(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6866047
(24)【登録日】2021年4月9日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】歯科用炉の温度測定器を較正するための方法及び較正要素
(51)【国際特許分類】
G01K 15/00 20060101AFI20210419BHJP
A61C 13/00 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
G01K15/00
A61C13/00 K
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-549502(P2018-549502)
(86)(22)【出願日】2017年4月13日
(65)【公表番号】特表2019-513988(P2019-513988A)
(43)【公表日】2019年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2017058906
(87)【国際公開番号】WO2017178579
(87)【国際公開日】20171019
【審査請求日】2019年6月13日
(31)【優先権主張番号】102016206447.9
(32)【優先日】2016年4月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500058187
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】クルツ,クリスチャン
【審査官】
平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−255171(JP,A)
【文献】
特開平01−212334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00−19/00
A61C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの較正要素(6)による、歯科用炉(2)の温度測定器(1)を較正するための方法であって、
−加熱時間間隔(dt)中、前記少なくとも1つの較正要素(6)は、前記歯科用炉(2)内で、開始温度(TA)から終了温度(TE)まで加熱され、
−前記加熱時間間隔(dt)中、前記歯科用炉(2)内の温度は、前記温度測定器(1)により、実温度(T)として測定され、前記較正要素(6)は、前記歯科用炉(2)により誘導式に加熱され、
−前記少なくとも1つの較正要素(6)は、少なくとも1つの測定材料(7)を有し、前記少なくとも1つの測定材料(7)は、強磁性又はフェリ磁性であり、
−前記測定材料は、第1転移温度(TC1)で生じる可逆的相転移を有し、前記転移温度(TC1)は、前記測定材料(7)のキュリー温度に対応し、
−前記第1転移温度(TC1)は、前記開始温度(TA)より高く、前記終了温度(TE)より低く、
−前記相転移は、前記歯科用炉(2)の少なくとも1つの第1パラメータ(I)の急変化を生じ、
−前記歯科用炉(2)の前記第1パラメータ(I)は、前記加熱時間間隔(dt)にわたって測定され、前記第1パラメータ(I)の少なくとも1つの第1急変化(dI1)は、前記加熱時間間隔(dt)中に識別され、
−前記第1実温度値(T1)の偏差は、前記第1パラメータ(I)の前記第1急変化(dl1)が生じる時に、前記温度測定器(1)により測定され、前記第1転移温度(TC1)が決定されて、前記温度測定器(1)の前記実温度(T)は、偏差にしたがって補正されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの較正要素は、少なくとも1つの第1測定材料(7)と第2測定材料(8)を備え、又は第1測定材料(7)を備える少なくとも1つの第1較正要素と第2測定材料(8)を備える第2較正要素は、前記歯科用炉(2)内で同時に加熱され、
−前記第1測定材料(7)は、第1転移温度(TC1)を有し、前記第2測定材料(8)は、前記第1転移温度(TC1)と異なる第2転移温度(TC2)を有し、
前記少なくとも1つの測定材料(7、8)は、強磁性又はフェリ磁性であり、
前記転移温度(TC1、TC2)は、前記測定材料(7、8)のキュリー温度に対応し、
−前記第1パラメータ(I)の急変化(dI1、dI2)は、各測定材料(7、8)に対して、前記加熱時間間隔(dt)中に識別され、前記各測定材料(7、8)の前記各転移温度(TC1、TC2)から前記第1パラメータ(I)の前記各急変化(dI1、dI2)で前記温度測定器(1)により測定される前記実温度値(T1、T2)の偏差は、各々決定され、
−前記偏差間の補正値(K)及び/又は線形補正は、異なる測定材料(7、8)を対象に識別される偏差を基に形成され、前記温度測定器(1)の前記実温度(T)は、前記補正値(K)及び/又は前記線形補正により補正されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの測定材料(7、8)は、前記温度の関数として伝導性の急変化を示すことを特徴とする、請求項1乃至2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記パラメータ(I)は、電流又は電圧の振幅、あるいは交流又は交流電圧の周波数であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの較正要素による、歯科用炉の温度測定器を較正するための方法であって、少なくとも1つの較正要素は、歯科用炉内で、開始温度から終了温度までの加熱時間間隔中に加熱され、歯科用炉内の温度は、温度測定器により、加熱時間間隔中に実温度として測定される、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導高温炉は近年、歯科修復作業での焼結、ツヤ出し及び乾燥工程で使用されはじめている。誘導炉は、抵抗加熱炉と比較すると、速度に関して利点を有する。
【0003】
工程中、温度を正確に制御するのは、特にツヤ出しで重要であるが、その理由は、温度偏差がわずかであっても、結果生じる結晶作用に不具合が起こり、場合によっては、強度の減少、又は外形の融解を生じるためである。
【0004】
監視の目的として、炉内での工程中は、したがって、温度を、例えば熱電対等の温度測定器により測定する。しかし、特に老朽化の過程の結果、表示温度と炉内雰囲気の実温度との間に偏差(ドリフト(ずれ)ともいう)も生じ得るため、温度測定器を定期的に較正しなければならない。
【0005】
較正にあたり、較正要素は、炉の炉室内に配置し加熱するのが典型である。例えば、温度−収縮比が確定した焼結リングが使用可能である。例えば銀等の融点が確定した材料を利用することも公知であり、該材料からなる較正要素を炉に導入することにより、炉を可能な限り正確に材料の融解温度まで加熱し、その後較正要素の状態をチェックする。
【0006】
別の公知のバリアントに、アルミニウムがある。融点に達しても形状は維持されるものの、7%の体積膨張を示す特性を利用する。較正要素として、例えばアルミ線からなる接触ブリッジ等を有するものが利用可能であり、接触ブリッジは、アルミ線の体積膨張により融点に達する時にだけ閉じる;その結果、炉内が融解温度に達したかを正確に判定可能である。
【0007】
本発明の課題は、先行技術をさらに発展させ、可能な限り正確に、信頼性があり費用対効果が高い歯科用炉の温度測定器を較正するための方法と、それに対応する、信頼性があり費用対効果が高い較正要素を提供することである。
【発明の概要】
【0008】
本発明の1つの主題は、少なくとも1つの較正要素による、歯科用炉の温度測定器を較正するための方法であって、少なくとも1つの較正要素は、歯科用炉内で、加熱時間間隔中に開始温度から終了温度まで加熱され、歯科用炉内の温度は、温度測定器により、加熱時間間隔中に実温度として測定される、方法である。少なくとも1つの較正要素は、第1転移温度で生じる可逆的相転移を有する少なくとも1つの測定材料を有し、第1転移温度は、開始温度より高く、終了温度より低く、相転移は、歯科用炉の少なくとも1つの第1パラメータの急変化を生じる。歯科用炉の第1パラメータは、加熱時間間隔中に測定され、第1パラメータの少なくとも1つの第1急変化は、加熱時間間隔中に識別され、第1実温度値の偏差は、第1パラメータの第1急変化が生じる時に温度測定器で測定され、第1転移温度から決定されて、温度測定器の実温度は、偏差にしたがって補正される。
【0009】
歯科用炉のパラメータに影響する温度依存性可逆的相転移を有するいかなる材料も、測定材料として使用に適する。相転移は、例えば浸透性又は伝導性における急変化などの材料特性の急変化を指す。転移温度は、相転移すなわち特性の変化が生じる、測定材料の材料特有の温度を指す。
【0010】
測定材料は、例えば材料特有のキュリー温度である転移温度に達した時、その強磁特性を喪失する、強磁性体でもよい。キュリー温度を超えると、材料は浸透性がゼロになるか、又は常磁特性のみを有する。これは、強磁性体の常磁性高温形態への可逆的相転移、又は材料特性の急変化である。
【0011】
第1転移温度に達した時、歯科用炉に設置される較正要素の相転移、又は特性の変化が、歯科用炉の第1パラメータにおける急変化をもたらす。パラメータ又はパラメータの急変化を識別することで、歯科用炉内の温度は推定可能である。較正要素の転移温度を正確に把握するほど、較正をより正確に行うことが可能である。例えば、転移温度は、材料の一定の既知特性であり得る。特定の転移温度はさらに、個々の較正要素について、まずは高精度で決定可能であり;その後、この転移温度は、本較正要素を用いる較正に使用可能であり、その結果、較正の精度が適宜向上する。
【0012】
パラメータは、測定材料の相転移に影響される歯科用炉の測定可能変数であり、例えば、電流、電圧又は周波数等があり得る。例えば、誘導式に作動する歯科用炉の誘導コイルの交流抵抗は、パラメータとして使用可能で、フェライトからなる較正要素の浸透性の消失等により、誘導コイルの自己インダクタンスが急減し、それによって交流抵抗も急減する。
【0013】
例えば、上記記載の設計例に係る交流抵抗の減少は、歯科用炉内で転移温度に達した時に急減する、誘導コイルに対し測定される、誘導コイルを流れる電流又は電流−時間プロファイルを基に、判定可能である。
【0014】
急増又は急変化の大きさは、較正要素の測定材料の種類及び量に依存する。例えば、誘導炉内にフェライト製円筒体(重さ18.5g、外径16mm、内径10mm、高さ28mm)を設置すると、約2.5Aの電流変化を生じることが可能な一方、電流が通常発生する変動は、0.5A〜1A程度にすぎないのが典型であり;したがって、較正要素の相転移により生じる電流変化は、他の変動と明確に区別可能である。
【0015】
較正要素が、加熱時間間隔が開始してようやく歯科用炉に導入される場合、この導入により、パラメータの急変化も生じる。しかしこの現象は、時間及び記号を基に、測定材料の相転移で生じ較正のために識別される急増と区別可能である。例えば、強磁性の較正要素を導入する時、特定の時間での誘導炉の電流−時間プロファイルは、導入較正要素の浸透性で生じる急増を示す。
【0016】
燃焼炉内の温度は、少なくとも1つの測定材料の転移温度以上となる、終了温度まで、最低限上昇する。温度測定器により確定される実温度は、少なくとも相転移の領域において記録される。
【0017】
相転移の特定の時間で、温度測定器が表示する実温度(測定第1実温度値)と較正要素の第1測定材料の第1転移温度との間に偏差がある場合、温度測定器の温度表示は、偏差により補正する。例えば、温度測定器の実温度値に偏差を加えて、オフセットすることが可能である。
【0018】
歯科用炉の複数のパラメータは、歯科用炉の稼働状況を監視するためにすでに測定されるので、測定器を追加する必要はなく及び/又は既存の測定手法を使用することで、本発明に係る方法が実施可能である。
【0019】
例えば、誘導炉の加熱回路を流れる全電流は、電力計算のため頻繁に監視する。監視にあたっては、直流を発振器により交流に変換し誘導コイルに流した上で、電源装置で直接監視するのが典型である。したがって、較正方法のための電流監視の追加手段は不要である。電流に関する他の任意の変数は、較正要素の相転移が生じる急変化又は相転移の特定の時間を識別する上で、同様に監視可能である。本発明にしたがって、相転移で温度測定器が測定する第1実温度値を測定可能にするには、相転移を何らかの手段で識別することのみ必要である。
【0020】
本発明に係る方法は、測定材料の相転移の可逆性を利用して、同一の較正要素を用いて繰り返し実行可能か、又は該較正要素は繰り返し使用が可能である。
【0021】
加熱中に相転移の転移温度に正確に達し、加熱中に炉内温度を均一に保持できるようにするため、炉内温度を、特に転移温度近傍で遅い速度に限って、上昇させることが利点である。較正工程を促進するため、転移温度からさらに離れた温度範囲で、より迅速に加熱するようにしてもよい。
【0022】
焼結要素の位置に対応する(例:位置決めテンプレートを使用して)炉内の較正要素の位置が正確であるほど、炉内の実焼結温度への較正がより正確になる。
【0023】
本発明に係る方法の1つの特別な利点は、この方法が完全自動で作動できる点である。該方法はさらに、特に簡便でかつ費用対効果が高い方法、特に接触不要な方法で使用及び再使用が可能な、製作が容易な較正要素を使うことにより、実行可能であり、また、歯科用炉の第1パラメータの監視及び測定するための装置がすでに設置されているため、計測器を追加する必要がない。
【0024】
少なくとも1つの較正要素は、少なくとも1つの第1測定材料と1つの第2測定材料を有利に備え、又は第1測定材料を備える少なくとも1つの第1較正要素と第2測定材料を備える1つの第2較正要素は、歯科用炉内で同時に加熱される。第1測定材料は、第1転移温度を有し、第2測定材料は第1転移温度と異なる第2転移温度を有する。測定材料各々において、加熱時間間隔中の第1パラメータの急変化は識別され、第1実温度値の偏差は、第1パラメータの第1急変化が生じる時に温度測定器により測定され、各測定材料の第1転移温度からそれぞれ決定される。偏差間の補正値及び/又は線形補正は、異なる測定材料を対象に識別される偏差を基に形成され、温度測定器の実温度は、補正値及び/又は線形補正により補正される。
【0025】
多点較正は、異なる測定材料を使用して、較正工程に要する時間が大幅に増加することなく、簡便な方法で較正工程の精度を向上させる。較正要素が備える、転移温度が異なる測定材料の数が多いほど、又は転移温度が異なる各測定材料を伴う較正要素が多いほど、より多くの温度偏差が加熱時間間隔内で識別が可能で、温度測定器の較正に考慮可能である。これに伴い、特に複数の測定材料を備える較正要素の材料及び生産関連コスト、又は複数の較正要素を使用する場合の工程関連コストは、わずかな程度増加する。例えば、数値の平均をとって補正値を算出、又は線形補正を行うことができる。
【0026】
較正要素は、歯科用炉により、有利に誘導式で加熱される。このように、歯科用炉の誘導特性に影響する材料は、測定材料として使用可能で、又は歯科用炉の誘導特性への影響は、例えば誘導電流又は誘導炉への電圧の変化を基に、容易に表示可能である。
【0027】
少なくとも1つの測定材料は、有利に強磁性又はフェリ磁性であって、転移温度は、測定材料のキュリー温度に対応する。強磁性体のキュリー温度には許容範囲(100℃未満の約+/−5ケルビンかつ100℃を超える+/−7.5ケルビン)が典型的にある中、キュリー温度は、正確な温度決定又は+/−20ケルビン等の目標精度較正には特に適する。特定なキュリー温度はさらに、各較正要素において、まずは高精度で決定可能であり;その後、本較正要素で較正に使用可能で、その結果、較正精度はそれにしたがって向上する。
【0028】
少なくとも1つの測定材料は、伝導性の急変化を温度関数として有利に示す。伝導性も材料特性を表し、例えばそれが急変化すると、誘導炉の自己インダクタンスが影響を受ける。
【0029】
パラメータは、有利に、電流又は電圧の振幅、又は交流又は交流電圧の周波数である。これらの値は、歯科用炉の測定が容易な特性を示し、これらもまた、炉の稼働状況を監視するため頻繁に測定する。
【0030】
本発明はさらに、少なくとも1つの第1測定材料を備える、歯科用炉の温度測定器を較正するための較正要素に関し、測定材料は、第1転移温度で生じる可逆的相転移を有する。
【0031】
測定材料の相転移は、材料特性に急変化を生じ、歯科用炉のパラメータに影響し得る。例えば、強磁性体で浸透性が消失すると、材料固有のキュリー温度に達した時に加熱に使用する誘導コイルの負荷が急増する。相転移の可逆性及び臨界温度依存により、本発明に係る測定材料からなる較正要素は、歯科用炉の較正に適する。較正要素は、少なくとも1つの測定材料を備える点以外の要件を満たす必要がないため、費用対効果が高く簡便な方法で製作可能である。
【0032】
周知の事実として、較正要素は加熱工程でガス放出のない耐熱材料からなる。さらに、本発明に係る方法を説明するすべての記載事項は、較正要素の測定材料及びその特性に適用が可能である。
【0033】
較正要素は、少なくとも2つの測定材料を有利に備え、測定材料は各々、転移温度が異なる。そのような較正要素を用いると、多点較正を行うことが可能であり、その結果、較正をより高精度に行うことができる。
【0034】
少なくとも2つの測定材料は、互いが上下に積み重なるよう有利に配置される。周知の事実として、2つの測定材料を所望であればいかなる配置も可能である。積み重ね式の配置は、特に簡便な配置を示し、製作が特に容易である。この積み重ね式の配置は、単に層構造を指し、どのように前記の積み重ねが歯科用炉内で配置されるかを制限する意図はない。歯科用炉内に位置し、特に互いに隣り合うよう配置する測定材料を有する較正要素は、積み重ね式配置を表し、較正要素は片側に水平方向に配置される。
【0035】
少なくとも1つの測定材料は、有利に強磁性又はフェリ磁性であって、少なくとも1つの測定材料の転移温度は、キュリー温度に対応し、又は少なくとも1つの測定材料は、転移温度に達した時、伝導性の急変化を示す。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明に係る歯科用炉の温度測定器を較正するための構成を示す概略図である、
【
図2】本発明に係る較正間の、電流−時間プロファイル及び温度−時間プロファイルを示す略図である、
【
図3】本発明に係る較正方法のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、歯科用炉2の温度測定器1を較正するための構成を示す。温度測定器1は、歯科用炉2の炉室3内に少なくとも部分的に設置される。炉室3を加熱するために、設計例で記載される歯科用炉2は、電流源/電圧源5により作動される、少なくとも1つの誘導コイル4を備える。
【0039】
較正要素6は、炉室3内に設置され、誘導コイル4により加熱され、炉室内の実温度は、温度測定器1により測定され較正を行う。
【0040】
記載の設計例では、較正要素6は、第1及び第2測定材料7、8を備え、2つの測定材料7、8は、互いが上下に積み重なるよう配置される。第1測定材料7は強磁性であって、第1転移温度TC1として、第1測定材料7が常磁性高温状態に変移するキュリー温度を有する。第2材料8は、同様に強磁性で、第2転移温度TC2として、第2測定材料が常磁性高温状態に変移するキュリー温度を有し、第2転移温度TC2は、第1転移温度TC1より高い。
【0041】
測定材料7、8の相転移により、例えば、電流消費を読みとることで識別可能な歯科用炉2の各負荷が急増する。本明細書記載の設計例では、第1パラメータIは、相転移により影響され、したがって、誘導コイルを流れる電流となる。
【0042】
図2のグラフは、誘導コイル4を流れる電流Iと、歯科用炉2内の較正要素6の加熱中に時間tの関数として、温度測定器1により測定される実温度Tの進行曲線を示す。時間t=0の点で電流源/電圧源5にスイッチが入り、誘導コイル4での電流降下IがI=I1の値まで増加した後、記載設計例の実温度Tは、時間t上で線形増加する。
【0043】
電流Iは、時間t=t1の点まで、比較的一定な値I=I1をとる。時間t=t1の点で、記載設計例の電流消費IはdI1減少し、I2=I1−dI1の値をとる。時間t=t1の点以降の時間tでは、電流Iは、時間t=t2の点まで一定値I2をとり、t2はt1より大きい値である。時間t=t2の点で、誘導コイル4を流れる電流IはdI2減少し、I3=I2−dI2の値をとる。
【0044】
時間t=t1の点で電流プロファイルIの第1急増dI1は、較正要素6の第1強磁性体7の相転移を示し、したがって、炉室3内で第1転移温度TC1の到達を示す一方、時間t=t2の点での電流プロファイルIの第2急増dI2は、第2強磁性体8の相転移、すなわち炉室3内の第2転移温度TC2の到達を識別する。したがって、時間t1及びt2の点は、第1及び第2急増を基に、電流−時間プロファイルから容易に推定可能である。記載設計例では、温度測定器1により測定される各相転移に対する実温度測定値T1及びT2は、それに対応して、時間t1及びt2の点の温度−時間プロファイルから推定可能である。
【0045】
図3は、第1実施形態に係る方法の工程の概略を示す。第1工程S1で較正要素6を加熱した後、誘導コイル4を流れる電流Iの電流−時間プロファイルの第1及び第2急増又は該急増に対応する時間t1及びt2の点、時間t1の第1点で温度測定器1により測定される第1実温度値T1、時間t2の第2点で温度測定器1により測定される第2実温度値T2は、第2工程S2で識別される。
【0046】
第3工程S3では、第1転移温度TC1からの第1実温度値T1の第1偏差A1と第2転移温度TC2からの第2実温度値T2の第2偏差A2が決定される。
【0047】
工程S4では、温度測定器1の実温度Tは、2つの偏差A1、A2により形成される補正値Kを使用、及び/又は温度範囲上で偏差A1及びA2間の線形補正により、補正される。
【符号の説明】
【0048】
1 温度測定器
2 歯科用炉
3 炉室
4 誘導コイル
5 電流源/電圧源
6 較正要素
7 第1測定材料
8 第2測定材料
dI1、dI2 パラメータの急変化
dt 加熱時間間隔
I パラメータ
S1−S4 方法ステップ
T 実温度
T1、T2 第1及び第2実温度値
TC1、TC2 第1及び第2転移温度
t 時間