(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リン酸カルシウム化合物は、ヒドロキシアパタイト、トリカルシウムホスフェート、ジカルシウムホスフェート、およびカルシウムホスフェートから選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物である、請求項1に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
190℃、2.16kgで測定されたメルトインデックスが1〜15g/10分であり、引張強度が67〜75MPaであり、降伏伸びが15〜25%であり、衝撃強度が7〜15kJ/m2である、請求項7に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシメチレン(POM)樹脂は、優れた機械的特性、耐クリープ性、耐疲労性、および耐摩擦摩耗性を有しているため、各種電気、電子部品や機械メカニズムなどのように複合的な特性を満たす分野で幅広く用いられている。
【0003】
通常、ポリオキシメチレン樹脂は、トリオキサン単一、またはトリオキサンと環状エーテルおよび/または環状アセタールを塊状重合、溶液重合、または懸濁重合してオキシメチレン単一重合体または共重合体を製造する。
【0004】
しかし、かかるポリオキシメチレン樹脂、特に、ポリオキシメチレンホモポリマーは熱安定性に乏しいため、成形加工中に、熱的、機械的に、もしくは添加物によって分解が誘発されやすいという欠点がある。特に、樹脂中に不安定な末端が存在する場合には、成形中に、脆性の増加や加工性不良などが引き起こされる。このような分解機構としては、樹脂中の末端から解重合に必要な活性エネルギーが供給されて解重合される場合や、成形加工中に、機械的な剪断外力により主鎖が切断される場合、およびポリオキシメチレン樹脂中の残存不純物もしくは加工中に添加される顔料などによって樹脂が分解される場合が挙げられ、その他にも、酸化による分解反応が挙げられる。
【0005】
そこで、ポリオキシメチレンホモポリマーの熱安定性を改善するために様々な方法が提示されているが、熱安定性を向上させる方法としては、熱分解により発生するホルムアルデヒドなどの分解ガスと反応できるアミン類、アミド類、ヒドラジン類などの添加剤を添加する方法が提示されている。しかしながら、上記の方法は、添加剤が熱的に不安定であるため、黄変を誘発し、添加剤の染み出し(bleed‐out)による金型付着物(Mold deposit)が発生するなど、熱安定性の改善において限界が生じる。
【0006】
熱安定性を向上させるための他の方法としては、不安定なポリオキシメチレン分子の末端を安定化させる方法として、ポリオキシメチレン単一重合体の場合、ホルムアルデヒド、トリオキサンなどをアニオン触媒の存在下で重合させ、特定の物質を用いて不安定な末端部をキャッピング(capping)させる方法が提示されている。しかしながら、上記の方法は、オキシメチレン主鎖が加溶媒分解などのメカニズムによって破壊しやすく、末端の未反応キャッピング重合体の残存有無によって、熱的に非常に不安定な樹脂が得られるという問題がある。このようなポリオキシメチレン単一重合体の欠点を克服するために、特定のコモノマー、すなわち、酸化エチレンのような環状エーテルやジオキソランのような環状ホルマールをホルムアルデヒド、トリオキサンなどとともに触媒の存在下で共重合させて得た共重合体を、単一重合体中にランダムに分散、導入する方法が提示されている。しかし、かかる方法により製造された共重合体は、その末端基が非常に不安定であるため、安定化工程が伴われなければならない。
【0007】
多くの研究により、上述の問題の技術的な解決方法が提示されているが、主に、不安定な末端部位を強制分解させてコモノマーの位置まで到達する方法が、殆どの発明で特徴を成している。例えば、特許文献1には、重合後に不均一媒質下でアルカリ水溶液で末端を分解および安定化させる方法が提示されているが、これも満足できるようなものではなかった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、具体例または実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。但し、下記具体例または実施例は、本発明を詳細に説明するための1つの参照にすぎず、本発明がこれらに限定されるものではなく、種々の形態で実現可能である。
【0018】
また、他に定義されない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する当業者の1つによって一般に理解される意味と同一の意味を有する。本発明において説明に用いられる用語は、特定の具体例を効果的に述べるためのものであって、本発明を制限することを意図しない。
【0019】
また、明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる単数の形態は、文脈で特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図する。
【0020】
本発明の第1態様は、ポリオキシメチレンホモポリマー、分子中に3個以上のヒドロキシ基を含有する多価アルコール、およびリン酸カルシウム化合物を含むポリオキシメチレン樹脂組成物に関する。
【0021】
本発明の第2態様は、ポリオキシメチレンホモポリマー、分子中に3個以上のヒドロキシ基を含有する多価アルコール、リン酸カルシウム化合物、およびエチレン尿素を含むポリオキシメチレン樹脂組成物に関する。
【0022】
本発明において、前記第1態様および第2態様は、本発明を具体的に説明するためのものにすぎず、これに制限されるものではない。
【0023】
本発明の他の態様は、前記ポリオキシメチレン樹脂組成物を用いて製造された成形品に関する。
【0024】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物の一態様において、前記ポリオキシメチレン樹脂組成物は、ポリオキシメチレンホモポリマー100重量部に対して、多価アルコール0.001〜1重量部およびリン酸カルシウム化合物0.01〜1重量部を含んでもよい。
【0025】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物の一態様において、前記エチレン尿素は、ポリオキシメチレンホモポリマー100重量部に対して、0.1〜1重量部で含まれてもよい。
【0026】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物の一態様において、前記ポリオキシメチレンホモポリマーは、重合触媒の存在下で、ポリオキシメチレン形成単量体を重合した後、メラミン系重合停止剤を添加して重合されたものであってもよい。
【0027】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物の一態様において、前記メラミン系重合停止剤は、下記化学式1で表される化合物から選択されるものであってもよい。
【0029】
前記化学式1中、R
1〜R
6は、それぞれ独立して、水素、C
1〜C
6のアルキル、C
1〜C
6のアルコキシ、および−CH
2OR
7から選択されるものであって、R
1〜R
6の全てが水素の場合は除き、
前記R
7は、C
1〜C
6のアルキルまたは−R
8CO
2R
9であり、R
8は、C
1〜C
6のアルキレンであり、R
9は、C
1〜C
6のアルキルである。
【0030】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物の一態様において、前記アルキル置換メラミンを、重合触媒の使用量の0.01〜50倍のモル量で添加してもよい。
【0031】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物の一態様において、前記ポリオキシメチレンホモポリマーは、重量平均分子量が10,000〜500,000g/molであってもよい。
【0032】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物の一態様において、前記多価アルコールは、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラエタノールエチレンジアミン、メチルグルコシド、芳香族ジアミン−テトラエタノール付加物、ソルビトール、2−ヒドロキシメチルプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、およびシクロデキストリンから選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。
【0033】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物の一態様において、前記リン酸カルシウム化合物は、ヒドロキシアパタイト、トリカルシウムホスフェート、ジカルシウムホスフェート、およびカルシウムホスフェートから選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。
【0034】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物の一態様において、前記エチレン尿素は、2−イミダゾリドンまたはイミダゾリジン−2−オンであってもよい。
【0035】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物の一態様において、前記ポリオキシメチレン樹脂組成物は、重量減少率が9%以下であり、CH
2Oの発生量が100ppm以下であってもよい。
【0036】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物の一態様において、前記ポリオキシメチレン樹脂組成物は、190℃、2.16kgで測定されたメルトインデックスが1〜15g/10分であり、引張強度が67〜75MPaであり、降伏伸びが15〜25%であり、衝撃強度が7〜15kJ/m
2であってもよい。
【0037】
以下、本発明の各構成についてより具体的に説明する。
【0038】
本発明において、前記ポリオキシメチレンホモポリマーは、重合触媒の存在下でポリオキシメチレン形成単量体を重合した後、重合停止剤を投入して製造される高分子であって、化学式2で表されるオキシメチレン単位で構成される単一重合体である。
【0040】
前記オキシメチレンホモポリマーは、ホルムアルデヒドまたはその環状オリゴマー、すなわち、トリオキサンを重合することで製造することができる。
【0041】
前記重合は、塊状重合、懸濁重合、もしくは溶液重合の形態で行われてもよく、反応温度としては0〜100℃の範囲、好ましくは20〜80℃の範囲であってよいが、これに制限されるものではない。
【0042】
また、ポリオキシメチレンの重合反応時には、連鎖移動剤としてアルキル置換フェノールやエーテル類などを用いてもよく、好ましくは、ジメトキシメタンなどのようなアルキルエーテルが使用できる。
【0043】
前記重合触媒としては、当業界で通常用いられるものであれば制限されずに使用可能であり、一例として、ルイス酸、特に、ホウ素、スズ、チタン、リン、ヒ素、およびアンチモンなどのハロゲン化物、より詳細には、BF
3OH
2、BF
3O(CH
2CH
3)
2、BF
3O(CH
2CH
2CH
2CH
3)
2、BF
3CH
3CO
2H、BF
3PF
5HF、BF
3−10−ヒドロキシアセトフェノールなどのBF
3系重合触媒が挙げられ、BF
3O(CH
2CH
3)
2およびBF
3O(CH
2CH
2CH
2CH
3)
2を用いることが、本発明で目的とする熱安定性および重量減少の効果においてより好ましい。重合触媒の添加量は、特に制限されないが、例えば、トリオキサン1モルに対して、2×10
−6〜2×10
−2モルの範囲が好ましい。
【0044】
次に、進行中の重合反応を終結するために、重合停止剤を投入して重合反応を停止させてもよい。
【0045】
本発明の一態様において、前記重合停止剤としては、重合反応を効果的に停止させることができるものであれば制限されずに使用可能であるが、例えば、トリフェニルホスフェート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、下記化学式1で表される化合物から選択されるメラミン系重合停止剤などが使用でき、より好ましくは、熱安定性および重量減少率のさらなる減少のためには、下記化学式1のメラミン系重合停止剤を用いることがより好ましい。
【0047】
前記化学式1中、R
1〜R
6は、それぞれ独立して、水素、C
1〜C
6のアルキル、C
1〜C
6のアルコキシ、および−CH
2OR
7から選択されるものであって、R
1〜R
6の全てが水素の場合は除き、
前記R
7は、C
1〜C
6のアルキルまたは−R
8CO
2R
9であり、R
8は、C
1〜C
6のアルキレンであり、R
9は、C
1〜C
6のアルキルである。
【0048】
前記メラミン系重合停止剤の具体的な例としては、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミンなどが挙げられる。
【0049】
前記重合停止剤の添加量は、重合触媒の0.01〜50倍、好ましくは0.05〜10倍のモル量で添加することが好ましいが、これに制限されるものではない。前記範囲である場合に、熱安定性に優れ、物性低下および変色なしに触媒の役割を安定して果たすことができるため好ましい。
【0050】
また、重合停止剤は、そのままの形態で添加してもよく、有機溶媒に溶解して添加してもよい。この際、使用可能な有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどのような芳香族炭化水素、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサンなどのような脂肪族炭化水素、メタノールなどのようなアルコール類、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのようなハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトンなどのようなケトン類が挙げられる。
【0051】
前記重合停止剤の投入により製造されたポリオキシメチレンホモポリマーの重量平均分子量は、本発明で限定するものではないが、10,000〜500,000g/molであってもよい。また、190℃、2.16kgで測定されたメルトインデックスは1〜15g/10分であってもよい。
【0052】
本発明の一態様において、ポリオキシメチレンホモポリマーの重合は、前記重合方法に限定されず、ポリオキシメチレンホモポリマーを重合する通常の重合方法も含むことができる。
【0053】
本発明の一態様において、前記多価アルコールは、潤滑性および熱安定性をさらに高めるために用いられるものであって、分子中に3個以上のヒドロキシ基を含有する多価アルコールを含んでもよい。より好ましくは、3〜8個の水酸基を有する多価アルコールであってもよく、多価アルコールは、炭素鎖中にエーテル結合を含んでもよい。3個以上のヒドロキシ基を含有する多価アルコールの具体例としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラエタノールエチレンジアミン、メチルグルコシド、芳香族ジアミン−テトラエタノール付加物、ソルビトール、2−ヒドロキシメチルプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、およびシクロデキストリンなどが使用でき、これに限定されるものではない。また、熱安定性をさらに向上させ、ともに添加されるリン酸カルシウム化合物との混和性およびシナジー効果を向上させる点から、ジペンタエリスリトールを用いてもよい。
【0054】
前記多価アルコールの含量は、ポリオキシメチレンホモポリマー100重量部に対して、0.001〜1重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部を添加してもよいが、これに制限されるものではない。前記範囲内である場合に、優れた熱安定性を有し、耐衝撃性および耐熱性が強化されて好ましい。
【0055】
本発明の一態様において、前記リン酸カルシウム化合物は、前記多価アルコールと混合して使用する時に、熱安定性をさらに向上させ、より優れた重量減少率のために用いられるものであって、ヒドロキシアパタイト、トリカルシウムホスフェート、ジカルシウムホスフェート、カルシウムホスフェートなどが使用でき、重量減少率を著しく低め、機械的物性を向上させる点から、ヒドロキシアパタイトであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0056】
また、組成物に混合時における混練性をより向上させ、均一に分散させる点から、平均粒径が0.1〜10μm、より好ましくは1〜5μmのものを用いてもよいが、これに制限されるものではない。
【0057】
前記リン酸カルシウム化合物の含量は、ポリオキシメチレンホモポリマー100重量部に対して、0.01〜1重量部、より好ましくは0.01〜0.5重量部を添加してもよい。前記範囲内である場合に、優れた熱安定性を有し、耐衝撃性および耐熱性が強化されて好ましい。
【0058】
本発明の一態様において、必要に応じて、前記多価アルコールおよびリン酸カルシウム化合物とともに、エチレン尿素をさらに添加してもよい。エチレン尿素をさらに含むことで、ホルムアルデヒドの放出量を減少させて熱安定性をさらに向上させ、成形性および機械的物性をさらに向上させることができる。前記エチレン尿素の一態様としては、2−イミダゾリドン、イミダゾリジン−2−オンなどが使用でき、単独で用いても、または2種以上を混合して用いてもよい。
【0059】
前記エチレン尿素としては、1,2−エチレンジアミンと尿素の反応により通常の方法で製造されたものが使用でき、フレーク、ペレット、または粒子状のものを用いてもよい。その含量は制限されないが、ポリオキシメチレンホモポリマー100重量部に対して、0.001〜2重量部、具体的には0.01〜1重量部、より具体的には0.1〜1重量部、さらに好ましくは0.3〜1重量部で用いてもよい。前記範囲である場合に、熱安定性をさらに向上させ、引張強度、降伏伸び、および衝撃強度などの機械的強度を向上させるのに十分であるため好ましいが、これに制限されるものではない。
【0060】
本発明の一例において、必要に応じて、該当分野で通常用いられる添加剤をさらに含んでもよい。具体例としては、酸化防止剤、ホルムアルデヒドもしくはギ酸除去剤、末端基安定剤、充填剤、着色剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤、補強剤、光安定剤、および顔料などを含んでもよい。前記添加剤の含量は、本発明の組成物の物理的特性に実質的に悪影響を与えない範囲で用いればよい。
【0061】
具体的に、前記酸化防止剤の例としてはヒンダードビスフェノールが挙げられるが、例えば、テトラ−ビス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロシンナメート)]メタンとして、チバガイギー社でIrganox(登録商標) 1010という商品名で製造販売されているものが使用可能であり、これに制限されるものではない。
【0062】
本発明によるポリオキシメチレン樹脂組成物は、溶融混合されたブレンドであって、全ての重合体成分が互いの倍部でよく分散されており、全ての非重合体成分は、重合体マトリックスによく分散され、それにより結合されているため、ブレンドは一体化された全体を形成する。
【0063】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物は、通常の混合機、例えば、ブラベンダー(Brabender)ミキサーを用いて混合した後、そのブレンドを、通常の一軸または二軸押出機を用いて、ポリオキシメチレン基材樹脂の融点より高い温度範囲、例えば、180〜230℃、好ましくは190〜210℃で溶融混練することで製造することができる。混合ステップの前に、各成分を乾燥させることが好ましい。乾燥は、露点が約−30〜−40℃の乾燥空気を用いて、70〜110℃の温度で2〜6時間行うことができる。
【0064】
本発明によるポリオキシメチレン樹脂組成物は、重量減少率が9%以下であり、CH
2Oの発生量が100ppm以下であってもよい。
【0065】
また、190℃、2.16kgで測定されたメルトインデックスが1〜15g/10分であり、引張強度が67〜75MPaであり、降伏伸びが15〜25%であり、衝撃強度が7〜15kJ/m
2である物性を全て満たすことができる。前記範囲である場合に、機械的物性に優れるため、成形品の製造時に好適に用いることができるが、これに制限されるものではない。
【0066】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物で製造される成形品は、当業者に公知の任意の方法、例えば、押出、射出成形、圧縮成形、吹込成形、熱成形、回転成形、および溶融キャスティングにより製造されることができる。成形品の例としては、軸受、ギヤ、カム、ローラー、スライディングプレート、レバー、ガイド、コンベア部品などが挙げられる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例および比較例に基づき、本発明をより詳細に説明する。但し、下記実施例および比較例は、本発明をより詳細に説明するための1つの例示にすぎず、本発明が下記実施例および比較例によって制限されるものではない。
【0068】
実施例および比較例により製造されたポリオキシメチレン樹脂組成物の物性を、次のように測定した。
【0069】
1)重量減少率
樹脂組成物を10mmHgの真空圧力および222±2℃の温度で30分間処理した後、重量減少率を測定することで熱安定性を評価した。重量減少率の値が小さいほど、熱安定性に優れていることを示す。
【0070】
2)熱安定性、ホルムアルデヒド発生量
得られたポリオキシメチレン樹脂組成物を100mm×40mm×2mmのサイズに成形した後、50mlの水の入った1L容量のボトルに、水に触れないように固定してからシールした。このように設けられたボトルを60℃で3時間放置した後、水に捕集されたホルムアルデヒドの含量をUV分光光度計を用いて発色度を分析することで測定し、これにより、成形品のホルムアルデヒドの発生量を測定した。この値が小さいほど、熱安定性に優れていることを示す。
【0071】
3)メルトインデックス
一定の内径のオリフィス(orifice)で、温度190℃、荷重2.16kgで10分間押出して出た樹脂試料の重量を測定した。その値は、樹脂の解重合率を評価する尺度となり、メルトインデックス値が大きいほど、解重合率が高いことを示す。
【0072】
4)重量平均分子量の測定
重量平均分子量は、フューテックス(Futecs)社製のゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)装備を用いて測定した。装備は、グラジェントポンプ、カラムヒーター(AT−4000)、検出器(Shodex 201H R.I Detector)、注入器(NS−6000自動注入器)で構成され、分析カラムとしてはShodex社のHFIP 800 Seriesを使用し、標準物質としては7種のポリメチルメタクリル(PMMA)STDを使用した。移動相溶媒としては、HPLC級のヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を使用し、カラムヒーター温度40℃、移動相溶媒の流速0.7mL/minの条件で測定した。試料分析のために準備されたポリオキシメチレン単量体を、移動相溶媒であるヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解させた後、GPC装備に注入して重量平均分子量を測定した。
【0073】
5)引張強度
ISO 527−1、ISO 527−2の標準規格に従って、UTM(Univesal Testing Machine)を用いて引張強度を測定し、引張試験片をCrosshead speed 50mm/minで各サンプル当たり5回評価し、平均値を計算した。
【0074】
6)降伏伸び
ISO 527−1、ISO 527−2の標準規格に従って、UTM(Univesal Testing Machine)を用いて降伏伸びを測定し、引張試験片をCrosshead speed 50mm/minで各サンプル当たり5回評価し、平均値を計算した。
【0075】
7)シャルピー衝撃強度
ISO 179−1、ISO 179−2の標準規格に従ってシャルピー衝撃強度を測定した。常温(25℃)で切欠(NOTCH)された試験片を使用し、安田精機製作所社製のシャルピー衝撃試験機No.258Dにより25℃の環境下で測定した。各サンプル当たり5回衝撃強度を評価し、平均値を計算した。
【0076】
[実施例1]
1Lの容量の重合器を50℃に維持させてから、定量注入装置を用いてトリオキサン500gを注入した後、重合触媒としてBF
3・O(CH
2CH
3)
20.06g(トリオキサンに対して70ppm)を添加した。重合触媒の添加15分後に、重合停止剤としてヘキサメトキシメチルメラミン(CYTEC社製、CYMEL303)を、重合触媒の1.0モル倍である0.170gの量でベンゼンに溶解して添加し、10分後に反応を終結してホモポリオキシメチレン樹脂を得た。重合されたホモポリオキシメチレン樹脂の重量平均分子量は200,000g/molであった。190℃、2.16kgで測定したメルトインデックスは18.7g/10分であった。
【0077】
その後、2対のΣ型ブレード(Blade)を有するニーダ(Kneader、東洋精機製作所社製のラボプラストミル)を用いて、230℃に維持させた後、前記ホモポリオキシメチレン樹脂100重量部に対して、平均粒径5μmのヒドロキシアパタイト0.05重量部、ジペンタエリスリトール0.005重量部を添加し、40分間窒素雰囲気下で滞留してポリオキシメチレン樹脂組成物を得た。
【0078】
前記ポリオキシメチレン樹脂組成物の物性を上述の測定方法により評価し、下記表1にその結果を示した。
【0079】
[実施例2〜6]
前記実施例1において、ポリオキシメチレン樹脂組成物の製造時に、下記表1のようにヒドロキシアパタイトおよびジペンタエリスリトールの含量を変化させて使用したことを除き、実施例1と同様に製造した。
【0080】
前記ポリオキシメチレン樹脂組成物の物性を上述の測定方法により評価し、下記表1にその結果を示した。
【0081】
[実施例7〜12]
ホモポリオキシメチレン樹脂を重合する際に、重合停止剤としてビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートを使用したことを除き、実施例1と同様の方法によりホモポリオキシメチレン樹脂を重合した。重合されたホモポリオキシメチレン樹脂の重量平均分子量は130,000g/molであった。190℃、2.16kgで測定したメルトインデックスは28g/10分であった。
【0082】
重合されたホモポリオキシメチレン樹脂を用いて、ポリオキシメチレン樹脂組成物の製造時に、下記表2のようにヒドロキシアパタイトおよびジペンタエリスリトールの含量を変化させた。前記ポリオキシメチレン樹脂組成物の物性を上述の測定方法により評価し、下記表2にその結果を示した。
【0083】
[実施例13〜18]
ホモポリオキシメチレン樹脂を重合する際に、重合停止剤としてトリフェニルホスフェートを使用したことを除き、実施例1と同様の方法によりホモポリオキシメチレン樹脂を重合した。重合されたホモポリオキシメチレン樹脂の重量平均分子量は110,000g/molであった。190℃、2.16kgで測定したメルトインデックスは31g/10分であった。
【0084】
重合されたホモポリオキシメチレン樹脂を用いて、ポリオキシメチレン樹脂組成物の製造時に、下記表3のようにヒドロキシアパタイトおよびジペンタエリスリトールの含量を変化させた。前記ポリオキシメチレン樹脂組成物の物性を上述の測定方法により評価し、下記表3にその結果を示した。
【0085】
[実施例19]
前記実施例4において、ポリオキシメチレン樹脂組成物の製造時に、エチレン尿素(Finecn Chemical社(中国)製のEthylene Urea)0.3重量部をさらに添加したことを除き、実施例4と同様に製造した。
【0086】
前記ポリオキシメチレン樹脂組成物の物性を上述の測定方法により評価し、下記表4にその結果を示した。
【0087】
[実施例20]
前記実施例4において、ポリオキシメチレン樹脂組成物の製造時に、エチレン尿素(Finecn Chemical社(中国)製のEthylene Urea)0.5重量部をさらに添加したことを除き、実施例4と同様に製造した。
【0088】
前記ポリオキシメチレン樹脂組成物の物性を上述の測定方法により評価し、下記表4にその結果を示した。
【0089】
[実施例21]
前記実施例4において、ポリオキシメチレン樹脂組成物の製造時に、エチレン尿素(Finecn Chemical社(中国)製のEthylene Urea)1.0重量部をさらに添加したことを除き、実施例4と同様に製造した。
【0090】
前記ポリオキシメチレン樹脂組成物の物性を上述の測定方法により評価し、下記表4にその結果を示した。
【0091】
[比較例1]
前記実施例1で重合されたホモポリオキシメチレン樹脂の物性を測定し、下記表1にその結果を示した。
【0092】
[比較例2〜7]
前記実施例1で重合されたホモポリオキシメチレン樹脂を同様に使用し、下記表1のように、ジペンタエリスリトールを使用せず、ヒドロキシアパタイトの含量を変化させたことを除き、実施例1と同様の方法によりポリオキシメチレン樹脂組成物を製造した。物性を上述の測定方法により評価し、下記表1にその結果を示した。
【0093】
[比較例8]
前記実施例7で重合されたホモポリオキシメチレン樹脂の物性を測定し、下記表2にその結果を示した。
【0094】
[比較例9〜14]
前記実施例7で重合されたホモポリオキシメチレン樹脂を同様に使用し、下記表2のように、ジペンタエリスリトールを使用せず、ヒドロキシアパタイトの含量を変化させたことを除き、実施例7と同様の方法によりポリオキシメチレン樹脂組成物を製造した。物性を上述の測定方法により評価し、下記表2にその結果を示した。
【0095】
[比較例15]
前記実施例13で重合されたホモポリオキシメチレン樹脂の物性を測定し、下記表3にその結果を示した。
【0096】
[比較例16〜21]
前記実施例13で重合されたホモポリオキシメチレン樹脂を同様に使用し、下記表3のように、ジペンタエリスリトールを使用せず、ヒドロキシアパタイトの含量を変化させたことを除き、実施例13と同様の方法によりポリオキシメチレン樹脂組成物を製造した。物性を上述の測定方法により評価し、下記表3にその結果を示した。
【0097】
[比較例22]
下記表4のように、ジペンタエリスリトールおよびヒドロキシアパタイトを使用せず、エチレン尿素を単独で使用したことを除き、実施例1と同様の方法によりポリオキシメチレン樹脂組成物を製造した。物性を上述の測定方法により評価し、下記表4にその結果を示した。
【0098】
[比較例23]
下記表4のように、ジペンタエリスリトールを使用せず、ヒドロキシアパタイトおよびエチレン尿素のみを使用したことを除き、実施例19と同様の方法によりポリオキシメチレン樹脂組成物を製造した。物性を上述の測定方法により評価し、下記表4にその結果を示した。
【0099】
以下の表1〜4中、STP1はトリフェニルホスフェートであり、STP2はビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートであり、STP3はヘキサメトキシメチルメラミン(CYMEL303製品)である。
【0100】
TPSはヒドロキシアパタイトであり、DIPはジペンタエリスリトールであり、EUはエチレン尿素である。
【0101】
【表1】
【0102】
前記表1に示されたように、実施例1で重合されたホモポリマーの物性を示した比較例1と実施例1〜6を比較すると、TPSとDIPを混合することで、重量減少率が著しく低くなり、ホルムアルデヒドの発生量が低減することを確認した。また、引張強度、降伏伸び、衝撃強度などの機械的物性が向上することを確認した。
【0103】
【表2】
【0104】
前記表2に示されたように、実施例7で重合されたホモポリマーの物性を示した比較例8と実施例7〜12を比較すると、TPSとDIPを混合することで、重量減少率が低くなり、ホルムアルデヒドの発生量が低減することを確認した。また、引張強度、降伏伸び、衝撃強度などの機械的物性が向上することを確認した。
【0105】
【表3】
【0106】
前記表3に示されたように、実施例13で重合されたホモポリマーの物性を示した比較例15と実施例13〜18を比較すると、TPSとDIPを混合することで、重量減少率が低くなり、ホルムアルデヒドの発生量が低減することを確認した。また、引張強度、降伏伸び、衝撃強度などの機械的物性が向上することを確認した。
【0107】
【表4】
【0108】
前記表4に示されたように、エチレン尿素を混合して用いることで、実施例4に比べてホルムアルデヒドの放出量が著しく低減することを確認した。
【0109】
また、エチレン尿素の含量が増加するにつれて、引張強度、降伏伸び、および衝撃強度が増加することが分かった。