特許第6866032号(P6866032)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6866032-錠剤定量取出容器 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6866032
(24)【登録日】2021年4月9日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】錠剤定量取出容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/04 20060101AFI20210419BHJP
【FI】
   B65D83/04 E
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-90573(P2017-90573)
(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公開番号】特開2018-188174(P2018-188174A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2019年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【弁理士】
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】古澤 光夫
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−532073(JP,A)
【文献】 特開2003−026283(JP,A)
【文献】 実開平05−058677(JP,U)
【文献】 特開2015−143106(JP,A)
【文献】 特開2002−362652(JP,A)
【文献】 特開2015−132316(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3142100(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒部(21)と内筒部(22)の2重円筒状を有し、該内筒部(22)から連設される底壁(23)より起立設した芯壁(24)に、内鍔状に延設される頂壁(25)を有する容器本体(2)と、
該内筒部(22)の内側に組み込まれる中具(3)と、
該頂壁(25)に係止される受け皿部(4)と、
該容器本体(2)の上部を覆うキャップ(5)と、を有する錠剤定量取容器であって、
該中具(3)は、底部(33)の内縁部となる係止部(35)が芯壁(24)の外周を移動可能で且つ前記係止部(35)が前記受け皿部(4)に係合可能となるように容器本体(2)の内筒部(22)に組み込まれ、
該係止部(35)が受け皿部(4)に係合した状態のまま前記中具(3)を引き上げると、該底部(33)がすり鉢状に弾性変形することを特徴とする錠剤定量取出容器。
【請求項2】
前記中具(3)の底部(33)は、少なくとも1つの連結片(33a)が隙間(34)を保持して形成しており、且つ該連結片(33a)が中具(3)の周壁(31)と係止部(35)とを連結する構成である請求項1に記載の錠剤定量取出容器。
【請求項3】
前記受け皿部(4)は、外縁部に係止部(35)を係合させるフランジ部(43)を形成している請求項1又は2に記載の錠剤定量取出容器。
【請求項4】
前記受け皿部(4)が、頂壁(25)に着脱自在な構成である請求項1〜3のいずれかに記載の錠剤定量取出容器。
【請求項5】
前記内筒部(22)の内面の上端部にストッパー片(27)が配設され、前記中具(3)の周壁(31)外面に凸部(32)が突設されている請求項1〜4のいずれかに記載の錠剤定量取出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定量分の錠剤を取り出すための錠剤定量取出容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
菓子やサプリメント等は、取り扱いや数量の管理を容易にするため錠剤に加工されることが多く、錠剤は一般に錠剤容器内に多数収容されており、使用時に所定量を錠剤容器から取り出す必要がある。ここで、錠剤を収容した容器本体の開口部を単に閉鎖する蓋を備えた一般的な錠剤容器では、開口部から蓋を外し、容器本体を傾けるなどして錠剤を手のひら上に吐出させるが、これでは所望数を超えて余分な錠剤が容器本体から吐出される場合がある。必要以上に吐出された錠剤は、容器本体内に戻されるが、一旦、手に触れた錠剤を再び容器本体内へ戻すのは、衛生管理や品質保持の観点からは好ましくはなかった。
【0003】
このため、錠剤を定量分だけ取り出す先行技術として、例えば特許文献1には、錠剤(ガム)を湾曲された形状を有する支持面を有する内部ボトルに収納し、錠剤を昇降軸の支持栓上に移動させ、それから内部ボトルを上下に昇降させて錠剤を抽出孔から取り出している。また、特許文献2では、傾斜を有する漏斗上に錠剤(チューインガム)を置き、昇降体を上昇させて錠剤を漏斗の中心部の中心筒に落下させ、その後、昇降体を下降させることで中心筒に落下した錠剤を取出口から取り出している。
【0004】
特許文献1及び2共に、錠剤を最後まで取出すために、支持面と漏斗の形状が共にすり鉢状の形状となっているため、特許文献1の内部ボトルの形状では支持面と内部ボトル底部に挟まれた空間、特許文献2の傾斜を有する漏斗の形状では漏斗下面と容器底に挟まれた空間、がいずれもデットスペースとなっていた。一方、販売者は入れ目容量を少しでも多く確保したいために、デットスペースを極力少なくすることを要望していた。
また、これら特許文献では、錠剤を1個ずつ取出す構成となっているが、錠剤の大きさや形状等の仕様変更があっても取出数量を適宜変更できるような構成が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2012−532073号公報
【特許文献2】実用新案登録第3142100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、容器内部のデットスペースを極力少なくし容量を多く確保できると共に容易に決められた数量を取り出し可能な錠剤定量取出容器を提供することである。
また、本発明の別の目的は、錠剤の大きさや形状等の仕様変更があっても取出数量を変更可能な錠剤定量取出容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の錠剤定量取出容器の主たる構成は、
外筒部と内筒部の2重円筒状を有し、該内筒部から連設される底壁より起立設した芯壁に、内鍔状に延設される頂壁を有する容器本体と、
該内筒部の内側に組み込まれる中具と、
該頂壁に係止される受け皿部と、
該容器本体の上部を覆うキャップと、を有する錠剤定量取容器であって、
該中具は、底部の内縁部となる係止部が芯壁の外周を移動可能で且つ前記係止部が前記受け皿部に係合可能になるように容器本体の内筒部に組み込まれ、該係止部が受け皿部に係合した状態のまま前記中具(3)を引き上げると、該底部がすり鉢状に弾性変形することを特徴とする。
【0008】
上記主たる構成では、収容時に底部を平坦にさせデットスペースを無くした状態としつつ、中具の引き上げ時に係止部が受け皿部に係合した状態で更に引き上げることで、底部が弾性変形し傾斜した状態のすり鉢状となり錠剤を受け皿部に誘導することができ、定量分を受け皿部に貯留させることが可能である。
【0009】
また、本発明の他の構成は、中具の底部が少なくとも1つの連結片が隙間を保持して形成しており、且つ連結片が中具の周壁と係止部とを連結している。
【0010】
連結片が隙間を保持していることによって、底部が弾性変形し易くなり、錠剤をスムーズに受け皿部に誘導させることが可能となる。
【0011】
また、本発明の他の構成は、受け皿部が外縁部に係止部を係合させるフランジ部を形成している
【0012】
係止部とフランジ部が係合した時に部分での凹凸が殆どない面一状態とさせることができ、錠剤の受け皿部への誘導がスムーズに行える。
【0013】
また、本発明の他の構成は、受け皿部が頂壁に着脱自在な構成であるものである。
【0014】
錠剤の大きさや形状等の仕様変更があっても、皿部形状の異なる別の受け皿部に取り替えることによって取出数量を変えることが可能である。
【0015】
また、本発明の他の構成は、内筒部の内面の上端部にストッパー片が配設され、中具の周壁外面に凸部が突設されているものである。
【0016】
中具の引き上げ時に強く引き上げてしまっても、凸部がストッパー片に当接して、引き上げを規制するため中具の上方抜けを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成においては、中具の底部を可変可能な形状としているため、収容時には底部を平坦にさせデットスペースを無くすことが可能となり、錠剤が少なくなった際でも取出時には底部をすり鉢状に変位させることで容易に定量錠剤を受け皿部に誘導させ貯留させることが可能である。
また、本発明においては、錠剤の大きさや形状等の仕様変更があっても受け皿形状を取り替えることによって取出数量を変えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態の錠剤定量取出容器の部分縦断面図である。
図2】中具の平面図である。
図3】中具を上昇させて錠剤を受け皿部に貯留させる過程の縦断面図である。
図4】受け皿部に錠剤が貯留した時の縦断面図である。
図5】中具を上昇させて底部が変位した時の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1図5に示すように、本発明の錠剤定量取出容器1は、容器本体2と、容器本体2の内部に組み込まれ錠剤Tを収納する中具3と、定量分の錠剤Tを取り出し易い様に貯留する受け皿部4と、容器本体2の上部を覆うように口筒部21aでネジ嵌合するキャップ5と、容器本体2にキャップ5を組み付けた際に気密性を高めるパッキン6と、を備える構成となっている。
【0020】
容器本体2は、外筒部21と内筒部22の2重円筒状に形成され、外筒部21の上部は内側に段差部を介して口筒部21aが起立し、その外周面には雄ネジ部21bが刻設され、口筒部21aの上端に上端部21cが形成され、内筒部22の下端部から底壁23を連設し、この底壁23の内端部からは芯壁24を起立連設しており、芯壁24の上端部は内側に段差部24aを介して起立している。芯壁24の上端から内鍔状に内側に延設される頂壁25の内周端縁下面から係止壁26を垂下設し、係止壁26の先端部は内側に縮径している。内筒部22の内面の上端部には、後述する中具3の上方抜けを防止するストッパー片27が複数配設されている。ストッパー片27はヒンジ部を介して上下方向に可動可能であり、中具3が無い状態では上方に立ち上がっているが、中具3を内筒部22に組み込むと下方を向いた状態となり、中具3を組み込む際にはストッパー片27が下方を向いて凹部27aに収まり内筒部22の内面上端部は面一とすることができる。
【0021】
中具3は、内筒部22内部に組み込まれるものであり、円筒状の周壁31の上端には外鍔状に、中具3を引き上げる際に指先の掛かり易く形成されている周壁上端31aを有し、周壁31の外面下方には凸部32が全周突設しており、ストッパー片27に当接して中具3の引き上げを規制する。凸部32については、周方向に間隔をおいて複数箇所設けるような構成としてもよい。中具3の底部33は、少なくとも1つの連結片33は隙間34を有し、例えば、図2に示されるように、3個の渦巻き状の連結片33aは隙間34を保持しつつ、周壁31と内縁部の係止部35とを連結する構成が挙げられる。そのような構成のため、底部33は上下方向に弾性変形することが可能であり、図5に示される様に、すり鉢状に変位可能な構成となっている。係止部35の先端部は、段差を介してフランジ状に形成されている、
【0022】
受け皿部4は、容器本体2の中央に芯壁24により起立している頂壁25を覆い隠すように、先端部が内側に縮径している係止壁26に嵌入片42a、段差部24aに嵌入片42bを嵌め合わせによって係止している。嵌入片42bが段差部24aに入り込むように嵌入しているため、芯壁24上部では面一となる。受け皿部4の上面の皿部41は、錠剤Tを安定して保持し易いように中央が僅かに窪んだ形状を有している。受け皿部4の外縁部には、係止部35と係合可能なように外周方向に円環状に延出するフランジ部43が突出形成され、係止部35とフランジ部43が係合した時は、図5に示される様に、その部分での凹凸が殆どない面一状態となり、錠剤Tの受け皿部4への誘導がスムーズに行える。
【0023】
キャップ5は、口筒部21aの雄ネジ部21bにネジ嵌合する有頂筒状のオーバーキャップ体であり、円盤状の天壁部51と、天壁部51下面から後述するパッキン6を保持する支持片52と、天壁部51の端縁から垂下された円筒形状の周壁部53と、を備えている。周壁部53の内周面には、容器本体2の雄ネジ部21bにネジ嵌合する雌ネジ部54が形成されている。
また、キャップ5の支持片52の下面には、円盤状のパッキン6が嵌合されている。このパッキン6が、キャップ5の支持片52と容器本体2の上端部21cとの間に挟み込まれることでシール性を発揮し、錠剤定量取出容器1は密封される。
【0024】
次に、このように構成された錠剤定量取出容器1の作用について説明する。
図1に示される本発明の錠剤定量取出容器1の収納時においては、中具3の底部33は平坦な構成となっているため錠剤Tの収納部にデットスペースを生じていない。この様な状態から錠剤Tを定量分だけ取り出すために、まず初めに、容器本体2の上部を覆うキャップ5を取り外す。
【0025】
その後、図3に示されるように、受け皿部4に定量分の錠剤Tを載せるために中具3を引き上げる際は、外鍔状で指先が掛かり易くなっている周壁上端31a付近を摘まんで引き上げる。中具3の引き上げにより、相対的に高さ位置が高くなった錠剤Tが受け皿部4方向に移動することで、受け皿部4に定量分の錠剤Tを載せることが可能となる。
【0026】
定量分の錠剤Tを受け皿部4に載せた後は、図4に示される様に、中具3を引き下ろす。そして、受け皿部4に載った定量分の錠剤Tと取り出すことができる。
【0027】
錠剤Tの取り出し動作を数度繰り返し、錠剤Tが少なくなった時は、図5に示される様に、中具3の引き上げ量を多くする必要があり、中具3は、底部33の内縁部である係止部35が芯壁24の外周を移動可能となっており、係止部35をフランジ部43に係合した状態のまま中具3を引き上げると、底部33は隙間34を有する連結片33aが弾性変形し始め、徐々に周壁31側の連結片33aが持ち上がり、底部33は受け皿部4方向に傾斜した、すり鉢状の状態となる。この様に底部33が弾性変形し、すり鉢状に中央方向に傾いたことによって錠剤Tは受け皿部4に誘導されるため、錠剤Tの残量が少なくなっても確実に受け皿部4に錠剤Tに集めることが可能である。なお、中具3の引き上げ時に強く引き上げてしまっても、周壁31外面下方の凸部32がストッパー片27に当接して、引き上げを規制するため中具3の上方抜けが防止される。
【0028】
また、受け皿部4は嵌入片42a、42bにより頂壁25に係止して着脱自在であるため、皿部41を錠剤Tに適した形状に変更した別の受け皿部4に取替え可能である。受け皿部4(皿部41)の形状を取り替えることで、錠剤Tに適した貯留をすることができ、更には、中具3の引き上げ量の調整も可能である。
【0029】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば上記実施形態では、底部33を3個の連結片33aで形成させているが、引き上げによって底部33が受け皿部4方向に傾斜して上下方向に弾性変形する形状であれば特に限定されるものではなく、どのような形態でも構わない。
また、上記実施形態では受け皿部4は頂壁25に嵌入片42a、42bにより係止しているが、受け皿部4が着脱自在であり、確実に係止できるのであれば係止方法は特に限定されるものではない。また、受け皿部4は別体でなく容器本体2と一体であっても構わない。
また、段差部24aにおいて外面に係止部を設け、対向する嵌入片42bの内面に係止部を設けてアンダーカット係止によって強固に係止させ、中具3の引き上げ時に受け皿部4が捲れ上がるのを抑制する構成としても構わない。
更には、嵌入片42aの外面に係止凸部を設け、係止壁26の先端部が該係止凸部に係止する構成としても構わない。
また更には、内筒部22の内周面に案内手段を設けた容器本体2に、凸部32を断続的に突設した中具3を組み込むことで、中具3の上下方向の移動をスムーズにさせる構造であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、錠剤の収納部にデットスペースを生じることがなく、錠剤の残量が少なくなっても確実に受け皿に錠剤に集めることが可能であるため、錠剤を定量分だけ取り出す容器分野における用途展開をさらに広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 ;錠剤定量取出容器
2 ;容器本体
3 ;中具
4 ;受け皿部
5 ;キャップ
6 ;パッキン
21 ;外筒部
21a;口筒部
21b;雄ネジ部
21c;上端部
22 ;内筒部
23 ;底壁
24 ;芯壁
24a;段差部
25 ;頂壁
26 ;係止壁
27 ;ストッパー片
27a;凹部
31 ;周壁
31a;周壁上端
32 ;凸部
33 ;底部
33a;連結片
34 ;隙間
35 ;係止部
41 ;皿部
42a、42b ;嵌入片
43 ;フランジ部
51 ;天壁部
52 ;支持片
53 ;周壁部
54 ;雌ネジ部
T ;錠剤
図1
図2
図3
図4
図5