特許第6866028号(P6866028)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6866028-化粧用コンクリートブロック 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6866028
(24)【登録日】2021年4月9日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】化粧用コンクリートブロック
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20210419BHJP
   C04B 14/02 20060101ALI20210419BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20210419BHJP
   C04B 14/16 20060101ALI20210419BHJP
   E04C 1/39 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   C04B28/02
   C04B14/02 A
   C04B18/14 A
   C04B14/16
   E04C1/39 106
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-54415(P2017-54415)
(22)【出願日】2017年3月21日
(65)【公開番号】特開2018-154542(P2018-154542A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2020年1月22日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)販売日(試験販売日):平成29年3月16日 (2)販売した場所:株式会社建デポ(東京都千代田区鍛冶町1−8−3)立川店(東京都立川市栄町6−1−3)
(73)【特許権者】
【識別番号】592037907
【氏名又は名称】株式会社デイ・シイ
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】小菅 太朗
(72)【発明者】
【氏名】二戸 信和
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 豊
(72)【発明者】
【氏名】内山 浩久
(72)【発明者】
【氏名】石井 正行
(72)【発明者】
【氏名】大貫 真也
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 正行
【審査官】 永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−83529(JP,A)
【文献】 特開昭51−150520(JP,A)
【文献】 特開昭52−36129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B7/00−32/02
C04B40/00−40/06
C04B103/00−111/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと細骨材と着色用の顔料が配合された化粧用コンクリートブロックにおいて、全骨材量に対して高炉スラグ細骨材が80〜90重量%、軽石が10〜20重量%配合されていることを特徴とする化粧用コンクリートブロック。
【請求項2】
請求項1記載の化粧用コンクリートブロックにおいて、細骨材として前記高炉スラグ細骨材に加え、高炉スラグ微粉末が配合されていることを特徴とする化粧用コンクリートブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば塀の構築などに用いられる色つきの化粧用コンクリートブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧用のコンクリートブロックは、着色、表面の美観などの外観が重要な性能の指標となる。従来、色つきのカラーブロックについては、結合材として白色セメントを用い、着色剤として無機系顔料を用いたものなどがある。
【0003】
特許文献1には、低コストで、色鮮やかかつ白華を抑制するコンクリートブロックの提供を目的とした発明であって、結合材と骨材とを含み、結合材が高炉スラグ微粉末および白色セメントを含有し、結合材における高炉スラグ微粉末の含有率が30重量%以上かつ白色セメントの含有率が70重量%以下、さらには結合材における高炉スラグ微粉末の含有率が90重量%以上、結合材がアルカリ金属水酸化物を含有するものが開示されている。
【0004】
特許文献2には、速硬性、作業特性(高流動性、長可使時間)および硬化特性(高強度、高耐摩耗性、高平滑性)に優れているだけでなく着色性にも優れ、床下地の調整と着色色仕上げを同時に行なうことが可能な水硬性着色仕上材組成物として、アルミナセメント、石膏および高炉スラグよりなる水硬性成分、硫酸アルミニウム類およびリチウム塩よりなる凝結調整剤、高分子エマルジョン、減水剤、顔料、増粘剤、および、消泡剤より成る水硬性着色仕上材組成物が開示されている。
【0005】
特許文献3には、製鋼の際に排出されかつ未焼成状態のスラグの塊粒状物にバインダを加えて構成した着色が容易で任意の色に着色することができ、硬化物を道路敷設部材等として用いることができる透水性組成物が開示されている。
【0006】
特許文献4には、風砕処理の施されてない製鋼スラグをコンクリートやモルタルのような水和硬化体に利用する技術として、未反応のCaOを含有する製鋼スラグを含有する骨材と、潜在水硬性を有するシリカ含有物質を50重量%以上含有する結合材を利用した水和硬化体が開示されている。
【0007】
特許文献5には、従来のJIS規格の保水性ブロックよりも保水量の大きい高保水性ブロックとして、水とセメント及び軟質高炉スラグ細骨材とを含み、水セメント比が15〜35%、単位骨材容積が600〜900L/m、かつ充填率が60〜76%であり、軟質高炉スラグ細骨材の吸水率が0.8〜5%、粗粒率が2.7〜3.9である高炉スラグ細骨材を用いた高保水性ブロックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−102214号公報
【特許文献2】特許第3478108号公報
【特許文献3】特開平09−030854号公報
【特許文献4】特許第3582263号公報
【特許文献5】特許第5919940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のように色鮮やかなコンクリートブロックについては、結合材として白色セメントが用いられているとともに、着色剤として無機系顔料が用いられたものがあるが、白色セメントおよびアルミナセメントの価格は、普通ポルトランドセメントに比べかなり高価であり、大量生産される普及品用には適さない。
【0010】
一方、結合材として普通ポルトランドセメントを使用した場合は発色がよくないので無機系顔料の添加割合が多くなる。
【0011】
また、コンクリートブロックの外観がよくない理由の一つにブロック表面が粗いことが挙げられる。従来、透水性または保水性を目的としたコンクリートブロックでは表面が粗いことが多い。表面の起伏をなくすためにペースト割合を増加させると混練物が流動しやすくなり即脱ができないといった問題がある。
【0012】
また、ペースト割合を増加させると硬化体の消石灰が多くなり、エフロレッセンス(白華現象)の原因となる。製鋼スラグを含有する骨材に使用した場合は、未反応のCaOが水和反応してCa(OH)が生成することによりエフロレッセンスが生じて外観がよくない場合がある。
【0013】
本発明は、従来技術における上述のような課題の解決を図ったものであり、顔料を用いたカラーコンクリートブロックにおける発色性の改善および表面のきめ細かさといった美観の改善を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の化粧用コンクリートブロックは、セメントと細骨材と着色用の顔料が配合された化粧用コンクリートブロックにおいて、全骨材量に対して高炉スラグ細骨材が70重量%以上配合されていることを特徴とするものである。
【0015】
コンクリート用の高炉スラグ細骨材については、例えばJIS A 5011-1の規格があり、この規格に準じた高炉スラグ細骨材を用いることができる。また、高炉スラグ細骨材についてはグリーン購入法の特定調達品目に挙げられている。
【0016】
高炉スラグ細骨材を配合した場合、従来の砕石、砂利など、通常の細骨材を用いた場合に比べ、同一の顔料添加量において発色性が改善される。すなわち、顔料の添加量が同じ場合はより鮮やかな色になり、同程度の発色でよい場合はより顔料の添加量を削減することができる。また、無機系顔料では発色が困難であったパステル色調の色合いの発色が可能となる。
【0017】
色彩以外の効果としては、高炉スラグ細骨材を配合した場合、従来の砕石、砂利など、通常の細骨材を用いた場合に比べ、ブロックの表面がきめ細かくなり、化粧用コンクリートブロックとしての美観(地肌のきめ細かさ)の改善効果が得られる。また、コンクリートブロックの耐久性の向上、白華現象の抑制などの効果が得られる。
【0018】
全骨材量に対して高炉スラグ細骨材が70重量%以上配合することとしたのは、上述の発色性の改善効果と表面のきめ細かさの向上効果が高まることに加え、副産物の有効利用といった面やグリーン購入法の特定調達品目であるといった面でのメリットも大きくなる。
【0019】
また、高炉スラグ細骨材が70重量%未満とすると、要求性能などとの関係で細骨材の配合において他の細骨材との調整が必要となるなどのデメリットが考えられるため、本発明では高炉スラグ細骨材を全骨材量に対して高炉スラグ細骨材が70重量%以上配合することとした。
【0020】
本発明の化粧用コンクリートブロックのより好ましい形態としては、全骨材量に対して高炉スラグ細骨材が80〜90重量%、軽石が10〜20重量%配合されるようにするとよい。
【0021】
軽石は従来から化粧コンクリートブロックに用いられている天然軽石を用いることができ、コンクリートブロックの重量(比重)の軽減およびをコストの低減を図ることができ、上記の配合とすることで、塀用のコンクリートブロックとして、適度な強度と重量(比重)のコンクリートブロックを製造することができる。
【0022】
細骨材として高炉スラグ細骨材に加え、さらに高炉スラグ微粉末を配合してもよい。細骨材の微粒分の補正として機能するため、流動性の確保、コンクリート地肌のきめ細かさの改善などの効果が得られる。高炉スラグ微粉末は細骨材の一部としても機能するが、潜在水硬性を有するため、蒸気養生における初期脱型時強度の確保、長期材齢の強度の確保などの効果が得られる。また、高炉スラグ細骨材と同様、副産物の有効利用という面での利点もある。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る高炉スラグ細骨材を用いた化粧用コンクリートブロックは、ポルトランドセメントなどの一般的なセメントに顔料を加えた場合においても発色性の改善がみられ、比較的安価なカラーコンクリートブロックとして製造することができる。
【0024】
色彩面での効果に加え、コンクリート表面のきめ細かさについての改善効果がみられ、美観の優れた化粧用コンクリートブロックが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】化粧用コンクリートブロックの表面の粗さを対比した写真であり、(a)は高炉スラグ細骨材を用いた本発明に係る製品の表面写真、(b)は対応するスペックの従来品の表面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の効果を確認するため、以下の試験を行った。
〔コンクリートブロックの配合(kg/m)〕
試験に用いたコンクリートの配合を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
いずれも混和剤(株式会社富士ファインケミカル製プロテクトCS550)は、セメント量C×2.7%、着色後のコンクリートブロックの色はブラウンで顔料(酸化鉄系;市販品)はC×1.8%添加した。
【0029】
混和剤として配合した「プロテクトCS550」は、0スランプ製品用に開発された低価格型白華防止剤であり、白華防止効果に加え、AE効果によって分散力、増強力、可塑性に富んだブロックを製造することが可能とされている。
【0030】
〔測定項目〕
(1) 圧縮強度の測定は、JIS A 5406「建築用コンクリートブロック」に準拠して行った。材齢7日、圧縮断面寸法幅120mm×長さ398mmで測定した。
【0031】
(2) コンクリートブロックの表面色調に関しては、画像解析による色調の測定を行った。キーエンス社製デジタルマイクロスコープVHXにより、ブロックの表面5mm×5mmについて180ヶ所のRGBを測定して平均値を算出した。
【0032】
(3) コンクリートブロックの表面の粗さに関しては、画像解析による表面粗さの測定を行った。JIS B 0601「製品の幾何学特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語、定義及び表面性状パラメータ」における表面性状パラメータである算術平均高さRaを画像解析ブロックの表面140mmの長さ方向3か所測定して平均値を求めた。
【0033】
〔測定結果〕
(1) 圧縮強度
重量および圧縮強度の測定結果を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
実施例と比較例の強度は同等であるが、実施例の方が比較例より1kg程度軽量となった。
【0036】
(2) コンクリートブロックの表面色調
コンクリートブロックの表面色調に関する測定結果を表3に示す。
【0037】
【表3】
【0038】
比較例の方が実施例よりRGBの値が高いため、白色が強い傾向となる。したがって、同一の顔料添加量では白色が強く発色がしづらい。すなわち、本発明の実施例の方が発色しやすいという結果が得られた。
【0039】
(3) コンクリートブロックの表面の面粗さ
コンクリートブロックの表面の面粗さ(μm)に関する測定結果を表4に示す。
【0040】
【表4】
【0041】
表4より本発明の実施例の方がコンクリートブロックの表面の面粗さがかなり小さいことが分かる。
【0042】
図1は、(a)本発明による化粧用コンクリートブロックと(b)従来の化粧コンクリートブロックの表面の写真であり、(a)の本発明による化粧用コンクリートブロックの表面がきめ細かいことが見てとれる。
図1