【課題を解決するための手段】
【0016】
図1は、(
【特許文献10】)による絶縁形DC-DCコンバータの主回路構成であり、電圧形方形波インバータ、変圧器、ダイオード全波整流回路、LC共振回路およびLC平滑回路により構成される。
【0017】
なお、(
【特許文献10】)には、LC共振回路を構成する共振インダクタをダイオード全波整流回路の交流回路側に配置した
図2の構成も示されていて、基本的な動作は
図1と同じである。
【0018】
図3は、電圧形方形波インバータのスイッチングタイミングをLC共振回路の共振周期に対応させてスイッチング制御をかけたときの動作波形を示している。
【0019】
図3(a)は、電圧形方形波インバータをLC共振回路の共振周波数に対応した周波数で方形波電圧を発生させたときの動作波形であり、スイッチ素子にかかる電圧eswと素子に流れる電流iswの波形から、スイッチ素子をオンした時点で共振回路により振動電流が零電流から流れ始め、再び零電流に戻ってからスイッチ素子をオフすることができる零電流ソフトスイッチング(ZCS:零電流スイッチング)動作が実現できることがを示す。
【0020】
また、同図には、このときの交流電圧eaと交流電流ia、共振回路の共振インダクタ電流irおよび共振キャパシタ電圧erを示している。
【0021】
従来からの共振動作を用いたものは、毎週期間共振キャパシタの電圧erを零電圧まで放電させているのに対し、(
【特許文献10】)による本回路では、共振キャパシタの電圧波形erの低下が特に負荷が軽くなると抑えられる。
【0022】
このため、スイッチが投入され電圧が加わったときの、電源電圧と共振キャパシタ電圧との差電圧が小さくなるため、共振振動電流irを小さく抑えることができため、従来からの共振動作を用いたものは異なり、共振電流損失を抑える事ができる。
【0023】
本発明は、共振電流が流れる期間TWが終わってから、スイッチをオフさせれば零電流スイッチング動作ができるが、この期間より短い周期でスイッチ切り替えを行うと、ソフトスイッチング動作が実現できなくなることに着目した出力電圧の制御法を詳しく検討したものである。
【0024】
零電流ソフトスイッチング動作は、共振電流が流れる期間TWが終わった時点であれば可能であり、前記LC共振回路に流れる共振電流が零に戻るまでの一定の期間幅の正負対称波形の方形波電圧を発生させれば、LC共振周期幅だけでなく2倍、3倍、、、と整数倍の周期幅単位の一定の期間幅の正負電圧の方形波電圧を発生させれば零電流スイッチング動作を実現することができる。
【0025】
図3(b)は、LC共振回路の共振周期の2倍の周期幅を少し超える期間を半周期とする方形波電圧を発生させたときの動作波形を示しており、スイッチ素子にかかる電圧eswと素子に流れる電流iswの波形から、零電流スイッチング動作ができていることがわかる。
【0026】
こ絶縁型DC-DCコンバータは、出力電圧の制御においてインバータから出力する電圧波形の正負の対称性が崩れると、変圧器が偏磁して大きな直流電流が流れることが懸念される。
【0027】
この問題を解決する手段として、1)電圧形方形波インバータで正負対称の方形波電圧を変圧器に加えた後、出力電圧の制御に対しては、別のスイッチ回路で共振制御で必要な一定期間幅の電圧を出力制御する手法と、2)電圧形方形波インバータで、出力電圧の制御に対して共振制御で必要とされる一定期間幅の正負対称波形の方形波電圧を出力制御する手法が考えられる。
【0028】
図4は、
図1に示す共振制御DC-DCコンバータの基本回路において、ダイオード全波整流回路の直流出力に直流スイッチを介してから共振回路に接続する絶縁形DC-DCコンバータの主回路構成を示している。
【0029】
同図において、追加した直流スイッチの出力端に破線で示すフリーフォイーリングダイオードDfは、共振インダクタに流れる電流が零のときに直流スイッチを切るために通常は不要であるが、そうでない動作になったときの共振インダクタの電流をバイパスさせ、過電圧の発生を抑えるための保護用として必要に応じて接続する場合の回路図を示している。
【0030】
また、交流ラインにインダクタがある場合、直流スイッチに流れる電流が零でないときに直流スイッチを切ると、過電圧を発生するので、ダイオード全波整流回路の出力端子に小さなキャパシタを接続することが考えられ、この場合は直流スイッチに共振キャパシタからの逆電圧がかからないように、逆流防止用直列ダイオードを保護用として必要に応じて接続することもある。
【0031】
これにより、変圧器には出力電圧制御とは関係なく正負電圧の対称性が保たれるために、変圧器の偏磁の問題は解消する事ができる。
【0032】
ここで、
図4の回路による共振絶縁形DCDCコンバータの具体的な出力電圧法を説明する。
【0033】
図5は、電圧制御を行っていないほぼ100%出力のときの直流スイッチング動作波形である。
【0034】
電圧形インバータは直流スイッチング信号P1,P2により方形波電圧が出力され、偏磁の問題を生じることなく変圧器を介して方形波電圧eaがダイオード全波整流回路の交流入力に加えられ、図示するようなスイッチング信号Pswにより共振電流が流れる期間T
W後に直流スイッチSWをオフさせることにより、図示する共振電流irが流れ、交流電流iaは、共振電流irが半周期毎に正負に切り換わった波形の電流となる。
【0035】
方形波インバータおよび直流スイッチは、この共振電流が零になってからオフ動作に移るため零電流スイッチング動作が実現できる。
【0036】
図6は、同じ共振回路定数で、スイッチング信号Pswのパルス幅Twは一定のもとで方形波インバータのスイッチング周期Tsを長く、周波数fsを低くしたときの動作波形を示している。
【0037】
このとき、変圧器には正負対称の方形波電圧が印加されているため、正負電圧波形の非対称性による偏磁の問題はなく、スイッチング信号Pswで直流スイッチSwがオンオフ制御されるため、共振電流irが流れるが、パルス間の間隔が広くなり、交流電流iaの周期も長くなることを示している。
【0038】
図7は、これらの動作波形を拡大表示したものであり、同図(a)のほぼ100%出力時の動作波形に対して、同図(b)はパルス幅Twは一定のもとで一定のスイッチング周期Tsを長くしたときの動作波形である。
【0039】
同図より、スイッチング周期Tsを長くすることにより、共振キャパシタの端子電圧の放電期間が長くなるため、平均電圧が下げられ、出力電圧が制御できることがわかる。
【0040】
なお、共振キャパシタ電圧を下げて出力電圧制御をかけるときは、共振回路の共振周波数が同じであっても、共振キャパシタCrのキャパシタンス値が大きいと、スイッチング周期を長くした時の共振キャパシタの電圧低下が小さくなると共に、共振インダクタLrのインダクタンス値が小さいため、直流スイッチを再投入したときに大きな電流が流れ込むこととなる。
【0041】
これとは逆に、共振キャパシタCrのキャパシタンス値が小さく、共振インダクタLrのインダクタンス値を大きくすると、無給電期間におけるキャパシタ電圧の低下が大きくなり、電圧制御が容易になると共に、直流スイッチを再投入したときの電源からの電流を小さく抑える事ができる。
【0042】
直流出力電圧は、共振キャパシタ電圧に対してLC平滑回路を通すことにより、平滑インダクタで負荷電流変動が抑制できるとともに、平滑キャパシタにより共振キャパシタの電圧変動が抑えられた脈動の少ない電圧波形を得ることができる。
【0043】
図8は、この制御原理に基づく共振絶縁形DCDCコンバータの主制御部を電圧型方形波インバータと直流スイッチ回路で構成した主回路構成に対する制御システムの構成例を示している。
【0044】
同図に示すように、スイッチング信号発生部でスイッチングパルスP1およびP2を方形波インバータのスイッチング制御信号とし、共振回路定数で決まる一定のスイッチングパルス幅Twのスイッチング信号Pswを直流スイッチSwのスイッチング信号とし、スイッチング周波数あるいはスイッチング周期を変えることにより、直流出力電圧を制御することができる。
【0045】
一方、直流スイッチ回路を接続しない
図1または
図2の主回路構成において、共振回路定数で決まる一定のスイッチングパルス幅Twの正負対称の電圧波形を出力するスイッチング信号で電圧形方形波インバータを働かせ、スイッチング周波数あるいはスイッチング周期を変えることにより直流出力電圧を制御することができる。
【0046】
電圧形方形波インバータで一定のスイッチングパルス幅Twの正負対称の電圧波形を出力する期間以外はスイッチ信号をオフにするか、方形波スイッチング信号に零電圧を出力するスイッチング信号を付加することで共振動作に必要な電圧波形を発生させる事ができる。
【0047】
図9は、この制御原理に基づく共振絶縁形DCDCコンバータの主制御部を電圧型方形波インバータのみで構成した主回路構成に対する制御システムの構成例を示している。
【0048】
同図では、電圧形方形波インバータへの信号として、共振回路定数で決まる一定のスイッチングパルス幅Twの期間を有する正負の対称電圧が出力できるように、スイッチング信号発生部で零電圧期間を付加したスイッチングパルスP
1SWおよびP
2swを方形波インバータのスイッチング制御信号とし、スイッチング周波数あるいはスイッチング周期を変えることにより、直流出力電圧を制御する制御システムの動作波形と共に示している。
【発明の効果】
【0049】
以上、本発明の共振絶縁形DCDCコンバータは、共振動作が負荷電流に応じた大きさで共振電流を流すことができ、共振電流が零の時点で、スイッチのオン、オフ制御ができるため、スイッチング損失及びスイッチングノイズの低減ができる(
【特許文献10】)の大きな特徴を有している。
【0050】
(
【特許文献10】)で課題となっていた、変圧器を用いることによる偏磁が懸念されることに対しては、本発明では、電圧形方形波インバータで正負対称の方形波電圧を変圧器に加えた後、直流スイッチを介して共振回路に加える電圧を制御することにより、変圧器の偏磁の問題を解消しながら、スイッチング周波数制御により出力電圧が容易に制御することができる。
【0051】
また、本発明では、電圧形方形波インバータで、出力電圧の制御に対して共振制御で必要とされる一定期間幅の正負対称波形の方形波電圧を加える手法により、主回路構成を変更することなく、変圧器の偏磁の問題を解消しながら、スイッチング周波数制御により出力電圧を制御することができる。
【0052】
そして、本発明では、共振キャパシタの電圧制御することにより出力電圧を制御する場合、共振回路の定数として、共振キャパシタCrのキャパシタンス値を小さくし、共振インダクタLrのインダクタンス値を大きく選ぶと、無給電期間におけるキャパシタ電圧の低下が大きくなるので、電圧制御が容易になると共に、直流スイッチを再投入したときの電源からの電流を小さく抑える事ができることを明らかにした。
【0053】
さらに、本発明では、零電流ソフトスイッチング動作は、共振電流が流れる期間TWが終わった時点であれば可能であり、前記LC共振回路に流れる共振電流が零に戻るまでの一定の期間幅の正負対称波形の方形波電圧を発生させれば、LC共振周期幅だけでなく2倍、3倍、、、と整数倍の周期幅単位の一定の期間幅の正負電圧の方形波電圧を発生させれば零電流スイッチング動作を実現することができることを示した。