(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記達成可能性推定値が、前記IMRT幾何学形状に関するGCメトリックと基準IMRT幾何学形状に関するGCメトリックとの比を含む、請求項2に記載の放射線治療計画デバイス。
前記動作が、前記IMRT幾何学形状に関するGCメトリックと、基準IMRT計画データベースに格納されたIMRT計画に関して計算されたGCメトリックとを比較することにより、少なくとも1つの基準IMRT計画を選択することを更に含み、
前記表示することが、前記少なくとも1つのIMRT計画の少なくとも線量目標を含む、選択された前記少なくとも1つの基準IMRT計画に関する情報を表示することを含む、請求項1又は2に記載の放射線治療計画デバイス。
前記達成可能性推定値を計算することが、前記IMRT幾何学形状に関する前記GCメトリックに少なくとも基づいて、文字による達成可能性推定値を決定することを更に含み、前記表示することが、前記文字による達成可能性推定値を前記表示デバイスに表示することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の放射線治療計画デバイス。
前記達成可能性推定値が、線量目標に基づいてではなく、前記標的ボリューム、前記OAR、及び前記少なくとも1つの放射線ビームの相対的空間配置に基づいて計算される、請求項1から5のいずれか一項に記載の放射線治療計画デバイス。
前記少なくとも1つの非一時的記憶媒体が、前記少なくとも1つの放射線ビームのビームレットを変調する少なくとも1つのマルチリーフコリメータ構成を選択して、前記IMRT幾何学形状を使用して事前定義された線量目標を達成するように、前記IMRT幾何学形状に関するIMRT計画の最適化を実施するために、前記コンピュータによって読取り可能及び実行可能な命令を更に格納し、前記事前定義された線量目標は、前記標的ボリュームに関する線量目標及び前記OARに関する最大の許容可能な線量目標を少なくとも含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の放射線治療計画デバイス。
(i)前記IMRT幾何学形状に関するGCメトリックと、(ii)IMRT計画が達成可能であることが分かっている基準IMRT幾何学形状に関するGCメトリックとのGCメトリック比を計算するステップを更に有する、請求項12に記載の放射線治療計画方法。
前記標的ボリュームに関する線量目標及び前記OARに関する最大の許容可能な線量目標を達成するために、前記IMRT幾何学形状における前記少なくとも1つの放射線ビームの前記ビームレットを変調する少なくとも1つのマルチリーフコリメータ構成を決定する、前記IMRT幾何学形状に関するIMRT計画の最適化を実施するステップを更に有し、オプションで、前記コンピュータディスプレイへの前記達成可能性推定値の前記表示するステップの後まで、前記最適化が開始されない、請求項12又は13に記載の放射線治療計画方法。
同じ標的ボリューム及び同じ少なくとも1つの放射線ビームをそれぞれ含むが、異なるOARをそれぞれ含む、複数のIMRT幾何学形状に対して、前記達成可能性推定値を計算するステップを繰り返すステップと、
前記達成可能性推定値の重み付き和を含むオブジェクト関数を最適化するために、前記少なくとも1つの放射線ビームの1つ以上の幾何学的パラメータを調節するステップとを更に有する、請求項12から14のいずれか一項に記載の放射線治療計画方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
IMRTの計画プロセスは複雑であり、腫瘍学者、物理学者、及び/又は線量測定士など、特別な医療専門家によって実施される。最初に、コンピュータ断層撮影(CT)又は磁気共鳴(MR)画像診断などの技術によって、患者の画像診断を行う。CT又はMR画像は、標的ボリューム、OAR、及び放射線ビーム経路と交差することがある任意の放射線吸収構造を捕捉した、大きい三次元(3D)画像データセットを構成する。標的ボリューム及び隣接するOARは、通常は個々の画像スライスの輪郭を描くことによって、3D画像データセットに描写される。このプロセスを支援するのに、自動又は半自動の輪郭制御が使用されてもよいが、最終的な輪郭は適切な医療従事者によって承認されなければならない。例えば、標的ボリュームにおける(又はそのボリューム中の特定の場所における)所望の放射線量、及び各OARにおける許容可能な放射線量公差に関して、標的放射線量分布も定義される。これらの線量分布パラメータは、一般に、放射線治療計画の目標と呼ばれる。
【0005】
次に、コンピュータ化されたIMRT計画を実施して、所望の線量分布目標を達成するための、ビームパルス及びそれらのビームエネルギーのプログラム並びにMLC構成を決定する。臨床的放射線治療で使用されるMLCは、数百又は更には数千のビームレットを変調することができ、ビームパルスの数及び各パルスのビームエネルギーに関して更なる調節を行うことができる。結果的に、最適化すべき変数の数は非常に多い(例えば、N個のビームレット(Nはパルス数の1000倍超であり得る))。いくつかの一般に使用される逆方向計画の手法では、各ビームパルスに関するフルエンスマップが計算されて、ビームパルスに関して計算されたフルエンスマップを組み合わせて、患者における所望の放射線量分布が生成される。フルエンスマップから線量分布を決定する際、患者の異なる組織における空間的に変化する放射線吸収を考慮に入れなければならない。これは通常、放射線減衰マップとして、3D CT又はMR画像を適切に変換して行われる。次に、最適化された各フルエンスマップを離散化してビームレットのマップにし、最終的にかかる各マップを得るためのMLC構成が決定される。これは単なる実例であり、例えば、介在するフルエンスマップを計算することなくビームレットと直接連動する、他のIMRT計画アルゴリズムが用いられてもよいが、かかる計画アルゴリズムはいずれも計算集約的であることが認識されるであろう。実際には、患者特異的な放射線量標的、輪郭、及び減衰マップに対して働き、最適化されたMLC構成を出力するIMRT計画最適化を実施するには、数時間の計算時間を要することがある。
【0006】
最終的な最適化されたIMRT計画は、事前選択された放射線ビームの向き、患者位置、及びビームパルスの数に対するものであっても、通常は一意的ではない。対照的に、いくつかの事例では、所望の線量分布が取得不能なことがあり、又は所与の事前選択されたセッティング(例えば、ビーム/患者の向き、パルス数)に関して取得不能なことがある。この場合、計画の最適化は、理想的な解決策に収束することができなくなる。したがって、線量測定士は、異なる初期条件を試すか又は既存のパラメータを修正し、最適化プロセスを繰り返すことがあり、このサイクルは、患者の担当医によって指定された計画の目標を満たす実現可能なIMRT計画に到達するまで、複数回繰り返されることがある。線量測定士が、いくつかのかかる試行の後にこれらの目標を満たす実現可能な計画を生み出すことができない場合、物理的に実現可能でありながら意図される治療効果をもたらすように最適化目標を調節するために、患者の担当医との更なる協議が必要なことがある。
【0007】
以下、上記に言及した課題及びその他に対処する、新しい改善されたシステム及び方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの開示される態様では、放射線治療計画デバイスは、表示デバイスを含むコンピュータと、動作を実施するのにコンピュータによって読取り可能及び実行可能な命令を格納する少なくとも1つの非一時的記憶媒体とを備え、動作は、標的領域、リスク臓器(OAR)、及び少なくとも1つの放射線ビームの相対的空間配置に基づいて、照射される標的ボリューム、OAR、及び少なくとも1つの放射線ビームを含む、強度変調放射線治療(IMRT)幾何学形状に関する達成可能性推定値を計算することと、達成可能性推定値又は達成可能性推定値に基づいて生成された情報を、表示デバイスに表示することとを含む。
【0009】
別の開示される態様では、非一時的記憶媒体は、放射線治療計画方法を実施するのにコンピュータによって読取り可能及び実行可能な命令を格納し、方法は、照射される標的ボリュームと交差する少なくとも1つの放射線ビームの利用可能なビームレットの数N
Tと、標的ボリューム及びリスク臓器(OAR)の両方と交差する少なくとも1つの放射線ビームの利用可能なビームレットの数nとの比較に基づいて、標的ボリューム、OAR、及び少なくとも1つの放射線ビームを含む、強度変調放射線治療(IMRT)幾何学形状に関する達成可能性推定値を計算するステップと、達成可能性推定値又は達成可能推定値に基づいて生成された情報を、コンピュータのディスプレイ又はコンピュータと動作可能に接続されたディスプレイに表示するステップとを有する。
【0010】
別の態様では、放射線治療計画方法が開示される。コンピュータを使用して、照射される標的ボリューム、リスク臓器(OAR)、及び少なくとも1つの放射線ビームを含む、強度変調放射線治療(IMRT)幾何学形状に関して、達成可能性推定値が計算される。この目的のため、標的ボリュームを照射するためにIMRT幾何学形状において利用可能な少なくとも1つの放射線ビームのビームレットの数N
Tと、N
T個のビームレットうちOARも通り抜けるビームレットの数nとを比較する、幾何学的複雑さ(GC)メトリックがIMRT幾何学形状に関して計算される。次に、GCメトリック比が、(i)IMRT幾何学形状に関するGCメトリックと、(ii)IMRT計画が達成可能であることが知られている基準IMRT幾何学形状に関するGCメトリックとから計算される。達成可能性推定値はコンピュータディスプレイに表示される。
【0011】
1つの利点は、失敗したIMRT計画最適化試行による無駄な計算時間が低減されることである。
【0012】
別の利点は、より高速のIMRT計画が提供されることである。
【0013】
別の利点は、IMRT計画最適化を開始する前にIMRT計画のパラメータを選択する、半自動化ガイダンスが提供されることである。
【0014】
所与の実施形態は、上述の利点を1つも提供しないか、又は上述の利点のうち1つ、2つ、それ以上、若しくは全てを提供し、並びに/或いは本開示を読んで理解することによって当業者には明白となるような、他の利点を提供する。
【0015】
本発明は、様々な構成要素及び構成要素の組み合わせ、並びに様々なステップ及びステップの組み合わせの形をとる。図面は、単に好ましい実施形態を例証するためのものであり、本発明を限定するものとは解釈すべきでない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書に開示する手法では、計算集約的な強度変調放射線治療(IMRT)計画最適化を実施する前に、臨床医(例えば、腫瘍学者、線量測定士など)には、臨床医が選択したIMRT幾何学形状に対してIMRT計画を生成することができる可能性の推定値を提供する、効率的に計算された達成可能性推定値が与えられる。
【0018】
より詳細には、達成可能性推定値は、照射される標的ボリューム(一般的にはがん性腫瘍であるが、器官の高頻度転移領域など、他の何らかの悪性ボリュームである可能性もある)、望ましくない放射線暴露による損傷リスク臓器(OAR)、及び少なくとも1つの放射線ビームを含む、IMRT幾何学形状に関して決定される。達成可能性推定値は、標的領域、OAR、及び少なくとも1つの放射線ビームの相対的空間配置に基づいて計算される。例示の実施形態では、達成可能性推定値は、標的ボリューム又はOARのどちらについての線量目標にも基づかない(後者は一般的に最大の許容可能線量である)。
【0019】
効率的に計算された達成可能性推定値を提供するための開示される手法は、本明細書において行われるいくつかの観察に見出される。1つの観察は、特定のIMRT幾何学形状に関してIMRT計画を達成できないことは、放射線ビームが標的ボリューム(所望される)及びOAR(望ましくない)の両方と交差する状況によるというものである。より詳細には、IMRTでは、マルチリーフコリメータ(MLC)が利用可能なビームレットを規定し、OARと交差しないいずれのビームレットも、IMRT幾何学形状に関する有効なIMRT計画を達成できないことに寄与しない。他方で、標的ボリューム及びOARの両方と交差するいずれのビームレットも、IMRT幾何学形状に関する有効なIMRT計画を達成できないことに寄与する可能性があるが、それは、IMRT送達の間にそのビームレットを適用することが、標的ボリュームの照射には寄与するが、OARの望ましくない照射にも寄与するためである。この望ましくないOARの照射が、あらゆる潜在的なMLC構成に対して(治療線量目標によって規定されるような、最大の許容可能な線量を越えて)高すぎる場合、そのIMRT幾何学形状を使用して有効なIMRT計画を最適化することは不可能である。したがって、開示される達成可能性推定値は、標的ボリュームと交差する(少なくとも1つの)放射線ビームの利用可能なビームレットの数N
Tと、標的ボリューム及びOARの両方と交差する(少なくとも1つの)放射線ビームの利用可能なビームレットの数nとの比較に基づいて計算される。数nはN
T以下であり、概して、nがN
Tに近付くほど、所与のIMRT幾何学形状に対してIMRT計画を最適化できる見込みが低くなる。
【0020】
本明細書で使用するとき、「利用可能なビームレット」という用語は、所与のIMRT幾何学形状のコンテキストでは、MLCによって妨害されない場合に標的ボリュームを照射するようになる、放射線ビームのビームレットを指す。換言すれば、「利用可能なビームレット」は、MLCによって妨害されない場合に標的ボリュームと交差するようになる、MLCによって変調される放射線ビームのビームレットである。したがって、利用可能なビームレットの数はN
Tである。放射線ビーム面積が、放射線ビームの周辺部分が標的ボリュームと交差しない大きさである場合、その周辺部分にあるビームレットは、MLCによって妨害されなくても標的ボリュームの照射に寄与し得ないため、それらは「利用可能な」ビームレットではないことに留意されたい。
【0021】
実際の線量目標も、所与のIMRT幾何学形状に対するIMRT計画の達成可能性に影響する。しかしながら、本明細書では、IMRT計画の最適化(上述したように、計算集約的である)を実際に実施することなく、IMRT計画を達成する可能性の推定値を提供する目的で、この影響を概算できることが認識される。本明細書に開示する例示の達成可能性推定値では、標的領域、OAR、及び少なくとも1つの放射線ビームの相対的空間配置に基づいて、IMRT幾何学形状に関して計算される「幾何学的複雑さ」又はGCメトリックを、基準IMRT幾何学形状に関して計算された同じGCメトリックと比較することによって、近似的方式で線量目標の影響が考慮される。基準IMRT幾何学形状は、好ましくは、現在の治療にとって望ましいものと同様の線量目標を有するIMRT計画に対するIMRT幾何学形状となるように選択される。OARの最大の許容可能線量は、一般的に、様々な器官に関する既知の損傷閾値に関連付けられるが、標的ボリュームの線量目標は、同様に、所与のタイプのがんの治療における臨床的効率に対する既知の放射線量レベルに関連付けられる。
【0022】
上記を考慮して、例示の達成可能性推定値は、任意の線量目標ではなく、標的領域、OAR、及び少なくとも1つの放射線ビームの相対的空間配置に基づいて計算される。実例では、達成可能性推定値は、(i)利用可能なビームレット(即ち、標的ボリュームと交差するもの)の数N
Tと、(ii)OARとも交差する利用可能なビームレットの数nとを比較する、「幾何学的複雑さ」又はGCメトリックを使用して計算される。いくつかの実施形態では、IMRT幾何学形状に関するGCメトリックは、少なくとも1つの利用可能なIMRT計画(好ましくは、現在開発中のIMRT計画と比較して類似の線量目標を有するもの)を可能にすることが分かっている基準IMRT幾何学形状に関するGCメトリックと比較され、それによって線量目標の影響を近似的に考慮する。
【0023】
次に
図1を参照すると、画像診断及び放射線治療送達装置に関連して、例示の強度変調放射線治療(IMRT)計画デバイスが示されている。IMRT計画プロセスは、放射線医学実験室10において、例示のコンピュータ断層撮影(CT)画像診断デバイス12、磁気共鳴(MR)画像診断スキャナなどの適切な画像診断デバイスを使用して、患者の画像診断を行うことで始まる。放射線医学実験室10は、患者の、又は少なくとも腫瘍若しくは他のIMRT標的ボリューム、及び隣接するリスク臓器(OAR)の、三次元(3D)画像14を送達する。一般に、3D画像14は処理されて、減衰マップ16(又は、場合によっては吸収マップとも呼ばれる、μマップ)が生成され、それがIMRT計画最適化において、IMRTを受けているがん患者の様々な組織による放射線吸収を考慮するのに使用される。CT画像診断によって獲得される例示の3D画像14の場合、減衰マップ16は、CT画像診断に使用されるX線と比較して、治療用放射線ビームの異なる吸収特性を考慮に入れるようにCTハウンスフィールド数を変換することによって、容易に生成される。MR画像からの減衰マップ16の生成は、例えば、画像をセグメント化し、減衰値をセグメント化画像の異なるセグメントに割り当てることによって行われてもよい。
【0024】
3D画像14は、IMRTを計画する際の計画画像として役立つ。この目的のため、計画画像14は、臨床医(例えば、腫瘍学者又は線量測定士)によって輪郭が描かれて、標的ボリューム、及び標的ボリュームの照射中に望ましくない放射線を受けることがある任意の隣接するリスク臓器(OAR)が規定される。輪郭描写は、一般的には、ディスプレイ22と、1つ以上のユーザ入力デバイス(例えば、キーボード24、マウス若しくは他のポインティングデバイス26、ディスプレイ22の接触式オーバーレイ、及び/又はその他)とを有する(或いはそれらと動作可能に接続された)、ユーザインターフェーシングコンピュータ20を操作する臨床医によって実施される、手動又は半手動プロセスである。コンピュータ20は、輪郭描写用のグラフィカルユーザインターフェース(GUI)28を提供するようにプログラミングされ、それを介してユーザは、標的ボリューム及びOARの境界を定める3D計画画像14のスライスに輪郭を描くことができる。それに加えて、又はその代わりに、例えば、標的ボリューム及びOACを取り囲むメッシュとして輪郭を規定し、各メッシュが手動の輪郭描写中に臨床医によって特定される点を含むように規定され、場合によっては画像勾配などによって特定されるオブジェクトのエッジにメッシュを適合させることによって境界が定められる、自動化又は半自動化された輪郭描写が提供されてもよい。
【0025】
輪郭描写用GUI 28を介して実施される輪郭描写(任意で、半自動化された輪郭描写の支援を用いるが、臨床医が調査/承認を行う、完全に自動化された輪郭描写も想到される)の出力は、標的ボリュームと(望ましくない)照射が制御される任意のOARの境界を定める一組の輪郭30である。臨床医は、放射線ビーム(又は、IMRT送達デバイスが複数の放射線ビームを同時に及び/又は異なる時間に出力できる場合、複数の放射線ビーム)の向きも選択することによって、輪郭30によって定義された標的ボリューム及びOARを含むIMRT幾何学形状32を完成させる。標的ボリューム及びOARそれぞれに対する放射線ビームの空間位置は、実際の制約(例えば、患者が通常うつ伏せの位置で、即ち顔を下に向けて、若しくは仰向けの位置で、即ち顔を上に向けて横たわっている)、標的ボリュームを放射線ビームの中心若しくはその付近に位置付ける必要性、並びにOARの暴露を制限する要望に基づいて決定される。したがって、IMRT幾何学形状32は、照射される標的ボリュームと、少なくとも1つのリスク臓器(OAR)と、少なくとも1つの放射線ビームとを含む。IMRT計画を設計するための臨床医による更なる入力は、線量目標34である。一般的に、これらは、標的ボリュームに送達される最小(及び/又は標的)放射線量と、各OARに対する最大の許容可能線量とを含んでもよい。各OARは、概して、特定の器官の放射線感受性に応じて、異なる最大の許容可能線量を有してもよい。線量目標34のいくつかは、厳格な又は柔軟な制約として体系化されてもよく、例えば、ライフクリティカルなOARに関する最大の許容可能線量は、患者の安全を担保するために、厳格な制約であり得る。
【0026】
従来、IMRT幾何学形状32及び線量目標34が設定された状態で、IMRT計画は、ネットワークサーバコンピュータ、クラウドコンピューティングリソース、又は他の分散型コンピューティングシステムなどの適切な高出力コンピュータ40に実施された、IMRT計画最適化系38によって実施されるIMRT計画最適化に進む。IMRT計画最適化コンピュータ40は、任意で、いくつかの最適化動作を実施する専用のコンポーネント(例えば、ASIC)を用いてもよい。非限定例として、IMRT計画最適化系38は、放射線ビームに関するフルエンスマップが所望の線量目標を生み出すように最適化され、減衰マップ16を使用して放射線プロファイルが決定され、結果として得られるフルエンスマップを次に離散化してMLC構成が生成される、逆方向計画の手法を用いてもよい。結果として得られるIMRT計画42は、非一時的データ記憶媒体に格納され、予定された時間に、患者は、例えばIMRT計画42にしたがって、放射線ビームを生成するlinac及びビームを変調するMLCを備える放射線治療送達装置44を使用して実施されるIMRT送達を受ける。
【0027】
例示の
図1では、全体的なIMRT幾何学形状32及び線量目標34を選択するため、輪郭描写GUI 28及びユーザインターフェーシングを実施したコンピュータ20は、IMRT計画最適化系38を実施するようにプログラミングされたコンピュータ40とは別個であることに注目されたい。これは一般的構成であるが、その理由として、ユーザインターフェーシングコンピュータ20が、ユーザインターフェーシングコンポーネント22、24、26を要し、また好ましくは、任意のグラフィック処理装置(GPU)又は他のグラフィックス高速化ハードウェアなどの輪郭描写に対応する機能を含み、一方でIMRT計画最適化系38が好ましくは、十分な計算能力を提供する、高容量コンピュータ又はコンピューティングネットワーク又はクラウドコンピューティングリソースに実施される。しかしながら、単一のコンピュータがユーザインターフェーシング機能28、30、32、34及びIMRT計画最適化系38の両方を実施するか又はそれらに対応することが想到される。例えば、別の適切な実施は、ネットワークサーバコンピュータ又はコンピュータクラスタ(例えば、病院の電子ネットワークの1つ若しくは複数のサーバ)、及びネットワークサーバコンピュータと接続された1つ以上の「ダム」端末又はパーソナルコンピュータであり、この実施では、端末又はパーソナルコンピュータのユーザインターフェーシングコンポーネントは輪郭描写などを提供し、最適化はネットワークサーバコンピュータに対して実施され、その結果が端末又はパーソナルコンピュータに表示される。
【0028】
上述したように、IMRT計画最適化は、最適化される数百又は数千のパラメータを伴い、数時間の計算時間がかかることがある。IMRT幾何学形状32及び線量目標34の選択に応じて、IMRT計画最適化は物理的に実現可能な解決策に収束できないことがあり、この場合、臨床医は、IMRT幾何学形状32及び/又は線量目標34を更新することによって計画段階に戻らなければならず、或いはいくつかの例では、標的ボリューム及び/又はOAR輪郭を更新するのに輪郭描写GUI 28に戻る必要があることがある。かかる状況では、貴重なコンピューティングリソース及び臨床医の時間が無駄になり、患者に対する放射線治療のタイムクリティカルな臨床的送達が遅れることがある。
【0029】
これらの潜在的問題を緩和するため、
図1の例示のIMRT計画デバイスは、IMRT計画達成可能性推定器50を更に含み、これは、ユーザインターフェーシングコンピュータ20、又はIMRT最適化コンピュータ40、又は両方の機能を実施する組み合わされたコンピュータなどに、様々に実施されてもよい。IMRT計画達成可能性推定器50は、選択されたIMRT幾何学形状32に対して、IMRT計画最適化系38によって、物理的に実現可能なIMRT計画を生成することができる可能性を推定する。この推定は、IMRT幾何学形状32(標的ボリューム及びOARの定義と選択された放射線ビームとを含む)に基づいて行われるが、例示の実施形態では、線量目標34に依存しない。それよりもむしろ、例示の実施形態では、ユーザが、規準IMRT計画データベース52から、類似のIMRT幾何学形状及び(好ましくは)類似の線量目標を有するIMRT計画を選択し、選択されたIMRT幾何学形状32に対して、また基準IMRT計画のIMRT幾何学形状に対して、幾何学的複雑さ(GC)メトリックが計算される。GCメトリック及び基準GCメトリックの比較に基づいて、達成可能性が推定される。概して、選択されたIMRT幾何学形状32のGCメトリックが基準GCメトリックよりも著しく高い場合、これは、選択されたIMRT幾何学形状32が著しく幾何学的により複雑な状況を提示しており、IMRT計画を、幾何学的に複雑なIMRT幾何学形状に対して成功裏に最適化できる見込みが低くなることを示している。結果として得られるIMRT計画達成可能性推定値は、ディスプレイ22に適切に表示される。表示は、数値であってもよく、又は数値的な達成可能性推定値をビニングし、ビニングした数値的な推定値に基づいて文字による達成可能性推定値を選択することによって、「達成可能」、「ほぼ達成可能」、「ほぼ達成不能」、「達成不能」といった文字による達成可能性推定値に書き換えられてもよい。
【0030】
達成可能性推定値は、選択されたIMRT幾何学形状32に対するIMRT計画最適化を進めるのに得策であるか否かに関する、臨床医のガイダンスとして意図されることに留意されたい。このため、達成可能性推定値は顕著な誤差レベルを有する場合があり、即ち、いくつかの場合、達成可能性推定値は、実際にIMRT計画最適化系38が物理的に実現可能な計画を生成できないことが判明したときに、IMRT計画最適化が達成可能であることを示すことがあり、またその逆も真である。IMRT計画達成可能性推定器50は、それが通常は正確な場合に、即ち通常はIMRT計画が実現可能であると予測したときにそれが正しい場合、また通常はIMRT計画が達成不能であると予測した場合にそれが正しい場合、有用な目的に役立つ。これは、IMRT計画達成可能性推定器50が、無駄な最適化計算時間及び臨床医の時間を大幅に低減するのに十分である。
【0031】
図1を参照して、IMRT計画達成可能性推定器50を含むIMRT計画デバイスの概要を提供してきたが、以下、いくつかの適切なIMRT計画達成可能性推定のいくつかの実例を提供する。例示のIMRT計画達成可能性推定器は、概して、(i)標的ボリュームと交差する少なくとも1つの放射線ビームの利用可能なビームレットの数N
Tと、(ii)標的ボリューム及びOARの両方と交差する少なくとも1つの利用可能なビームレットの数nとの比較に基づいて動作する。より詳細には、幾何学的複雑さ(GC)メトリックは次式のように定義される。
【数1】
ここで、Vは標的ボリュームの体積(例えば、照射される腫瘍の体積)、N=N
T/Vは標的ボリュームの単位ボリューム当たりの利用可能なビームレットの数である。他の類似のGCメトリックを使用することができ、例えば、いくつかの実施形態では、正規化が用いられ
ない(GC=(n+1)/N
Tを与える)ことが認識されるであろう。式(1)の「+1」は、特定の起こり得るゼロ除算シナリオを低減させるが、概して任意である(例えば、GC=n/Nが想到される)。
【0032】
図2及び
図3を参照すると、達成可能性の推定に関する式(1)の効率の2つの実例が示されている。
図2及び
図3は、単一の放射線ビームによって照射されている標的ボリューム及びOARの2つの例を図式的に示している。この例では、利用可能なビームレットの数N
Tは4である(これは、上述したように図式であり、実際のIMRTの実現例では、N
Tは一般的に数百又は数千単位である)。
図2の例では、標的ボリュームと交差する4つの利用可能なビームレットは全て、OARとも交差するので、n=4である。このことによって、式(1)のGCメトリックに対する高い値が得られ、幾何学的複雑さが大きく、IMRT計画最適化の成功が達成される見込みが低いことを示している。比較によって、
図3は、標的ボリュームと交差するビームレットのうち1つのみがOARとも交差しており、したがってn=1である、異なる幾何学形状を示している。このことによって、式(1)のGCメトリックに対する低い値が得られ、幾何学的複雑さが小さく、IMRT計画最適化の成功が達成される見込みが高いことを示している(例えば、OARと交差する単一のビームレットを、最適化されたMLC構成によって遮断することができる)。
【0033】
図4及び
図5を参照すると、3つの放射線ビームを有する一例が示されている。概して、3つの放射線ビームは同時に、又は連続する時間間隔で、例えば強度変調回転照射(VMAT)手法にしたがって適用されてもよい(一般的に、重要なのは、単一の放射線治療セッションで標的ボリューム及びOARに送達される時間積分線量なので、連続する放射線ビームパルス間の時間間隔は関連がなく、連続する放射線ビームパルスは別個の放射線ビームとして見ることができる)。この例では、各放射線ビームは4つのビームレットへと変調される(やはり、単純化した図式的な例)ので、3つの放射線ビームに関しては、N
T=4×3=12である。
図4の例では、一番左側の放射線ビームの1つのビームレットはOARとも交差し、真ん中の放射線ビームの1つのビームレットはOARとも交差し、最も右側の放射線ビームの3つのビームレットはOARとも交差している。したがって、n=1+1+3=5であり、式(1)から、GCメトリックは
【数2】
である。
図5の例では、一番左側の放射線ビームの2つのビームレットはOARとも交差し、真ん中の放射線ビームの2つのビームレットはOARとも交差し、最も右側の放射線ビームの4つ全てのビームレットはOARとも交差している。したがって、n=2+2+4=8であり、式(1)から、GCメトリックは
【数3】
である。これにより、
図4のIMRT幾何学形状(GCが低い)の方が、
図5のIMRT幾何学形状(GCが高い)と比較して、達成可能なIMRT計画最適化をもたらす見込みが高い。
【0034】
図6を参照すると、2つ以上のOARがある場合、様々な形でこれを扱うことができる。例示の
図6は、「OAR#1」及び「OAR#2」とそれぞれ称される2つのOARを、2つの放射線ビームと共に示している。水平放射線ビームは、OAR#2と交差する4つのビームレットを有し、OAR#1と交差するものは有さない。垂直放射線ビームは、OAR#1と交差する3つのビームレットと、OAR#2と交差する1つのビームレットとを有する。1つの手法では、2つのOARは単一のOARとして処理され、即ち、個々のOARの合併である単一のOARが存在する(例えば、ここでは単一のOARは{OAR#1∪OAR#2}である)。この場合、n=8(全てのビームレットが構成成分OARの少なくとも1つと交差するため)であり、N
T=8であるので、GCメトリックは、
【数4】
である。GCメトリックの非常に高い値は、このIMRT幾何学形状を用いる最適化されたIMRT計画を達成する見込みが低いことを示す。これは有用な情報であるが、どのOARが成功する計画の最適化の見込みを最も著しく低下させるにかについては臨床医に情報を与えない。
【0035】
別の手法では、各OARは別個に処理され、この場合、OAR#1のGCメトリックは、
【数5】
であり、OAR#2のGCメトリックは、
【数6】
である。したがって、臨床医には、OAR#1と比較してOAR#2の方が成功する計画の最適化の見込みを著しく低下させることが知らされる。しかしながら、この手法では、個々のGCメトリックの値は、最適化されたIMRT計画を達成する見込みを大幅に過大評価していることがあり、
図6の例では、個々のGCメトリックはそれぞれ、両方のOARを考慮した場合のGCメトリックよりも著しく低く、したがって最適化されたIMRT計画を達成する見込みを過大評価している。1つの手法では、両方のOARを併せて処理し、この例では
【数7】
の値を有する「合計」GCメトリックが表示され(したがって、非常に低い達成可能性の見込みを示す)、それに加えて、各OARに対するGCメトリックも、どのOARが達成可能性に悪影響を及ぼすかを判断するのを支援するために表示される(同様の方式で、個々の放射線ビームそれぞれに対するGCメトリックを表示して、どのビームが最適化されたIMRT計画の達成可能性に悪影響を及ぼすかを示すことができる)。
【0036】
いくつかの想到される実施形態では、式(1)のGCメトリック、又は「+1」項を省略したもの及び/又はボリューム(V)の正規化を省略したものである、本明細書に記載する変形例のうち1つなどの変形例が、達成可能性推定値として使用される。
図2〜
図5の例から、GCが増加するにしたがって、標的ボリューム及びOARの両方と交差するビームレットの数nが増加することが分かり、これは、幾何学的複雑さが増大し、結果として成功するIMRT計画の最適化の見込みが低下することを反映している。しかしながら、達成可能性推定値としてGCに直接依存しても、式(1)が純粋に幾何学的な分析なので、線量目標34の影響を考慮するための機構を何らもたらさない。実際上、線量目標34は、IMRT計画を成功裏に最適化できるか否かには影響する。例えば、OARに対する最大の許容可能線量が(標的ボリュームに対して意図される線量と比較して)低減されるにしたがって、より低い最大の許容可能OAR線量を満たす最適化されたIMRT計画を達成することがより困難になる。対照的に、OARに対する最大の許容可能線量が増加するにしたがって、より多くの放射線量をOARが吸収することができるので、最適化されたIMRT計画を達成することが容易になる。しかしながら、標的ボリューム及びOARに送達される線量を計算することは、IMRT計画最適化の実施を伴い、計算上複雑なIMRT計画最適化を実施する前の最初の達成可能性推定値を実施するという目的を無効にしてしまう。
【0037】
例示の実施形態では、線量目標34のいずれかに対する達成可能性推定値を基準にする代わりに、この情報は、検討中のIMRT幾何学形状32に関して式(1)によって計算されたGCメトリックを、実際に最適化されたIMRT計画の基準IMRT幾何学形状に関してやはり式(1)によって計算された基準GCメトリックと比較することによって、半定量的に考慮される。このように、基準IMRT幾何学形状は、IMRT計画の成功する最適化を可能にすることが知られている(これが過去の基準IMRT幾何学形状に対して行われているため)。基準IMRT計画データベース52から選択された基準IMRT計画は、好ましくは、開発途中のIMRT計画に可能な限り近付くように選択され、特に、基準IMRT計画は、選択されたIMRT幾何学形状32と同じ又は類似のIMRT幾何学形状を有するべきであり、基準IMRT計画の線量目標は、開発途中のIMRT計画の線量目標34に近付けるべきである。基準IMRT計画は、例えば、臨床医がデータベース52に格納された過去のIMRT計画を検索することによって、手動で選択されるか、又は例えば、IMRT幾何学形状と線量目標の最も近い合致によって、自動的に選択されるか、又はそれらの組み合わせによって、例えば、同じOAR及び同じタイプの放射線治療に関する過去のIMRT計画(例えば、同じタイプのがん性腫瘍)を自動的に選択し、最も近い計画に関する過去のIMRT計画のこの部分集合を臨床医が検索することによって選択されてもよい。更に、
図6を参照して考察したように、達成可能性推定値が各OARに関して別個に計算される実施形態では、各OARの達成可能性を推定するのに異なる基準IMRT計画を用いることが想到される(これは、2つ以上の標的ボリュームが照射される場合に拡張することもでき、各OAR/標的ボリュームの組み合わせの達成可能性を、OAR/標的ボリュームの組み合わせに対して選択した基準IMRT計画を使用して、別個に推定することができる)。選択された基準IMRT計画に関するGCメトリックは、
【数8】
として適切に計算される。ここで、式(2)は、下付きのrefが基準IMRT計画の幾何学形状に関する値を示すのに使用されている点を除いて、式(1)と同一である。そのため、達成可能性推定はGC比に基づく。
【数9】
式(3)の達成可能性推定値の公式では、ボリューム正規化(N=N
T/V)は、開発途中のIMRT計画を基準IMRT計画と比較する際に、腫瘍サイズの差を近似的に考慮するのに有用である。これもやはり任意であり、特に、データベース52が、臨床医が類似サイズの腫瘍に関する基準IMRT計画を通常選択することができるのに十分な大きさである場合にそうである。任意の「+1」因子はまた、n
ref=0の場合におけるゼロ除算の可能性を回避するものと見られる。式(3)のGC
ratioは線量目標を近似的に考慮するが、それは、単位に関するGC
ratioが、達成可能であることが既に分かっている基準IMRT幾何学形状に相当するためである。しかしながら、式(3)の達成可能性推定は、いずれの線量目標にも基づかず(したがって、計算集約的な線量最適化を実施することを要しない)、それよりもむしろ、IMRT幾何学形状32及び基準IMRT計画とそのGC
ref値に基づく。
【0038】
いくつかの実施形態では、達成可能性推定値は定量値であり、例えば、基準が使用されない場合の式(1)のGCメトリック、又は基準IMRT計画が使用される場合の式(3)のGC
ratioである。しかしながら、これらの数値は、特に両方の場合において、より大きい値がより低い達成可能性の見込みに対応し、反直感的に見えることがあるので、臨床医にとって直感的でないことがある。例示の実施形態では、GC
ratioはビニングされ、数値を表意的意味がある文字による達成可能性推定値に変換するため、表1として示されるルックアップテーブルが使用される。例示の表1にある定量的値は代表例であり、GC
ratioビンに対する特定の値が、IMRT計画の特定のタイプに関して、また一般のIMRT幾何学的レイアウトに関して選択されてもよいことが理解されるべきである。また、達成可能性推定値は推定値であるため、「達成可能」のカテゴリは、「達成可能」推定値を有する幾何学形状に関してIMRT計画を最適化できるのが確実であることを示唆するものではなく、それよりもむしろ、かかる計画が達成可能である見込みが高いことを示し、同様に、「達成不能」は、幾何学形状を用いてIMRT計画を最適化することができないことを確証的に意味するものではなく、単にかかる最適化の見込みが非常に低いという意味であることに留意すべきである。
【0040】
表1を用いて解釈した式(3)の達成可能性推定を適用して、頭頂部のIMRT計画のコンテキストにおいて右耳下腺管から成るOARに関する達成可能性を推定した。実験は以下のように実施した。最初に、最適化によって全ての臨床目標が満たされている基準頭頂部計画を作成した。セグメント化された各臨床構造(OAR)と関連付けられたGC
refメトリックを、基準計画に対して抽出した。他の頭頂部事例における右耳下腺管OARに関してGCメトリックを計算し、これらのGCメトリック値を、基準の事例で得られたそれぞれの基準GC
ref値と比較した。次に、式(3)の幾何学的複雑さの比(GC
ratio)を計算し、値を、表1を使用して文字による達成可能性推定値に変換した。IMRT幾何学形状では、0°、50°、100°、150°、200°、250°、及び300°の7つの等角度のビームを全ての事例で使用した。式(3)及び表1の達成可能性推定値は、時間の約85%でIMRT計画の最適化結果を正確に予測した。これは、開示の達成可能性推定器が、成功しない見込みが大きいIMRT計画最適化の実施を回避することによって、無駄な計算時間及び臨床医の時間を大幅に低減するのに十分である。
【0041】
図7を参照すると、
図1のIMRT計画デバイスを使用して適切に実施される、IMRT計画最適化の達成可能性推定方法が示されている。動作60では、基準IMRT計画が基準IMRT計画データベース52から選択される。これは、臨床医が過去のIMRT計画を検索して、IMRT幾何学形状32及び線量目標34に関して類似した計画を見つけることによって、手動で行われてもよく、又はデータベース52のコンピュータ検索によって自動的若しくは半自動的に行われてもよい。動作62では、例えば式(1)にしたがって、IMRT幾何学形状32に関してGCメトリックが計算される。動作64では、例えば式(2)にしたがって、基準IMRT計画のIMRT幾何学形状に関してGC
refメトリックが計算される。いくつかの実施形態では、動作64は、データベース52内の過去のIMRT計画全てに関してオフラインで実施され、{IMRT計画、GC
ref}のデータ対として格納される。動作66では、例えば式(3)にしたがって、GC
ratioが計算される。任意で、これは、例えば表1を使用して、文字による達成可能性推定値に変換される。動作70では、臨床医が達成可能性推定値を調査し、どのIMRT計画最適化が達成可能である見込みであるかを決定する。この決定は、コンピュータ時間の利用可能性など、達成可能性予測以外の因子を考慮に入れてもよい(例えば、コンピュータ40に対する作業負荷が低い場合、より見込みが低いIMRT幾何学形状が追求されてもよい)。決定70が肯定の場合、動作72で、IMRT計画最適化系38が呼び出されて、最適化されたIMRT計画の生成が試みられる。決定70が否定の場合、動作74で、臨床医がIMRT幾何学形状を調節し(例えば、放射線ビーム角度を修正し、必要であれば輪郭を調節してもよい)、再試行してもよい。
【0042】
別の態様では、開示される手法は、IMRT計画最適化を実施する前にIMRT幾何学形状を最適化するのに使用することができる。GCメトリックから、特定の事例に適したIMRT幾何学形状(例えば、ビームの角度若しくは位置)が異なる事例には適さないことがあると推論することができる。GCメトリックは、標的ボリューム及びOARそれぞれに対するビーム構成を含むIMRT幾何学形状に基づくので、反復ソルバーを使用して解決することができるGCメトリックを使用して、放射線ビーム構成選択の問題を公式化することが可能である。以下の実例では、ビーム構成は、組み合わせビーム角度、コリメータ角度、及びカウチ角度に基づいて選択される。例えば、異なるOARに関して得られるGC
ratioを考慮して、
図6を参照して上記で考察したように、各OARを別個に処理する。最適化は次のように公式化されてもよい。
【数10】
ここで、Fは最小化されるオブジェクト関数、
【数11】
はk=1、・・・、Kの場合の各OARに対する式(3)によるGC
ratio、W
k,k=1、・・・、Kはk番目のOARに割り当てられる重要度を示す各OARの重みである。概して、W
kのより大きい値は、OAR#kの照射をその最大の許容可能な線量未満に保つことがより重要であることを示す。関数φ(W
k)は二値選択関数である。
【数12】
反復ソルバーは、累積GC
ratio(即ち、IMRT計画における全OARの比の和)ができるだけ小さくなるように、放射線ビーム構成を反復的に微調整する、Fを最小限に抑えるのに使用することができる。Fを最小限に抑えることによって、GC
ratio値を計算するのに使用される基準IMRT計画に関して、所与のIMRTタスクにとって放射線ビーム構成が最適であることが担保される。
【0043】
上述の例では、基準IMRT計画は、現在開発中のIMRT計画(幾何学形状及び線量目標)との類似度に基づいて、臨床医によって選択される。他の実施形態では、GCメトリックが開発中のIMRT計画に対して計算され、このGCメトリックは、基準IMRT計画データベース52を自動的に検索して、類似のGCを有する(即ち、開発中のIMRT計画に関して計算されたGCに近いGC
refを有する)基準IMRT計画(又は2つ、3つ、若しくは複数の基準IMRT計画)を特定するのに使用される。この手法では、開発中のIMRT計画の幾何学形状32のみが、GCを計算するための入力として必要であり、次に、特定された基準IMRT計画の線量目標を、臨床医が達成可能な見込みがある線量目標34を設計する際のガイダンスとして使用することができる。
【0044】
図8を参照すると、この代替手法を用いるIMRT計画達成可能性推定方法が示されている。動作80では、例えば式(1)にしたがって、IMRT幾何学形状32に関してGCメトリック82が計算される。動作84では、基準IMRT計画データベース52を検索して、開発中のIMRT計画に関して意図されるIMRT計画幾何学形状32に対して計算されるGCメトリック82にGC
refメトリックが最も類似している、1つ以上の基準IMRT計画が特定される。この検索84は好ましくは自動化され、データベース52に格納された各GC
refに対してGC 84を比較するだけなので高速である(これにより、GC
ref値がオフラインで事前計算され、データベース52に格納されるものと仮定され、それがこの実施形態では好ましく、或いは、GC
refメトリックをデータベース52内の潜在的な基準IMRT計画それぞれに関して計算することができるが、この場合、開発中の新しいIMRT計画に対して
図8の方法が実行される毎にやり直す必要がある)。適切な接近度メトリック、例えば差異率によって測定されるような、GC 82に十分に近いGC
refを有する最大N個の計画を選択するなど、基準IMRT計画を選択するのに、様々な判定基準を使用することができる。Nの値は1程度の低さであることができ(この場合、単一の最も近い基準IMRT計画が選択される)、又はより高い値であることができ、例えばN=5の場合、5つ以下の最も近い基準IMRT計画が選択される。動作86では、最も近い基準IMRT計画に関する情報が表示される。この情報は、例えば、幾何学形状、線量目標、患者の成果に関する情報(利用可能な場合)、及び/又はその他を含んでもよい。したがって、臨床医には、1つ以上の類似の基準IMRT計画の組に関する顕著な情報が提供され、情報は例えば、手動動作88において臨床医によって参照され、その動作で臨床医は、開発中のIMRT計画に関する線量目標34を選択する。
【0045】
上述したように、開示のIMRT計画動作は、少なくとも1つの非一時的記憶媒体に格納された命令(例えば、プログラム)を実行する、1つ以上のコンピュータ20、40によって適切に実施される。少なくとも1つの非一時的記憶媒体は、例えば、ハードドライブ又は他の磁気記憶媒体、光学ディスク又は他の光学記憶媒体、フラッシュメモリ又は他の固体電子メモリ、それらの様々な組み合わせなどのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0046】
本発明について、好ましい実施形態を参照して記載してきた。上記の詳細な説明を読んで理解することによって修正及び変更が想起されるであろう。本発明は、添付の特許請求の範囲又はその等価物の範囲内にある限りにおいて、全てのかかる修正及び変更を含むと解釈されるものとする。