特許第6865791号(P6865791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865791
(24)【登録日】2021年4月8日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】プリント基板及び予知方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/11 20060101AFI20210419BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20210419BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   H05K1/11 Z
   H05K3/00 T
   H05K3/46 N
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-130183(P2019-130183)
(22)【出願日】2019年7月12日
(65)【公開番号】特開2021-15903(P2021-15903A)
(43)【公開日】2021年2月12日
【審査請求日】2020年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雄大
【審査官】 齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−7851(JP,A)
【文献】 特開平4−223395(JP,A)
【文献】 特開平6−21630(JP,A)
【文献】 特開2005−44990(JP,A)
【文献】 特開2007−207897(JP,A)
【文献】 米国特許第7336502(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の一方の主面に形成され、当該主面に形成された他の配線から絶縁されたダミー電極と、を備えており、
前記基板には、前記ダミー電極に接続されたスルービア又はブラインドビアであるダミービアと、前記ダミービアとは異なり、かつ、スルービア又はブラインドビアである他のビアとが形成されており、
前記ダミービアは、前記他のビアよりも破断し易くなるように構成されている、
ことを特徴とするプリント基板。
【請求項2】
前記ダミービアの一方の端部は前記ダミー電極に接続され、
前記ダミービアの他方の端部は前記基板に形成されたグランドと接続され、
前記ダミー電極に接続され、前記ダミー電極が前記グランドと導通しているか否かを検出するセンサを更に備えている、
ことを特徴とする請求項1に記載のプリント基板。
【請求項3】
前記ダミービアは、内部空間を有する筒状の導体膜により構成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のプリント基板。
【請求項4】
前記ダミービアは、前記内部空間が密閉されており、
前記他のビアは、開放された内部空間を有する筒状の導体膜により構成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のプリント基板。
【請求項5】
前記ダミービアを構成する導体層の厚みは、前記他のビアを構成する導体層の厚みよりも薄い、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のプリント基板。
【請求項6】
前記ダミービアの直径は、前記他のビアの直径よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のプリント基板。
【請求項7】
前記基板には、熱源となる素子が実装されており、
前記素子から前記ダミービアまでの距離は、前記素子から前記他のビアまでの距離よりも短い、
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のプリント基板。
【請求項8】
前記基板は、複数の誘電体層を含み、
前記ダミービアが貫通する誘電体層の層数は、前記他のビアが貫通する誘電体層の層数よりも多い、
ことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のプリント基板。
【請求項9】
前記基板には、破断し易さが異なる2以上の前記ダミービアが形成されている、
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のプリント基板。
【請求項10】
請求項2〜9までの何れか1項に記載のプリント基板に形成された前記他のビアの破断を予知する予知方法であって、
前記ダミー電極が前記基板に形成されたグランドと導通しているか否かを判定する工程を含んでいる、
ことを特徴とする予知方法。
【請求項11】
請求項9に記載のプリント基板における前記他のビアの破断時期を予知する予知方法であって、
前記ダミービアとして前記基板に形成された各ビアの破断時期に基づいて、前記基板に形成された他のビアの破断時期を予知する工程を含んでいる、
ことを特徴とする予知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビアが形成された基板を備えたプリント基板と、このようなプリント基板に形成されたビアの破断を予知する予知方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、広く用いられているプリント基板は、1又は複数の誘電体層(例えば液晶ポリマー製)により構成された基板を備えており、当該基板には、複数のビアが形成されている(例えば非特許文献1参照)。これらの複数のビアは、基板に対して貫通孔又は非貫通孔を形成したうえで、その貫通孔又は非貫通孔の内壁に導体膜(例えば銅製)を形成することによって得られる。これらのビアは、基板の一対の主面の各々に形成された導体膜同士を短絡したり、基板の一方の主面に形成された導体膜と、基板の内層に形成された導体膜とを短絡したりする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Tsuneo Kobayashi et. al.,2000 Electronic Components and Technology Conference ,p.1658,2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1には、上述のようなプリント基板を実際に使用する場合、ビアが破断することによりビアの導通不良が生じ得ることが記載されている。このビアの破断の原因は、以下のように考えられる。
【0005】
プリント基板の基板は、外部環境の温度変化に応じて膨張又は収縮を繰り返す。このような膨張又は収縮に伴い、ビアを構成する導体膜には応力が繰り返し印加され、やがて、ビアを構成する導体膜の一部が破断する。この応力は、基板を構成する材料(例えば液晶ポリマー)と導体膜を構成する材料(例えば銅)との熱膨張係数が異なることに起因して発生する。
【0006】
本発明の一態様に係るプリント基板及び予知方法は、上述した課題に鑑みなされたものであり、その目的は、ビアが形成された基板を備えたプリント基板において、ビアの破断を予知することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るプリント基板は、基板と、前記基板の一方の主面に形成され、当該主面に形成された他の配線から絶縁されたダミー電極と、を備えており、前記基板には、前記ダミー電極に接続されたスルービア又はブラインドビアであるダミービアと、前記ダミービアとは異なり、かつ、スルービア又はブラインドビアである他のビアとが形成されており、前記ダミービアは、前記他のビアよりも破断し易くなるように構成されている。
【0008】
上記の構成によれば、前記ダミービアの破断を検知することによって、前記基板に形成された他のビア(前記ダミービア以外のビア)の破断を予知することができる。
【0009】
また、本発明の第2の態様に係るプリント基板は、上述した第1の態様において、前記ダミービアの一方の端部は前記ダミー電極に接続され、前記ダミービアの他方の端部は前記基板に形成されたグランドと接続され、前記ダミー電極に接続され、前記ダミー電極が前記グランドと導通しているか否かを検出するセンサを更に備えている。
【0010】
上記の構成によれば、前記センサの検出結果を参照して前記ダミービアの破断を検知することによって、前記基板に形成された他のビアの破断を予知することができる。
【0011】
また、本発明の第3の態様に係るプリント基板は、上述した第1の態様又は第2の態様において、前記ダミービアは、内部空間を有する筒状の導体膜により構成されている。
【0012】
上記の構成によれば、前記ダミービアの破断が生じ易くなる。したがって、前記他のビアが破断する前に前記他のビアの破断を予知できる確率が高くなる。
【0013】
また、本発明の第4の態様に係るプリント基板は、上述した第3の態様において、前記ダミービアは、前記内部空間が密閉されており、前記他のビアは、開放された内部空間を有する筒状の導体膜により構成されている。
【0014】
上記の構成によれば、前記ダミービアは、前記他のビアよりも破断し易くなる。したがって、前記他のビアが破断する前に前記他のビアの破断を予知できる確率が高くなる。
【0015】
また、本発明の第5の態様に係るプリント基板は、上述した第3の態様又は第4の態様において、前記ダミービアを構成する導体層の厚みは、前記他のビアを構成する導体層の厚みよりも薄い、ように構成されている。
【0016】
上記の構成によれば、前記ダミービアは、前記他のビアよりも破断し易くなる。したがって、前記他のビアが破断する前に前記他のビアの破断を予知できる確率が高くなる。
【0017】
また、本発明の第6の態様に係るプリント基板は、上述した第1の態様〜第5の態様のいずれかにおいて、前記ダミービアの直径は、前記他のビアの直径よりも小さい、ように構成されている。
【0018】
上記の構成によれば、前記ダミービアは、前記他のビアよりも破断し易くなる。したがって、前記他のビアが破断する前に前記他のビアの破断を予知できる確率が高くなる。
【0019】
また、本発明の第7の態様に係るプリント基板は、上述した第1の態様〜第6の態様のいずれかにおいて、前記基板には、熱源となる素子が実装されており、前記素子から前記ダミービアまでの距離は、前記素子から前記他のビアまでの距離よりも短い、ように構成されている。
【0020】
上記の構成によれば、前記ダミービアは、前記他のビアよりも破断し易くなる。したがって、前記他のビアが破断する前に前記他のビアの破断を予知できる確率が高くなる。
【0021】
また、本発明の第8の態様に係るプリント基板は、上述した第1の態様〜第7の態様のいずれかにおいて、前記基板は、複数の誘電体層を含み、前記ダミービアが貫通する誘電体層の層数は、前記他のビアが貫通する誘電体層の層数よりも多い。
【0022】
上記の構成によれば、前記ダミービアは、前記他のビアよりも破断し易くなる。したがって、前記他のビアが破断する前に前記他のビアの破断を予知できる確率が高くなる。
【0023】
また、本発明の第8の態様に係るプリント基板は、上述した第1の態様〜第8の態様のいずれかにおいて、前記基板には、破断し易さが異なる2以上の前記ダミービアが形成されている。
【0024】
上記の構成によれば、前記基板に形成された各前記ダミービアの破断時期から前記基板に形成された他のビア(ダミービア以外のビア)の破断時期を予知することが可能になる。
【0025】
また、本発明の第10の態様に係る予知方法は、上述した第2の態様〜第9の態様の何れかに形成された前記他のビアの破断を予知する予知方法であって、前記ダミー電極が前記基板に形成されたグランドと導通しているか否かを判定する工程を含んでいる。
【0026】
上記の方法によれば、前記基板に形成された他のビア(ダミービア以外のビア)の破断を予知することができる。
【0027】
また、本発明の第11の態様に係る予知方法は、上述した第9の態様における前記他のビアの破断時期を予知する予知方法であって、前記ダミービアとして前記基板に形成された各ビアの破断時期に基づいて、前記基板に形成された他のビアの破断時期を予知する工程を含んでいる。
【0028】
上記の方法によれば、前記基板に形成された他のビア(ダミービア以外のビア)の破断時期を予知することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一態様によれば、ビアが形成された基板を備えたプリント基板において、ビアの破断を予知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】(a)及び(b)の各々は、それぞれ、本発明の一実施形態に係るプリント基板の一部の平面図及び断面図である。
図2図1に示したプリント基板の第1の変形例の断面図である。
図3図1に示したプリント基板の第2の変形例の断面図である。
図4図1に示したプリント基板の第3の変形例の断面図である。
図5図1に示したプリント基板の第4の変形例の断面図である。
図6図1に示したプリント基板の第5の変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
〔プリント基板の構成〕
本発明の第1の実施形態に係るプリント基板10について、図1を参照して説明する。図1の(a)及び(b)の各々は、それぞれ、プリント基板10の一部の平面図及び断面図である。図1の(b)は、図1の(a)に示したA−A’線(スルービアTV1,TV2の中心軸を通る直線)に沿った断面における断面図である。
【0032】
図1の(b)に示すように、プリント基板10は、誘電体層11,12,13、導体層111,112,121,122,131,132、及び樹脂層14,15により構成された基板と、複数のスルービアTV1,TV2,・・・と、シール部材Sa,Sbと、を備えている。すなわち、本実施形態において、プリント基板10は、多層基板である。なお、本実施形態では多層基板であるプリント基板10を用いて本発明の一態様について説明するが、プリント基板10を構成する基板は、単一の誘電体層により構成された単層基板であってもよい。
【0033】
プリント基板10は、RFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)などを実装可能な高周波回路基板である。以下において、導体層111,132のことをプリント基板10の表層とも称し、導体層112,121,122,131のことをプリント基板10の内層とも称する。
【0034】
誘電体層11,12,13は、誘電体製の板状又は層状の部材である。誘電体層11,12,13を構成する誘電体は、限定されるものではなく、実装するRFICの動作帯域における損失の大きさなどを考慮して適宜選択することができる。誘電体層11,12,13を構成する誘電体の一例としては、液晶ポリマーや、石英や、ガラスエポキシ樹脂や、ポロテトラフルオロエチレンに代表されるフッ素樹脂などが挙げられ、本実施形態では、液晶ポリマーを採用している。
【0035】
導体層111,112は、誘電体層11の一対の主面の各々にそれぞれ形成されている層状部材である。導体層111,112の各々を構成する導体は、限定されるものではないが、電気抵抗率が小さな金属であることが好ましい。導体層111,112の各々を構成する導体の一例としては、銅及びアルミニウムが挙げられ、本実施形態では、銅を採用している。
【0036】
導体層121,122は、誘電体層12の一対の主面の各々にそれぞれ形成されている点を除けば導体層111,112と同様に構成されている。また、導体層131,132は、誘電体層13の一対の主面の各々にそれぞれ形成されている点を除けば導体層111,112と同様に構成されている。したがって、ここでは、導体層121,122,131,132に関する詳しい説明を省略する。
【0037】
樹脂層14は、誘電体層11の導体層112または誘電体層11と、誘電体層12の導体層121または誘電体層12との間に介在するように形成された層状部材である。樹脂層14を構成する樹脂は、硬化することによって導体層112または誘電体層11と導体層121または誘電体層12とを接着することができる樹脂であれば限定されるものではない。また、樹脂層14を構成する樹脂は、紫外線を照射することによって硬化する樹脂であってもよいし、加熱することによって硬化する樹脂であってもよいし、大気中に所定の時間放置することによって硬化する樹脂であってもよい。樹脂層14を構成する樹脂の一例としては、エポキシ樹脂が挙げられ、本実施形態ではエポキシ樹脂を採用している。
【0038】
樹脂層15は、誘電体層12の導体層122と、誘電体層13の導体層131との間に介在するように形成されている点を除けば樹脂層14と同様に構成されている。したがって、ここでは、樹脂層15に関する詳しい説明を省略する。
【0039】
(配線及びグランドパターン)
プリント基板10の一方の主面を構成する導体層111は、まず、誘電体層11の一方の主面の全体に形成される。その後、導体層111の一部を所定の形状に除去する(すなわちパターニングする)ことによって、誘電体層11の一方の主面には、導体層111が残された領域と、導体層が除去された領域とが形成される。導体層111が残された領域は、言い換えれば導体パターンであり、その形状に応じて配線として機能したり、グランド層として機能したり、電極として機能したりする。具体的には、図1の(a)及び(b)に示すように、導体層111はパターニングされ、ダミー電極DEと、配線L1と、が形成されている。また、図1には図示していないが、導体層111はパターニングされ、グランド層が形成されていてもよい。図1の(a)及び(b)に示すように、ダミー電極DEと、配線L1とは、離間されるとともに絶縁されている。
【0040】
プリント基板10の他方の主面を構成する導体層132は、導体層111と同様に、誘電体層13の一方の主面の全体に形成され、その後、パターニングされている。その結果、導体層132はパターニングされ、パッドPと、グランドパターンGとが形成されている。パッドPとグランドパターンGとは、アンチパッドAP9により離間されるとともに絶縁されている。
【0041】
導体層112は、誘電体層11の他方の主面の全体に形成されており、導体層121,122の各々は、それぞれ、誘電体層12の一方の主面及び他方の主面の各々の全体に形成されており、導体層131は、誘電体層13の他方の主面の全体に形成されている。プリント基板10の表層を構成する導体層111,132と同様に、プリント基板10の内層を構成する導体層112,121,122,131の各々もパターニングされている。導体層112,121,122,131の残された領域である導体パターンは、導体層111,132と同様に、その形状に応じて配線として機能したり、グランド層として機能したり、電極として機能したりする。したがって、ここでは、導体層112,121,122,131をパターニングした結果として得られた導体パターンについての説明は省略する。なお、図1の(b)に示すように、導体層112はパターニングされ、グランド層とアンチパッドAP1,AP2とが形成されており、導体層121はパターニングされ、グランド層とアンチパッドAP3,AP4とが形成されており、導体層122はパターニングされ、グランド層とアンチパッドAP5,AP6とが形成されており、導体層131はパターニングされ、配線L2と、グランド層と、アンチパッドAP7,AP8とが形成されている。なお、図1の(b)においては、導体層112,121,122,131をパターニングすることによって形成されるグランドパターンに対して符号を付していない。なお、該グランドパターンの形状及び位置は、適宜設計することができるが、例えば、平面視した場合において、グランドパターンGと重なる位置に形成することができる。
【0042】
(スルービアTV1,TV2)
上述したようにプリント基板10は、複数のスルービアTV1,TV2,・・・を備えている。スルービアTV1は、ダミービアの一例であり、スルービア2,・・・の各々は、他のビアの一例である。なお、図1の(a)及び(b)には、複数のスルービアTV1,TV2,・・・のうちスルービアTV1,TV2のみを図示している。以下では、スルービアTV1,TV2を用いてダミービア及び他のビアについて説明する。
【0043】
スルービアTV1,TV2は、樹脂層14,15を用いて接着したあとの誘電体層11,12,13に対してスルーホールTH1,TH2を形成し、スルーホールTH1,TH2の内壁に導体膜を形成することによって得られる。すなわち、スルービアTV1,TV2は、導体製の筒状部材である。スルービアTV1,TV2の各々を構成する導体は、限定されるものではないが、電気抵抗率が小さな金属であることが好ましい。スルービアTV1,TV2の各々を構成する導体の一例としては、銅及びアルミニウムが挙げられ、本実施形態では、銅を採用している。スルービアTV1,TV2は、導体製の筒状部材としたが、それに限らない。スルーホールTH1,TH2に導体を充填した円柱部材であってもよい。また、スルービアTV1,TV2としたが、それに限らない。非貫通孔を形成した後に形成されるブラインドビアでもよい。
【0044】
スルービアTV1は、プリント基板10の一方の主面に形成された導体パターンであるダミー電極DEと、プリント基板10の他方の主面に形成された導体パターンであるグランドパターンGとを電気的に接続する。なお、図1の(b)に示すように、スルービアTV1は、プリント基板10の内層に形成された導体パターン(導体層112,121,122,131をパターニングすることによって得られる導体パターン)であるグランドパターンとは、アンチパッドAP1,AP3,AP5,AP7により絶縁されている。
【0045】
スルービアTV2は、プリント基板10の一方の主面に形成された導体パターンである配線L1と、プリント基板10の内層に形成された配線L2(導体層131をパターニングすることによって得られる導体パターン)と、プリント基板10の他方の主面に形成された導体パターンであるパッドPとを電気的に接続する。なお、図1の(b)に示すように、スルービアTV2は、プリント基板10の内層に形成された導体パターンのうち導体層112,121,122,131をパターニングすることによって得られる導体パターンであるグランドパターンとは、アンチパッドAP2,AP4,AP6,AP8により絶縁されている。
【0046】
外部環境の温度変化に応じてプリント基板10が膨張又は収縮を繰り返した場合に、スルービアTV1は、スルービアTV2,・・・よりも破断し易くなるように構成されている。プリント基板10が膨張又は収縮を繰り返した場合、スルービアTV1,TV2,・・・を構成する導体膜には応力が繰り返し印加され、やがて、スルービアTV1,TV2,・・・の一部が破断する。この応力は、プリント基板10を構成する誘電体層11,12,13の材料(本実施形態では液晶ポリマー)と、スルービアTV1,TV2,・・・を構成する材料(本実施形態では銅)との熱膨張係数が異なることに起因して発生する。
【0047】
本実施形態では、スルービアTV1がスルービアTV2,・・・よりも破断し易くなるために、シール部材Sa,Sbを用いてスルービアTV1の内部空間を密閉している。具体的には、スルービアTV1の一方の端部に形成された開口をシール部材Saにより封止し、スルービアTV1の他方の端部に形成された開口をシール部材Sbにより封止している。シール部材Sa,Sbの各々は、樹脂製の層状部材である。シール部材Sa,Sbの各々は、平面視した場合にスルービアTV1の端部に形成された開口を包含する領域に、硬化していない樹脂をパターニングしたうえで、パターニングした樹脂を硬化することによって得られる。
【0048】
このようにシール部材Sa,Sbを用いて密閉されたスルービアTV1は、外部環境の温度変化に応じて内部空間の圧力が変動する。したがって、内部空間が開放されているスルービアTV2,・・・と比較して、破断し易い。したがって、スルービアTV1の破断を検知することによって、スルービアTV2,・・・の破断を予知することができる。
【0049】
スルービアTV1が破断しているか否かは、ダミー電極DEとグランドパターンGとの間の導通の有無あるいは抵抗値を測定することによって、以下のように判定することができる。スルービアTV1が破断していない場合、ダミー電極DEとグランドパターンG2との間の抵抗値は、スルービアTV1を構成する導体膜の厚さと、スルービアTV1の形状とに応じて定まる値となる。一方、スルービアTV1が完全に破断している場合、ダミー電極DEとグランドパターンGとの間の抵抗値は、測定可能範囲外の値となる。また、スルービアTV1の一部が破断している場合、ダミー電極DEとグランドパターンGとの間の抵抗値は、スルービアTV1が破断していない場合よりも高くなる。
【0050】
なお、ダミー電極DEとグランドパターンGとの間の抵抗値を測定する方法は、限定されるものではない。例えば、テスターを用いてダミー電極DEとグランドパターンG2との間の抵抗値を直接測定することもできる。
【0051】
また、プリント基板10の一部にコネクタを設けており、そのコネクタを構成する1つの端子にダミー電極DEを接続し、そのコネクタを構成する別の端子にグランドパターンGを接続し、デジタルボルトメータを用いてこれらの端子間の抵抗値を測定することもできる。
【0052】
なお、テスター及びデジタルボルトメータは、センサの一例であり、手動により制御されていてもよいし、コンピュータにより実行されるプログラム(ソフトウェア)により制御されていてもよい。このように、センサの検出結果を参照してスルービアTV1の破断を検知することによって、スルービアTV2,・・・の破断を予知することができる。
【0053】
また、本実施形態では、上述したように樹脂製のシール部材Sa,Sbを採用している。しかし、シール部材Sa,Sbは、半田製であってもよい。半田製のシール部材Sa,Sbは、樹脂製のシール部材Sa,Sbに比べて、内部空間の密閉度を高めることができる。また、半田は、樹脂に比べて硬いため、内部空間において生じ得る容積の変化を低減することができる。
【0054】
〔第1の変形例〕
プリント基板10の第1の変形例であるプリント基板10Aについて、図2を参照して説明する。図2は、プリント基板10Aの断面図である。なお、図2においては、アンチパッドAP1〜AP9の図示を省略している。
【0055】
プリント基板10Aは、図1に示したプリント基板10をベースにして、一方の主面にIC用電極ICEと、図2に図示していない他のIC用電極とが、更に形成されており、且つ、RFICを更に備えている。RFICは、IC用電極ICE、及び、図2に図示していない他のIC用電極にバンプを用いて実装されている。
【0056】
IC用電極ICE、及び、図2に図示していない他のIC用電極は、ダミー電極DE及び配線L1と同様に、導体層111をパターニングすることによって形成される。
【0057】
RFICは、熱源となる素子の一例である。
【0058】
図2に示すように、RFICからスルービアTV1までの距離は、RFICからスルービアTV2までの距離よりも短い。すなわち、スルービアTV1は、スルービアTV2よりもRFICが発熱することによる温度変化の影響を大きく受ける位置に形成されている。
【0059】
プリント基板10Aにおいて、スルービアTV1は、スルービアTV2よりも破断し易くなる。したがって、スルービアTV2が破断する前にスルービアTV2の破断を予知できる確率が高くなる。
【0060】
〔第2の変形例〕
プリント基板10の第2の変形例であるプリント基板10Bについて、図3を参照して説明する。図3は、プリント基板10Bの断面図である。なお、図3においては、アンチパッドAP1〜AP9の図示を省略している。
【0061】
プリント基板10Bは、図1に示したプリント基板10をベースにして、スルービアTV1を構成する導体層の厚さT1を薄く、スルービアTV2を構成する導体層の厚さT2を厚く変形することによって得られる。すなわち、厚さT1は、厚さT2よりも薄い。
【0062】
プリント基板10Bにおいて、スルービアTV1は、スルービアTV2よりも破断し易くなる。したがって、スルービアTV2が破断する前にスルービアTV2の破断を予知できる確率が高くなる。
【0063】
〔第3の変形例〕
プリント基板10の第3の変形例であるプリント基板10Cについて、図4を参照して説明する。図4は、プリント基板10Cの断面図である。なお、図4においては、アンチパッドAP1〜AP9の図示を省略している。
【0064】
プリント基板10Cは、図1に示したプリント基板10をベースにして、スルービアTV1の直径D1を小さく、スルービアTV2の直径D2を大きく変形することによって得られる。すなわち、直径D1は、直径D2よりも小さい。
【0065】
プリント基板10Cにおいて、スルービアTV1は、スルービアTV2よりも破断し易くなる。したがって、スルービアTV2が破断する前にスルービアTV2の破断を予知できる確率が高くなる。
【0066】
〔第4の変形例〕
プリント基板10の第4の変形例であるプリント基板10Dについて、図5を参照して説明する。図5は、プリント基板10Dの断面図である。なお、図5においては、アンチパッドAP1〜AP9の図示を省略している。
【0067】
プリント基板10Dは、図1に示したプリント基板10をベースにして、スルービアTV2をブラインドビアBV2に変更することによって得られる。すなわち、ブラインドビアBV2は、他のビアの一例である。スルービアTV2は、貫通する基板の総数が3層だったのに対し、ブラインドビアBV2は、貫通する基板の層数が2層である。具体的には、ブラインドビアBV2は、誘電体層11,12を貫通するものの誘電体層13の内部には至らないように形成されている。したがって、スルービアTV1が貫通する誘電体層の層数は、ブラインドビアBV2が貫通する誘電体層の層数よりも多い。
【0068】
その結果、外部環境の温度変化に応じてプリント基板10Dが膨張又は収縮した場合に生じ得るスルービアTV1の全長(中心軸に沿った方向の長さ)の変化量は、ブラインドビアBV2の全長の変化量よりも大きくなる。結果として、スルービアTV1の端部に掛かり得る応力は、ブラインドビアBV2の端部に掛かり得る応力よりも大きくなる。
【0069】
このように、プリント基板10Dにおいて、スルービアTV1は、ブラインドビアBV2よりも破断し易くなる。したがって、ブラインドビアBV2が破断する前にブラインドビアBV2の破断を予知できる確率が高くなる。
【0070】
〔第5の変形例〕
プリント基板10の第5の変形例であるプリント基板10Eについて、図6を参照して説明する。図6は、プリント基板10Eの断面図である。なお、図6においては、アンチパッドAP1〜AP9の図示を省略している。
【0071】
プリント基板10Eは、図1に示したプリント基板10をベースにして、プリント基板10のスルービアTV1及びダミー電極DEの各々をスルービアTV1a及びダミー電極DEaとして、更に、スルービアTV1b及びダミー電極DEbを追加することによって得られる。すなわち、プリント基板10Eにおいては、誘電体層11,12,13の各々に、スルービアTV1a及びスルービアTV1bが形成されており、且つ、一方の主面にダミー電極DEa及びダミー電極DEbが形成されている。なお、ダミー電極DEaは、スルービアTV1aに電気的に接続されており、ダミー電極DEbは、スルービアTV1bに電気的に接続されている。プリント基板10Eにおいて、スルービアTV1a及びスルービアTV1bは、ダミービアの一例であり、ダミー電極DEa及びダミー電極DEbは、ダミー電極の一例であり、スルービアTV2は、他のビアの一例である。
【0072】
スルービアTV1a、スルービアTV1b、及びスルービアTV2を比較した場合、各々の直径D1a,D1b,D2は、D1a=D1b<D2であり、各々を構成する導体膜の厚さT1a,T1b,T2は、T1b<T1a=T2である。したがって、スルービアTV1a、スルービアTV1b、及びスルービアTV2を比較した場合、直径D2及び厚さT2がともに最大であるスルービアTV2が最も破断しにくい。また、直径D1及び直径D2が等しいスルービアTV1a及びスルービアTV1bを比較した場合、厚さT1aが厚さT1bを上回るスルービアTV1aがスルービアTV1bよりも破断しにくい。すなわち、スルービアTV1bが最も破断しやすく、スルービアTV1aが次に破断しやすく、スルービアTV2が最も破断しにくい。
【0073】
プリント基板10Eにおいて、スルービアTV1a及びスルービアTV1bの破断時期からスルービアTV2の破断時期を予知することが可能になる。
【0074】
なお、スルービアTV1a、スルービアTV1b、及びスルービアTV2において破断のし易さを異ならせる方法は、上記の方法に限定されるものではなく、シール部材Sa,Sbを用いるか否か、各スルービアを構成する導体膜の厚さ、各スルービアの直径、及び、各スルービアが貫通する基板の総数を適宜組み合わせることによって異ならせることができる。
【0075】
〔検知方法〕
また、本発明の範疇には、上述したプリント基板10,10A,10B,10C,10D,10Eの何れかに形成されたスルービアTV2の破断を予知する予知方法も含まれる。ここでは、プリント基板10を例にして、本発明の一態様に係る予知方法について説明する。本予知方法は、ダミー電極DEがグランドパターンGと導通しているか否かを判定する工程を含んでいる。
【0076】
本予知方法によれば、スルービアTV2の破断を予知することができる。
【0077】
なお、ダミー電極DEと導通しているか否かを判定される対象となるグランドパターンは、プリント基板10の表層(言い換えれば他方の主面)に形成されたグランドパターンGに限定されるものではなく、スルービアTV1の他方の端部と導通しているグランドパターンであればプリント基板10の内層に形成されたグランドパターンであってもよい。
【0078】
また、プリント基板10Eに形成されたスルービアTV2の破断を予知する予知方法は、スルービアTV1a及びスルービアTV1bの一方又は両方の破断時期に基づいてスルービアTV2の破断時期を予知する工程を含んでいる。
【0079】
本予知方法によれば、スルービアTV2の破断時期を予知することができる。
【0080】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
10,10A,10B,10C,10D,10E プリント基板
11,12,13 誘電体層
111,112,121,122,131,132 導体層
14,15 樹脂層
TH1,TH2 スルーホール
TV1 スルービア(ダミービア)
Sa,Sb シール部材
TV2 スルービア(他のビア)
BV2 ブラインドビア(他のビア)
AP1〜AP11 アンチパッド
DE ダミー電極
L1,L2 配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6