【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年9月19日 SCIENTIFIC REPORTS 9、Article number:13595、2019年にて発表
【文献】
HANNAFON, B. N. et al.,Plasma exosome microRNAs are indicative of breast cancer,Breast Cancer Research,2016年 9月 8日,vol.18, Article number:90,pp.1-14
【文献】
岡崎勲 ほか,コラゲナーゼから肝線維化と肝癌を考える,G. I. Research,2006年,Vol.14, No.6,pp.543-551
【文献】
ERBES, T. et al.,Feasibility of urinary microRNA detection in breast cancer patients and its potential as an innovative non-invasive biomarker,BMC Cancer,2015年 3月28日,Vol.15, No.193,pp.1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、大きく分けて3つの態様がある。
第一の態様は、対象の尿から調製されたエクソソーム調製物中の、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)を測定する工程(A1)を含む、乳がん評価方法である。第一の態様は、対象の尿から調製されたエクソソーム調製物中の、マイクロRNA21(miR21)を測定する工程(B1)を含むことが好ましい。
【0014】
第二の態様は、対象の尿から調製されたエクソソーム調製物中の、マイクロRNA21(miR21)を測定する工程(B1)を含む、乳がん評価方法である。
第三の態様は、エクソソーム調製試薬またはエクソソーム検出試薬と、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)測定試薬とを含む、乳がん評価用の尿検査キットである。
【0015】
〈対象〉
本発明における対象は、通常ヒトである。
〈尿〉
本発明に用いる尿は、対象から採取された通常の尿であればよく、採取の時刻やタイミングは制限されない。尿道や外陰部からの細菌の混入を防ぐため、中間尿が好ましく、体動や運動の影響が除外され、濃縮尿であるため感度がよいことから、起床後最初に採取した早朝尿が特に好ましい。
採取後の尿は、すぐに工程(A1)に供してもよいし、保存してから供してもよい。尿の保存は通常、−80℃クラスの超低温層で行う。
工程(A1)に供する尿の量は、MMP−1およびmiR21の測定ができれば特に制限されないが、2.0mL〜15mLが好ましい。
【0016】
〈工程(A1)〉
前記工程(A1)は、対象の尿中エクソソームに含まれるマトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)を測定する工程である。
採取後の尿は、通常、赤血球や白血球、尿酸結晶、細胞、細菌などの固形物を除くために、工程(A1)を行う前に遠心分離を行う。工程(A1)を行う前に、MMP−1の測定に影響しない範囲で、フィルターろ過、濃縮、希釈等の前処理を行ってもよい。
【0017】
〈測定〉
本発明において、測定、または測定するとは、相対存在量または絶対存在量を求めることを意味する。
【0018】
〈エクソソーム〉
エクソソームは細胞から分泌される、直径が20nm〜200nmの膜小胞である。
工程(A1)は、エクソソームの存在を確認できることから、尿からエクソソームを分離、精製したエクソソーム調製物を調製し、そのエクソソーム調製物中のMMP−1を測定するのが好ましい。
【0019】
尿からエクソソーム調製物を調製する場合、その方法は、特に制限されず、例えば超遠心分離や限外ろ過、ゲル濾過、HPLC、フィルター法、ポリマーを用いた沈殿法、抗体やレクチンを利用してビーズやカラムに吸着させる方法などが挙げられ、これらを応用した市販品としてExosome Isolation Kit、Total Exosome Isolationシリーズ、ExoTrap
TM、PureExo
TM、DIAG Exo
TM等の市販のエクソソーム分離、精製用のスピンカラム、キット等が挙げられる。本発明においてエクソソーム調製物を調製するためには、操作が簡便で、エクソソームの純度が高いことから、ビーズ法を用いることが好ましく、特にMyltenyi社製のExosome Isolation Kitを用いることが好ましい。
【0020】
エクソソームは、その形状が丸いこと、および大きさを確認することが好ましく、その手段としては例えば電子顕微鏡や動的光散乱法が挙げられる。エクソソームの大きさだけでなく形状も目視で確認できることから、電子顕微鏡が特に好ましい。
【0021】
エクソソームは、エクソソーム特異的タンパク質の存在を確認することが好ましく、その手段としては、例えばウエスタンブロッティングが挙げられる。エクソソーム特異的タンパク質としては、例えばエクソソーム表面に発現するテトラスパニンファミリー(CD63、CD9、CD81)やエクソソーム内に存在するHSP70やRabタンパク質ファミリーが挙げられる。中でもテトラスパニンファミリーを用いることが好ましく、特にCD63が好ましい。
【0022】
〈マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)〉
本明細書においては、MMP−1、mmp−1とも称する。
MMP−1は、コラゲナーゼ1とも呼ばれる、コラーゲンタイプI、II、IIIを分解するプロテアーゼであり、N末から3:1の部位でコラーゲン分子を切断する。MMP−1は、がん細胞周囲のコラーゲンを分解することにより、がん細胞が増殖したり運動したりするスペースを作るといわれており、がん浸潤における細胞外マトリックス(Extra Cellular Matrix、ECM)分解の中心的な役割を果たす酵素である。
【0023】
MMP−1は、まず不活性な潜在型MMP−1(ProMMP−1)として発現し、ProMMP−1のプロペプチド部分が切断されて54kDaの活性型MMP−1となる。ProMMP−1、活性型MMP−1と、MMP−1のインヒビターであるマトリックスメタロプロテアーゼ阻害因子(Tissue Inhibitor of metalloproteinases、TIMPs)が複合体を形成することにより、MMP−1の活性は制御される。
【0024】
本発明において測定するMMP−1は活性型MMP−1である。
本発明においてMMP−1を測定する方法は、MMP−1タンパク質を測定できる方法であれば特に制限されず、例えば、ウエスタンブロッティング、ELISA等の抗MMP−1抗体を用いる方法、液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法(LC−MC/MC)、multiple reaction monitorting(MRM)等の質量分析を用いる方法が挙げられる。MMP-1を測定する方法は、操作が簡便であることから、抗MMP−1抗体を用いるウエスタンブロッティングが好ましく、抗MMP−1ウサギポリクローナル抗体であるウサギ由来抗MMP−1抗体(abcam社製、NO.ab134184)を用いたウエスタンブロッティングにより54kDa付近に検出されるバンドの濃さから測定する方法が特に好ましい。
MMP−1の測定値としては、MMP−1タンパク質の発現量をCD63タンパク質の発現量で除した値(MMP−1/CD63)を用いることが好ましい。
【0025】
〈工程(B1)〉
前記工程(B1)は、対象の尿中エクソソームに含まれるマイクロRNA21(miR21)を測定する工程である。
採取後の尿は、通常、赤血球や白血球、尿酸結晶、細胞、細菌などの固形物を除くために、工程(B1)を行う前に遠心分離を行う。工程(B1)を行う前に、MMP−1の測定に影響しない範囲で、フィルターろ過、濃縮、希釈等の前処理を行ってもよい。
工程(B1)に用いる尿は、工程(A1)に用いる尿と同一の対象から得られたものであればよく、採取の時期は制限されない。試験を簡便に行うために、工程(B1)に用いる尿は、工程(A1)に用いる尿と同時に採取されたものであることが好ましい。
【0026】
工程(A1)と工程(B1)を行う順序は制限されず、2つの工程を同時に行ってもよい。
MMP−1発現量およびmiR21発現量を用いる乳がん評価の感度は95%であったことから、工程(A1)に加えて工程(B1)を行うことが好ましい。これにより、さらに高確度で乳がんを評価できる。
【0027】
MMP−1の発現量に変化がある場合、既存の情報から肺がん、前立腺がん、肝細胞がん等の疾病も疑われるが、MMP−1発現量に加えてmiR21発現量を測定することにより、他の疾病よりも優先して乳がんを疑うことが可能になる。
【0028】
〈マイクロRNA21(miR21)〉
マイクロRNA21(本明細書においてはmiR21、miR−21、miRNA21、hsa−mir−21、MIR21、MIRN21、mir−21、mir21とも称する)は、MIR21遺伝子によってコードされているマイクロRNAである。
【0029】
Pri−mir21は核内においてDroshaによって切断され、Pre−mir21を生成する。Pre−mir21はその後、細胞質基質においてDicerによって切断され、低分子の成熟2本鎖RNAへとなるが、片方の鎖のみがプロセッシングを受けて成熟miR21となり、もう片方の鎖は次第に減少していく。
【0030】
工程(B1)におけるmiR21は、成熟miR21を意味する。成熟miR21としては、例えば、ヒトのmiR21は、miRBase ID:hsa-miR-21-5p、miRBase Accession Number:MIMAT0000076、配列:UAGCUUAUCAGACUGAUGUUGAであるもの、miRBase ID:hsa-miR-21-3p、miRBase Accession Number:MIMAT0004494、配列:CAACACCAGUCGAUGGGCUGUであるものが挙げられ、少なくとも一つを測定すればよい。
【0031】
本発明においてmiR21を測定する方法は、miR21を測定できる方法であれば特に制限されず、例えば、定量RT−PCRが挙げられる。miR21を測定する方法は、操作が簡便であることから、マイクロRNAからcDNAを逆転写反応により合成し、そのcDNAを鋳型とする定量RT−PCRが好ましく、miR−21 Assay(Applied Biosystems社製)を用いる定量RT-PCRがより好ましい。
【0032】
miR21の測定値としては、定量RT-PCRにおける乳がん患者または健常人の個々のmiR21のCT(Threshold Cycle)値から、健常人全員でのmiR21のCT値の平均値を差し引いて算出したΔCTから求めた2Δ
CTの値(2のΔCT乗)を用いることが好ましい。
【0033】
〈乳がん〉
本発明における乳がんとは、乳腺組織に発生したがんである。また、早期乳がんとは、一般的には転移のない乳がんをいう。American Joint Committee on Cancer(AJCC)によるTumor−Lymph−metastasis(TNM)分類に従って行った病期分類によるステージ0またはステージIの乳がんは、早期乳がんの中でも初期の乳がんであり、従来の乳がん検査方法での発見が難しい乳がんである。
【0034】
〈乳がん評価方法〉
本発明の乳がん評価方法は、人体等の対象から収集された試料(尿)を用いて分析を行う方法であり、対象が人体である場合であっても、人間を診断する方法(医療目的で人間の病状や健康状態等の身体状態または精神状態について判断する工程を含む方法)を含まない。本発明の乳がん評価方法は、医師が対象の乳がんについて診断を行い、適切な処置を行うための判断材料となる検査結果を提供するものである。
【0035】
すなわち、本発明の第一の態様は、対象の尿中エクソソームに含まれるマトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)を測定する工程(A1)を含む、乳がんに関するデータを提供する、乳がんに関する検査方法でもある。
【0036】
本発明は、対象の尿中エクソソームに含まれるマトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)を測定する工程(A1)を含む、乳がんに罹患している可能性を示すデータを提供する、乳がんに関する検査方法であってもよい。
【0037】
本発明の第二の態様は、対象の尿中エクソソームに含まれるマイクロRNA21(miR21)を測定する工程(B1)を含む、乳がんに関するデータを提供する、乳がんに関する検査方法でもある。
【0038】
本発明における乳がん評価とは、対象における乳がん罹患の推定、または対象における乳がんに対する治療効果の推定を含む意味であり、好ましくは対象における乳がん罹患の推定を意味する。また、前記乳がん評価は、既に評価又は診断された乳がんを継続的にモニタリングする場合、及び、既に評価又は診断された乳がんを再度確認的に評価する場合も含む。
【0039】
前記乳がん評価方法は、簡便で安価に行うことができることから、マンモグラフィー、超音波検査、または専門の医師による視診もしくは触診の前段階として用いることが好ましい。前記乳がん評価方法は、前記乳がん評価方法により乳がん罹患が推定された場合に、専門の医師による視診、触診さらにはマンモグラフィー、超音波検査を推奨するために用いることがより好ましい。
【0040】
前記乳がん評価方法は、MMP−1タンパク質の発現量をCD63タンパク質の発現量で除した値(MMP−1/CD63)が特定値以上であればMMP−1陽性(positive)、特定値未満であればMMP−1陰性(negative)と判定し、MMP−1陽性であれば、対象における早期乳がん罹患を推定するものであることが好ましい。
【0041】
前記MMP−1/CD63の特定値は、特に制限されず、乳がん患者と健常人の値を比較することにより決定することが好ましい。前記MMP−1/CD63の特定値は、ROC曲線に基づいて決定すればよい。
【0042】
前記乳がん評価方法は、miR21のコピー数が特定値未満をmiR21陽性、特定値以上をmiR21陰性と判定し、miR21陽性であれば、対象における早期乳がん罹患を推定するものであることが好ましい。前記miR21のコピー数としては、定量RT-PCRにおける乳がん患者または健常人の個々のmiR21のCT(Threshold Cycle)値から、健常人全員でのmiR21のCT値の平均値を差し引いて算出したΔCTから求めた2Δ
CTの値(2のΔCT乗)を用いることが好ましい。前記miR21のコピー数の特定値は、特に制限されず、乳がん患者と健常人の値を比較することにより決定することが好ましい。前記2Δ
CTの特定値は、ROC曲線に基づいて決定すればよい。
【0043】
前記乳がん評価方法は、前記MMP−1および前記miR21の少なくとも一方が陽性であれば、対象における乳がん罹患を推定するものであることが好ましく、前記MMP−1および前記miR21が陽性であれば、対象における乳がん罹患を強く推定するものであることが特に好ましい。
【0044】
本発明の乳がん評価方法は、転移のある乳がんでも対象における乳がん罹患を推定することができるが、遠隔転移のない早期乳がんでも、対象における乳がん罹患を推定することができる。前記乳がん評価は、腫瘍サイズがT1以下の早期乳がんでも、対象における乳がん罹患を推定することができる。前記乳がん評価は、リンパ節転移がない早期の乳がんでも、対象における乳がん罹患を推定することができる。すなわち、従来の方法では発見することが難しい早期乳がんでも、精度よく対象における乳がん罹患を推定できる。また、前記乳がん評価は、治療が難しいTriple Negativeサブタイプの乳がんでも発見できる可能性がある。
【0045】
本発明の乳がん評価方法が治療効果の推定である場合、治療とは、手術、薬物、および放射線から選ばれる少なくとも一つによる治療を含み、手術による治療が好ましい。
前記乳がん評価方法は、MMP−1タンパク質の発現量をCD63タンパク質の発現量で除した値(MMP−1/CD63)が治療前に比べ、治療後に減少すれば対象における治療効果が良好であると推定するものであることが好ましい。MMP−1/CD63が特定値以上であればMMP−1陽性(positive)、特定値未満であればMMP−1陰性(negative)と判定し、治療前にMMP−1陽性であったが、治療後にMMP−1陰性になれば、対象における治療効果が良好であると推定するものであることがさらに好ましい。
【0046】
前記乳がん評価方法は、miR21のコピー数が治療前に比べ、治療後に増加すれば対象における治療効果が良好であると推定するものであることが好ましい。miR21のコピー数が特定値未満をmiR21陽性、特定値以上をmiR21陰性と判定し、治療前にmiR21陽性であったが、治療後にmiR21陰性になれば、対象における治療効果が良好であると推定するものであることがさらに好ましい。 前記乳がん評価方法は、治療前に陽性であった前記MMP−1および前記miR21の少なくとも一方が陰性になれば、対象における治療効果が良好であると推定するものであることが好ましく、前記MMP−1および前記miR21が陰性になれば、対象における治療効果が良好であるとを強く推定するものであることがさらに好ましい。
【0047】
〈工程(A2)〉
工程(A2)は、前記工程(A1)で得られたMMP−1の測定結果を、健常人の尿中エクソソームに含まれるMMP−1測定結果と比較する工程である。本発明の乳がん評価方法は、工程(A2)を有することが好ましい。
【0048】
健常人の尿中エクソソームに含まれるMMP−1測定は、健常人の尿をサンプルとして前記工程(A1)と同様にして行えばよい。
前記健常人とは、視診、乳房マンモグラフィー、乳房超音波の全てにおいて乳がんの疑いがない者、または乳がんと診断されていない者をいう。
【0049】
前記健常人の尿中エクソソームに含まれるMMP−1測定結果は、好ましくは複数の健常人のグループから得られた複数の測定結果から算出された値、または数値範囲であり、例えば平均値、中央値、平均値±標準偏差等が挙げられる。
【0050】
〈工程(B2)〉
工程(B2)は、前記工程(B1)で得られたmiR21の測定結果を、健常人の尿中エクソソームに含まれる、miR21の測定結果と比較する工程である。本発明の乳がん評価方法は、工程(B2)を有することが好ましい。
【0051】
健常人の尿中エクソソームに含まれるmiR21測定は、健常人の尿をサンプルとして前記工程(B1)と同様にして行えばよい。
前記健常人とは、視診、乳房マンモグラフィー、乳房超音波の全てにおいて異常がない者をいう。
【0052】
前記健常人の尿中エクソソームに含まれるmiR21測定結果は、一人の健常人から得られた測定結果であってもよいが、好ましくは複数の健常人のグループから得られた複数の測定結果から算出された値、または数値範囲であり、例えば平均値、中央値、平均値±標準偏差等が挙げられる。
【0053】
〈エクソソーム調製試薬またはエクソソーム検出試薬〉
前記エクソソーム調製試薬は、尿からエクソソームを分離、精製し、エクソソーム調製物を調製するための試薬であり、その調製方法は特に制限されない。例えば超遠心分離や限外ろ過、ゲル濾過、HPLC、フィルター法、ポリマーを用いた沈殿法、抗体やレクチンを利用してビーズやカラムに吸着させる方法などが挙げられ、これらを応用した市販品としてExosome Isolation Kit、Total Exosome Isolationシリーズ、ExoTrap
TM、PureExo
TM、DIAG Exo
TM等の市販のエクソソーム分離、精製用のスピンカラム、キット等が挙げられる。
【0054】
前記エクソソーム検出試薬は、エクソソームの分離・精製をせずに尿中から直接エクソソームを検出するための試薬であり、その検出方法は特に制限されない。例えばフローサイトメトリー、マイクロアレイや表面プラズモン共鳴等によりエクソソームを含む画分を機器上で検出するために用いる、エクソソームを特異的に認識する抗体、アプタマー等が挙げられる。
前記エクソソーム調製試薬またはエクソソーム検出試薬は、本発明の効果を妨げない限り、さらに安定化剤、pH調整剤や乳化剤等の公知の任意成分を含有してもよい。
【0055】
〈MMP−1測定試薬〉
前記マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)測定試薬は、尿中エクソソームに含まれるMMP−1を測定するための試薬であり、その測定方法は制限されない。例えばウエスタンブロッティングやELISAに用いる、MMP−1分子を特異的に認識する抗体、アプタマー等が挙げられる。
前記MMP−1測定試薬は、本発明の効果を妨げない限り、さらに安定化剤、pH調整剤や乳化剤等の公知の任意成分を含有してもよい。
【0056】
〈乳がん評価用の尿検査キット〉
前記乳がん評価用の尿検査キットは、前記エクソソーム調製試薬または前記エクソソーム検出試薬と、前記MMP−1測定試薬とを含む。前記エクソソーム調製試薬または前記エクソソーム検出試薬としては、エクソソーム調製試薬を用いることが好ましい。前記キットは、エクソソーム調製試薬またはエクソソーム検出試薬と、MMP−1測定試薬以外に、洗浄、濃縮、希釈、固定、乾燥、保存、染色、発色、観察等のためのその他の試薬を含んでもよく、必要に応じて実験器具等を含んでもよい。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
〔実施例1〕尿中エクソソームに含まれるMMP−1およびmiR21と乳がんとの関連性
〔対象および尿サンプルの採取〕
本試験は、山王病院、北里大学メディカルセンター、および国際医療福祉大学の倫理委員会の承認を受け、被験者の書面によるインフォームドコンセントを得てから行われた。22名の乳がん患者および26名の健常人を被験者とした。乳がんの診断は、マンモグラフィー、超音波、MRI、手術前の生検による病理検査、手術時に切除した組織の病理検査により行った。また、乳がん患者は、遠隔転移のある進行がんの患者を除外し、早期乳がん患者のみを被験者とした。また、全ての乳がん患者は、術前化学療法を受けておらず、尿サンプル採取後に乳がんの手術を受けた。乳がん患者のうち7例は、手術の20〜136週後に再度尿サンプルを採取した。
【0058】
健常人は、自覚症状、肥満、高血圧を含む身体所見、末梢血液検査、血液生化学検査、心電図、腹部超音波、上部消化管内視鏡による所見、乳房マンモグラフィー、乳房超音波の全てにおいて異常がなく、がん、異形成、炎症性疾患、自己免疫疾患、および心臓、肝臓病、もしくは腎臓の慢性疾患のいずれの病歴もない者とした。
【0059】
被験者は、体重を測定し、アルコール摂取量(g/日)、喫煙についても事前に調査した。朝食を摂取する前に採取した早朝尿の中間尿をサンプルとした。常法に従い、尿中クレアチニンCRNN(mg/dL)を検査した。被験者から採血し、血液中の腫瘍マーカーであるCEA(Carcinoembryonic antigen)とCA15−3(carbohydrate antigen 153)を測定した。
【0060】
〔乳がんのステージ分類〕
乳がんのステージ分類は、American Joint Committee on Cancer(AJCC)によるTumor−Lymph−metastasis(TNM)分類に従って行った。
T因子は、腫瘍径、胸壁、皮膚への浸潤の有無により判定され、基準の概略は以下の通りである。
Tis:非浸潤がん
T1:腫瘍径2cm以下
T1mi:0.1cm以下(微浸潤がん)
T1a:0.1cmより大きく0.5cm以下
T1b:0.5cmより大きく1.0cm以下
T1c:1.0cmより大きく2.0cm以下
T2:2.0より大きく5.0cm以下
T3:5.0cmより大きい
T4:皮膚浸潤、胸壁浸潤
T4a:胸壁固定
T4b:皮膚浸潤
T4c:T4a、T4b両者
T4d:炎症性乳がん
N因子は、転移の部位(腋窩リンパ節(Ax)、胸骨傍リンパ節(Ps)、鎖骨下リンパ節(Ic)、鎖骨上リンパ節(Sc))、リンパ節の可動性、転移個数により判定される。基準は以下の通りである。
N0:転移なし
N1:可動性のあるAx転移
N2:固定したAx転移、Ps転移
N3:IcまたはSc転移、Ax転移+Ps転移
病理学的分類によるpN因子は、以下の基準による。
pN1:Ax1〜3個、Ps微小転移
pN2:Ax4〜9個、Ps転移
pN3:Ax10個以上、Ax+Ps、Ic転移、Sc転移
ステージは、T因子とN因子の組み合わせで0期〜III期までが決定され、転移がある場合(M1)にはIV期とする。
0期:非浸潤がん
I期:2cm以下、N0
IIA期:T2N0、T1N1またはT0N1
IIB期:T2N1またはT3N0
IIIA期:T3N1またはT0−3N2
IIIB期:T4N0−2
IIIC期:N3
IV期:M1
【0061】
〔乳がんの病理組織学的診断〕
乳がん患者から手術時に切除した組織を病理組織学的に解析した。Scirrhous,Mucinouなどの分類は、病理組織所見の診断基準に基づき定義されている。
【0062】
〔エクソソーム調製物〕
乳がん患者および健常人から採取した尿サンプルは、エクソソーム調製まで−80℃にて保存した。尿サンプルは溶解後、2mLを4℃にて3000gで15分遠心分離し、上清を0.22μmのナイロンフィルターでろ過した。ろ過後の上清から、Exosome Isolation Kit(Myltenyi社製)を用いてエクソソーム調製物を分離、精製した。
【0063】
〔エクソソームの確認〕
得られたエクソソーム調製物は、電子顕微鏡により観察した。エクソソーム調製物はcarbon/FormvarでコートしたTEMグリッド(応研商事株式会社製)にのせ、2%酢酸ウラニルで2分間染色した。電子顕微鏡はHitachi H−7600を用いた。観察の結果、直径100nmの球形のエクソソームが存在することを確認できた。写真を
図1に示す。
【0064】
また、抗CD63抗体を用いたウエスタンブロッティングにより、得られたエクソソーム調製物にエクソソーム特異的タンパク質であるCD63が存在することを確認した。ビオチン化抗CD63抗体(BioLegend社製、NO.353017)により検出されたバンドの画像を
図2に示す。
【0065】
〔ウエスタンブロッティング〕
得られたエクソソーム調製物中のMMP−1の発現は、抗MMP−1抗体(abcam社製、NO.ab134184)を用いたウエスタンブロッティングにより解析した。54kDa付近に検出されたバンドの強度をイメージアナライザー(Image J 1.52a)で定量することにより、MMP−1を定量した。同様にビオチン化抗CD63抗体(BioLegend社製、NO.353017)を用いて、CD63も定量した。MMP−1の定量結果をCD63の定量結果で除して、比(MMP−1/CD63)を算出した。MMP−1/CD63を以下、MMP−1発現量とも称する。
抗MMP−1抗体および抗CD63抗体により検出されたバンドの画像を
図3に示す。
【0066】
〔RT-PCR〕
得られたエクソソーム調製物からTotal Exosome RNA&Protein Isolation Kit(Thermo Fisher Scientific社製)を用いてRNAを抽出した。得られたRNAをテンプレートとして、Taqman MicroRNA Reverse Transcription Kit(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて、逆転写を行いcDNAを合成した。このcDNAをテンプレートとし、miR21の定量PCRはmiR−21 Assay(Applied Biosystems社製)を用い、製造者のプロトコールに従って行った。1サンプルあたり、デュプリケートで反応を行った。定量PCRシステムはStep One Plus
TM(Applied Biosystems社製)を用いた。
【0067】
健常人26人のmiR21のコピー数と、22人の乳がん患者のmiR21のコピー数は、相対値として算出した。ΔCTは、乳がん患者または健常人の個々のmiR21のCT(Threshold Cycle)値から、健常人全員でのmiR21のCT値の平均値を差し引いて算出した。2Δ
CTの値(2のΔCT乗)を以下、miR21発現量とも称する。
【0068】
〔乳がんのサブタイプの決定〕
乳がんのサブタイプは、乳がん患者から手術時に切除した組織をEstrogen Receptor、Progesterone Receptor、Human Epidermal Growth Receptor 2、Ki−67に対する抗体を用いて免疫染色し、それぞれの分子の発現率を評価して、以下の基準により決定した。
LuminalA:ER(Estrogen Receptor)および/またはPgR(Progesterone Receptor)陽性、かつ、HER2(Human Epidermal Growth Receptor 2)陰性、かつ低Ki−67(14%未満)
LuminalB:ERおよび/またはPgR陽性、かつHER2陰性、かつ高Ki−67(14%以上)。または、ERおよび/またはPgR陽性、かつHER2陽性。
Her2:ER陰性、かつPgR陰性、かつHER2陽性。
Triple Negative:ER陰性、かつPgR陰性、かつ、HER2陰性。
詳細は以下の文献に記載の通りである。
Gluck S, de Snoo F, Peeters S, Stork−Sloots L, Somio G (2013) Molecular subtyping of early−stage breast cancer identifies a group of patients who do not benefit from non−adjuvant chemotherapy. Breast Cancer Res Treat 139: 759−767.
【0069】
〔統計解析〕
統計解析は、PRISM 7 for Mac OS X(GraphPad Software.Inc社製)を用いて行った。データは、パラメトリック検定の妥当性を確認するために正規性と等分散性を試験した。正規分布に従うデータは、Student t検定を行った。Mann−Whitney U testは、集団間の違いを評価するために用いた。p値0.05未満を統計学的に有意とした。
【0070】
〔結果〕
〔被験者のプロファイルとMMP−1およびmiR21の発現量〕
乳がん患者のプロファイルとTNM分類、ステージ、病理組織学的診断、miR21発現量、MMP−1発現量を表1に示す。
【0071】
【表1】
乳がん患者のサブタイプ、CEA、CA15−3、CRNN、飲酒、喫煙習慣について表2に示す。
【0072】
【表2】
健常人のプロファイルを表3に示す。
【0073】
【表3】
健常人の年齢グループ別のmiR21発現量とMMP−1発現量を表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
〔乳がん患者と健常人のMMP−1発現量およびmiR21発現量の違い〕
表4より、健常人のMMP−1発現量およびmiR21発現量を年齢グループ間で比較したところ、60−79歳のグループの中央値は30−39歳グループに比べて1.84倍高い傾向にあったが、統計上の有意差はなく、全ての年齢グループ間に統計上の有意な差はなかった。
【0076】
MMP−1発現量(MMP−1/CD63)を、乳がん患者(BC patient)と健常人(Healthy control)とで比較した結果を
図4に示す。乳がん患者のMMP−1発現量は健常人に比べて有意に高かった(p<0.0001)。乳がん患者のMMP−1発現量の中央値は1.74であり、健常人は0.54であった(表1、4)。
【0077】
miR21発現量(2Δ
CT)を、乳がん患者(BC patient)と健常人(Healthy control)とで比較した結果を
図5に示す。乳がん患者のmiR21発現量は健常人に比べて有意に低かった(p=0.0016)。乳がん患者のmiR21発現量の中央値は0.26であり、健常人は1.00であった(表1、4)。
【0078】
〔MMP−1発現量、およびmiR21発現量を用いた乳がん検出の妥当性〕
MMP−1発現量、およびmiR21発現量を用いた乳がんの検出の妥当性をROC曲線(Receiver Operatorating Characteristic curve、受信者動作特性曲線)を用いて検討した。MMP−1発現量のROC曲線を
図6、miR21発現量のROC曲線を
図7に示す。最適カットオフ値は、MMP−1発現量については0.916、miR21発現量については0.413であった。そこで、MMP−1発現量(MMP−1/CD63)が0.916以上をMMP−1陽性(positive)、0.916未満をMMP−1陰性(negative)と判定した。また、miR21発現量(2Δ
CT)が0.413未満をmiR21陽性、0.413以上をmiR21陰性と判定した。
【0079】
このときの感度、特異度およびAUC(Area Under the Curve)[
図8では、AUROC(Area Under the ROC Curve)と記す。]を
図8に示す。MMP−1発現量を用いた判定の感度は0.783、特異度は0.840、miR21発現量を用いた判定の感度は0.708、特異度は0.792と非常に高いものであった。
【0080】
〔MMP−1発現量、およびmiR21発現量による陽性陰性判定と乳がんの相関〕
このカットオフ値を用いて健常人および乳がん患者をMMP−1およびmiR21について陽性、陰性に分類した結果を
図9に示す。
【0081】
乳がん患者22例の内、MMP−1陽性が18例、MMP−1陰性が4例であり、乳がん罹患の有無とMMP−1の陽性陰性判定との間には強い相関があることがわかる。このことから、MMP−1を測定することにより、乳がんを検出し、対象における乳がん罹患を推定できることがわかった。
【0082】
また、乳がん患者22例の内、miR21陽性は17例、陰性は5例であり、乳がん罹患の有無とmiR21の陽性陰性判定との間には強い相関があることがわかる。このことから、miR21を測定することにより乳がんを検出し、対象における乳がん罹患を推定できることがわかった。
【0083】
MMP−1およびmiR21の少なくとも一方が陽性と判定されたのは乳がん患者22例中21例であった。このことから、MMP−1発現量およびmiR21発現量を用いる判定の感度は95%であり、MMP−1発現量およびmiR21発現量を測定することにより、より高確度で乳がんを検出し、乳がん罹患を推定できることがわかる。
【0084】
〔MMP−1発現量、およびmiR21発現量による陽性陰性判定と乳がんのTNM分類、ステージ、病理組織学的所見との相関〕
乳がん患者におけるMMP−1発現量およびmiR21発現量による陽性陰性判定と、乳がんのTNM分類、ステージ、病理組織学的所見との相関を表5に示す。
【0085】
【表5】
【0086】
表5中、pは陽性(positive)、nは陰性(negative)の略である。
腫瘍サイズとの相関を見ると、Tis〜T3までの全ての腫瘍サイズにおいて、大半の乳がん患者はMMP−1およびmiR21の少なくとも一方が陽性と判定されている。従って、全ての腫瘍サイズにおいてMMP−1発現量およびmiR21発現量を測定することにより乳がん罹患を推定できることがわかる。Tisの2例、T1の9例については、11例全てにおいて、MMP−1陰性のものはなく、MMP−1陽性と判定された。従って、特に腫瘍サイズがT1以下の乳がんがMMP-1と強く相関しており、MMP−1発現量を測定することが、T1以下のサイズの乳がん罹患を推定するのに好適であることがわかった。
【0087】
リンパ節転移との相関を見ると、N0〜N3までの全てにおいて、大半の乳がん患者はMMP−1およびmiR21の少なくとも一方が陽性と判定されている。従って、MMP−1発現量およびmiR21発現量を測定することにより、リンパ節転移がない早期の乳がんであっても乳がん罹患を推定できることがわかる。また、N3の症例において、MMP−1発現量およびmiR21発現量の少なくとも一方が陽性と判断された確率は100%である。従って、MMP−1発現量およびmiR21発現量を測定することにより、N3の乳がん罹患をより高確度で推定できることがわかった。
【0088】
ステージとの相関を見ると、ステージ0〜IIIまでの全てのステージにおいて、大半の乳がん患者はMMP−1およびmiR21の少なくとも一方が陽性と判定されている。従って、全てのステージにおいて、MMP−1発現量およびmiR21発現量を測定することにより乳がん罹患を推定できることがわかる。乳がんの早期段階であるステージ0、Iにおいても、MMP−1およびmiR21の少なくとも一方が陽性と判定された確率はそれぞれ100%、93%であった。従って、MMP−1発現量およびmiR21発現量を測定することにより、ステージ0、Iの乳がん罹患をより高確度で推定できることがわかった。
【0089】
病理組織学的所見との相関を見ると、全ての所見において、大半の乳がん患者はMMP−1およびmiR21の少なくとも一方が陽性と判定されている。従って、いずれかの病理組織学的所見がある場合においても、MMP−1発現量およびmiR21発現量を測定することにより乳がん罹患を推定できることがわかる。
【0090】
〔MMP−1発現量、およびmiR21発現量による陽性陰性判定と乳がんサブタイプとの相関〕
乳がん患者におけるMMP−1発現量およびmiR21発現量による陽性陰性判定と、乳がんサブタイプとの相関を表6に示す。
【0091】
【表6】
【0092】
全てのサブタイプにおいて、大半の乳がん患者はMMP−1およびmiR21の少なくとも一方が陽性と判定されており、全てのサブタイプにおいて、MMP−1発現量およびmiR21発現量を測定することにより乳がん罹患を推定できることがわかる。また、Luminal B、Her2、Triple Negativeの場合には、全ての症例においてMMP−1およびmiR21の少なくとも一方が陽性となった。
【0093】
〔各測定値の相関関係〕
乳がん患者22例におけるMMP−1発現量とmiR21発現量には逆相関関係があった(r=−0.62、p=0.002)。MMP−1発現量またはmiR21発現量と、年齢、体重、クレアチニン、CEA、CA15−3、Ki−67、アルコール摂取量、喫煙との相関を分析した。その結果、miR21発現量と、体重(r=−0.49、p=0.02)、Ki−67(r=−0.45、p=0.02)、
クレアチニン(r=−0.53、p=0.01)との間には相関関係があった。一方、MMP−1発現量はどの測定値とも相関関係はなかった。
【0094】
なお、乳がんのマーカーとして汎用されるCA15−3は、転移のある乳がん、進行乳がん、また再発した乳がんとの関連が強いことが報告されている。転移のない早期がん患者を被験者とした本実施例において、CA15−3値が高い被験者はいなかったので、CA15−3値がMMP−1発現量、miR21発現量のどちらとも相関がなかったことは、MMP−1およびmiR21の少なくとも一方を測定することにより早期乳がん罹患を推定することが可能であることと矛盾しない。CEAは乳がん特異的ではないので、CEA値がMMP−1発現量およびmiR21発現量のどちらとも相関がなかったことは、MMP−1およびmiR21の少なくとも一方を測定することにより早期乳がん罹患を推定することが可能であることと矛盾しない。本発明の乳がん評価方法は、既存のがんマーカーであるCEAやCA15−3では検出できなかった早期の乳がんでも検出することができる有用なものである。
【0095】
〔乳がん患者のMMP−1発現量、およびmiR21発現量の術前術後での変化〕
乳がん患者7名におけるMMP−1発現量およびmiR21発現量の手術前と手術後20〜136週の変化を表7に示す。
【0096】
【表7】
【0097】
また、表7のMMP−1発現量の手術前後での変化をグラフ化したものが
図10、miR21発現量の変化をグラフ化したものが
図11である。
手術後(Post−operation)のMMP−1発現量は、手術前(Pre−operation)に比べ、低下する傾向にあった。7例中5例では手術前MMP−1陽性であったが、その内3例は手術後にはMMP−1陰性になった。特にNO.1、13、14、16の患者では、MMP−1発現量は手術前に比べて顕著に低下した。
【0098】
手術後(Post−operation)のmiR21発現量は、手術前(Pre−operation)に比べて顕著に増加する傾向にあった。7例中6例では手術前にはmiR21陽性であったが、その内3例が手術後にはmiR21陰性になった。