特許第6865884号(P6865884)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6865884X線画像における散乱補正のための装置及びX線画像における散乱補正のための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865884
(24)【登録日】2021年4月8日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】X線画像における散乱補正のための装置及びX線画像における散乱補正のための方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20210419BHJP
【FI】
   A61B6/00 350M
   A61B6/00 300J
   A61B6/00ZDM
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2020-500704(P2020-500704)
(86)(22)【出願日】2018年7月9日
(65)【公表番号】特表2020-526311(P2020-526311A)
(43)【公表日】2020年8月31日
(86)【国際出願番号】EP2018068490
(87)【国際公開番号】WO2019011832
(87)【国際公開日】20190117
【審査請求日】2021年1月8日
(31)【優先権主張番号】17181182.1
(32)【優先日】2017年7月13日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】マーク ハンス‐インゴ
【審査官】 伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−150954(JP,A)
【文献】 特許第5212376(JP,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0314584(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0148786(US,A1)
【文献】 独国特許発明第102016206559(DE,B3)
【文献】 特開2015−208638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線画像における散乱補正のための装置であって、当該装置は、
複数の命令を記憶するメモリと、
前記メモリに結合するプロセッサであって、前記命令を実行して、
X線画像を受信し、受信した前記X線画像は、重畳された構造化パターン及び物体を有し、
前記受信したX線画像から前記重畳された構造化パターンを除去して、パターン補正されたX線画像を生じさせ
前記受信したX線画像から前記パターン補正されたX線画像を減算して、構造化パターン画像を生じさせ
前記構造化パターン画像に局部構造コントラスト測定関数を適用して、構造コントラスト画像を生じさせ、前記構造コントラスト画像は、前記物体のコントラストデータと、前記重畳された構造化パターンとを含む
プロセッサと、を有し、
前記X線画像における前記散乱補正は、部分的に前記局部構造コントラスト測定関数の前記適用に基づく、
装置。
【請求項2】
前記プロセッサ回路は更に、フィルタされた構造コントラスト画像を供給するために前記構造コントラスト画像をフィルタ処理する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサ回路は更に、前記フィルタされた構造コントラスト画像に基づいて、前記X線画像の一次部分を推定する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記プロセッサ回路は更に、
前記一次部分から決定される散乱部分又は該散乱部分から導出される値に基づいて、フィルタされた散乱信号を供給し、
前記パターン補正されたX線画像から前記フィルタされた散乱信号の少なくとも一部を減算して、散乱補正されたX線画像を生じさせる、
請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記プロセッサ回路は、前記散乱部分又は該散乱部分から導出された前記にフィルタを適用する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
X線画像における散乱補正のためのシステムであって、当該システムは
重畳された構造化パターンを有するX線画像を供給するための構造パターンエレメントを有するX線画像取得装置、並びに
複数の命令を記憶するメモリと、
前記メモリに結合するプロセッサであって、前記命令を実行して、
X線画像を受信し、受信した前記X線画像は、重畳された構造化パターン及び物体を有し、
前記受信したX線画像から前記重畳された構造化パターンを除去して、パターン補正されたX線画像を生じさせ、
前記受信したX線画像から前記パターン補正されたX線画像を減算して、構造化パターン画像を生じさせ、
前記構造化パターン画像に局部構造コントラスト測定関数を適用して、構造コントラスト画像を生じさせ、前記構造コントラスト画像は、前記物体のコントラストデータと、前記重畳された構造化パターンとを含む、
プロセッサと、を有する装置であって、
前記X線画像における前記散乱補正は、部分的に前記局部構造コントラスト測定関数の前記適用に基づく、装置
を有する、システム。
【請求項7】
X線画像における散乱補正のための方法であって、当該方法が、
X線画像を受信するステップであって、受信した前記X線画像は、重畳された構造化パターン及び物体を有する、受信するステップと、
前記受信したX線画像から前記重畳された構造化パターンを除去して、パターン補正されたX線画像を生じさせるステップと、
前記受信したX線画像から前記パターン補正されたX線画像を減算して、構造化パターン画像を生じさせるステップと
前記構造化パターン画像に局部構造コントラスト測定関数を適用して、構造コントラスト画像を生じさせ、前記構造コントラスト画像は、前記物体のコントラストデータと、前記重畳された構造化パターンとを含む、ステップ
を有し、
前記X線画像における前記散乱補正は、部分的に前記局部構造コントラスト測定関数の前記適用に基づく、
方法。
【請求項8】
前記X線画像の一次部分を前記構造コントラスト画像に基づいて推定するステップを更に有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記一次部分又は該一次部分から導出される値から、フィルタされた散乱信号を決定するステップ、及び
前記パターン補正されたX線画像から前記フィルタされた散乱信号の少なくとも一部を減算して、散乱補正されたX線画像を生じさせるステップ、
を更に有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記フィルタされた散乱信号を供給するために、散乱部分又は該散乱部分から導出された値にフィルタを適用する副ステップ、
を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、X線画像における散乱補正のための方法であって、
X線画像を受信するステップであって、受信した前記X線画像は、重畳された構造化パターン及び物体を有する、受信するステップと、
前記受信したX線画像から前記重畳された構造化パターンを除去して、パターン補正されたX線画像を生じさせるステップと、
前記受信したX線画像から前記パターン補正されたX線画像を減算して、構造化パターン画像を生じさせるステップと、
前記構造化パターン画像に局部構造コントラスト測定関数を適用して、構造コントラスト画像を生じさせ、前記構造コントラスト画像は、前記物体のコントラストデータと、前記重畳された構造化パターンとを含む、ステップと、
を有し、
前記X線画像における前記散乱補正は、部分的に前記局部構造コントラスト測定関数の前記適用に基づく、
方法を実行させる1以上の実行可能な命令を記憶する、
非一時的コンピュータ読取可能媒体
【請求項12】
前記構造化パターン画像に前記局部構造コントラスト測定関数を適用して、前記構造コントラスト画像を生じさせることは、前記構造化パターン画像に、振幅に対する、絶対値関数、最小関数、最大関数、標準偏差関数、平均関数、中央値関数、及び局部高速フーリエ変換(FFT)関数のうちの少なくとも1つを適用することを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記構造コントラスト画像において、前記重畳された構造化パターンは前記物体の前記コントラストデータと重なる、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重畳された構造化パターンを持つX線画像における散乱補正のための装置及び重畳された構造化パターンを持つX線画像における散乱補正のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線画像は、人体の内部構造の見通し(洞察)を提供する。例えば、骨の構造を身体のX線画像で検査することができる。X線画像取得過程において、取得装置におけるX線放射線は、生成されているX線画像が散乱されてぼけたものとなる。
【0003】
散乱される放射線は、当該取得装置にグリッド(格子)を使用することにより低減することができる。X線画像においてグリッドにより発生される構造をパターン除去処理により除去することは既知である。
【0004】
例えば、ヨーロッパ特許出願公開第EP2196148号の技術は散乱放射線を低減するためのグリッドを使用している。放射線医学画像処理装置は、周波数分析及び帯域通過フィルタ処理を用いて当該放射線医学画像をグリッド形状の要素を含むグリッド画像及び他の要素を含む非グリッド画像に分離するための分離装置を有する。更に、除去装置は、輝度調整された非グリッド画像を非グリッド画像から減算して、グリッドの影響のない補正された画像を発生する。しかしながら、処理されたX線画像は依然として散乱構造を有する。
【0005】
更に、米国特許出願公開第2003/0091243号は、画像信号における周期パターン抑圧のための方法及び装置を提示している。画像信号に含まれる周期パターンに対応する空間周波数成分が、該画像信号に当該周期パターンのものと同一の方向の一次元フィルタ処理及びグリッド画像のものに対して垂直な方向の一次元フィルタ処理を施すことにより、該画像信号から抽出される。抽出された空間周波数成分を画像信号から減算することにより、当該画像信号において生じる空間周波数成分が抑圧される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、X線画像の散乱補正を更に改善する装置及び方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、独立請求項の主題により解決され、更なる実施態様は従属請求項に含まれる。本発明の以下に記載される態様は本発明のシステムにも当てはまることに注意すべきである。
【0008】
本発明によれば、重畳された構造化パターンを有するX線画像における散乱補正のための装置は、X線画像受信要素、パターン除去部、及び第1減算モジュールを有し、前記X線画像受信要素は、重畳された構造化パターンを有するX線画像を受信するように構成され、前記パターン除去部は、前記X線画像から前記構造化パターンを除去して、パターン補正されたX線画像を生じさせるように構成され、前記第1減算モジュールは、前記X線画像から前記パターン補正されたX線画像を減算して、構造化パターン画像を生じさせるように構成される。
【0009】
前記パターン補正されたX線画像は、前記構造化パターンのないX線画像を示す。当該X線画像が物体(被写体)を有する場合、前記パターン補正されたX線画像は該物体を示す。当該X線画像が物体を有さない場合、前記パターン補正されたX線画像はパターン補正された基準画像、即ちフラット(単調)なパターン補正された画像を示す。
【0010】
本発明は、X線画像取得システムの散乱を低減するために使用される格子(グリッド)に起因する重畳された構造化パターンを有するX線画像のコントラストを改善するために使用される。この場合、格子はX線画像取得の間における当該X線画像取得装置からの散乱を低減する。しかしながら、斯かる格子は、X線画像上にパターン構造を重畳させ、当該画像における全ての散乱を除去することはない。
【0011】
斯かるパターン構造は前記パターン除去部により除去される。補正されたX線画像における散乱を更に低減するために、構造化パターン画像においてパターン構造自体が分離される。次いで、該構造化パターン画像における分離されたパターン構造を、パターン補正されたX線画像における散乱を更に低減するために使用することができる。構造化パターン画像を解析することにより、当該画像における残存する散乱を決定することができる。このように、構造化パターン画像の助けにより、格子ラインコントラストに起因する散乱を定量化することができる。構造化パターンに起因する散乱の決定の後、構造化パターン画像から決定された散乱を用いて、補正されたX線画像を処理することができる。該処理の後、当該補正されたX線画像において格子に起因する散乱は低減されるであろう。従って、該更に処理される補正されたX線画像のコントラストは改善されるであろう。
【0012】
一例において、当該装置は処理ユニットを有することができ、該処理ユニットは該装置の各要素を制御する。
【0013】
一例において、前記パターン除去部は格子ライン除去ソフトウェアを使用することができる。
【0014】
当該構造化パターンが散乱放射を測定及び補正する目的で導入されるだけでない場合、本発明は、構造化パターンを有するX線画像の純粋なソフトウェア補正を改善することができる。
【0015】
更に、当該装置はコントラスト測定ユニットを更に有し、該コントラスト測定ユニットは、前記構造化パターン画像に局部構造コントラスト測定関数を適用して、構造コントラスト画像を生じさせるよう構成される。
【0016】
一例において、前記局部構造コントラスト測定関数は、振幅に対する、絶対値関数、最小関数、最大関数、標準偏差関数、平均関数、中央値関数、又は局部FFT関数等を有することができる。上記例の一実施態様において、該局部構造コントラスト測定関数は、例えば1mm2の局部カーネル環境に対して、1mmのカーネル及び構造化パターン画像の絶対値を用いる平均関数としてか、1mmのカーネル及び構造化パターン画像の絶対値を用いる中央値関数としてか、1mmのカーネル内の標準偏差関数としてか、1mmのカーネルを用いる最大と1mmのカーネルを用いる最小との間の差分を提供する差分関数としてか、又は局部高速フーリエ変換(FFT)から得られる振幅関数として、実行することができる。
【0017】
他の例において、当該装置はフィルタ要素を更に有し、該フィルタ要素は、フィルタされた構造コントラスト画像を供給する前記構造コントラスト画像のためのローパスフィルタである。
【0018】
他の例において、当該装置は推定ユニットを更に有し、該推定ユニットは前記X線画像の一次部分(primary fraction)を推定し、該推定は前記フィルタされた構造コントラスト画像に基づくものである。
【0019】
一例において、前記推定ユニットは前記一次部分を、前記フィルタされた構造コントラスト画像とフィルタされた基準構造化パターン画像との間の比に基づいて推定し、該基準構造化パターン画像は、構造化パターンは有するが物体は存在しない基準X線画像に基づくものである。該基準X線画像は前記X線画像と同一の焦点位置を有する。
【0020】
他の例において、当該装置は線形化モジュールを有し、該線形化モジュールは線形化されたパターン補正されたX線画像XをX=10PRE_Gcから決定し、ここでPRE_Gcはパターン補正された画像である。
【0021】
第1実施態様において、散乱補正されたX線画像Pは、前記一次部分を前記線形化されたパターン補正されたX線画像により乗算することにより決定することができる。
【0022】
散乱補正されたX線画像を低減されたノイズで供給する第2実施態様において、当該装置は、例えば、当該装置が、決定モジュール及び第2減算モジュールを更に有し、前記決定モジュールは、前記一次部分から決定される散乱部分又は該散乱部分から導出される値に基づいて、フィルタされた散乱信号を供給するように構成され、前記第2減算モジュールが、前記パターン補正されたX線画像から前記フィルタされた散乱信号の少なくとも一部を減算して、散乱補正されたX線画像を生じさせるように構成されるように実施化される。
【0023】
一例において、前記決定モジュールは、先ず、散乱部分SFを前記一次部分PFからSF=1-PFを用いて決定することができる。次いで、散乱信号SをS=X*SFにより決定することができ、ここで、Xは線形化されたパターン補正されたX線画像である。
【0024】
一例において、第2フィルタ装置は相当に大きなフィルタカーネル(即ち、1cmより大きい)を有することができる(S’=LP[S])。
【0025】
他の例において、第2減算モジュールは線形化されたパターン補正されたX線画像から前記散乱信号を減算する(P=X-S’)。
【0026】
他の例において、当該装置は対数ユニットを有し、該対数ユニットは前記散乱補正されたX線画像の対数を決定して、出力X線画像PRE_Gc_Sc=10Pを得る。
【0027】
他の例において、前記フィルタされた散乱信号を供給するために、前記決定モジュールは前記散乱部分又は該散乱部分から導出された値にローパスフィルタを適用するように構成される。
【0028】
本発明によれば、重畳された構造化パターンを有するX線画像における散乱補正のためのシステムは:X線画像取得装置;及び前述した態様の何れか1つの例による装置;を有し;前記X線画像取得装置は:構造パターンエレメントを有し;前記X線画像取得装置は構造化パターン画像成分を有するX線画像を供給する。
【0029】
一例において、前記X線画像取得装置は暗視野X線画像取得装置である。
【0030】
一例において、前記構造パターンエレメントは、前記X線画像取得装置のG2格子と検出器との間に配置される構造パターン格子とすることができる。
【0031】
他の例において、前記X線画像取得装置のG2格子は散乱線除去エレメントを有することができる。この場合、該散乱線除去エレメントは当該X線画像取得装置の検出器のナイキスト周波数に近い空間周波数で重ね合わされた条片を有することができる。該重ね合わされた条片は、例えば、G2格子の幾つかの襞(ラメラ)の高さを増加させることにより実施化することができる。この場合、これらの襞は、増加された高さの襞が結果的X線画像上に構造化パターンを形成するように選択されねばならない。例えば、144μmなる距離を持つ襞は、高さを50μm増加させることができる。
【0032】
他の例においては、G2格子のデューティサイクルを変調することができる。10μmの周期、5μmの金属及び5μmの間隙を持つ格子は、50%のデューティサイクルを有する。該デューティサイクルは、当該G2格子が150μmの50%の第1デューティサイクル及び150μmの60%の第2デューティサイクル(該第2デューティサイクルは、6μmの金属及び4μmの間隙を有する)を交互に有するように変調することができる。この例も、X線画像上に構造パターンをもたらすことができる。
【0033】
更なる例において、前記構造パターンエレメントは、条片を備えたプレートとすることができる。該プレートは、散乱の定量化のためにG2格子と検出器との間に配置することができる。該プレートは、POM又はPMMAから形成することができ、ピクセル寸法で分離された溝を有することができる。
【0034】
他の例において、前記構造パターンエレメントは振動格子とすることができる。該振動格子は、通常の散乱線除去格子に対して90度回転された向きを有し、これらを振動格子として使用することができる。構造化パターンは振動にも拘わらず可視であり、従って、本発明は結果的X線画像からの散乱を低減することができる。固定されたパターンは振動に対してぼかされ、従って、画像は更に改善される。当該システムは、取得処理が実行される態様で修正されることを要さない。
【0035】
他の例において、本発明による散乱補正は、当該システムにおけるソフトウェアオプションである。該システムは、格子認識要素を更に有することができ、該認識要素は、例えばバーコードリーダ等の識別ユニットにより当該格子を識別するように構成される。この場合、本発明による散乱補正は、重畳された構造化パターンを有する画像に自動的に適用することができる。
【0036】
本発明によれば、重畳された構造化パターンを有するX線画像における散乱補正のための方法は:a)重畳された構造化パターンを有するX線画像を受信するステップ;b)パターン除去部により、前記X線画像から前記構造化パターンを除去して、パターン補正されたX線画像を生じさせるステップ;及びc)第1減算モジュールにより、前記X線画像から前記パターン補正されたX線画像を減算して、構造化パターン画像を生じさせるステップ;を有する。
【0037】
更に、当該方法は、d)コントラスト測定ユニットにより、前記構造化パターン画像に局部構造コントラスト測定関数を適用して、構造コントラスト画像を生じさせる更なるステップを有する。
【0038】
他の例において、当該方法は、e)推定ユニットにより、前記X線画像の一次部分を前記構造コントラスト画像に基づいて推定する更なるステップを有する。
【0039】
更に、一例において、当該方法は、f)決定モジュールにより、前記一次部分又は該一次部分から導出される値から、フィルタされた散乱信号を決定するステップ、及びg)第2減算モジュールにより、前記パターン補正されたX線画像から前記フィルタされた散乱信号の少なくとも一部を減算して、散乱補正されたX線画像を生じさせるステップ、を更に有する。
【0040】
他の例において、前記ステップf)は、f1)前記フィルタされた信号を供給するために、前記一次部分又は該一次部分から導出された値にローパスフィルタを適用する副ステップを有する。
【0041】
本発明によれば、上述した装置を制御するためのコンピュータプログラム要素も提供され、該コンピュータプログラム要素は、処理ユニットにより実行された場合に、上記記載による方法を実行するように構成される。
【0042】
本発明によれば、コンピュータ読取可能な媒体も提供され、該コンピュータ読取可能な媒体は上述したプログラム要素を記憶している。
【0043】
本発明の上記及び他の態様は、後述される実施態様から明らかとなり、斯かる実施態様に関連して解説されるであろう。
【0044】
以下、添付図面を参照して、本発明の例示的実施態様を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1は、本方法の一実施態様の概略フローチャートを示す。
図2図2は、重畳された構造化パターンを持つX線画像における散乱補正のための装置の概略図を示す。
図3a図3aは、重畳された構造化パターンを持つX線画像における散乱補正のためのシステムの一実施態様の概略図を示す。
図3b図3bは、重畳された構造化パターンを持つX線画像における散乱補正のためのシステムの他の実施態様の概略図を示す。
図4a図4aは、構造化パターンエレメントの一実施態様の概略図を示す。
図4b図4bは、構造化パターンエレメントの他の実施態様の概略図を示す。
図4c図4cは、構造化パターンエレメントの他の実施態様の概略図を示す。
図5図5のa〜dは、フラットX線画像(a)、物体を有するX線画像(b)、パターン補正されたフラットX線画像(c)及びパターン補正されたX線画像(d)の概略図を示す。
図6図6のa及びbは、図5のaのフラットX線画像からパターン補正されたフラット画像を減算したもの(a)及び図5のbの物体を有するX線画像から図5のdのパターン補正されたX線画像を減算したもの(b)の概略図を示す。
図7図7のa及びbは、図6のaの構造コントラスト画像(a)及び図6のbの構造コントラスト画像(b)の概略図を示す。
図8図8のa及びbは、図7のaのフィルタされた構造コントラスト画像(a)及び図7のbのフィルタされた構造コントラスト画像(b)の概略図を示す。
図9図9は、図8のb及び図8のaの商により決定される物体を有するX線画像の一次部分の概略図を示す。
図10図10は、図9の100%からの差分により決定される物体を有するX線画像の散乱部分の概略図を示す。
図11図11は、フィルタ処理された図10の散乱部分の概略図を示す。
図12図12は、図11のフィルタ処理された散乱部分から導出される散乱信号の概略図を示す。
図13図13は、図12の散乱信号により決定される散乱補正されたX線画像の概略図を示す。
図14図14は、コンピュータ読取可能な媒体上のコンピュータプログラム要素の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
当該撮像システム及び装置を更に説明する前に、図1を参照して方法の例を更に詳細に説明する。
【0047】
図1は、本発明の方法100の一実施態様の概略フローチャートを示す。該フローチャートは、ステップ101で及びステップ115で開始する2つの枝路を示す。これら枝路はステップ106においてつながる。ステップ101で開始する枝路は物体を有する重畳された構造化パターンを持つX線画像を入力として有する一方、ステップ115で開始する枝路は重畳された構造化パターンを持つフラット較正画像を入力として有する。これら入力画像の例が、図5のa及び図5のbに示されている。
【0048】
ステップ101において、重畳された構造化パターンを有するX線画像が受信される。第1実施態様において、該重畳された構造化パターンを有するX線画像は、検出器信号の対数に比例する画像データとすることができる。指数関数的吸収により、対数データは検査される物体の形状及び厚さに比例する。斯かる対数画像データは、検出器システムのデフォルト出力である。第2実施態様において、重畳された構造化パターンを有するX線画像は、X線放射に比例する画像データとすることができる。従って、第2実施態様において、該画像データは第1実施態様の線形化された対数データである。
【0049】
ステップ102において、重畳された構造化パターンを有するX線画像から該重畳された構造化パターンが除去される。該除去は、例えばソフトウェア等のアルゴリズムにより実行することができる。グリッド線(格子ライン)の除去は、当該入力データが第1実施態様からのものであるか又は第2実施態様からのものであるかとは無関係である。当該結果は、パターン補正されたX線画像である。該パターン補正されたX線画像は、前に除去されなかった幾らかの散乱を有する。パターン補正されたX線画像の一例が、図5のdに示されている。
【0050】
ステップ103は、前記重畳された構造化パターンを有するX線画像からの前記パターン補正されたX線画像の減算を提供する。該減算は、第1減算モジュールにより実行することができる。当該結果は、構造化パターン画像である。該構造化パターン画像は、前記重畳された構造化パターン及び幾らかの散乱された物体データを有する。一例が図6のbに示されている。
【0051】
ステップ104において、上記構造化パターン画像に局部構造コントラスト測定関数が適用される。該局部構造コントラスト測定は、コントラスト測定ユニットにより実行することができる。該局部構造コントラスト測定関数は、絶対値関数、最小関数、最大関数、標準偏差関数、平均関数、中央値関数、又は振幅に対する局部FFT関数等とすることができ、記載される実施態様において、該局部構造コントラスト測定関数は絶対値関数である。従って、当該構造化パターン画像の絶対値が局部構造コントラスト測定関数により決定される。当該結果は構造コントラスト画像である。構造コントラスト画像の一例が、図7のbに示されている。
【0052】
ステップ105において、上記構造コントラスト画像にフィルタ要素によりフィルタが適用される。該フィルタ要素はローパスフィルタとすることができる。該ローパスフィルタは、小さなカーネルのローパスフィルタとすることができる。従って、当該構造コントラスト画像から該構造コントラスト画像内の高周波数変動がフィルタ除去される。当該結果は、フィルタされた構造コントラスト画像である。該フィルタされた構造コントラスト画像は、コンプトン散乱の無い最大の構造化パターンコントラストを示す画像となる。該フィルタされた構造コントラスト画像の一例が図8のbに示されている。
【0053】
ステップ115において、重畳された構造化パターンを伴うフラット較正画像が受信される。第1実施態様において、該重畳された構造化パターンを有するフラット較正画像は、検出器信号の対数に比例する画像データとすることができる。該対数画像データは、検出器システムのデフォルト出力である。第2実施態様において、重畳された構造化パターンを有するフラット較正画像は、X線放射に比例する画像データとすることができる。従って、第2実施態様において、該画像データは第1実施態様の線形化された対数データである。
【0054】
ステップ116において、重畳された構造化パターンを有する上記フラット較正画像から該重畳された構造化パターンが除去される。該除去は、例えばソフトウェア等のアルゴリズムにより実行することができる。該構造化パターンの除去は、当該入力データが第1実施態様からのものであるか又は第2実施態様からのものであるかとは無関係である。当該結果は、パターン補正されたフラット画像である。該パターン補正されたフラット画像は、前に除去されなかった幾らかの散乱を有する。パターン補正されたフラット画像の一例が、図5のcに示されている。
【0055】
ステップ117は、前記重畳された構造化パターンを有するフラット較正画像からの上記パターン補正されたフラット画像の減算を提供する。該減算は、第1減算モジュールにより実行することができる。当該結果は、フラットな構造化パターン画像である。該フラットな構造化パターン画像は、前記重畳された構造化パターンを有する。一例が図6のaに示されている。
【0056】
ステップ118において、上記フラットな構造化パターン画像に局部構造コントラスト測定関数が適用される。該局部構造コントラスト測定は、コントラスト測定ユニットにより実行することができる。該局部構造コントラスト測定関数は、絶対値関数、最小関数、最大関数、標準偏差関数、平均関数、中央値関数、又は振幅に対する局部FFT関数等とすることができ、記載される実施態様において、該局部構造コントラスト測定関数は絶対値関数である。従って、当該フラット構造化パターン画像の絶対値が局部構造コントラスト測定関数により決定される。当該結果はフラット構造コントラスト画像である。フラット構造コントラスト画像の一例が、図7のaに示されている。
【0057】
ステップ119において、上記フラット構造コントラスト画像にフィルタ要素によりフィルタが適用される。該フィルタ要素はローパスフィルタとすることができる。該ローパスフィルタは、小さなカーネルの(即ち、1mm以下の)ローパスフィルタとすることができる。従って、当該フラット構造コントラスト画像から該フラット構造コントラスト画像内の高周波数変動がフィルタ除去される。当該結果は、フィルタされたフラット構造コントラスト画像である。該フィルタされたフラット構造コントラスト画像は、コンプトン散乱の無い最大の構造化パターンコントラストを示す画像となる。フィルタされたフラット構造コントラスト画像の一例が図8のaに示されている。
【0058】
ステップ105のフィルタされた構造コントラスト画像及びステップ119のフィルタされたフラット構造コントラスト画像はステップ106の入力となり、該ステップは、推定ユニットにより、重畳された構造化パターンを有するX線画像の一次(原始)部分を推定する。該一次部分の推定は、前記フィルタされた構造コントラスト画像及び前記フィルタされたフラット構造コントラスト画像の商を決定することにより実行される。フィルタされた構造コントラスト画像が、フィルタされたフラット構造コントラスト画像により除算される。一次部分の一例が、図9に示されている。該一次部分は、如何なる散乱も有さないX線放射である一次放射及び重畳された構造を持つX線画像の全信号の商である。更に、該一次放射は可視画像に貢献するX線放射である。このように、該一次部分は、全画像における一次放射の割合、即ち重畳された構造化パターンを有するX線画像の線形バージョンである。全画像のうちの他の部分は、散乱放射である。該散乱放射及び一次放射の和が、全画像となる。
【0059】
ステップ107において、全画像における散乱放射の割合を決定する散乱部分が、前記一次部分により決定される。該決定は、当該一次部分を100%、即ち1から減算することにより実行することができる。散乱部分の一例が図10に示されている。
【0060】
ステップ108において、上記散乱部分は、大きなカーネル、即ち少なくとも1cmを有するローパスフィルタによりフィルタされる。フィルタされた散乱部分の一例が図11に示されている。
【0061】
ステップ114は、パターン補正されたX線画像の線形バージョンを供給する。
【0062】
ステップ109においては、前記フィルタされた散乱部分を上記パターン補正されたX線画像の線形バージョンに乗算することにより、該フィルタされた散乱部分から散乱信号が導出される。該散乱信号の一例が図12に示されている。
【0063】
ステップ110において、1より小さい係数が上記散乱信号に乗算される。このことは、結果的な補正された画像に幾らかの散乱を残存させる。このことは、通常は幾らかの散乱を示す普通のX線画像に外観が類似するような結果的補正画像を提供するために実行することができる。従って、散乱信号の一部のみが、当該パターン補正されたX線画像から散乱を除去するために使用される。ステップ110はオプションである。散乱信号の一部を決定するために、更なる関数、例えばSF’=SF-beta*SF2(ここで、betaは0.1〜0.5の範囲内、好ましくは0.3であり、SFは前記散乱部分である)を用いることができる。
【0064】
ステップ111において、ステップ110の散乱信号及びステップ114からのパターン補正されたX線画像の線形バージョンから、補正された一次信号が決定される。
【0065】
ステップ112において、該補正された一次信号の対数が決定され、結果として、散乱補正されたX線画像が得られる。散乱補正されたX線画像の一例が図13に示されている。
【0066】
ステップ113において、上記散乱補正されたX線画像はディスプレイにより操作者に提供することができる。
【0067】
図2は、X線画像における散乱補正のための装置1を示し、該X線画像は重畳された構造化パターンを有している。該装置は、X線受信要素10、パターン除去部11、第1減算モジュール12、コントラスト測定ユニット13、フィルタ要素14、推定ユニット15、決定モジュール16、線形化モジュール161、第2減算モジュール17、出力ユニット18及び処理ユニット19を有する。
【0068】
X線受信要素10は、X線取得装置から画像データを受信することができるインターフェースであり得る。このことは、該X線受信要素10が当該画像データをデータ記憶部から受信し、又はX線取得装置から直接受信することができることを意味する。X線受信要素10はX線取得装置により発生される生データを、又は処理された生データである前処理されたデータを受信することができる。更に、X線受信要素10は重畳された構造化パターンを有する画像データを受信することができる。重畳された構造化パターン31は、X線画像取得装置における構造パターンエレメント又はX線画像取得装置における散乱除去エレメントの影響であり得る。供給されるX線画像30,40は、如何なる物体データも有する必要はない。該画像は、フラット(単調)なX線画像30又は物体データを有するX線画像40とすることができる。
【0069】
パターン除去部11は、X線受信要素10から受信されたX線画像30,40を処理する。該パターン除去部11は、重畳された構造化パターン31を有するX線画像30,40から、重畳された構造化パターン31を除去する。該パターン除去部11は、パターン補正されたX線画像33,43を供給する。
【0070】
第1減算モジュール12は、パターン補正されたX線画像33,43をX線画像40から減算して、構造化パターン画像32,42を供給する。該構造化パターン画像32,42は、X線画像30,40から構造化パターン31が除去されたものを有する。更に、該構造化パターン画像32,42は、パターン除去部11により除去されなかった散乱データを有する。散乱データは、撮像されるべき物体から又は前記X線画像取得装置の散乱除去エレメントから生じ得る。
【0071】
コントラスト測定ユニット13は、上記構造化パターン画像32,42に局部構造コントラスト測定関数を適用する。該局部構造コントラスト測定関数は、絶対値関数、最小関数、最大関数、標準偏差関数、平均関数、中央値関数、又は振幅に対する局部FFT関数等とすることができる。この実施態様において、該局部構造コントラスト測定関数は絶対値関数であり得る。構造化パターン画像32,42からの絶対値を供給する局部構造コントラスト測定関数の結果、構造コントラスト画像34,44が得られる。
【0072】
フィルタ要素14は、小さなカーネルを有するローパスフィルタである。該フィルタ要素14は、構造コントラスト画像34,44をフィルタする。このことは、当該コントラストの高周波数変化がフィルタ除去され、当該画像には低周波数コントラスト変化のみが残ることを意味する。このことは、当該画像データが平滑化されることを意味する。当該結果は、フィルタされた構造コントラスト画像36,46である。
【0073】
推定ユニット15は、X線画像40の一次部分48を、上記フィルタされた構造コントラスト画像36,46に基づいて推定する。該一次部分の推定は、物体を有する第1のフィルタされた構造コントラスト画像46及び物体を有さない基準画像である第2のフィルタされた構造コントラスト画像36でもって実行される。
【0074】
決定モジュール16は、上記一次部分48に基づいて、フィルタされた散乱信号54を供給する。一次部分48から開始して、散乱部分50を前記パターン補正された画像の全信号と一次部分48との間の差から導出することができる。例示的な第1実施態様において、該散乱部分50は大きなカーネルを持つローパスフィルタによりフィルタされ、次いで、散乱信号52が該散乱部分50及び線形化されたパターン補正されたX線画像から導出され、ここで、該線形化されたパターン補正されたX線画像は線形化モジュール161により供給することができる。例示的な第2実施態様において、前記散乱部分50は上記線形化されたパターン補正されたX線画像により乗算されて、散乱信号52を生じる。次いで、該散乱信号52は大きなカーネルを有するローパスフィルタによりフィルタされる。
【0075】
第2減算モジュール17は、前記パターン補正されたX線画像43から、フィルタされた散乱信号54の少なくとも一部を減算する。当該結果は、散乱補正されたX線画像56である。該散乱補正されたX線画像56は、前記パターン補正されたX線画像43より高いコントラストを有する。何故なら、前記散乱部分又は散乱信号における散乱データの当該処理は、該散乱部分又は散乱信号における散乱のコントラストを、フィルタされた散乱信号の如何なるノイズも加えることなく向上させるからである。従って、パターン補正されたX線画像43からのフィルタされた散乱信号の減算は、散乱を非常に効率的に除去する。
【0076】
出力ユニット18は、上記散乱補正されたX線画像56を出力することができる。該出力ユニット18は、ディスプレイ又は該散乱補正されたX線画像56のデータを供給するインターフェースとすることができる。
【0077】
処理ユニット19は、X線受信要素10、パターン除去部11、第1減算モジュール12、コントラスト測定ユニット13、フィルタ要素14、推定ユニット15、決定モジュール16、第2減算モジュール17及び出力ユニット18を制御することができる。
【0078】
図3aは、重畳された構造化パターンを持つX線画像における散乱補正のためのシステム2を示す。該システムは、X線画像取得装置20及び上記記載による装置1を有する。X線画像取得装置20は、X線放射源26及びX線検出器23を有する。X線放射源26により放出されるX線放射はG0格子25を介して伝搬する。次いで、該X線放射は、更に、G1格子24を介して、次いで、G2格子22を介して伝搬する。この実施態様において、G2格子22は構造パターンエレメント21を有することができる。該構造パターンエレメント21は、X線検出器23により検出される画像に構造パターンを重畳する。該X線検出器23により検出される画像データは装置1に供給される。
【0079】
図3bによる他の実施態様において、構造パターンエレメント21はG2格子22とX線検出器23との間に位置される。
【0080】
更なる実施態様(図示略)において、当該システムは振動格子(oscillating grid)を有することができる。ソフトウェア格子モデルのパラメータは、本発明によれば測定を用いて調整される。多数の生データが記憶され得る。オフライン評価において、散乱モデルの所謂カーネルパラメータが、測定された散乱の結果に合致するように調整されるであろう。これらの改善されたパラメータは、通常の振動格子により取得される画像に適用することができる。
【0081】
図4aは、構造パターンエレメント21の例示的第1実施態様を示す。該構造パターンエレメント21は、襞(ラメラ)210を有するプレートとすることができる。これら襞210は、互いに同一の距離を有する。更に、襞210は、取得されるX線画像上に重畳された構造化パターンをもたらすのに十分な幅を有する。
【0082】
図4bによる他の例示的実施態様において、襞210の高さは変調させることができる。このことは、例えば、4つ置きの襞211が、これら襞210の残りのものより高いことを意味する。4番目の襞211の間の距離は、約150μmとすることができる。襞210に対する襞211の高さの増分は、約50μmとすることができる。
【0083】
図4cによる他の例示的実施態様においては、襞210のデューティサイクルを変調することができる。このことは、構造パターンエレメント21が、印刷された襞210を有する領域及び斯かる襞210より広い襞212を有する領域を有することを意味する。更に、襞212の間の空き空間は、襞210の間の空間より小さい。襞210の領域及び襞212の領域は、襞212の領域が襞210の各領域に後続し又はその逆となるように交互に位置し得る。
【0084】
図5のaは、重畳された構造化パターン31及びフラットな散乱パターン35を有するフラットなX線画像30を示す。該フラットX線画像30は、如何なる物体データも有さず、基準画像として用いることができる。該フラットX線画像30は、回転対称関数C0を用いてパラメータ化することができる。この関数C0のパラメータは線源受像器間距離(SID)、最大値、半径及び中心位置であり得る。測定値を用いて、SIDを有する半径、基準としての最大電圧値、又は例えば40°等の当該X線ビームのチルト値を記述する角形成によるパラメータとしての角形成を有する中心位置等の関数を得ることができる。これら関数の全ては当該システムとは独立のものであり、従って、C0に対する較正画像の数は約1に限定することができる。当該補正は実際のC0画像の代わりに関数C0を使用するであろう。関数C0を用いて、単一のフラットX線画像30は、幾つかのX線画像40の処理のための基準として機能することができる。
【0085】
例えば、フラット画像における最大格子コントラストを測定することができる。これによれば、X線画像におけるのと同一の電圧及びフィルタ処理を用いることができる。その結果は、基準構造コントラスト値である。該基準構造コントラスト値は、電圧に依存する。電圧が高いほど、コントラストは低くなる。このことは、電圧依存性を較正し、変換のためにルックアップテーブルを使用することを可能にする。
【0086】
格子コントラストは、時間に対して一定であるシステム変調伝達関数MTFに依存する。二次元画像を用いて、二次元最大格子コントラスト測定は、焦点までの距離が当該格子に対して指定された通りでない場合に該格子のエッジで発生する格子コントラストの偏差を考慮に入れることができる。
【0087】
一例において、二次元最大格子コントラスト測定は一定値により置換することができる。この実施態様は、残存する散乱が完全には、即ち100%の係数では補正されないであろうが、100%未満の係数による一層穏やかな補正として実施される故に、適用可能である。
【0088】
図5のbは、物体41及び重畳された構造化パターン31を有するX線画像40を示す。更に、該X線画像40は散乱パターン401を有する。当該物体41は、異なるコントラストを持つ幾つかの領域410、411及び412を有する。これら領域410、411及び412も、散乱パターン401の一部を有する。
【0089】
図5のcは、図5のaのフラットX線画像30から導出されたパターン補正されたフラットX線画像33を示す。該パターン補正されたフラットX線画像33は、フラットX線画像30における重畳された構造化パターンを除去するソフトウェアアルゴリズムであり得るパターン除去部により処理することができる。パターン補正されたフラットX線画像33は、依然として、フラット散乱パターン35を有する。
【0090】
図5のdは、図5のbの物体を有するX線画像40から導出されたパターン補正されたX線画像43を示す。該パターン補正されたフラットX線画像43は、X線画像40における重畳された構造化パターンを除去するソフトウェアアルゴリズムであり得るパターン除去部により処理することができる。該パターン補正されたX線画像43は、依然として、散乱パターン401を有する。更に、該パターン補正されたX線画像43は、領域410、411及び412を伴う物体41を有する。これら領域410、411及び412は、散乱パターン401の一部を有する。
【0091】
図6のaは、パターン除去部11によりフラットX線画像30から除去された重畳された構造化パターン31を有するフラット構造パターン画像32を示す。該フラット構造パターン画像32は、第1減算モジュール12により、フラットX線画像30からフラットパターン補正X線画像33を減算することにより取得される。該フラット構造パターン画像32は、基準画像となる。
【0092】
図6のbは、重畳された構造化パターン31及びX線画像40の物体41からの幾らかの散乱データ413、414及び415を有する構造化パターン画像42を示す。散乱データ413、414及び415は、各々、X線画像40の領域410、411及び412からの散乱データである。該構造化パターン画像42は、第2減算モジュール12により、パターン補正されたX線画像43をX線画像40から減算することにより取得される。
【0093】
図7のaは、局部コントラスト測定ユニット13により局部コントラスト測定関数を用いてフラット構造パターン画像32から導出されたフラット構造コントラスト画像34を示す。該構造パターン画像32のモードは、パターン除去部11のパターン除去アルゴリズムに依存する。幾つかの除去アルゴリズムは、平均でゼロとなる構造パターン画像32を提供する。他の除去アルゴリズムは、平均で最大半量を有する構造パターン画像32を提供する。局部コントラスト測定関数は、除去アルゴリズムに依存して選択される。説明される例において、除去アルゴリズムは平均でゼロとなる構造パターン画像32を提供する。このように、該局部コントラスト測定関数は、構造パターン画像32の絶対値を決定する絶対値関数とすることができる。
【0094】
図7のbの構造コントラスト画像44にも同様のことが当てはまる。従って、構造コントラスト画像44は、フラット構造コントラスト画像34と同じやり方で取得される。該構造コントラスト画像44のソースは、局部コントラスト測定ユニット13により上述したようなやり方で処理された構造化パターン画像42である。該構造コントラスト画像44は、重畳された構造化パターン31並びにX線画像40の領域410、411及び412からのコントラストデータ416、417及び418を有する。
【0095】
図8のaにおいて、フィルタ要素14により図7のaのフラット構造コントラスト画像34に対し、小さなカーネルを持つローパスフィルタが適用される。該ローパスフィルタの処理は、フラット構造コントラスト画像34における高周波数状態をフィルタ除去する。その結果は、フィルタされたフラット構造コントラスト画像36である。本例において、フラット構造コントラスト画像34は、当該画像の角部に高周波数状態を有する。これらの変動はフラット構造コントラスト画像36でフィルタ除去され、このことは該フラット構造コントラスト画像36の空白の角領域で明らかとなっている。
【0096】
図8のbは、フィルタ要素14により小さいカーネルを持つローパスフィルタを用いて構造コントラスト画像44をフィルタ処理することにより導出されたフィルタされた構造コントラスト画像46を示す。本例において、当該画像データにおける高周波数変動の除去は、構造コントラスト画像44のコントラストデータ416、417及び418の構造を強化することができ、これが、該フィルタされた構造コントラスト画像46のフィルタされたコントラストデータ419、420及び421に見られる。更に、本例において、該フィルタされた構造コントラスト画像46の角領域は空白であり、このことは、構造コントラスト画像44が角領域に高周波数変動を有することを示す。
【0097】
図9は、X線画像40の一次部分48を示す。該一次部分48は、前記フィルタされたフラット構造コントラスト画像36による前記フィルタされた構造コントラスト画像46の除算により得られる。当該一次部分48内には、該一次部分48におけるX線画像40の前記物体の位置に一次部分領域422、423及び424が示されている。
【0098】
当該画像の一次部分PFは、更に、鉛の背後には一次放射線は存在せず、従って、見える構造化パターンは存在せず、且つ、PF=0であると定義することができる。如何なる物体もない直接放射において、構造化パターンの可視性は最大である。ピーク間コントラスト(peak-peak-contrast)は、当該システムの変調伝達関数MTFのみにより制限され、例えば、25%である。対数画像において、このことは、露出に無関係な一定のピーク間差分(peak-peak-difference)となる。
【0099】
一次部分48は、図10に示されるような散乱部分50を決定するために使用することができる。散乱部分50は一次部分48の言わば陰画である。一次部分48の散乱部分による加算は、1となるからである。一次部分領域422、423及び424のコントラストは、散乱部分領域425、426及び427を示す散乱部分50では反転されている。
【0100】
図11は、散乱部分50を大きなカーネルを有するローパスフィルタでフィルタ処理する結果から得られるフィルタされた散乱部分52を示す。図11に示されるように、前記散乱部分領域425、426及び427は、フィルタされた散乱部分領域428、429及び430へと不鮮明にされている。当該フィルタ処理により、フィルタされた散乱部分領域428、429及び430の間のコントラストは散乱部分領域425、426及び427の間のコントラストより高くなる一方、フィルタされた散乱部分52におけるノイズは散乱部分50におけるものと同一である。
【0101】
図12は、フィルタされた散乱部分52から導出された散乱信号54を示す。散乱信号54を決定するために、前記フィルタされた散乱部分52は、線形化されたパターン補正X線画像43に対して乗算される。散乱信号54は、フィルタされた散乱領域431、432及び433により物体41を示している。更に、散乱信号54は、フィルタされた散乱パターン402を有している。
【0102】
図13に示される散乱補正されたX線画像56は、散乱信号54を線形化パターン補正X線画像43から減算すると共に、該結果に対数を適用することにより導出される。前記散乱データをフィルタ処理する(本例では、散乱部分50のフィルタ処理)ことによる散乱信号54の決定により、散乱信号54は高いコントラストを有する。従って、高コントラストの散乱信号54を線形化パターン補正X線画像43から減算することにより、結果的画像のコントラストも高くなる。第1実施態様においては、決定された全散乱信号54を線形化パターン補正X線画像43から減算することができる。このことは、散乱信号54により決定される全散乱がパターン補正X線画像43から除去されることを意味する。このことは、金属物体の背後の全ての画像データの除去(即ち、画像データがゼロに等しい)につながり得る。減算された画像には対数が適用されるので、ゼロ値はエラーを生じ得る。従って、第2実施態様によれば、散乱信号54の一部のみが、線形化パターン補正X線画像43から減算される。かくして、当該散乱の殆どは除去されるが、結果的散乱補正X線画像56には幾らかの散乱が残存する。このことは、金属物体の背後のゼロ値を、当該画像の対数が適切に補正された画像を示すようにして、回避する。限定散乱補正SF’を提供するための好ましい式は、SF’=SF-beta*SF2であり、ここで、betaは0.1〜0.5の範囲内、好ましくは0.3であり、SFは散乱部分50である。他の例において、散乱部分50は、該散乱部分50が閾値を超えた場合に、一定値に制限することができる。該一定値は閾値と同一とすることができる。
【0103】
図14による本発明の他の例示的実施態様においては、適切なシステム上で前記実施態様の1つによる方法100のステップを実行するように適合化されることを特徴とするコンピュータプログラム又はコンピュータプログラム要素が提供される。
【0104】
従って、コンピュータプログラム要素191は、本発明の一実施態様の一部であり得るコンピュータユニット上に記憶され得る。このコンピュータユニットは、前記方法のステップを実行し又は実行を誘起するように構成することができる。更に、該コンピュータユニットは、前述した装置の構成要素を動作させるように構成することができる。該コンピュータユニットは、自動的に動作し及び/又はユーザの命令を実行するように構成することができる。コンピュータプログラムは、データプロセッサ19の作業メモリにロードすることができる。該データプロセッサ19は、このように、本発明の方法を実行するように装備することができる。
【0105】
本発明の該例示的実施態様は、最初から本発明を使用するコンピュータプログラム及び更新により既存のプログラムから本発明を使用するプログラムに変化するコンピュータプログラムの両方をカバーする。
【0106】
更に、上記コンピュータプログラム要素191は、前述した方法の例示的実施態様の手順を満たすために必要な全てのステップを提供することができる。
【0107】
本発明の他の例示的実施態様によれば、CD−ROM等のコンピュータ読取可能な媒体が提供され、該コンピュータ読取可能な媒体は先の段落により説明されたコンピュータプログラム要素を記憶している。コンピュータプログラムは、光記憶媒体又は他のハードウェアと一緒に若しくは他のハードウェアの一部として供給される固体媒体等の適切な媒体により記憶及び/又は分配することができるのみならず、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムを介して等のように他の形態で分配することもできる。
【0108】
しかしながら、前記コンピュータプログラムは、ワールドワイドウェブ等のネットワークを介して提供することもできると共に、このようなネットワークからデータプロセッサの作業メモリにダウンロードすることができる。本発明の他の例示的実施態様によれば、コンピュータプログラム要素をダウンロードして利用可能にするための媒体が提供され、ここで、該コンピュータプログラム要素は本発明の前述した実施態様の1つによる方法を実行するように構成される。
【0109】
本発明の実施態様は異なる主題に関連して説明されていることに注意すべきである。特に、幾つかの実施態様は方法のタイプの請求項に関連して説明され、他の実施態様は装置のタイプの請求項に関連して説明されている。しかしながら、当業者であれば、上記及び以下の説明から、そうでないと言及しない限り、1つのタイプの主題に属するフィーチャの如何なる組み合わせにも加えて、異なる主題に関するフィーチャの間の如何なる組み合わせも本出願により開示されていると見なされることが分かるであろう。しかしながら、全てのフィーチャは、斯かるフィーチャの単なる寄せ集め以上の相乗効果を奏するように組み合わせることができる。
【0110】
以上、本発明は図面及び上記記載において詳細に図示及び説明されたが、このような図示及び説明は解説的又は例示的なもので、限定するものではないと見なされるべきである。即ち、本発明は開示された実施態様に限定されるものではない。開示された実施態様の他の変形例は、当業者によれば、請求項に記載された本発明を実施するに際して図面、当該開示及び従属請求項の精査から理解し、実行することができる。
【0111】
尚、請求項において、“有する”なる文言は他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形は複数を排除するものではない。また、単一のプロセッサ又は他のユニットは、請求項に記載された幾つかの項目の機能を満たすことができる。また、特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせを有利に使用することができないということを示すものではない。また、請求項内の如何なる符号も、当該範囲を限定するものと見なしてはならない。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図5a)】
図5b)】
図5c)】
図5d)】
図6a)】
図6b)】
図7a)】
図7b)】
図8a)】
図8b)】
図9
図10
図11
図12
図13
図14