(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865897
(24)【登録日】2021年4月8日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】低地球軌道衛星からのデータを受信するアンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 3/04 20060101AFI20210419BHJP
H01Q 19/13 20060101ALI20210419BHJP
H01Q 1/12 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
H01Q3/04
H01Q19/13
H01Q1/12 B
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-534157(P2020-534157)
(86)(22)【出願日】2017年8月29日
(65)【公表番号】特表2020-532931(P2020-532931A)
(43)【公表日】2020年11月12日
(86)【国際出願番号】RU2017000627
(87)【国際公開番号】WO2019045585
(87)【国際公開日】20190307
【審査請求日】2020年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】520070482
【氏名又は名称】ゲルシェンゾーン ウラジミール エヴゲニエヴィチ
【氏名又は名称原語表記】GERSHENZON, Vladimir Evgenievich
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲルシェンゾーン ウラジミール エヴゲニエヴィチ
【審査官】
福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】
特表2016−535473(JP,A)
【文献】
特表2002−516502(JP,A)
【文献】
特開平02−043803(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0115195(US,A1)
【文献】
特開平11−033948(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0097727(US,A1)
【文献】
米国特許第06204822(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 3/04
H01Q 1/12
H01Q 19/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低地球軌道衛星からのデータを受信するアンテナであって、前記アンテナが、
固定的に据え付けられるアンテナ反射鏡と、
可動フィードと、
前記アンテナ反射鏡の焦点面内で前記フィードを動かすように構成されているフィード位置決め装置であって、前記フィード位置決め装置が主回転軸および補助回転軸を有する、前記フィード位置決め装置と、
前記フィード位置決め装置に制御信号を送るように構成されている制御装置と、
を備えており、
前記フィード位置決め装置が、第1のアームおよび第2のアームを備えており、
前記フィードが、前記第2のアームの端部に結合されており、
前記第1のアームと前記第2のアームが、前記補助回転軸において互いに結合されており、かつ互いに対して回転されるようになされており、
前記第1のアームが、その一方の端部において前記主回転軸に結合されており、かつ前記主回転軸を中心に回転されるようになされている、
アンテナにおいて、
前記フィード位置決め装置の前記主回転軸が、前記アンテナ反射鏡の中心を通り、前記主回転軸が、前記アンテナ反射鏡の前記焦点面に垂直であり、前記フィード位置決め装置の前記補助回転軸が、前記主回転軸に平行であり、
前記第1のアームおよび前記第2のアームが等アーム構造を形成しており、各アームが、前記主回転軸および前記補助回転軸に垂直な平面内に配置されており、
前記アンテナ反射鏡の直径が少なくとも1.5mであり、かつ前記アンテナ反射鏡の焦点距離が少なくとも1.0mである、
ことを特徴とする、アンテナ。
【請求項2】
前記アンテナ反射鏡が、地表面に対して水平面内に固定されている、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記フィード位置決め装置の前記補助回転軸が、前記アンテナ反射鏡の内側に配置されている、請求項1または請求項2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記フィードが、曲線運動を行うように構成されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記アンテナ反射鏡および前記フィード位置決め装置の上方に取り付けられている電波透過性カバー、をさらに備えている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記アンテナがXバンドで動作する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記フィード位置決め装置が、前記フィード位置決め装置の構成要素を駆動するようにアダプトされている駆動部、を備えている、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項8】
前記制御装置が、所定の制御モードに基づいて前記フィード位置決め装置を制御するように構成されている、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項9】
前記アンテナ反射鏡の直径が2.0mであり、かつ前記アンテナ反射鏡の焦点距離が1.4mである、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項10】
請求項1に記載の、低地球軌道衛星からのデータを受信するアンテナ、によってデータを受信する方法であって、
− 接近する衛星に関する信号を前記制御装置を介して受信するステップと、
− 前記制御装置から制御信号を前記フィード位置決め装置に送るステップと、
− 前記制御信号に従って、前記位置決め装置によって前記フィードを前記アンテナ反射鏡に対して動かすステップと、
を含み、
前記フィードが、少なくとも1つの時間間隔中に動かされ、前記時間間隔の間、前記第1のアームおよび/または前記第2のアームが回転される、
方法。
【請求項11】
前記制御信号が、所定の制御モードに基づいて前記フィードの動きをもたらす、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィード移動型アンテナ装置(feed-motion antenna device)に関し、宇宙空間の低地球軌道衛星からの地球観測データストリームを受信するように設計されている。
【背景技術】
【0002】
現在、この技術分野においては、地上の衛星アンテナの多種多様な構造が知られている。反射鏡アンテナは、最も広く使用されているタイプの衛星アンテナである。
【0003】
(可動反射鏡を有する)フィード移動型アンテナは、衛星からの信号を受信するための機械式アンテナまたは電気機械式アンテナにおいて広く使用されている構造である。しかしながら、この解決策では、アンテナ構造全体を動かすための複雑な機構が必要である。
【0004】
さらには、固定的に据え付けられるアンテナ反射鏡を使用し、フィードを動かすことによって、スキャンを達成することができる。この解決策では、高い移動性および汎用性を有する簡易なアンテナ構造が提供される。
【0005】
例えば、特許文献1には、地球静止軌道の衛星を追跡するためのマルチビームアンテナのフィード移動機構および制御システムが開示されている。この従来技術のアンテナでは、フィードは、アンテナの非平面の焦点面に沿って動かされる。さらに、アンテナの非平面の焦点面に沿ってフィードをレール上で動かすことによって、衛星をある程度追跡することができる。
【0006】
この従来技術の構造の欠点として、アンテナが2枚の反射鏡といくつかのフィードを備えており、したがってアンテナ構造の重量が著しく増大する。2枚の反射鏡の支持構造を提供するアンテナフレームと、フィードを動かす手段は、この構造の重量にさらに寄与している。さらには、フレームが複雑であり、組み立てて設置するのが難しい。さらに、いくつかのフィードを使用するときには、受信信号に雑音が含まれうることに留意すべきである。
【0007】
さらに、特許文献2には、迅速に組み立てられて折り畳み可能な可搬型の衛星受信パラボラアンテナであって、アンテナ反射パネルと、フィード源チューナアセンブリ(feed source tuner assembly)と、それぞれの支持・調整機構と、を備えている、衛星受信パラボラアンテナ、が開示されている。この従来技術のアンテナは、コンパクトかつ実用的で持ち運びが容易であり、現場で使用することができる。
【0008】
しかしながら、この従来技術のアンテナは、フィードまたはアンテナ反射鏡の自動的な姿勢再調整機能を備えていない。したがってこのシステムは、アンテナを異なる姿勢に向け直す目的で、専門家が現場を訪れる必要がある。さらに、フィードの可動性は、アンテナ反射鏡の利用可能な開口全体をフルに使用するものではない。
【0009】
上の欠点のいくつかは、地上局と衛星との間で通信するアンテナシステム(特許文献3)において対処された。このアンテナシステムは、低地球軌道衛星および中地球軌道衛星との通信に使用され、マイクロ波周波数帯およびミリ波周波数帯において動作する広帯域衛星通信システムを備えている。このアンテナシステムは、1つまたは複数の球面反射鏡(それぞれが切断球面)と、球面反射鏡と相互に作用して機械的スキャンを提供する可動フィードと、を採用している。フィードは、2軸位置決め装置によって駆動される。
【0010】
この従来技術のアンテナの欠点として、位置決め装置の軸が反射鏡面に対するいくつかの平面に配置されている。したがって、フィードを動かすときの位置決め装置の制御がより難しくなり、したがってスキャン誤差の危険性が高まる。さらに、球面反射鏡であるアンテナ反射鏡の形状が大きな高さを特徴とし、また位置決め装置の構造によって球面反射鏡の表面が部分的にのみ露出する理由で、1つのアンテナが使用されるときには、短い時間の間、衛星軌道の狭い区間のみがスキャンされる。いくつかのアンテナ反射鏡を使用するときには、構造物の重量が増し、アンテナシステムを設置する工程がより複雑になる。
【0011】
宇宙空間の低地球軌道衛星からの地球観測高速データストリームを受信する目的には、広いアンテナ開口の理由で長焦点反射鏡が最適であると考えられる。しかしながら、長焦点反射鏡は、より正確な計算および反射鏡の調整を必要とする。可動フィードは、この問題の解決策を提供する。しかしながら、従来技術のフィード移動型アンテナ構造は、長焦点反射鏡と相互に作用して宇宙空間からの高品質データ受信を提供するのに必要なフィード位置決め装置を備えていない。さらには、設置が容易であり専門家が現場を訪れる必要のない技術的に簡単なアンテナ構造を提供することに、現在関心が寄せられている。
【0012】
したがって、(例えば環境モニタリングやインフラ監視用に)現在広く使用されている低地球軌道衛星を独立モードで追跡して衛星からの信号を受信することの可能な高い汎用性とともに、簡単な組立て、設置、およびメンテナンスを提供する構造、のニーズが存在する。
【0013】
上記に鑑み、本発明の目的は、低地球軌道衛星からのデータを受信する、容易に据え付けられるアンテナであって、衛星軌道の可能な限り広い区間からの信号受信を独立モードで提供する構造を有するアンテナ、を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5751254号明細書
【特許文献2】中国実用新案第201838708号明細書
【特許文献3】米国特許第6204822号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のこの目的は、低地球軌道衛星からのデータを受信するアンテナであって、固定的に据え付けられるアンテナ反射鏡と、可動フィードと、アンテナ反射鏡の焦点面内でフィードを動かすように構成されているフィード位置決め装置であって、フィード位置決め装置が主回転軸および補助回転軸を有する、フィード位置決め装置と、フィード位置決め装置に制御信号を送るように構成されている制御装置と、を備えている、アンテナ、によって達成される。フィード位置決め装置の主回転軸は、アンテナ反射鏡の中心を通り、主回転軸は、アンテナ反射鏡の焦点面に垂直である。フィード位置決め装置の補助回転軸は、主回転軸に平行である。フィード位置決め装置は、第1のアームおよび第2のアームを備えた等アーム構造(equal-arm structure)を備えており、各アームが、主回転軸および補助回転軸に垂直な平面内に配置されている。第1のアームは、その一方の端部において主回転軸に結合されており、かつ主回転軸を中心に回転されるようになされており、フィードは、第2のアームの端部に結合されており、第1のアームと第2のアームが、補助回転軸において互いに結合されており、かつ互いに対して回転されるようになされている。アンテナ反射鏡の直径は、少なくとも1.5mであり、アンテナ反射鏡の焦点距離は、少なくとも1.0mである。
【0016】
本発明は、長焦点アンテナによる宇宙空間からの高品質データ受信を提供する、技術的に簡単であり容易に据え付けられる構造、を提供する。さらに、本発明は、アンテナシステムの多様な構造に寄与する。
【0017】
この技術的な結果は、低地球軌道衛星からのデータを受信するアンテナの構造であって、フィード位置決め装置の主回転軸が、アンテナ反射鏡の中心を通り、かつ、アンテナ反射鏡の焦点面に垂直であり、フィード位置決め装置の補助回転軸が、主回転軸に平行であり、フィード位置決め装置が、主回転軸および補助回転軸に垂直な平面内に配置されている各アームを有する等アーム構造、を備えており、第1のアームが、一方の端部において主回転軸に結合されており、かつ、主回転軸を中心に回転されるようになされており、フィードが、第2のアームの端部に結合されており、第1のアームと第2のアームが、補助回転軸において互いに結合されており、かつ、互いに対して回転されるようになされており、アンテナ反射鏡の直径が少なくとも1.5mであり、アンテナ反射鏡の焦点距離が少なくとも1.0mである、構造、によって達成される。
【0018】
高品質データ受信/伝送を提供するためには、アンテナ反射鏡の焦点面内に可動フィードが配置されるべきであることが、当業者には明らかであろう。広い開口の長焦点反射鏡の焦点面は、アンテナ平面(すなわちアンテナの形状を特徴付ける平面)にほぼ平行である。フィード位置決め装置の主回転軸が、アンテナ反射鏡の中心を通り、かつアンテナ反射鏡の焦点面に垂直であり、かつ補助回転軸が主回転軸に平行であることに加えて、位置決め装置のアームが主回転軸および補助回転軸に垂直な平面内に配置されているという理由で、位置決め装置は、フィードを焦点面内で動かすことができる。
【0019】
さらに、主回転軸および補助回転軸ならびに等アーム構造の提案する配置構造、すなわち第1のアームが、一方の端部において主回転軸に結合されており、かつ主回転軸を中心に回転されるようになされており、フィードが第2のアームの端部に結合されており、第1のアームと第2のアームが、これらのアームの間の結合点において互いに対して回転されるようになされており、この結合点が補助回転軸に位置している、配置構造、によって、焦点と、焦点面の任意の位置の両方にフィードを位置させることのできる装置、が提供される。したがって、提供されるアンテナは、アンテナ反射鏡の面全体を使用することができ、不感帯が発生する可能性が排除され、これにより、長焦点アンテナによって宇宙空間から受信される高品質の情報が提供される。
【0020】
本アンテナの最適な寸法は、次の通り、すなわち、少なくとも1.5mのアンテナ反射鏡の直径、および、少なくとも1.0mのアンテナ反射鏡の焦点距離、である。このような寸法では、低地球軌道衛星からの高速の情報データストリームを受信することが可能になり、その一方で、小さいアンテナ重量および輸送の容易性も提供することができる。
【0021】
さらに、提案するアンテナは、アンテナ反射鏡が(地表面に対して動かない)固定位置に設置される(すなわちアンテナ反射鏡を位置決めするための機構がアンテナに存在せず、これにより多数の部品が排除される)理由で、製造するのがさらに容易であり、これにより構造がさらに単純化され、アンテナの輸送がより簡便になる。さらに、本アンテナは、任意の表面に容易に据え付けられる。
【0022】
フィード位置決め装置に制御信号を送るように構成されている制御装置によってフィードが動かされることも、重要である。この制御装置は、焦点面内の必要な位置にフィードを正確に導くことを可能にし、さらに、フィードを動かすことによって衛星軌道の最大可能な区間を追跡することを可能にする。独立してフィードを操作する能力によって、専門家が現場を訪れる必要がないことにより、アンテナのメンテナンスが簡易化される。
【0023】
実施形態の1つによれば、アンテナ反射鏡は、地表面に対して水平面内に固定されている。アンテナ反射鏡の提案する配置構造は、設置手順を簡易化し、また構造に影響する力が均一に分布する理由で、構造の安全性および耐久性に寄与する。さらに、アンテナ反射鏡の水平な姿勢により、アンテナ固定アセンブリの重量を著しく増大させることなく、かつ部品の費用を増大させずに、アンテナ反射鏡の直径を拡大・縮小する(例えば大きくする)ことが可能である。提案する解決策は、反射鏡の表面を使用するときの最大効率を提供することを目的とする。
【0024】
別の一実施形態によれば、フィード位置決め装置の補助回転軸は、アンテナ反射鏡の内側に配置されている。補助回転軸に位置する点において互いに係合している位置決め装置のアームは、フィードが焦点面上の任意の必要な位置にアクセスできるようにする。補助回転軸をアンテナ反射鏡の境界の外側に配置することは、実用的ではない。さらに、補助回転軸をアンテナ反射鏡の境界の内側に配置することにより、位置決め装置の等アーム構造における金属の消費量が減少し、したがって構造の重量が減少する。
【0025】
別の一実施形態によれば、フィードは、曲線運動を行うように構成されている。位置決め装置の構造は、曲線運動を含むさまざまな方法でフィードを焦点面上の任意の位置に動かすことを可能にし、フィードの曲線運動によって、フィードの最適な軌跡を達成することが促進される。
【0026】
別の一実施形態によれば、本アンテナは、アンテナ反射鏡およびフィード位置決め装置の上方に取り付けられている電波透過性カバー(radio transparent cover)を備えている。このカバーは、アンテナの機械的部品および電気部品を、データ受信品質に対して著しい影響を有する雨などの降水から保護する。さらに、電波透過性カバーは、フィード位置決め装置の支持構造の一部とすることができる。
【0027】
別の一実施形態によれば、本アンテナは、Xバンドで動作する。Xバンドでは、低地球軌道衛星からのデータの受信が可能である。さらに、この周波数範囲で動作する小型アンテナは、製造するのが容易であり、これにより輸送が容易になり、したがってアンテナの使用が簡易化される。
【0028】
別の一実施形態によれば、フィード位置決め装置は、フィード位置決め装置の構成要素を駆動するようになされている駆動部を備えている。この解決策では、フィード位置決め装置のアームを動かすことが可能になり、したがってフィードを動かすことが可能になる。
【0029】
別の一実施形態によれば、制御装置は、所定の制御モードに基づいてフィード位置決め装置を制御するように構成されている。アンテナ受信エリア内に位置する衛星の時間間隔および移動軌道が既知である場合、焦点面内のフィードの動きの軌跡を、事前に定義しておくことができる。したがって、定義された制御モードに基づくフィード位置決め装置は、自動化された構造をもたらす。
【0030】
アンテナ反射鏡の直径は2.0mであり、かつアンテナ反射鏡の焦点距離は1.4mであることが好ましい。このような寸法では、低地球軌道衛星からの高速の情報データストリームを受信することが可能になり、その一方で、小さいアンテナ重量および輸送の容易性も維持される。
【0031】
本発明の目的は、低地球軌道衛星からのデータを受信する提供されるアンテナによってデータを受信する方法、によってさらに達成され、本方法は、接近する衛星に関する信号を制御装置を介して受信するステップと、制御装置から制御信号をフィード位置決め装置に送るステップと、制御信号に従って、位置決め装置によってフィードをアンテナ反射鏡に対して動かすステップと、を含む。フィードは、少なくとも1つの時間間隔中に動かされ、この時間間隔の間、第1のアームおよび/または第2のアームが回転される。
【0032】
提案する方法の技術的な結果として、アンテナを使用するスキャン時におけるカバレッジエリアが増大し、それと同時に、衛星データの高い受信精度がさらに提供される。
【0033】
実施形態の1つによれば、制御信号は、所定の制御モードに基づいてフィードの動きをもたらす。
【0034】
したがって、提案するアンテナ構造では、長焦点アンテナ反射鏡と、反射鏡に対して可動なフィードとを使用することによって、衛星軌道の可能な限り広い区間から信号を受信することが可能になる。提案する位置決め装置の構造は、焦点面内での安定かつ確実なフィード動作を提供し、低地球軌道衛星からの高い空間分解能の地球観測高速データストリームを受信することを可能にする。さらに、提案するアンテナは、構造の安全性および耐久性のあらゆる要件を満たし、技術的に簡単であり、設置が容易である。
【0035】
以下では、本発明について、添付の図面を参照しながらさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一実施形態に係るアンテナ構造の概略図を示している。
【
図2】本発明の一実施形態に係る、電波透過性カバーを有するアンテナを示している。
【
図3】活動中の地球リモートセンシング衛星から本アンテナによって受信された画像の例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
低地球軌道衛星からのデータを受信する提案するアンテナは、可動フィードを有する長焦点アンテナ反射鏡を備えている。
【0038】
低地球軌道衛星からのデータを受信するアンテナ(
図1)は、広い開口を有する放物面形状を有する固定的に据え付けられるアンテナ反射鏡1(長焦点アンテナ反射鏡)を備えている。本アンテナは、可動フィード2と、アンテナ反射鏡1の焦点面4内でフィード2を動かすように構成されているフィード位置決め装置3と、をさらに備えている。フィード2の構造は、従来技術において使用される副反射鏡を含まず、したがってアンテナ反射鏡1の妨害物が減少する。本アンテナは、フィード位置決め装置に制御信号を送るように構成されている制御装置(図示していない)をさらに備えている。この実施形態においては、アンテナ反射鏡1は、パラボラ反射鏡であり、アンテナ支持構造の一部を構成している脚部5によって表面に据え付けられる。この支持構造は、フィード2の位置決め装置3を保持するフレーム6(
図2)をさらに備えている。
【0039】
別の実施形態においては、アンテナ反射鏡は、修正された形状を有することができ、別の方法で(例えば吊るす、または支持体に取り付けることによって)固定的に据え付けることができる。
【0040】
放物面反射鏡は、特に、開口直径に対する焦点距離の比(f/D)が異なる。長焦点アンテナは、0.5より大きいf/D比を有するアンテナであり、これに対して短焦点アンテナは、0.3未満のf/D比を有する。一方で焦点距離は、反射鏡の深さに関連付けられ、すなわち焦点距離が小さいほど、反射鏡は深い。反射鏡の深さは、アンテナの電気的パラメータに対する大きな影響を有する。浅い反射鏡では、深い反射鏡と比較して、より均一に電波が供給され、このことは、より高い増幅係数に寄与する。
【0041】
長焦点アンテナによって宇宙空間からの高品質データ受信を提供する、技術的に簡単であり容易に据え付けられる構造を提供するという技術的な結果は、主回転軸7および補助回転軸8を備えた位置決め装置3によって達成され、この場合、フィード2の位置決め装置3の主回転軸7が、アンテナ反射鏡1の中心を通り、かつアンテナ反射鏡1の焦点面に垂直であり、フィード2の位置決め装置3の補助回転軸8は、主回転軸7に平行である。
【0042】
この技術的な結果は、等アーム構造9を備えたフィード2の位置決め装置3によってさらに達成され、等アーム構造9の各アームは、主回転軸7および補助回転軸8に垂直な平面内に配置されている。第1のアーム11は、一方の端部において主回転軸7に結合されており、かつ主回転軸7を中心に回転されるようになされており、フィード2は、第2のアーム12の端部に結合されており、第1のアーム11と第2のアーム12が、これらのアームの間の結合点において互いに対して回転されるようになされており、この結合点は、補助回転軸8に位置している。アンテナ反射鏡1の直径は少なくとも1.5mであり、アンテナ反射鏡1の焦点距離は少なくとも1.0mである。
【0043】
広い開口の長焦点反射鏡の焦点面は、アンテナ平面にほぼ平行である。フィード2の位置決め装置3の主回転軸7がアンテナ反射鏡1の中心を通り、かつアンテナ反射鏡1の焦点面4に垂直であり、かつ補助回転軸8が主回転軸7に平行であることに加えて、位置決め装置3のアーム11,12が主回転軸7および補助回転軸8に垂直な平面内に配置されているという理由で、位置決め装置3は、フィード2を焦点面4内で動かすことができる。
【0044】
さらに、主回転軸7および補助回転軸8ならびに等アーム構造の提案する配置構造、すなわち第1のアーム11が、一方の端部において主回転軸7に結合されており、かつ主回転軸7を中心に回転されるようになされており、フィード2が第2のアーム12の端部に結合されており、第1のアーム11と第2のアーム12が、これらのアームの間の結合点において互いに対して回転されるようになされており、この結合点が補助回転軸8に位置している、配置構造、によって、焦点と、焦点面4の任意の位置の両方にフィード2を位置させることのできる装置、が、提供される。したがって、このような配置構造では、アンテナ反射鏡の面全体を使用することが可能になり、不感帯が発生する可能性が排除され、これにより、長焦点アンテナによって宇宙空間から受信される高品質の情報が提供される。
【0045】
本アンテナの最適な寸法は、次の通り、すなわち、少なくとも1.5mのアンテナ反射鏡の直径、および、少なくとも1.0mのアンテナ反射鏡の焦点距離、である。このような寸法は、アンテナ反射鏡の可能な限り低い給電損失を達成することを目的とし、低地球軌道衛星からの高速の情報データストリームを受信することを可能にする。さらには、開示されるアンテナの寸法では、軽量かつ容易に輸送される装置が提供される。
【0046】
さらには、フィード2の位置決め装置3に制御信号を送るように構成されている制御装置(図示していない)によって、フィードが動かされることに留意されたい。この制御装置は、焦点面4内の必要な位置にフィード2を正確に導くことを可能にし、さらに、フィード2を動かすことによって衛星軌道の最大可能な区間を追跡することを可能にする。独立してフィード2を操作する能力によって、専門家が現場を訪れる必要がないことにより、アンテナのメンテナンスが簡易化される。
【0047】
提案するアンテナは、アンテナ反射鏡が(地表面に対して動かない)固定位置に設置される(すなわちアンテナ反射鏡を位置決めする機構がアンテナに存在せず、これにより多数の部品が排除される)理由で、製造するのがさらに容易であり、これにより構造がさらに単純化され、アンテナの輸送がより簡便になる。さらに、本アンテナは、任意の表面に容易に据え付けられる。
【0048】
アンテナ反射鏡1の好ましい向きは、地表面に対して水平面内に固定的に据え付けられる。アンテナ反射鏡1の提案する配置構造は、設置手順を簡易化し、構造に影響する力が均一に分布する理由で、構造の安全性および耐久性に寄与する。さらに、アンテナ反射鏡1の水平な姿勢により、アンテナ固定アセンブリの重量を大幅に増大させることなく、かつ部品の費用を増大させずに、アンテナ反射鏡1の直径を拡大・縮小する(例えば大きくする)ことが可能である。開示する解決策は、反射鏡の表面の使用の最大効率を提供することを目的とする。
【0049】
本発明の別の重要な特徴は、フィード位置決め装置の補助回転軸8がアンテナ反射鏡1の内側に配置されていることである。補助回転軸8に位置する点において互いに係合している位置決め装置3のアーム11,12は、フィード2が焦点面上の任意の必要な位置にアクセスできるようにする。補助回転軸8をアンテナ反射鏡1の外側に配置することは、実用的ではない。さらに、補助回転軸8をアンテナ反射鏡1の内側に配置することにより、位置決め装置3の等アーム構造9における金属の消費量が減少し、したがって構造の重量が減少する。
【0050】
さらに、フィードは、直線運動および/または曲線運動を行うことができる。位置決め装置の構造は、フィード2を焦点面4上の任意の位置に動かすことを可能にする。フィード2の曲線運動によって、フィード2の最適な軌跡を達成することが促進される。
【0051】
本アンテナの機械的部品および電気部品を、受信品質に対して著しい影響を有する降水から保護する目的で、いくつかの実施形態においては、アンテナ反射鏡1およびフィード2の位置決め装置3の上方に取り付けられている電波透過性カバー13が使用される。さらに、電波透過性カバー13を、フィード位置決め装置の支持構造の一部とすることができる。好ましい実施形態においては、カバーは、Xバンドにおける最小のデータ損失を提供するプラスチックまたはプレキシガラス(登録商標)から作製される。
【0052】
低地球軌道衛星からのデータ受信を提供する最適な周波数帯は、Xバンドである。さらに、この周波数範囲で動作する小型アンテナは、製造するのが容易であり、これにより輸送が容易になり、したがってアンテナの使用が簡易化される。
【0053】
位置決め装置(したがってフィード)を動かす目的で、等アーム構造の結合点(主回転軸および補助回転軸に位置する)において駆動部を使用することができる。この解決策では、位置決め装置のアームを同時に動かす、および個別に動かすことの両方が可能になり、したがってフィードの正確な位置決めが提供される。
【0054】
制御装置が、所定の制御モードに基づいてフィード位置決め装置を制御するように構成されている実施形態が考えられる。アンテナの受信エリア内に位置する衛星の時間間隔および移動軌道が既知である場合、焦点面内のフィードの動きの軌跡を、事前に定義しておくことができる。したがって、所定の制御モードに基づくフィード位置決め装置は、自動化された構造をもたらす。
【0055】
本アンテナによる、低地球軌道衛星からのデータ受信は、次のように行うことができる。アンテナがまだ設置されていないときには、アンテナを設置エリアに搬送し、必要な衛星の軌道が捕捉されるようにアンテナ反射鏡1を位置決めする。次にアンテナフレーム6を取り付け、アンテナフレーム6に位置決め機構3およびフィード2を取り付ける。衛星が接近するときに、接近する衛星に関する信号を制御装置(図示していない)によって受信する。次に制御装置からフィード2の位置決め装置3に制御信号を送る。次に位置決め装置3によって、制御信号に従ってフィード2をアンテナ反射鏡1に対して動かす。少なくとも1つの時間間隔中にフィード2を動かし、この時間間隔の間、フィードを直線に沿って、および/または曲線に沿って動かす目的で第1のアーム11および/または第2のアーム12を回転させる。
【0056】
アンテナによってデータを受信する、開示する方法では、もたらされる技術的な結果として、アンテナを使用するスキャン時におけるカバレッジエリアが増大する一方で、衛星データの高い受信精度がさらに提供される。
【0057】
制御信号が、所定の制御モードに基づいて位置決め装置によるフィードの動きをもたらすことがさらに考えられる。例えば、この場合、必要に応じてフィードを位置決めする目的で、任意の必要な方法で第1のアームおよび第2のアームを同時または連続的に回転させることによって、設定された時刻にフィードを動かす。
【0058】
好ましい実施形態においては、低地球軌道衛星からのデータを受信するアンテナは、0.6以上のf/D比を有する長焦点反射鏡を備えているべきである。このような構造では、反射鏡の焦点面内でのフィードの平行な動きのみを利用してビームスキャンを制御することが可能になり、したがって運動図(kinematic diagram)が最大限に単純化される。上のパラメータは、直径2m、焦点距離1.4mのアンテナ反射鏡によって最適に満たされる。さらに、Xバンド波長のフィードの回転領域半径は、最大で0.5mである。このようなアンテナパラメータでは、宇宙空間からの地表面の高速(最大500Mbit/s)情報データストリームを受信する目的で、天頂付近の軌道の短い区間(200kmの軌道距離に対応する約30秒)の間、(地表面から約600〜650km上方の)低地球軌道衛星を追跡し、1メートルまたはそれより高い空間分解能の地表面の画像を提供することが可能になる。開示した実施形態においては、本アンテナは、設置地点から半径100〜150kmの局所領域の情報を提供する。このアンテナ構造では、アンテナのコンパクトな寸法を維持しながら、最適なデータ受信パラメータが提供される。
【0059】
なお、本発明は、さまざまな用途(緊急時、教育プログラム、環境モニタリング、局所的な(地域の)天気予報、林業、農業、インフラ監視(ビル、道路、石油やガスのパイプラインなどの監視)、物流サービスなどを含む)において使用できることに留意されたい。
【0060】
図3は、本アンテナの機能を実証する目的で、本発明の、データを受信するアンテナによって、2016年12月7日にモスクワにおいてTERA衛星から受信された画像を示している。
【0061】
したがって、提案するアンテナの構造では、長焦点アンテナ反射鏡と、反射鏡に対して可動なフィードとを使用することによって、衛星軌道の可能な限り幅広い区間から信号を受信することが可能になる。提案する位置決め装置の構造は、焦点面内での安定かつ確実なフィード動作を提供し、低地球軌道衛星からの高い空間分解能の地球観測高速データストリームを受信することを可能にする。提案するアンテナは、構造の安全性および耐久性のあらゆる要件を満たし、技術的に簡単であり、設置が容易である。
【0062】
本発明は、説明の中で例として開示されている特定の実施形態によって制限されるようには意図されていない。本発明は、添付した請求項において定義される本発明の趣旨および範囲内に含まれるすべての可能な修正形態および代替実施形態を含有する。