特許第6866067号(P6866067)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6866067非水電解液およびそれを用いた蓄電デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6866067
(24)【登録日】2021年4月9日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】非水電解液およびそれを用いた蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20210419BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20210419BHJP
   H01M 6/16 20060101ALI20210419BHJP
   C07F 9/655 20060101ALI20210419BHJP
   H01G 11/64 20130101ALI20210419BHJP
   C07D 317/38 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   H01M10/0567
   H01M10/052
   H01M6/16 A
   C07F9/655
   H01G11/64
   C07D317/38
【請求項の数】5
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2016-28400(P2016-28400)
(22)【出願日】2016年2月17日
(65)【公開番号】特開2017-147130(P2017-147130A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】320011605
【氏名又は名称】MUアイオニックソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島本 圭
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 宏行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋輔
【審査官】 福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−137925(JP,A)
【文献】 特開2009−262533(JP,A)
【文献】 特表2015−527483(JP,A)
【文献】 特開昭50−142516(JP,A)
【文献】 特開平06−223842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
H01M 4/00− 4/62
H01M 6/00− 6/22
H01G 11/00−11/86
C07F 9/655
C07D 317/38
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、下記一般式(I)で表される(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オキシ化合物を含有し、前記電解質塩がリチウム塩であることを特徴とする蓄電デバイス用非水電解液。
【化1】

(式中、R、R及びRは水素原子であり、nは1又は2を示す。nが1の場合、Lは−C(=O)−R又は−S(=O)−Rを示し、nが2の場合、Lは−C(=O)C(=O)−を示す。Rは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基炭素数7〜13のアラルキル基炭素数6〜12のアリール基、又は炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基を示す。R炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基炭素数7〜13のアラルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基示す。)
【請求項2】
前記一般式(I)で表される(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オキシ化合物が、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル アセテート、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル アクリレート、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル メタクリレート、メチル(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オギザレート、エチル(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オギザレート、ビス(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オギザレート2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル メタンスルホネート、及び2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル エテンスルホネートから選ばれる1種又は2種以上である、請求項1に記載の蓄電デバイス用非水電解液。
【請求項3】
正極、負極、及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液を備えた蓄電デバイスにおいて、該非水電解液が請求項1又は2に記載の非水電解液であることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項4】
下記一般式(II)で表される(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オキシ化合物。
【化2】

(式中、R、R及びRは水素原子であり、nは1又は2を示す。nが1の場合、Lは−C(=O)−R、又は−S(=O)−Rを示し、nが2の場合、Lは−C(=O)C(=O)−を示す。Rは、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルキニル基炭素数7〜13のアラルキル基炭素数6〜12のアリール基、又は炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基を示す。R炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基炭素数7〜13のアラルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基示す。)
【請求項5】
−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル アクリレート、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル メタクリレート、メチル(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オギザレート、エチル(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オギザレート、ビス(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オギザレート2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル メタンスルホネート、及び2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル エテンスルホネートから選ばれる、請求項4に記載の(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オキシ化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広い温度範囲での電気化学特性を向上できる非水電解液およびそれを用いた蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、蓄電デバイス、特にリチウム二次電池は、携帯電話やノート型パソコン等の小型電子機器、電気自動車や電力貯蔵用として広く使用されている。これらの電子機器や自動車は、真夏の高温下や極寒の低温下等広い温度範囲で使用される可能性があるため、広い温度範囲でバランス良く電気化学特性を向上させることが求められている。
特に地球温暖化防止のため、CO排出量を削減することが急務となっており、リチウム二次電池やキャパシタ等の蓄電デバイスからなる蓄電装置を搭載した環境対応車の中でも、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、バッテリー電気自動車(BEV)の早期普及が求められている。自動車は移動距離が長いため、熱帯の非常に暑い地域から極寒の地域まで幅広い温度範囲の地域で使用される可能性がある。従って、特にこれらの車載用の蓄電デバイスは、高温から低温まで幅広い温度範囲で使用しても電気化学特性が低下しないことが要求されている。
尚、本明細書において、リチウム二次電池という用語は、いわゆるリチウムイオン二次電池も含む概念として用いる。
【0003】
リチウム二次電池は、主にリチウムを吸蔵及び放出可能な材料を含む正極及び負極、リチウム塩と非水溶媒からなる非水電解液から構成され、非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)等のカーボネートが使用されている。
また、負極としては、金属リチウム、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物(金属単体、酸化物、リチウムとの合金等)や炭素材料が知られており、特にリチウムを吸蔵及び放出することが可能なコークス、人造黒鉛、天然黒鉛等の炭素材料を用いたリチウム二次電池が広く実用化されている。
【0004】
例えば、天然黒鉛や人造黒鉛等の高結晶化した炭素材料を負極材料として用いたリチウム二次電池は、非水電解液中の溶媒が充電時に負極表面で還元分解することにより発生した分解物やガスが電池の望ましい電気化学的反応を阻害するため、サイクル特性の低下を生じることが分かっている。また、非水溶媒の分解物が蓄積すると、負極へのリチウムの吸蔵及び放出がスムーズにできなくなり、広い温度範囲で使用した場合における電気化学特性が低下しやすくなる。
更に、リチウム金属やその合金、スズ又はケイ素等の金属単体や酸化物を負極材料として用いたリチウム二次電池は、初期の容量は高いもののサイクル中に微粉化が進むため、炭素材料の負極に比べて非水溶媒の還元分解が加速的に起こり、電池容量やサイクル特性のような電池性能が大きく低下することが知られている。また、これらの負極材料の微粉化や非水溶媒の分解物が蓄積すると、負極へのリチウムの吸蔵及び放出がスムーズにできなくなり、広い温度範囲で使用した場合における電気化学特性が低下しやすくなる。
【0005】
一方、正極として、例えばLiCoO、LiMn、LiNiO、LiFePO等を用いたリチウム二次電池は、非水電解液中の非水溶媒が充電状態で正極材料と非水電解液との界面において、局部的に一部酸化分解することにより発生した分解物やガスが電池の望ましい電気化学的反応を阻害するため、やはり広い温度範囲で使用した場合における電気化学特性の低下を生じることが分かっている。
【0006】
以上のように、正極上や負極上で非水電解液が分解するときの分解物やガスにより、リチウムイオンの移動が阻害されたり、電池が膨れたりすることで電池性能が低下していた。そのような状況にも関わらず、リチウム二次電池が搭載されている電子機器の多機能化はますます進み、電力消費量が増大する流れにある。そのため、リチウム二次電池の高容量化はますます進んでおり、電極の密度を高めたり、電池内の無駄な空間容積を減らす等、電池内の非水電解液の占める体積が小さくなっている。従って、少しの非水電解液の分解で、広い温度範囲で使用した場合における電気化学特性が低下しやすい状況にある。
【0007】
特許文献1には、環状カーボネート基とスルホネート基がアルキレン基を用いて結合した化合物の1つとして1,3−ジオキソラン−2−オニルメチルアリルスルホネートが公開されており、電解液に添加することで電池のサイクル容量維持率を向上させることが示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2008/035928号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、広い温度範囲での電気化学特性を向上できる非水電解液、それを用いた蓄電デバイス、及び新規な(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オキシ化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記従来技術の非水電解液の性能について詳細に検討した結果、前記特許文献1の非水電解液を用いた二次電池では、高温下でのサイクル特性および高温保存後の低温放電特性等の広い温度範囲での電気化学特性を向上させるという課題に対しては十分な効果が得られていないのが実情であった。
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、特定の化合物を一種以上含有することで、広い温度範囲で蓄電デバイスの電気化学特性、特にリチウム電池の電気化学特性を改善できることを見出し、本発明を完成した。高温保存後の低温放電特性を向上させる効果は、前記特許文献1にはまったく示唆されていない。
【0011】
すなわち、本発明は、下記の(1)、(2)及び(3)を提供するものである。
(1)非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、下記一般式(I)で表される(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オキシ化合物を一種以上含有することを特徴とする非水電解液。
【0012】
【化1】
(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数7〜13のアラルキル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基、−OC(=O)−R、−OS(=O)−R、又は−OP(=O)(−R)−Rを示す。R及びRは、水素原子、ハロゲン原子、又は少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは1〜3の整数を示す。nが1の場合、Lは−C(=O)−R、−S(=O)−R、又は−P(=O)(−R)−Rを示し、nが2の場合、Lは−C(=O)C(=O)−、−S(=O)−、又は−P(=O)(−R)−を示し、nが3の場合、Lは−P(=O)(−)を示す。Rは、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数7〜13のアラルキル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基、又は少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基を示す。Rは、ハロゲン原子、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数7〜13のアラルキル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基、又は少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基を示す。また、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、又は少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数6〜12のアリールオキシ基を示す。)
【0013】
(2)正極、負極、及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液を備えた蓄電デバイスにおいて、該非水電解液が前記(1)に記載の非水電解液であることを特徴とする蓄電デバイス。
【0014】
(3)下記一般式(II)で表される(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オキシ化合物
【0015】
【化2】
(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数7〜13のアラルキル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基、−OC(=O)−R、−OS(=O)−R、又は−OP(=O)(−R)−Rを示す。R及びRは、水素原子、ハロゲン原子、又は少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは1〜3の整数を示す。nが1の場合、Lは−C(=O)−R、−S(=O)−R、又は−P(=O)(−R)−Rを示し、nが2の場合、Lは−C(=O)C(=O)−、−S(=O)−、又は−P(=O)(−R)−を示し、nが3の場合、Lは−P(=O)(−)を示す。Rは、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換された炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルキニル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数7〜13のアラルキル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基、又は少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基を示す。Rは、ハロゲン原子、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数7〜13のアラルキル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基、又は少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基を示す。また、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、又は少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数6〜12のアリールオキシ基を示す。)
【0016】
なお、本明細書中に記載する−P(=O)(−)なる部分構造は、下記一般式(III)で表される構造を意味する。
【0017】
【化3】
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、広い温度範囲での蓄電デバイスの電気化学特性、特に高温保存後の低温放電特性を向上できる非水電解液、それを用いたリチウム電池等の蓄電デバイス、及び新規な(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オキシ化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、非水電解液およびそれを用いた蓄電デバイスに関する。
【0020】
〔非水電解液〕
本発明の非水電解液は、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、非水電解液中に前記一般式(I)で表される(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オキシ化合物を一種以上含有することを特徴とする非水電解液である。
【0021】
本発明の非水電解液が、広い温度範囲で蓄電デバイスの電気化学特性を大幅に改善できる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように考える。
本発明で使用される化合物は、前記一般式(I)に記載のとおり、アルキレン基を介さず極性基が環に直接結合した環状カーボネートである。その為、特許文献1に記載の環状カーボネート基と極性基であるスルホネート基がアルキレン基を介して結合した化合物である1,3−ジオキソラン−2−オニルメチルアリルスルホネートよりも電気化学的な分解をうけやすく正極及び負極上に緻密で耐熱性の高い被膜を形成する。その為、高温保存後の低温放電特性の様な広い温度範囲での電気化学特性を向上させることができると考えられる。
【0022】
本発明の非水電解液に含まれる化合物は、下記一般式(I)で表される(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オキシ化合物である。
【0023】
【化4】
(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数7〜13のアラルキル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基、−OC(=O)−R、−OS(=O)−R、又は−OP(=O)(−R)−Rを示す。R及びRは、水素原子、ハロゲン原子、又は少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは1〜3の整数を示す。nが1の場合、Lは−C(=O)−R、−S(=O)−R、又は−P(=O)(−R)−Rを示し、nが2の場合、Lは−C(=O)C(=O)−、−S(=O)−、又は−P(=O)(−R)−を示し、nが3の場合、Lは−P(=O)(−)を示す。Rは、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数7〜13のアラルキル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基、又は少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基を示す。Rは、ハロゲン原子、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数7〜13のアラルキル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基、又は少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基を示す。また、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、又は少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数6〜12のアリールオキシ基を示す。)
【0024】
前記、Rの具体例として、水素原子、フッ素原子、塩素原子、もしくは臭素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、もしくはn−ヘキシル基等の直鎖のアルキル基、iso−プロピル基、sec−ブチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ブチル基、もしくはtert−アミル基等の分枝鎖のアルキル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3−フルオロプロピル基、3−クロロプロピル基、3,3−ジフルオロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、もしくは2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、もしくはシクロヘプチル基等のシクロアルキル基、ビニル基、1−プロペン−1−イル基、2−プロペン−1−イル基、1−プロペン−2−イル基、2−ブテン−1−イル基、3−ブテン−1−イル基、4−ペンテン−1−イル基、5−ヘキセン−1−イル基、1−プロペン−2−イル基、1−ブテン−2−イル基、もしくは2−メチル−2−プロペン−1−イル基等のアルケニル基、エチニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、4−ヘプチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、1,1−ジメチル−2−プロピニル基、1−メチル−3−ブチニル基、もしくは1−メチル−4−ヘプチニル基等のアルキニル基、ベンジル基、4−メチルベンジル基、4−tert−ブチルベンジル基、4−フルオロベンジル基、4−クロロベンジル基、1−フェニルエタン−1−イル基、2−フェニルエタン−1−イル基、もしくは3−フェニルプロパン−1−イル基等のアラルキル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−tert-ブチルフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、3−トリフルオロメチルフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−フルオロ−2−トリフルオロメチルフェニル基、4−フルオロ−3−トリフルオロメチルフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基、もしくはパーフルオロフェニル等のアリール基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、フルオロスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、ビニルスルホニルオキシ基、ジフルオロホスホリル基、ジメトキシホスホリル基、又はジエトキシホスホリル基等が好適に挙げられ、中でも、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−プロピル基、sec−ブチル基、2−ペンチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、1−プロペン−1−イル基、2−プロペン−1−イル基、1−プロペン−2−イル基、エチニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、ベンジル基、4−メチルベンジル基、フェニル基、4−メチルフェニル基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、フルオロスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、ビニルスルホニルオキシ基、ジフルオロホスホリル基、ジメトキシホスホリル基、又はジエトキシホスホリル基が好ましく、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ビニル基、1−プロペン−1−イル基、1−プロペン−2−イル基、エチニル基、2−プロピニル基、フェニル基、4−メチルフェニル基、アセチルオキシ基、フルオロスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、ビニルスルホニルオキシ基、ジフルオロホスホリル基、ジメトキシホスホリル基、又はジエトキシホスホリル基が更に好ましい。
【0025】
前記、R及びRの具体例として、水素原子、フッ素原子、塩素原子、もしくは臭素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、もしくはn−ヘキシル基等の直鎖のアルキル基、iso−プロピル基、sec−ブチル基、2−ペンチル基、ペンタン−3−イル基、tert−ブチル基、もしくはtert−アミル基等の分枝鎖のアルキル基、又はフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3−フルオロプロピル基、3−クロロプロピル基、3,3−ジフルオロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、もしくは2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が好適に挙げられ、中でも、水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、又はトリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、フッ素原子、又はメチル基が更に好ましい。
【0026】
前記、Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、もしくはn−ヘキシル基等の直鎖のアルキル基、iso−プロピル基、sec−ブチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ブチル基、もしくはtert−アミル基等の分枝鎖のアルキル基、フルオロメチル基、クロロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3−フルオロプロピル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、もしくは2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、もしくはシクロヘプチル基等のシクロアルキル基、ビニル基、1−プロペン−1−イル基、2−プロペン−1−イル基、2−ブテン−1−イル基、3−ブテン−1−イル基、4−ペンテン−1−イル基、5−ヘキセン−1−イル基、1−プロペン−2−イル基、1−ブテン−2−イル基、もしくは2−メチル−2−プロペン−1−イル基等のアルケニル基、エチニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、4−ヘプチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、1,1−ジメチル−2−プロピニル基、1−メチル−3−ブチニル基、もしくは1−メチル−4−ペンチニル基等のアルキニル基、ベンジル基、4−メチルベンジル基、1−フェニルエタン−1−イル基、2−フェニルエタン−1−イル基、もしくは3−フェニルプロパン−1−イル基等のアラルキル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−tert-ブチルフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、3−トリフルオロメチルフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−フルオロ−2−トリフルオロメチルフェニル基、4−フルオロ−3−トリフルオロメチルフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基、もしくはパーフルオロフェニル等のアリール基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基が好適に挙げられ、中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、フルオロメチル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ビニル基、1−プロペン−1−イル基、エチニル基、2−プロピニル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−フルオロフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、メトキシカルボニル基、又はエトキシカルボニル基が好ましく、メチル基、エチル基、iso−プロピル基、トリフルオロメチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ビニル基、1−プロペン−2−イル基、エチニル基、フェニル基、4−フルオロフェニル基、4-トリフルオロフェニル基、メトキシカルボニル基、又はエトキシカルボニル基が更に好ましい。
【0027】
前記、Rは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、もしくはn−ヘキシル基等の直鎖のアルキル基、iso−プロピル基、sec−ブチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基等の分枝鎖のアルキル基、フルオロメチル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブチル基等のハロゲン化アルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、1−プロペン−1−イル基、2−プロペン−1−イル基等のアルケニル基、エチニル基、2−プロピニル基等のアルキニル基、ベンジル基、4−メチルベンジル基、1−フェニルエタン−1−イル基、2−フェニルエタン−1−イル基、もしくは3−フェニルプロパン−1−イル基等のアラルキル基、又はフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−tert-ブチルフェニル基、2−フルオロフェニル基、2−クロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、4−フルオロフェル基、4−クロロフェニル基、もしくは4-トリフルオロメチルフェニル基等のアリール基、メトキシ基、もしくはエトキシ基等のアルコキシ基が好適に挙げられ、中でも、フッ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、エチニル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−フルオロフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、メトキシ基、又はエトキシ基が好ましく、フッ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、iso−プロピル基、トリフルオロメチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、エチニル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−フルオロフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、又はメトキシ基が更に好ましい。
【0028】
前記、R及びRの具体例として、フッ素原子、塩素原子、もしくは臭素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペントキシ基、もしくはn−ヘキシルオキシ基等の直鎖のアルキルオキシ基、iso−プロポキシ基、sec−ブトキシ基、2−ペントキシ基、ペンタン−3−イルオキシ基、tert−ブトキシ基、もしくはtert−アミルオキシ基等の分枝鎖のアルキルオキシ基、2−フルオロエトキシ基、2,2−ジフルオロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3−フルオロプロピル基、3−クロロプロピル基、3,3−ジフルオロプロポキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基、2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ基、もしくは2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロポキシ基等のハロゲン化アルキル基、又はフェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−tert-ブチルフェノキシ基、2−フルオロフェノキシ基、2−クロロフェノキシ基、2−ブロモフェノキシ基、4−フルオロフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、もしくは4-トリフルオロメチルフェノキシ基等のアリール基が好適に挙げられ、中でも、フッ素原子、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−プロポキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、2,2−ジフルオロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ基、もしくは2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロポキシ基、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2−フルオロフェノキシ基4−フルオロフェノキシ基、又は4-トリフルオロメチルフェノキシ基等のアリール基が好ましく、フッ素原子、メトキシ基、エトキシ基、2,2−ジフルオロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、又はフェノキシ基が更に好ましい。
【0029】
前記一般式(I)としては、具体的に以下の化合物が好適に挙げられる。
【0030】
nが1、Lが−C(=O)−Rの場合
【0031】
【化5】
【0032】
nが2、Lが−C(=O)C(=O)−の場合
【0033】
【化6】
【0034】
nが1、Lが−S(=O)−Rの場合
【0035】
【化7】
【0036】
【化8】
【0037】
nが2、Lが−S(=O)−の場合
【0038】
【化9】
【0039】
nが1、Lが−P(=O)(−R)−Rの場合
【0040】
【化10】
【0041】
nが2、Lが−P(=O)(−R)−の場合
【0042】
【化11】
【0043】
nが3、Lが−P(=O)(−)の場合
【0044】
【化12】
【0045】
上記化合物の中でもA1〜A10、A14〜A19、B1〜B3、C1〜C9、C11〜C20、C24〜C27、C32、C34〜C36、D1〜D3、E1〜E3、E5〜E8、E10〜E13、E15、F1〜F3、F5〜F7、F9〜F11、又はG1〜G3の構造式を有する化合物が好ましく、A1、A2、A4、A7、A8、A16〜A18、B1、B2、C1〜C3、C7、C9、C11、C14、C17〜C19、C35、C36、D1、D2、E1、E2、E6、E7、E11、E12、F1、F2、F5、F6、F9、F10、G1又はG2の構造式を有する化合物が更に好ましく、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル アセテート(構造式A1)、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル 2,2,2−トリフルオロアセテート(構造式A4)、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル アクリレート(構造式A7)、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル メタクリレート(構造式A8)、メチル(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オギザレート(構造式A16)、エチル(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オギザレート(構造式A17)、ビス(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オギザレート(構造式B1)、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル スルホロフルオリデート(構造式C1)、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル メタンスルホネート(構造式C2)、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル トリフルオロメタンスルホネート(構造式C7)、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル エテンスルホネート(構造式C9)、メチル(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)サルフェート(構造式C17)、5−フルオロ−2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル メタンスルホネート(構造式C18)、5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル メタンスルホネート(構造式C19)、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4,5−ジイル ジメタンスルホネート(構造式C35)、ビス(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)サルフェート(構造式D1)、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル ホスホロジフルオリデート(構造式E1)、ジメチル(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)ホスフェート(構造式E6)、又はジエチル(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)ホスフェート(構造式E11)が特に好ましい。
【0046】
本発明の(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オキシ誘導体化合物は、下記の2つの方法により合成することができるが、この方法に限定されるものではない。
(a)アルキルハライドとカルボン酸カリウム塩との反応法
Chem.Ber.,1970,112,148記載の方法によって、アルキルハライドとカルボン酸カリウム塩を溶媒中で反応させることによって得られる。
(b)アルキルハライドとスルホン酸銀塩との反応法
Synthesis,1971,150記載の方法によって、アルキルハライドとスルホン酸銀塩を溶媒中で反応させることによって得られる。
【0047】
本発明の非水電解液において、非水電解液に含有される前記一般式(I)で表される(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オキシ誘導体化合物の含有量は、非水電解液中に0.01〜10質量%であることが好ましい。該含有量が10質量%以下であれば、電極上に過度に被膜が形成され低温特性が低下するおそれが少なく、また0.01質量%以上であれば被膜の形成が十分であり、広い温度範囲での電気化学特性の改善効果が高まるので上記範囲であることが好ましい。該含有量は、非水電解液中に0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。また、その上限は、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。
【0048】
本発明の非水電解液において、前記一般式(I)で表される(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オキシ誘導体化合物を以下に述べる非水溶媒、電解質塩、更にその他の添加剤を組み合わせることにより、広い温度範囲で電気化学特性が相乗的に向上するという特異な効果を発現する。
【0049】
〔非水溶媒〕
本発明の非水電解液に使用される非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状エステル、ラクトン、エーテル、及びアミドから選ばれる1種又は2種以上が好適に挙げられる。広い温度範囲で電気化学特性が相乗的に向上するため、鎖状エステルが含まれることが好ましく、鎖状カーボネートが含まれることが更に好ましく、環状カーボネートと鎖状カーボネートの両方が含まれることがもっとも好ましい。
【0050】
なお、「鎖状エステル」なる用語は、鎖状カーボネート及び鎖状カルボン酸エステルを含む概念として用いる。
【0051】
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)、トランスもしくはシス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(以下、両者を総称して「DFEC」という)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、及び4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オン(EEC)から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、ビニレンカーボネート及び4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オンから選ばれる1種又は2種以上がより好適である。
【0052】
また、前記炭素−炭素二重結合もしくは炭素−炭素三重結合等の不飽和結合又はフッ素原子を有する環状カーボネートのうち少なくとも1種を使用すると高温環境下での電気化学特性が一段と向上するので好ましく、炭素−炭素二重結合もしくは炭素−炭素三重結合等の不飽和結合を含む環状カーボネートとフッ素原子を有する環状カーボネートを両方含むことがより好ましい。炭素−炭素二重結合もしくは炭素−炭素三重結合等の不飽和結合を有する環状カーボネートとしては、VC、VEC、又はEECが更に好ましく、フッ素原子を有する環状カーボネートとしては、FEC又はDFECが更に好ましい。
【0053】
炭素−炭素二重結合もしくは炭素−炭素三重結合等の不飽和結合を有する環状カーボネートの含有量は、非水溶媒の総体積に対して、好ましくは0.07体積%以上、より好ましくは0.2体積%以上、更に好ましくは0.7体積%以上であり、また、その上限としては、好ましくは7体積%以下、より好ましくは4体積%以下、更に好ましくは2.5体積%以下であると、Liイオン透過性を損なうことなく一段と広い温度範囲での電気化学特性を増すことができるので好ましい。
【0054】
フッ素原子を有する環状カーボネートの含有量は、非水溶媒の総体積に対して好ましくは0.07体積%以上、より好ましくは4体積%以上、更に好ましくは6体積%以上であり、また、その上限としては、好ましくは35体積%以下、より好ましくは25体積%以下、更に15体積%以下であると、Liイオン透過性を損なうことなく一段と広い温度範囲での電気化学特性を向上させることができるので好ましい。
【0055】
非水溶媒が炭素−炭素二重結合もしくは炭素−炭素三重結合等の不飽和結合を有する環状カーボネートとフッ素原子を有する環状カーボネートの両方を含む場合、フッ素原子を有する環状カーボネートの含有量に対する炭素−炭素二重結合もしくは炭素−炭素三重結合等の不飽和結合を有する環状カーボネートの含有量は、好ましくは0.2体積%以上、より好ましくは3体積%以上、更に好ましくは7体積%以上であり、その上限としては、好ましくは40体積%以下、より好ましくは30体積%以下、更に15体積%以下であると、Liイオン透過性を損なうことなく一段と広い温度範囲での電気化学特性を向上させることができるので特に好ましい。
【0056】
また、非水溶媒がエチレンカーボネートと炭素−炭素二重結合もしくは炭素−炭素三重結合等の不飽和結合を有する環状カーボネートの両方を含むと電極上に形成される被膜の広い温度範囲での電気化学特性を向上させることができるので好ましく、エチレンカーボネート及び炭素−炭素二重結合もしくは炭素−炭素三重結合等の不飽和結合を有する環状カーボネートの含有量は、非水溶媒の総体積に対し、好ましくは3体積%以上、より好ましくは5体積%以上、更に好ましくは7体積%以上であり、また、その上限としては、好ましくは45体積%以下、より好ましくは35体積%以下、更に好ましくは25体積%以下である。
【0057】
これらの溶媒は1種類で使用してもよく、また2種類以上を組み合わせて使用した場合は、高温環境下での電気化学特性の改善効果が更に向上するので好ましく、3種類以上を組み合わせて使用することが特に好ましい。これらの環状カーボネートの好適な組合せとしては、ECとPC、ECとVC、PCとVC、VCとFEC、ECとFEC、PCとFEC、FECとDFEC、ECとDFEC、PCとDFEC、VCとDFEC、VECとDFEC、VCとEEC、ECとEEC、ECとPCとVC、ECとPCとFEC、ECとVCとFEC、ECとVCとVEC、ECとVCとEEC、ECとEECとFEC、PCとVCとFEC、ECとVCとDFEC、PCとVCとDFEC、ECとPCとVCとFEC、又はECとPCとVCとDFEC等が好ましい。前記の組合せのうち、ECとVC、ECとFEC、PCとFEC、ECとPCとVC、ECとPCとFEC、ECとVCとFEC、ECとVCとEEC、ECとEECとFEC、PCとVCとFEC、又はECとPCとVCとFEC等の組合せがより好ましい。
【0058】
鎖状エステルとしては、メチルエチルカーボネート(MEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、メチルイソプロピルカーボネート(MIPC)、メチルブチルカーボネート、及びエチルプロピルカーボネートから選ばれる1種又は2種以上の非対称鎖状カーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート、及びジブチルカーボネートから選ばれる1種又は2種以上の対称鎖状カーボネート、ピバリン酸メチル、ピバリン酸エチル、ピバリン酸プロピル等のピバリン酸エステル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酢酸メチル、及び酢酸エチル(EA)から選ばれる1種又は2種以上の鎖状カルボン酸エステルが好適に挙げられる。
【0059】
前記鎖状エステルの中でも、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、プロピオン酸メチル、酢酸メチル及び酢酸エチル(EA)から選ばれるメチル基を有する鎖状エステルが好ましく、特にメチル基を有する鎖状カーボネートが好ましい。
【0060】
また、高電圧下での電気化学特性を向上させる観点から少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されている鎖状エステルを少なくとも一種を含むと好ましい。
【0061】
具体的な少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されている鎖状エステルとしては、2,2−ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、2,2,2−トリフルオロエチルアセテート(TFEA)、2,2−ジフルオロエチルプロピオネート、2,2,2−トリフルオロエチルプロピオネート、メチル 2,2−ジフルオロプロピオネート、メチル 2,2,2−トリフルオロプロピオネート、メチル(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート(MDFEC)、及びエチル(2,2,2−トリルオロエチル)カーボネート(ETFEC)からなる群より選ばれる1種以上が好適に挙げられる。
中でも高温環境下での電気化学特性向上の観点より、2,2,2−トリフルオロエチルアセテート、2,2−ジフルオロエチルアセテート、2,2,2−トリフルオロプロピオネート、メチル(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、又はエチル(2,2,2−トリルオロエチル)カーボネートがより好ましい。
【0062】
また、鎖状カーボネートを用いる場合には、2種以上を用いることが好ましい。さらに対称鎖状カーボネートと非対称鎖状カーボネートの両方が含まれるとより好ましく、対称鎖状カーボネートの含有量が非対称鎖状カーボネートより多く含まれると更に好ましい。
【0063】
鎖状エステルの含有量は、特に制限されないが、非水溶媒の総体積に対して、60〜90体積%の範囲で用いるのが好ましい。該含有量が60体積%以上であれば非水電解液の粘度が高くなりすぎず、90体積%以下であれば非水電解液の電気伝導度が低下して広い温度範囲での電気化学特性が低下するおそれが少ないので上記範囲であることが好ましい。
【0064】
鎖状カーボネート中に対称鎖状カーボネートが占める体積の割合は、51体積%以上が好ましく、55体積%以上がより好ましい。その上限としては、95体積%以下がより好ましく、85体積%以下であると更に好ましい。対称鎖状カーボネートにジメチルカーボネートが含まれると特に好ましい。また、非対称鎖状カーボネートはメチル基を有するとより好ましく、メチルエチルカーボネートが特に好ましい。上記の場合に一段と広い温度範囲での電気化学特性が向上するので好ましい。
【0065】
環状カーボネートと鎖状エステルの割合は、高温下での電気化学特性向上の観点から、環状カーボネート:鎖状エステル(体積比)が10:90〜45:55が好ましく、15:85〜40:60がより好ましく、20:80〜35:65が特に好ましい。
【0066】
その他の非水溶媒としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等の鎖状エーテル、ジメチルホルムアミド等のアミド、スルホラン等のスルホン、及びγ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン、α−アンゲリカラクトン等のラクトンから選ばれる1種又は2種以上が好適に挙げられる。
【0067】
上記その他の非水溶媒は通常、適切な物性を達成するために、混合して使用される。その組合せは、例えば、環状カーボネートと鎖状エステルとラクトンとの組合せ又は環状カーボネートと鎖状エステルとエーテルとの組合せ等が好適に挙げられ、環状カーボネートと鎖状エステルとラクトンとの組合せがより好ましく、ラクトンの中でもγ−ブチロラクトン(GBL)を用いると更に好ましい。
【0068】
その他の非水溶媒の含有量は、非水溶媒の総体積に対して、通常1%以上、好ましくは2%以上であり、また通常40%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下である。
【0069】
一段と広い温度範囲での電気化学特性を向上させる目的で、非水電解液中にさらにその他の添加剤を加えることが好ましい。
その他の添加剤の具体例としては、以下の(A)〜(I)の化合物が好適に挙げられる。
【0070】
(A)アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、及びセバコニトリルからなる群より選ばれる一種又は二種以上のニトリル。
【0071】
(B)シクロヘキシルベンゼン、フルオロシクロヘキシルベンゼン化合物(1−フルオロ−2−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−3−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−4−シクロヘキシルベンゼン)、tert−ブチルベンゼン、tert−アミルベンゼン、1−フルオロ−4−tert−ブチルベンゼン等の分枝アルキル基を有する芳香族化合物や、ビフェニル、ターフェニル(o−、m−、p−体)、ジフェニルエーテル、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン(o−、m−、p−体)、アニソール、2,4−ジフルオロアニソール、ターフェニルの部分水素化物(1,2−ジシクロヘキシルベンゼン、2−フェニルビシクロヘキシル、1,2−ジフェニルシクロヘキサン、o−シクロヘキシルビフェニル)等の芳香族化合物。
【0072】
(C)メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、ブチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2−イソシアナトエチル アクリレート、及び2−イソシアナトエチル メタクリレートからなる群より選ばれる一種又は二種以上のイソシアネート化合物。
【0073】
(D)2−プロピニル メチル カーボネート、酢酸 2−プロピニル、ギ酸 2−プロピニル、メタクリル酸 2−プロピニル、メタンスルホン酸 2−プロピニル、ビニルスルホン酸 2−プロピニル、2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2−プロピニル、ジ(2−プロピニル)オギザレート、メチル 2−プロピニルオギザレート、エチル 2−プロピニルオギザレート、グルタル酸 ジ(2−プロピニル)、2−ブチン−1,4−ジイル ジメタンスルホネート、2−ブチン−1,4−ジイル ジホルメート、及び2,4−ヘキサジイン−1,6−ジイル ジメタンスルホネートからなる群より選ばれる一種又は二種以上の三重結合含有化合物。
【0074】
(E)1,3−プロパンスルトン、1,3−ブタンスルトン、2,4−ブタンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロペンスルトン、2,2−ジオキシド−1,2−オキサチオラン−4−イル アセテート、又は5,5−ジメチル−1,2−オキサチオラン−4−オン 2,2−ジオキシド等のスルトン、エチレンサルファイト、ヘキサヒドロベンゾ[1,3,2]ジオキサチオラン−2−オキシド(1,2−シクロヘキサンジオールサイクリックサルファイトともいう)、又は5−ビニル−ヘキサヒドロ−1,3,2−ベンゾジオキサチオール−2−オキシド等の環状サルファイト、ブタン−2,3−ジイル ジメタンスルホネート、ブタン−1,4−ジイル ジメタンスルホネート、又はメチレンメタンジスルホネート等のスルホン酸エステル、ジビニルスルホン、1,2−ビス(ビニルスルホニル)エタン、又はビス(2−ビニルスルホニルエチル)エーテル等のビニルスルホン化合物からなる群より選ばれる一種又は二種以上のS=O基含有化合物。
【0075】
(F)1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン等の環状アセタール化合物。
【0076】
(G)リン酸トリメチル、リン酸トリブチル、及びリン酸トリオクチル、リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)メチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)エチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)2,2−ジフルオロエチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、リン酸ビス(2,2−ジフルオロエチル)2,2,2−トリフルオロエチル、リン酸ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)2,2,2−トリフルオロエチル及びリン酸(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)メチル、リン酸トリス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−イル)、メチレンビスホスホン酸メチル、メチレンビスホスホン酸エチル、エチレンビスホスホン酸メチル、エチレンビスホスホン酸エチル、ブチレンビスホスホン酸メチル、ブチレンビスホスホン酸エチル、メチル 2−(ジメチルホスホリル)アセテート、エチル 2−(ジメチルホスホリル)アセテート、メチル 2−(ジエチルホスホリル)アセテート、エチル 2−(ジエチルホスホリル)アセテート、2−プロピニル 2−(ジメチルホスホリル)アセテート、2−プロピニル 2−(ジエチルホスホリル)アセテート、メチル 2−(ジメトキシホスホリル)アセテート、エチル 2−(ジメトキシホスホリル)アセテート、メチル 2−(ジエトキシホスホリル)アセテート、エチル 2−(ジエトキシホスホリル)アセテート、2−プロピニル 2−(ジメトキシホスホリル)アセテート、2−プロピニル 2−(ジエトキシホスホリル)アセテート、及びピロリン酸メチル、ピロリン酸エチルからなる群より選ばれる1種又は2種以上のリン含有化合物。
【0077】
(H)無水酢酸、無水プロピオン酸等の鎖状のカルボン酸無水物、無水コハク酸、無水マレイン酸、3−アリル無水コハク酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、又は3−スルホ−プロピオン酸無水物等の環状酸無水物。
【0078】
(I)メトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、エトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、フェノキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、又はエトキシヘプタフルオロシクロテトラホスファゼン等の環状ホスファゼン化合物。
【0079】
上記の中でも、(A)ニトリル、(B)芳香族化合物、及び(C)イソシアネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含むと一段と広い温度範囲での電気化学特性が向上するので好ましい。
【0080】
(A)ニトリルの中では、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、及びピメロニトリルからなる群より選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0081】
(B)芳香族化合物の中では、ビフェニル、ターフェニル(o−、m−、p−体)、フルオロベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、及びtert−アミルベンゼンから選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、ビフェニル、o−ターフェニル、フルオロベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、及びtert−アミルベンゼンからなる群より選ばれる一種又は二種以上が特に好ましい。
【0082】
(C)イソシアネート化合物の中では、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2−イソシアナトエチル アクリレート、及び2−イソシアナトエチル メタクリレートから選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0083】
前記(A)〜(C)の化合物の含有量は、非水電解液中に0.01〜7質量%が好ましい。この範囲では、被膜が厚くなり過ぎずに十分に形成され、一段と広い温度範囲での電気化学特性が高まる。該含有量は、非水電解液中に0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、その上限は、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。
【0084】
また、(D)三重結合含有化合物、(E)スルトン、環状サルファイト、スルホン酸エステル、ビニルスルホンから選ばれる環状又は鎖状のS=O基含有化合物、(F)環状アセタール化合物、(G)リン含有化合物、(H)環状酸無水物、及び(I)環状ホスファゼン化合物を含むと一段と広い温度範囲での電気化学特性性が向上するので好ましい。
【0085】
(D)三重結合含有化合物としては、2−プロピニル メチル カーボネート、メタクリル酸 2−プロピニル、メタンスルホン酸 2−プロピニル、ビニルスルホン酸 2−プロピニル、2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸 2−プロピニル、ジ(2−プロピニル)オギザレート、メチル 2−プロピニル オギザレート、エチル 2−プロピニル オギザレート、及び2−ブチン−1,4−ジイル ジメタンスルホネートから選ばれる一種又は二種以上が好ましく、メタンスルホン酸 2−プロピニル、ビニルスルホン酸 2−プロピニル、2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸 2−プロピニル、ジ(2−プロピニル)オギザレート、及び2−ブチン−1,4−ジイル ジメタンスルホネートからなる群より選ばれる1種又は2種以上が更に好ましい。
【0086】
(E)スルトン、環状サルファイト、スルホン酸エステル、及びビニルスルホンからなる群より選ばれる環状又は鎖状のS=O基含有化合物(但し、三重結合含有化合物、及び前記一般式のいずれかで表される特定の化合物は含まない)を用いることが好ましい。
【0087】
前記環状のS=O基含有化合物としては、1,3−プロパンスルトン、1,3−ブタンスルトン、1,4−ブタンスルトン、2,4−ブタンスルトン、1,3−プロペンスルトン、2,2−ジオキシド−1,2−オキサチオラン−4−イル アセテート、5,5−ジメチル−1,2−オキサチオラン−4−オン 2,2−ジオキシド、メチレン メタンジスルホネート、エチレンサルファイト、及び4−(メチルスルホニルメチル)−1,3,2−ジオキサチオラン 2−オキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好適に挙げられる。
【0088】
また、鎖状のS=O基含有化合物としては、ブタン−2,3−ジイル ジメタンスルホネート、ブタン−1,4−ジイル ジメタンスルホネート、ジメチル メタンジスルホネート、ペンタフルオロフェニル メタンスルホネート、ジビニルスルホン、及びビス(2−ビニルスルホニルエチル)エーテルからなる群より選ばれる一種又は二種以上が好適に挙げられる。
【0089】
前記環状又は鎖状のS=O基含有化合物の中でも、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、2,4−ブタンスルトン、2,2−ジオキシド−1,2−オキサチオラン−4−イル アセテート、エチレンサルフェート、ペンタフルオロフェニル メタンスルホネート、及びジビニルスルホンからなる群より選ばれる1種又は2種以上が更に好ましい。
【0090】
(F)環状アセタール化合物としては、1,3−ジオキソラン、又は1,3−ジオキサンが好ましく、1,3−ジオキサンが更に好ましい。
【0091】
(G)リン含有化合物としては、リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸トリス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−イル)、メチル 2−(ジメチルホスホリル)アセテート、エチル 2−(ジメチルホスホリル)アセテート、メチル 2−(ジエチルホスホリル)アセテート、エチル 2−(ジエチルホスホリル)アセテート、2−プロピニル 2−(ジメチルホスホリル)アセテート、2−プロピニル 2−(ジエチルホスホリル)アセテート、メチル 2−(ジメトキシホスホリル)アセテート、エチル 2−(ジメトキシホスホリル)アセテート、メチル 2−(ジエトキシホスホリル)アセテート、エチル 2−(ジエトキシホスホリル)アセテート、2−プロピニル 2−(ジメトキシホスホリル)アセテート、又は2−プロピニル 2−(ジエトキシホスホリル)アセテートが好ましく、リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸トリス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−イル)、エチル 2−(ジエチルホスホリル)アセテート、2−プロピニル 2−(ジメチルホスホリル)アセテート、2−プロピニル 2−(ジエチルホスホリル)アセテート、エチル 2−(ジエトキシホスホリル)アセテート、2−プロピニル 2−(ジメトキシホスホリル)アセテート、又は2−プロピニル 2−(ジエトキシホスホリル)アセテートが更に好ましい。
【0092】
(H)環状酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、又は3−アリル無水コハク酸が好ましく、無水コハク酸又は3−アリル無水コハク酸が更に好ましい。
【0093】
(I)環状ホスファゼン化合物としては、メトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、エトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、又はフェノキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン等の環状ホスファゼン化合物が好ましく、メトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、又はエトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼンが更に好ましい。
【0094】
前記(D)〜(I)の化合物の含有量は、非水電解液中に0.001〜5質量%が好ましい。この範囲では、被膜が厚くなり過ぎずに十分に形成され、一段と広い温度範囲での電気化学特性が高まる。該含有量は、非水電解液中に0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、その上限は、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。
【0095】
また、一段と広い温度範囲での電気化学特性を向上させる目的で、非水電解液中にさらに、シュウ酸骨格を有するリチウム塩、リン酸骨格を有するリチウム塩及びS=O基を有するリチウム塩の中から選ばれる一種以上のリチウム塩を含むことが好ましい。
リチウム塩の具体例としては、リチウム ビス(オキサラト)ボレート〔LiBOB〕、リチウム ジフルオロ(オキサラト)ボレート〔LiDFOB〕、リチウム テトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート〔LiTFOP〕、及びリチウム ジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート〔LiDFOP〕から選ばれる少なくとも一種のシュウ酸骨格を有するリチウム塩、LiPOやLiPOF等のリン酸骨格を有するリチウム塩、リチウム トリフルオロ((メタンスルホニル)オキシ)ボレート〔LiTFMSB〕、リチウム ペンタフルオロ((メタンスルホニル)オキシ)ホスフェート〔LiPFMSP〕、リチウム メチルサルフェート〔LMS〕、リチウムエチルサルフェート〔LES〕、リチウム 2,2,2−トリフルオロエチルサルフェート〔LFES〕、及びFSOLiから選ばれる1種以上のS=O基を有するリチウム塩が好適に挙げられ、LiBOB、LiDFOB、LiTFOP、LiDFOP、LiPO、LiTFMSB、LMS、LES、LFES、及びFSOLiから選ばれるリチウム塩を含むことがより好ましい。
【0096】
前記リチウム塩が非水溶媒中に占める割合は、0.001M以上0.5M以下である場合が好ましい。この範囲にあると広い温度範囲での電気化学特性の向上効果が一段と発揮される。好ましくは0.01M以上、更に好ましくは0.03M以上、特に好ましくは0.04M以上である。その上限は、更に好ましくは0.4M以下、特に好ましくは0.2M以下である。(ただし、Mはmol/Lを示す。)
【0097】
(電解質塩)
本発明に使用される電解質塩としては、下記のリチウム塩が好適に挙げられる。
リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiClO等の無機リチウム塩、LiN(SOF)〔LiFSI〕、LiN(SOCF、LiN(SO、LiCFSO、LiC(SOCF、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CF、LiPF(iso−C7、LiPF(iso−C7)等の鎖状のフッ化アルキル基を含有するリチウム塩や、(CF(SONLi、(CF(SONLi等の環状のフッ化アルキレン鎖を有するリチウム塩等が好適に挙げられ、これらの中から選ばれる少なくとも1種のリチウム塩が好適に挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して使用することができる。
これらの中でも、LiPF、LiBF、LiN(SOCF、LiN(SO、及びLiN(SOF)〔LiFSI〕から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、LiPFを用いることがもっとも好ましい。電解質塩の濃度は、前記の非水溶媒に対して、通常0.3M以上が好ましく、0.7M以上がより好ましく、1.1M以上が更に好ましい。またその上限は、2.5M以下が好ましく、2.0M以下がより好ましく、1.6M以下が更に好ましい。
また、これらの電解質塩の好適な組み合わせとしては、LiPFを含み、更にLiBF、LiN(SOCF、及びLiN(SOF)〔LiFSI〕から選ばれる少なくとも1種のリチウム塩が非水電解液中に含まれている場合が好ましく、LiPF以外のリチウム塩が非水溶媒中に占める割合は、0.001M以上であると、広い温度範囲での電気化学特性の向上効果が発揮されやすく、1.0M以下であると広い温度範囲での電気化学特性の向上効果が低下する懸念が少ないので好ましい。好ましくは0.01M以上、特に好ましくは0.03M以上、最も好ましくは0.04M以上である。その上限は、好ましくは0.8M以下、さらに好ましくは0.6M以下、特に好ましくは0.4M以下である。
【0098】
〔非水電解液の製造〕
本発明の非水電解液は、例えば、前記の非水溶媒を混合し、これに前記の電解質塩及び該非水電解液に対して前記一般式(I)で表される(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オキシ誘導体化合物を添加することにより得ることができる。
この際、用いる非水溶媒及び非水電解液に加える前記化合物は、生産性を著しく低下させない範囲内で、予め精製して、不純物が極力少ないものを用いることが好ましい。
【0099】
本発明の非水電解液は、下記の第1〜第4の蓄電デバイスに使用することができ、非水電解質として、液体状のものだけでなくゲル化されているものも使用し得る。更に本発明の非水電解液は固体高分子電解質用としても使用できる。中でも電解質塩にリチウム塩を使用する第1の蓄電デバイス用(即ち、リチウム電池用)又は第4の蓄電デバイス用(即ち、リチウムイオンキャパシタ用)として用いることが好ましく、リチウム電池用として用いることがより好ましく、リチウム二次電池用として用いることが更に好ましい。
【0100】
〔第1の蓄電デバイス(リチウム電池)〕
本明細書においてリチウム電池とは、リチウム一次電池及びリチウム二次電池の総称である。また、本明細書において、リチウム二次電池という用語は、いわゆるリチウムイオン二次電池も含む概念として用いる。
本発明の第1の蓄電デバイスであるリチウム電池は、正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている前記非水電解液からなる。非水電解液以外の正極、負極等の構成部材は特に制限なく使用できる。
例えば、リチウム二次電池用正極活物質としては、コバルト、マンガン、及びニッケルからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有するリチウムとの複合金属酸化物が使用される。これらの正極活物質は、1種単独で用いるか又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
このようなリチウム複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO、LiCo1−x(但し、MはSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、及びCuから選ばれる1種又は2種以上の元素、0.001≦x≦0.05)、LiMn、LiNiO、LiCo1−xNi(0.01<x<1)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi0.5Mn0.3Co0.2Mn0.3、LiNi0.8Mn0.1Co0.1、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiMnOとLiMO(Mは、Co、Ni、Mn、Fe等の遷移金属)との固溶体、及びLiNi1/2Mn3/2からなる群より選ばれる1種以上が好適に挙げられ、2種以上がより好適である。また、LiCoOとLiMn、LiCoOとLiNiO、LiMnとLiNiOのように併用してもよい。
【0101】
高充電電圧で動作するリチウム複合金属酸化物を使用すると、充電時における電解液との反応により高温環境下で電気化学特性が低下しやすいが、本発明に係るリチウム二次電池ではこれらの電気化学特性の低下を抑制することができる。
特にNiを含む正極活物質の場合にNiの触媒作用により正極表面での非水溶媒の分解が起き、電池の抵抗が増加しやすい傾向にある。特に高温環境下での電気化学特性が低下しやすい傾向にあるが、本発明に係るリチウム二次電池ではこれらの電気化学特性の低下を抑制することができるので好ましい。特に、正極活物質中の全遷移金属元素の原子濃度に対するNiの原子濃度の割合が、10atomic%を超える正極活物質を用いた場合に上記効果が顕著になるので好ましく、20atomic%以上が更に好ましく、30atomic%以上が特に好ましい。具体的には、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi0.5Mn0.3Co0.2Mn0.3、LiNi0.8Mn0.1Co0.1、LiNi0.8Co0.15Al0.05等が好適に挙げられる。
【0102】
更に、正極活物質として、リチウム含有オリビン型リン酸塩を用いることもできる。特に鉄、コバルト、ニッケル及びマンガンから選ばれる一種又は二種以上を含むリチウム含有オリビン型リン酸塩が好ましい。その具体例としては、LiFePO、LiCoPO、LiNiPO、及びLiMnPOから選ばれる一種又は二種以上が挙げられる。
これらのリチウム含有オリビン型リン酸塩の一部は他元素で置換してもよく、鉄、コバルト、ニッケル、マンガンの一部をCo、Mn、Ni、Mg、Al、B、Ti、V、Nb、Cu、Zn、Mo、Ca、Sr、W、及びZrから選ばれる一種又は二種以上の元素で置換したり、又はこれらの他元素を含有する化合物や炭素材料で被覆することもできる。これらの中では、LiFePO又はLiMnPOが好ましい。
また、リチウム含有オリビン型リン酸塩は、例えば前記の正極活物質と混合して用いることもできる。
【0103】
また、リチウム一次電池用正極としては、CuO、CuO、AgO、AgCrO、CuS、CuSO、TiO、TiS、SiO、SnO、V、V12、VO、Nb、Bi、BiPb,Sb、CrO、Cr、MoO、WO、SeO、MnO、Mn、Fe、FeO、Fe、Ni、NiO、CoO、CoO等の、一種又は二種以上の金属元素の酸化物又はカルコゲン化合物、SO、SOCl等の硫黄化合物、一般式(CFnで表されるフッ化炭素(フッ化黒鉛)等が挙げられる。これらの中でも、MnO、V、フッ化黒鉛等が好ましい。
【0104】
正極の導電剤は、化学変化を起こさない電子伝導材料であれば特に制限はない。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)、人造黒鉛等のグラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、又はサーマルブラック等のカーボンブラック等が挙げられる。また、グラファイトとカーボンブラックを適宜混合して用いてもよい。導電剤の正極合剤への添加量は、1〜10質量%が好ましく、特に2〜5質量%が好ましい。
【0105】
正極は、前記の正極活物質をアセチレンブラック、カーボンブラック等の導電剤、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンとブタジエンの共重合体(SBR)、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体(NBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレンプロピレンジエンターポリマー等の結着剤と混合し、これに1−メチル−2−ピロリドン等の高沸点溶剤を加えて混練して正極合剤とした後、この正極合剤を集電体のアルミニウム箔やステンレス製のラス板等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製することができる。
正極の集電体を除く部分の密度は、通常は1.5g/cm以上であり、電池の容量をさらに高めるため、好ましくは2g/cm以上であり、より好ましくは、3g/cm以上であり、更に好ましくは、3.6g/cm以上である。なお、その上限としては、4g/cm以下が好ましい。
【0106】
リチウム二次電池用負極活物質としては、リチウム金属やリチウム合金、及びリチウムを吸蔵及び放出することが可能な炭素材料〔易黒鉛化炭素や、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化炭素や、(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛など〕、スズ(単体)、スズ化合物、ケイ素(単体)、ケイ素化合物、もしくはLiTi12などのチタン酸リチウム化合物等を1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、リチウムイオンの吸蔵及び放出能力において、人造黒鉛や天然黒鉛等の高結晶性の炭素材料を使用することがより好ましく、格子面(002)の面間隔(d002)が0.340nm(ナノメータ)以下、特に0.335〜0.337nmである黒鉛型結晶構造を有する炭素材料を使用することが更に好ましい。
特に複数の扁平状の黒鉛質微粒子が互いに非平行に集合又は結合した塊状構造を有する人造黒鉛粒子や、圧縮力、摩擦力、剪断力等の機械的作用を繰り返し与え、鱗片状天然黒鉛を球形化処理した粒子、を用いることが好ましい。
負極の集電体を除く部分の密度を1.5g/cm以上の密度に加圧成形したときの負極シートのX線回折測定から得られる黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比I(110)/I(004)が0.01以上となると一段と広い温度範囲での電気化学特性が向上するので好ましく、0.05以上となることがより好ましく、0.1以上となることが更に好ましい。また、過度に処理し過ぎて結晶性が低下し電池の放電容量が低下する場合があるので、ピーク強度の比I(110)/I(004)の上限は0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましい。
また、高結晶性の炭素材料(コア材)はコア材よりも低結晶性の炭素材料によって被膜されていると、広い温度範囲での電気化学特性が一段と良好となるので好ましい。被覆の炭素材料の結晶性は、TEMにより確認することができる。
高結晶性の炭素材料を使用すると、充電時において非水電解液と反応し、界面抵抗の増加によって低温もしくは高温における電気化学特性を低下させる傾向があるが、本発明に係るリチウム二次電池では広い温度範囲での電気化学特性が良好となる。
【0107】
また、負極活物質としてのリチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物としては、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、Al、Ga、In、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ag、Mg、Sr、又はBa等の金属元素を少なくとも1種含有する化合物が挙げられる。これらの金属化合物は単体、合金、酸化物、窒化物、硫化物、硼化物、リチウムとの合金等、何れの形態で用いてもよいが、単体、合金、酸化物、リチウムとの合金の何れかが高容量化できるので好ましい。中でも、Si、Ge及びSnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含有するものが好ましく、Si及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素を含むものが電池を高容量化できるので特に好ましい。
【0108】
負極は、上記の正極の作製と同様な導電剤、結着剤、高沸点溶剤を用いて混練して負極合剤とした後、この負極合剤を集電体の銅箔等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製することができる。
負極の集電体を除く部分の密度は、通常は1.1g/cm以上であり、電池の容量をさらに高めるため、好ましくは1.5g/cm以上であり、より好ましくは1.7g/cm以上である。なお、その上限としては、2g/cm以下が好ましい。
【0109】
また、リチウム一次電池用の負極活物質としては、リチウム金属又はリチウム合金が挙げられる。
【0110】
リチウム電池の構造には特に限定はなく、単層又は複層のセパレータを有するコイン型電池、円筒型電池、角型電池、ラミネート電池等を適用できる。
電池用セパレータとしては、特に制限はないが、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンの単層又は積層の微多孔性フィルム、織布、不織布等を使用できる。
【0111】
本発明におけるリチウム二次電池は、充電終止電圧が4.2V以上、特に4.3V以上の場合にも広い温度範囲での電気化学特性に優れ、更に、4.4V以上においても特性は良好である。放電終止電圧は、通常2.8V以上、更には2.5V以上とすることができるが、本願発明におけるリチウム二次電池は、2.0V以上とすることができる。電流値については特に限定されないが、通常0.1〜30Cの範囲で使用される。また、本発明におけるリチウム電池は、−40〜100℃、好ましくは−10〜80℃で充放電することができる。
【0112】
本発明においては、リチウム電池の内圧上昇の対策として、電池蓋に安全弁を設けたり、電池缶やガスケット等の部材に切り込みを入れる方法も採用することができる。また、過充電防止の安全対策として、電池の内圧を感知して電流を遮断する電流遮断機構を電池蓋に設けることができる。
【0113】
〔第2の蓄電デバイス(電気二重層キャパシタ)〕
第2の蓄電デバイスは、電解液と電極界面の電気二重層容量を利用してエネルギーを貯蔵する蓄電デバイスである。本発明の一例は、電気二重層キャパシタである。この蓄電デバイスに用いられる最も典型的な電極活物質は、活性炭である。二重層容量は概ね表面積に比例して増加する。
【0114】
〔第3の蓄電デバイス〕
第3の蓄電デバイスは、電極のドープ/脱ドープ反応を利用してエネルギーを貯蔵する蓄電デバイスである。この蓄電デバイスに用いられる電極活物質として、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化銅等の金属酸化物や、ポリアセン、ポリチオフェン誘導体等のπ共役高分子が挙げられる。これらの電極活物質を用いたキャパシタは、電極のドープ/脱ドープ反応にともなうエネルギー貯蔵が可能である。
【0115】
〔第4の蓄電デバイス(リチウムイオンキャパシタ)〕
第4の蓄電デバイスは、負極であるグラファイト等の炭素材料へのリチウムイオンのインターカレーションを利用してエネルギーを貯蔵する蓄電デバイスである。リチウムイオンキャパシタ(LIC)と呼ばれる。正極は、例えば活性炭電極と電解液との間の電気ニ重層を利用したものや、π共役高分子電極のドープ/脱ドープ反応を利用したもの等が挙げられる。電解液には少なくともLiPF等のリチウム塩が含まれる。
【0116】
本発明の新規化合物である(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オキシ誘導体化合物は、下記一般式(II)で表される。
【0117】
【化13】
(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数7〜13のアラルキル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基、−OC(=O)−R、−OS(=O)−R、又は−OP(=O)(−R)−Rを示す。R及びRは、水素原子、ハロゲン原子、又は少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは1〜3の整数を示す。nが1の場合、Lは−C(=O)−R、−S(=O)−R、又は−P(=O)(−R)−Rを示し、nが2の場合、Lは−C(=O)C(=O)−、−S(=O)−、又は−P(=O)(−R)−を示し、nが3の場合、Lは−P(=O)(−)を示す。Rは、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換された炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルキニル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数7〜13のアラルキル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基、又は少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基を示す。Rは、ハロゲン原子、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数7〜13のアラルキル基、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基、又は少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基を示す。また、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、又は少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数6〜12のアリールオキシ基を示す。)
【0118】
一般式(II)において、置換基R、R、R、R、及びRは一般式(I)におけるR、R、R、R、及びRと同義である。
【0119】
前記、Rの具体例として、水素原子、フッ素原子、塩素原子、もしくは臭素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、もしくはn−ヘキシル基等の直鎖のアルキル基、iso−プロピル基、sec−ブチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ブチル基、もしくはtert−アミル基等の分枝鎖のアルキル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3−フルオロプロピル基、3−クロロプロピル基、3,3−ジフルオロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、もしくは2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、もしくはシクロヘプチル基等のシクロアルキル基、ビニル基、1−プロペン−1−イル基、2−プロペン−1−イル基、2−ブテン−1−イル基、3−ブテン−1−イル基、4−ペンテン−1−イル基、5−ヘキセン−1−イル基、1−プロペン−2−イル基、1−ブテン−2−イル基、もしくは2−メチル−2−プロペン−1−イル基等のアルケニル基、エチニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、4−ヘプチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、1,1−ジメチル−2−プロピニル基、1−メチル−3−ブチニル基、もしくは1−メチル−4−ヘプチニル基等のアルキニル基、ベンジル基、4−メチルベンジル基、4−tert−ブチルベンジル基、4−フルオロベンジル基、4−クロロベンジル基、1−フェニルエタン−1−イル基、2−フェニルエタン−1−イル基、もしくは3−フェニルプロパン−1−イル基等のアラルキル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−tert-ブチルフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、3−トリフルオロメチルフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−フルオロ−2−トリフルオロメチルフェニル基、4−フルオロ−3−トリフルオロメチルフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基、もしくはパーフルオロフェニル等のアリール基、フルオロスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、ビニルスルホニルオキシ基、ジフルオロホスホリル基、ジメトキシホスホリル基、又はジエトキシホスホリル基等が好適に挙げられ、中でも、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−プロピル基、sec−ブチル基、2−ペンチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、1−プロペン−1−イル基、2−プロペン−1−イル基、1−プロペン−2−イル基、エチニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、ベンジル基、4−メチルベンジル基、フェニル基、4−メチルフェニル基、フルオロスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、ビニルスルホニルオキシ基、ジフルオロホスホリル基、ジメトキシホスホリル基、又はジエトキシホスホリル基が好ましく、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ビニル基、1−プロペン−1−イル基、1−プロペン−2−イル基、エチニル基、2−プロピニル基、フェニル基、4−メチルフェニル基、フルオロスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、ビニルスルホニルオキシ基、ジフルオロホスホリル基、ジメトキシホスホリル基、又はジエトキシホスホリル基が更に好ましい。
【0120】
前記、Rは、フルオロメチル基、クロロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3−フルオロプロピル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、もしくは2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、もしくはシクロヘプチル基等のシクロアルキル基、エチニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、4−ヘプチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、1,1−ジメチル−2−プロピニル基、1−メチル−3−ブチニル基、もしくは1−メチル−4−ペンチニル基等のアルキニル基、ベンジル基、4−メチルベンジル基、1−フェニルエタン−1−イル基、2−フェニルエタン−1−イル基、もしくは3−フェニルプロパン−1−イル基等のアラルキル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−tert-ブチルフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、3−トリフルオロメチルフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−フルオロ−2−トリフルオロメチルフェニル基、4−フルオロ−3−トリフルオロメチルフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基、もしくはパーフルオロフェニル等のアリール基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基が好適に挙げられ、中でも、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、エチニル基、2−プロピニル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−フルオロフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、メトキシカルボニル基、又はエトキシカルボニル基が好ましく、トリフルオロメチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、エチニル基、フェニル基、4−フルオロフェニル基、4-トリフルオロフェニル基、メトキシカルボニル基、又はエトキシカルボニル基が更に好ましい。
【0121】
前記一般式(II)で表される具体的な化合物は、A1〜A3、A7〜A8、又はA20の構造式を有する化合物を除き一般式(I)の具体的化合物の記載、好ましい記載と同様である。
【実施例】
【0122】
以下、本発明の化合物を用いた電解液の実施例を示すが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0123】
合成例
〔2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル アセテート(構造式A1)の合成〕
4−クロロ−1,3−ジキソラン−2−オン2.50g(20.4mmol)の酢酸27ml溶液に、酢酸カリウム2.10g(21.4mmol)を加え、窒素気流下で15時間加熱還流した。室温まで冷却し濾過し、ジエチルエーテルで濾物を洗浄した後、ろ液を減圧濃縮した。残渣にジエチルエーテルを加えろ過し、ろ液を減圧濃縮することにより、目的の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル アセテート1.19g(収率40%)を油状物として得た。得られた2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル アセテートについて、H−NMRスペクトルの測定を行い、その構造を確認した。結果を以下に示す。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ= 6.70( dd, 1H, J=5.7, 2.1Hz ),4.65( dd, 1H, J=10.1, 5.7Hz ), 4.43( dd, 1H, J=10.1, 2.1Hz ), 2.18( s, 3H )
【0124】
〔ビス(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オギザレート(構造式B1)の合成〕
上記と同様の方法により、目的のビス(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)を白色固体として得た。得られたビス(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)オギザレートについて、H−NMRスペクトルの測定を行い、その構造を確認した。結果を以下に示す。
H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ= 6.79 - 6.75( m, 2H ), 4.85 - 4.79(m, 2H ), 4.66( dd, 2H, J=10.3, 1.8Hz )
【0125】
〔2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル メタンスルホネート(構造式C2)の合成〕
ジクロロメタン10ml中にメタンスルホン酸銀6.09g(30.0mmol)を懸濁させ、撹拌しながら4−クロロ−1,3−ジキソラン−2−オン3.06g(25.0mmol)を加え、窒素気流下で6.5時間加熱還流した。室温まで冷却し濾過により生成した塩化銀を除去した。ろ液を減圧濃縮し、残渣にジエチルエーテルを加え、ろ過することにより、目的の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル メタンスルホネート2.00g(収率44%)を白色固体として得た。得られた2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル メタンスルホネートについて、H−NMRスペクトルの測定を行い、その構造を確認した。結果を以下に示す。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ= 6.52( dd, 1H, J=5.7, 1.9Hz ),4.71( dd, 1H, J=10.5, 5.7Hz ), 4.55( dd, 1H, J=10.5, 1.9Hz ), 3.33( s, 3H )
【0126】
〔2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル エテンスルホネート(構造式C9)の合成〕
上記と同様の方法により、目的の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル エテンスルホネートを白色固体として得た。得られた2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル エテンスルホネートについて、H−NMRスペクトルの測定を行い、その構造を確認した。結果を以下に示す。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ= 6.69( dd, 1H, J=16.5, 9.7Hz ), 6.54( dd, 1H, J=16.5, 0.8Hz ), 6.47( dd, 1H, J=5.6, 1.8Hz ), 6.27( dd, 1H, J=9.7, 0.8Hz ), 4.69( dd, 1H, J=10.5, 5.6Hz ), 4.55( dd, 1H, J=10.5, 1.8Hz )
【0127】
実施例1〜22、比較例1〜2
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
LiNi0.33Mn0.33Co0.34;94質量%、アセチレンブラック(導電剤);3質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);3質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の正極シートを作製した。正極の集電体を除く部分の密度は3.6g/cmであった。また、ケイ素(単体);10質量%、人造黒鉛(d002=0.335nm、負極活物質);80質量%、アセチレンブラック(導電剤);5質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、負極シートを作製した。負極の集電体を除く部分の密度は1.5g/cmであった。また、この電極シートを用いてX線回折測定した結果、黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比〔I(110)/I(004)〕は0.1であった。そして、正極シート、微多孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、負極シートの順に積層し、表1及び表2に記載の組成の非水電解液を加えて、ラミネート型電池を作製した。
【0128】
〔高温サイクル特性の評価〕
上記の方法で作製した電池を用いて55℃の恒温槽中、1Cの定電流及び定電圧で、終止電圧4.25Vまで3時間充電し、次に1Cの定電流下、放電電圧3.0Vまで放電することを1サイクルとし、これを300サイクルに達するまで繰り返した。そして、以下の式によりサイクル後の容量維持率を求めた。
容量維持率(%)=(300サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0129】
〔高温充電保存後の放電容量維持率〕
<初期の放電容量>
上記の方法で作製したラミネート電池を用いて、25℃の恒温槽中、1Cの定電流及び定電圧で、終止電圧4.35Vまで3時間充電し、−20℃に恒温槽の温度を下げ、1Cの定電流下終止電圧2.75Vまで放電して、初期の−20℃の放電容量を求めた。
<高温充電保存試験>
次に、このラミネート電池を65℃の恒温槽中、1Cの定電流及び定電圧で終止電圧4.35Vまで3時間充電し、4.35Vに保持した状態で7日間保存を行った。その後、25℃の恒温槽に入れ、一旦1Cの定電流下終止電圧2.75Vまで放電した。
<高温充電保存後の放電容量>
更にその後、初期の放電容量の測定と同様にして、高温充電保存後の−20℃の放電容量を求めた。
<高温充電保存後の−20℃容量維持率>
高温充電保存後の−20℃容量維持率を下記の式により求めた。
高温充電保存後の放電容量維持率(%)=(高温充電保存後の−20℃の放電容量/初期の−20℃の放電容量)×100
また、電池の作製条件及び電池特性を表1〜表3に示す。
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
【表3】
【0133】
実施例23及び比較例3
実施例1及び比較例1で用いた正極活物質に変えて、LiNi1/2Mn3/2(正極活物質)を用いて、正極シートを作製した。非晶質炭素で被覆されたLiNi1/2Mn3/2;94質量%、アセチレンブラック(導電剤);3質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);3質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、正極シートを作製したこと、電池評価の際の充電終止電圧を4.9V、放電終止電圧を2.7Vとしたことの他は、実施例4及び比較例1と同様にラミネート型電池を作製し、電池評価を行った。結果を表4に示す。
【0134】
【表4】
【0135】
実施例24、25及び比較例4
実施例4及び比較例1で用いた負極活物質に代えて、チタン酸リチウムLiTi12(負極活物質)を用いて、負極シートを作製した。チタン酸リチウムLiTi12;80質量%、アセチレンブラック(導電剤);15質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、負極シートを作製したこと、電池評価の際の充電終止電圧を2.8V、放電終止電圧を1.2Vとしたこと、非水電解液の組成を所定のものに変えたことの他は、実施例1及び比較例1と同様にラミネート型電池を作製し、電池評価を行った。結果を表5に示す。
【0136】
【表5】
【0137】
上記実施例1〜22のリチウム二次電池は何れも、本願発明の非水電解液において、化合物(I)で示される化合物を添加しない場合の比較例1、特許文献1記載の化合物を添加した場合の比較例2のリチウム二次電池に比べ、高温サイクル特性、および高温、高電圧保存特性を向上させる。以上より、本願発明の蓄電デバイスを高電圧で使用した場合の効果は、非水電解液中に、化合物(I)を含有する場合に特有の効果であることが判明した。
また、実施例23と比較例3の対比から、正極にニッケルマンガン酸リチウム塩(LiNi1/2Mn3/2)を用いた場合や実施例24〜25と比較例4の対比から、負極にチタン酸リチウム(LiTi12)を用いた場合にも同様な効果がみられる。従って、本発明の効果は、特定の正極や負極に依存した効果でないことは明らかである。
【0138】
更に、本発明の非水電解液は、リチウム一次電池の広い温度範囲での放電特性を改善する効果も有する。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の非水電解液を使用すれば、広い温度範囲における電気化学特性に優れた蓄電デバイスを得ることができる。特にハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、バッテリー電気自動車等に搭載されるリチウム二次電池等の蓄電デバイス用の非水電解液として使用すると、広い温度範囲で電気化学特性が低下しにくい蓄電デバイスを得ることができる。
また、本発明の新規な化合物は、その特殊な構造から、化学一般、特に有機化学、電気化学、生化学及び高分子化学の分野において、電解質用途、耐熱性用途等の材料として、医薬、農薬、電子材料、高分子材料等の中間原料、又は電池材料として有用である。