特許第6865752号(P6865752)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6865752アルデヒドをカルボン酸エステルに酸化的エステル化するための金を基礎とする触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865752
(24)【登録日】2021年4月8日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】アルデヒドをカルボン酸エステルに酸化的エステル化するための金を基礎とする触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/89 20060101AFI20210419BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20210419BHJP
   B01J 23/78 20060101ALI20210419BHJP
   B01J 23/66 20060101ALI20210419BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20210419BHJP
   B01J 37/12 20060101ALI20210419BHJP
   C07C 67/39 20060101ALI20210419BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20210419BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20210419BHJP
【FI】
   B01J23/89 Z
   B01J35/02 H
   B01J23/78 Z
   B01J23/66 Z
   B01J37/02 101D
   B01J37/12
   C07C67/39
   C07C69/54 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】19
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-526235(P2018-526235)
(86)(22)【出願日】2016年11月11日
(65)【公表番号】特表2018-535825(P2018-535825A)
(43)【公表日】2018年12月6日
(86)【国際出願番号】EP2016077377
(87)【国際公開番号】WO2017084969
(87)【国際公開日】20170526
【審査請求日】2019年10月10日
(31)【優先権主張番号】15195303.1
(32)【優先日】2015年11月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】319013746
【氏名又は名称】レーム・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー リギン
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン クリル
(72)【発明者】
【氏名】マティアス グレンピング
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス テペリス
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−221081(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/054462(WO,A1)
【文献】 特開2004−181359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
C07C 67/39
C07C 69/54
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルデヒドをカルボン酸エステルに酸化的エステル化するための触媒粒子において、前記粒子は、元素の酸素、ケイ素、アルミニウム、塩基性元素、金、ならびに鉄、亜鉛およびコバルトから選択される少なくとも1つの元素を含み、前記粒子は、ニッケルを含まず、かつ幾何学的相当径の最大60%をなす外側領域内の前記触媒粒子の最大金濃度、もしくは最大鉄濃度、最大亜鉛濃度および/または最大コバルト濃度は、幾何学的相当径の残りの領域をなす中央領域内の金濃度、もしくは鉄濃度、亜鉛濃度またはコバルト濃度よりも、少なくとも1.5倍高いことを特徴とする、触媒粒子。
【請求項2】
前記粒子は、元素の酸素、ケイ素、アルミニウム、塩基性元素、金、およびコバルトを含むことを特徴とする、請求項1記載の触媒粒子。
【請求項3】
前記塩基性元素は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、またはこれらの金属の混合物であることを特徴とする、請求項1または2記載の触媒粒子。
【請求項4】
前記触媒粒子は、金、ケイ素、アルミニウムおよび塩基性元素、ならびに鉄、亜鉛および/またはコバルトの全モル量を基準として、金0.03〜3mol%、ケイ素40〜90mol%、アルミニウム3〜40mol%、塩基性元素2〜40mol%、および鉄、亜鉛および/またはコバルト0.1〜20mol%を含み、鉄、亜鉛および/またはコバルトの金に対するモル比は0.1〜20であり、かつ金を除くこれらの全ての元素は酸化物として存在することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の触媒粒子。
【請求項5】
前記触媒粒子は、10〜250μmの平均幾何学的相当径を有し、かつ前記外側領域の厚みは2〜100μmであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の触媒粒子。
【請求項6】
2〜10nmの平均直径を有する金、および/または金含有および酸化鉄、酸化亜鉛および/または酸化コバルト含有の粒子が、前記触媒粒子の外側領域内に存在することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の触媒粒子。
【請求項7】
前記触媒粒子は多孔質であり、100〜300m2/gの比表面積を有し、かつその平均細孔直径は1〜50nmであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の触媒粒子。
【請求項8】
前記触媒粒子の比表面積は150〜250m2/gであり、かつ平均細孔直径は2〜20nmであることを特徴とする、請求項7記載の触媒粒子。
【請求項9】
次の工程:
1) ケイ素、アルミニウム、および任意に1つ以上のアルカリ金属、アルカリ土類金属または希土類金属の酸化物からなる粒子上への、少なくとも1つの鉄化合物、亜鉛化合物およびコバルト化合物の塗布、
2) 1)からの材料の任意の部分的または完全な酸化、および任意の乾燥/か焼、
3) 工程2)からの材料上への少なくとも1つの金化合物の塗布、および
4) 工程3)からの材料の乾燥および/またはか焼
を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の触媒粒子の製造方法。
【請求項10】
方法工程1)においてコバルト化合物を塗布することを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
方法工程2は、酸素の存在での加熱であるか、または方法工程1からの粒子の水性懸濁液中への酸化剤、ことにH22の添加であることを特徴とする、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
方法工程2は、酸素の存在でのか焼であることを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
ケイ素、アルミニウム、および任意の1つ以上のアルカリ金属、アルカリ土類金属または希土類金属の酸化物を含む前記粒子を、前記方法工程1〜3の間に、水を用いた少なくとも1つの熱処理に通し、ここで、水温は50〜100℃であることを特徴とする、請求項9から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記方法工程1、3および任意に2を水性媒体中で実施し、かつ前記方法工程1および3は、水溶性コバルト化合物もしくは水溶性金化合物の使用下で行われることを特徴とする、請求項9から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記水温は70〜95℃であることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項16】
方法工程3において、方法工程2からの粒子の水性懸濁液に、まず塩基性溶液を、引き続き0.5〜5のpH値を有する金酸含有の溶液を添加することを特徴とする、請求項9から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
方法工程3において、方法工程2からの粒子の水性懸濁液に、0.5〜5のpH値を有する金酸溶液を塩基、好ましくはNaOH溶液を用いて部分的にまたは完全に中和することにより得られた溶液を添加することを特徴とする、請求項9から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
酸素およびアルコールの存在でアルデヒドをカルボン酸エステルに酸化的エステル化するための、請求項1から8までのいずれか1項記載の触媒粒子の使用。
【請求項19】
酸素およびアルコールの存在でメタクロレインをアルキルメタクリラートに酸化的エステル化するための、請求項18記載の触媒粒子の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば(メタ)アクロレインをメチル(メタ)アクリラートに反応させることができる酸化的エステル化のための新規触媒に関する。この場合、本発明による触媒は、ことに、高い機械的および化学的安定性、ならびに極めて長い期間にわたる良好な触媒性能により特徴付けられる。これは、わずかな含水量を有する媒体中で連続運転の際に比較的急速に活性および/または選択率を失う先行技術の触媒と比べて、ことに触媒耐用時間、活性および選択率を改善することに関する。
【0002】
先行技術
カルボン酸エステルを製造するためにアルデヒドを触媒により酸化的エステル化することは、先行技術において広範囲に記載されている。例えば、このように、メタクロレイン(MAL)とメタノールとから極めて効果的にメチルメタクリラートを製造することができる。ことに、米国特許第5,969,178号明細書(US 5,969,178)および米国特許第7,012,039号明細書(US 7,012,039)には、イソブテンまたはtert−ブタノールからMMAを連続的に製造する方法が記載されている。この場合、この方法は次の工程を有する:1)イソブテンまたはtert−ブタノールをメタクロレインに酸化すること、および2)酸化物系担体上に存在するPd−Pb触媒を用いて、MALをメタノールでMMAに直接酸化的エステル化すること。
【0003】
しかしながら、先行技術から公知の全ての触媒は、比較的長い耐用時間で、選択率および/または活性の重大な損失を被る。例えば、EP 1 393 800では、確かに良好な活性および選択率が記載されているが、同時に触媒の寿命に関する情報は存在しない。ここにはいくつかの金含有触媒が論じられていて、この場合、活性酸化種として記載された触媒金粒子は、ことに6nm未満の平均直径を有する。上述の金粒子は、酸化ケイ素担体もしくはTiO2/SiO2担体上に分布されて存在している。金を除く付加的活性成分として、このような触媒はとりわけ他の金属も含む。この製造は、金塩および他の金属塩を酸化物系担体上に塗布し、引き続き還元剤として水素の存在で熱処理することにより行われる。ピルブアルデヒドをエチルピルバートに反応させるために、この場合、例えばTiO2担体上の金およびコバルト含有の触媒も記載されている。この場合、この触媒中のコバルトは金属の形態の{Co(0)}で存在する。目的生成物(エチルピルバート)に対する選択率は、この場合、24mol/kg Kat・hの空時収率で81%である。他の金含有触媒(コバルトなし)のMMAに対する選択率は、4.5質量%のAu含有率の場合93%までが挙げられていて、かつ空時収率は50.7mol MMA/kg Kat・hまでが挙げられている。
【0004】
Haruta et alは、J. Catal. 1993, Vol. 144, pp 175-192に、TiO2、Fe23またはCo34のような遷移金属酸化物系の担体上に塗布された金ナノ粒子が、活性酸化触媒であることを記載している。この場合、金と遷移金属との間の相互作用は、触媒活性にとって重要な役割を果たす。
【0005】
米国特許第6,040,472号明細書(US 6,040,472)には、比較において不十分な活性およびMMAに対する選択率を生じるだけの代替触媒を記載している。この場合、シェル構造を有するPd−Pb含有触媒を論じている。MMAに対する選択率は、91%までが挙げられていて、空時収率は、5.3molまでが挙げられている。
【0006】
EP 2 177 267およびEP 2 210 664には、シェル構造を有するニッケル含有触媒が記載されている。MMAに対する選択率は、この触媒の場合、97%までである。空時収率は、触媒中で約1質量%の金含有量で9.7mol MMA/(kg h)と記載されている。NiOx/Au触媒は、実施例によると、明らかにより良好な活性およびMMAに対する選択率を示すが、例えばAuとCuOまたはCo34のような他の組合せは活性および選択性がかなり低い。
【0007】
また、EP 2 177 267は、比較例7で、硝酸コバルトと金酸から出発して、SiO2/MgO担体上へのAuとCoとの同時塗布によるAu/Co34含有触媒の製造を記載している。この塗布の方法は、経験に従って、NiO/Au触媒にとって最良の結果を生じさせる。しかしながら、コバルトを使用する場合にはそうではない、というのもここでは、得られた触媒をメタクロレインからのMMAの製造のために使用することで、0.3mol/(kg h)の空時収率(RZA)で、2.6%の転化率および45.8%の選択率が達成されるにすぎないためである。同じ特許の比較例6は、同じ反応のために、Au/Fe34触媒の合成および使用を記載している。この触媒によって、1.4mol/(kg h)のRZAで、10.4%の転化率、およびMMAに対して55.2%の選択率が達成される。
【0008】
EP 2 210 664は、外側領域中に、いわゆる卵殻構造の形態で、SiO2、Al23、および塩基性元素、ことにアルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる担体上の酸化ニッケルおよび金ナノ粒子を有する触媒を開示している。酸化ニッケルは、この場合、表面で高濃度化されているが、触媒粒子の深い層内でもわずかな濃度で含まれている。このような触媒は、極めて良好な活性および選択率を示す。しかしながら、この出願からの発明による製造手法によって製造された触媒は、比較的摩耗に敏感でありかつ不安定であり、このことを、さらなる文章での比較例が示している。それにより、比較的短い耐用時間が提供されるだけである。
【0009】
US 2013/0172599はまた、Si、Al、および第三の塩基性の成分、ならびに第四の成分として高められた耐酸性を有する金属からなるケイ素含有材料を記載している。この第四の成分は、Ni、Co、ZnまたはFeであり、これらは担体中に均質に分配されている。この材料を製造する場合の、Si、Al、塩基性元素および第四の成分の混合物は、全体の担体中でこの第四の成分のこのような均質な分配を提供する。この材料は、貴金属含有触媒のための担体として使用することができる。メタクロレインをMMAにする酸化的エステル化のための好ましい触媒バリエーションは、SiO2−Al23−MgO−NiO材料上に担持されたAu触媒を含む。
【0010】
全体として、先行技術からは、金ナノ粒子と、コバルト、亜鉛または鉄のような他の遷移金属との組合せが、ニッケルと比較して、メタクロレインからのMMAの合成における触媒として不十分な活性および/または選択率を示すように見える印象が生じる。
【0011】
課題
本発明の課題は、第一に、高い選択性でアルデヒドをカルボン酸エステルにする酸化的エステル化するための新規触媒の製造を提供することであった。この場合、この触媒は、ことに水含有およびカルボン酸含有の混合物中で高い機械的および化学的安定性を有するべきであり、かつ先行技術と比べて全体として、生産条件下で活性、選択率および寿命からなるより良好な全体像を有するべきである。
【0012】
ことに、この課題は、この触媒が、メタクロレインをアルキルメタクリラートに、ことにMMAにする酸化的エステル化のために適しているべきであることであった。
【0013】
明確には示されていない他の課題は、明細書、実施例、特許請求の範囲、または本発明の全体の文脈から明らかにすることができる。
【0014】
解決手段
この課せられた課題は、アルデヒドをカルボン酸エステルにする、ことにメタクロレインをMMAにする酸化的エステル化のための新規触媒粒子により解決された。
【0015】
この本発明による触媒は、この場合、触媒粒子が、元素の酸素、ケイ素、アルミニウム、塩基性元素、金、ならびにコバルト、鉄および亜鉛から選択される少なくとも1つの元素、好ましくはコバルトを含むことを特徴とする。好ましくは、金は、この場合、単体として、Au{0}の形態で、およびナノ粒子の形態で存在する。それに対して、他の元素は、酸化物系の形態で(例えば酸化物、混合酸化物、相互の固溶体等として)存在する。全く特に好ましくは、触媒粒子は、もっぱら金、ならびにケイ素、アルミニウム、コバルトおよび塩基性元素の少なくとも1つの酸化物からなる。特に適した組成物の例は、SiO2、Al23、Co34、MgOおよびAuを有し、ことにもっぱらこれらの化合物を有する。
【0016】
さらに、本発明による触媒粒子は、その外側領域中に、触媒粒子の最大の金濃度、もしくは最大の鉄濃度、亜鉛濃度またはコバルト濃度が見られることにより特徴付けられる。上述の外側領域は、この場合、触媒粒子の幾何学的相当径の最大60%、好ましくは最大40%、特に好ましくは最大30%をなす。この場合、この外側領域中の金濃度、もしくは鉄濃度、亜鉛濃度および/またはコバルト濃度は、触媒粒子の幾何学的相当径の残りの領域をなす中央領域中のこれらの元素の相応する濃度より少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、ことに好ましくは少なくとも2.5倍高い。特に好ましくは、金は、外側領域中で90%より高く存在する。
【0017】
触媒粒子プロフィールに沿った金および/または鉄、亜鉛および/またはコバルトの濃度分布の測定および分析は、例えばポリマーマトリックス中への粒子の埋め込み、引き続く研磨、および引き続くSEM−EDX分析により行うことができる。X線マイクロプローブ(EPMA)を用いる同様の分析法は、例えば欧州特許出願公開第2210664号明細書(EP 2 210 664 A1)の18頁に記載されている。
【0018】
塩基性元素は、ことにアルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)、アルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba)、希土類金属(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm,Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)またはこれらの金属の混合物である。この塩基性元素は、この場合、原則として酸化物としても存在する。
【0019】
意外にも、卵殻構造の外側領域中にAu、ならびに鉄、亜鉛および/またはコバルトを含む本発明による触媒粒子は、先に検討した問題を解決することが明らかとなった。これは、ことに、酸化的エステル化のために使用される触媒粒子の、長時間にわたる高い活性および同時に選択率の維持に関して通用する。したがって、本発明による触媒粒子は、a)触媒粒子のわずかな機械的摩耗と、b)粒子からの金属イオン(これは、例えば鉄の場合に本発明により製造されたMMAにおいて安定性に関する問題を引き起こしかねない)のわずかな浸出と、c)活性および選択率に関する触媒能力の長期間の維持とからなる特に良好な組合せを有する。
【0020】
触媒粒子が、金、ケイ素、アルミニウム、塩基性元素、ならびに鉄、亜鉛および/またはコバルトの全モル量を基準として、つまり他の元素、ことに酸素を考慮せずに、金0.03〜3mol%、好ましくは0.1〜2mol%、ケイ素40〜90mol%、好ましくは65〜85mol%、アルミニウム3〜40mol%、好ましくは5〜30mol%、塩基性元素2〜40mol%、好ましくは5〜30mol%、ならびに鉄、亜鉛および/またはコバルト0.1〜20mol%、好ましくは0.5〜15mol%を含み、ここで、鉄、亜鉛およびコバルトの合計の、金に対するモル比は、0.1〜20、好ましくは1〜15である組成物がことに好ましい。既に説明したように、金を除くこれらの元素の全ては、この場合、原則として酸化物として存在する。
【0021】
全ての割合、とりわけ塩基性元素の割合は、製造したての触媒を基準とする。この触媒は、さらなる工程で、任意に酸で処理することがあるので、塩基性元素の割合は、当初の2〜40mol%から0.01〜30mol%に低下する。さらに、このような製造したての触媒は、カルボン酸エステルを製造するためのプロセスの間に塩基性元素の一部を失うことがある。これは、触媒の種類に応じて、わずかな改善も、プロセスの活性および/または選択率の悪化も引き起こすことがある。
【0022】
元素のSi、Al、Au、および塩基性元素、ならびにFe、Znおよび/またはCoの列挙された量の記載は、好ましくは、この場合、酸素が加えられていない触媒の組成の100mol%を基準とする。酸化物中に存在する酸素を考慮しない組成物のこの記載は合理的である、というのもこれら元素のいくつかは、明らかに異なる酸化状態を有するかもしくは例えば混合酸化物も存在することがあるためである。好ましくは、この触媒は、酸素を除外して、上述の元素からなる。
【0023】
好ましくは、触媒粒子は、1〜1000μm、好ましくは10〜250μm、特に好ましくは25〜200μmの間の平均の幾何学的相当径を有する。外側領域の厚みは、この場合、好ましくは2〜100μm、好ましくは5〜50μmである。この場合、幾何学的相当径の大きさが挙げられる、それというのも粒子は、必然的に真球で存在する必要はなく、どうしても複雑な形状を有することがあるためである。しかしながら、好ましくは、粒子は、ほぼ球状でまたは理想球で存在する。
【0024】
また、コアとシェルとの間のこのように考察された境界は、さらに鮮明ではなく、ことに組成が変化する勾配の形で存在することができることを指摘する。例えば、金ナノ粒子の濃度は、コアから見て内側から外側に向かって増加してよい。これは、本発明による粒子が原則として気孔率を有するという事実だけから生じる。
【0025】
外側領域の80μmの厚みの例示的な値は、例えば200μmの相当径を有する粒子で、理想的な場合に、直径にわたって見て、その粒子の両方の外側端部にそれぞれ40μmの外側領域が存在し、かつその間に120μmの中心領域が存在することを意味する。この大きさは、本発明による触媒の卵殻構造を説明するために選択された。この場合、外側領域と内側領域との間の境界は、当業者により、粒子の調査の際に挙げられた範囲内で比較的自由に選択することができる。本発明の場合に、挙げられた範囲内に境界が存在し、この境界で鉄濃度、亜鉛濃度および/またはコバルト濃度、ならびに金濃度に関する条件が与えられていることが重要である。このことは、鉄濃度、亜鉛濃度、もしくはことにコバルト濃度に関して、本発明の発明的核心である。
【0026】
好ましくは、触媒粒子の外側領域中で、1〜20nm、好ましくは2〜10nmの平均直径を有する、金、および/または金含有のおよび金属酸化物含有の、ことに酸化コバルト含有の粒子が存在する。製造方法に応じて、本発明による場合に、金は純粋な粒子の形態でも、例えば酸化コバルトとの混合形態でも存在することが可能である。この場合、金は、後者の場合に、原則として酸化コバルトの一部と混合されているだけである。さらに、両方の実施形態の場合に、任意に、金粒子または金含有の粒子は、安定化のために、付加的にSiO2および/またはAl23からなる薄膜を備えていることも可能である。
【0027】
好ましくは、本発明による触媒粒子は多孔性である。この場合、気孔率は原則として金相または金含有相に関していない。この場合、このような多孔性触媒粒子は、100〜300m2/g、好ましくは150〜250m2/gの比表面積を有する。さらに、この場合、原則として、平均細孔直径は、1〜50nm、好ましくは2〜20nmである。
【0028】
酸化的エステル化のための記載された触媒の他に、ことに、本発明の構成要素は、酸化的エステル化のための触媒の製造方法でもある。触媒粒子のこの製造方法は、少なくとも次の工程:
1) ケイ素、アルミニウム、および任意に1つ以上のアルカリ金属、アルカリ土類金属または希土類金属の酸化物からなる粒子上への、少なくとも1つの鉄化合物、亜鉛化合物、またはコバルト化合物の塗布、
2) 1)からの材料の任意のかつ同時に好ましい部分的または完全な酸化、および任意の乾燥/か焼、
3) 工程2)からの材料上への少なくとも1つの金化合物の塗布、および
4) 工程3)からの材料の乾燥および/またはか焼
を有することを特徴とする。
【0029】
ケイ素、アルミニウム、および任意に1つ以上のアルカリ金属、アルカリ土類金属または希土類金属の酸化物からなる担体粒子を、例えば米国特許第6,228,800号明細書(US 6,228,800 B1)の第11頁、または米国特許第6,040,472号明細書(US 6,040,472)の第27頁に記載されているような方法に従って製造することができる。この場合、ケイ素化合物、アルミニウム化合物、および任意のアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物または希土類金属化合物は、好ましくは水溶液および/または水性懸濁液として、互いに逐次的にまたは同時に混合し、かつこうして製造された混合物を少なくとも1つの熱処理に供することができる。好ましいケイ素化合物として、例えばシリカゾル、つまり水中の二酸化ケイ素ナノ粒子分散液を利用することができる。好ましいアルミニウム化合物、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物または希土類金属化合物は、例えば相応する水溶性の硝酸塩または硫酸塩である。これらの化合物の混合の際に、温度、pH値、および攪拌速度は特別に調節される。この混合は、好ましくは−20〜90℃、特に好ましくは−15〜50℃の温度で進行する。混合物のpH値は、塩基または酸の添加により調節することができる。特に好ましくは、pH値は、0.3〜2.5または8.0〜12.0に調節する。好ましい攪拌速度は、50〜1000rpmである。熱処理とは、水の部分的または完全な除去、および例えば硝酸塩のような熱的に不安定な化合物の加熱下での引き続くまたは同時の分解であると解釈される。好ましくは、このような熱処理は二段階で行われる。第一段階で、Si、Alおよびアルカリ金属/アルカリ土類金属/希土類金属の混合物を、95〜250℃、好ましくは100〜150℃の出口温度で噴霧乾燥する。第二段階で、予め乾燥された材料を、250〜1000℃、好ましくは280〜800℃の温度でか焼する。
【0030】
方法工程1)について、次のさらなる態様が生じる:鉄成分、亜鉛成分および/またはコバルト成分を、好ましくはコバルト成分だけを、含浸により、例えばいわゆる「インシピエントウェットネス含浸(incipient wetness impregnation)」法により、または他の含浸法により、担体材料上に塗布することができる。好ましくは、鉄成分、亜鉛成分および/またはコバルト成分を、50〜100℃の温度で、最適では70〜95℃の温度で水溶液から塗布する。さらに、鉄化合物、亜鉛化合物および/またはコバルト化合物は、水溶液の形態で添加される水溶性化合物である。高めた温度での添加により、同時に、触媒粒子内での気孔の構造に有利な影響が及ぼされ、かつそれにより全体として安定な粒子が得られるという有利な効果が達成される。他方で、意外にも、鉄、亜鉛および/またはコバルトの担体との化学結合は、添加の際の比較的高い温度により改善されることが判明した。したがって、まさに金属イオンの後の浸出のような、任意の洗浄工程での材料損失は軽減される。記載された含浸は、含浸プロセスのために触媒製造のこのプロセス工程で加圧下で作業しなければならない必要性を伴ってさらにより高い温度で行うこともできる。
【0031】
方法工程2)での酸化は、好ましくは例えば空気の形態での酸素の存在で、方法工程1)からの粒子または粒子を含む懸濁液の加熱により行われる。あるいは、この酸化は、例えば懸濁液中への酸化剤の添加により行うことができる。酸化剤は、例えばH22であることができる。この酸化の際に、ことに例えばCo(II)化合物は部分的にまたは完全にCo(III)に酸化される。その代わりに、強い酸化剤である金(III)化合物を、Co(II)化合物の存在で使用する場合、金(III)から金属金への不所望な早期の還元が起こることがあり、これがまた不活性なまたは余り活性でない酸化触媒を生じさせることがある。したがって、ことにこの処置は余り好ましくない。
方法工程2)は、任意に、例えばさらなる乾燥および/またはか焼のような熱処理を含むことができ、これらはコバルトの塗布前、塗布の間、または塗布後に行うことができる。
方法工程2での好ましい酸化は、酸素の存在で少なくとも200℃でのか焼により行われる。
【0032】
方法工程3)は、少なくとも1つの金成分を、ことにイオンの形態で、方法工程2)からの材料に塗布することにより行われ、かつ引き続き方法工程4)で、例えばか焼の形態で熱処理が行われる。ことに、金の塗布は、原則として0.5〜5、最適には1〜4のpH値を有する酸性の金含有溶液を用いて行われる。このような溶液は金酸で製造される。好ましくは、この溶液は、引き続き部分的にまたは完全に中和されるので、生じる混合物のpH値は、2〜8、好ましくは3〜7にある。これは、塩基を、例えばNaOH溶液の形態で添加することにより行われる。塩基添加の変法は、また2つの択一的な実施形態が存在する:
【0033】
第一の実施形態の場合に、方法工程3)では、方法工程2)からの粒子の水性懸濁液に、まず塩基性溶液を、引き続き0.5〜5のpH値を有する金酸を含む溶液を添加する。
【0034】
第二の実施形態の場合に、方法工程3)では、方法工程2)からの粒子の水性懸濁液に、予め0.5〜5のpH値を有する金酸溶液を、塩基、好ましくはNaOH溶液の添加により部分的にまたは完全に中和させることにより得られた溶液を添加する。
【0035】
金含有溶液の酸性度もしくは金含有溶液のpH値は、とりわけ、溶液中での多様な種類の金(III)錯イオンの形成(これについて、例えばGeochimica et Cosmochimica Acta Vol. 55, pp. 671-676を参照)に、かつ最終的には担体の表面への結合の性質に大きな影響を及ぼす。
【0036】
方法工程2)および4)での両方のか焼工程は、好ましくは酸化雰囲気中で、例えば空気酸素の存在で実施される。方法工程1)および3)、ならびに任意に方法工程2)は、ことに、水性媒体中で、ことに粒子の水性懸濁液中で実施される。
【0037】
好ましくは、ケイ素、アルミニウム、および任意に1つ以上のアルカリ金属、アルカリ土類金属または希土類金属の酸化物は、方法工程1〜3)において、好ましくは方法工程1)中でまたはその直後に水を用いた少なくとも1つの熱処理に供される。この場合、水温は50〜100℃、好ましくは70〜95℃である。この熱処理により、触媒粒子中の気孔の構造に有利な影響が及ぼされ、かつそれにより全体として安定な粒子が得られるという有利な効果が達成される。
【0038】
この方法の、特別であるが、必ずしも好ましいとは言えない変法の場合に、金含有溶液は、金化合物の他に少なくとも1つの付加的化合物を含む。この化合物は、また、元素のケイ素、アルミニウム、および担体材料の1つ以上の塩基性元素をイオンの形で有する。この変法によって、付加的に触媒のより長い耐用時間のために有益である、金ナノ粒子のための付加的保護層が生じることがある。イオンの形態のケイ素は、この場合、後に任意の熱的焼結またはか焼の際に酸化ケイ素に変換されるケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウムまたはケイ酸アンモニウムが溶液中に含まれることを意味する。イオンの形態の他の元素は、相応する水溶性の塩、例えば硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等を意味する。
【0039】
粒子の記載された製造、例えば濾過による単離、およびさらなる精製の後に、これは、最終的に特に好ましくは方法工程4)においてか焼される。これは、例えば200〜1000℃、特に好ましくは250〜800℃の温度で行うことができる。
【0040】
意外にも、予め製造された酸化物系担体上への金、ならびに鉄、亜鉛および/またはコバルトのこの種の塗布が特に好ましいことが見出された。この場合、金およびコバルトからなる組合せのためにこの種の塗布が特に好ましい。このことは、Co(Fe、Zn)、Si、Al化合物および塩基性元素の塩の混合物から担体材料の製造を同時に行う先行技術から公知の方法と比べて、ことに当てはまる。それにより、アルデヒドをカルボン酸エステルにする、例えばメタクロレインをMMAにする酸化的エステル化のための活性および選択性の触媒を製造することが可能になる。この場合、見たところ、乾燥したおよびか焼した多孔質の酸化物系担体を、方法工程1において、可溶性の鉄化合物、亜鉛化合物、および/またはコバルト化合物の溶液で処理することが特に好ましい。それにより、鉄イオン、亜鉛イオン、および/またはコバルトイオンは、好ましくは担体の表面、とりわけ外側領域の気孔表面を覆い、かつ引き続き乾燥および/またはか焼によりそこに固定されることが生じる。この方法の場合に、鉄イオン、亜鉛イオン、および/またはコバルトイオンでの気孔表面の優先的な被覆が重要であり、かつ先行技術、とりわけUS 2013/0172599に記載されているような均質な分布は重要ではない。同様に触媒粒子の表面に高濃度化された金との組合せが、両方の触媒活性成分のCo(Fe、Zn)およびAuが反応媒体により良好に到達可能であり、相互により良好に活性化することができ、かつ触媒が意外にも安定でかつ長持ちすることを引き起こす。
【0041】
さらに、意外にも、相応する酸化的熱処理と組み合わせた鉄化合物、亜鉛化合物および/またはコバルト化合物、ならびに金化合物の逐次的塗布に基づき、酸化物系担体の表面上での金の多様な酸化状態(典型的にAu3+からAu0)およびコバルトの多様な酸化状態(典型的にCo2+からCoX+(この場合、2<X≦3))の間の制御された移行が行われることが見出された。鉄について、典型的に、Fe2+からFeX+(この場合、2<X≦3)の酸化状態が存在する。亜鉛については、酸化状態(II)だけが重要である。相応して、ここでは亜鉛の酸化は行われない。
【0042】
この後からのレドックス反応は、先行技術から公知の変法と比較して活性化されたかつ選択性の触媒を生じさせる(これについては下記の比較例を参照)。
【0043】
これらのファクタの組合せは、高い活性、選択率、および長い耐用時間を有する、活性化成分(例えばCoおよびAuを有する)のシェル構造を有する触媒を合成することを可能にする。
【0044】
記載された触媒およびこの触媒の記載された製造方法の他に、アルデヒドを酸素およびアルコールによりカルボン酸エステルにする反応、ことに(メタ)アクロレインを酸素および一官能性アルコールによりアルキル(メタ)アクリラートにする反応の際の、このような本発明による触媒、もしくは本発明により製造された触媒の使用も、本発明の構成要素である。(メタ)アクロレイン内の括弧は、この場合、この原料が、アクロレインでもメタクロレインでもあることができることを意味する。相応して、アルキル(メタ)アクリラートは、アルキルアクリラートもアルキルメタアクリラートも意味する。この場合、このアルキル基は、使用されたアルコールによって決定される。
【0045】
好ましくは、この使用の場合、メタクロレインは、本発明による触媒の存在で、酸素およびメタノールでMMAに反応される。
【0046】
あるいは、この使用の場合に、(メタ)アクロレインを、酸素および二官能性、三官能性または四官能性アルコールにより、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリラートおよびジ(メタ)アクリラート、トリ(メタ)アクリラートもしくはテトラ(メタ)アクリラートに反応させることもできる。後者の化合物は架橋剤として公知である。二官能性アルコールについての特に好ましい例は、エチレングリコールである。
【0047】
特に好ましくは、本発明による触媒の存在での酸化的エステル化は、連続的に実施される。全く特に好ましくは、この触媒は、攪拌式反応器内で酸化的エステル化の間に、懸濁液の形態で(スラリーとして)適用される。
【0048】
実施例
触媒粒子内のCoおよびAuについての濃度プロファイルの分析は、SEM−EDXラインスキャン法を用いて行う。この場合、次の工程を使用した:
顕微鏡:Jeol JSM 7600F;分析−X-Max 150検出器を備えたOxford Aztec。
試料を樹脂内に埋め込み、Leicaウルトラミクロトームを用いてダイヤモンドカッターで切断した。
分析方法は、20KVの加速電圧でのEDXを基礎とする。6.924KeVでのCoKアルファピークおよび2.120KeVでのAu Mアルファピークを評価した。
【0049】
次の実施例は、主にコバルト含有触媒についての効果を示す。Zn含有触媒についての効果も示すことができた。この結果は、鉄、または鉄、亜鉛およびコバルトから選択される2もしくは3の元素からなる混合物を有する触媒に簡単に転用することができる。
【0050】
実施例1(SiO2−Al23−MgO)
250mLのビーカーガラス内に、Mg(NO32・6H2O 21.36g、Al(NO33・9H2O 31.21gを一緒に装入し、VE水41.85g中に磁気攪拌機で攪拌しながら溶かす。その後、60%のHNO3 1.57gを攪拌しながら添加する。シリカゾル166.67g(Bad Koestritz社のKoestrosol 1530AS、SiO2 30質量%、粒子の平均サイズ:15nm)を、500mLの三口フラスコ内に秤取し、攪拌しながら15℃に冷却する。60%のHNO3 2.57gを攪拌しながらゆっくりとゾルに添加する。15℃で、硝酸塩溶液を45min内でゾルに攪拌しながら添加する。添加後に、この混合物を30min内で50℃に加熱し、さらにこの温度で24h攪拌する。この時間の後、この混合物を130℃の出口温度で噴霧乾燥する。乾燥した粉末(球状、平均粒子サイズ60μm)をNaber炉中で薄層で2h内で300℃に加熱し、300℃で3h保持し、2h内で600℃に加熱し、引き続き600℃で3h保持する。
【0051】
実施例2
実施例1からのSiO2−Al23−MgO担体10gのVE水33.3g中の懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15min攪拌した。この懸濁液に、攪拌しながら、Co(NO32・6H2O(569mg、1.95mmol)の水8.3g中の予め90℃に加熱した溶液を添加する。添加後に、この混合物をさらに90℃で30min攪拌し、次いで冷却し、室温で濾別し、最終的にそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10h乾燥し、乳鉢で微細に粉砕し、次いで1h内で18から450℃に加熱し、その後450℃で5hか焼した。
【0052】
実施例3
実施例1からのSiO2−Al23−MgO担体15gのVE水50g中の懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15min攪拌する。この懸濁液に、攪拌しながら、CoCl2(697mg、2.93mmol)およびLiCl(1.24g)の水12.5g中の予め90℃に加熱した溶液を添加する。添加後に、この混合物をさらに90℃で30min攪拌し、次いで冷却し、室温で濾別し、最終的にそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10h乾燥し、乳鉢で微細に粉砕し、次いで1h内で18から450℃に加熱し、その後450℃で5hか焼した。
【0053】
実施例4
実施例2からのコバルトでドープされたSiO2−Al23−MgO担体10gのVE水33.3g中の懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15min攪拌する。この懸濁液に、攪拌しながら、HAuCl4・3H2O(205mg)の水8.3g中の予め90℃に加熱した溶液を添加する。添加後に、この混合物をさらに90℃で30min攪拌し、次いで冷却し、室温で濾別し、最終的にそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10h乾燥し、乳鉢で微細に粉砕し、次いで1h内で18から450℃に加熱し、その後450℃で5hか焼した。
ポリマーマトリックス内に埋め込まれかつ研磨された触媒粒子のラインスキャンSEM−EDX分析は、粒子内でコバルトおよび金についての卵殻状の分布を示した。
【0054】
実施例5
実施例2からのコバルトでドープされたSiO2−Al23−MgO担体10gのVE水33.3g中の懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15min攪拌する。この懸濁液に、攪拌しながら、HAuCl4・3H2O(205mg)および1モルのNaOH溶液0.52mL(Au/Na=1:1mol/mol)の水8.3g中の予め90℃に加熱した溶液を添加する。添加後に、この混合物をさらに60min攪拌し、次いで冷却し、室温で濾別し、最終的にそれぞれ水50mLで6回洗浄する。この材料を105℃で10h乾燥し、乳鉢で微細に粉砕し、次いで1h内で18から450℃に加熱し、その後450℃で5hか焼した。
ポリマーマトリックス内に埋め込まれかつ研磨された触媒粒子のラインスキャンSEM−EDX分析は、粒子内でコバルトおよび金についての卵殻状の分布を示した。
【0055】
実施例6
実施例2からのコバルトでドープされたSiO2−Al23−MgO担体10gのVE水33.3g中の懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15min攪拌する。この懸濁液に、攪拌しながら、1モルのNaOH溶液0.52mLの予め90℃に加熱した溶液を添加する。90℃で30min攪拌後に、水4.3g中のHAuCl4・3H2O(205mg)を添加する。添加後に、この混合物を、さらに60min攪拌し、次いで冷却し、室温で濾別し、最終的にそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10h乾燥し、乳鉢で微細に粉砕し、次いで1h内で18から450℃に加熱し、その後450℃で5hか焼した。
ポリマーマトリックス内に埋め込まれかつ研磨された触媒粒子のラインスキャンSEM−EDX分析は、粒子内でコバルトおよび金についての卵殻状の分布を示した。
【0056】
実施例7
実施例3からのコバルトでドープしたSiO2−Al23−MgO担体10gのVE水33.3g中の懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15min攪拌する。この懸濁液に、攪拌しながら、HAuCl4・3H2O(205mg)および1モルのNaOH溶液0.52mL(Au/Na=1:1mol/mol)の水8.3g中の予め90℃に加熱した溶液を添加する。添加後に、この混合物をさらに60min攪拌し、次いで冷却し、室温で濾別し、最終的にそれぞれ水50mLで6回洗浄する。この材料を105℃で10h乾燥し、乳鉢で微細に粉砕し、次いで1h内で18から450℃に加熱し、その後450℃で5hか焼した。
ポリマーマトリックス内に埋め込まれかつ研磨された触媒粒子のラインスキャンSEM−EDX分析は、粒子内でコバルトおよび金についての卵殻状の分布を示した。
【0057】
実施例8
実施例1からのSiO2−Al23−MgO担体10gのVE水33.3g中の懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15min攪拌する。この懸濁液に、攪拌しながら、Co(NO32・6H2O(569mg、1.95mmol)の水4.2g中の予め90℃に加熱した溶液を添加する。添加後に、この混合物を90℃でさらに60min攪拌し、この場合、空気流をこの溶液内へバブリングする。60min攪拌後に、この懸濁液に、攪拌しながら、HAuCl4・3H2O(205mg)の水4.2g中の予め90℃に加熱した溶液を添加する。添加後に、この混合物を90℃でさらに30min攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10h乾燥し、乳鉢で微細に粉砕し、1h内で18から450℃に加熱し、450℃で5hか焼した。
ポリマーマトリックス内に埋め込まれかつ研磨された触媒粒子のラインスキャンSEM−EDX分析は、Coおよび金についての卵殻状の分布を示した:
【0058】
実施例9
実施例1からのSiO2−Al23−MgO担体10gのVE水33.3g中の懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15min攪拌する。この懸濁液に、攪拌しながら、Co(NO32・6H2O(569mg、1.95mmol)の水4.2g中の予め90℃に加熱した溶液を添加する。添加後に、この混合物を90℃でさらに30min攪拌した。H22(30質量%、0.45g)を混合物に滴加した。60minさらに攪拌した後、懸濁液に、攪拌しながら、HAuCl4・3H2O(205mg)の水4.2g中の予め90℃に加熱した溶液を添加する。添加後に、この混合物を90℃でさらに30min攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10h乾燥し、乳鉢で微細に粉砕し、次いで1h内で18から450℃に加熱し、450℃で5hか焼した。
ポリマーマトリックス内に埋め込まれかつ研磨された触媒粒子のラインスキャンSEM−EDX分析は、Coおよび金についての卵殻状の分布を示した。
【0059】
実施例10
Co(NO32・6H2O(569mg、1.95mmol)をVE水5g中に溶かし、この溶液を実施例1からのSiO2−Al23−MgO担体10gと強力に振盪させながら混合する。こうして得られた乾燥したように見える担体を、薄層で乾燥庫内で105℃で10h乾燥し、次いで乳鉢で微細に粉砕し、かつ薄層でNaber炉内で2h内で300℃に加熱し、300℃で3h保持し、さらに2h内で600℃に加熱し、最終的に600℃で3h保持した。
【0060】
実施例11
実施例8からのコバルトでドープしたSiO2−Al23−MgO担体10gのVE水33.3g中の懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15min攪拌する。この懸濁液に、攪拌しながら、HAuCl4・3H2O(205mg)の水8.3g中の予め90℃に加熱した溶液を添加する。添加後に、この混合物をさらに30min攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、最終的にそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10h乾燥し、乳鉢で微細に粉砕し、次いで1h内で18から450℃に加熱し、450℃で5hか焼した。
ポリマーマトリックス内に埋め込まれかつ研磨された触媒粒子のラインスキャンSEM−EDX分析は、Coおよび金についての卵殻状の分布を示した。
【0061】
実施例12
Zn(NO32・6H2O(580mg、1.95mmol)をVE水5g中に溶かし、この溶液を、実施例1からのSiO2−Al23−MgO担体10gと強力に振盪させながら混合する。こうして得られた乾燥したように見える担体を、薄層で乾燥庫内で105℃で10h乾燥し、次いで乳鉢で微細に粉砕し、かつ薄層でNaber炉内で2h内で300℃に加熱し、300℃で3h保持し、さらに2h内で600℃に加熱し、最終的に600℃で3h保持した。
【0062】
実施例13
実施例12からの亜鉛でドープしたSiO2−Al23−MgO担体10gのVE水33.3g中の懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15min攪拌する。この懸濁液に、攪拌しながら、HAuCl4・3H2O(205mg)の水8.3g中の予め90℃に加熱した溶液を添加する。添加後に、この混合物をさらに30min攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、最終的にそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10h乾燥し、乳鉢で微細に粉砕し、次いで1h内で18から450℃に加熱し、450℃で5hか焼した。
ポリマーマトリックス内に埋め込まれかつ研磨された触媒粒子のラインスキャンSEM−EDX分析は、Znおよび金についての卵殻状の分布を示した。
【0063】
実施例14〜21(MMA製造のためのバッチ試験)
表1による金含有触媒(384mg)、メタクロレイン(1.20g)およびメタノール(9.48g)を、60℃かつ30barの圧力で2h、N2中7体積%のO2の雰囲気中で、140mLの鋼製オートクレーブ内で磁気攪拌機で攪拌した。2h後にこの混合物を冷却し、脱ガスし、濾過し、GCで分析した。それぞれの触媒を、同じ条件下で少なくとも2回試験し、それぞれの実験の結果を平均化した。各々の試験した触媒についてのメタクロレインの生じる転化率(U(MAL)、%)、空時収率(RZA、mol MMA/kg Kat h)およびMMAに対する選択率(S(MMA)、%)は、次の表1にまとめられている。
【0064】
表1
【表1】
【0065】
比較例1
実施例1からのドープしたSiO2−Al23−MgO担体10gのVE水33.3g中の懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15min攪拌する。この懸濁液に、攪拌しながら、HAuCl4・3H2O(205mg)の水8.3g中の予め90℃に加熱した溶液を添加する。添加後に、この混合物をさらに30min攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、最終的にそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10h乾燥し、乳鉢で微細に粉砕し、1h内で18から450℃に加熱し、450℃で5hか焼した。
【0066】
比較例2
250mLのビーカーガラス内に、Mg(NO32・6H2O 21.35g、Al(NO33・9H2O 31.21g、およびCo(NO32・6H2O 4.72gを一緒に装入し、VE水41.85g中に磁気攪拌機を用いて攪拌しながら溶かす。その後、60%のHNO3 1.57gを攪拌しながら添加する。シリカゾル(Bad Koestritz社のKoestrosol 1530AS)166.67gを、500mLの三口フラスコ内に秤取し、攪拌しながら15℃に冷却する。60%のHNO3 2.57gを、さらに攪拌しながらゆっくりとゾルに添加する。15℃で、硝酸塩溶液を45min内でゾルに攪拌しながら添加する。添加後に、この混合物を30min内で50℃に加熱し、さらにこの温度で24h攪拌する。この時間の後に、この混合物を、噴霧乾燥器内で120℃の出口温度で乾燥する。乾燥した粉末を、薄層でNaber炉内で2hにわたり300℃に加熱し、300℃で3h保持し、さらに2h内で600℃に加熱し、最終的に600℃でさらに3h保持する。この得られる材料は、約60μmの平均粒子サイズを有する球状の粒子からなる。
【0067】
比較例3
VB2からのコバルトでドープしたSiO2−Al23−MgO担体10gのVE水33.3g中の懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15min攪拌する。この懸濁液に、攪拌しながら、HAuCl4・3H2O(205mg)の水8.3g中の予め90℃に加熱した溶液を添加する。添加後に、この混合物をさらに30min攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、最終的にそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10h乾燥し、乳鉢で微細に粉砕し、次いで1h内で18から450℃に加熱し、450℃で5hか焼した。
ポリマーマトリックス内に埋め込まれかつ研磨された触媒粒子のラインスキャンSEM−EDX分析は、Coの均質な分布、および金についての弱く特徴的な不均一な分布を示した。
【0068】
比較例4
実施例1からのSiO2−Al23−MgO担体10gのVE水33.3g中の懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15min攪拌する。この懸濁液に、攪拌しながら、HAuCl4・3H2O(205mg)およびNi(NO32・6H2O(567mg、1.95mmol)の水8.3g中の予め90℃に加熱した溶液を添加する。添加後に、この混合物をさらに30min攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10h乾燥し、乳鉢で微細に粉砕し、次いで1h内で18から450℃に加熱し、450℃で5hか焼した。
ポリマーマトリックス内に埋め込まれかつ研磨された触媒粒子のラインスキャンSEM−EDX分析は、Niおよび金についての卵殻状の分布を示した。
【0069】
比較例5
実施例1からのSiO2−Al23−MgO担体10gのVE水33.3g中の懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15min攪拌する。この懸濁液に、攪拌しながら、HAuCl4・3H2O(205mg)およびCo(NO32・6H2O(569mg、1.95mmol)の水8.3g中の予め90℃に加熱した溶液を添加する。添加後に、この混合物をさらに30min攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10h乾燥し、乳鉢で微細に粉砕し、1h内で18から450℃に加熱し、450℃で5hか焼した。
【0070】
比較例6
実施例1からのSiO2−Al23−MgO担体10gのVE水33.3g中の懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15min攪拌する。この懸濁液に、攪拌しながらCo(NO32・6H2O(569mg、1.95mmol)の水4.2g中の予め90℃にされた溶液を添加する。添加後に、この混合物を90℃でさらに30min攪拌する。この懸濁液に、攪拌しながらHAuCl4・3H2O(205mg)の水4.2g中の予め90℃にされた溶液を添加する。添加後に、この混合物を90℃でさらに30min攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10h乾燥し、乳鉢で微細に粉砕し、1h内で18から450℃に加熱し、450℃で5hか焼した。
【0071】
比較例7
実施例1からのSiO2−Al23−MgO担体10gのVE水33.3g中の懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15min攪拌する。この懸濁液に、攪拌しながら、HAuCl4・3H2O(205mg)の水4.2g中の予め90℃に加熱した溶液を添加する。添加後に、この混合物を90℃でさらに30min攪拌した。この懸濁液に、攪拌しながら、Co(NO32・6H2O(569mg、1.95mmol)の水4.2g中の予め90℃に加熱した溶液を添加する。添加後に、この混合物を90℃でさらに30min攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10h乾燥し、乳鉢で微細に粉砕し、1h内で18から450℃に加熱し、450℃で5hか焼した。
【0072】
比較試験VB8〜VB13
表2:触媒VB1、VB3〜VB7を用いたバッチ試験
【表2】
【0073】
MMAの製造のための連続試験(一般的説明)
メタノール中のMALの42.5質量%の溶液のpH値を、メタノール中のNaOHの1質量%の溶液の攪拌下での添加によりpH=7に調節する。この溶液を、一定の添加速度で、連続的に、攪拌しかつ通気した攪拌槽型反応器(空気を通気)に10barの圧力および80℃の内部温度で供給する。同時に、粉末触媒20gを備えたこの反応器内に、1質量%のNaOH溶液(メタノール中)を、反応器内でpH=7の値が一定になるように供給する。この反応混合物を、フィルターを介して反応器から連続的に取り出した。生成物試料を、後記する時間の後に取り出し、GCを用いて分析した。
【0074】
表3:選択された触媒を用いたMMA製造のための連続試験
【表3】
【0075】
ことに表3中の結果に従って、実施例は、本発明による触媒が、先行技術と比べて、同じ初期活性および初期選択率で、先行技術の触媒よりも明らかに長い耐用時間を有することを示す。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】実施例4からの研磨された触媒粒子の金(破線)およびコバルト(実線)の分布を示す。粒子のそれぞれの外側領域において両方の金属の比較的高い濃度が認識される。最も外側の周辺部での急峻な曲線の増大は、粒子の平滑でない表面により説明することができる。
【0077】
図2】比較例3からの研磨された触媒粒子の金(破線)およびコバルト(実線)の分布を示す。全体の粒子にわたり両方の金属の均一な濃度が認識される。最も外側の周辺部での急峻な曲線の増大は、粒子の平滑でない表面により説明することができる。
【0078】
図3】比較例4からの研磨された触媒粒子の金(破線)およびニッケル(実線)の分布を示す。粒子のそれぞれの外側領域において両方の金属の比較的高い濃度が認識される。最も外側の周辺部での急峻な曲線の増大は、粒子の平滑でない表面により説明することができる。
図1
図2
図3