特許第6865771号(P6865771)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6865771HFガスストリームからのフッ化カルシウムの生成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865771
(24)【登録日】2021年4月8日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】HFガスストリームからのフッ化カルシウムの生成
(51)【国際特許分類】
   C01F 11/22 20060101AFI20210419BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   C01F11/22ZAB
   B09B3/00 303E
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-560828(P2018-560828)
(86)(22)【出願日】2017年5月19日
(65)【公表番号】特表2019-521940(P2019-521940A)
(43)【公表日】2019年8月8日
(86)【国際出願番号】US2017033469
(87)【国際公開番号】WO2017201365
(87)【国際公開日】20171123
【審査請求日】2020年5月18日
(31)【優先権主張番号】16170477.0
(32)【優先日】2016年5月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ティルマン ツェー.ツィップリース
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ヒンツァー
(72)【発明者】
【氏名】モニカ アー.ビルレルト−ポラダ
(72)【発明者】
【氏名】アヒム シュミット−ローデンキルヒェン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ベルガー
(72)【発明者】
【氏名】トルステン ゲルデス
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ シュイムラ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス シュピーボク
【審査官】 青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0353372(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 11/22
B09B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5μm〜00μmのd50平均粒径を有し、少なくとも80重量%のCaFを含有するフッ化カルシウム粒子を生成するための方法であって、
(i)1種以上の部分フッ素化ポリマーを含むフッ素化材料を焼却して、0.5〜50体積%のガス状フッ化水素と、ガス状CO及びHOとを含むガスストリームを供給すること、及び
(ii)流動床反応器内で、前記ガス状フッ化水素を含むガスストリームを、炭酸カルシウム粒子を含む第1の流動床と接触させること
を含み、前記炭酸カルシウム粒子は、少なくとも25μmのd50平均粒径を有する、方法。
【請求項2】
記焼却が、第2の流動床反応器内で行われ、前記第2の流動床が、前記フッ素化材料を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記フッ化カルシウム粒子が、0〜00μmのd50平均粒径を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記フッ化カルシウム粒子が、少なくとも90重量%のCaF含有る、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の流動床が、前記炭酸カルシウム粒子を含み、前記流動床が、前記ガス状フッ化水素を含む前記ガスストリームを含む流動媒体によって生成又は維持される、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記炭酸カルシウム粒子が、0〜50μmのd50平均粒径を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記炭酸カルシウム粒子の5重量%未満が、3μm未満の粒径を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記炭酸カルシウム粒子が、少なくとも90重量%の純度を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記炭酸カルシウム粒子が、.1m/g〜10m/g未満の比表面積を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス状フッ化水素(HF)を含有するガスストリームからのフッ化カルシウム粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然由来のCaF鉱物(例えば蛍石)は、化学工業において使用される無水フッ化水素(HF)用の主要供給源である。フッ化水素は、例えば、濃硫酸の作用により、この鉱物から遊離することができる:
CaF+HSO→CaSO+2HF
【0003】
しかしながら、フッ化カルシウム鉱山への依存を減らすために、フッ化カルシウムの代替的な入手方法を見出す必要がある。
【0004】
フッ化カルシウムは、HFを含有する廃棄物ストリームの精製の副産物として生成される。HFを含有する排気ガス又は廃棄物ストリームは、水酸化カルシウムを含有する水性溶液に向けられ、この際にフッ化カルシウムが沈殿する。このようなプロセスは、例えば、米国特許第3,743,704号及び欧州特許第0536051号に記載されている。しかしながら、得られるCaF沈殿物は、無水HFの生成のために工業的規模で処理するにはあまりに微細である。沈殿したフッ化カルシウムの取り扱い性を向上させるために、沈殿物の粒径を増大させる有機沈殿剤(凝集剤)を添加することができる。しかしながら、粒子は、このとき、望ましくない有機汚染物質を含有する。米国特許第4,120,940号及び欧州特許2,952,478(A1)号は、100μmよりも大きいCaF粒子の水相からの形成を報告している。しかしながら、反応はなお水相において生じる。このような「湿式」プロセスは、消費され処理されるべき相当の量の水を、それが環境にもう一度放出される前に消費する。
【0005】
ある研究は、「乾式」変換プロセスを検討するよう行われている。いくつかの研究は、HF含有ガスを固定床反応器内の固体CaCO粒子上に向けることによる、乾式プロセスにおけるCaFの生成を報告しており、例えば、Yasui et al,International Journal of Chemical Engineering,Volume 2012(2012),No6,1−9頁,http://dx.doi.org/10.1155/2012/329419.−DOI 10.1155/2012/329419−ISSN 1687−806X、Yang et al,Wat.Res.Vol.33,N016,3395−3402頁,1999、Yasue et al,CHISA 2008,Praha(2008)、Yasui et al,AIChE Annual Meeting 2007,Salt Lake City,Paper No173d(2007)に記載されている。
【0006】
CaFを無水HFに工業的に変換するのに好適なCaF粒子を生成する必要がある。望ましくは、本プロセスは、廃棄物から、好ましくはフルオロポリマーなどの部分フッ素化材料を含むか、又はこれらからなる廃棄物から発生するHFガスを使用する。
【発明の概要】
【0007】
約15μm〜約300μmの粒径(d50)を有するフッ化カルシウム粒子を生成するための方法は、流動床反応器内で、ガス状フッ化水素(HF)を含むガスストリームを、炭酸カルシウム粒子を含む流動床と接触させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示による、無水フッ化水素の製造に好適なCaFを発生させるためのプロセスの概略図を示す。
図2】実験1及び2で使用された実験設定を示す概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示のいずれかの実施形態を詳細に説明するのに先立ち、本開示はその用途において以下の説明に示される構造の詳細及び構成部品の配置に限定されるものではないということが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施又は実行することができる。また、本明細書において使用される語法及び専門用語は説明についてのものであり、限定するものとみなしてはならないことを理解されたい。「〜を含む(including)」、「〜を含有する(containing)」、「〜を含む(comprising)」、又は「〜を有する(having)」、及びこれらの変形の使用は、その後に列記される項目及びそれらの等価物、並びに追加的な項目をも包括することを意味する。「〜からなる」の使用は、その後に列挙される項目及びそれらの等価物に限定されることを意味する。「1つの(a)」又は「1つの(an)」の使用は、「1つ以上の」を包括することを意味する。本明細書において記載される数値範囲はいずれも、その範囲の下限値から上限値までの全ての値を含むことを意図する。例えば、1%〜50%の濃度範囲は略記であり、例えば2%、40%、10%、30%、1.5%、3.9%等の1%〜50%の間の値を明確に開示することを意図する。
【0010】
本開示のプロセスでは、ガス状のフッ化水素を含有するガスストリームが、固体炭酸カルシウム粒子を含む床を有する反応器内に供給される。炭酸カルシウム粒子はHFと反応してフッ化カルシウム粒子に変換される。このプロセスは流動床反応器内で行う。炭酸カルシウムを含むか、又は炭酸カルシウム粒子からなる床は、ガス状の流動化媒体によって流動化され、これは、粒子が流動媒体のガス流中に浮遊されることを意味する。この反応条件は、無水フッ化水素(AHF)の工業的製造に適したフッ化カルシウム粒子の結果をもたらすように選択される。
【0011】
フッ化カルシウム粒子
典型的には、無水フッ化水素の製造に好適なフッ化カルシウム粒子は、少なくとも15μm、好ましくは少なくとも30μmの平均粒径(d50)を有する。上限は、好ましくは最大約300μm、より好ましくは200μm未満、より好ましくは最大100μm(100μmを含む)である。好ましい実施形態では、得られた粒子は、約30μm〜100μmの平均粒径(d50)を有する。平均粒径(d50)は、粒度分布の中央値である。これは、母集団の半分がこの点の上方に存在し、かつ母集団の半分がこの点の下方に存在する値である。15μm未満のd50を有するフッ化カルシウム粒子は、概して取り扱いが非常に難しく、混合機器内で早期に反応し、それを阻止する場合がある。300μmより大きい粒径(d50)を有する粒子は、反応が非常にゆっくりである場合があり、収率は経済的でない。また、得られた副産物のCaSOは、余りに多くの未反応のCaFを含有するため、商業的用途で原料として使用することはできない。
【0012】
本開示によるプロセスにおいて、炭酸カルシウム粒子は、ガス状フッ化水素(HF)との反応によって、フッ化カルシウム粒子に変換する。この変換は、炭酸カルシウム粒子の表面で開始し、そこからコアまで進行すると考えられている。好ましくは、得られたフッ化カルシウム粒子の変換又は純度、すなわちCaFの含有量は、90%より大きい、より好ましくは95%より大きい、最も好ましくは少なくとも97%である(百分率は重量百分率である)。
【0013】
炭酸カルシウム粒子
本開示のプロセスで使用するための好適な炭酸カルシウム粒子は、約35〜約400μmの粒径(d50)を有する粒子を含む。好ましくは、炭酸カルシウム粒子のうちの10(重量)%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは3重量%未満は、3μm未満の粒径を有する。CaF粒子は、変換が増加するにつれて反応中にある程度収縮する場合があり、これは、流動床中の粒子間の摩耗の結果であると考えられている。粒径の減少が余りに大きい場合、又は反応をより低い変換率で停止させることができる場合には、ある程度大きな炭酸カルシウム粒子を出発物質として使用してもよい。また流動媒体の流量を調整して損耗を制御することができる。流量は、流動媒体中の粒子を浮遊させて、それらを浮遊された状態で維持し、それにより安定な流動床を形成するのに十分に高くするべきである。より大きな体積流量は、流動床を不安定にすることがあり、粒子のより大きな摩耗をもたらし得る。このように反応器の設計及び反応条件に応じて、出発物質の粒径を調整してもよい。一般に、約15μm〜約300μmの粒径(d50)のCaFを提供するために、本プロセスにおいて少なくとも約25μmのd50を有する炭酸カルシウム粒子を使用することができる。CaCOの好ましい粒径としては、約25μm〜約700μm、より好ましくは約30〜約300μm、より好ましくは約40〜約150μmの範囲が挙げられる。
【0014】
好ましくは、炭酸カルシウム粒子は、少なくとも約90(重量)%の純度を有する。一実施形態では、炭酸カルシウム粒子は、10m/g未満、例えば0.1〜1m/gの比表面積(BET)を有する。比表面積(BET)は、Micromeritics GmbH,Aachen,GermanyからのMicromeritics ASAP 2012分析器を用いて決定することができる。
【0015】
好適な炭酸カルシウム粒子は市販されている。所望の粒径は、より大きな粒子を粉砕して得られるふるい分けされた画分から得ることができる。
【0016】
これらの炭酸カルシウム粒子は、流動床反応器内で流動床を形成し、ここでこれらはCaFに変換される。したがって、流動床の化学組成は、反応の過程において、炭酸カルシウムからフッ化カルシウムに向かって変化する。流動床は、反応開始時に炭酸カルシウム粒子からなることが好ましいが、他の粒子、好ましくは反応条件下で反応せず、生成したフッ化カルシウム粒子から分離可能である不活性粒子を含むことも企図される。このような粒子は、例えば、反応中の熱分布に影響を与えるために、又は粒子流の体積を制御するために使用されてもよい。
【0017】
ガス状HFを含むガスストリーム
炭酸カルシウム粒子は、ガス状HFを含有するガスストリームによって接触される。好ましくは、このガスストリームは、炭酸カルシウム粒子を浮遊させて流動床を形成する流動媒体でもある。しかしながら、HFを含有するガスストリームが、流動媒体の一部にすぎず、例えば1つ以上の他のガスストリームとの混合物として存在することも可能である。HFを含有する好ましいガスストリームとしては、1つ以上のフッ素化材料の焼却によって生成されるものが挙げられる。フッ素化材料としては、周囲条件(20℃、1013hPa)で固体、液体又はガス状である材料が挙げられる。
【0018】
好適なフッ素化材料としては、フッ素化炭化水素及び置換フッ素化炭化水素、すなわち、炭素、水素及びフッ素以外の原子を更に含有するフッ素化炭化水素が挙げられる。このようなその他の原子としては、塩素、窒素、酸素原子及びそれらの組み合わせが挙げられ得る。特定の実施形態において、フッ素化材料は、1つ以上のフッ素化ポリマー、好ましくは部分フッ素化ポリマーを含む。好適な部分フッ素化ポリマーは、1つ以上の炭素−炭素不飽和、1つ以上のフッ素及び1つ以上の水素原子を有するフッ素化オレフィン由来の繰り返し単位を含有する。このようなポリマーは、5,000g/モルを超える分子量を有してもよい。このようなポリマーは、典型的には固体である。部分フッ素化ポリマーの好適な例としては、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも65重量%フッ素化されているが、水素原子も含む骨格を有するコポリマーが挙げられる。好適な部分フッ素化フルオロポリマーの例としては、(i)1種以上の部分フッ素化モノマーを含む、(ii)1種以上の部分フッ素化モノマーと1種以上の過フッ素化モノマーとを含む、(iii)1種以上の非フッ素化モノマーと組み合わせて1種以上の過フッ素化又は部分フッ素化モノマーを含むポリマー及びコポリマーが挙げられる。過フッ素化モノマーの例としては、フッ素及び塩素原子を含有するが、水素原子を含有しないフッ素化C〜Cオレフィンが挙げられる。例としては、テトラフルオロエテン(TFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、2−クロロペンタフルオロプロペン、ジクロロジフルオロエテン、1,1−ジフルオロエテン、パーフルオロビニルエーテル(まとめてPVEと称される)及びパーフルオロアリルエーテル(まとめてPAEと称される)が挙げられる。好適なパーフルオロアリルエーテル及びビニルエーテルの例としては、次の一般式に対応するものが挙げられる。
CF=CF−(CF−O−Rf (I)
式(I)において、nは、0又は1を表す。Rfは、少なくとも1つのカテナリー酸素原子を含有する直鎖又は分枝鎖の環式又は非環式のパーフルオロ化アルキル残基を表す。Rfは、好ましくは最大8つ、又は最大6つの炭素原子、例えば1、2、3、4、5及び6つの炭素原子を含有することができる。Rfの典型的な例としては、1つの酸素原子が介在する直鎖、分枝鎖のアルキル残基と、2、3、4又は5つのカテナリーエーテル酸素を含有する直鎖又は分枝鎖のアルキル残基とが挙げられる。Rfの更なる例には、以下の単位のうちの1つ以上及びそれらの組み合わせを含有する残基が挙げられる:
−(CFO)−、−(CFCF−O)−、(−O−CF)−、−(O−CFCF)−、−CF(CF)−、−CF(CFCF)−、−O−CF(CF)−、−O−CF(CFCF)−、−CF(CF)−O−、−CF(CFCF)−O−。Rfの更なる例としては、−(CFr1−O−C;−(CFr2−O−C;−(CFr3−O−CF;−(CF−O)s1−C;−(CF−O)s2−C;−(CF−O)s3−CF;−(CFCF−O)t1−C;−(CFCF−O)t2−C;−(CFCF−O)t3−CF(式中、r1及びs1は、1、2、3、4、又は5を表し、r2及びs2は、1、2、3、4、5、又は6を表し、r3及びs3は、1、2、3、4、5、6、又は7を表し、t1は、1又は2を表し、t2及びt3は、1、2、又は3を表す)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
好適な非フッ素化コモノマーとしては、1−クロロエテン、1,1−ジクロロエテン、及びC〜Cオレフィン、例えばエテン(E)及びプロペン(P)が挙げられる。
【0020】
部分フッ素化モノマーの例としては、少なくとも1つの水素原子を含有するフッ素化オレフィンが挙げられる。このようなオレフィンは、1つ以上の酸素原子と1つ以上の塩素原子とを更に含有してもよい。部分フッ素化コポリマーの具体例としては、次のようなモノマーの組み合わせを有するコポリマー:VDF−HFP、TFE−P、VDF−TFE−HFP、VDF−TFE−PVE、TFE−HFP、E−TFE−HFP、TFE−PVE、E−TFE−PVE、及び、CTFE等の塩素含有モノマー由来の単位を更に含む前述のコポリマーのうちの任意のものが挙げられる。
【0021】
好ましい実施形態では、HF含有ガスは、フッ素化材料を焼却することによって得られる。フッ素化材料の焼却は、酸素の存在下、又は酸素を含有するガスの混合物(焼却ガス)の存在下で行われることが好ましい。出発物質及び反応条件に応じて、空気の酸素含有量は焼却ガスとして十分であることができるが、別の方法では、追加の酸素が添加されてもよい。フッ素化材料を焼却するために最適な条件は、試験反応によって実験的に決定されてもよい。
【0022】
焼却反応では、部分フッ素化材料は、典型的には、主としてCOとHFとHOとに変換される。焼却反応は、酸素及び適切な温度の存在下で自動的に開始する。しかしながら、焼却反応は、他の焼却剤によって又は電気的に、例えばスパークを発生させることによって、トリガーされてもよい。
【0023】
フッ素化材料と焼却ガスの割合、すなわちフッ素化材料の濃度は、生成されるHF含有ガスのHF含有量を決定するであろう。他のガスは、フッ素化材料が炭素、フッ素及び水素以外の原子を含有する場合に存在してもよい。例えば、塩素原子及び窒素原子は、存在する場合、HClガス及びガス状窒素酸化物の形成をもたらし得る。空気が焼却ガスとして用いられると、窒素酸化物もまた発生し得る。窒素酸化物の変換反応に及ぼす有害な作用は、観察されていない。しかしながら、排気処理ユニット内に窒素酸化物を保持させる必要がある。所望であれば、ガスを1つ以上の不活性ガス、例えば、限定されないが、窒素、ヘリウム、又は他の希ガスと混合することにより、ガスのHFの含有量を低くしてもよい。HF含有ガスのHF含有量は、0.5〜50%(体積パーセント)の量を含んでもよい。好ましくは、ガスストリーム中のHFの濃度(体積%)は、1〜30%、より好ましくは3〜15%である。好ましくは、フッ素化材料は、H及びFのほぼ等モルの量がフッ素化材料中に存在するように構成される。これは、フッ素含有量が低すぎる場合、他のフッ素化材料に混合することによって、又はフッ素原子の量が高すぎる場合に、非フッ素化炭化水素に混合することによって達成することができる。液体及びガス状のフッ素化又は非フッ素化材料を使用して、焼却されるフッ素化材料中のH:F比を調整してもよい。
【0024】
Oがガスストリーム中に存在し得るために、ガスストリームは、水性フッ化水素の形成を防止するために、水の凝縮を回避する温度及び圧力で保たれる。典型的には、ガスストリームは、100℃を超える、好ましくは120℃を超える温度で保たれる。フッ素化材料の焼却は、焼却反応器の温度が制御される必要があり得るように発熱性であり得る。
【0025】
本開示の一実施形態では、フッ素化材料は固体材料である。好ましくは、この焼却は、流動床反応器内で行われる。フッ素化材料は、流動床を形成するために、必要に応じて、適切な粒径を有するように粉砕されてもよい。好ましいフッ素化材料は、フッ素化ポリマー、より好ましくは部分フッ素化フルオロポリマーを含みか、又はこれからなる。焼却ガスは流動媒体として使用してもよく、固体粒子は流動床を形成してもよい。焼却反応器は、ニッケル含有量の高い(例えば、15〜25重量パーセント(重量%)のNi)、好ましくは、クロムの含有量が高い(例えば約18〜26重量%)鋼から作製されることが好ましい。しかしながら、例えば、液体又はガス状のフッ素化材料が用いられる場合、例えば、限定されないが、ロータリーキルン又はガス焼却炉などの、固定床反応器で焼却を行うこともできる。
【0026】
本開示の好ましい実施形態では、プロセスは、フッ化カルシウムを生成するためのフッ素化廃棄物材料の処理である。したがって、本開示の一実施形態では、プロセスは、フッ素化廃棄物材料、特に、部分フッ素化ポリマーを含む廃棄物材料をフッ素化カルシウムに変換するプロセスである。
【0027】
プロセス
フッ化カルシウム粒子を生成するプロセスを、更なる例証のために図1を参照することによって記述する。ガス状HFガスを含有するガスストリーム(1)は、入口(12)を通って、炭酸カルシウムとの反応が起こる反応器(3)内に供給される。この反応器は、本明細書において「フッ素固定反応器」とも呼ばれる。フッ素固定反応器(3)は、好ましくは、炭酸カルシウム粒子(反応器(3)内の黒点として表される)が、HFガスストリーム(1)によって形成されるか、又はHFガスストリームを含む流動媒体によって浮遊される、流動床反応器である。浮遊された炭酸カルシウム粒子は流動床を形成する。反応器内のガスストリームは、炭酸カルシウム粒子の床が流動化されるようになる、すなわち、粒子がガスストリームによって浮遊されるように設定されている。好ましくは、HF含有ガスストリーム(1)は、流動媒体として使用されるが、これは1つ以上の他の流動ガスと混合されてもよい。流動床反応器は、当該技術分野において既知の流動床反応器とすることができる。その寸法、設計及びガス流は、当該技術分野において既知であるような、及び例えば、D.Kunii,O.Levenspiel,H.Brenner,”Fluidization Engineering”,2nd edition,1991 Elsevier Inc.に記載されるような流動床として、粒子を維持するように最適化することができる。体積流量は、粒子を浮遊させて、それらを浮遊された状態で維持し、安定な流動床を達成するのに十分に高くするべきである。余りに大きな体積流量は、流動床を不安定にすることがあり、粒子の大きな摩耗ももたらし得る。
【0028】
HF含有ガスストリームは、少なくとも1つの出口(8)を介して固定反応器(3)の外に向けられ、ストリーム1’として反応器から離れる。ストリーム(1’)は、HFの一部又は全部が炭酸カルシウム粒子と反応するため、ストリーム(1)よりも低い量のHFを含有する。排出ガスストリーム(1’)は、図1に示すように、排気処理ユニット(9)に向けられてもよいし、又は、これは、排気処理ユニット(9)に向けられる前に、反応器(3)と同一であり得るか、若しくは異なる設計のものであり得る1つ以上の他のフッ素固定反応器に向けられてもよい。ガスストリーム(1’)を排気処理ユニット(9)に向ける前に1つ以上の更なるフッ素固定反応器に供給することにより、ガスストリームが排気処理ユニット(9)に向けられる前にフッ化カルシウムに更に変換されることによって、ガスストリーム中のHF含有量を更に低減させることができる。単一の固定反応器の代わりに、固定反応器のカスケードを使用することの別の利点は、HF含有ガスストリーム(1)を第1の反応器をバイパスする第2の固定反応器に向けてもよいことである。次いで、第1の反応器からのCaF粒子を収集することができ、HFガス(1)の製造をシャットダウンする必要なく、反応床を新しい炭酸カルシウム粒子で更新することができる。これにより、個々のフッ素固定反応器をバッチ的に運転する場合であっても、HF変換ユニットを連続走行させることができる。
【0029】
排気処理ユニット(9)は、1つ以上のクエンチユニットを備えてもよく、クエンチユニットでは、排気ガスが、水性塩基性溶液に曝されて、酸性残基を除去することができる。処理ユニットは、ガスストリーム及び有機ガスなどの他の不純物から固体粒子を除去する更なるユニットを備えてもよい。
【0030】
フッ素固定反応器(3)は、流動床を形成するための固体粒子に入る少なくとも1つの入口(11)を更に含む。この入口は、反応後に粒子を回収するために使用されてもよく、又は形成されたCaF粒子を除去するための異なる入口が設置される。典型的には、ガス入口は反応器の底部にあり、ガス出口は反応器の頭部にある。
【0031】
典型的には、固定反応器及びHFガス供給は、水の凝縮を回避するために100℃よりも高く、反応器の材料及びガス供給のための材料の使用温度よりも低く、かつ炭酸カルシウム粒子の分解(degradation:劣化)温度よりも低い温度に維持される。典型的な適した材料は、典型的には最高約200℃の使用温度を有するポリテトラフルオロエテン(PTFE)を含む。高温を使用する場合には、ニッケル含有量の高い鋼が使用され得ることが望ましい。好適な鋼としては、15〜25重量%のニッケル含有量を有し、好ましくは、約20〜30重量%の追加のクロム含有量を有する鋼が挙げられる。
【0032】
図1にも示される本開示の一実施形態では、HF含有ガス(1)は、フッ素化材料、好ましくは部分フッ素化ポリマーの焼却によって生成される。フッ素化材料(22)は、酸素の存在下で、焼却反応器(2)内で焼却される。酸素の存在下でのフッ素化材料(22)の焼却によって、HFガス含有ガスストリーム(1)が得られる。典型的には、ガスストリーム(1)は、HFとCOとHOとを焼却反応からの主要反応生成物として含む。HOは、プロセスに有害ではないが、ガス形状で保持されるべきである。COもプロセスに有害ではない。好ましい実施形態では、フッ素化材料は、粒子の形態の固体材料であり、より好ましくは、フッ素化材料は、1種以上の部分フッ素化ポリマーの粒子を含む。フッ素化材料は、それが固体入口(21)を通して反応器に供給される前に、必要に応じて、より小さな粒子に粉砕されてもよい。フッ素化材料が固体又は液体形態である場合、入口(21)は、典型的には、液体についてはポンプであり、個体粒子についてはジェット又はポンプである。焼却反応器は、焼却ガス又は焼却ガス混合物(24)のための少なくとも1つの入口(20)と、焼却反応で生成したHF含有ガス(1)を反応器の外に向けるための少なくとも1つの出口(23)とを更に有する。焼却反応器は、反応器内の温度を、焼却を可能にするのに必要なレベルまで持っていくように加熱することができる。典型的には、焼却反応器(2)は、少なくとも1つの加熱素子(27)を含む。焼却反応は発熱性であってもよく、反応器は1つ以上の冷却素子(26)を備えてもよく、これら冷却素子は、反応器壁を冷却するための外部要素であることが好ましい。
【0033】
一実施形態では、焼却反応器(2)は、流動床反応器である。しかしながら、液体又は固体又はガスの焼却反応において有用であることが知られている固定床反応器又は回転炉又は他の反応器を使用してもよい。焼却ガス(24)は流動媒体として使用してもよく、フッ素化材料(22)を含む粒子は流動床を形成してもよい。ガス流は、フッ素化材料(22)を含む粒子が浮遊され、反応器の流動床を形成するように設定される。典型的には、ガス入口(20)は反応器の底部にあり、ガス出口は反応器(23)の頭部にある。ガス状HFを含有するガスストリーム(1)は、出口(23)からフッ素固定反応器(2)の入口(12)に供給される。必要に応じて、これは、HF含有ガスストリーム(1)の温度を固定反応器(2)の運転温度に持っていくために、少なくとも1つの熱交換器ユニット(28)を通過させることができる。
【実施例】
【0034】
実施例1及び2
実施例1及び2で使用された設定は、図2に示されている。焼却ユニット(100)は、焼却反応器(101)を含んだ。反応器(101)は、1.4841鋼(19〜22重量%のNi含有量、22〜26重量%のCr含有量)から作製された縦型管状反応器であり、800mmの長さ及び32.4mmの内径を有した。これは、ジフルオロメタン(DFM)ガス流及び空気流用の入口、並びにパージ用窒素ガス用の入口を有した。反応器内を、外部の抵抗加熱素子により700℃に加熱した。反応器壁を外部冷却素子(103)により外側から冷却することができた。焼却反応器は、焼却反応器内で生成したHF含有ガスストリーム(1)を冷却素子(105)通過後にフッ素固定ユニット(200)に供給するための出口(104)を有した。フッ素固定ユニット(200)は、5つの同一の反応器(201)〜(205)(図2には、最初の3つの反応器だけ(201〜203)が示されている)のカスケードを含んだ。これらの反応器は流動床反応器であった。ガス入口は、反応器の底部にあった。ガスを、粒子が多孔板に落下することを防止するためにスクリーンによって保護された多孔ボーキサイト板を通して反応器内に供給した。反応器(201〜205)は、290mmの長さ(高さ)及び28mmの内径を有し、PTFE製の内張りを含んだ。各反応器は、図2で黒点で示された、100gのCaCOの床(45〜100μmの粒径、<10g/mの表面積(BET)、Scheruhn Industrie−Mineralien GmbH&Co,GermanyからのV/90型)を含んだ。粒子は、入口209を介して反応器に入れた(図2の反応器201についてだけ示されているが、各固定反応器は同じ入口を有した)。
【0035】
反応器(201)を出たガスストリーム1’を、第1の反応器(201)の頭部にある出口を介して、第2の反応器(202)の底部にある入口に供給した。同じ設定を、反応器カスケードの他の反応器(203〜205)にも適用した。反応器からの排気ガスを、別の反応器へ、又は排気処理ユニット(300)へのいずれかに供給することができた。反応器への及び反応器からのガス供給は、各反応器がガス供給を遮断しバイパスさせることができるように、いくつかの三方弁を含んだ。排気ユニット(9)では、ガスを塩基性水(KOHの溶液)でクエンチ(301)して、固体粒子用フィルタ(302)上に向けて、その後、イソプロパノール中KOH溶液で充填されたガラスビーズカラム(303)上に向けた。
【0036】
この実験のために、反応器システムを、先ず窒素でパージした。その後、反応器をそれらの運転温度に加熱した(焼却反応器を700℃に加熱し、フッ素固定反応器を150℃に加熱した)。次いで、フッ素化材料(ジフルオロメタン(DFM))及び空気(焼却ガス)を焼却反応器内に供給し、ここで、ジフルオロメタンを700℃の運転温度で焼却した。出口(104)を通して焼却反応器(101)を出る生成したHF含有ガスストリーム(1)を、これがフッ素固定ユニット(200)に入る前に、固定反応器内のPTFE内張りの使用温度のために、冷却ユニット(105)内で150〜200℃の温度まで冷却した。実験1では、固定ユニット(200)の第1の反応器(201)に入るガス(1)のHF含有量は、5体積%であり、実験2では、10体積%であった。実験1については、DFMの体積流量は10Nml/分であり、実験2では、体積流量は20Nml/分であった。空気の体積流量は、370ml/分であった。フッ素固定化カスケード中のHFガス流(1)を、粒子が浮遊され、安定な流動床を作り出すように調整した(約4〜16mm/秒の体積流量で)。固定反応器内のHFガスの保持時間は、0.1〜0.6秒であった。表1及び2に示した時間間隔の後、第1の固定反応器(201)へのガスの流入を閉じ、HF含有ガスストリーム(1)を直接反応器(202)に供給した。床を第1の反応器(201)から取り外して分析した。
【0037】
CaF粒子の粒径を、レーザー回折によって決定し、(d50)として表した。CILAS ALCATELからのCILAS HR850粒度計を用いた。CaF含有量(変換%)を、ISO 5439−1978に従って決定した。
【表1】
【表2】
【0038】
得られたCaF粒子の平均粒径は、50%未満の変換率については52μm(d50)であった。80%を超える変換率では、粒径は、32μm(d50)で安定な状態であった。
【0039】
実施例3
フッ素化ポリマーを焼却するための実験を、図1に示した焼却反応器(2)と同様な焼却反応器において行った。管状縦型焼却反応器(2)は、Ni含有鋼(1.4841鋼)から作製した。反応器は、800mmの長さ及び32.4mmの内径を有した。反応器は、焼却(24)ガスがそれを通って反応器に供給されるガス入口(20)の上に、ボーキサイトから作製された多孔支持構造(25)(孔の直径は約400μmであった)を含んだ。空気を焼却ガスとして使用した。反応器を、外部抵抗加熱(26)により550℃の温度まで加熱した。反応器への焼却ガスの流量は、18NI/分であった。テトラフルオロエテン−エテン(ETFE)コポリマー粒子を、フッ素化材料として使用した(粒径は約500〜1,000μmであった)。ETFE粒子を、2gのETFE/分に相当する4m/秒のジェットストリーム(21)によって反応器に供給した。ETFE粒子(22)はこれらの条件下で流動床を形成し、550℃の反応器温度で焼却した。生成したHF含有ガスストリーム(1)を、排気処理ユニット(9)に直接供給し、ここでイソプロパノール/KOHでクエンチし、pHの変化によってHF含有量を決定した。焼却反応器内で生成したHFガスストリーム(1)は、フッ素固定ユニットに向けられるのに好適であった。
図1
図2