターの2日前に投与される、項目7または8に記載の方法。
項目10. 前記腫瘍細胞が神経膠芽腫細胞を含む、項目7〜9のいずれかに記載の方法。
項目11. 前記腫瘍細胞ががん幹細胞を含む、項目7〜10のいずれかに記載の方法。
項目12. 前記対象が哺乳動物である、項目7〜11のいずれかに記載の方法。
項目13. 前記対象がヒトである、項目7〜12のいずれかに記載の方法。
項目14. 対象における頭蓋内腫瘍細胞の処置に使用するための腫瘍選択的腫瘍溶解性ヘルペスウイルスベクターであって、
(d) γ34.5をコードする遺伝子の両コピーにおける欠失または不活性化変異;および
(e) ネスチンプロモーターの転写制御下へのHSV γ34.5遺伝子の少なくとも1コピーの挿入;および
(f) HSVウイルスタンパク質ICP6をコードする遺伝子における欠失または不活性化変異
を含み、緑色蛍光タンパク質を発現しない、腫瘍選択的腫瘍溶解性ヘルペスウイルスベクター。
項目15. UL39核酸調節配列を含まない、項目14に記載の腫瘍選択的腫瘍溶解性ヘルペスウイルスベクター。
項目16. ICP6の融合タンパク質を含まない、項目14または15に記載の腫瘍選択的腫瘍溶解性ヘルペスウイルスベクター。
項目17. ネスチンプロモーターの転写制御下の前記γ34.5遺伝子の少なくとも1コピーが、リボヌクレオチド還元酵素の大サブユニットICP6をコードするUL39遺伝子に挿入されている、項目14〜16のいずれかに記載の腫瘍選択的腫瘍溶解性ヘルペスウイルスベクター。
項目18. 前記ネスチンプロモーターがSEQ ID NO: 2またはその縮重変種を含む、項目14〜17のいずれかに記載の腫瘍溶解性発現ベクター。
項目19. SEQ ID NO: 1の配列またはその縮重変種を含む、項目14〜18のいずれかに記載の腫瘍選択的腫瘍溶解性ヘルペスウイルスベクター。
項目20. 前記腫瘍細胞が神経膠芽腫細胞を含む、項目14〜19のいずれかに記載の腫瘍選択的腫瘍溶解性ヘルペスウイルスベクター。
項目21. 前記腫瘍細胞ががん幹細胞を含む、項目14〜20のいずれかに記載の腫瘍選択的腫瘍溶解性ヘルペスウイルスベクター。
項目22. 前記対象が哺乳動物である、項目14〜21のいずれかに記載の腫瘍選択的腫瘍溶解性ヘルペスウイルスベクター。
項目23. 前記対象がヒトである、項目14〜22のいずれかに記載の腫瘍選択的腫瘍溶解性ヘルペスウイルスベクター。
項目24. 前記ベクターがSEQ ID NO: 7を含まない、項目1〜23のいずれかに記載の腫瘍選択的ウイルス。
項目25. 前記ベクターがSEQ ID NO: 8を含む、項目1〜23のいずれかに記載の腫瘍選択的ウイルス。
項目26. 対象における頭蓋内腫瘍細胞を選択的に死滅させるための、項目1〜25のいずれかに記載の腫瘍選択的ウイルスの使用。
項目27. シクロホスファミド (CPA) が前記対象に投与される、項目26に記載の使用。
項目28. 前記CPAが、前記腫瘍溶解性ヘルペスウイルスベクターの2日前に投与される、項目26または27に記載の使用。
項目29. 前記腫瘍細胞が神経膠芽腫細胞を含む、項目26〜28のいずれかに記載の使用。
項目30. 前記腫瘍細胞ががん幹細胞を含む、項目26〜29のいずれかに記載の使用。
項目31. 前記対象が哺乳動物である、項目26〜30のいずれかに記載の使用。
項目32. 前記対象がヒトである、項目26〜31のいずれかに記載の使用。
項目33. 本質的にSEQ ID NO: 1からなる、腫瘍選択的腫瘍溶解性ヘルペスウイルスベクター。
【実施例】
【0065】
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を実証するために含めるものである。以下の実施例において開示される技法は、本発明の実施において良好に機能することが本発明者らによって発見された技法を表し、したがってその実施のための好ましい様式を構成すると見なされ得ることが、当業者によって認識されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示を考慮して、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱することなく、開示される特定の態様において多くの変更を行い、なお同様のまたは類似の結果を得ることができることを認識すべきである。より具体的には、化学的にも生理学的にも関連するある特定の剤が、本明細書に記載される剤の代わりに使用され得、同時に同一または類似の結果が達成されることは明白である。当業者に明白なこのような類似の代替物および修飾物はすべて、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の精神、範囲、および概念内にあると見なされる。
【0066】
実施例1 rQNestin34.5v.2の作製
rQNestin34.5v.2は、神経膠腫細胞では複製し、脳または他の組織内の正常細胞では複製しないように設計された、遺伝子操作されたHSV1(F株誘導体)である。HSV1は、主に三叉神経節の感覚ニューロン内に潜伏形態として、ヒト集団において風土的に存在する。このウイルスはおよそ152〜158キロベースであり、エンベロープを有し、直径150 nmである。このウイルスは、すべてではないが大部分の確立されたヒト神経膠腫細胞株、および「幹様」神経膠腫亜集団を濃縮する条件下で増大された、患者から新たに確立された神経膠腫において、感染し複製すると考えられる。HSV1 F株(例えば、OriGene Technologies Inc. Rockville, MD 20850 U.S.Sから市販されているもの)に対して以下の遺伝子改変を行い、rQNestin34.5v.2を作製した。
1- ICP34.5をコードするウイルス遺伝子のコード領域の両方の内因性コピーを大部分除去した。
2- ICP34.5コード領域の1コピーを神経膠腫選択的ネスチンプロモーター/エンハンサー配列の制御下に配置し、ICP34.5ウイルス遺伝子の神経膠腫選択的発現を提供し、ネスチンを発現していない脳細胞に対してネスチンを発現している神経膠腫におけるウイルスのより強力な複製を可能にした。
3- ウイルスのICP6遺伝子座もまた破壊し、ウイルス複製を、p16腫瘍抑制経路シグナル伝達に欠陥のある神経膠腫細胞(神経膠腫の90%超)または有糸分裂細胞に限定した。
【0067】
rQNestin34.5v.2の模式図を
図1に示す。感染細胞において、ウイルスDNAは染色体外に残る。ウイルスは、腫瘍細胞に侵入した際に溶菌サイクルに入り、通常12〜18時間以内に腫瘍細胞の溶解を引き起こす。潜伏は、三叉神経感覚ニューロンにおいてのみ起こる。
【0068】
rQNestin34.5 v. 2 DNAを、Microarray Core Facility Huntsman Cancer Institute University of UtahにおいてIllumina GA IIe機器での次世代配列決定に供し、その配列をSEQ ID NO: 1に提供する。
【0069】
ネスチン-hsp68最小エンハンサー/プロモーター配列は、ネスチン発現細胞に特異的転写調節を提供するために共に融合された、ヒトネスチンエンハンサー/プロモーターおよびヒトhsp68プロモーターに由来する。rQNestinの状況におけるICP34.5の特異的転写調節を、以下の一連の実験において示した(注記:感染細胞におけるICP34.5発現は、翻訳因子eIF2aの脱リン酸化を引き起こす。そのため、ネスチンを発現しない細胞(HUVECおよびヒトアストロサイト)はウイルス感染後に高レベルのホルホルeiF2aを有するはずであるものの、ネスチンを発現する神経膠腫細胞では脱リン酸化eiF2aが見られると、本発明者らは推測する)。
【0070】
いくつかの確立された神経膠腫細胞株(U87dEGFR、U215、U138、およびGli36dEGFR)、神経膠腫「幹様」細胞亜集団を濃縮する条件下で増殖した、新たに外植された神経膠腫細胞 (GBM #02)、正常ヒト静脈内皮細胞 (HUVEC)、ならびに正常ヒトアストロサイトに、rQNestin34.5 v.2または別のrQNestin34.5(v.1‐GFPを発現する)を感染させた(
図2)。加えて、ICP34.5欠失変異体であるrHSVQ1 (rQ1)(例えば、US 20020110543、およびHirokazu Kambara et al. An Oncolytic HSV-1 Mutant Expressing ICP34.5 under Control of a Nestin Promoter Increases Survival of Animals even when Symptomatic from a Brain Tumor, Cancer Res April 1, 2005, 65; 2832を参照されたい)、野生型F株ウイルス、および非感染細胞もまた使用した。細胞溶解物を分離し、次いでeIF2a 対 ホルホル-eiF2aに関するウェスタンブロットを実施した。正常HUVEC細胞およびアストロサイトにおいて、野生型F株感染細胞ではホスホル-eiF2aが観察されなかったのに対して、rQNestin34.5、rQNestin34.5v.2、およびrHSVQ1ウイルス感染細胞では予測通りホスホ-eiF2aが存在し、このことから、それらがICP34.5変異体として機能したことが示される。しかしながら、すべての神経膠腫細胞において、rHSVQ1感染細胞ではホスホル-eiF2aがいまだ見えたのに対して、野生型F株ウイルスと同様にrQNestin34.5またはrQNestin34.5v.2感染細胞では、ホスホル-eiF2aは検出されなかった。したがってこのデータから、rQNestin34.5v.2は、野生型ウイルスとは異なり、正常細胞(HUVECおよびアストロサイト)ではICP34.5欠損ウイルスとして機能することが示された。しかしながら神経膠腫細胞では、rQNestin34.5v.2は、野生型ウイルスと同様にICP345.陽性ウイルスとして機能した。定量的には、対照rHSVQ1ウイルスと比較して、rQNestin34.5v.2および親のrQNestin34.5に感染した神経膠腫細胞では、リン酸化eiF2αのレベルは明らかに>2倍減少した。同様に、rQNestin34.5v.2および親のrQNestin34.5に感染した神経膠腫細胞において観察されたリン酸化eIF2αのレベルは、同じ細胞における非リン酸化eIF2αタンパク質よりも>2倍少なかった。
【0071】
最初の一連の段階において、本発明者らは、二倍体ICP34.5遺伝子が欠失しているF株HSV1配列を含む細菌人工染色体 (BAC) であるfHSVQuik-1を改変しなければならなかった。fHSVQ1の作製は、Teradaら (Terada et al. Development of a rapid method to generate multiple oncolytic HSV vectors and their in vivo evaluation using synergenic mouse tumor models. Gene Ther. 13: 705-714, 2006) において記載された。
図3は、ICP6プロモーターの制御下にあるEGFPの全配列を除去するためのfHSVQuik-1の改変が、ICP6プロモーター‐EGFP転写カセットの除去された部位におけるGmR選択マーカーのETクローニングによって達成され、その後FLP組換えおよび選択マーカーの除去が行われてfHSVQuik-2が作製されたことを示す。ネスチン/hsp68プロモーター/エンハンサー‐ICP34.5カセットをfHSVQuik-2中に移行させるために、Flp組換えを用いて、このカセット(Xと表示)を有するトランスファープラスミドを次いで同じ部位に組換え戻して、fHsvQ2-Xを作製した。Xがネスチン/hsp68プロモーター/エンハンサー‐ICP34.5カセットである場合に、これはfHSVQ2-nestin34.5と命名される(
図4を参照されたい)。
【0072】
細菌においてfHSVQ2-nestin34.5を作製した後、BAC全体を精製し、哺乳動物ベロ細胞にエレクトロポレーションし、そこでCre-Lox組換えを用いて全BAC配列が除去される(
図4)。ウイルスゲノムは今やそれ自身のDNA複製の過程を「自由に」開始することができ、ウイルスプラークを生じ、このプラークを精製してrQNestin34.5v.2を作製することができる。作製されたrQnestin34.5v.2は、サザンブロッティングにより、所望の遺伝子同一性を有すると同定された(データは表示せず)。次いでrQNestin34.5v.2の単離体をDiamyd, Inc.に送付し、その社がウイルスDNA単離およびそこの認定ベロ由来マスターセルバンク (MCB) へのトランスフェクションを進め、続いて増大させて、その後の有効性/毒性実験に用いられるrQNestin34.5v.2の最終的な種を得た。臨床試験用のベクターの大規模製造に向けた次のcGMP手順を可能にするために、このウイルス種貯蔵物 (VSS) を一連の確証されたアッセイ法に供した。確証されたGLP条件下で行われたVSS試験には;無菌性(静菌性および静真菌性 (B&F) 浸漬を含む)、マイコプラズマ(留意事項)、エンドトキシン、ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) に基づいた逆転写 (PBRT) アッセイ法、ならびに以下の外来性物質:ブタサーコウイルス1および2;アデノウイルス5型;アデノ随伴ウイルス1、2、3、4、6、7、8、9、10、および11型に関する定量的PCR (QPCR) 試験が含まれる。この試験パネルの結果から、製造を進行させるのに適していることが実証される。
【0073】
ウイルス産生
細胞の融解および増大。VeroDマスターセルバンクの1本または複数本のバイアルを37℃で融解し、細胞をコニカルチューブに移してプールした。細胞を細胞1.2×10
7個/mL/チューブで入れたところ、生存回収は細胞約9.2×10
6個/チューブであった。細胞を完全培地で徐々に希釈し、試料を採取して生存細胞数を得た。細胞を細胞3.0〜5.0×10
4個/cm2の密度でフラスコにプレーティングした。
【0074】
細胞を37℃、7.5% CO
2でインキュベートし、増殖および微生物汚染の視覚的証拠について、位相差顕微鏡法により定期的に調べた。細胞が約80%コンフルエントになった時点で、これを継代した。簡潔に説明すると、完全培地を除去し、PBSを添加して細胞をリンスする。PBSを除去し、TryPLE Selectをフラスコに添加して細胞を解離する。フラスコを37℃で、およそ3〜5分間または細胞が剥離するまでインキュベートする。細胞を完全培地中に再懸濁し、プールし、計数し、新たなフラスコに細胞2.0〜4.0×10
4個/cm
2の密度で播種した。細胞を16×10層Nunc Cell Factoryに拡大し、コンフルエンスの1〜2日後までおいてから感染させた。コンフルエンスの1〜2日後までおいてから感染させた。
【0075】
rQNestin34.5v.2ベクターによる感染。細胞が所望のコンフルエンスに達した時点で、例示的なフラスコをTryPLE Selectで処理し、計数して細胞数を概算した。MOI=0.1を得るのに必要な適量を融解することにより、rQNestin34.5v.2マスターウイルスバンクベクター接種材料を調製した。最初の1.5時間の吸着期と、その後の完全培地中での第1日目の感染のためのインキュベーションにより、cell factoryを感染させた。約24時間後、培養液を除去し、等量の無血清培地と交換した。cell factoryをインキュベーター内に置き、温度を33℃/7.5%CO2まで下げた。培養物を毎日モニターし、細胞変性効果率を視覚的にチェックした。感染は典型的には4日間続く。
【0076】
粗ウイルスの収集および清澄化。cell factoryをバイオセイフティーキャビネット内に置き、上清および細胞残屑を滅菌バッグ内にプールすることにより、感染を停止させた。5M NaCl貯蔵液を添加して、収集物の塩化ナトリウムレベルを0.45 Mまで上昇させた。次いで、収集物を手動で20〜30分間混合した。次に、収集物を500 mL遠心管に分注し、1500×gでの遠心分離により細胞残屑を除去する。上清を滅菌バッグ中に再度プールした。滅菌水でSartopore清澄化フィルターカプセルを前処理した後、次にウイルス含有上清をポンプ操作でフィルターカプセルに通して、別の滅菌バッグに入れた。ウイルスについてはその後、滅菌水をポンプ操作して、カプセル内の残存ウイルスを回収する。バッグを混合し、濾液を4℃で一晩貯蔵する。
【0077】
翌日、濾液を加温し、滅菌水中の3mM MgCl
2を2倍量添加することにより約2 mM MgCl
2に調整した。希釈濾液を混合し、次にベンゾナーゼ (Benzonase)処理を行う。これは、最初に100,000〜200,000 Uの酵素を希釈緩衝液中に希釈し、35分間にわたって連続して混合しながら7つの順次的追加物を5分間隔で注入することによって行う。
【0078】
陽イオン交換カラムクロマトグラフィー。BPG 100カラムにSP高性能樹脂を充填し、0.5N NaOHで消毒する。消毒後、カラムを洗浄緩衝液 (PBS pH 7.0)、ストリップ緩衝液 (1M NaCl-PBS pH 7.0)、および洗浄緩衝液で平衡化してから、ベンゾナーゼ処理ウイルスを負荷する。実行中、伝導率、UV、およびpHをモニターする。
【0079】
ベンゾナーゼ処理濾液を含むプロセスバッグ (process bag)を、チューブウェルダーを用いて注入口に接続し、ウイルスをカラム上に負荷する。フロースルーを滅菌バッグ中に収集する。ウイルス捕捉段階後、UV吸光度がベースラインに戻るまでPBS pH 7.0で洗浄した。ポンプを停止し、0.45 M NaCl-PBS pH 7.0を含むプロセスバッグを注入口に接続した。排出管をバイオセイフティーキャビネット内の滅菌容器に移した。緩衝液をカラム内にポンプ注入し、UV吸光度が鋭く上昇し始めた時点で、カラム出口を新たな滅菌容器に移し、溶出されたウイルスを収集した。UV吸光度がベースライン近くまで戻った後に、収集を終了した。これが精製ウイルス溶出画分である。次に、ストリップ緩衝液を含むプロセスバッグを注入口に接続する。排出管の末端を滅菌ボトル中に移して、ストリップ画分を収集する。UV吸光度がピークに達し、ベースライン近くに戻るまで、緩衝液をポンプ操作によりカラムに通す。溶出液を4℃で一晩貯蔵する。
【0080】
タンジェンシャルフロー濾過および最終濾過。チューブおよびカートリッジを組み立て、オートクレーブによってこのシステムを滅菌することにより、タンジェンシャルフロー濾過システムを調製する。このシステムをバイオセイフティーキャビネットに移し、滅菌PBS pH 7.0を流す。等量の滅菌PBS pH 7.0および0.45Mウイルス溶出画分をシステム容器に添加し、5〜10分間かけて再循環させる。この平衡化の後、透過物収集ポンプを作動させ、濾液を約5 mL/分で収集する。負荷容量が半分に減少するまで、このシステムを実行する。容器中の残余分を容量が2倍になるようにPBS pH 7.0で希釈し、再濃縮を継続する。透過物の伝導率をモニターしながら、この工程を繰り返す。透過物伝導率が透析濾過緩衝液 (PBS pH 7.0) の10%以内になった時点で、産物は約40 mLまで濃縮され得た。残余分を回収し、0.45 uM Millipackフィルターユニットを通して濾過した。
【0081】
最終製剤化および包装。最終的な濾過ウイルス貯蔵物は、滅菌グリセロールが10%最終容量になるように調整し、十分に混合した。バイアル当たり110 uLの容量で、産物を貯蔵用のクリオバイアルに手動で分注した。チューブにラベルを貼り、≦-65℃で貯蔵した。
【0082】
実施例2 前臨床研究
3つの一般的な実験セットを実施した。第1に、神経膠腫細胞株および正常ヒト細胞(具体的にはヒトアストロサイト)を用いるインビトロ研究をモデルとして使用して、後者ではなく前者に対するrQNestin34.5の複製および細胞毒性の相対的選択性を示す。第2に、頭蓋内ヒト神経膠腫異種移植片のマウス無胸腺モデルを用いて、rQNestin34.5v.2の単回腫瘍内注射が動物の生存の顕著な延長をもたらすことを示す。C57/B6マウスにおいて増殖した同系マウス神経膠腫ではウイルスの複製が欠如しているために、免疫応答性動物モデルにおける適切な有効性実験は不可能である。最後に、HSV感受性Balb/cマウスの脳内へのこの作用物質の頭蓋内注射を行って、毒性の程度を判定した。
【0083】
本発明者らは最初に、rQNestin34.5v.2が、ヒト神経膠腫細胞において、正常ヒトアストロサイトと比べて効率的に複製するかどうかを判定した。前者はネスチンを発現するのに対して、後者は発現しない(データは表示せず)。
図2は、rQNestin34.5に感染した神経膠腫細胞におけるICP34.5のネスチンプロモーター活性化により、転写因子eiF2aの脱リン酸化が起こり、それによって野生型F株と同様に感染細胞におけるウイルスmRNAの効率的な翻訳が可能となる一方で、ICP34.4欠失HSV1(Q1、別称rQ1、rHSVQ1など)はこれを行うことができないことを示す。したがって、ヒト神経膠腫細胞では、F株と同様のrQNestin34.5v.2の強力な複製が予測される一方で、Q1はほとんど複製しないはずである。
図5によってこのことが確認される。逆に、ネスチンを発現しない正常ヒトアストロサイト(その前駆体が神経膠腫を生じると考えられている、脳における主な細胞集団)において、rQNestin34.5v.2はeiF2aを脱リン酸化せず、Q1などの他のICP34.5欠失HSV1と同様に、ウイルス複製をほとんどあるいは全く引き起こさない(
図5)。野生型F株HSV1はそれでもなお複製する。実際に、
図4に示されるように、rQNestin34.5v.2の収量は、ヒトアストロサイトのもの(得られるウイルスはほとんどないに等しかった)と比較して、U87dEGFRにおいては少なくとも4対数単位多く、U251においては少なくとも5対数単位多かった。本発明者らは次に、一連のヒト神経膠腫細胞および正常ヒト細胞に対するrQNestin34.5v.2 の細胞毒性を試験した。rQNestin34.5 v.2を一連の神経膠腫細胞ならびに正常ヒト細胞およびマウス細胞にMOIが0.1となるまで添加した(
図6)。5日後、生存細胞を計数した。この時点で、神経膠腫細胞の20%未満または20%が生存しており、正常細胞の80%超または80%が生存していた。したがってこれらの実験の要約から、正常細胞と比べてヒト神経膠腫細胞に対する、rQNestin34.5v.2の複製および毒性における相対的選択性が確証された。
【0084】
次いで本発明者らは、無胸腺マウスで増殖したヒト神経膠腫の同所性モデルを使用した。このために、本発明者らはヒトU87dEGFR神経膠腫細胞を用いたが、これは通常、脳内接種の数日後に定着し、3〜4週間のうちに動物を死亡させる。第1の実験では、腫瘍細胞注射の7日後にrQNestin34.5v.2を接種し(
図7A)、第2の実験では、腫瘍増殖により動物に症状が現れている14日後にウイルスを注射した(
図7B)。いずれの場合にも、ウイルスは3×105 pfuの用量で注射した。両者で、マウス生存の有意な延長が認められ、これによりこのマウスモデルにおいてrQNestin34.5v.2が有効な抗神経膠腫剤であったことが示される。
【0085】
最後に、本発明者らは、HSV誘発性脳炎/髄膜炎に対して比較的敏感であるBalb/cマウスの脳内への直接脳内接種によるrQNestin34.5v.2の相対的安全性を試験した。
【0086】
図8中の表1は、Balb/cマウスを用いた今日までの全実験の結果を要約している。8週齢または6カ月齢いずれかのマウスにおける10
7 pfuの脳内注射は、十分に許容された(32/33、注射後3日目に原因不明で1匹が死亡)。対照的に、F株は、注射後6、6、7、8、および12日目に、5匹の動物で死亡を引き起こした。rQNetsin34.5v.2の髄腔内、肝内、および静脈内注射もまた、10
7 pfuの用量で死亡をもたらさずに十分に許容されたが、F株もまたこれらの経路では死亡を引き起こさなかった。
【0087】
したがってこれらの実験の要約から、rQNestin34.5v.2が、アストロサイトを含む正常細胞と比べてヒト神経膠腫細胞に対して選択的毒性があり、3×10
5 pfuの用量で神経膠腫の動物モデルにおいて生存の延長をもたらし、Balb/cマウスの97%が10
7 pfuの用量での脳内注射を切り抜けて生存する一方で、マウスの30%未満しか10
5 pfuの用量での野生型F株の脳内注射を切り抜けて生存しないことが示される。
【0088】
GFP領域を除去するためのクローニングの簡単な説明
本発明者らは、PCR増幅によってPCR-del-GFP-FRT-Gm-F&R DNA (SEQ ID NO: 8) を作製した。次いで、ET組換え技法を用いてこのPCR産物とfHSVQuik-1 BACベクターの相同組換えを行い、
図15の領域模式図の配列 (SEQ ID NO: 7) から
図16の模式図の配列 (SEQ ID NO: 8) への置換をもたらした。次に、上記BACベクターを含む大腸菌 (E. coli) にFlp-Tベクターを形質転換して、そのうちの1つが元のfHSVQuik-1 BACベクター中に位置する2つのFRT部位によって囲まれた領域を除去した。結果として得られたこのベクターは、fHSVQuik-2と称される。
【0089】
インビボ複製
ヒトから新たに作製された5種類の神経膠腫幹細胞(脳腫瘍始原細胞‐BITC)(G35、G68、G97、OG02、X12)において、rQNestin34.5v.2 (v2) の複製を解析した。ICP34.5欠失ウイルスであるHSVQ1 (Q1) は、複製を示さないかまたは最小限の複製を示した。F(野生型HSV)は、最も多くの複製を示した。34Cは、非関連のHSV組換えHSVである。本発明者らは無胸腺マウス (nu/nu) を使用し、移植可能なヒト神経膠腫細胞(ヒトU87EGFRまたはGli36dEGFR)をそこで増殖させる。このモデルは、有効性をモニターするために本発明者らおよび他者により広く用いられている。動物脳においてこれらの腫瘍は確実に生じて、3〜4週間以内に動物の死亡を引き起こす。これらの細胞は組織学的にヒト神経膠腫細胞と類似しており、腫瘍は臨床上の腫瘍のように血管に富んでいる。大きな違いは、それらが臨床上の神経膠腫ほどは浸潤性が高くない点である。本発明者らはまた、腫瘍を有するヒトから新たに切り取られ、神経膠腫幹様細胞集団を濃縮するように増殖させた神経膠腫細胞における、有効性を示した(
図9)。
【0090】
注射されたマウスの生存を少なくとも60日間維持した。加えて、本発明者らは、rQNestin34.5v.2またはF(野生型)HSv1株の脳内 (i.c.)、静脈内 (i.v.)、または髄腔内 (i.t.) 接種後の無胸腺マウスおよびBalb/cマウスにおいて体内分布研究を行い、ウイルス生活環の溶解期および潜伏期の両方において発現されるウイルス転写物 (LAT) をRT-PCRにより検出した。
図10は、10
7 pfuのrQNetsin34.5v.2のi.c.、i.t.、またはi.c,経路による投与の60日後に、該転写物がNu/nuマウスまたはBalb/cマウスのいずれの脳においても三叉神経節においても検出不可能であったことを示す。対照的に、10
3 pfuのF株のi.c.投与の30日後および60日後の時点では、試験された脳および三叉神経節試料のすべてにおいていくらかのわずかなバンドが存在した。
【0091】
加えて、本発明者らは、HSV DNAポリメラーゼ遺伝子についてPCRを行った。
図11は、rQNetsin34.5v.2の後に、マウスの脳においても三叉神経節においても該遺伝子のコピーが検出されなかったことを示し、これにより活発なウイルス複製が欠如していることが示される。対照的に、F株の注射後にDNA polがわずかに検出され、これにより特に脳におけるいくらかの低レベルのDNA複製が示される。
【0092】
実施例3 ネスチン転写エンハンサー/プロモーターの使用
神経膠腫に隣接したヒト脳におけるおよび処置後のヒト脳におけるネスチン発現
rQNestin34.5v.2の腫瘍細胞選択性のいくつかのレベルの中で、重要な1つとして、ネスチン転写エレメントは、ヒト細胞を含むネスチン発現細胞に特異的転写調節を提供するために、マウスhsp68プロモーターに融合されたラットネスチン遺伝子エンハンサーの第2イントロン/エンハンサーに由来する、ネスチン-hsp最小エンハンサー/プロモーター配列から構成される。この構築物は、脳内のネスチン発現細胞にウイルスICP34.5遺伝子の選択的発現を提供する。悪性神経膠腫に隣接したヒト脳または悪性神経膠腫の処置後のヒト脳におけるネスチンの有無を、神経膠腫に隣接したヒト脳および処置後のヒト脳におけるネスチンIHCによって確認した。
【0093】
50歳を超える成人男性が、Ohio State University Medical Centerにおいて悪性神経膠腫の切除術を受けた。切除術の一部として、肉眼的腫瘍を欠いている腫瘍に隣接した脳もまた、側脳室に至るまで切除された。この脳を、Ohio State University Medical Center Neuropathology Coreにおいて、GFAP(
図17A)およびネスチン(
図17B〜17D)の発現について染色した。2人目の対象も50歳を超えており、悪性神経膠腫の切除を受け、次いで放射線照射および化学療法を受けた。彼は腫瘍以外の原因で死亡した(
図18)。一次抗体は、1:500希釈のMillipore製のネスチンであった。脱パラフィンおよび脱水はルーチン通りに行った。抗原は、標準的な熱誘導性エピトープ回復法で露出させた。スライドをTarget Retrieval Solution PH9 (DAKO) 中に浸漬し、溶液が沸騰するまで電子レンジにかけた。次いで、より低出力で沸騰を15分間行った。溶液を約30分間冷却した後、スライドをPBSでリンスした。内部ペルオキシダーゼを阻害するため、0.3%H2O2を含むメタノールにスライドを15分間浸漬し、次にPBS-Tでリンスした。ブロッキングを室温で1時間行ってから、ヒトネスチンに対する一次抗体 (Millipore) 1:500を4℃で一晩適用した。次いで二次抗体を1:500希釈で適用し、その後DAPI染色およびスライド上での切片の封入を行った。剖検時に、脳は、たとえあったとしてもごくわずかのネスチン免疫反応性しか示さなかった。脳においても、神経幹細胞が通常存在する脳室下帯 (SVZ) 内の上衣/上衣下の細胞においても、ネスチン免疫陽性は存在しなかった。したがって、この証拠から、臨床試験の標的集団(MGを有する成人)が、MGが通常存在する脳白質においても、神経幹細胞が見出されるSVZにおいても、ネスチン発現に関して、たとえあったとしてもごくわずかの証拠しか示さないことが示される。代わりに、公表された証拠からは、MGが高レベルの広範なネスチン免疫反応性を示すことが示されている。
【0094】
脳におけるネスチン発現に関連した無胸腺マウス研究
無胸腺マウスが、有効性および毒性/体内分布研究のために選択された種であるという理由で、これらの脳においてネスチン発現があるかどうかを判定するために、雄および雌の無胸腺マウス(6〜8週齢)の脳内に作用物質のrQNestin34.5v.2.を接種した。しかしながら、マウスの1つの対照群(群1)には、脳内に媒体 (PBS) のみを接種した。このPBS接種の4日後、脳を解析するためマウスをプロトコール通りに安楽死させた。これらのマウスのうちの1匹の脳においてネスチン発現があるかどうかを判定した。
図19は、側脳室および第三脳室ならびに水道を裏打ちしている伸長上衣細胞(上衣細胞)におけるネスチン陽性細胞を示す。第四脳室を裏打ちしている細胞においてもネスチン陽性が存在した。群2(CPAの前投与およびその後のPBS媒体の注射)からの動物を用いて同じ実験を行ったところ、同じパターンのネスチン発現が確認された。加えて、針跡周囲のアストロサイトにおいてネスチン発現が見られ、このことからマウスの反応性アストロサイトにおけるネスチンの上方制御が示される。
【0095】
実施例4 rQNestin34.5v.2.のインビトロ特徴決定
rQNestin34.5v.2.のウイルス収量を決定した。細胞(2×10
5個)を6ウェルプレートにプレーティングした。翌日、細胞にrQNestin34.5v.2 (v2)、親のrHSVQ1 (Q1)、または野生型F株(F) をMOI = 0.1で感染させた。感染の1時間後、細胞をグリシン生理食塩水溶液(10 mMグリシン、137 mM NaCl、24.1 mM KCl、0.49 mM MgCl2、0.68 mM CaCl2、pH 3)で、次にPBSで洗浄して、接着していないウイルスを除去し、新たな培地を添加した。細胞を、5% CO2を含む雰囲気中、37℃で3日間インキュベートした。細胞および培地を収集し、ドライアイス/エタノールおよび37℃の水浴を用いて3サイクルの凍結/融解に供した。遠心分離(35000×g、10分、4℃)により細胞残屑をペレット化した後、上清を新たなチューブに移し、力価測定するまで-80℃で貯蔵した。各試料の力価は、ベロ細胞を用いて従来のプラークアッセイ法により決定した。
図20は、rQnestin34.5v.2のウイルス収量が、神経膠腫幹様細胞を含む3種類の神経膠腫細胞においてはrQNestin34.5のものと同等であり、HUVEC細胞においてはそれよりも優れていたことを示す。rQNestin34.5v.2.の複製能を複数の細胞株で決定した。
図21は、rQNestin34.5v.2の複製が、4種類の確立された神経膠腫細胞株、および幹様条件下で増殖した3種類の初代神経膠腫においては、ICP34.5陰性rHSVQ1のものよりも高かったが、4種類の正常細胞においてはrHSVQ1と類似していたことを示す。F株の複製は、すべてにおいてより高かった。
【0096】
rQnestin34.5v.2の細胞毒性を判定した。rQnestin34.5v.2を、一連の神経膠腫細胞、U87ΔEGFR (U87dE)、U87、U251、およびOG02神経膠腫「幹様」細胞、ならびに一連の正常細胞、ヒトアストロサイト (HA)、ヒト線維芽細胞 (Fibro.)、ヒト平滑筋 (SM)、ヒト骨格筋細胞 (SkM)、およびマウスアストロサイト (MA) に添加した。正常初代細胞については以下の製造業者の説明書に従って調製した完全培地中、初代神経膠腫細胞についてはBTSC培地中、または神経膠腫細胞株については2% FBSを補充したDMEM中、細胞を6ウェルプレートに播種し、接着させた。細胞調製の数時間後、正常細胞の培地を基本培地に交換した。翌日、ウイルスをMOI=0.1で添加した。UV照射で不活性化したrQNestin34.5v.2を偽対照として使用した。感染の1時間後、細胞をグリシン生理食塩水溶液(10 mMグリシン、137 mM NaCl、24.1 mM KCl、0.49 mM MgCl2、0.68 mM CaCl2、pH 3)で、次にPBSで洗浄して、接着していないウイルスを除去し、新たな培地を添加した。細胞を、5% CO2を含む雰囲気中、37℃でインキュベートした。感染の5日後、ウイルス細胞毒性を、コールターカウンター (Beckman Coulter) で計数された生存細胞として測定した。
図22は、rQnestin34.5v.2およびrQnestin34.5の細胞毒性を示す。
【0097】
用量漸増研究として行われる臨床試験を計画する。臨床転帰を評価し(注射後の全生存、注射後の無増悪生存)、放射線学的転帰(MRI上で可視化される腫瘍の退縮)およびウイルス体内分布の組織解析を調べる。試験は、10
8 pfu(1 ml用量、複数注射部位)から開始して、用量漸増として行われる。マウス脳において10
7 pfuが安全であると考えられたために、この用量が選択された。マウス脳は約1グラムであり、ヒト脳は1500グラムであるため、これはヒトにおいて5×10
10は安全用量であると置き換えられる。安全性をさらに保証するため、本発明者らはこのようにヒトにおいてほぼ3対数低いところから開始する。用量漸増は、最大10
10 pfuまで半対数ずつ進められる。
【0098】
最大耐用量 (MTD) は、患者の1/3がrQNestin34.5v.2.の投与に関してグレート3またはグレード4(以下に定義される)の用量制限毒性 (DLT) を有する用量レベルよりも半対数オーダー低い用量と定義される。患者3名のコホートに、用量制限毒性 (DLT) に達するまで、各用量レベルにおいて半対数増分だけ漸増しながら投与する。MTDに達しない場合、第I相用量は、到達した最高用量である。
【0099】
DLTは以下からなる:'rQNestin34.5v.2に起因する、有害事象共通用語規準v4.0 (CTCAE) における任意のグレード4または5毒性、ただしCTCAE v4.0の調査カテゴリーにおけるグレード4のリンパ球、好中球、白血球数減少を除く。'rQNestin34.5v.2に起因する、CTCAE v4.0における脳炎、脳脊髄炎、髄膜炎感染症/侵襲カテゴリーに関するグレード3毒性。'rQNestin34.5v.2に起因する、処置前の神経学的状態からの変化に関連したCTCAE v4.0における神経系障害カテゴリーに関するグレード3毒性:運動失調、意識レベルの低下、脳症、錐体外路障害、水頭症、頭蓋内出血、白質脳症、脊髄炎、錐体路症候群、傾眠、脳卒中。'rQNestin34.5v.2に起因する、処置前状態からの変化に関連したCTCAE v4.0における精神障害カテゴリーに関するグレード3毒性:せん妄、幻覚、精神病。
【0100】
各コホート内の最初の患者を、rQNestin34.5v.2の注射後少なくとも10日間観察してから、次の患者を研究プロトコールに参加させる。DLTが存在しなければ、第2および第3の患者を同じ用量において登録する。CTCAE v.4に基づいて1/3 DLTに達しない場合にのみ、患者を次の用量レベルに参加させる。
【0101】
治療群Aと治療群BのDLTおよびMTDの決定は独立しているが、それは神経膠腫腫瘤が前者では大きく切除され後者ではされず、したがって様々な用量において毒性をもたらし得るからである。
【0102】
上記の様々な方法および技法は、本出願を実行するためのいくつかの方法を提供する。当然のことながら、記載されるすべての目的または利点が、必ずしも本明細書に記載される任意の特定の態様に従って達成され得るわけではないことが理解されるべきである。したがって、例えば、当業者は、方法が、本明細書において教示または示唆される他の目的または利点を必ずしも達成することなく、本明細書において教示される1つの利点または利点の群を達成するまたは最大限に使用する様式で実施され得ることを認識するであろう。種々の代替物が本明細書において言及されている。いくつかの好ましい態様は、1つの、別の、またはいくつかの特徴を具体的に含み、一方で他のものは、1つの、別の、またはいくつかの特徴を具体的に除外し、一方でさらに他のものは、1つの、別の、またはいくつかの有利な特徴の包含によって特定の特徴を緩和することが理解されるべきである。
【0103】
さらに、当業者は、異なる態様から様々な特徴の適用性を認識するであろう。同様に、上記の様々な要素、特徴、および工程、ならびにそのようなそれぞれの要素、特徴、または工程に関する他の公知の等価物は、本明細書に記載される原理に従って方法を実施するために、当業者によって様々な組み合わせで使用され得る。様々な要素、特徴、および工程の中でも、多様な態様において、いくつかは具体的に含まれ、かつ他のものは具体的に除外される。
【0104】
本出願はある特定の態様および実施例との関連で開示されているが、本出願の態様が、具体的に開示される態様を超えて、他の代替的な態様および/または使用、ならびにそれらの修飾物および等価物にまで及ぶことが、当業者によって理解されるであろう。
【0105】
いくつかの態様において、「1つの (a)」および「1つの (an)」および「その (the)」という用語、ならびに本出願の特定の態様を説明する状況で(特に以下の特許請求の範囲のうちのいずれかの状況で)用いられる同様の言及は、単数および複数の両方を包含すると解釈され得る。本明細書における値の範囲の列挙は、その範囲内に入るそれぞれ個々の値に個別に言及する省略法として役立つよう単に意図される。本明細書において特記されない限り、それぞれ個々の値は、その値が本明細書に個別に列挙されているかのごとく本明細書に組み入れられる。本明細書に記載される方法はすべて、本明細書中に特記されない限りまたはさもなくば文脈により明確に矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書におけるある特定の態様に関して提供される、あらゆる例または例示の用語(例えば、「〜など」)の使用は、単に本出願をより良く明らかにすることを意図するものであり、別段の主張がない限り、本出願の範囲に制限を課すものではない。本明細書中のいかなる用語も、本出願の実施に必須である非請求の要素を示すものと解釈されるべきでない。
【0106】
操作実施例以外において、または別に指示される場合を除き、本明細書において用いられる成分の数量または反応条件を表すすべての数値は、いかなる場合にも「約」という用語で修飾されていると理解されるべきである。「約」という用語は、割合と関連して用いられる場合、±1%を意味し得る。
【0107】
本明細書で用いられる場合、「〜を含む (comprising)」または「〜を含む (comprises)」という用語は、本発明に必須である組成物、方法、およびその各成分に関連して用いられるが、必須であるか否かにかかわらず、明記されていない要素の包含も受け入れる。
【0108】
本明細書で用いられる場合、「本質的に〜からなる (consisting essentially of)」または「本質的に〜からなる (consists essentially of)」という用語は、所与の態様に必要とされる要素を指す。本用語は、本発明の態様の基本的でかつ新規なまたは機能的な特徴に実質的に影響を及ぼさない付加的な要素の存在を容認する。
【0109】
「〜からなる (consisting of)」という用語は、本態様のその説明において列挙されていないいかなる要素も除外した、本明細書に記載される組成物、方法、およびその各成分を指す。
【0110】
本出願の好ましい態様を、本出願を実施するための本発明者らに公知の最良の形態を含めて本明細書に記載する。前述の説明を読むことにより、それらの好ましい態様の変形が当業者に明らかになるであろう。当業者が必要に応じてそのような変形を使用することができ、本明細書に具体的に記載される以外の方法で本出願が実施され得ることが企図される。したがって、本出願の多くの態様は、本明細書に添付した特許請求の範囲に列挙される発明対象の、適用法律により認められるすべての修飾物および等価物を含む。さらに、そのすべての可能な変形における上記要素のいずれの組み合わせも、本明細書中に特記されない限りまたはさもなくば文脈により明確に矛盾しない限り、本出願によって包含される。
【0111】
本明細書において言及されるすべての特許、特許出願、公開特許公報、ならびに論文、書籍、明細書、出版物、文書、事柄、および/または同様のものなどの他の資料は、それらに関連したあらゆる審査ファイル履歴、本発明の文書と一致しないかもしくは矛盾するそれらのうちのあらゆるもの、または本発明の文書にここでもしくは後に関連する特許請求の最も広い範囲に関して限定的影響を及ぼし得るそれらのうちのあらゆるものを除き、すべての目的のために全体として参照により本明細書に組み入れられる。例として、組み入れられた資料のいずれかと関連する用語の説明、定義、および/または使用と、本発明の文書と関連するものとの間に何らかの不一致または矛盾が存在する場合、本発明の文書における用語の説明、定義、および/または使用が優先する。
【0112】
配列
SEQ ID NO: 1 rQNestin34.5v.2配列、コンセンサス配列_切断点_151409
【0113】
SEQ ID NO: 2 ネスチンプロモーター
【0114】
UL39配列リボヌクレオチド還元酵素サブユニット1[ヒトヘルペスウイルス1]
【0115】
ネスチン第2イントロン配列 SEQ ID NO: 4
【0116】
hsp68:熱ショックタンパク質68 SEQ ID NO: 5
【0117】
UL39のゲノム配列はNC_001806.1の (nt 86217..90988) (SEQ ID NO: 6) である
【0118】
>fHSV Quik-1のdel-seq (SEQ ID NO: 7)
【0119】
>PCR-del-GFP-FRT-Gm-F&R (SEQ ID NO: 08)