(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記歯科用無機充填剤が、非酸反応性充填剤であり、ナノ粒子及び/又はナノ粒子のクラスター、金属酸化物粒子、シリカ粒子、ジルコニア粒子、アルミノシリケートガラス、ドープアルミノシリケートガラス、及びこれらの組み合わせを含み、
前記粒子が、5ナノメートル〜20ミクロンの平均粒径を有し、
前記粒子の前記少なくとも1種のシランによる表面被覆率が少なくとも25%である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の表面処理された歯科用無機充填剤。
表面処理された歯科用無機充填剤を調製する方法であって、歯科用無機充填剤を、請求項1〜10のいずれか一項に記載の少なくとも一種のシランと、前記表面処理された歯科用無機充填剤を形成するのに有効な条件下で接触させることを含む、方法。
【発明の概要】
【0004】
表面改質された無機充填剤粒子は、多くの場合、典型的には、剛性無機粒子に付着した複数の反応性基を有する天然応力集中部分として機能する。無機粒子を表面改質するために多くの場合使用されるシランは、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランである。代替的な(メタ)アクリレート官能性シランを組み込むための報告された試みは、著しい応力低減をもたらさず、多くの場合、代替のシランで処理された材料の応力プロファイルの増加をもたらした。メタクリレート官能性シランを非官能性シランで置き換えることによって応力を低減することができるが、機械的特性が犠牲になる。
【0005】
シランの有機部分にウレタン及び/又は尿素基を含むことができる、少なくとも1つの(メタ)アクリル化シランで処理された表面を有する歯科用無機充填剤を含む歯科用充填剤が、本明細書に開示される。少なくとも1つの(メタ)アクリル化シランで処理された表面を有する、これらの開示された歯科用無機充填剤を含む歯科用組成物は、硬化性歯科用組成物を硬化する際に生じる応力を低減することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される硬化した歯科用組成物は、最終複合材料の満足のいく機械的特性を維持しながら、著しい応力低減(例えば、25〜50%の応力低減)を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の歯科用充填剤は、市場で入手可能な低応力ウレタンメタクリレートモノマーとの改善された適合性を有することができる。
【0006】
一態様では、本開示は、少なくとも1種のシランで処理された表面を有する歯科用無機充填剤を提供する。
【0007】
一実施形態では、少なくとも1種のシランは、式:
【化1】
[式中、RSiは、式−Si(Yp)(R6)3−p(式中、Yは、加水分解性基であり、R6は、一価のアルキル基又はアリール基であり、pは、1、2、又は3である)のシラン含有基であり、各R1、R2、及びR3は、独立に、H、アルキル基、アリール基、アルカリール基、又はアラルキル基であり、R4は、H、アルキル基、アリール基、アルカリール基、アラルキル基、又は式−(CH2)m−(A)(式中、mは、1〜6である)の基であり、nは、1〜6であり、qは、0又は1であり、tは、0又は1であり、Aは、式X1−C(O)−C(R7)=CH2(式中、X1は、−O、−S、又は−NR7であり、各R7は、独立に、H、又はC1〜C4アルキル基である)の(メタ)アクリル基であり、R5は、H、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルカリール基、アラルキル基、式(RSi)−(CR1R2)n−(NH−C(O)−O−CH2−CH2)q−の基、式(RSi)−(CR1R2)n−NH−C(O)−N(R8)−(CH2)m−の基、式−(CH2)m−(A)の基、式−(CH2)m−N(R8)−C(O)−NH−(CH2−CH2−O)t−CR3R4−CH2−(A)の基、又は式−(CH2)m−N(R8)−C(O)−NH−R9の基であり、式中、各m及びnは、独立に、1〜6であり、qは、0又は1であり、tは0又は1であり、各R1、R2、R3、R4、RSi、及びAは、上に定義した通りであり、R8は、H、又は式−(CH2)m−NH−C(O)−NH−(CH2−CH2−O)t−CR3R4−CH2−(A)の基、式−(CH2)m−NH−C(O)−NH−(CR1R2)n−(RSi)の基、又は式−(CH2)m−NH−C(O)−NH−R9の基であり、式中、各m及びnは、独立に、1〜6であり、tは、0又は1であり、各R1、R2、R3、R4、RSi、及びAは、上に定義した通りであり、R9は、アルキル基、アリール基、アルカリール基、又はアラルキル基であり、但し、R1、R2、R3、R4、及びR5のうちの少なくとも1つがHではないことを条件とする]
のものである。
【0008】
別の実施形態では、少なくとも1種のシランは、式:
【化2】
[式中、RSiは、式−Si(Yp)(R6)3−p(式中、Yは、加水分解性基であり、R6は、一価のアルキル基又はアリール基であり、pは、1、2、又は3である)のシラン含有基であり、各R1、R2、及びR3は、独立に、H、アルキル基、アリール基、アルカリール基、又はアラルキル基であり、R4は、H、アルキル基、アリール基、アルカリール基、又はアラルキル基であり、これらの基は、1個以上のカテナリー酸素原子、−O−C(O)−基、及び/又は−C(O)−O−基で任意選択で置換されていてもよく、nは、1〜6であり、qは、0又は1であり、Lは、二価のアルキレン基、二価のアリーレン基、二価のアルカリーレン基、又は二価のアラルキレン基であり、これらの二価の基は、1個以上のカテナリー酸素原子、−O−C(O)−基、及び/又は−C(O)−O−基で任意選択で置換されていてもよく、Aは、式X1−C(O)−C(R7)=CH2(式中、X1は、−O、−S、又は−NR7であり、各R7は、独立に、H、又はC1〜C4アルキル基である)の(メタ)アクリル基であり、但し、R1、R2、R3、及びR4のうちの少なくとも1つがHではないことを条件とする]
のものである。
【0009】
別の態様では、本開示は、本明細書に開示されている表面処理された歯科用無機充填剤を含む硬化性歯科用組成物を提供する。
【0010】
別の態様では、本開示は、本明細書に開示されている表面処理された歯科用無機充填剤を調製する方法であって、無機充填剤を、本明細書に記載されている式I又は式IIの少なくとも1種のシランと接触させることを含む、方法を提供する。
【0011】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載されている表面処理された歯科用無機充填剤を含む硬化した歯科用組成物を提供する。
【0012】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載されている表面処理された歯科用無機充填剤を含む硬化性歯科用組成物を準備すること、及びその硬化性歯科用組成物を硬化するのに有効な条件を提供すること、を含む、硬化した歯科用組成物を調製する方法を提供する。
【0013】
利点
本明細書に記載されている少なくとも1つの(メタ)アクリル化シランで処理された表面を有する歯科用無機充填剤を含む硬化した歯科用組成物は、公知の硬化した歯科用組成物に匹敵する直径方向引張強度を呈し、同時に、有利にも、他の硬化した歯科用組成物と比較して、最大50%低い応力プロファイルを呈することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の表面処理された歯科用無機充填剤は、特定の樹脂のための改善された湿潤特性及びペースト取り扱い特性を提供することができる。
【0014】
定義
本明細書で使用する場合、用語「有機基」は、本発明の目的のために、脂肪族基、環式基、又は脂肪族基と環式基との組み合わせ(例えば、アルカリール基とアラルキル基)として分類される炭化水素基を意味するために使用される。本発明の文脈において、本発明の化合物に好適な有機基は、無機粒子の表面処理に干渉しないものである。本発明の文脈において、用語「脂肪族基」は、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状の炭化水素基を意味する。この用語は、例えば、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基を包含するものとして使用される。用語「アルキル基」は、飽和の、直鎖状又は分枝状の、一価の炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、アミル、ヘプチルなどを意味する。用語「アルケニル基」は、1つ以上のオレフィン性不飽和基(すなわち、炭素−炭素二重結合)を有する、不飽和の、直鎖状又は分枝状の、一価の炭化水素基、例えばビニル基を意味する。用語「アルキニル基」は、1つ以上の炭素−炭素三重結合を有する、不飽和の、直鎖状又は分枝状の、一価の炭化水素基を意味する。用語「環式基」は、脂環式基、芳香族基、又は複素環式基として分類される閉環炭化水素基を意味する。用語「脂環式基」は、脂肪族基の特性に似た特性を有する環式炭化水素基を意味する。用語「芳香族基」又は「アリール基」は、単核又は多核芳香族炭化水素基を意味する。用語「複素環式基」は、環内の1つ以上の原子が、炭素以外の元素(例えば、窒素、酸素、硫黄など)である閉環炭化水素を意味する。
【0015】
本出願全体を通して使用される特定の用語の検討及び記載を簡略化する手段として、用語「基」及び「部分」は、置換を可能にする化学種又は置換され得る化学種と、置換を可能にしない化学種又は置換され得ない化学種とを区別するために使用される。したがって、用語「基」が化学置換基を説明するために使用される場合、記載される化学物質は、非置換基、及び例えば鎖内に非過酸化物O、N、S、Si、又はFの各原子を有する基、並びにカルボニル基又は他の従来の置換基を含む。用語「部分」は、化学化合物又は置換基を説明するために使用される場合、非置換化学物質のみが含まれることが意図される。例えば、語句「アルキル基」は、純粋な開鎖飽和炭化水素アルキル置換基、例えば、メチル、エチル、プロピル、tert−ブチルなどだけでなく、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルスルホニル、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシルなどの当該技術分野において公知の更なる置換基を保持するアルキル置換基も含むことが意図される。したがって、「アルキル基」は、エーテル基、ハロアルキル、ニトロアルキル、カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、スルホアルキルなどを含む。一方、語句「アルキル部分」は、純粋な開鎖飽和炭化水素アルキル置換基のみ、例えば、メチル、エチル、プロピル、tert−ブチルなどを含むことに限定される。
【0016】
本明細書で使用する場合、用語「アルキレン」は、アルカンの二価の基を指す。アルキレンは、直鎖、分枝状、環式、又はこれらの組み合わせであってもよい。アルキレンは、多くの場合、1〜20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキレンは、1〜18個、1〜12個、1〜10個、1〜8個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を含有する。アルキレンのラジカル中心は、同一の炭素原子上にあってもよく(すなわち、アルキリデン)、又は異なる炭素原子上にあってもよい。
【0017】
本明細書で使用する場合、「アリーレン」基は、アリール基のラジカルである二価の基を指す。アリールは、芳香族環に接続している又は縮合している1〜5個の環を有し得る。その他の環状構造は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであってもよい。アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、アントリル、ナフチル、アセナフチル、アントラキノニル、フェナントリル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、及びフルオレニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書で使用する場合、「アルカリーレン」基は、式−Ar−Ra(式中、Arはアリーレンであり、Raはアルキル基である)の二価の基を指す。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「アラルキレン」は、式−Ra−Ar(式中、Raはアルキレンであり、Arはアリール基である)の二価の基を指す。
【0020】
本明細書で使用する場合、「歯科用組成物」又は「歯科使用用の組成物」又は「歯科分野で使用される組成物」は、歯科分野で使用され得る任意の組成物を指す。この点において、組成物は、患者の健康にとって有害であるべきでなく、したがって、組成物から出て移動することができる有害及び有毒な成分を含まない。歯科用組成物は、典型的には、約15〜50℃又は約20〜40℃の温度範囲を含む周囲条件下で、約5〜40秒の時間枠内で硬化され得る硬化性組成物である。より高い温度は推奨されず、その理由は、患者に痛みを引き起こす可能性があり、患者の健康に有害であり得るためである。歯科用組成物は、典型的には、単一用量又は複数用量の量で施術者に提供される。例えば、カプセルは、0.25g〜0.45gの歯科用組成物を含有することができる。複数用量シリンジは、例えば、約4gの歯科用組成物を収容することができる。
【0021】
本明細書で使用する場合、「重合性成分」は、例えば加熱により硬化され又は固化され、重合又は化学架橋を引き起こし得るいずれかの成分を指す。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「樹脂」は、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の重合性基を含有する重合性成分を指す。例示的な重合性基としては、(メチル)アクリレート基に見出されるようなビニル基などの不飽和有機基が挙げられるが、これらに限定されない。樹脂は、多くの場合、放射線により誘導される重合若しくは架橋により、又はレドックス開始剤を使用することにより硬化され得る。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「モノマー」は、オリゴマー又はポリマーに重合させることで分子量を増加させ得る、重合性基(例えば(メタ)アクリレート基)を保持する化学式により特徴付けることができるいずれかの化学物質を指す。モノマーの分子量は、典型的には、所与の化学式から計算することができる。
【0024】
本明細書で使用する場合、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を指す短縮語である。例えば、「(メタ)アクリルオキシ」基は、アクリルオキシ基(すなわち、CH2=CH−C(O)−O−)及び/又はメタクリルオキシ基(すなわち、CH2=C(CH3)−C(O)−O−)のいずれかを指す短縮語である。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「開始剤」は、例えば、レドックス/自動硬化化学反応により、放射線が誘導する反応により、又は熱が誘導する反応により、樹脂又はモノマーの硬化プロセスを始める又は開始することができる物質を指す。
【0026】
本明細書で使用する場合、用語「粉末」は、振盪される又は傾けられる際に自由に流動することができる、きわめて微細な多数の粒子からなる乾燥したバルク固体を指す。
【0027】
本明細書で使用する場合、用語「粒子」は、幾何学的に決定され得る形状を有する固体である物質を指す。粒子は、典型的には、例えば粒径(grain size or diameter)に関して分析できる。
【0028】
粉末の平均粒径は、レーザー回折粒径分析を含む各種技術から得ることができる。粒径分布の累積曲線は、特定の粉末混合物における測定粒径の算術平均として得ることができ、定義することができる。それぞれの測定は、Beckman Coulter LS 13 320レーザー回折粒径分析器などの利用可能な回折レーザー粒径分析器、又はCILASレーザー回折粒径分析装置などの利用可能な粒度計を使用して行うことができる。
【0029】
本明細書で使用する場合、粒径測定に関して、用語「dX」(マイクロメートル)は、分析される体積中X%の粒子が、マイクロメートル単位で示された値を下回る径を有することを意味する。例えば、100マイクロメートル(d50)の粒径値は、分析される体積中50%の粒子が100マイクロメートルを下回る径を有することを意味する。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「ペースト」は、液体中に分散した、軟らかく粘稠な固体の塊を指す。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「粘稠な」は、(23℃において)約3Pa・sを上回る粘度を有する材料を指す。
【0032】
本明細書で使用する場合、用語「液体」は、周囲条件(例えば23℃)において成分を少なくとも部分的に分散させる又は溶解させることができる、いずれかの溶媒又は液体を指す。液体は、典型的には、約10Pa・sを下回る、又は約8Pa・sを下回る、又は約6Pa・sを下回る粘度を有する。
【0033】
本明細書で使用する場合、「グラスアイオノマーセメント(glass ionomer cement)」又は「GIC」は、水の存在下、酸反応性ガラスとポリ酸との間の反応により硬化することができるセメントを指す。
【0034】
本明細書で使用する場合、「樹脂変性グラスアイオノマーセメント(resin modified glass ionomer cement)」又は「RM−GIC」は、樹脂、開始剤系、典型的には2−ヒドロキシルエチルメタクリレート(hydroxylethyl methacrylate、HEMA)を更に含有するGICを指す。
【0035】
本明細書で使用する場合、組成物が特定の成分(例えば樹脂)を本質的な特徴として含有しない場合、この組成物はこの成分を「本質的に含まない」又は「実質的に含まない」。したがって、この成分は、それ自体で、又は他の成分若しくは他の成分の含有物質との組み合わせでのいずれかによっても、組成物に意図的に添加されない。
【0036】
特定の成分(例えば樹脂)を本質的に含まない組成物は、通常、この成分を、組成物又は材料の総重量に対して、約5重量%未満、約1重量%未満、約0.5重量%未満、又は約0.01重量%未満の量で含有する。組成物は、この成分を一切含有しなくてもよい。しかし、時には、例えば使用される原料中に含有されている不純物のために、この成分が少量存在するのを避けることができないこともある。
【0037】
本明細書で使用する場合、「酸反応性充填剤」は、ポリ酸の存在下で化学的に反応して硬化反応に至らせることができる充填剤を指す。
【0038】
本明細書で使用する場合、「非酸反応性充填剤」は、ポリ酸と混合された場合に、(i)6分以内に化学反応を示さないか、又は(ii)硬化反応の低下(例えば、時間的な遅延)のみを示す充填剤を指す。
【0039】
酸反応性充填剤を非酸反応性充填剤から区別するために、以下の試験が行われ得るか、又は行われることになる:第1剤と第2剤とを質量比1:3で混合して組成物を調製し、第1剤では、ポリ(アクリル酸−co−マレイン酸)(Mw:約20,000±3,000)が43.6重量%、水が47.2重量%、酒石酸が9.1重量%、及び安息香酸が0.1重量%を占め、第2剤では、分析される充填剤が100重量%を占める。
【0040】
充填剤は、上記組成物の調製後6分以内に、以下の条件、8mmプレート、0.75mmギャップ、28℃、周波数1.25Hz、及び変形率1.75%の使用下で、レオメーターを用いて振動測定を実施することにより測定されるせん断応力が50,000Pa未満であった場合に、非酸反応性であると特徴付けられる。
【0041】
本明細書で使用する場合、「ナノシリカ」は、「ナノサイズシリカ粒子」と同義的に使用され、最大で200nmの平均サイズを有するシリカ粒子を指す。球状粒子に関して本明細書で使用する場合、「サイズ」は、粒子の直径を指す。非球状粒子に関して本明細書で使用する場合、「サイズ」は、粒子の最長寸法を指す。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「シリカゾル」は、液体中、典型的には水中における、離散した非晶性シリカ粒子の安定分散体を指す。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「焼成シリカ」及び「ヒュームドシリカ」は互換的に用いられ、気相中で形成された非晶性シリカを指す。焼成シリカには、例えば、融合して分鎖状の三次元凝結体となった数百個の一次粒子が含まれてもよい。焼成シリカの例としては、DeGussa AG(Hanau,Germany)から入手可能な商標名AEROSIL OX−50、AEROSIL−130、AEROSIL−150、及びAEROSIL−200で入手可能な製品、並びにCabot Corp(Tuscola,Ill.)から入手可能なCAB−O−SIL M5が挙げられる。
【0044】
本明細書で使用する場合、「非焼成シリカ」は、気相中で形成されない非晶性シリカを指す。非焼成シリカの例としては、沈殿シリカ及びシリカゲルが挙げられる。
【0045】
本明細書で使用する場合、「シラン処理された」は、シランの適用により粒子表面が改質されたことを意味する。
【0046】
本明細書で使用する場合、「凝結シリカ」は、例えば、化学的残基処理、化学的共有結合、又は化学的イオン結合によって多くの場合一緒に結合する、一次シリカ粒子の会合を記述するものである。凝結シリカをより小さなものに完全に分解することは実現困難であり得るが、例えば、液体中で凝結シリカを分散させる間に生じるせん断力を含む条件下では、限定的又は不完全な分解が観察される場合がある。
【0047】
本明細書で使用する場合、「カチオン低減アルミノシリケートガラス」は、ガラス粒子の表面領域におけるカチオン含有量がガラス粒子の内側領域に比べて低いガラスを指す。このようなガラスは、典型的には、ポリアクリル酸水溶液との接触の際に、典型的な酸反応性充填剤と比べて、はるかにゆっくりと反応する。非酸反応性充填剤の例としては、石英ガラス又は酸化ストロンチウム系ガラスが挙げられる。更なる例が、本明細書に記載される。カチオン低減は、ガラス粒子の表面処理により達成できる。有用な表面処理としては、酸洗浄(例えば、リン酸での処理)、ホスフェートでの処理、酒石酸などのキレート剤での処理、及びシラン又は酸性若しくは塩基性シラノール溶液での処理が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
本明細書で使用する場合、用語「ポリ酸」及び/又は「ポリアルケン酸」は、複数の(例えば、10個を上回る、又は20個を上回る、又は50個を上回る)酸性繰り返し単位を有するポリマーを指す。つまり、酸性繰り返し単位は、ポリマー主鎖に結合しているか、又はぶら下がっている。
【0049】
本明細書で使用する場合、語句「錯化剤」は、例えばカルシウム及び/又はマグネシウムなどの金属イオンと錯体を形成することができる低分子試薬を指す。例示的な錯化剤は、酒石酸である。
【0050】
本明細書で使用する場合、用語「硬化性(hardenable)」及び/又は「硬化性(curable)」は、例えば、化学架橋及び/若しくは放射線誘導重合若しくは架橋によって、並びに/又はグラスアイオノマーセメント反応を行うことによって硬化され得る又は固化され得る組成物を指す。
【0051】
本明細書で使用する場合、語句「周囲条件」は、本明細書に記載されている歯科用組成物が、典型的には貯蔵中及び取り扱い中にそれに供される条件を指す。周囲条件には、例えば、約900mbar〜約1100mbarの圧力、約−10℃〜約60℃の温度、及び/又は約10%〜約100%の相対湿度が含まれてもよい。実験室では、周囲条件は、典型的には約23℃及び約1気圧(例えば0.95〜1.05気圧)に調整される。歯科及び歯列矯正分野では、周囲条件には、例えば約950mbar〜約1050mbarの圧力、約15℃〜約40℃の温度、及び/又は約20%〜約80%の相対湿度が含まれると合理的に理解される。
【0052】
用語「含む(comprises)」及びその変化形は、これらの用語が本明細書及び特許請求の範囲に現れる場合、限定的な意味を有さない。このような用語は、記載されたある1つの工程若しくは要素、又は複数の工程若しくは要素の群が含まれることを示唆するが、いずれかの他の工程若しくは要素、又は複数の工程若しくは要素の群も排除されないことを示唆するものと理解される。「からなる」により、何であれこの語句「からなる」に続くものを含み、これらに限定することを意味する。したがって、語句「からなる」は、列挙された要素が必要又は必須であり、他の要素が存在し得ないことを示す。「から本質的になる」は、この語句の後に列挙されるいずれかの要素を含み、これらの列挙された要素に関して本開示で特定した作用若しくは機能に干渉又は寄与しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、語句「から本質的になる」は、列挙された要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意であり、列挙された要素の作用若しくは機能に実質的に影響を及ぼすか否かに応じて存在してもよい又は存在しなくてもよいことを意味する。
【0053】
言葉「好ましい」及び「好ましくは」は、一定の状況下で一定の利益を提供できる、本開示の実施形態を指す。但し、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況において好ましい場合がある。更には、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、本開示の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0054】
本出願では、「a」、「an」、及び「the」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、一般分類を含み、その一般分類の具体例は、例示のために使用することができる。用語「a」、「an」、及び「the」は、用語「少なくとも1つ」と互換的に用いられる。
【0055】
列挙に後続する語句「〜のうちの少なくとも1つ」及び「〜のうちの少なくとも1つを含む」は、列挙内の項目のうちのいずれか1つ、及び列挙内の2つ以上の項目のいずれかの組み合わせを指す。
【0056】
本明細書で使用する場合、用語「又は」は、内容がそうでない旨を明示しない限り、一般的に「及び/又は」を含む通常の意味で用いられる。
【0057】
用語「及び/又は」は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちのいずれか2つ以上の組み合わせを意味する。
【0058】
また、本明細書では、全ての数字は用語「約」によって修飾され、特定の状況では用語「厳密に」によって修飾されると推定される。測定量との関連において本明細書で使用する場合、用語「約」は、測定を行い、測定の目的及び使用した測定機器の精度に見合う水準の注意を払う当業者によって予測され得た、測定量のばらつきを指す。また、測定量との関連において本明細書で使用する場合、用語「およそ(approximately)」は、測定を行い、測定の目的及び使用した測定機器の精度に見合う水準の注意を払う当業者によって予想され得た、測定量のばらつきを指す。
【0059】
更に本明細書では、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数及びその端点を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0060】
本開示の上記の概要は、開示されるそれぞれの実施形態、又は本開示の全ての実装形態を説明することを意図していない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願にわたるいくつかの箇所では、例を列挙することによって指針が示され、それらの例は様々な組み合わせにおいて使用することができる。各事例において、記載された列挙項目は、代表的な群としての役割のみを果たすものであり、排他的な列挙項目として解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0061】
一態様では、本開示は、少なくとも1種のシランで処理された表面を有する歯科用無機充填剤を提供する。
【0062】
一実施形態では、少なくとも1種のシランは、式:
【化3】
[式中、
RSiは、式−Si(Yp)(R6)3−p(式中、Yは、加水分解性基であり、R6は、一価のアルキル基又はアリール基(例えば、アルキル部分又はアリール部分)であり、pは、1、2、又は3である)のシラン含有基であり、各R1、R2、及びR3は、独立に、H、アルキル基(例えば、アルキル部分)、アリール基(例えば、アリール部分)、アルカリール基(例えば、アルカリール部分)、又はアラルキル基(例えば、アラルキル部分)であり、R4は、H、アルキル基(例えば、アルキル部分)、アリール基(例えば、アリール部分)、アルカリール基(例えば、アルカリール部分)、アラルキル基(例えば、アラルキル部分)、又は式−(CH2)m−(A)(式中、mは1〜6である)の基又は部分であり、nは、1〜6であり、qは、0又は1であり、tは、0又は1であり、Aは、式X1−C(O)−C(R7)=CH2(式中、X1は、−O、−S、又は−NR7であり、各R7は、独立に、H又はC1〜C4アルキル基若しくは部分である)の(メタ)アクリル基であり、R5は、H、アルキル基(例えば、アルキル部分)、シクロアルキル基(例えば、シクロアルキル部分)、アリール基(例えば、アリール部分)、アルカリール基(例えば、アルカリール部分)、アラルキル基(例えば、アラルキル部分)、式(RSi)−(CR1R2)n−(NH−C(O)−O−CH2−CH2)q−の基若しくは部分、式(RSi)−(CR1R2)n−NH−C(O)−N(R8)−(CH2)m−の基若しくは部分、式−(CH2)m−(A)の基若しくは部分、式−(CH2)m−N(R8)−C(O)−NH−(CH2−CH2−O)t−CR3R4−CH2−(A)の基若しくは部分、又は式−(CH2)m−N(R8)−C(O)−NH−R9の基若しくは部分であり、式中、各m及びnは、独立に、1〜6であり、qは、0又は1であり、tは0又は1であり、各R1、R2、R3、R4、RSi、及びAは、上に定義した通りであり、R8は、H、又は式−(CH2)m−NH−C(O)−NH−(CH2−CH2−O)t−CR3R4−CH2−(A)の基若しくは部分、式−(CH2)m−NH−C(O)−NH−(CR1R2)n−(RSi)の基、又は式−(CH2)m−NH−C(O)−NH−R9の基であり、式中、各m及びnは、独立に、1〜6であり、tは、0又は1であり、各R1、R2、R3、R4、RSi、及びAは、上に定義した通りであり、R9は、アルキル基(例えば、アルキル部分)、アリール基(例えば、アリール部分)、アルカリール基(例えば、アルカリール部分)、又はアラルキル基(例えばアラルキル部分)であり、但し、R1、R2、R3、R4、及びR5のうちの少なくとも1つがHではないことを条件とする]
のものである。
【0063】
式Iのいくつかの実施形態では、各R1、R2、及びR3は、独立に、H又はCH3である。
【0064】
式Iのいくつかの実施形態では、R4は、H、CH3、又は式−(CH2)m−(A)(式中、mは1である)の基若しくは部分である。
【0065】
式Iのいくつかの実施形態では、qは、0である。
【0066】
式Iのいくつかの実施形態では、tは、0である。
【0067】
式Iのいくつかの実施形態では、nは、1〜3である。
【0068】
式Iのいくつかの実施形態では、Aは、−O−C(O)−CH=CH2又は−O−C(O)−C(CH3)=CH2である。
【0069】
式Iのいくつかの実施形態では、R8は、Hである。
【0070】
式Iのいくつかの実施形態では、R9は、フェニル基又は部分である。
【0071】
式Iのいくつかの実施形態では、RSiは、−Si(OCH3)3又は−Si(OCH2CH3)3である。
【0072】
特定の実施形態では、シランは、式Iに関連する構造異性体である。式Iに関連する例示的な構造異性体としては、以下の式のシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【化4】
【0073】
別の実施形態では、少なくとも1種のシランは、式:
【化5】
[式中、RSiは、式−Si(Yp)(R6)3−p(式中、Yは、加水分解性基であり、R6は、一価のアルキル基又はアリール基(例えば、アルキル部分又はアリール部分)であり、pは、1、2、又は3である)のシラン含有基であり、各R1、R2、及びR3は、独立に、H、アルキル基(例えば、アルキル部分)、アリール基(例えば、アリール部分)、アルカリール基(例えば、アルカリール部分)、又はアラルキル基(例えば、アラルキル部分)であり、R4は、H、アルキル基(例えば、アルキル部分)、アリール基(例えば、アリール部分)、アルカリール基(例えば、アルカリール部分)、又はアラルキル基(例えば、アラルキル部分)であり、これらの基は、1個以上のカテナリー酸素原子、−O−C(O)−基、及び/又は−C(O)−O−基で任意選択で置換されていてもよく、nは、1〜6であり、qは、0又は1であり、Lは、二価のアルキレン基(例えば、アルキレン部分)、二価のアリーレン基(例えば、アリーレン部分)、二価のアルカリーレン基(例えば、アルカリーレン部分)、又は二価のアラルキレン基(例えば、アラルキレン部分)であり、これらの二価の基は、1個以上のカテナリー酸素原子、−O−C(O)−基、及び/又は−C(O)−O−基で任意選択で置換されていてもよく、Aは、式X1−C(O)−C(R7)=CH2(式中、X1は、−O、−S、又は−NR7であり、各R7は、独立に、H又はC1〜C4アルキル基(例えば、アルキル部分)である)の(メタ)アクリル基であり、但し、R1、R2、R3、及びR4のうちの少なくとも1つがHではないことを条件とする]
のものである。
【0074】
式IIのいくつかの実施形態では、各R1、R2、及びR3は、独立に、H又はCH3である。
【0075】
式IIのいくつかの実施形態では、R4は、H、CH3、又は式−(CH2)m−(A)(式中、mは1である)の基若しくは部分である。
【0076】
式IIのいくつかの実施形態では、qは、0である。
【0077】
式IIのいくつかの実施形態では、nは、1〜3である。
【0078】
式IIのいくつかの実施形態では、Aは、−O−C(O)−CH=CH2又は−O−C(O)C(CH3)=CH2である。
【0079】
式IIのいくつかの実施形態では、RSiは、−Si(OCH3)3又は−Si(OCH2CH3)3である。
【0080】
式IIのいくつかの実施形態では、Lは、
【化6】
である。
【0081】
式IIのいくつかの実施形態では、R4は、−CH2−O−C(O)−Phである。
【0082】
表面処理された歯科用無機充填剤のいくつかの実施形態では、歯科用無機充填剤は、非凝集粒子(non-agglomerated particle)、凝集粒子(agglomerated particle)、非凝結粒子(non-aggregated particle)、凝結粒子(aggregated particle)、クラスター、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0083】
無機充填剤
表面処理された歯科用無機充填剤のいくつかの実施形態では、歯科用無機充填剤は、非酸反応性充填剤である。
【0084】
表面処理された歯科用無機充填剤のいくつかの実施形態では、歯科用無機充填剤は、ナノ粒子を含む。
【0085】
表面処理された歯科用無機充填剤のいくつかの実施形態では、歯科用無機充填剤は、ナノ粒子のクラスターを含む。ナノ粒子のクラスターは、例えば、米国特許第6,730,156号(Windischら)に開示されているような、非重金属酸化物及び/又は重金属酸化物の組み合わせから形成されてもよい。
【0086】
表面処理された歯科用無機充填剤のいくつかの実施形態では、歯科用無機充填剤は、金属酸化物粒子を含む。
【0087】
表面処理された歯科用無機充填剤のいくつかの実施形態では、歯科用無機充填剤としては、シリカ粒子、ジルコニア粒子、チタニア粒子、アルミノシリケートガラス、ドープアルミノシリケートガラス、又はこれらの組み合わせが挙げられる。ドープアルミノシリケートガラスとしては、例えば、アルミノケイ酸バリウム、アルミノケイ酸ストロンチウム、アルミノケイ酸ランタン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0088】
表面処理された歯科用無機充填剤のいくつかの実施形態では、歯科用無機充填剤は、5ナノメートル〜20ミクロンの平均粒径を有する粒子を含む。表面処理された歯科用無機充填剤の特定の実施形態では、歯科用無機充填剤は、5ナノメートル〜10ミクロンの平均粒径を有する粒子を含む。表面処理された歯科用無機充填剤のいくつかの特定の実施形態では、歯科用無機充填剤は、5ナノメートル〜0.4ミクロンの平均粒径を有する粒子を含む。
【0089】
表面処理された歯科用無機充填剤のいくつかの実施形態では、粒子の少なくとも1種のシランによる表面被覆率が少なくとも25%である。
【0090】
非酸反応性充填剤
表面処理された歯科用無機充填剤のいくつかの実施形態では、無機充填剤は、非酸反応性充填剤であり得る。非酸反応性充填剤は、水の存在下でポリ酸と合わされた場合に、(i)グラスアイオノマーセメント反応において全く硬化しないか、又は(ii)硬化反応の遅延のみを示す、のいずれかの充填剤である。
【0091】
多種多様な非酸反応性充填剤が、本明細書に開示の硬化性歯科用組成物中に使用され得る。特定の実施形態では、非酸反応性充填剤は、無機充填剤である。特定の実施形態では、非酸反応性充填剤は、非毒性であり、ヒトの口腔内での使用に好適である。非酸反応性充填剤は、放射線不透過性又は放射線透過性であり得る。
【0092】
特定の実施形態では、非酸反応性充填剤としては、石英、窒化物、カオリン、ホウケイ酸ガラス、酸化ストロンチウム系ガラス、酸化バリウム系ガラス、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0093】
特定の実施形態では、非酸反応性充填剤としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、又はこれらの組み合わせなどの金属酸化物を挙げることができる。いくつかの実施形態では、金属酸化物としては、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化リチウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化ランタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マンガン、酸化ビスマス、又はこれらの組み合わせなどの改質剤又はドーパントを更に挙げることができる。
【0094】
特定の実施形態では、非酸反応性充填剤は、0.005マイクロメートル〜20マイクロメートルの平均粒径を有する。いくつかの実施形態では、非酸反応性充填剤は、0.01マイクロメートル〜10マイクロメートルの平均粒径を有する。特定の実施形態では、非酸反応性充填剤は、10マイクロメートル未満のd50を有する。第1ペーストと第2ペーストとの両方が非酸反応性充填剤を含む実施形態では、第2ペースト中の非酸反応性充填剤の平均粒径は、第1ペースト中の非酸反応性充填剤の平均粒径と同一である又は異なることができる。
【0095】
例示的な非酸反応性充填剤は、例えば、国際出願公開第2017/015193(A1)号(Jahnsら)に更に記載されている。
【0096】
ナノサイズシリカ粒子
表面処理された歯科用無機充填剤のいくつかの実施形態では、無機充填剤は、非凝結ナノサイズシリカ粒子を含むことができる。いくつかの実施形態では、非凝結ナノサイズシリカ粒子は、ヒュームドシリカ(すなわち、焼成シリカ)を実質的に含まない。但し、焼成充填剤(例えば、ヒュームドシリカ)は、任意の添加剤として、歯科用組成物に添加され得る。
【0097】
多種多様な非凝結ナノサイズシリカ粒子が、本明細書に記載されている通り、表面処理され得る。いくつかの実施形態では、非凝結ナノサイズシリカ粒子は、シリカゾルとして入手可能である。特定の実施形態では、出発シリカゾルは、例えば、NALCO 1034A、NALCO 1042、NALCO 2327、NALCO 2329又はLEVASIL 50/50とすることができる。
【0098】
例示的な非凝結ナノサイズシリカ粒子としては、Nalco Chemical Co.(Naperville,Ill.)から入手可能な製品名NALCO COLLOIDAL SILICAS(例えば、NALCO製品1034A、1040、1042、1050、1060、2327、及び2329)、Nissan Chemical America Company(Houston,Texas)から入手可能なもの(例えば、SNOWTEX−ZL、−OL、−O、−N、−C、−20L、−40及び−50)、日本の株式会社アドマテックスから入手可能なもの(例えば、SX009−MIE、SX009−MIF、SC1050−MJM、及びSC1050−MLV)、Grace GmbH & Co.KG(Worms,Germany)から入手可能なもの(例えば、製品名LUDOXで入手可能なものであり、例えばP−W50、P−W30、P−X30、P−T40及びP−T40AS)、Akzo Nobel Chemicals GmbH(Leverkusen,Germany)から入手可能なもの(例えば、製品名LEVASILで入手可能なものであり、例えば50/50、100/45、200/30%、200A/30、200/40、200A/40、300/30及び500/15)、並びにBayer Material Science AG(Leverkusen,Germany)から入手可能なもの(例えば、製品名DISPERCOLL Sで入手可能なものであり、例えば5005、4510、4020及び3030)が挙げられる。非凝結ナノサイズシリカ粒子を含む更なる例示的な充填剤、及び充填剤を調製する方法は、例えば、国際公開第01/30307号(Craigら)に開示されている。
【0099】
歯科用組成物が焼成充填剤(例えば、ヒュームドシリカ)を更に含む実施形態の場合、ヒュームドシリカなどの多種多様な焼成充填剤を使用することができる。例示的なヒュームドシリカとしては、例えば、Degussa AG(Hanau,Germany)から入手可能な、商標名AEROSILシリーズOX−50、−130、−150、及び−200、Aerosil R8200で販売されている製品、Cabot Corp(Tuscola,Ill.)から入手可能なCAB−O−SIL M5、並びにWackerから入手可能なHDKタイプ、例えばHDK−H 2000、HDK H15、HDK H18、HDK H20、及びHDK H30が挙げられる。
【0100】
一実施形態では、非凝結ナノサイズシリカ粒子は、最大で約200ナノメートル、いくつかの実施形態では最大で約150ナノメートル、特定の実施形態では最大で約120ナノメートルの平均粒径を有する。一実施形態では、非凝結ナノサイズシリカ粒子は、少なくとも約5ナノメートル、いくつかの実施形態では少なくとも約20ナノメートル、特定の実施形態では少なくとも約50ナノメートルの平均粒径を有する。これらの測定は、TEM(透過型電子顕微鏡)法に基づき、この方法により粒子集団を分析して平均粒径を得ることができる。
【0101】
粒径を測定するための例示的な方法は、以下のように説明することができる:
およそ80nm厚のサンプルを、炭素安定化フォルムバール基板(Structure Probe,Inc.(West Chester,PA)の一部門であるSPI Supplies)付き200メッシュの銅グリッド上に配置する。透過型電子顕微鏡写真(TEM)を、JEOL 200CX(日本の東京都昭島市の日本電子株式会社が製造、JEOL USA,Inc.が販売)を用いて200Kvで撮る。約50〜100粒子の集団サイズを測定することができ、平均直径を求めることができる。
【0102】
一実施形態では、非凝結ナノサイズシリカ粒子の平均表面積は、少なくとも約15m2/g、いくつかの実施形態では少なくとも約30m2/gである。
【0103】
いくつかの実施形態では、非凝結ナノサイズシリカ粒子は、実質的に球状であり、実質的に非孔質である。特定の実施形態では、シリカは本質的に純粋なものであり得るが、他の実施形態では、シリカはアンモニウムイオン及びアルカリ金属イオンなどの少量の安定化イオンを含有し得る。
【0104】
無機充填剤の表面処理
別の態様では、本開示は、無機充填剤を本明細書に記載されている式I又は式IIの少なくとも1種のシランと接触させることを含む、本明細書に開示されている表面処理された歯科用無機充填剤を調製する方法を提供する。
【0105】
いくつかの実施形態では、方法は、液体媒体中で無機充填剤を少なくとも1種のシランと接触させることを含む。
【0106】
特定の実施形態では、液体媒体は、少なくとも1種の有機溶媒を含む。いくつかの特定の実施形態では、少なくとも1種の有機溶媒は、アルコール(例えば、エタノール)、アセテート(例えば、酢酸エチル)、芳香族(例えば、トルエン)、ケトン(例えば、メチルエチルケトン)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0107】
いくつかの実施形態では、液体媒体は、水を更に含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、液体媒体は、少なくとも1種の触媒を更に含む。特定の実施形態では、触媒は、酸性触媒又は塩基性触媒である。
【0109】
例えば、有機酸性触媒及び無機酸性触媒を含む、多種多様な酸性触媒を使用することができる。特定の実施形態では、酸性触媒は、使用される液体媒体中の選択された濃度で、少なくとも部分的に可溶性であり、特定の実施形態では完全に可溶性である。
【0110】
例示的な有機酸性触媒としては、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
例示的な無機酸性触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、アンチモン酸、ホウ酸、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
例えば、有機塩基性触媒及び無機塩基性触媒を含む、多種多様な塩基性触媒を使用することもできる。特定の実施形態では、塩基性触媒は、使用される液体媒体中の選択された濃度で、少なくとも部分的に可溶性であり、特定の実施形態では完全に可溶性である。
【0113】
例示的な有機塩基性触媒としては、例えば、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、及びこれらの組み合わせを含むアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
例示的な無機塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
いくつかの実施形態では、接触させることは、液体媒体中で無機充填剤と少なくとも1種のシランとを撹拌すること又は混合することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、液体媒体の少なくとも一部を除去して、少なくとも1種のシランで処理された表面を有する乾燥した歯科用無機充填剤を提供することを更に含む。いくつかの特定の実施形態では、液体媒体を除去することは、加熱、減圧、凍結乾燥、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるプロセスを含む。
【0116】
硬化性歯科用組成物
別の態様では、本開示は、本明細書に開示の表面処理された歯科用無機充填剤を含む硬化性歯科用組成物を提供する。いくつかの実施形態では、硬化性歯科用組成物は、少なくとも1種の重合性樹脂を更に含む。特定の実施形態では、少なくとも1種の重合性樹脂は、フリーラジカル重合性樹脂である。いくつかの実施形態では、硬化性歯科用組成物は、表面処理された及び/又は表面処理されていない追加の無機充填剤を更に含む。いくつかの実施形態では、硬化性歯科用組成物は、開始剤系を更に含む。特定の実施形態では、開始剤系は、光開始剤系、レドックス開始剤系、過酸化物熱活性化開始剤系、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0117】
いくつかの実施形態では、硬化性歯科用組成物は、歯科用組成物の総重量に基づいて10重量%〜90重量%の、本明細書に開示の表面処理された歯科用無機充填剤を含むことができる。いくつかの実施形態において、硬化性歯科用組成物は、歯科用組成物の総重量に基づいて30重量%〜90重量%の、本明細書に開示の表面処理された歯科用無機充填剤を含むことができる。
【0118】
いくつかの実施形態では、硬化性歯科用組成物は、1剤型歯科用組成物又は複数剤型歯科用組成物である。
【0119】
重合性樹脂
重合性樹脂は、フリーラジカル活性官能基を有する材料であり、1つ以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー、オリゴマー、及びポリマーを含む。好適な材料は、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を含有し、付加重合を受けることが可能である。
【0120】
フリーラジカル重合性材料としては、モノ−、ジ−又はポリアクリレート及びメタクリレート、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、ビス−フェノールA(「Bis−GMA」)、ビス[1−(2−アクリルオキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシフェニルジメチルメタン、及びトリスヒドロキシエチル−イソシアヌレートトリメタクリレートのジグリシジルメタクリレート、分子量200〜500のポリエチレングリコールのビスアクリレート及びビス−メタクリレート、米国特許第4,652,274号(Boettcherら)のものなどのアクリル化モノマーと、米国特許第4,642,126号(Zadorら)のものなどのアクリル化オリゴマーとの共重合性混合物、並びにビニル化合物、例えば、スチレン、ジアリルフタレート、ジビニルサクシネート、ジビニルアジペート及びジビニルフタレートが挙げられる。所望により、これらのフリーラジカル重合性材料の2つ以上の混合物を使用することができる。好適な重合性ポリマーとしては、例えば、部分的に又は完全にアクリレート官能化又はメタクリレート官能化されたポリマー、例えば、官能化ポリ(アクリル酸)ポリマー、セルロース誘導体、ポリ(ビニルアルコール)ポリマー、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロックコポリマー、ポリ(エチレングリコール)ポリマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0121】
特定の実施形態では、硬化性歯科用組成物は、硬化性歯科用組成物の総重量に基づいて、10重量%〜90重量%のフリーラジカル重合性樹脂を含むことができる。特定の実施形態では、硬化性歯科用組成物は、硬化性歯科用組成物の総重量に基づいて、15重量%〜60重量%のフリーラジカル重合性樹脂を含むことができる。いくつかの実施形態では、硬化性歯科用組成物は、硬化性歯科用組成物の総重量に基づいて、15重量%〜40重量%のフリーラジカル重合性樹脂を含むことができる。
【0122】
開始剤系
フリーラジカル重合(硬化)の場合、開始系は、放射線、熱、又はレドックス/自動硬化化学反応を介して重合を開始させる系から選択され得る。
【0123】
フリーラジカル活性官能基の重合を開始することができる開始剤の部類としては、光増感剤又は促進剤と任意選択で組み合わせられる、フリーラジカル生成光開始剤が挙げられる。そのような開始剤は、典型的には、200〜800nmの波長を有する光エネルギーへ曝露されたときに、付加重合のためのフリーラジカルを生成することができる。
【0124】
特定の実施形態では、フリーラジカル開始剤系は、光開始剤系を含むことができる。好適な開始剤のうちの1つのタイプ(すなわち、開始剤系)が米国特許第5,545,676号(Palazzottoら)に記載されており、これは、3成分又は三元光開始剤系を含む。この系としては、ヨードニウム塩、例えばジアリールヨードニウム塩が挙げられ、これは、単塩(例えば、Cl−、Br−、I−、又はC2H5SO3−などのアニオンを含有する)又は金属錯塩(例えば、SbF5OH−又はAsF6−を含有する)であり得る。所望により、ヨードニウム塩の混合物を使用することができる。この三元光開始剤系における第2の成分は、約400nm〜約1200nmの波長の範囲内で光吸収することができる増感剤である。この三元光開始剤系における第3の成分は、電子供与体であり、かつアミン(アミノアルデヒド及びアミノシラン、又は第1の開始剤系の場合に記載した他のアミンを含む)、アミド(ホスホルアミドを含む)、エーテル(チオエーテルを含む)、尿素(チオ尿素を含む)、フェロセン、スルフィン酸及びそれらの塩、フェロシアニドの塩、アスコルビン酸及びその塩、ジチオカルバミン酸及びその塩、キサントゲン酸の塩、エチレンジアミン四酢酸の塩、並びにテトラフェニルボロン酸の塩を挙げることができる。
【0125】
三元光開始剤系で使用するための好適な増感剤としては、ケトン、クマリン染料(例えば、ケトクマリン)、キサンテン染料、アクリジン染料、チアゾール染料、チアジン染料、オキサジン染料、アジン染料、アミノケトン染料、ポルフィリン、芳香族多環式炭化水素、p−置換アミノスチリルケトン化合物、アミノトリアリールメタン、メロシアニン、スクアリリウム染料、及びピリジニウム染料が挙げられる。いくつかの実施形態では、増感剤は、ケトン(例えば、モノケトン又はα−ジケトン)、ケトクマリン、アミノアリールケトン、p−置換アミノスチリルケトン化合物、又はこれらの組み合わせである。例示的な可視光増感剤としては、カンファーキノン、グリオキサール、ビアセチル、3,3,6,6−テトラメチルシクロヘキサンジオン、3,3,7,7−テトラメチル−1,2−シクロヘプタンジオン、3,3,8,8−テトラメチル−1,2−シクロオクタンジオン、3,3,18,18−テトラメチル−1,2−シクロオクタデカンジオン、ジピバロイル、ベンジル、フリル、ヒドロキシベンジル、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,3−ヘキサンジオン、3,4−ヘキサンジオン、2,3−ヘプタンジオン、3,4−ヘプタンジオン、2,3−オクタンジオン、4,5−オクタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、増感剤は、カンファーキノンである。
【0126】
いくつかの実施形態では、可視光誘起開始剤としては、好適な水素供与体(例えば、第1の開始剤系の場合に上述したものなどのアミン)と組み合わされたカンファーキノン、及び任意選択でジアリールヨードニウム単塩若しくは金属錯塩、発色団置換ハロメチル−s−トリアジン、又はハロメチルオキサジアゾールが挙げられる。特定の実施形態では、可視光誘起光開始剤としては、アルファジケトン(例えば、カンファーキノン)と追加の水素供与体との組み合わせ、及び任意選択でジアリールヨードニウム塩(例えば、ジフェニルヨードニウム塩化物、臭化物、ヨウ化物、又はヘキサフルオロホスフェート)が挙げられる。
【0127】
いくつかの実施形態では、紫外線光誘起重合開始剤としては、ベンジル及びベンゾイン、アシロイン、並びにアシロインエーテルなどのケトンが挙げられる。特定の実施形態では、紫外線光誘起重合開始剤としては、両方がCiba Specialty Chemicals Corp.(Tarrytown,N.Y)製の、商品名IRGACURE 651で入手可能な2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン及びベンゾインメチルエーテル(2−メトキシ−2−フェニルアセトフェノン)が挙げられる。
【0128】
様々な他の開始剤が当該技術分野において公知であり、例えば米国特許第7,674,850号(Karimら)及び同第7,816,423号(Karimら)に記載されているものである。
【0129】
開始剤系は、所望の硬化(例えば、重合及び/又は架橋)の速度を提供するのに十分な量で存在する。光開始剤の場合、この量は、部分的に、光源、放射エネルギーに曝露される層の厚さ、光開始剤の吸光係数に依存する。いくつかの実施形態では、開始剤系は、硬化性歯科用組成物の重量に基づいて、少なくとも約0.01重量%、特定の実施形態では少なくとも約0.03重量%、いくつかの特定の実施形態では少なくとも約0.05重量%の総量で存在する。いくつかの実施形態では、開始剤系は、硬化性歯科用組成物の重量に基づいて、約10重量%以下、特定の実施形態では約5重量%以下、いくつかの特定の実施形態では約2.5重量%以下の総量で存在する。
【0130】
レドックス開始剤系は、レドックス剤を含む。レドックス剤は、酸化剤及び還元剤を含んでもよい。本発明に有用である、好適な重合性成分、レドックス剤、任意の酸官能性成分、及び任意の充填剤は、米国特許第7,173,074号(Mitraら)及び同第6,982,288号(Mitraら)に記載されている。代替的に、レドックス剤は、米国特許出願公開第2004/0122126(A1)号(Wuら)に開示の酵素を含有するフリーラジカル開始剤系を含んでもよい。
【0131】
還元剤と酸化剤とは、互いに反応するか、ないしは別の方法で協働して、樹脂系(例えば、エチレン性不飽和成分)の重合を開始することが可能なフリーラジカルを生成する。この種の硬化は、暗反応であり、すなわち、光の存在に依存せず、かつ光の不在下で進行可能である。少なくともいくつかの実施形態では、還元剤及び酸化剤は、典型的な歯科条件下でのそれらの貯蔵及び使用を可能にするのに十分に貯蔵安定であり、望ましくない着色がない。
【0132】
有用な還元剤としては、米国特許第5,501,727号(Wangら)に記載されている通り、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、及び金属錯体化アスコルビン酸化合物、アミン、特に第三級アミン、例えば4−tert−ブチルジメチルアニリン、芳香族スルフィン酸塩、例えばp−トルエンスルフィン酸塩、ベンゼンスルフィン酸塩、チオウレア、例えば1−エチル−2−チオウレア、テトラエチルチオウレア、テトラメチルチオウレア、1,1−ジブチルチオウレア、及び1,3−ジブチルチオウレア、並びにこれらの混合物が挙げられる。他の第二級還元剤としては、塩化コバルト(II)、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン(酸化剤の選択に依存する)、亜ジチオン酸塩又は亜硫酸塩アニオンの塩、及びこれらの混合物が挙げられうる。特定の実施形態では、還元剤はアミンである。
【0133】
好適な酸化剤はまた、当業者によく知られており、過硫酸及びその塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、セシウム塩、及びアルキルアンモニウム塩などが挙げられるが、これらに限定されない。更なる酸化剤としては、過酸化物、例えば、過酸化ベンゾイル、ヒドロペルオキシド(例えば、クミルヒドロペルオキシド)、t−ブチルヒドロペルオキシド、及びアミルヒドロペルオキシド、並びに遷移金属の塩、例えば、塩化コバルト(III)及び塩化第二鉄、硫酸セリウム(IV)、過ホウ酸及びその塩、過マンガン酸及びその塩、過リン酸及びその塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0134】
1種より多くの酸化剤又は1種より多くの還元剤を使用することが望ましい場合がある。少量の遷移金属化合物を添加して、レドックス硬化速度を速めてもよい。いくつかの実施形態では、二次イオン塩が、米国特許第6,982,288号(Mitraら)に記載されている重合性組成物の安定性を高めるために含まれてもよい。
【0135】
還元剤及び酸化剤は、適切なフリーラジカル反応速度を可能にするのに十分な量で存在する。これは、いずれかの任意の充填剤を除く、重合性組成物の全成分を合わせることにより、及び硬化した塊が得られたか否かを観察することにより、評価することができる。
【0136】
還元剤又は酸化剤は、米国特許第5,154,762号(Mitraら)に記載されている通り、マイクロカプセル化され得る。これは、一般に、重合性組成物の貯蔵安定性を高め、必要であれば、還元剤及び酸化剤を一緒に包装することを許容するであろう。例えば、封入剤を適切に選択することにより、酸化剤及び還元剤を酸官能性成分及び任意の充填剤と合わせて、貯蔵安定状態に維持することができる。同様に、水不混和性封入材を適切に選択することにより、還元剤及び酸化剤を、FASガラス及び水と合わせて貯蔵安定状態に維持することができる。
【0137】
レドックス硬化系は、例えば、グラスアイオノマーセメント、及び米国特許第5,154,762号(Mitraら)に記載されているものなどの光重合性組成物を使用して、他の硬化系と組み合わせることができる。
【0138】
レドックス硬化系を利用する硬化性組成物は、2剤型粉末/液体系、ペースト/液体系、及びペースト/ペースト系を含む様々な形態で供給され得る。それぞれが粉末、液体、ゲル、又はペーストの形態である複数剤の組み合わせ(すなわち、2つ以上の剤の組み合わせ)を用いた他の形態もまた、可能である。複数剤系では、1つの剤は典型的には還元剤を含有し、別の剤は典型的には酸化剤を含有する。したがって、還元剤が系の1つの剤中に存在する場合、酸化剤は、典型的には、系の別の剤中に存在する。但し、還元剤と酸化剤とは、マイクロカプセル化技術の使用によって、系の同じ剤中で合わせてもよい。
【0139】
任意の添加剤
本明細書に開示される硬化性歯科用組成物は、香味剤、フッ化剤、緩衝剤、麻酔剤(numbing agent)、再石灰化剤、脱感作剤、着色剤、指示薬、粘度調整剤、界面活性剤、安定剤、防腐剤(例えば安息香酸)、又はこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない当技術分野において公知の様々な添加剤を任意選択で含んでもよい。着色剤が存在すると、水性組成物により所望の口腔内表面全てがコーティングされたことを検出するのに役立つ場合がある。着色剤の色の濃さはまた、口腔内表面上のコーティングの均一性を検出するのに役立つ場合がある。
【0140】
硬化性歯科用組成物中に添加剤が存在する本明細書に開示の硬化性歯科用組成物の実施形態の場合、硬化性歯科用組成物は、硬化性歯科用組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.01重量%の添加剤、少なくとも0.05重量%の添加剤、又は少なくとも0.1重量%の添加剤を含む。硬化性歯科用組成物中に添加剤が存在する本明細書に開示の硬化性歯科用組成物の実施形態の場合、硬化性歯科用組成物は、硬化性歯科用組成物の総重量に基づいて、最大で5重量%の添加剤、最大で3重量%の添加剤、又は最大で1重量%の添加剤を含む。
【0141】
方法、デバイス、及び硬化した組成物
別の態様では、本開示は、本明細書に記載されている表面処理された歯科用無機充填剤を含む硬化性歯科用組成物を準備すること、及びこの歯科用組成物を硬化するのに有効な条件を提供すること、を含む、硬化した歯科用組成物を調製する方法を提供する。いくつかの実施形態では、歯科用組成物を硬化するのに有効な条件としては、加熱、照射、複数剤型硬化性歯科用組成物の剤を組み合わせること、真空処理(vacuum starvation)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるプロセスが挙げられる。
【0142】
本明細書に開示の硬化性歯科用組成物は、重合性成分が重合するように誘起することによって硬化され得る。例えば、重合は、化学線の適用によって誘起され得る。特定の実施形態では、組成物は、400〜1200ナノメートルの波長を有する放射線で、特定の実施形態では可視放射線で、照射される。可視光源としては、例えば、太陽、レーザー、金属蒸気(例えば、ナトリウム及び水銀)ランプ、白熱ランプ、ハロゲンランプ、水銀アークランプ、蛍光室光、懐中電灯、発光ダイオード、タングステンハロゲンランプ、及びキセノンフラッシュランプが挙げられる。
【0143】
いくつかの実施形態では、硬化性歯科用組成物は、複数剤型歯科用組成物(例えば、2剤型歯科用組成物)であり得る。例えば、レドックス開始剤系の構成成分は、別個の剤に含有されてもよい。複数剤型歯科用組成物の場合、複数剤型は、様々な実施形態において施術者に提供され得る。
【0144】
一実施形態では、複数剤型は、別々の封着可能な容器(例えば、プラスチック又はガラスで作製された)中に収容され得る。使用のために、施術者は、成分の適切な一部を容器から採取し、その一部を手で混合プレート上で混合することができる。
【0145】
いくつかの実施形態では、複数剤型は、貯蔵デバイスの別々のコンパートメント中に収容される。貯蔵デバイスは、典型的には、それぞれの剤を貯蔵するための2つのコンパートメントを備え、各コンパートメントには、それぞれの剤を送達するためのノズルが備えられる。一旦、適切な分量が送達されたら、次いで、剤は、手で混合プレート上で混合され得る。
【0146】
特定の実施形態では、貯蔵デバイスは、静的混合チップを受け入れるためのインターフェースを有する。混合チップは、それぞれの剤を混合するために使用される。静的混合チップは、例えば、SulzerMixpac Companyから入手可能である。有用な貯蔵デバイスは、カートリッジ、シリンジ、及び管を備える。
【0147】
貯蔵デバイスは、典型的には、2つのハウジング又はコンパートメントを備え、これは、ノズルを有する前端、及び後端、並びにハウジング又はコンパートメント中で移動可能な少なくとも1つのピストンを有する。
【0148】
有用なカートリッジは、例えば、米国特許出願公開第2007/0090079(A1)号(Kellerら)及び米国特許第5,918,772号(Kellerら)に記載されている。有用なカートリッジは、例えば、SulzerMixpac AG(Switzerland)から入手可能である。有用な静的混合チップは、例えば、米国特許出願公開第2006/0187752(A1)号(Kellerら)及び米国特許第5,944,419号(Streiff)に記載されている。有用な混合チップは、例えば、SulzerMixpac AG(Switzerland)から入手可能である。
【0149】
他の有用な貯蔵デバイスは、例えば、国際公開第2010/123800号(3M)、国際公開第2005/016783号(3M)、国際公開第2007/104037号(3M)、国際公開第2009/061884号(3M)に記載されている。
【0150】
代替的に、本明細書に記載されている複数剤型硬化性歯科用組成物は、個々のシリンジ中で提供され得、個々のペーストは、使用前に手で混合することができる。
【0151】
特定の実施形態では、本明細書に開示の複数剤型硬化性歯科用組成物は、複数剤型、及び複数剤型を混合して硬化組成物を形成するための1つ以上の方法(本明細書に開示の)を説明する指示書を備えたキットとして提供することができる。
【0152】
一実施形態では、本開示は、本明細書に記載されている複数剤型(例えば、2剤型)硬化性歯科用組成物を貯蔵するためのデバイスを提供する。デバイスは、第1剤を収容した第1のコンパートメント、及び第2剤を収容した第2のコンパートメントを備える。いくつかの実施形態では、第1のコンパートメントと第2のコンパートメントとの両方は、それぞれ独立に、静的混合チップのエントランスオリフィスを受け入れるためのノズル又はインターフェースを備える。
【0153】
いくつかの実施形態では、第1剤と第2剤との混合比は、体積に関して1:3〜2:1であり、特定の実施形態では体積に関して1:2〜2:1である。
【0154】
他の実施形態では、第1剤と第2剤との混合比は、重量に関して1:6〜1:1であり、特定の実施形態では重量に関して1:4〜1:1である。
【0155】
それぞれの剤を混合したときに得られた又は得られうる組成物は、歯科用セメント、歯科用充填材料、歯科用コアビルドアップ材料、又は歯科用根管充填材料を製造する上で特に有用である。
【0156】
特定の実施形態では、混合物(例えば、硬化性組成物)を歯牙硬組織表面に適用し、混合物(例えば、硬化性組成物)を硬化させて、歯牙硬組織表面に硬化組成物を形成させる。
【0157】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載されている表面処理された歯科用無機充填剤を含む硬化した歯科用組成物を提供する。いくつかの実施形態では、硬化した歯科用組成物は、表面処理された及び/又は表面処理されていない追加の無機充填剤を更に含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、硬化した歯科用組成物は、8ミクロン以下、特定の実施形態では6ミクロン以下の絶対値を有するCUSP値を有する。いくつかの実施形態では、硬化した歯科用組成物は、少なくとも60MPa、いくつかの実施形態では少なくとも70MPaのDTSを有する。
【0159】
本開示の例示的実施形態
表面処理された無機充填剤、及びそれを作製する方法及び使用する方法を提供することができる様々な実施形態が開示される。
【0160】
実施形態1Aは、式:
【化7】
[式中、RSiは、式−Si(Yp)(R6)3−p(式中、Yは、加水分解性基であり、R6は、一価のアルキル基又はアリール基であり、pは、1、2、又は3である)のシラン含有基であり、各R1、R2、及びR3は、独立に、H、アルキル基、アリール基、アルカリール基、又はアラルキル基であり、R4は、H、アルキル基、アリール基、アルカリール基、アラルキル基、又は式−(CH2)m−(A)(式中、mは、1〜6である)の基であり、nは、1〜6であり、qは、0又は1であり、tは、0又は1であり、Aは、式X1−C(O)−C(R7)=CH2(式中、X1は、−O、−S、又は−NR7であり、各R7は、独立に、H、又はC1〜C4アルキル基である)の(メタ)アクリル基であり、R5は、H、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルカリール基、アラルキル基、式(RSi)−(CR1R2)n−(NH−C(O)−O−CH2−CH2)q−の基、式(RSi)−(CR1R2)n−NH−C(O)−N(R8)−(CH2)m−の基、式−(CH2)m−(A)の基、式−(CH2)m−N(R8)−C(O)−NH−(CH2−CH2−O)t−CR3R4−CH2−(A)の基、又は式−(CH2)m−N(R8)−C(O)−NH−R9の基であり、式中、各m及びnは、独立に、1〜6であり、qは、0又は1であり、tは0又は1であり、各R1、R2、R3、R4、RSi、及びAは、上に定義した通りであり、R8は、H、又は式−(CH2)m−NH−C(O)−NH−(CH2−CH2−O)t−CR3R4−CH2−(A)の基、式−(CH2)m−NH−C(O)−NH−(CR1R2)n−(RSi)の基、又は式−(CH2)m−NH−C(O)−NH−R9の基であり、式中、各m及びnは、独立に、1〜6であり、tは、0又は1であり、各R1、R2、R3、R4、RSi、及びAは、上に定義した通りであり、R9は、アルキル基、アリール基、アルカリール基、又はアラルキル基であり、但し、R1、R2、R3、R4、及びR5のうちの少なくとも1つがHではないことを条件とする]
の少なくとも1種のシランで処理された表面を有する、表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0161】
実施形態2Aは、tが、0である、実施形態1Aに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0162】
実施形態3Aは、各R1、R2、又はR3が、独立に、H又はCH3である、実施形態1A又は2Aに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0163】
実施形態4Aは、R4が、H、CH3、又は式−(CH2)m−(A)(式中、mは1である)の基である、実施形態1A〜3Aのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0164】
実施形態5Aは、qが、0である、実施形態1A〜4Aのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0165】
実施形態6Aは、nが、1〜3である、実施形態1A〜5Aのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0166】
実施形態7Aは、Aが、−O−C(O)−CH=CH2又は−O−C(O)C(CH3)=CH2である、実施形態1A〜6Aのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0167】
実施形態8Aは、R8が、Hである、実施形態1A〜7Aのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0168】
実施形態9Aは、R9が,フェニル基である、実施形態1A〜8Aのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0169】
実施形態10Aは、RSiが、−Si(OCH3)3又は−Si(OCH2CH3)3である、実施形態1A〜9Aのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0170】
実施形態11Aは、歯科用無機充填剤が、非凝集粒子、凝集粒子、非凝結粒子、凝結粒子、クラスター、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態1A〜10Aのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0171】
実施形態12Aは、歯科用無機充填剤が、非酸反応性充填剤である、実施形態1A〜11Aのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0172】
実施形態13Aは、歯科用無機充填剤が、ナノ粒子及び/又はナノ粒子のクラスターを含む、実施形態1A〜12Aのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0173】
実施形態14Aは、歯科用無機充填剤が、金属酸化物粒子を含む、実施形態1A〜13Aのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0174】
実施形態15Aは、歯科用無機充填剤が、シリカ粒子、ジルコニア粒子、アルミノシリケートガラス、ドープアルミノシリケートガラス、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される粒子を含む、実施形態1A〜14Aのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0175】
実施形態16Aは、ドープアルミノシリケートガラスが、アルミノケイ酸バリウム、アルミノケイ酸ストロンチウム、アルミノケイ酸ランタン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態15Aに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0176】
実施形態17Aは、歯科用無機充填剤が、5ナノメートル〜20ミクロンの平均粒径を有する粒子を含む、実施形態1A〜16Aのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0177】
実施形態18Aは、粒子の少なくとも1種のシランによる表面被覆率が少なくとも25%である、実施形態1A〜17Aのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0178】
実施形態1Bは、式:
【化8】
[式中、RSiは、式−Si(Yp)(R6)3−p(式中、Yは、加水分解性基であり、R6は、一価のアルキル基又はアリール基であり、pは、1、2、又は3である)のシラン含有基であり、各R1、R2、及びR3は、独立に、H、アルキル基、アリール基、アルカリール基、又はアラルキル基であり、R4は、H、アルキル基、アリール基、アルカリール基、又はアラルキル基であり、これらの基は、1個以上のカテナリー酸素原子、−O−C(O)−基、及び/又は−C(O)−O−基で任意選択で置換されていてもよく、nは、1〜6であり、qは、0又は1であり、Lは、二価のアルキレン基、二価のアリーレン基、二価のアルカリーレン基、又は二価のアラルキレン基であり、これらの二価の基は、1個以上のカテナリー酸素原子、−O−C(O)−基、及び/又は−C(O)−O−基で任意選択で置換されていてもよく、Aは、式X1−C(O)−C(R7)=CH2(式中、X1は、−O、−S、又は−NR7であり、各R7は、独立に、H、又はC1〜C4アルキル基である)の(メタ)アクリル基であり、但し、R1、R2、R3、及びR4のうちの少なくとも1つがHではないことを条件とする]
の少なくとも1種のシランで処理された表面を有する、表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0179】
実施形態2Bは、各R1、R2、及びR3が、独立に、H又はCH3である、実施形態1Bに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0180】
実施形態3Bは、R4が、H、CH3、又は式−(CH2)m−(A)(式中、mは1である)の基である、実施形態1B又は2Bに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0181】
実施形態4Bは、qが、0である、実施形態1B〜3Bのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0182】
実施形態5Bは、nが、1〜3である、実施形態1B〜4Bのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0183】
実施形態6Bは、Aが、−O−C(O)−CH=CH2又は−O−C(O)C(CH3)=CH2である、実施形態1B〜5Bのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0184】
実施形態7Bは、RSiが、−Si(OCH3)3又は−Si(OCH2CH3)3である、実施形態1B〜6Bのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0185】
実施形態8Bは、Lが、
【化9】
である、実施形態1B〜7Bのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0186】
実施形態9Bは、R4が、−CH2−O−C(O)−Phである、実施形態1B〜8Bのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0187】
実施形態10Bは、歯科用無機充填剤が、非凝集粒子、凝集粒子、非凝結粒子、凝結粒子、クラスター、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態1B〜9Bのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0188】
実施形態11Bは、歯科用無機充填剤が、非酸反応性充填剤である、実施形態1B〜10Bのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0189】
実施形態12Bは、歯科用無機充填剤が、ナノ粒子及び/又はナノ粒子のクラスターを含む、実施形態1B〜11Bのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0190】
実施形態13Bは、歯科用無機充填剤が、金属酸化物粒子を含む、実施形態1B〜12Bのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0191】
実施形態14Bは、歯科用無機充填剤が、シリカ粒子、ジルコニア粒子、アルミノシリケートガラス、ドープアルミノシリケートガラス、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される粒子を含む、実施形態1B〜13Bのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0192】
実施形態15Bは、ドープアルミノシリケートガラスが、アルミノケイ酸バリウム、アルミノケイ酸ストロンチウム、アルミノケイ酸ランタン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態14Bに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0193】
実施形態16Bは、歯科用無機充填剤が、5ナノメートル〜20ミクロンの平均粒径を有する粒子を含む、実施形態1B〜15Bのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0194】
実施形態17Bは、粒子の少なくとも1種のシランによる表面被覆率が少なくとも25%である、実施形態1B〜16Bのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤である。
【0195】
実施形態1Cは、実施形態1A〜17Bのいずれか1つに記載の表面処理された無機充填剤を含む、硬化性歯科用組成物である。
【0196】
実施形態2Cは、少なくとも1種の重合性樹脂を更に含む、実施形態1Cに記載の硬化性歯科用組成物である。
【0197】
実施形態3Cは、少なくとも1種の重合性樹脂が、フリーラジカル重合性樹脂である、実施形態2Cに記載の硬化性歯科用組成物である。
【0198】
実施形態4Cは、表面処理された及び/又は表面処理されていない追加の無機充填剤を更に含む、実施形態1C〜3Cのいずれか1つに記載の硬化性歯科用組成物である。
【0199】
実施形態5Cは、開始剤系を更に含む、実施形態1C〜4Cのいずれか1つに記載の硬化性歯科用組成物である。
【0200】
実施形態6Cは、開始剤系が、光開始剤系、レドックス開始剤系、過酸化物熱活性化開始剤系、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態5Cに記載の硬化性歯科用組成物である。
【0201】
実施形態7Cは、香味剤、フッ化剤、緩衝剤、麻酔剤、再石灰化剤、脱感作剤、着色剤、指示薬、粘度調整剤、界面活性剤、安定剤、防腐剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤を更に含む、実施形態1C〜6Cのいずれか1つに記載の硬化性歯科用組成物である。
【0202】
実施形態8Cは、1剤型歯科用組成物又は複数剤型歯科用組成物である、実施形態1C〜7Cのいずれか1つに記載の硬化性歯科用組成物である。
【0203】
実施形態1Dは、実施形態1A〜18Aのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤を調製する方法であって、無機充填剤を、式:
【化10】
[式中、RSiは、式−Si(Yp)(R6)3−p(式中、Yは、加水分解性基であり、R6は、一価のアルキル基又はアリール基であり、pは、1、2、又は3である)のシラン含有基であり、各R1、R2、及びR3は、独立に、H、アルキル基、アリール基、アルカリール基、又はアラルキル基であり、R4は、H、アルキル基、アリール基、アルカリール基、アラルキル基、又は式−(CH2)m−(A)(式中、mは、1〜6である)の基であり、nは、1〜6であり、qは、0又は1であり、tは、0又は1であり、Aは、式X1−C(O)−C(R7)=CH2(式中、X1は、−O、−S、又は−NR7であり、各R7は、独立に、H、又はC1〜C4アルキル基である)の(メタ)アクリル基であり、R5は、H、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルカリール基、アラルキル基、式(RSi)−(CR1R2)n−(NH−C(O)−O−CH2−CH2)q−の基、式(RSi)−(CR1R2)n−NH−C(O)−N(R8)−(CH2)m−の基、式−(CH2)m−(A)の基、式−(CH2)m−N(R8)−C(O)−NH−(CH2−CH2−O)t−CR3R4−CH2−(A)の基、又は式−(CH2)m−N(R8)−C(O)−NH−R9の基であり、式中、各m及びnは、独立に、1〜6であり、qは、0又は1であり、tは0又は1であり、各R1、R2、R3、R4、RSi、及びAは、上に定義した通りであり、R8は、H、又は式−(CH2)m−NH−C(O)−NH−(CH2−CH2−O)t−CR3R4−CH2−(A)の基、式−(CH2)m−NH−C(O)−NH−(CR1R2)n−(RSi)の基、又は式−(CH2)m−NH−C(O)−NH−R9の基であり、式中、各m及びnは、独立に、1〜6であり、tは、0又は1であり、各R1、R2、R3、R4、RSi、及びAは、上に定義した通りであり、R9は、アルキル基、アリール基、アルカリール基、又はアラルキル基であり、但し、R1、R2、R3、R4、及びR5のうちの少なくとも1つがHではないことを条件とする]
の少なくとも1種のシランと接触させることを含む、方法である。
【0204】
実施形態2Dは、接触させることが、液体媒体中で無機充填剤を少なくとも1種のシランと接触させることを含む、実施形態1Dに記載の方法である。
【0205】
実施形態3Dは、液体媒体が、少なくとも1種の有機溶媒を含む、実施形態2Dに記載の方法である。
【0206】
実施形態4Dは、少なくとも1種の有機溶媒が、アルコール、アセテート、芳香族、ケトン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態3Dに記載の方法である。
【0207】
実施形態5Dは、液体媒体が、水を更に含む、実施形態2D〜4Dのいずれか1つに記載の方法である。
【0208】
実施形態6Dは、液体媒体が、少なくとも1種の触媒を更に含む、実施形態2D〜5Dのいずれか1つに記載の方法である。
【0209】
実施形態7Dは、少なくとも1種の触媒が、酸性触媒又は塩基性触媒である、実施形態6Dに記載の方法である。
【0210】
実施形態8Dは、酸性触媒が、有機酸性触媒又は無機酸性触媒である、実施形態7Dに記載の方法である。
【0211】
実施形態9Dは、有機酸性触媒が、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態8Dに記載の方法である。
【0212】
実施形態10Dは、無機酸性触媒が、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、アンチモン酸、ホウ酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態8Dに記載の方法である。
【0213】
実施形態11Dは、塩基性触媒が、有機塩基性触媒又は無機塩基性触媒である、実施形態7Dに記載の方法である。
【0214】
実施形態12Dは、有機塩基性触媒が、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミンである、実施形態11Dに記載の方法である。
【0215】
実施形態13Dは、無機塩基性触媒が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態11Dに記載の方法である。
【0216】
実施形態14Dは、接触させることが、液体媒体中で無機充填剤と少なくとも1種のシランとを撹拌すること又は混合することを更に含む、実施形態2D〜13Dのいずれか1つに記載の方法である。
【0217】
実施形態15Dは、液体媒体の少なくとも一部を除去して、少なくとも1種のシランで処理された表面を有する乾燥した歯科用無機充填剤を提供することを更に含む、実施形態2D〜14Dのいずれか1つに記載の方法である。
【0218】
実施形態16Dは、液体媒体を除去することが、加熱、減圧、凍結乾燥、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるプロセスを含む、実施形態15Dに記載の方法である。
【0219】
実施形態1Eは、実施形態1B〜17Bのいずれか1つに記載の表面処理された歯科用無機充填剤を調製する方法であって、無機充填剤を、式:
【化11】
[式中、RSiは、式−Si(Yp)(R6)3−p(式中、Yは、加水分解性基であり、R6は、一価のアルキル基又はアリール基であり、pは、1、2、又は3である)のシラン含有基であり、各R1、R2、及びR3は、独立に、H、アルキル基、アリール基、アルカリール基、又はアラルキル基であり、R4は、H、アルキル基、アリール基、アルカリール基、又はアラルキル基であり、これらの基は、1個以上のカテナリー酸素原子、−O−C(O)−基、及び/又は−C(O)−O−基で任意選択で置換されていてもよく、nは、1〜6であり、qは、0又は1であり、Lは、二価のアルキレン基、二価のアリーレン基、二価のアルカリーレン基、又は二価のアラルキレン基であり、これらの二価の基は、1個以上のカテナリー酸素原子、−O−C(O)−基、及び/又は−C(O)−O−基で任意選択で置換されていてもよく、Aは、式X1−C(O)−C(R7)=CH2(式中、X1は、−O、−S、又は−NR7であり、各R7は、独立に、H、又はC1〜C4アルキル基である)の(メタ)アクリル基であり、但し、R1、R2、R3、及びR4のうちの少なくとも1つがHではないことを条件とする]
の少なくとも1種のシランと接触させることを含む、方法である。
【0220】
実施形態2Eは、接触させることが、液体媒体中で無機充填剤を少なくとも1種のシランと接触させることを含む、実施形態1Eに記載の方法である。
【0221】
実施形態3Eは、液体媒体が、少なくとも1種の有機溶媒を含む、実施形態2Eに記載の方法である。
【0222】
実施形態4Eは、少なくとも1種の有機溶媒が、アルコール、アセテート、芳香族、ケトン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態3Eに記載の方法である。
【0223】
実施形態5Eは、液体媒体が、水を更に含む、実施形態2E〜4Eのいずれか1つに記載の方法である。
【0224】
実施形態6Eは、液体媒体が、少なくとも1種の触媒を更に含む、実施形態2E〜5Eのいずれか1つに記載の方法である。
【0225】
実施形態7Eは、少なくとも1種の触媒が、酸性触媒又は塩基性触媒である、実施形態6Eに記載の方法である。
【0226】
実施形態8Eは、酸性触媒が、有機酸性触媒又は無機酸性触媒である、実施形態7Eに記載の方法である。
【0227】
実施形態9Eは、有機酸性触媒が、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態8Eに記載の方法である。
【0228】
実施形態10Eは、無機酸性触媒が、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、アンチモン酸、ホウ酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態8Eに記載の方法である。
【0229】
実施形態11Eは、塩基性触媒が、有機塩基性触媒又は無機塩基性触媒である、実施形態7Eに記載の方法である。
【0230】
実施形態12Eは、有機塩基性触媒が、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミンである、実施形態11Eに記載の方法である。
【0231】
実施形態13Eは、無機塩基性触媒が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態11Eに記載の方法である。
【0232】
実施形態14Eは、接触させることが、液体媒体中で無機充填剤と少なくとも1種のシランとを撹拌すること又は混合することを更に含む、実施形態2E〜13Eのいずれか1つに記載の方法である。
【0233】
実施形態15Eは、液体媒体の少なくとも一部を除去して、少なくとも1種のシランで処理された表面を有する乾燥した歯科用無機充填剤を提供することを更に含む、実施形態2E〜14Eのいずれか1つに記載の方法である。
【0234】
実施形態16Eは、液体媒体を除去することが、加熱、減圧、凍結乾燥、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるプロセスを含む、実施形態15Eに記載の方法である。
【0235】
実施形態1Fは、実施形態1A〜17Bのいずれか1つに記載の表面処理された無機充填剤を含む、硬化した歯科用組成物である。
【0236】
実施形態2Fは、表面処理された及び/又は表面処理されていない追加の無機充填剤を更に含む、実施形態1Fに記載の硬化した歯科用組成物である。
【0237】
実施形態3Fは、8ミクロン以下の絶対値を有するCUSP値を有する、実施形態1F又は2Fに記載の硬化した歯科用組成物である。
【0238】
実施形態4Fは、少なくとも60MPaのDTSを有する、実施形態1F〜3Fのいずれか1つに記載の硬化した歯科用組成物である。
【0239】
実施形態1Gは、硬化した歯科用組成物を調製する方法であって、実施形態1C〜8Cのいずれか1つに記載の硬化性歯科用組成物を準備すること、及びその硬化性歯科用組成物を硬化するのに有効な条件を提供すること、を含む、方法である。
【0240】
実施形態2Gは、歯科用組成物を硬化するのに有効な条件が、加熱、照射、複数剤型歯科用組成物の剤を組み合わせること、真空処理、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるプロセスを含む、実施形態1Gに記載の方法である。
【0241】
本開示の目的及び利点は、以下の非限定的な実施例によって更に例証されるが、これらの実施例に引用される具体的な材料及びそれらの量、並びにその他の条件及び詳細は、本開示を過度に制限しないものと解釈されるべきである。
【実施例】
【0242】
以下の実施例は、本発明の範囲を例示するために示すものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書で使用する場合、別段の指定がない限り、全ての部及び百分率は重量によるものであり、全ての水は脱イオン水であった。別段の指定がない限り、材料は、Sigma−Aldrich Corp.(St.Louis,MO)から入手することができる。
【0243】
略語及び頭字語の説明:
重合性樹脂のモノマー
「AFM−1」は、米国特許第9,056,043号(Jolyら)の第46欄58行目〜第47欄27行目(「AFM−1の調製」)に記載されている通りに調製することができる付加開裂モノマーであり、
「BisGMA」は、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン(ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリレートとも称される)を指し、Sigma−Aldrich Corp.(St.Louis,MO)から入手可能であり、
「Procrylat K」は、2,2−ビス−4−(3−ヒドロキシ−プロポキシ−フェニル)プロパンジメタクリレート(CAS 27689−2−9)を指し、
「DDDMA」は、1,12−ドデカンジオールジメタクリレートを指し、Sartomer Co.,Inc.(Exton,PA)から商品名「SR−262」で入手可能であり、
「ERGP−IEM」は、2−プロペン酸,2−メチル−,1,1’−[1,3−フェニレンビス[オキシ−2,1−エタンジイルオキシ[1−(フェノキシメチル)−2,1−エタンジイル]オキシカルボニルイミノ−2,1−エタンジイル]]エステルを指し、これは、米国特許第8,710,113号(Eckertら)の第77欄33〜40行目(「ERGP−IEMの合成」)に記載されている通りに調製することができ、
「TEGDMA」は、トリエチレングリコールジメタクリレートを指し、Sartomer Co.,Inc.(Exton,PA)から入手可能であり、
「UDMA」は、Rohm America LLC(Piscataway,NJ)から商品名「ROHAMERE 6661−0」で入手可能なジウレタンジメタクリレートを指し、Dajac Laboratories(Trevose,PA)からも入手可能であり、
「BisEMA−6」は、エトキシル化(6)ビスフェノールAジメタクリレートを指し、
「PEG600 DM」は、ポリエチレングリコールジメタクリレート(600)を指し、
「S/Tシリカ/ジルコニアクラスター」は、シラン処理されたシリカ−ジルコニアナノクラスター充填剤を指し、これは、一般に、米国特許第6,730,156号(Windischら)の第25欄50〜63行目(調製実施例A)及び第25欄64行目〜第26欄40行目(調製実施例B)に記載されている通りに調製されるが、(トリフルオロ酢酸でpHを3〜3.3に調整するのではなく)NH4OH水溶液でpHをおよそ8.8に調整した(水ではなく)1−メトキシ−2−プロパノール中でシラン化を行うこと、及び(スプレー乾燥ではなく)ギャップ乾燥によってナノクラスター充填剤を得ることを含む、小規模な修正を伴う。
【0244】
ナノ粒子:
「S/T 20nmシリカ」は、およそ20ナノメートルの公称粒径を有するシラン処理されたシリカナノ粒子充填剤を指し、これは実質的に、米国特許第6,572,693号第21欄63〜67行目(「ナノサイズの粒子充填剤、タイプ#2」)に記載されている通りに調製し、
「S/Tナノジルコニア」は、シラン処理されたジルコニア充填剤を指し、これは実質的に、米国特許第8,647,510号(Kolbら)第36欄61行目〜第37欄16行目(実施例11A−IER)に記載されている通りに、ジルコニアゾルから調製した。ジルコニアゾルを、GF−31を含有する等重量の1−メトキシ−2−プロパノールに添加した(表面処理されるナノジルコニア1g当たり1.1mmolのGF−31)。混合物を、撹拌しながら3時間、およそ85℃に加熱した。混合物を35℃に冷却し、NH4OH水溶液でpHをおよそ9.5に調整し、混合物を、撹拌しながら4時間、およそ85℃に再加熱した。結果として得られた材料を、過剰量の水で洗浄し、ギャップ乾燥によって溶媒を除去することで、S/Tナノジルコニアを乾燥粉末として単離した。本明細書で使用する場合、「S/Tナノジルコニア」はまた、S/Tナノジルコニアを乾燥粉末の形態で単離することなく、樹脂(及びペースト)中に溶媒交換された、シラン処理されたジルコニア充填剤のことも指す(例えば、本明細書の実施例において更に詳述されるように、S/Tナノジルコニアゾルをメタクリレート含有樹脂に添加した後、減圧下で濃縮及び/又は加熱してゾルと関連する揮発性物質を除去することによる)。
【0245】
カップリング剤/表面処理
「GF−31」は、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを指し、Wacker Chemie AG(Munich,Germany)から入手可能である。
【0246】
他の前駆体は、例えば、Gelest、Aldrich、及びTCI Americaから入手可能であった。
【0247】
他の構成成分:
「YbF3」は、フッ化イッテルビウムを指し、粒径がおよそ100〜105nmであり、屈折率が1.52であり、Sukgyung AT Co.Ltd.,(Korea)から入手可能であり、
「BHT」は、ブチル化ヒドロキシトルエン(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)を指し、Sigma−Aldrich Corp.(St.Louis,MO)から入手可能であり、
「BZT」は、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールを指し、Ciba,Inc.(Tarrytown,NY)から「TINUVIN R 796」として入手可能であり、また、Sigma−Aldrich Corp.(St.Louis,MO)からも入手可能であり、
「CPQ」は、カンファーキノンを指し、
「DPIHFP」又は「DPIPF6」は、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートを指し、Johnson Matthey,Alfa Aesar Division(Ward Hill,MA)から入手可能であり、
「EDMAB」は、4−(ジメチルアミノ)安息香酸エチルを指し、Sigma−Aldrich Corp.(St.Louis,MO)から入手可能である。
【0248】
シラン調製実施例−A群
【表1】
【0249】
シラン1調製実施例−フタル酸メタクリレートウレタンシラン
3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン14.9884gを2−ヒドロキシプロピル2−(メタクリロイルオキシ)−エチルフタレート20.4350gと混合した。この混合物に、ジラウリン酸ジブチルスズ1滴を、撹拌しながら添加した。このサンプルを反応させたところ、発熱が認められた。
【化12】
【0250】
シラン2調製実施例−プロピルシクロヘキシルIEMA尿素シラン
7−シクロヘキシル−3,3−ジメトキシ−8−オキソ−2−オキサ−7,9−ジアザ−3−シラウンデカン−11−イルメタクリレート
【化13】
アミノシラン21.398gを、IEMA 11.6mLと、撹拌しながら合わせた。反応物を92℃まで発熱させ、次いで1時間後に室温まで戻した。材料は、定量的収率で、透明な、無色からわずかに黄色の、低粘度の液体として得た。
【0251】
シラン3調製実施例−プロピルフェニルIEMA尿素シラン
3,3−ジメトキシ−8−オキソ−7−フェニル−2−オキサ−7,9−ジアザ−3−シラウンデカン−11−イルメタクリレート
【化14】
アミノシラン100.013gを、IEMA 55.5mLと、反応温度を50℃未満に維持するのに十分な速度、1回に約10mLで、撹拌しながら合わせた。材料は、定量的収率で、透明な、無色からわずかに黄色の、低粘度の液体として得た。
【0252】
シラン4調製実施例−メチルフェニルIEMA尿素シラン
3,3−ジメトキシ−6−オキソ−5−フェニル−2−オキサ−5,7−ジアザ−3−シラノナン−9−イルメタクリレート
【化15】
アミノシラン100.013gを、IEMA 55.5mLと、反応温度を50℃未満に維持するのに十分な速度、1回に約10mLで、撹拌しながら合わせた。材料は、定量的収率で、透明な、無色からわずかに黄色の、低粘度の液体として得た。
【0253】
シラン5調製実施例−イソブチルエチルIEMA尿素シラン
7−エチル−3,3−ジメトキシ−5−メチル−8−オキソ−2−オキサ−7,9−ジアザ−3−シラウンデカン−11−イルメタクリレート
【化16】
アミノシラン11.012gを、IEMA 7mLと、反応温度を55℃未満に維持するのに十分な速度、1回にIEMA約1mLで、撹拌しながら合わせた。材料を、定量的収率で、透明な、淡黄色の、濃厚な液体として得た。
【0254】
シラン6調製実施例−プロピルブチルIEMA尿素シラン
7−ブチル−3,3−ジメトキシ−8−オキソ−2−オキサ−7,9−ジアザ−3−シラウンデカン−11−イルメタクリレート
【化17】
アミノシラン10.016gを、IEMA 6mLと、反応温度を55℃未満に維持するのに十分な速度、1回にIEMA約1mLで、撹拌しながら合わせた。材料は、定量的収率で、透明な、無色からわずかに黄色の、低粘度の液体として得た。
【0255】
シラン7調製比較例−ブチルIEMA尿素シラン
4,4−ジエトキシ−10−オキソ−3−オキサ−9,11−ジアザ−4−シラトリデカン−13−イルメタクリレート
【化18】
アミノシラン10.006gを、IEMA 6mLと、反応温度を55℃未満に維持するのに十分な速度、1回にIEMA約1mLで、撹拌しながら合わせた。材料を、定量的収率で、透明な、無色からわずかに黄色の、低粘度の液体として得た。
【0256】
シラン8調製実施例−ジメチルブチルIEMA尿素シラン
3,3−ジメトキシ−6,6−ジメチル−9−オキソ−2−オキサ−8,10−ジアザ−3−シラドデカン−12−イルメタクリレート
【化19】
アミノシラン11.002gを、IEMA 7mLと、反応温度を60℃未満に維持するのに十分な速度、1回にIEMA約1mLで、撹拌しながら合わせた。材料を、定量的収率で、透明な、無色からわずかに黄色の、粘稠な液体として得た。
【0257】
シラン9調製実施例−プロピルメチルIEMA尿素シラン
3,3−ジメトキシ−7−メチル−8−オキソ−2−オキサ−7,9−ジアザ−3−シラウンデカン−11−イルメタクリレート
【化20】
アミノシラン11.008gを、IEMA 8mLと、反応温度を60℃未満に維持するのに十分な速度、1回にIEMA約1mLで、撹拌しながら合わせた。材料を、定量的収率で、透明な、無色からわずかに黄色の、低粘度の液体として得た。
【0258】
シラン10調製実施例−プロピルフェニルIEA尿素シラン
3,3−ジメトキシ−8−オキソ−7−フェニル−2−オキサ−7,9−ジアザ−3−シラウンデカン−11−イルアクリレート
【化21】
アミノシラン25.003gを、IEA 12.2mLと、反応温度を45℃未満に維持するのに十分な速度、1回にIEA約1mLで、撹拌しながら合わせた。材料を、定量的収率で、透明な、無色からわずかに黄色の、低粘度の液体として得た。
【0259】
シラン11調製実施例−ジメチルブチルIEA尿素シラン
3,3−ジメトキシ−6,6−ジメチル−9−オキソ−2−オキサ−8,10−ジアザ−3−シラドデカン−12−イルアクリレート
【化22】
アミノシラン11.003gを、IEA 6.2mLと、反応温度を75℃未満に維持するのに十分な速度、1回にIEA約1mLで、撹拌しながら合わせた。材料を、定量的収率で、透明な、無色の、粘稠な液体として得た。
【0260】
シラン12調製実施例−イソブチルエチルIEA尿素シラン
7−エチル−3,3−ジメトキシ−5−メチル−8−オキソ−2−オキサ−7,9−ジアザ−3−シラウンデカン−11−イルアクリレート
【化23】
アミノシラン11.010gを、IEA 6.2mLと、反応温度を65℃未満に維持するのに十分な速度、1回にIEA約1mLで、撹拌しながら合わせた。材料を、定量的収率で、透明な、無色の、低粘度の液体として得た。
【0261】
シラン13調製実施例−プロピルエチルビス−IEMA尿素シラン
4,9−ジオキソ−5−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)−3,5,8,10−テトラアザドデカン−1,12−ジイルビス(2−メチルアクリレート)
【化24】
アミノシラン10.25gを、IEMA 13mLと、反応温度を55℃未満に維持するのに十分な速度、1回にIEMA約1mLで、撹拌しながら合わせた。材料を、定量的収率で、透明な、無色からわずかに黄色の、粘稠な液体として得た。
【0262】
シラン14調製実施例−プロピルヘキシルビス−IEMA尿素シラン
4,13−ジオキソ−5−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)−3,5,12,14−テトラアザヘキサデカン−1,16−ジイルビス(2−メチルアクリレート)
【化25】
アミノシラン10.60gを、IEMA 12mLと、反応温度を55℃未満に維持するのに十分な速度、1回にIEMA約1mLで、撹拌しながら合わせた。材料を、定量的収率で、透明な、無色からわずかに黄色の、粘稠な液体として得た。
【0263】
シラン15調製比較例−プロピルt−ブチル尿素シラン
10−(tert−ブチル)−4,4−ジエトキシ−9−オキソ−3−オキサ−8,10−ジアザ−4−シラドデカン−12−イルメタクリレート
【化26】
シラン−イソシアネート10gを、7.49gグラムのアミンと、撹拌しながら合わせた。反応物を45℃まで発熱させた。材料を、定量的収率で、透明な、無色からわずかに黄色の、低粘度の液体として得た。
【0264】
シラン16調製実施例−安息香酸グリシジルメタクリレートウレタンプロピルトリエトキシシラン
【化27】
安息香酸(31.89g、261mmol、GFS Chemicals Inc.(Powell,OH,USA))を、機械的撹拌器及び凝縮器を備えた250mL三つ口丸底フラスコ内で、グリシジルメタクリレート(37.12g、261mmol、TCI America(Portland,OR,USA))と混合した。凝縮器を周囲空気に開放した。トリフェニルアンチモン(0.3g、0.8mmol、Fluka)を添加した。不均質混合物を油浴(油温度=100〜105℃)で加熱した。混合物は、100℃での数分の加熱時間後に透明になった。連続加熱及び撹拌の2時間後、トリフェニルホスフィン(0.1g、0.4mmol、Alfa Aesar(Tewksbury,MA,01876,USA))を添加し、加熱/撹拌を一晩継続した。翌日、熱をオフにし、室温まで冷却した後、液体製品を定量的収率で得た。生成物の構造を1H NMRにより確認した。この生成物を、安息香酸グリシジルメタクリレートエステル10gと3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン9.37gとジラウリン酸ジブチルスズ1滴との混合物と撹拌しながら反応させ、得られた混合物は発熱し、以下の構造を有するシラン16に変換した。
【化28】
【0265】
シラン17調製比較例
Wacker Chemie AGから入手可能なGENISOSIL GF 31
3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン
【化29】
【0266】
シラン18調製比較例−ウンデシルエチルビス−IEMA尿素シラン
4,9−ジオキソ−5−(11−トリメトキシシリル)ウンデシル)−3,5,8,10−テトラアザドデカン−1,12−ジイルビス(2−メチルアクリレート)
【化30】
アミノシラン5.118gを、IEMA 4.3mLと、反応温度を70℃未満に維持するのに十分な速度、1回にIEMA約1mLで、撹拌しながら合わせた。材料を、定量的収率で、透明な、無色からわずかに黄色の、粘稠な液体として得た。
【0267】
シラン19調製比較例−プロピルフェニルGCMAウレタンシラン
11−ヒドロキシ−3,3−ジメトキシ−8−オキソ−7−フェニル−2,9−ジオキサ−7−アザ−3−シラドデカン−12−イルメタクリレート
【化31】
アミノシラン8.23gを、環状カーボネート(CAS 13818−44−5)6.00gと、撹拌しながら合わせた。反応物を室温で一晩撹拌して、定量的収率で、透明な、無色の、低粘度の液体を得た。
【0268】
シラン20調製比較例−プロピルフェニルGMAシラン
2−ヒドロキシ−3−(フェニル(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロピルメタクリレート
【化32】
アミノシラン11.53gを、グリシジルメタクリレート6.0mL及びDMAPのクラムと、撹拌しながら合わせた。反応物を室温で一晩撹拌して、定量的収率で、透明な、無色の、低粘度の液体を得た。
【0269】
シラン21調製比較例−HEMA−ウレタントリエトキシシラン
【化33】
等モル量の3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランと2−ヒドロキシエチルメタクリレートとを一緒に撹拌しながら混合した。これに、ジラウリン酸ジブチルスズ触媒1〜2滴を添加した。反応を進行させたところ、著しい発熱が生じた。
【0270】
シラン22調製比較例−Shin−Etsu Silicones of America,Inc.(Akron,OH,USA)製のKBM−5803
8−メタクリルオキシオクチルトリメトキシシラン
【化34】
【0271】
シラン調製実施例−B群
【表2】
【0272】
【表3】
【0273】
シラン23調製実施例
【化35】
撹拌棒を備えた250mL丸底フラスコに、ビス(3−トリメトキシシリルプロピルアミン(Dynasylan 1124)40g(0.117mol、341.55MW)を装入し、氷浴に入れた。均圧添加漏斗を介して、イソシアナトエチルメタクリレート(IEM)18.17g(0.117mol)を約25分かけて添加した。氷浴を外し、撹拌を更に1時間15分間継続した。その時点で、フーリエ変換赤外(Fourier Transform Infrared、FTIR)分光分析のためにサンプルを採取し、サンプルは、2265cm−1でイソシアネートピーク(−NCO)を示さなかった。次いで、生成物、透明油を単離した。
【0274】
シラン24調製実施例
【化36】
オーバーヘッド撹拌器を装備した250mLの三つ口丸底フラスコに、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(BEI)12.36g(0.0517mol、239.23MW)、及びDBTDLのMEK中10%溶液176μL(反応物の総重量に基づいて500ppm)を装入した。フラスコを35℃の油浴に入れ、ビス−(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン(Dynasylan 1124)17.64g(0.517mol、341.55MW)を滴下漏斗を介して1時間かけて反応物に添加した。アミン添加が完了した約10分後、サンプルをFTIR用に採取し、サンプルは、2265cm−1でイソシアネートピークを示さなかった。次いで、生成物、透明油を単離した。
【0275】
シラン25調製実施例
【化37】
アミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan AMMO)12.85g(0.072mol、179.29MW)を、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(BEI)17.15g(0.072mol)及びDBTDLのMEK中10%溶液(DBTDL 500ppm)176μLと、約45分間にわたって反応させて生成物を油として得たことを除いて、シラン24調製実施例と同様に実験を行った。
【0276】
シラン26調製実施例
【化38】
DBTDLなしで、N−ブチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan 1189)9.92g(0.042mol、235.4MW)を1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(BEI)10.08g(0.042mol)に約1時間かけて添加したことを除いて、シラン24調製実施例と同様に実験を行い、次いで一晩反応させて生成物を油として得た。
【0277】
シラン27調製実施例
【化39】
DBTDLなしで、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン8.94g(0.046mol、193.32MW)を、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(BEI)11.06g(0.046mol)に約30分かけて添加したことを除いて、シラン24調製実施例と同様に実験を行った。約4時間で、反応を、−NCOピークを示すFTIRによって監視し、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.3gを、DBTDL1滴と共に添加した。1時間後、反応をFTIRにより監視すると、−NCOピークが減少したことを示した。この時点で、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.1gを添加し、1時間後、反応をFTIRによって完了して、生成物を油として得た。
【0278】
シラン28調製実施例
【化40】
3−(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン10.33g(0.0404mol、255.39MW)を1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(BEI)10.33g(0.0404mol)に、DBTDL1滴と共に約30分かけて添加した以外は、シラン24調製実施例と同様に実験を行い、次いで一晩反応させて生成物を油として得た。
【0279】
シラン29調製実施例
【化41】
均圧添加漏斗にBEI23.66g(0.0988mol)を装入した。第2の均圧漏斗に、エタノールアミン6.04g(0.0988mol)を装入し、酢酸エチルでBEIと同じ体積に調整した。漏斗を、撹拌棒を備えた100mL三つ口フラスコ上に置き、フラスコを乾燥空気下の氷浴に入れた。エタノールアミン及びBEIを、フラスコに45分かけて同じ体積速度で添加した。約2時間で、漏斗を数mLの酢酸エチルですすぎ、DBTDL約0.025gを添加した。反応物を室温の水浴に入れ、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(Geniosil GF−40)20.30g(0.0988mol)を、均圧漏斗を介して約20分かけて添加した。添加後、漏斗を数mLの酢酸エチルですすいだ。更に約6時間後、反応をFTIRによって完了させた。次いで、反応物を最大55℃及び約3mmの圧力で濃縮して、生成物を濃厚な油として得た。
【0280】
シラン30調製実施例
【化42】
シラン29調製実施例と同様の方法で、BEI23.02g(0.0962mol)、N−メチル−エタノールアミン7.23g(0.0962mol)、続いて3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン19.75g(0.0962mol)、及びDBTDL0.025gを処理して、所望の生成物、シラン30を得た。
【0281】
シラン31調製実施例
【化43】
シラン29調製実施例と同様の方法で、BEI 15.84g(0.0662mol)、ジエタノールアミン6.96g(0.0662mol)、続いて3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン27.19g(0.1324mol)及びDBTDL 0.025gを処理して、所望の生成物、シラン31を得た。酢酸エチルを除去する前に、BHT約0.010g及び4−ヒドロキシTEMPO 0.002gを反応物に添加してシラン31を得た。
【0282】
シラン32調製比較例
【化44】
シラン29調製実施例と同様の方法で、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン21.91g(0.1068mol)、N−メチルエタノールアミン8.02g(0.1068mol)、続いてIEA 15.07g(0.1068mol)及びDBTDL 0.025gを処理して、所望の生成物、シラン32を得た。
【0283】
シラン33調製比較例
【化45】
250mL丸底フラスコに、エチレンカーボネート19.89g(0.2259mol)を装入し、55℃の油浴に入れた。均圧滴下漏斗を用いて、アミノプロピルトリエトキシシラン(Dynasylan AMEO)50.0g(0.2259mol)を10分かけて添加した。加熱を2時間継続して、(EtO)3Si−(CH2)3−NH−C(O)−O−CH2CH−OHを得た。
【0284】
新しい250mL丸底フラスコに、イソシアナトエチルメタクリレート(IEM)33.78g(0.2177mol)及びDBTDL約1000ppmを装入し、55℃の油浴に入れた。そのフラスコに、(EtO)3Si−(CH2)3−NH−C(O)−O−CH2CH−OH67.37g(0.2177mol)を30分かけて添加した。加熱を、更なる反応時間の1.5時間継続した。次いで、サンプルを、FTIR分光分析のために採取し、サンプルは、2265cm−1でイソシアネートピークを示さなかった。
【0285】
シラン34調製比較例
【化46】
撹拌棒を備えた100mL丸底フラスコに、2−メタクリルオキシエチルアクリレート27.62g(0.15mol、184.15MW)及びN−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン27.38g(0.15mol、193.32MW)を装入し、乾燥空気下、55℃に2時間加熱して、生成物を油として得た。
【0286】
シラン35調製実施例
【化47】
オーバーヘッド撹拌器を備えた250mL三つ口丸底フラスコに、IEA 30.76g(0.218当量、141.12EW)、及びEtOAc 30.76gを装入した。このフラスコを、乾燥空気下で氷浴に入れた。均圧漏斗に、3−(2−アミノエチルアミノ)−プロピルトリメトキシシラン24.24g(0.218当量、111.18EW)を装入した。その漏斗をフラスコ上に置き、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシランを1時間15分かけて滴下添加し、温度を10℃未満に維持した。次に、この漏斗をEtOAcおよそ2gですすいだ。2時間15分で、FTIRを反応物のアリコートで採取し、−NCOピークは見出されなかった。反応物に、BHT約0.28g及び4−ヒドロキシTEMPO約0.12gを添加した。次いで、反応物を真空下で蒸留して、EtOAcを最大60℃及び3.8mmの圧力で除去して、生成物を得た。
【0287】
シラン36調製実施例
【化48】
シラン35調製実施例と同様の方法で、EtOAc 35.03g中IEM 35.03g(0.2258当量、155.15EW)を、EtOAc 21.37g中3−トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン21.37g(0.2416当量、1.07倍計算された等しい化学量論、88.48EW)と反応させ、濃縮して濃厚な油を得た。
【0288】
シラン37調製実施例
【化49】
シラン35調製実施例と同様の方法で、EtOAc 33.71g中IEA 33.81g(0.2396当量、141.12EW)を、EtOAc 22.68g中3−トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン22.68g(0.2563当量、1.07倍計算された等しい化学量論、88.48EW)と反応させ、濃縮して濃厚な油を得た。
【0289】
シラン38調製実施例
【化50】
この調製実施例は材料の混合物であり、その構成要素のうちの1つは上に表示している。この調製方法により、窒素原子が少なくとも1つのIEM及び少なくとも1つのフェニルイソシアネートで官能化されている、いくつかの材料が存在することになる。
【0290】
オーバーヘッド撹拌器を備えた250mL三つ口丸底フラスコに、3−トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン23.89g(0.2699当量、1.07倍計算された等しい化学量論、88.48EW)及びEtOAc 23.89gを装入した。このフラスコを、乾燥空気下でイソプロパノール−水の乾燥氷浴に入れ、−50℃に冷却した。均圧漏斗に、EtOAc 26.10g中IEM 26.10g(0.1682当量、155.15EW)を装入し、これを−46℃以下の温度で約55分かけて反応物に添加した。均圧漏斗に、フェニルイソシアネート10.02g(0.0841当量、119.12EW)を装入し、これを、−37℃以下の温度にて約25分かけて反応物に添加した。この反応物をこの温度にてFTIR用にサンプリングし、非常に小さいNCOピークを有することを見出した。反応物に、BHT約0.25g及び4−ヒドロキシTEMPO 0.012gを添加し、これを真空下で濃縮して、最大60℃及び3.8mmの圧力でEtOAcを除去して、生成物を濃厚な油として得た。
【0291】
調製実施例:樹脂A:
樹脂Aの1200gバッチを、以下を混合して調製した:
【表4】
【0292】
調製実施例:クラスター充填剤の調製
クラスターのそれぞれを、シラン調製実施例と、以下の方法によって反応させた。未処理シリカ/ジルコニアクラスター100g量を、酢酸エチル100gと様々なシラン調製実施例のそれぞれ10.5gとの混合物へと秤量した。この混合物を撹拌したら、30重量%NH4OH水溶液2gをスラリーに添加し、混合物を一晩反応させて、クラスター充填剤を表面改質した。クラスター充填剤を、続いて、溶媒オーブン中85〜90℃で1.5時間乾燥させた。クラスター充填剤は、それらの上に配置されたシラン調製実施例によって指定される。クラスター充填剤1=シラン調製実施例1で処理したクラスター、クラスター充填剤2=シラン調製実施例2で処理したクラスター、など。
【0293】
最終ペースト実施例にはまた、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランで処理した20nmシリカ、及び3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランで処理したナノジルコニアを含む、追加の貯蔵の充填剤も含ませた。
【0294】
実施例のペーストの調製:
別段の指定がない限り、全てのペーストをスピードミキサー(Flak Tek)を介して調製したことに留意されたい。
【0295】
実施例のペースト対照
実施例のペースト対照を、以下の成分を混合して作製した。
【表5】
【0296】
実施例ペースト1〜16、18〜34
実施例ペースト1〜16、18〜34を、各事例において、クラスター充填剤(それぞれのシラン調製例で処理した)を変更することを除いて、実施例のペースト対照と同様に成分を混合して作製した。したがって、実施例ペースト1は、調製比較例シラン17で処理したクラスター充填剤17の代わりにシラン調製実施例1で処理したクラスター充填剤1を使用したことを除いて、実施例のペースト対照(上記)と同じ成分を同じ量で含有させた。同様に、実施例のペースト2は、シラン17で処理したクラスター充填剤17の代わりにシラン調製実施例2で処理したクラスター充填剤2を使用したことを除いて、実施例のペースト対照(上記)と同じ成分を同じ量で含有させた。シラン調製実施例17は実施例のペースト対照中で使用されるため、実施例のペースト17が存在しないことに留意されたい。
【0297】
物理特性試験:
応力試験方法(CUSP歪み試験)
硬化プロセス中に発生する応力を測定するために、スロットを、矩形15×8×8mmのアルミニウムブロックに機械加工した。スロットは、長さ8mm、深さ4mm、及び幅2mmであり、縁から2mmのところに配置することで、試験される歯科用組成物を収容する幅2mmの空洞に隣接する幅2mmのアルミニウムCUSPを形成した。歯科用組成物を室温にて光硬化させる際のCUSP端の変位を測定するために、線形可変変位変換器(Model GT 1000、E309アナログ増幅器を併用、いずれもRDP Electronics(United Kingdom)製)を定置した。試験前に、アルミニウムブロックにおけるスロットを、Rocatec Plus Special Surface Coating Blasting Material(3M Oral Care)を使用して砂で磨き、RelyX Ceramic Primer(3M Oral Care(St.Paul,MN,USA))で処理し、最後に、市販の歯科用接着剤(3M Oral Careから入手可能なSCOTCHBOND Universal Adhesive)で処理した。実質的に同様に機械加工されたアルミニウムブロック及び試験装置は、米国特許第9,056,043号(Jolyら)の
図1及び
図2に描写されている。
【0298】
スロットを、実施例ペーストのそれぞれを用いて完全に充填した。材料には、スロット内の試験材料とほぼ接触させて(<1mm)歯科用硬化光(ELIPAR S−10、3M Oral Care)を1分間照射した後、光を消してから9分後にミクロン単位でCUSPの変位を記録した。0に近い数ほど、より低い歪みを、したがってより低い応力を示す。
【0299】
直径方向引張強度
直径方向引張強度を、以下の手順に従って測定した。未硬化の複合サンプルを、長さ約30mm、内径4mmであるガラス中へ注入した。これを約1/2完全に充填し、シリコーンゴムプラグで蓋をした。管を、およそ3kg/cm2の圧力で5分間、軸方向に圧縮した。依然として圧力下にある間、次いで、サンプルを、1000mW/cm2超の放射発散度を有する歯科用硬化光に曝露することによって、60秒間光硬化した。硬化するとき確実に等しい曝露になるように、管を回転させた。次いで、Buehler IsoMet 4000(Illinois Tool Works(Lake Bluff,Illinois,USA)鋸を用いて、管から約2mm厚のディスクを切断した。得られたディスクを、試験前に37℃の蒸留水中で約24時間貯蔵した。測定を、適切な材料試験フレーム(例えば、Instron 5966、Instron Corp.(Canton,MA))を用いて、1分当たり1mmのクロスヘッド速度で10キロニュートンロードセルを用いて実施した。直径方向引張強度は、Craig’s Restorative Dental Materials(Ronals L.Sakaguchi and John M.Powers.「Testing of Dental Materials and Biomechanics」Craig’s Restorative Dental Materials、第13版、Elsevier、2012、86頁に記載されている通りに計算した。結果をMPaで報告した。数(MPa)が大きいほど、強度が高いことを示す。
【0300】
試験結果
物理的特性試験結果を、表6及び表7に、実施例のペースト1〜16、18〜34、及び実施例ペースト対照について、下降するCUSP歪み値で示す。
【表6】
【表7】
【0301】
上記の特許出願において引用されたすべての参考文献、特許文献又は特許出願は、一貫した形でその全文が参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれた参照文献の一部と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の記載における情報が優先するものとする。前述の記載は、当業者が特許請求の範囲に記載されている開示を実践することを可能にするために付与されるものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではなく、本開示の範囲は特許請求の範囲及びその全ての均等物によって定義される。