(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865840
(24)【登録日】2021年4月8日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】クラウン制御を備える金属ストリップをキャスティングするためのキャスティングロールおよび方法
(51)【国際特許分類】
B22D 11/06 20060101AFI20210419BHJP
【FI】
B22D11/06 330B
【請求項の数】24
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-541337(P2019-541337)
(86)(22)【出願日】2018年1月30日
(65)【公表番号】特表2020-505236(P2020-505236A)
(43)【公表日】2020年2月20日
(86)【国際出願番号】EP2018052269
(87)【国際公開番号】WO2018141744
(87)【国際公開日】20180809
【審査請求日】2019年8月21日
(31)【優先権主張番号】A50070/2017
(32)【優先日】2017年1月31日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】506407361
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシャフト エスターライヒ
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft Oesterreich
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルト ホーエンビヒラー
【審査官】
國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2016/083506(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00−11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
双ロールキャスタにおいて連続的なキャスティングによって金属ストリップ(21)をキャスティングするためのキャスティングロール(12)であって、
実質的に円筒状の管(120)によって形成されたキャスティング面(12A)と、
前記円筒状の管(120)内にかつ該円筒状の管(120)に隣接して配置された軸対称な膨張エレメント(101〜119)と、を備え、各膨張エレメントは、別の膨張エレメントから離隔させられており、前記膨張エレメントは、半径方向寸法が増大するように適応させられており、これにより、前記円筒状の管を膨張させ、キャスティング中に前記キャスティングロールの前記キャスティング面のロールクラウンと、キャストストリップの厚さ分布とを変化させる、キャスティングロール(12)において、
複数の軸対称な前記膨張エレメントは、前記円筒状の管(120)の全長に沿って分布させられており、前記膨張エレメント(101〜119)への電力供給を1つまたは複数の膨張エレメントから1つまたは複数の別の膨張エレメントへ切り換えるための電力スイッチが、前記キャスティングロール(12)内または前記キャスティングロール(12)上に配置されていることを特徴とする、キャスティングロール(12)。
【請求項2】
前記膨張エレメント(101〜119)は、40〜150mmの幅を有することを特徴とする、請求項1記載のキャスティングロール(12)。
【請求項3】
前記膨張エレメントは、膨張リング(101〜119)を含み、
前記膨張リング(101〜119)のそれぞれは、40〜150mmの半径方向リング厚さを有することを特徴とする、請求項1または2記載のキャスティングロール(12)。
【請求項4】
前記膨張エレメントは、リング(101〜119)またはディスクの形態を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のキャスティングロール(12)。
【請求項5】
前記膨張エレメント(101〜119)のそれぞれには、該膨張エレメントに最大で15kWの加熱電力を供給することができる電気抵抗加熱エレメントが装備されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のキャスティングロール(12)。
【請求項6】
全ての前記膨張エレメント(101〜119)に一緒に提供される総電力は、前記キャスティングロール(12)の外周の1mあたり最大で70kW以下であることを特徴とする、請求項5記載のキャスティングロール(12)。
【請求項7】
16個以上の軸対称な前記膨張エレメントが、前記円筒状の管(120)内にかつ該円筒状の管(120)に隣接して配置されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のキャスティングロール(12)。
【請求項8】
複数の軸対称な前記膨張エレメントは、前記キャスティング面(12A)の端部を含む前記円筒状の管(120)の全長に沿って分布させられていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のキャスティングロール(12)。
【請求項9】
前記電力スイッチは、2〜30秒ごとに、異なる前記膨張エレメント(101〜119)の間で電力供給を切り換えるように構成されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のキャスティングロール(12)。
【請求項10】
中央に取り付けられた前記膨張エレメント(110)は、永続的に加熱されるように構成されていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のキャスティングロール(12)。
【請求項11】
前記キャスティング面(12A)の端部に配置された前記膨張エレメント(101,119)は、永続的に加熱されるように構成されていることを特徴とする、請求項10記載のキャスティングロール(12)。
【請求項12】
前記膨張エレメント(101〜119)には、それぞれの信号を制御装置に提供するための少なくとも1つの温度センサがそれぞれ装備されていることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載のキャスティングロール(12)。
【請求項13】
前記膨張エレメント(101〜119)には、制御装置に温度情報を送信するときに前記膨張エレメントを特定するための、少なくとも1つのRFIDタグがそれぞれ装備されていることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載のキャスティングロール(12)。
【請求項14】
制御装置が、少なくとも前記キャスティングロール(12)の温度プロセスモデルおよび/または前記膨張エレメント(101〜119)の温度プロセスモデルに応答してかつ/または前記膨張エレメント(101〜119)のために測定された温度変化に応答して、前記膨張エレメント(101〜119)のそれぞれの半径方向寸法を制御するように構成されていることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載のキャスティングロール(12)。
【請求項15】
ロールクラウンを制御することによって薄いストリップを連続的にキャスティングするための装置であって、
一対の逆回転するキャスティングロール(12)であって、該キャスティングロール(12)の間にニップ(18)が設けられており、該ニップから下方へキャストストリップ(21)を排出することができ、前記キャスティングロールのそれぞれは、実質的に円筒状の管(120)によって形成されたキャスティング面(12A)を有する、一対の逆回転するキャスティングロール(12)と、
前記ニップ(18)の上方に配置された金属デリバリシステムであって、前記キャスティングロール(12)の前記キャスティング面上に支持されたキャスティングプール(19)を形成することができ、該キャスティングプールを閉じ込めるために前記ニップの端部に隣接した側部ダム(20)を備える、金属デリバリシステムと、を備える装置において、
少なくとも一方の前記キャスティングロール(12)は、請求項1から14までのいずれか1項に従って設計されていることを特徴とする、ロールクラウンを制御することによって薄いストリップを連続的にキャスティングするための装置。
【請求項16】
ロールクラウンを制御することによって薄いストリップを連続的にキャスティングする方法であって、
一対の逆回転するキャスティングロール(12)を使用し、該キャスティングロールの間にニップ(18)が設けられており、該ニップから下方へキャストストリップ(21)を排出するようになっており、前記キャスティングロールのそれぞれは、実質的に円筒状の管(120)によって形成されたキャスティング面(12A)を有し、
さらに、前記ニップ(18)の上方に配置された金属デリバリシステムを使用して、前記キャスティングロール(12)の前記キャスティング面(12A)上に支持されたキャスティングプール(19)を形成し、側部ダム(20)が、前記キャスティングプールを閉じ込めるために前記ニップの端部に隣接しており、
前記少なくとも1つのキャスティングロール(12)は、前記円筒状の管(120)内にかつ該円筒状の管(120)に隣接して配置された、軸対称な膨張エレメント(101〜119)を有し、各膨張エレメントは、別の膨張エレメントから離隔させられており、前記膨張エレメントは、半径方向寸法が増大するように適応させられており、これにより、前記円筒状の管(120)を膨張させ、キャスティング中に前記キャスティングロールの前記キャスティング面のロールクラウンおよび前記キャストストリップ(21)の厚さ分布を変化させる、方法において、
少なくとも1つの前記膨張エレメントは、少なくとも1つの他の膨張エレメントの半径方向寸法が増大させられないまま、半径方向寸法が増大させられ、これにより、前記円筒状の管(120)を膨張させ、いずれの膨張エレメントが増大させられるかの制御は、
前記キャストストリップ(21)の記録された温度分布および/または
前記キャストストリップ(21)の測定されたストリップ厚さ分布および/または
前記キャスティングロール(12)の測定された高温クラウンおよび/または
前記キャスティングロール(12)のうちの一方または両方の温度分布および/または
前記膨張エレメントの測定された温度
に基づいて行われ、
複数の軸対称な前記膨張エレメントは、前記円筒状の管(120)の全長に沿って分布させられており、前記膨張エレメント(101〜119)への電力供給を1つまたは複数の膨張エレメントから1つまたは複数の別の膨張エレメントへ切り換えるための電力スイッチが、前記キャスティングロール(12)内または前記キャスティングロール(12)上に配置されていることを特徴とする、ロールクラウンを制御することによって薄いストリップを連続的にキャスティングする方法。
【請求項17】
異なる前記膨張エレメント(101〜119)の間の切換えは、2〜60秒ごとに行われることを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記キャスティングロール(12)のうちの一方または両方の温度分布は、前記円筒状の管(120)の内部の二次元または三次元の温度フィールドをリアルタイムで出力するプロセスモデルによって与えられることを特徴とする、請求項16または17記載の方法。
【請求項19】
前記キャスティングロール(12)のうちの一方または両方の温度分布は、各膨張エレメント(101〜119)の平均温度をリアルタイムで出力するプロセスモデルによって与えられることを特徴とする、請求項16から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
いずれの膨張エレメント(101〜119)が増大させられなければならないかを決定するために、人工知能が付加的に利用されることを特徴とする、請求項16から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
一度に3〜9個のみの膨張エレメントが増大させられることを特徴とする、請求項16から20までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
中央に取り付けられた膨張エレメント(110)のみが、永続的に増大させられることを特徴とする、請求項16から21までのいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記キャスティング面(12A)の端部に配置された前記膨張エレメント(101,119)が、永続的に増大させられることを特徴とする、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記キャスティングロール(12)のうちの少なくとも一方が、請求項1から14までのいずれか1項に従って設計されていることを特徴とする、請求項16から23までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、双ロールキャスタにおける連続的なキャスティングによる金属ストリップのキャスティングに関する。
【0002】
特に、本発明は、双ロールキャスタにおいて連続的なキャスティングによって金属ストリップをキャスティングするためのキャスティングロールであって、
―実質的に円筒状の管によって形成されたキャスティング面と、
―円筒状の管内にかつ該円筒状の管に隣接して配置された、膨張リングなどの、軸対称な膨張エレメントとを備え、各膨張エレメントは、別の膨張エレメントから離隔させられており、膨張エレメントは、半径方向寸法が増大するように適応させられており、これにより、円筒状の管を膨張させ、キャスティング中にキャスティングロールのキャスティング面のロールクラウンと、キャストストリップの厚さ分布とを変化させる、キャスティングロールに関する。
【0003】
キャスティングロール管の厚さは、しばしば120mm未満、例えば、100mm未満またはさらには80mm未満である。キャスティングロール管の材料は、通常、選択的にその上にコーティングを備える、銅および銅合金から成るグループから選択される。キャスティングロールは、通常、円筒状の管を通って延びる複数の長手方向水流路を有する。
【0004】
本発明は、
−一対の逆回転するキャスティングロールであって、キャスティングロールの間にニップが設けられており、ニップから下方へキャストストリップを排出し、各キャスティングロールは、実質的に円筒状の管によって形成されたキャスティング面を有する、一対の逆回転するキャスティングロールを使用し、
−さらに、キャスティングロールのキャスティング面上に支持されたキャスティングプールを形成するために、ニップの上方に配置された金属デリバリシステムを使用し、キャスティングプールを閉じ込めるためにニップの端部に隣接した側部ダムを備え、
−少なくとも一方のキャスティングロールは、円筒状の管内にかつ円筒状の管に隣接して配置された、膨張リングなどの、軸対称な膨張エレメントを有し、各膨張エレメントは、別の膨張エレメントから離隔させられており、膨張エレメントは、半径方向寸法が増大するように適応させられており、円筒状の管を膨張させ、キャスティング中にキャスティングロールのキャスティング面のロールクラウンおよびキャストストリップの厚さ分布を変化させる、
ロールクラウンを制御することによって薄いストリップを連続的にキャスティングするための装置およびロールクラウンを制御することによって薄いストリップを連続的にキャスティングする方法に関する。
【0005】
双ロールキャスタでは、溶融した金属が、冷却される一対の逆回転させられる水平のキャスティングロールの間に導入され、これにより、金属シェルが、移動するロール面上で固化しかつキャスティングロール間のニップにおいて結合され、これにより、ロール間のニップから下方へ排出される固化したストリップ製品を製造する。「ニップ」という用語は、本明細書では、ロールが互いに最も近い一般的な領域をいう。溶融した金属は、レードルからより小さな容器または一連のより小さな容器へ注入されてもよく、これらの容器から、溶融した金属は、ニップの上方に配置された金属デリバリノズルを通って流れ、溶融した金属のキャスティングプールを形成する。キャスティングプールは、ニップのすぐ上方においてロールのキャスティング面において支持されており、ニップの長さに沿って延びている。このキャスティングプールは、通常、流出しないようにキャスティングプールの2つの端部をせき止めるために、ロールの端面と滑り係合しながら保持されたサイドプレートまたはダムの間に閉じ込められている。
【0006】
双ロールキャスタは、タレットに配置された一連のレードルによって、溶融した鋼からキャストストリップを連続的に製造することができる。金属デリバリノズルを通流する前に、溶融した金属をレードルから湯だまり、次いで可動な湯だまり内へ注入することは、キャストストリップの製造を中断することなく、タレット上で空のレードルを満杯のレードルと交換することを可能にする。
【0007】
従来技術
双ロールキャスタによって薄いストリップをキャスティングする際、キャスティングロールのキャスティング面のクラウンはキャスティングキャンペーンの間に変化する。キャスティングロールのキャスティング面のクラウンは、ひいては、双ロールキャスタによって製造される薄いキャストストリップのストリップ厚さ分布、すなわち断面形状を決定する。凸状のキャスティング面(すなわち正のクラウン)を有するキャスティングロールは、負の(凹んだ)断面形状を有するキャストストリップを製造し、凹状のキャスティング面(すなわち負のクラウン)を有するキャスティングロールは、正の(すなわち盛り上がった)断面形状を有するキャストストリップを製造する。キャスティングロールは、概して、通常はクロムまたはニッケルによって被覆された銅または銅合金から形成されており、冷却水の循環のための内部通路は、急速な固化のための高い熱流束を可能にし、そこでは、キャスティングロールは、キャスティングキャンペーン中に溶融した金属に曝されることによって実質的な熱変形を受ける。
【0008】
薄いストリップキャスティングでは、典型的なキャスティング条件下において所望のストリップ断面厚さ分布を生ぜしめるために、ロールクラウンが望まれる。キャスティング中のキャスティングロールのキャスティング面における盛り上がったクラウンに基づき、低温時にキャスティングロールに初期クラウンを機械加工するのが通常である。しかしながら、低温条件とキャスティング条件との、キャスティングロールのキャスティング面の形状の違いを予測することが困難である。さらに、キャスティングキャンペーン中のキャスティングロールのキャスティング面のクラウンは、著しく変化する可能性がある。キャスティングロールのキャスティング面のクラウンは、キャスタのキャスティングプールに供給される溶融した金属の温度の変化、キャスティングロールのキャスティング速度の変化、および溶融した鋼の組成の僅かな変化などのその他のキャスティング条件により、キャスティング中に変化する可能性がある。
【0009】
ストリップ幅にわたって測定された厚さ分布は、連続的に変化している。キャスティングロールのニップと、第1の高温の圧延スタンドへの入口との間のどこかでストリップ分布が測定されると、ストリップ幅にわたって最大で30マイクロメートルまたはさらには40マイクロメートルのばらつきを示す。ストリップ厚さの最大で15〜30個の山と谷を、ストリップの全幅にわたって見ることができる。物理的なストリップエッジにおいて、いわゆるエッジドロップ(すなわち、ストリップエッジの近くのストリップ幅方向における局所的な厚さ変化)は、さらに、最大で100マイクロメートル以上の値を有する可能性がある。
【0010】
したがって、キャスティング中にキャスティングロールのキャスティング面におけるクラウンの形状、ひいては双ロールキャスタによって製造される薄いキャストストリップの断面厚さ分布を直接的にかつ厳密に制御するための確実かつ効果的な方法の必要性が存在する。
【0011】
国際公開第2016/083506号は、キャスティングロールを形成する円筒状の管内でかつ円筒状の管に隣接して位置決めされた膨張リングによってキャスティング面におけるクラウンを制御することによって、キャスティングロールクラウン、ひいては断面ストリップ厚さ分布を制御する方法を開示している。膨張リングは、ここではキャスティングロールのエッジおよび/またはキャスティングロールの中央において、電気的に加熱される。この方法は、エッジドロップを制御するための望ましい効果をすでに示している。
【0012】
発明の概要
本発明の1つの目的は、ストリップ幅にわたるストリップ表面の山および谷をさらに減じることである。
【0013】
本発明によれば、これは、膨張リングなどの、複数の軸対称な膨張エレメントが円筒状の管の全長に沿って分布させられており、かつ膨張エレメントへの電力供給を1つまたは複数の膨張エレメントから1つまたは複数の別の膨張エレメントへ切り換えるためにキャスティングロール内またはキャスティングロール上に電力スイッチが配置されているとき、キャスティングロールによって達成することができる。
【0014】
電力供給を1つまたは複数の膨張エレメントから1つまたは複数の別の膨張エレメントへ切り換えるとは、1つまたは複数の膨張エレメントに供給される電力が減じられる一方で、1つまたは複数の別の膨張エレメントに供給される電力が増大させられることを意味する。1つまたは複数の膨張エレメントに供給される電力が減じられるとき、特定の膨張エレメントのための電力の減少は、ゼロまで減少させることができるが、ほとんどの場合、ゼロまで減少させられることはない。他方、1つまたは複数の別の膨張エレメントに供給される電力を増大させ始めるとき、特定の膨張エレメントは、その瞬間、既に電力を受け取っていることができるまたはその瞬間、電力を受け取っていない。
【0015】
膨張エレメントは、円筒状の管(キャスティングロールスリーブとも呼ばれる)に沿って分布させられているので、キャスティング面全体のためにまたはエッジまたは中央だけのために、キャスティング面の直径および/またはキャスティング面の温度を変化させることができる。キャスティング面の直径および/またはキャスティング面の温度を局所的に変化させるために、複数の膨張エレメントが必要である。本発明は、キャスティングロールごとに少なくとも2個の膨張エレメントを必要とするが、少なくとも3個の膨張エレメントが設けられることが好ましい。キャスティングロールごとに11個以上、16個以上またはさらに21個以上の膨張エレメントが、さらにより好ましい。したがって、膨張エレメントの典型的な数は、16〜30個の、膨張リングなどの軸対称な膨張エレメントである。
【0016】
本発明の1つの好ましい実施の形態において、膨張リングなどの、軸対称な膨張エレメントは、キャスティング面の端部を含む円筒状の管の全長に沿って分布させられている。
【0017】
本発明によれば、電力スイッチが、キャスティングロール内またはキャスティングロール上に配置されており、これは、例えば膨張エレメント加熱のためにキャスティングロールに供給される利用可能な電力の総計を、接続された膨張エレメントのうちの多くに、等しい分量でまたは異なる割合で分配するためである。各膨張エレメントは、電気を使用することによって別々に加熱することができ、これにより、別々に温度を制御することができる。
【0018】
このような電力スイッチはキャスティングロールに組み込まれているので、各膨張エレメントのためのそれぞれの制御ユニットを備える、電気エネルギ供給およびセンサ信号送信のための10以上のスリップリングは必要ない。これらのスリップリングは、キャスティングロールのより長いシャフトを必要とし、ひいては、キャスティングロールを一方の端部において著しく延長させる。電力スイッチにより、それぞれの制御信号をキャスティングロール、すなわち電力スイッチへ伝送するために1つの制御ワイヤのみが必要とされる。
【0019】
本発明の1つの好ましい実施の形態において、膨張エレメント、好ましくは複数の膨張エレメント、特に各膨張エレメントは、40〜150mm、好ましくは40〜100mm、より好ましくは50〜85mmの幅(キャスティングロールの軸線に対して平行に測定される)を有する。膨張エレメントは、定義によれば中央孔を有するリングの形態を有することができる、または膨張エレメントは、中央リング孔を備えないディスクの形態を有することができる。膨張エレメントの外径は、あらゆる場合、ロール管内径と公差はめ合いされる。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態において、各膨張リングは、40〜150mm、好ましくは40〜100mm、より好ましくは45〜75mmの半径方向リング厚さ(すなわち、リングの外径と内径との差)を有する。
【0021】
膨張リングは、好ましくは、少なくとも10〜50mmの壁厚および少なくとも110mm以上の外径を有する内部管に取り付けることができ、この内部管に膨張リングは公差はめ合いされている。内部管における膨張リングの軸方向位置は、リングの間のスペーサによってまたはリングのそれぞれのプレスばめ公差(例えば、収縮取付けされたリング)によって固定することができる。
【0022】
膨張エレメントの外径を、加熱によって増大させることができる。すなわち、本発明の1つの好ましい実施の形態は、各膨張エレメントには、膨張リングに最大で15kW、好ましくは3〜10kWの加熱電力を供給することができる電気抵抗加熱エレメントが装備されていることである。電気抵抗加熱エレメントは、膨張エレメントと接触したリングの形態のワイヤまたはロッドであることができる。
【0023】
全ての膨張エレメントに一緒に提供される総電力は、キャスティングロールの外周の1mあたり最大で70kW、好ましくは35kW以下であることができる。
【0024】
本発明の1つの好ましい実施の形態は、中央に取り付けられた膨張エレメントが、永続的に加熱されるように構成されていることである。これは、膨張エレメントの外面と、円筒状の管(キャスティングロールスリーブ)の内面との接触、またはさらには局所的な(熱的)クラウンと重ね合わされた円筒状の管の外方への膨らみを保証する。中央に取り付けられた膨張エレメントは、ほとんどの他の膨張リングと同じ幅を有してもよい、または全ての他の膨張リングより著しく大きな幅、例えば最大で150〜400mmの幅、を有してもよい。
【0025】
それに加えて、キャスティング面の端部に配置された膨張エレメントが、永続的に加熱されるように構成されていることが好ましい。やはり、これは、2つの膨張エレメントの外面と、円筒状の管(キャスティングロールスリーブ)の内面との接触またはさらには、円筒状の管の端部における局所的な(熱的)クラウンと重ね合わされた円筒状の管の外方への膨らみを保証する。
【0026】
本発明の好ましい実施の形態は、制御装置が、少なくともキャスティングロールおよび/または膨張リングの温度プロセスモデルに応答してまたはそれぞれの温度センサによる、膨張エレメントのうちの幾つかまたは全てにおいて予測された温度測定に応答して、各膨張エレメントの半径方向寸法を制御するように構成されていることである。したがって、膨張エレメントには、それぞれの信号を制御装置に提供するための少なくとも1つの温度センサがそれぞれ装備されていることができる。
【0027】
本発明の1つの好ましい実施の形態は、膨張エレメントには、制御装置、好ましくはキャスティングロール内に配置された制御装置に温度情報を送信するときに膨張エレメントを特定するための、少なくとも1つのRFIDタグがそれぞれ装備されていることである。
【0028】
このような制御装置、例えば、マイクロコントローラは、制御システムのメインコントローラの一部であることができ、温度を検出しかつ温度値を評価するためにRFIDタグに接続されていることができる。マイクロコントローラは、2〜60秒ごと、好ましくは5〜30秒ごとに全ての膨張エレメントにわたる(すなわち、キャスティングロールの幅にわたる)熱分布を発行し、これをメインコントローラへ送ることができ、メインコントローラは、この温度分布を(例えば、プロセスモデルによって計算された熱分布と組み合わせて)いずれの膨張エレメントが増大させられる、すなわち加熱されるべきかを制御するための入力として利用する。
【0029】
ロールクラウンを制御することによって薄いストリップを連続的にキャスティングするための本発明による装置は、
−一対の逆回転するキャスティングロールであって、キャスティングロールの間にニップが設けられており、ニップから下方へキャストストリップを排出することができ、各キャスティングロールは、実質的に円筒状の管によって形成されたキャスティング面を有する、一対の逆回転するキャスティングロールと、
−キャスティングプールを閉じ込めるためにニップの端部に隣接した側部ダムを備える、ニップの上方に配置されかつキャスティングロールのキャスティング面上に支持されたキャスティングプールを形成することができる金属デリバリシステムと、を備える装置において、
少なくとも一方のキャスティングロールは、本発明に従って設計されていることを特徴とする。
【0030】
本発明の目的は、ロールクラウンを制御することによって薄いストリップを連続的にキャスティングする方法であって、
−一対の逆回転するキャスティングロールを使用し、キャスティングロールの間にニップが設けられており、ニップから下方へキャストストリップを排出するようになっており、各キャスティングロールは、実質的に円筒状の管によって形成されたキャスティング面を有し、
−キャスティングプールを閉じ込めるためにニップの端部に隣接した側部ダムを備える、キャスティングロールのキャスティング面上に支持されたキャスティングプールを形成するために、ニップの上方に配置された金属デリバリシステムをさらに使用し、
−少なくとも1つのキャスティングロールは、円筒状の管内にかつ円筒状の管に隣接して配置された、膨張リングなどの軸対称な膨張エレメントを有し、各膨張エレメントは、別の膨張エレメントから離隔させられており、膨張エレメントは、半径方向寸法を増大させ、円筒状の管を膨張させ、キャスティング中にキャスティングロールのキャスティング面のロールクラウンおよびキャストストリップの厚さ分布を変化させるように適応させられている、方法において、
少なくとも1つの膨張エレメントは、少なくとも1つの他の膨張エレメントの半径方向寸法が増大させられないまま、好ましくは加熱によって、半径方向寸法が増大させられ、これにより、円筒状の管を膨張させるのに対し、増大させられる当該膨張エレメントの制御は、
−キャストストリップの記録された温度分布および/または
−キャストストリップの測定されたストリップ厚さ分布および/または
−キャスティングロールの測定された高温クラウンおよび/または
−キャスティングロールのうちの一方または両方の温度分布および/または
−膨張エレメントの測定された温度
に基づいて行われる、ロールクラウンを制御することによって薄いストリップを連続的にキャスティングする方法によっても達成される。
【0031】
いずれの膨張エレメントが増大させられるべきかの制御が、膨張エレメントの測定された温度に基づいて行われるならば、一方のキャスティングロールの2つ以上の膨張エレメントの温度が測定される、または両キャスティングロールの2つ以上の膨張エレメントの温度が測定される。
【0032】
したがって、膨張エレメントのうちの少なくとも幾つかの間で電力供給の切換えが行われる。このような切換えは高い頻度で行うことができるが、異なる膨張エレメントの間の切換えは、2〜60秒ごと、好ましくは5〜30秒ごとにのみ行われることが好ましい。
【0033】
本発明の1つの好ましい実施の形態において、キャスティングロールのうちの一方または両方の温度分布は、円筒状の管の内部の二次元または三次元の温度フィールドをリアルタイムで出力するプロセスモデルによって与えられる。
【0034】
代替的に、本発明の別の好ましくかつより単純な実施の形態において、キャスティングロールのうちの一方または両方の温度分布は、各膨張エレメントの平均温度をリアルタイムで出力するプロセスモデルによって与えられる。
【0035】
プロセスモデルは、円筒状の管(キャスティングロールスリーブ)内の二次元または三次元の温度フィールドの実際のステータスおよび/または各膨張エレメント、例えば、各膨張リングの平均温度をリアルタイムで提供する。加えて、プロセスモデルは、ストリップクラウンおよび熱分布の情報を提供する。これらの事実に基づき、電力を得る(すなわち、加熱される)、例えば、3、4または5個の膨張エレメントの選択がなされる。
【0036】
前に加熱された膨張エレメントはすぐに冷えないことが考慮されなければならない。
【0037】
プロセスモデルは、円筒状の管(キャスティングロールスリーブ)内の二次元または三次元の温度フィールドおよび/または少なくとも1、2または最大で15秒間継続する計算サイクルにおける各膨張エレメントの平均温度、および円形の横断面における円筒状の管(キャスティングロールスリーブ)の平均温度をリアルタイムで計算しており、これにより、円筒状の管(キャスティングロールスリーブ)のためのおよび膨張エレメントのための変形フィールド計算によって、いずれの膨張エレメントが円筒状の管に接触しており、あるストリップ分布の谷またはストリップ表面温度スポットを排除するために加熱されかつひいては多かれ少なかれ膨張させられなければならないかを予測することができる。
【0038】
円筒状の管(キャスティングロールスリーブ)内の温度フィールドのためのプロセスモデルおよび各膨張エレメントの平均温度のためのプロセスモデルを、別個のモデルとして設計することができ、したがって、別々に使用しかつ計算することができる。円筒状の管(キャスティングロールスリーブ)内の温度フィールドのためのプロセスモデルは、外部センサを省略することを助けることができる。各膨張エレメントの平均温度のためのプロセスモデルは、膨張エレメント内の温度センサを省略することを助けることができる。
【0039】
物理数学的プロセスモデルの他に、例えば、ニューラルネットワークアルゴリズムまたは関数同定問題アルゴリズム等の形式における、人工知能または機械学習方法およびモデルも、加熱のための加熱リングの選択を微調整するために使用されてもよい。したがって、本発明の1つの好ましい実施の形態は、いずれの膨張エレメントが増大、好ましくは加熱されなければならないかを決定するために、例えば、ニューラルネットワークアルゴリズムまたは関数同定問題アルゴリズムの形式の人工知能が付加的に利用されることである。
【0040】
一度に、3〜9個のみ、より好ましくは3〜5個のみの膨張エレメントが増大させられる、好ましくは加熱されることも好ましい。
【0041】
本発明の1つの好ましい実施の形態は、中央に取り付けられた膨張エレメントのみが、永続的に増大させられる、好ましくは加熱されることを提供する。加えて、キャスティング面の端部に配置された膨張エレメントが、永続的に増大させられる、好ましくは加熱されることが可能である。
【0042】
上記の方法のために、キャスティングロールのうちの少なくとも一方は、請求項に記載のキャスティングロールに従って設計されることが好ましい。
【0043】
本発明は、図面に概略的に示された好ましい実施の形態を参照することによってより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本開示の双ロールキャスタの概略的な側面図である。
【
図2A】ストリップ分布を測定するためのストリップ検査装置を有する、
図1の双ロールキャスタの一部の拡大した部分断面図である。
【
図3A】キャストストリップの中央部分に対応する膨張リングを備える
図2Aの従来技術のキャスティングロールのうちの一方の一部の長手方向断面図である。
【
図3B】A−A線において接続される、
図3Aの従来技術のキャスティングロールの残りの部分の長手方向断面図である。
【
図4】部分的な内部の詳細が点線で示された、4−4線に沿った
図3Aの従来技術のキャスティングロールの端面図である。
【
図5】5−5線に沿った
図3Aの従来技術のキャスティングロールの断面図である。
【
図6】6−6線に沿った
図3Aの従来技術のキャスティングロールの断面図である。
【
図7】7−7線に沿った
図3Aの従来技術のキャスティングロールの断面図である。
【
図8】キャストストリップのエッジ部分から間隔を置かれた2つの膨張リングを備える、
図2の従来技術のキャスティングロールのうちの一方の一部の長手方向断面図である。
【
図9】キャストストリップのエッジ部分から間隔を置かれた1つの膨張リングを備える、従来技術のキャスティングロールの一部の長手方向断面図である。
【
図10】キャストストリップのエッジ部分から間隔を置かれた2つの膨張リングと、キャストストリップの中央部分に対応する1つの膨張リングとを備える、
図2の従来技術のキャスティングロールのうちの一方の一部の長手方向断面図である。
【
図11】19個の膨張リングを備える、本発明によるキャスティングロールの長手方向断面図である。
【
図12】円筒状の管に沿った長さに対する、半ストリップの厚さの分布修正のグラフである(μm対mm)。
【0045】
発明を実施する方法
ここで
図1、
図2Aおよび
図2Bを参照すると、主機械フレーム10を含む双ロールキャスタが示されている。主機械フレーム10は、工場の床から立ち上がっており、ロールカセット11におけるモジュールに取り付けられた一対の逆回転可能なキャスティングロール12を支持している。キャスティングロール12は、以下で説明するように操作および移動を容易にするためにロールカセット11に取り付けられている。ロールカセット11は、セットアップ位置からキャスタにおける作動キャスティング位置への、ユニットとしての、キャスティングの準備ができたキャスティングロール12の迅速な移動を容易にし、キャスティングロール12が交換されるときはキャスティング位置からのキャスティングロール12の迅速な取外しを容易にする。ロールカセット11が、本明細書に記載されたようなキャスティングロール12の移動および位置決めを容易にするというその機能を果たす限り、望まれるロールカセット11の特定の構成はない。
【0046】
薄い鋼ストリップを連続的にキャスティングするためのキャスティング装置は、それらの間にニップ18を形成するように横方向に位置決めされた、キャスティング面12Aを有する一対の逆回転可能なキャスティングロール12を有する。溶融した金属が、レードル13から、金属デリバリシステムを通って、ニップ18の上方においてキャスティングロール12の間に位置決めされた金属デリバリノズル17、もしくはコアノズルに供給される。このようにして供給された溶融した金属は、キャスティングロール12のキャスティング面12Aに支持された、ニップ18の上方における溶融した金属のキャスティングプール19を形成する。このキャスティングプール19は、キャスティングロール12の端部において一対のサイド閉鎖プレートもしくはサイドダム20(
図2Aおよび
図2Bに点線で示されている)によって、キャスティング領域に閉じ込められている。キャスティングプール19の上面(概して、「メニスカス」レベルと呼ばれる)は、デリバリノズル17の下端部がキャスティングプール19内に浸されるように、デリバリノズル17の下端部より上昇してもよい。キャスティング領域は、キャスティング領域における溶融した金属の酸化を防止するために、キャスティングプール19の上方における保護雰囲気の付加を含む。
【0047】
レードル13は、通常、回転するタレット40に支持された慣用の構成のものである。金属供給のために、レードル13は、湯だまり14に溶融した金属を充填するために、キャスティング位置において、可動な湯だまり14の上方に配置されている。可動な湯だまり14は、湯だまり14を、湯だまり14がキャスティング温度近くまで加熱される加熱ステーション(図示せず)から、キャスティング位置へ移動させることができる湯だまり移動手段66に配置されていてもよい。レール39などの湯だまりガイドが、可動な湯だまり14を加熱ステーションからキャスティング位置まで移動させることができるように、湯だまり移動手段66の下方に配置されていてもよい。
【0048】
可動な湯だまり14には、溶融した金属を、湯だまり14から、スライドゲート25を通り、次いで、耐火性出口シュラウド15を通って、キャスティング位置におけるトランジションピースまたはディストリビュータ16まで流れさせるように、サーボ機構によって作動可能なスライドゲート25が取り付けられていてもよい。ディストリビュータ16から、溶融した金属は、ニップ18の上方においてキャスティングロール12の間に配置されたデリバリノズル17へ流れる。
【0049】
サイドダム20は、ジルコニアグラファイト、グラファイトアルミナ、窒化ホウ素、窒化ホウ素−ジルコニアまたはその他の適切な複合材などの耐火性材料から形成されていてもよい。サイドダム20は、キャスティングロール12およびキャスティングプール19における溶融した金属と物理的に接触することができる面を有する。サイドダム20は、サイドダム20をキャスティングロール12の端部と係合させるために、液圧式または空圧式シリンダ、サーボ機構またはその他のアクチュエータなどのサイドダムアクチュエータ(図示せず)によって可動なサイドダムホルダ(図示せず)に取り付けられている。加えて、サイドダムアクチュエータは、キャスティング中にサイドダム20を位置決めすることができる。サイドダム20は、キャスティング作業中にキャスティングロール12における金属の溶融したプールのための端部閉鎖部を形成している。
【0050】
図1は、ガイドテーブル30を横切って、ピンチロール31Aを含むピンチロールスタンド31へ移動するキャストストリップ21を製造する双ロールキャスタを示している。ピンチロールスタンド31から出ると、薄いキャストストリップ21は、キャスティングロール12から排出されたキャストストリップ21を熱間圧延することができるギャップを形成する、一対のワークロール32Aと、バックアップロール32Bとを含む、熱間圧延機32を通過し、そこで、キャストストリップ21は、ストリップを所望の厚さに減じ、ストリップ表面を改良しかつストリップ平坦度を高めるために熱間圧延される。ワークロール32Aは、ワークロール32Aを横切って、所望のストリップ分布に関連した加工面を有する。熱間圧延されたキャストストリップ21は、次いで、ランアウトテーブル33上へ移動し、そこで、水ジェット90またはその他の適切な手段を介して供給される水などの冷却材と接触することによって、または対流および放射によって、冷却されてもよい。いずれにしても、熱間圧延されたキャストストリップ21は、次いで、キャストストリップ21の張力を提供するために第2のピンチロールスタンド91を通って、次いで、コイラ92へ移動してもよい。キャストストリップ21の厚さは、熱間圧延の前には約0.3〜2.0mmであってもよい。
【0051】
キャスティング作業の最初、通常、キャスティング条件が安定しながら、短い長さの不完全なストリップが生ぜしめられる。連続的なキャスティングが確立された後、キャスティングロール21は、僅かに離反させられ、次いで、再び接近させられ、キャストストリップ12のこの前端を離断させ、後続のキャストストリップ21の真っ直ぐな先頭端部を形成する。不完全な材料は、スクラップ容器ガイドにおいて可動なスクラップ容器26内へ落下する。スクラップ容器26は、キャスタの下方のスクラップ収容位置に配置されており、以下に説明するように、シールされたエンクロージャ27の一部を形成している。エンクロージャ27は、通常、水冷式である。この時点で、通常はピボット29からエンクロージャ27における一方の側へ下方に垂れ下がった水冷式エプロン28が、キャストストリップ21の真っ直ぐな端部を、真っ直ぐな端部をピンチロールスタンド31へ供給するガイドテーブル30上へ案内するための位置へ回転させられる。エプロン28は、次いで、垂れ下がった位置へ後退させられ、これにより、キャストストリップ21が一連のガイドローラと係合するガイドテーブル30まで移動する前に、キャストストリップ21はエンクロージャ27内でキャスティングロール12の下方にループ状に垂れ下がる。
【0052】
湯だまり14からあふれ出ることがある溶融した材料を受け取るために、可動な湯だまり14の下方にオーバーフローコンテナ38が設けられていてもよい。
図1に示したように、オーバーフローコンテナ38がキャスティング位置において所望のように可動な湯だまり14の下方に配置されるように、オーバーフローコンテナ38は、レール39または別のガイドにおいて可動であってもよい。加えて、選択的なオーバーフローコンテナ(図示せず)は、ディストリビュータ16に隣接して、ディストリビュータ16用に設けられていてもよい。
【0053】
シールされたエンクロージャ27は、エンクロージャ27内の雰囲気の制御を可能にする連続的なエンクロージャ壁部を形成するように様々なシール接続部において一緒に取り付けられた複数の別個の壁部セクションによって形成されている。加えて、スクラップ容器26は、エンクロージャ27がキャスティング位置においてキャスティングロール12のすぐ下方に保護雰囲気を支持することができるように、エンクロージャ27に取り付けることができてもよい。エンクロージャ27は、エンクロージャ27の下側部分、すなわち下側エンクロージャ部分44に開口を有しており、この開口は、スクラップがエンクロージャ27からスクラップ収容位置におけるスクラップ容器26内へ移動するための出口を提供している。下側エンクロージャ部分44は、エンクロージャ27の一部として下方へ延びていてもよく、開口は、スクラップ収容位置におけるスクラップ容器26の上方に位置決めされている。本明細書および本明細書における請求項において使用される場合、スクラップ容器26、エンクロージャ27および関連する特徴に関する「シール」、「シールされた」、「シーリング」および「シールするように」は、漏れを防止するための完全なシールでなくてもよく、むしろ、通常は、僅かな許容できる漏れを生じながら所望のようにエンクロージャ27内の雰囲気の制御および支持を許容するのに適した、完全なシールに満たないものである。
【0054】
リム部分45は、下側エンクロージャ部分44の開口を包囲していてもよくかつスクラップ容器26の上方に可動に配置されていてもよく、スクラップ収容位置におけるスクラップ容器26にシールするように係合するおよび/または取り付けられることができる。リム部分45は、リム部分45がスクラップ容器26に係合するシーリング位置と、リム部分45がスクラップ容器26から分離させられるクリアランス位置との間を可動であってもよい。代替的に、キャスタまたはスクラップ容器26は、スクラップ容器26を、エンクロージャ27のリム部分45とシール係合するように上昇させ、次いで、スクラップ容器26をクリアランス位置へ下降させるためのリフティング機構を有してもよい。シールされると、エンクロージャ27およびスクラップ容器26に、エンクロージャ27内の酸素量を減じかつキャストストリップ21のための保護雰囲気を提供するために窒素などの所望のガスが充填される。
【0055】
エンクロージャ27は、キャスティング位置におけるキャスティングロール12のすぐ下方に保護雰囲気を支持する上側カラー部分43を有してもよい。キャスティングロール12がキャスティング位置にあるとき、上側カラー部分43は、
図2に示したようなキャスティングロール12に隣接したハウジング部分53と、エンクロージャ27との間の空間を閉鎖する延長位置へ移動させられる。上側カラー部分43は、エンクロージャ27内にまたはエンクロージャ27に隣接してかつキャスティングロール12に隣接して設けられてもよく、サーボ機構、液圧式機構、空圧式機構および回転アクチュエータなどの複数のアクチュエータ(図示せず)によって移動させられてもよい。
【0056】
キャスティングロール12は、以下で説明するように、内部で水冷されている。これにより、キャスティングロール12が逆回転させられると、シェルがキャスティング面12Aにおいて固化する。なぜならば、キャスティング面12Aは、キャスティングロール12の一回転ごとに、キャスティングプール19と接触しかつキャスティングプール19を通過するからである。シェルは、キャスティングロール12の間のニップ18において近寄せられ、ニップ18から下方へ排出される薄いキャストストリップ製品21を製造する。薄いキャストストリップ製品21は、キャスティングロール12の間のニップ18におけるシェルから形成され、下方へ排出され、上述のように下流へ移動させられる。
【0057】
ここで
図3A〜
図3Bを参照すると、各キャスティングロール12は、キャスティング面12Aを形成するために選択的にその上にコーティング、例えばクロムまたはニッケルを備える、銅または銅合金から成るグループから選択された金属の円筒状の管120を有する。
図3Aにおいて、従来技術によれば、膨張リング220は、キャスティング中にキャスティングロールのキャスティング面において形成されるキャストストリップの中央部分に対応する位置において円筒状の管120内にかつ円筒状の管120に隣接して配置されていてもよい。
【0058】
各円筒状の管120は、一対のスタブシャフトアセンブリ121および122の間に取り付けられていてもよい。スタブシャフトアセンブリ121および122は、それぞれ端部127および128(
図4〜
図6に示されている)を有し、これらの端部は、キャスティングロール12を形成するために、円筒状の管120の端部内にぴったりと嵌合する。これにより、円筒状の管120は、フランジ部分129および130をそれぞれ有する端部127および128によって支持され、これにより、管120内に内部キャビティ163を形成し、組み立てられたキャスティングロールをスタブシャフトアセンブリ121および122の間に支持する。
【0059】
各円筒状の管120の外側の円筒状の面は、圧延キャスティング面12Aである。円筒状の管120の半径方向厚さは、80mm以下であってもよい。管120の厚さは、40〜80mmまたは60〜80mmであってもよい。
【0060】
各円筒状の管120には、一連の長手方向水流路126が設けられている。長手方向水流路126は、一方の端部から他方の端部まで円筒状の管120の周方向厚さを貫いて長い孔を穿孔することによって形成されてもよい。孔の端部は、その後、ファスナ171によってスタブシャフトアセンブリ121および122の端部127および128に取り付けられた端部プラグ141によって閉鎖される。水流路126は、端部プラグ141を備える円筒状の管120の厚さを貫いて形成されている。スタブシャフトファスナ171および端部プラグ141の数は、必要に応じて選択されてもよい。端部プラグ141は、以下に説明されるスタブシャフトアセンブリにおける水通路を用いて、ロール12の一方の端部から他方の端部までシングルパス冷却で提供するように、または、代替的に、マルチパス冷却を提供するように配置されていてもよい。マルチパス冷却では、例えば水を給水部へ直接にまたはキャビティ163を通って戻す前に、隣接する流路126を通って冷却水の3つのパスを提供するように、流路126が接続されている。
【0061】
円筒状の管120の厚さを通る水流路126は、キャビティ163と直列で給水部に接続されていてもよい。水通路126は、冷却水がまずキャビティ163を通過し、次いで、給水通路126を通って戻りラインへ通過するか、またはまず給水通路126を通過し、次いでキャビティ163を通って戻りラインへ通過するように、給水部に接続されていてもよい。
【0062】
円筒状の管120には、肩部124を形成するように端部において周方向段部123が設けられていてもよく、それらの間に、ロール12の圧延キャスティング面12Aの加工部分を備える。肩部124は、キャスティング作業中、上述のように、サイドダム20に係合しかつキャスティングプール19を閉じ込めるように配置される。
【0063】
スタブシャフトアセンブリ121および122のそれぞれの端部127および128は、通常、円筒状の管120の端部にシールするように係合し、円筒状の管120を通って延びる水流路126に水を供給するように、
図4〜
図6に示された半径方向に延びる水通路135および136を有する。半径方向流路135および136は、冷却がシングルパスの冷却システムであるかまたはマルチパスの冷却システムであるかに応じて、例えばねじ山付き配列において、水流路126の少なくとも幾つかの端部に接続されている。水流路126の残りの端部は、例えば、水冷却がマルチパスシステムである場合に説明したように、ねじ山付き端部プラグ141によって閉鎖されてもよい。
【0064】
図7に詳細に示したように、円筒状の管120は、必要に応じて水流路126のシングルパス配列またはマルチパス配列のいずれかで円筒状の管120の厚さにおいて環状の配列で位置決めされてもよい。水流路126は、キャスティングロール12の一方の端部において半径方向ポート160によって環状のギャラリ140に接続されており、ひいては、スタブシャフトアセンブリ120における端部127の半径方向流路135に接続されており、キャスティングロール12の他方の端部において半径方向ポート161によって環状のギャラリ150に接続されており、ひいては、スタブシャフトアセンブリ121における端部128の半径方向流路136に接続されている。ロール12の一方の端部において1つの環状のギャラリ140または150を通って供給される水は、シングルパスにおいて全ての水流路126を通って並列にロール12の他方の端部まで流れ、円筒状の管120の他方の端部における半径方向通路135または136および他方の環状のギャラリ150または140を通って流出することができる。指向性流れは、必要に応じて供給および戻りラインの適切な接続によって反転されてもよい。択一的または付加的に、3つのパスなどのマルチパス配列を提供するために、水流路126のうちの選択されたものが、選択的に、半径方向通路135および136に接続されてもよいまたは半径方向通路135および136から遮断されてもよい。
【0065】
スタブシャフトアセンブリ122は、スタブシャフトアセンブリ121より長くてもよく、スタブシャフトアセンブリ122には、水流ポート133および134の2つのセットが設けられている。水流ポート133および134は、回転式水流継手131および132との接続が可能であり、回転式水流継手によって、水は、スタブシャフトアセンブリ122を通って軸方向にキャスティングロール12へまたはキャスティングロール12から送られる。作動中、冷却水は、スタブシャフトアセンブリ121および122の端部127および128をそれぞれ通って延びる半径方向通路135および136を通って、円筒状の管120における水流路126へおよび水流路126から移動する。スタブシャフトアセンブリ121には、端部127における半径方向通路135とキャスティングロール12内の中央キャビティとの間に流体連通を提供するために、軸方向の管137が取り付けられている。スタブシャフトアセンブリ122には、軸方向スペース管139が取り付けられており、中央キャビティ163と流体連通した中央水ダクト138を、スタブシャフトアセンブリ122の端部128における半径方向通路136と流体連通した環状の水流ダクト139から分離させている。中央水ダクト138および環状水ダクト139は、キャスティングロール12へのおよびキャスティングロール12からの冷却水の流入および流出を提供することができる。
【0066】
作動中、流入する冷却水は、供給ライン131を通じてポート133を通って環状ダクト139へ供給されてもよく、ポート133自体は、半径方向通路136、ギャラリ150および水流路126と流体連通しており、次いで、ギャラリ140、半径方向通路135、軸方向の管137、中央キャビティ163および中央水ダクト138を通じて水流ポート134を通って流出ライン132へ戻されてもよい。代替的に、キャスティングロール12への水流、キャスティングロール12からの水流およびキャスティングロール12を通る水流は、必要に応じて逆方向であってもよい。水流ポート133および134は、水が、必要に応じていずれかの方向にキャスティングロール12の円筒状の管120における水流路126へおよび水流路126から流れるように、水供給および戻しラインに接続されていてもよい。流れの方向に応じて、冷却水は、水流路126を通る前または水流路126を通った後にキャビティ163を通流する。
【0067】
本発明によれば、各円筒状の管120には、通常、4つ以上の膨張リングが設けられている。従来技術に属する
図8に示されているように、各円筒状の管120には、キャスティングキャンペーン中にキャスティングロールの互いに反対側の端部に形成されるキャストストリップのエッジ部分の内側450mm以内において、円筒状の管120の互いに反対側の端部において間隔を置かれた少なくとも2つの膨張リング210が設けられていてもよい。やはり従来技術に属する
図9は、キャストストリップのエッジ部分から間隔を置かれた膨張リング210を備えるキャスティングロールの一部の長手方向断面図を示している。
【0068】
代替的に、やはり従来技術に属する
図10に示したように、2つの膨張リング210は、キャスティングキャンペーン中にキャスティングロールの互いに反対側の端部に形成されるキャストストリップのエッジ部分の450mm以内において、円筒状の管の互いに反対側の端部において間隔を置かれていてもよく、かつ付加的な膨張リング200が、キャスティング中にキャスティングロールのキャスティング面において形成されるキャストストリップの中央部分に対応する位置において、円筒状の管120内にかつ円筒状の管120に隣接して位置決めされてもよい。
【0069】
電力ワイヤ222および制御ワイヤ224が、スリップリング220から各膨張リングまで延びている。電力ワイヤ222は、膨張リング200,210に電気的にパワーを与えるエネルギを供給する。制御ワイヤ224は、膨張リングに電気的にパワーを与えるエネルギを調整する。
【0070】
図11は、本発明による19個の膨張リング101〜119を備えるキャスティングロールの長手方向断面図であるが、キャスティングロール12の内側部分は省略されている。この例では、膨張リング101〜119は、ほぼ同じ幅および同じリング厚さを有する。膨張リング101および119は、キャスティング面12Aのエッジに配置されている。軸方向で見ると、膨張リング101,119の一部はキャスティング面12Aの内側に配置されており、膨張リング101,119の一部はキャスティング面12Aの外側に配置されている。隣の膨張リング102,118までの、キャスティング面12Aのエッジにおける膨張リング101,119の距離は、ここでは、2つの隣接する内側の膨張リング102〜118の間の距離より大きい。この例における、隣の膨張リング102,118までのキャスティング面12Aのエッジにおける膨張リング101,119の距離は、1つの膨張リング101〜119の幅の1.0〜1.5倍である。2つの隣接する内側の膨張リング102〜118の間の距離は、1つの膨張リング101〜119の幅より小さく、ここでは、1つの膨張リング101〜119の幅の約0.5〜0.8倍である。
【0071】
膨張リング101〜119は、例えば、収縮取付けによって、内部管180の外面に取り付けられている。この内部管180は、電気エネルギをワイヤ181から各膨張リング101〜119へ提供するためのワイヤまたはケーブルを格納することができる。また、電力供給を1つまたは複数の膨張リングから1つまたは複数の別の膨張リングへ切り換えるための電力スイッチを内部管180に配置することができる。
図4〜
図7と同様に、内部管180は、水冷の一部を含むこともできる。
【0072】
この場合は膨張リング110である中央に取り付けられた膨張リングを、永続的に加熱されるように永続的にワイヤ181に接続することができる、または電力スイッチは、中央に取り付けられた膨張リング110を永続的に加熱するように構成、プログラムまたは制御される。同じことを、キャスティング面12Aのエッジに配置された膨張リング101および119に当てはめることができる。
【0073】
各膨張リング101〜119には、スリップリング(ここには示されていない)へかつスリップリングから通じたワイヤ181を介して最大で15kW、好ましくは3〜10kWの加熱電力を各膨張リングに供給する電気抵抗加熱エレメントが装備されている。1つのキャスティングロールのスリップリングを介して提供される総電力は、それぞれのキャスティングロールの外周1mあたり最大で70kW、好ましくは最大で35kWに達することがある。
【0074】
制御装置は、キャスティングロール12の外側に配置することができ、かつ制御ワイヤ(図示せず)を介して膨張リング101〜119の加熱エレメントまたは内部管180における電力スイッチに接続することができる。制御装置は、例えば、少なくともキャスティングロール12および/または膨張リング101〜119の温度プロセスモデルに応答しておよび/または測定された膨張リング温度に応答して、各膨張リング101〜119に提供される電気エネルギを制御することによって、各膨張リング101〜119の半径方向寸法を制御する。
【0075】
キャスティング面のクラウンの変形は、円筒状の管120内に配置されたそれぞれの膨張リング101〜119の半径方向寸法を調整することによって制御されてもよい。膨張リング101〜119の半径方向寸法は、膨張リングの温度を調整することによって制御されてもよい。ひいては、キャストストリップの厚さ分布は、キャスティングロール12のキャスティング面12Aのクラウンの制御によって制御されてもよい。円筒状の管120の周囲厚さは、通常、120mm以下の厚さに形成されているので、キャスティング面12Aのクラウンは、膨張リング101〜119の半径方向寸法の変化に応答して変形させられてもよい。
【0076】
各膨張リング101〜119は、半径方向寸法が増大するように適応されており、これにより、円筒状の管120を膨張させ、キャスティング中にキャスティング面12Aのクラウンおよびキャストストリップ21の厚さ分布を変化させる。各膨張リングは電気的に加熱され、半径方向寸法が増大する。各膨張リング101〜119は、最大で15kW、好ましくは3〜10kWの加熱入力を提供してもよい。半径方向寸法の増大により生ぜしめられた力が円筒状の管120に加えられ、円筒状の管を膨張させ、キャスティング面のクラウンおよびキャストストリップの厚さ分布を変化させる。
図12は、キャストストリップ厚さ分布に対する膨張リング温度の効果を示している。
図12は、40℃から200℃までの膨張温度についての、半ストリップの厚さの分布修正対円筒状の管に沿った長さ(mm)のグラフである。膨張リング110〜119の半径方向寸法の制御およびキャスティング速度の制御によって所望の厚さ分布を達成するために、
図2および
図2Aに示したようなキャストストリップ21の厚さ分布を検出するためのストリップ厚さ分布センサ71が下流に配置されていてもよい。ストリップ厚さセンサ71は、通常、キャスティングロール12の直接制御を提供するためにニップ18とピンチロール31Aとの間に設けられている。センサは、周期的にまたは連続的にストリップの幅を横切って厚さ分布を直接測定することができるX線計またはその他の適切な装置であってもよい。代替的に、複数の非接触型センサがキャストストリップ21を横切ってローラテーブル30に配置されており、キャストストリップ21を横切った複数の位置からの厚さ測定の組合せが制御装置72によって処理され、ストリップの厚さ分布を周期的または連続的に決定する。キャストストリップ21の厚さ分布は、必要に応じてこのデータから周期的または連続的に決定されてもよい。
【0077】
各膨張リング101〜119の半径方向寸法は、他の膨張リングの半径方向寸法から独立して制御されてもよい。センサ71は、キャストストリップ21の厚さ分布を示す信号を生成する。各膨張リング101〜119の半径方向寸法は、センサによって生成された信号に従って制御され、このことが、ひいては、キャスティングキャンペーン中にキャスティングロール12のキャスティング面12Aのロールクラウンを制御する。
【0078】
さらに、キャスティングロール駆動装置は、センサ71から受信した電気信号に応答して膨張リング101〜119の半径方向寸法も変化させながらキャスティングロールの回転速度を変化させるように制御されてもよく、これは、ひいては、キャスティングキャンペーン中にキャスティングロールのキャスティング面のロールクラウンを制御する。
【0079】
各実施の形態において、膨張リングは、18/8オーステナイト系ステンレス鋼などのオーステナイト系ステンレス鋼から形成されてもよい。各膨張リングは、40〜100mmの環状寸法を有してもよい。各膨張リング101〜119は、最大で200mm、好ましくは50〜100mm、より好ましくは60〜85mmの幅を有してもよい。しかしながら、中央に取り付けられた膨張リング110は、全ての他の膨張リングより大きな幅、例えば、最大で150〜400mmの幅を有してもよい。